●最近、ボヤーっと思った事。

●映画会社「シネカノン」が民事再生法適用へ。「パッチギ!」「フラガール」「誰も知らない」「ホテルハイビスカス」…古くは「月はどっちに出ている」…いい映画をイッパイ送り出してくれた会社でした。残念。

●NHK大河「龍馬伝」、ピエール瀧が、意外なほどシレッとハマってる。なのに…。

mixiのアプリ「サンシャイン牧場」に我が家のコドモたちが異常な関心を示している。ヒヨコ「ハタケのおセワをしないと!ムシにプシュプシュしないと!」…ボクのマイミクさん、最近コチョコチョ畑が荒らされてるとしたら、ソレはウチのコドモの犯行です。すいません!

●スピードスケートの高木美帆ちゃん。15歳のスーパー中学生。彼女、ボクの中で「ザワさん」とイメージがカブルんだよね。

高木美帆とザワさん

(三島衛里子「高校球児ザワさん」、ミニ連載のくせして既に単行本3巻まで。好き。)

半年ぶりに、髪の毛を切った。前回美容院に行ったのは去年の5月だよ。髪の毛ボサボサ、限界まで伸ばしました。ラーメン食うと、口の中に髪の毛が入ってくるほどでした。サッパリ切って、高木美帆ちゃん&ザワさんと同じくらいになりました。ワイフ「フツウのヒトになったね」…え?今までフツウのヒトじゃなかったの?


ハイチの地震で大勢の人が死んでしまいました…。

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●カリブ海のあのヘンも大地震が起こるようなバショなんだ…初めて知った。死者20万人…世界で最も貧しい国の一つなのに、環境破壊も最も深刻な国なのに、コレは厳しい出来事だ。
●アメリカにとってカリブ海の事情はヨソ様とは思えないのか、MTV はスゴいスピードでチャリティを仕掛けた。震災後わずか11日で MTV「HOPE FOR HAITI NOW」というイベントを開催。出演アーティストは、BONO、STING、STEVIE WONDER、MADONNA、BEYONCE、COLDPLAY、JOHN LEGEND、ALICIA KEYS…などなど。生放送から間髪置かず、ITMS でライブアルバムが配信開始。ネット上には色々なトコロで寄付の窓口が出来てる。技術革新がチャリティのスピードも上げてます。

さてさてハイチと言えば、WYCLEF JEAN です。
●唐突?いえいえ、だってカレ、ハイチ出身の移民さんだもん。オマケに伯父さんがハイチの駐米大使。今回の震災に際しても、伯父と連名で国際援助を求めるアピールを行ないました。ライブアルバム「HOPE FOR HAITI NOW」の曲順では彼がオオトリを務めてます。以前から基金を立ち上げて、ハイチの恵まれない子供に奨学金を与えてたりもしてました。ハイチの BOB MARLEY と呼ぶ人も言うくらいですから。だから今日はその WYCLEF JEAN を聴きます。

WYCLEF JEAN「CARNIVAL VOL.II - MEMOIR OF AN IMMIGRANT」

WYCLEF JEAN「CARNIVAL VOL.II - MEMOIR OF AN IMMIGRANT」2007年
●彼が世に出たのは THE FUGEES の頭脳としての活躍。しかし重要メンバー LAURYN HILL が離脱して THE FUGEES 自体は全然機能しなくなっちゃった。気づけば WYCLEF はピン立ちの敏腕プロデューサー/ラッパーとして引っ張りだこになっており、ソロアルバムも7枚リリースしちゃった。コレはそんなカレの6枚目のアルバム。「ある移民の記憶」という副題が、ハイチからニューヨークへと移り住んだモノの思いを象徴してるし、マルチカルチャーゴッダ煮移民都市ニューヨークの正体も絶妙に象徴してる。モチロン音楽の内容もね。
WYCLEF はヒップホップのプロデューサーだけども、そのヒップホップの枠組みを躊躇なく越境してしまうクリエーターでもある。だからこのアルバムもヒップホップのようで、全然ヒップホップじゃない。ウタモノ満載で実にポップス。むしろ移民のアイデンティティを見せつけるがごとく、貪欲に世界中の音楽を呑み込もうとしてる。彼の過去のアルバムに「THE ECLEFTIC」って作品があるが、コレは「WYCLEF」「THE ECLECTIC」(=折衷主義者)というコトバを合体させた造語。WYCLEF は確信的な折衷主義者だ。その折衷主義的音楽、折衷主義的挑戦がオモシロい。

