山口県光市母子殺害事件で元少年に死刑判決。
●遺族の本村さんのネバリ強い活動で、この事件は9年間にも及ぶ長い時間を経ても世間の関心から消えることなく、最終的に強い社会的メッセージを発信することができた。様々な無理解や圧力などもあったでしょうに、信念を曲げない根性は立派なものだと思う。ボクが今思うのは、死刑制度の是非、今回の判決の結果うんぬんというコトの一歩手前のコト。死刑に処すモノ、処されるモノへ関わるってコトは並大抵の神経では太刀打ちできない、デカい覚悟がいるってコトだ。

カポーティ コレクターズ・エディションカポーティ コレクターズ・エディション
(2007/11/28)
フィリップ・シーモア・ホフマン; キャサリン・キーナー; クリフトン・コリンズJr.

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●DVD「カポーティ」
●小説家トルーマン・カポーティ「ティファニーで朝食を」などで知られる戦後アメリカ文学の名手で、当時のNY社交界の超セレブだった。この映画はこの小説家が、ある殺人事件とその犯人へ取材をし、自分の代表作になる作品「冷血」を書き上げるにいたる様子を描いた映画だ。カポーティを演じた俳優フィリップ・シーモア・ホフマンのソックリさんぶりは公開年のアカデミー賞でも話題になり、主演男優賞まで獲っちゃったほど。ゲイであったカポーティは、劇中で見るとちょっとキモイおっさん。ヘナヘナ声でヘラヘラジョークをかまし、パーティではいつも話題の中心。
●そんなカポーティが、中西部カンザス州のド田舎で起こった一家4人惨殺事件になぜか興味を持って、取材を始める。そして死刑判決を受けた犯人に対して何度も何度も面会し、自分で弁護士をあてがって審理のやり直し請求までして彼らの刑執行を引き延ばす。「まだ死なれちゃ困るんだ。大事なハナシが聞けてない」都会の流行作家風情が、あの手この手で犯人につきまとい、自分のネタのために延命工作まで買って出る。今のジャーナリズムの感覚ではチト非常識な感覚だと思う。
●キモイおっさんがどんな覚悟で取材を始めたかはなはだ微妙だが、犯人の一人と深く交流する中で予想してなかった葛藤が生まれてくる。オモロいネタのために始めたのに、いつのまにか犯人の命を背負っちゃってる自分。命の恩人と寄りすがる犯人をゴマかしてネタを引っ張り出そうとする欺瞞。オマケに弁護士の活動で死刑じゃなくなっちゃうかもしれないとなると「もうダメだ、気が狂いそうだ」と寝込んでしまう。最後は、刑の執行までを見届けるカポーティ。4年もの歳月をかけて取材をした小説のタイトルは「IN COLD BLOOD」「冷血なのは、犯人なのか、それともアナタなのか」カポーティに投げられるセリフ。とにかく死刑に関わるには根性が要る。
「冷血」はノンフィクションノベル、ニュージャーナリズムと呼ばれ、当時の文壇で絶賛を浴びた。その一方でカポーティは、この「冷血」発表後、一つも作品を完成することができなくなってしまったという。ボクは不勉強で、この「冷血」を読んでない。早速買って読むことにした。さて、どんな本なのだろう。

冷血 (新潮文庫)冷血 (新潮文庫)
(2006/06)
トルーマン カポーティ

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もう一本、伝記映画を。

ファクトリーガール

●映画「ファクトリー・ガール」
●60年代のアートアイコン、イーディ・セジウィックの生涯を綴った作品だ。カリフォルニアの大農場主の家庭に生まれたセレブ令嬢が、NYのアートシーン、そしてアンディ・ウォーホルに出会い、一気に時代の寵児に昇りつめる。しかし、歪んだ家族関係から心に闇を抱えていた彼女は、ウォーホルのアトリエ、通称「ファクトリー」にたむろす変人集団に感化され、立派なジャンキーに仕上がってしまう。そしてとあるロックシンガーとのつかの間の恋。つーか名前を伏せてるけどボブ・ディランのコトなんですが。それがシコりになってウォーホルとの関係も崩壊。グシャリと崩れ落ちる彼女のデタラメ人生。
ガイ・ピアーズが演じたウォーホルは、カポーティと同じくらいキショイしゃべりで本物ソックリ。「あー、うーん、あー」とかブツブツいってる感じが最高。ちなみにセレブミーハーだったウォーホルカポーティとトモダチになりたくてしょうがなかったらしい。ファクトリーにはカポーティもよく遊びにきていたようだ。ウォーホルを巡るカルチャー人脈も数々登場、彼がプロデュースしたロックバンド THE VELVET UNDERGROUND & NICO のエピソードもチラリ、ウォーホルの右腕的アシスタントで写真家の、ジェラルド・マランガの雰囲気も過去のドキュメンタリー映像とそっくり。ボブ・ディラン役には、「スターウォーズ・エピソード2/3」アナキンを演じたヘイデン・クリスチャンセン。ウォーホルに突っかかる生意気な若者。
●主役イーディを演じるのはシエナ・ミラーという人。ボク的には初顔の女性だが、がんばってると思う。でも、イーディはボクの中で超ハイランクなアイドルなので、本物のキラキラにはかなわない。