●一曲目「RIOT」からもう冒険的な折衷主義が炸裂してます。サンプルネタはイギリスのヘビメタ IRON MAIDEN。フィーチャーアーティストもオモシロい。一人目はダンスホールレゲエの英雄 SIZZLA。カリブ海出身の WYCLEF としてはレゲエとの相性は悪いはずがない。しかしもう一人は実にユニークだと思った。SERJ TANKIAN。レバノン・ベイルート生まれのアルメニア系移民、そしてメタルロッカー。SYSTEM OF A DOWN のギタリストっていうと、あーコリャ濃いわ、と思って頂けるのでは?
●他に登場するゲストを上げましょう。AKON はセネガル系移民の子。愛おしいフォーク歌唱を聴かせてくれる NORAH JONES だって父親はインド人、世界的知名度を誇るシタール奏者 RAVI SHANKAR だもんね。中南米ラテンポップスの女王 SHAKIRA はズバリコロンビア人。彼女のバタ臭くもあり艶っぽくもある声は見事なキャッチになってる。そうそう、PAUL SIMON まで召喚。彼は完全ユダヤ系だけど、ワールドミュージックへの理解は非常に深い。WILL.I.AM はご存知 THE BLACK EYED PEAS の中心人物で、ヒップホップの辺境地帯へ出ていく度胸は誰にも負けない。「HOLLYWOOD MEETS BOLLYWOOD」という曲では本場インドのプロデューサーを招いて、マジモンのボリウッドサントラのようなトラックを制作させてる。移民こそが成し得る折衷主義コラボ。

●さて、WYCLEF は13歳の頃からニューヨークに住んでおり、そこでアーティストとしてのキャリアも起こした。ヒップホップは同じアメリカでもその土地や街で特色が出る音楽だから、WYCLEF の音楽もニューヨークのサウンドと非常に関係が深い。今回の折衷主義サウンドもニューヨークのアプローチって感じが濃厚。元来ニューヨークって中南米に開かれた街って印象がある。サルサもニューヨークで完成された気分があるし(FANIA ALL STARS)、アメリカで唯一レゲエが早くから根付いてたって事実もあるし(BULLWACKIE)、プエルトリコ移民がハウスミュージックを作ったり(MASTERS AT WORK)…、その文脈の延長で、ハイチ移民の WYCLEF は活躍してる。ニューヨーカーのアイデンティティとハイチ人としてのアイデンティティを2つ保持して生きる、そんな姿勢を許す包容力がニューヨークの強さなんだろな。

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DVD「THIS IS IT」がやって来た。
●ネットで注文した MJ の遺作「THIS IS IT」がとうとう届いた。アレだけ評判がよかった映画を観に行かなかったのは、コドモにちゃんと見せたかったから。字幕が読めないコドモたちには、ボクが弁士役をやってやらないと。そりゃ劇場じゃ出来ないからね。で、カゾク揃って鑑賞するのでした。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

コドモたち、なんだか知らんが、テレビを見ながら踊りまくる。「JAM」で踊る!「BAD」で踊る!「SMOOTH CRIMINAL」で踊る!そして「THRILLER」で踊る!バレエを習ってるヒヨコはもとより、ダンスにカンケイないノマドまでが踊る。諸君、ソコまでダンスが好きならヒップホップダンスでも始めるか?近所にダンススタジオあるんだぞ?ヒヨコ「ヒップホップダンス?マイケルがしてるのはタップダンスみたいだけど?」おーオマエするどいな!マイケルは自分のスタイル作るのにフレッド・アステアのブロードウェイミュージカルを研究しまくったというから、タップダンスもかなり濃厚に溶け込んでるぞ。
●ノマドは、マイケルがバンドを完全に掌握してるコトにシビレてた。彼の身振りに反応して、バンドがビシッとブレイクを決めたり、演奏を始めたり。マイケルの腕の動きが楽器に直結してるよう。絶妙な呼吸の合わせ方がクール。ボク自身も正確無比なタイム感を全て人力で叩き出す強力なファンクネスにビビった。チットは打ち込み駆動になってると思ってたです…。
●ヒヨコは「BLACK OR WHITE」マイケルにカラむ女性ギタリストにメロメロ。「かっこいい~!」。大きなギターを男勝りに構え、金髪をたなびかせてプレイするスタイルにゾッコン。この女性はオーストラリア出身の大抜擢ニューカマー ORIANTHI PANAGARIS さん。かつては GUN 'N' ROSES SLASH が務めたポジションだからね。確かにスゴいです。名前が難しいのはギリシャ系だからだって。
●で、連中が爆笑しまくってたのが、マイケル股間に手を置き、腰を突き上げる仕草マイケルってあのアクションをしながら「ぽう~!」って叫んでたりしてたじゃないですか。ボクらにはもうフツウのコトだけど、初めて見る8歳&7歳児には滑稽に見えてしょうがないらしい。あのアクションは、ノマドに「ちんちんもみ」というミもフタもない名前をつけられてしまった。

舞台演出にあのオトコ、KENNY ORTEGA が入ってた!
●この映画のオモシロドコロってのは、あのスーパースターマイケルが、意外なほどデティールに踏み込んで自分のステージの細かい演出を作っていく様子だろう。スタッフやバンドに、微妙なニュアンス、テンポ感、キューのタイミングを的確に指示するマイケルの姿は誰も見た事がなかった……ショウビズサイボーグのように見えてた偶像は、実は思った以上に真っ当な人間で、仕事に妥協を許さない職人で、それでいてスタッフを威圧する事のナイ奥ゆかしさをもった紳士だった。彼ほどの大物なら、エラそうにふんぞり返ってダンサーたちの動きを見てればイイようなリハーサルなのに、音楽が鳴れば誰よりもシナヤカに踊り本気でウタを歌う。そのショーマンシップに敬意を感じます。
ただボクにとっては、この映画にはもう一人、目が離せない重要人物がいる。劇中、マイケルのソバに立ちリハーサルの現場を仕切る白人のオッサン。コイツが気になってしょうがない。このオッサンの名前はケニー・オルテガ。この映画「THIS IS IT」の監督を務めたオトコ。そしてこのツアーの舞台演出を総括してたオトコだ。もうね、DVD見る前からコイツのお手前をチェックするモードになってました。劇場公開時、カントクのクレジットにケニーの名前を見た瞬間からね。

ケニー・オルテガ、このオッサンのドコがスゴいのか?
●見テクレでは、タダのデブ&ハゲ&メガネのオヤジでしかない。しかしボクの中では、彼の名は「ハイスクールミュージカル」シリーズ(テレビドラマ&映画)の監督としてインプットされている。そんで、つまりは、ボクの中で、世界屈指のミュージカルディレクターと位置づけられてるワケなのです。
「ハイスクールミュージカル」3部作は、コテコテお約束感ムキダシのアメリカ高校生活&青春ラブストーリーで、内容においては決してボクの趣味ではない。ただし、若い俳優たちが歌い踊るミュージカルシーンが尋常じゃないツクリ込み様で、ワイフの趣味に付き合う程度のつもりでDVDを観てたボクは完全に度肝を抜かれたのでありました。徹底したお約束感もここまでコテコテに作り込まれると、そのお約束にストンと落ちるサマが最高に気持ちイイ。俳優やダンサーの位置や動きがメチャメチャ緻密に計算されている。ウタの場面に限らない、ウタとウタの間のフツウの芝居ですら、俳優やカメラの動き、編集のタイミングがカッチリ作り込まれてる。うぉータダモンじゃねえ、コレ撮ってるヤツダレ?
●普段なら100%無視してる特典映像までチェックした。メイキングが観たい。演出してるヤツの顔が観たい。そしたら、このオッサン、ケニー・オルテガが登場してきた。彼はデカイ太鼓腹から朗々と響くデカイ声で現場を仕切る。俳優とはいえ二十歳を過ぎたばかりの少年少女が相手、そんな連中をまるで部活のコーチのように叱咤激励し、身振り手振りを加えて指示を与える。こらすげえオッサンだ!

ハイスクール・ミュージカル2 プレミアム・エディション

(「ハイスクールミュージカル2」コレがイチバン作り込みの密度が濃い、と思う。)

マイケルと対峙するケニーのオッサン。信頼関係で結ばれたパートナー。
「THIS IS IT」のリハ風景において、ケニーは全体の進行とマイケルへの向き合いを担っている。マイケルがステージで違和感を感じれば、客席側からマイクを握ってヤリトリする。バンドとの打合せでもケニーマイケルのすぐソバに寄添ってるし、ステージ後ろで流すモニター映像のディレクションもやってるみたいだ。バックダンサーと一緒に踊っちゃってる場面まである。マイケルが抱く演出イメージを、全スタッフへ正確にオトし込む司令塔の役割を果たしてる。地味に見えて、実に重要なポジション。ステージを支配する裏方の主役だ。
●でもボクが注目したいのは、単純にケニーが優秀な演出家であるってコトだけじゃない。映像からヒシヒシと伝わってくるのは、マイケルがこのオッサンに全幅の信頼を置いているコト。あの繊細でシャイなオトコ、マイケルが、コイツは大丈夫だ、という安心感をケニーに抱いてるのが手に取るようにわかる。そして、ケニー自身も、マイケルの信頼に応えるべく、全身で仕事に取り組みマイケルに向き合っている。スーパースターが相手じゃ誰もが怯むが、オッサンはイエスマンになるでもなく情熱をもってキチンと向き合う。コレがアツい!世界最高水準のモノ作りにおいて一番重要なのは、巨額の予算やテクノロジーを駆使した演出手法ではなく、結局はタマシイのぶつかり合いとも言うべき人間同士の信頼関係だという事実が、「THIS IS IT」を感動的にしてるのだ。ケニーを軸に、バンド、ダンサー、スタッフが一丸となってマイケルと固く結びついて行く様子。コレが胸を打つ。
●本来なら、コンサート演出家として雇われたケニーが、この映画を編集までする筋ではなかったハズ。マイケル急死を以て彼の仕事は終了したはずなのだ。しかし彼はマイケルとの共同作業をこのまま永久に葬る事が出来なかった。限られた映像を駆使してなんとかマイケルが目指した表現を伝えようと、不休で編集をした。ドキュメンタリー「THIS IS IT」の成り立ち自体が、ケニーの男気によって支えられている。もうそれだけで十分ウルウル。DVDにはこれまた数々の特典映像が収録されてる。コレを細かく観て下さい。ケニー・オルテガという人物のアツいハートが、よりわかりやすく伝わってきます。