この「ファクトリーガール」は試写会でみた。

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●場所は京橋・映画美学校。京橋近辺には試写会場がいくつかあるが、この場所は独特のオーラを放っててとても好きな空間だ。古い昭和アールデコ様式のビルヂングで、映画の専門学校を兼ねてるせいか、スピーカーや美術品とかが雑然と置かれてて、学祭の後始末みたいな匂いが漂ってる。
●顔見知りの映画プロモーターの女性にあった。仕事でカッチリ関わることは滅多にないんだけど、ボクの趣味の映画を沢山配給してるので、試写会ではしょっちゅう顔を合わせてしまう。前は70年代のポルノ映画を巡るドキュメンタリー「インサイド・ディープ・スロート」、その前はマイク・ミルズ監督「サムサッカー」。ひねくれた映画ばっか扱う映画会社。その女性プロモーター、ボクの顔を見るなり「unimogrooveさん、お久しぶり!そうだよね、unimogrooveさんってカルチャーボーイだもんね」カルチャーボーイって……そんな言葉初めて聞いたわ。「スゴく久しぶりですね」ああ、ボク病気でしばらく仕事から離れてるもんだから。「へー、unimogrooveさんの仕事タフだもんね、休めるだけ休んじゃって下さいよ」病気ネタさらりと会話できるレベルってーのが、ボクの中で人間関係的に質が変わるポイント。ドスンと重く捉えられて気を使われたり、深刻すぎるリアクションされる方がボクには負担。「へーそうなんだー」で十分。つーかそれ以上は困る。


●今日のBGMは、PRINCE。いや正確に言うと「THE ARTIST FORMERLY KNOWN AS PRINCE」
PRINCE は好きなアーティストで、80年代から94年くらいまでは全部網羅して聴いていた。でも殿下ご乱心。1995年、名前をヘンテコな記号(発音不能)に置き換えて、周囲を混乱に陥れた。つーか、本人が混乱してたのかも。今日の音源はその時代のモノ。

Chaos and DisorderChaos and Disorder
(1996/07/09)
Prince

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「CHAOS AND DISORDER」1996年
●80年代では完全に世界最前衛のファンク表現で超音速でぶっ飛ばしていた殿下。しかし、90年代に台頭してきたヒップホップだけは、自分のモノには出来なかった。ゴチョゴチョ頑張った形跡もあるんだけど、結局時代との乖離を否めないと確信した段階で、殿下は今までのキャリアを一掃してゼロから再出発しようとしたのだろう。1994年に全部在庫をお蔵だしして(一度は封印した THE BALCK ALBUM まで発表)、アルバム「COME」では死人の訃報のようなジャケを作った。
●でも殿下がスゴいのは、名前を変えても、時代に全然日和ったりしないで、オレ道を突き進むトコロ。このCDではギターサウンドがうめくブラックロックなんだもん!殿下特有のギリギリと呻きながら伸びるギターは、普通のブラックミュージックじゃ登場しない完全なロックギター。こんなコトこの時期誰もやってないよ!重心が中低域にある硬質ファンクも、ヒップホップに全然ならない独自路線。一般の評価は異常に低くて廃盤状態。でもこの軽く固いスネアが00年代のヒップホッププロデューサー達(THE NEPTUNESなど)から評価されるようになるのだから立派です。

Rave Un2 the Joy FantasticRave Un2 the Joy Fantastic
(1999/11/09)
Prince

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「RAVE UN2 THE JOY FANTASTIC」1999年
●一曲目の奇天烈ファンクから、かつての殿下ぶりが全開。スゴいコトにこのオープニング曲、87年のレコーディング。12年以上も前の作品でこのアップデート感。やっぱ天才。「ヘンテコ名義路線でイロんなコトやったけど、やっぱオレはオレでいいわ」という悟りが旧作からブチカマす大胆作戦に走らせたのだろうか。
●でも殿下の音楽は現在進行形で独自の進化を今なお続けていて、THE NEPTUNES の大先輩として奇形進化痙攣ファンクを雄弁に鳴らしてる。でもそれは決してアヴァンギャルドにならず、完全なエンターテインメントにキチンと着地。「THE GREATST ROMANCE EVER SOLD」「EVERYDAY IS A WINDING ROAD」「SO FAR, SO PLEASED」「WHENEVER U GO, WHATEVER U DO」などポップ佳曲多し。翌2000年にこのアルバムのリミックスアルバムを出し、2001年の「THE RAINBOW CHILDREN」で名義を PRINCE に戻す。80年代ファンクを推進したのは MICHAEL JACKSON PRINCE だが、マイケルがサイボーグ化しゴシップしかクリエイトできなくなってるのに比べ、殿下の方がずっとリアルで健全なクリエイターとして振る舞えている。