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(マイケルとケニー・オルテガ。モニター映像収録風景の一幕。)

で、このオッサン、正体はナニモノなの?
「ハイスクールミュージカル」の段階で、ボクとワイフの中では、ケニーはすごくアツくてナイスなオッサンと評価が決まっていた。ただ「THIS IS IT」を観て、より印象が変わった。「コレは思った以上にエラいオッサンでもあるのではないか?」そもそも何であんなに踊れるの?一流ダンサーの前で堂々と振る舞えるの?早速 WIKI で調べた。
●予想通りだったが、ケニーのオッサン、キャリアは振り付け師から起こしたらしい。オリビア・ニュートンジョンのミュージカル「ザナドゥ」1980年に関わり、パトリック・スウェイジ主演の「ダーティ・ダンシング」1987年の振り付けで注目を浴びる。この二本の映画はサントラ含め80年代映画として重要です。その後、テレビドラマの演出、映画監督などとキャリアを膨らませて行く。ヒットドラマ「アリー MY LOVE」も3本くらいのエピソードを手掛けてるみたい。「ハイスクールミュージカル」はやはり代表作で、振り付けと監督を両方担っていた。実は舞台演出も得意分野で、アトランタ五輪ソルトレイク五輪の舞台演出までやってた。うわココまでやってりゃかなり大物だな。北京五輪はチャン・イーモウの演出だったでしょ。ソレ級と考えるとかなりの重要人物。
●そんで、マイケルとの関係も特別。今回の「THIS IS IT」ツアーだけの付き合いじゃありませんでした。1992年の「DANGEROUS」ツアー、1996年の「HISTORY」ツアーも彼が演出してたのだ。20年近くもの付き合いがあった上での信頼関係だったのね。マイケル急死を受けて執り行われたロサンゼルスの追悼式典(出演:LIONEL RICHIE、STEVIE WONDER、JANET JACKSON などなど…娘パリスちゃん涙のメッセージが印象的…。)の演出も、実は彼が手掛けていました。マイケルケニーは、まさに戦友だったのです。


自律神経失調症とのお付合い(その114)~「病気じゃないって言うけどさ?」編

今日は、おぇ~っ! 胃カメラ検査の日であった。
●人生で三度目の胃カメラ。何度やっても慣れない。でもヤラナくちゃいけないんだから、しょうがない。朝飯抜いて、検査着に着替えて、うがい薬みたいな麻酔薬でノドをぼんやりさせて、そんで。おぇ~っ!今年の胃カメラは、ノドの奥にゴツリと当たってイタかったなあ。
●去年の胃カメラ検査で、「粘膜下腫瘍」ってのが見つかった。米粒みたいなチッコイ腫瘍。ナニソレ?「イイもワルいもなんとも言えません。毎年胃カメラでチェックして経過を見ましょう」コレで年のハジメは必ず胃カメラと決定された。ボクの年間行事に胃カメラが織り込まれた。初詣は行かないのに、胃カメラは飲む。
●腫瘍の大きさは変わってないコトがわかった。しかし他にもボクの胃はアレコレトラブってる。出血性びらんでアチコチから血が出てるとか。ソレは今回の検査で収まったコトがわかったが、ストレスが強いのか、胃炎でアチコチ赤く腫れてるらしい。胃酸が強過ぎる。そしてその胃酸が食道方面に逆流して、その辺をただれさせている。「胃酸を和らげるクスリを飲んでますか?」あーそれはちゃんと飲んでます。タケプロンというヤツ。ストロベリー味がついてて気色ワルいクスリ。


う~~~ん、最近さ、実は、ホント、調子悪い。
●去年6月に復職して以来、イチバン調子悪い。ピンチ。認めたくないけど、ピンチ。毎日がギリギリ勝負。定刻に出社できてない。つーか、会社行けるだけマシ、もうコレ無理!って思うほどツライ。
●まず、第一に、寒い。意味不明なくらいに震える。歯が鳴る。ガチガチ。どんなに暖房してもフトン被っても寒い。実際の気温が低いんじゃない、神経がイカレテルからどんなことしても悪寒がなくならない。
●で、身体がイタい。腰が痛くて目を覚ます。足が重くてビッコを引いてしまう。関節が痛い。ヒジも軋む。コレもね、別に原因は特にないんです。神経がイカレテルがゆえの錯覚。ちょっとした筋肉痛だろうけど、フツウの人間はこんなのでヒーヒー言わない。でも、無性にコレが苦しい。情けないほどツライ。正月から胃腸炎気味でハラも痛む。内科系のクスリはもらって飲んでいるがよくならない。これもね、普通の人なら問題にならないはず。しかし、どうしても我慢が出来ない。
●そんで、少々のメマイ。クラクラする。で、集中力が持続しない。意欲がわかない。しかし仕事はタンマリあって、その義務感とコナせない罪悪感で押しつぶされそうになる。完全に気分障害だわ。暗黒のデストロイな感情になる。全てが億劫になる。着替えもできない。携帯メールも打てない。テレビのリモコン操作すらしたくない。そんで安定剤を飲む。…クスリ飲んでも、気休めにしかならないんだけどさ。
睡眠薬飲んでるのに、夜中に5回も目を覚ます。その結果、ウマく起床出来ない。会社に定刻通り出発出来ない。で、またヘコム。無力感のデフレスパイラル。ダメなジブンにどんどん落ち込む。

●コレさ、他人から見たら、意味分かんないと思う。誰でもフツウに感じる感情でしょ「カッタルイなあ今日は仕事行きたくネエなあ」って。誰でも毎日そう思って、それでも出勤するじゃん仕事するじゃん。それをオマエはご大層に「ビョウキ」と称して寝坊の理由にしてる、そりゃオカしいんじゃねえの!って思う人はいて当然だと思う。…あー反論の余地なし。自律神経失調症ってさ、定義もイイ加減で、実にテキトーな診断名だから、「オマエそこは気合いだろ!」と言われたらもう言い返せない。しかし、マジで動けない。気合いの一滴すらも利かないのがこのビョウキの本質だ。

医者が言う。「それは仕事がキツいんです、病気とカンケイなく」。
●先週、会社を休んで赤坂のクリニックに行った。年明け二回目だ。ボクは患者としてアレコレ説明するのだが、このテの診察はドコがイタいドコが苦しいって話だけじゃない、生活環境全体を説明するコトになる。そんで医者が言ったのが、上のセリフ。そしてこう続ける。「土曜出勤で会議が10時間も続けば誰だってクタビレますよ。毎日毎日が会議ヅクメじゃ煮詰まって当然です」…確かにそうなのだ。ボクは年末から仕事を少し増やしてもらった。ちょうど復職から半年経ったタイミング、出来るとジブンでも思って申し出た。が、少々荷が重かったのかも。仕事を背負い過ぎたのかも知れない。それは自分でも感じてた。
「unimogrooveさん、アナタはもう、うつ病という段階はすでに脱しました。ビョウキではありません。ジブンはビョウキだ、という自己暗示から、そろそろ自分を解放しなくてはいけません」おっ!この瞬間はビックリした。「ビョウキじゃない」って言われたのはこの3年の間で初めてだからだ。ビョウキじゃないんだー!あらららそんなコト今さら言われてもー!
●一番最初に「アナタはビョウキです」って言われて以来、職場から外されて、社会復帰するまで2年もかけて、その間どんなに復帰したくてもダメだまだ十分じゃないまだビョウキだ…って散々言われ続けて、一応職場復帰した今でもなおアレコレの医者が「ビョウキだ!」とボクにレッテルを貼付けてるのに、イキナリ一番付き合いの浅いアナタがそのセリフを吐くとは!およよよ…戸惑った。
「私が言いたいのは、ビョウキではないというコトは、クスリでは治らないというコトです。生活管理を徹底して健康な毎日を維持するコト。よく寝て、食べて、身体を動かす」はあ~なるほど。生活管理ね。それは大事だと思います。

そんなコト言っておきながら、新しい精神安定剤が出てきた!
「さっき言ったコトと矛盾するようなんですが、新しいおクスリを試してみては、と思うんです」ズコーッ!センセイ、クスリじゃ治らないってさっき言った瞬間ですよ!その舌の根も乾かぬウチに…。「睡眠が不安定なのは、よくない。もっと質のイイ睡眠をとるためには、睡眠薬(今ボクが使ってるのはロプヒノールってヤツだ…大分薄めのタイプだと思う)に加えて、ココロを安定させるクスリを飲んだ方がイイと思います…最近イロんな人に私がススメてるモノでね、評判も悪くないんです」またまた出てきたぜ新顔が。デジレル25mg。コイツを寝る前にロプヒノール1mgと一緒に飲む。抗不安作用、鎮静作用があって、眠気も引き起こすので、睡眠薬とのカクテルでキメルのがイイらしい。一方単品で飲むには効果が薄過ぎて役に立たないという説もある。

●コレで、精神科系のクスリのセットは、以下の通りになった。
デパゲンR 200mg / ムードスタビライザー 朝食時1回
メイラックス 0.5mg / 精神安定剤 朝食時1回
ロプヒノール 1mg / 睡眠導入剤 就寝時1回
デジレル 25mg / 精神安定剤 就寝時1回
デパス 0.5mg / 精神安定剤 頓服用
・これに加えて、呼吸器科、内科、消化器科などのクスリがアレコレ…。うん、大分シンプルになってきたね。

●余談だけどさ。ロプヒノールって、薄いクスリと見せかけて、アメリカには持ち込み禁止、禁輸薬物なんですって。アメリカでポピュラーな鎮静剤と飲み合わせると、ヤバい副作用を起こすらしい。連中のクスリってみんな強烈だから、そういうコトも起こるんだな。少々の依存性もあるらしい。まあソレ言ったらデパスだって少々の依存性はある。ソレをビビってたらクスリなんて飲めないよ。

●この記事を、2010年の「自律神経失調症とのお付合い」シリーズまとめページにしようと思います。よろしくお願いしますね。過去のまとめページはこちら。

<2007年7月~2008年12月/シリーズ(1)~(79)のまとめ>
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-223.html
<2009年1月~12月/シリーズ(80)~(113)のまとめ>
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-557.html

●3/13:自律神経失調症とのお付合い(その115)~「ギリギリですけど動いてる」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20100313.html
●4/6:自律神経失調症とのお付合い(その116)~「クスリが残るコトの感動」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20100406.html
●7/3:自律神経失調症とのお付合い(その117)~「制限勤務解除と人事異動」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20100703.html
●7/24:自律神経失調症とのお付合い(その118)~「プールに行ったのです」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20100724.html
●8/22:自律神経失調症とのお付合い(その119)~「箱根に一泊旅行」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-953.html
●11/27:自律神経失調症とのお付合い(その120)~「大成功に戸惑う」編
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20101127.html

息子ノマドと経済トーク。
「パパ、株ってナニ?」突然ムズかしい事聞くねえ。ある会社にお金をあげる代わりにもらう券の事で、その会社がお金をイッパイ稼ぐとちょっぴりお金がもらえたりするんだ。その券自体を売ったり買ったりも出来る。絵本の「おおきなかぶ」はあんまりカンケイないぞ。「うんとこしょーどっこいしょー、のカブみたいだとおもったー。景気はケーキみたいだしー。食べ物のナマエがおおいよね!」
「おおきなかぶ」
(あ、この絵本の原作って、トルストイなんだ!知らなかった。)


娘ヒヨコ、小学一年生が、オリジナル「人生ゲーム」を作った。

ヒヨコじんせいゲーム(さらに軽く)

<コチラで拡大>
http://blog-imgs-30.fc2.com/u/n/i/unimogroove/20100122232935809.jpg
           ↑
●上記のURLをクリックしてみて下さい。デカくなりますから。

その名も、「ヒヨコじんせいゲーム(いいにわとりになる)」
●………ウチの娘ヒヨコは、大天然系のニンゲンです。でその天然ぶりにふさわしい、衝撃的に珍妙なクリエイティヴを発揮しました。コレ他人から客観的に見たらどうなのか? しかしジブンのムスメと思うと「ありゃりゃ~キミのアタマの中にはナニが住んでいるのかな~?脳みそはちゃんと入ってますか~?」と非常に不安になる。「いいにわとりになる」という、実にユル~くヌル~いモチベーションに向かって、マヌケなイベントがアレコレ設定されてる。当然のごとくゲームとして成立は全然してない。兄ノマドの同年齢時は、ちゃんとゲームとして成立したスゴロクを大量生産してたのにな~。

●彼女の字は読み慣れないと判読出来ないので、一応テキストを書き起こします。
●右下のスミが「スタート」。時計回りにらせんを描いて中央にゴールがあります。基本、ヒトマスづつ列挙します。

・「スタート」
・「おこずかい 1000」
・「もらった 10000」
・「いえをかう ラキー /かわなくてもいい」
(注:ラキー=ラッキーの意)
・「タマゴをあたためた 3かいやすみ」
・「てでんになった。1000円なくした」
(注:てでん=停電の意)
・「ともだちと、あそんだ。おれいに100000円もらった」
(ヒヨコの絵)
・「たまごはっけん」
・「なに?」
・「おとし玉をもらった ストップ」
・「おかねもちになった それぞれ1まいか2まいもらえる」
・「まだつづく」
(ナニかに気づくヒヨコの絵)
・「な」
・「に」
・「か」
・「は」
・「っ」
・「け」
・「ん」
・「それは、ボーイフレンド / ぜったいいぽ」
(注:絶対一歩の意)
・「テレテレのひよこ / ぜったいいぽ」
(ヒヨコの絵)
(ヒヨコの絵)
・「メロメロ」
・「ゆってしまった」
(注:言ってしまった、の意)
・「それは、」
・「つ」
・「き」
・「あっ」
・「て」
・「も」
・「いいで」
・「す」
・「か」
(ヒヨコの絵)
(ヒヨコの絵)
・「ついに」
・「にわとり」
・「に」
・「な」
・「っ」
・「て」
・「けっこん」
・「ゴール いいにわとりになれた。(おまけ)
  ひよこもうまれた。/ひとりだちした くりかえし」

(注:新しく生まれたヒヨコがゲームの新当事者になって再びスタートする、の意)

●いいにわとりになれてよかったねえー。
●娘ヒヨコ(7歳)のアタマの中には、「出会い」→「告白」→「結婚」&「子供出産」という人生プランがワタガシのようにフワフワしてるんだな。

……しかし、現代日本女子の人生はもっと複雑で、多様だ。


●今期のドラマは、NTV「曲げられない女」を見ている。

NTV「曲げられない女」

「曲げられない女」 出演:菅野美穂/永作博美/谷原章介/塚本高史
●コレがイタいんだなー。主人公は法律家を目指しパラリーガルとして働く女性。しかしコレが超カタブツのクソマジメ、物事全てに筋を通さないと気が済まない、死ぬほど融通の利かないタイプ。仏頂面&鉄面皮でカワイくもない、オマケに努力も報われない、トビキリヘンテコなオンナなのですよ。うん、実にイタい。

「曲げられない女」saki

「イタい」というのは、間違ってはイケマセン、彼女の性格や生き様がイタいのではない。イタいのは、彼女を取り巻く状況。初回で10年付き合ったオトコと別れ、第二回で上司と衝突&失業し、第三回予告では実家のお母さんが病気で生命のピンチ。いくらなんでもタコ殴りではないか! 彼女元々収入少なくて、気づいたら月末の預金残高500円程度。9年もの間、深夜1時過ぎまで勉強しても試験合格の気配ゼロ。報いがない!コレがイタい!
菅野美穂と言えば、2007年「働きマン」が印象深い。アレ原作も好きだから楽しみました。キャリアウーマンを取り巻く環境と葛藤をドタバタと描くトーンは、テイストがマンガチックでも十分ヒリヒリとイタく感じられたが、それでも雑誌記者としてのプライドと仕事への達成感が主人公を輝かせてた。しかし2010年、リーマンショックからもう一年経過、現代女性を取り巻く状況はさらにヤバくなり、どうみてもますます分が悪い。司法試験浪人である主人公は、職業人としてのプライドも持てないし、失業したので生活すらがピンチだ。この世間の荒波を生き抜く為に、彼女が頼るべきは唯一ジブンの信念だけ!だから「曲げられない」のだ。「曲げる」余裕があるなら「曲げられる」、余裕もないからそれが不可能。「曲げない女」ではなく「曲げられない女」なのだ。……今期は別の局に「まっすぐな男」というドラマがあるが、ソレに食指が動かなかったのは、「曲げられない女」というタイトルにあるヒトヒネリな意味が読めなかったからだ。

NTV「働きマン」

(「働きマン」の菅野美穂。この時は、頑張れば報われると思える気分があった。今はソレもない?)

最近仕事でマーケティング分析ばっかしてるから、現代女性のライフスタイルが気になる。
女性のライフスタイルって実に多様だなあ。まずは既婚/未婚、既婚なら子供あり/なし、未婚でも一人暮らし/親と同居、そして職業の有無。このバリエーションで、女性は消費行動がガラリと変わる。だって実家暮らしと一人暮らしじゃ、同じ独身でも可処分所得が全然違うもんね。仕事を持つ女性はどんどん増えているが、年齢を経ても年収は増えていかないみたいだ…。そしたら既婚/未婚で世帯年収全然変わるし、子供の有無で出費の方向も全然違う。「世代論」では説明しきれない生活様式の差をハッキリと掴みたいと思って、アレコレ勉強中です。

「新・世代×性別×ブランド で切る!」

ブランドデータバンク「新・世代×性別×ブランド で切る!」
●20歳から、5年区切りで世代を切り分け、消費実態を調査したデータを分析する本。典型的な「世代アプローチ」なんだけど、で実にベンキョウになる内容なんだけど、ソレでモノを探る限界もこの本で思い知った。
●例えば、我が家の家族構成で考えてみる。ボクら夫婦は35歳~39歳ゾーンに所属。そしてコドモ二匹。この本のデータによると、この世代ゾーンでこの家族構成はたった18%しかいない。この世代で未婚男性は44.8%、そして20%強が親と同居。いわゆるパラサイトが、ボクの家族構成を上回ってる。ボク自身が子供の頃に見ていた家族イメージは、もはや超マイノリティだ。ボクの父親は25~29歳当時で既に子供を二人養ってたが、現在はそんな連中たったの3.7%しかいない。ホンモノの少子化を数字でピシッと見せつけられました。
●さて、「曲げられない女」菅野美穂は、役の上でも実年齢でも32歳。30歳~34歳ゾーン女子は、未婚率42.5%、子供アリ率35.6%、会社員37.2%、専業主婦34.2%…なんかゼンブ中途半端でマスがどこにあるのか掴めない!この世代の平均世帯年収は560万円らしいが、平均個人年収だと160万円。主婦やパートも含めての個人年収だから低めに見えるとしても、今の時代は稼ぐオトコをつかまえた既婚者か、実家で父母と暮らす方が経済的に有利と見る…稼ぐオトコがいないのが問題なんだけど。稼がないオトコをつかまえた既婚者はどういう気分?あーややこしいなあ!
●ドラマの菅野美穂は、もちろん独身、実家は新潟で、今はたまプラーザに月七万のマンションを借りてる(自殺者が出た曰く付きの激安物件)。9年間も勤めた法律事務所でもバイトの身分だったというから、手作り弁当に待機電源フルカットと実に堅実生活をしても、マジでパツパツの年収と予想される。見事にナイナイづくし。しかも若手有望弁護士(稼ぐオトコ!)のプロポーズを「曲げられない」信念の下に断ったのだから、もう「背水の陣」
●でもさ、この程度の「背水の陣」は、きょうび、ドコにでもゴロゴロしてるよね!「背水の陣」ってのはお金とか仕事とか結婚とか離婚とか育児とか介護とか老後とか、イロイロな意味だけど。社会全体がヒリヒリしててイタい。イタ苦しい。毎日様々な統計見ててホントにそう思う。格差がどんどん広がってるって言われてるけど、ライフスタイルが拡散してる事のウラオモテの関係にあると思うんですよ。で、このライフスタイルによっては、年収が少なくてもカネが使える人がいるし、年収が高いのに生活に疲れてる人もいる、というゴチャゴチャな状況ができてしまってる。…まだ整理されてないけど、今ボクの目の前のデータの向こうにそんな世界が広がってる感じがする。


●そんで、ハナシはイキナリ変わるんだけど。「チオビタドリンク」のCM、とてもスキです。

チオビタ

●あのCMいいよね~。自然光を大きく取り込んだ白い空気感の映像に、リラックスしたカンノとそのボーイフレンド。ドアップ目のカメラサイズで目一杯微笑むカンノ。そんで「チオ・ビタ」だ。あーあの距離感で彼女が接してくれたら楽しいだろうな~と思うなあ。ふーん、今チオビタのHPでメイキング画像見たけど、コレ女性演出家が撮ってるんだ…なるほど気分だな。
カンノさんって、ハッキリ言ってトビキリの美人さんではないと思う。もっとキレイな人はイッパイいるでしょ。そんで特別グラマーでも超巨乳でもない。女性としては超ハイランクではない。ただしココまでボクが入れ込むのは理由があるんです。彼女は一つの大事な美徳を誰よりも飛び抜けて持っている。それは「ワキの甘さ」。コレはタレント運用上の演出なのか本人の持ち味なのかその両方なのかわからないけど、非常にワキが甘く見えます。天海祐希とか黒木メイサとか松嶋菜々子は、スキがなくて、鉄壁のガードが固過ぎて、とりつくシマがないように見えるでしょ。カンノさんはワキが甘くて、とりつくシマがあるかのように見えます。
●コレ、草食系男子が跋扈する現代日本において、女子が持つべき有効な美徳だと思う。仕事ができ過ぎる、能力があり過ぎると、草食系男子はヒキます。でも、ワキが甘いと、同じ仕事能力を持ってたとしても、草食系は近寄ってきます。実際カンノさん、仕事できる人だしね。でもワキが甘いから、じわっと馴染む。同じ女子から見てもパリパリしてるより取っ付き易いのでは?憧れの対象ではなく共感の対象。
●………ちなみに「ワキの甘さ」ランキングでもう一人の重要人物は、綾瀬はるか。コレはボクの主観じゃない。さっきのマーケ本によると、「好きな有名人ランキング」20歳~54歳男子全層で、はるかちゃん、深く刺さってます。


●それでさ、この「チオビタ」CM、ここ一二年、くるりが音楽やってるでしょ。
●CMの雰囲気とくるりの楽曲が、分け難いほどガッタイしてるのですボクの中で。だからハナシはイキナリくるり/岸田繁へと飛ぶのです。

くるり「ワルツを踊れ TANZ WALZER」

くるり「ワルツを踊れ TANZ WALZER」2007年
●コレなんとなく入手した盤なんですよ。リリース時でもなく、何ともカンケイないタイミングで。ジャケが気持ちイイのと、ドイツ語?タイトルの新鮮さとかで引っかかったまで。そしたら「あ、コレ、チオビタの曲じゃん!」「ジュビリー」という曲。実際にCMソングだったのはもう2008年の頃だったのかな?そのアトにCDを聴いた。15秒だけのフレーズでカチッと刷り込まれてるのだから、高機能な楽曲だよね。「人はそれぞれのライフ…新しい場所を探して…でもキミとははなればなれ…日が暮れて見えなくなっても…手を振って夜になっても…」あのメランコリックな歌詞とメロディは、岸田繁が必殺技として持っている諦観の詩情が最もいいカタチで炸裂したケースでしょう。
●でもね、それだけじゃないのです。フルで聴いて目からウロコ!15秒じゃ聴けない部分で、ビックリするほど見事なオーケストレーションが響いているんです。三回目のサビが終わってからの少々長いアウトロに鳥肌。トロリと輪郭がぼやけたコーラスやサイケに響くギターをゆっくり押しのけながら、ストリングスオーケストラがドンドン前面にせり出してくる。ココで主客逆転。背景装置のように慎ましく突っ立ってたモノが、コチラの予想に反して突然主役に躍り出る意外性。ココが見事にポップスとしてシッカリ着地してて、THE BEACH BOYS「PET SOUNDS」に感じるような、時空の軸がズレるような奇妙な感覚まで引っ張ってきちゃった、みたいな。うわーこんな仕掛けを仕込んでたのかーと感動。
●で、クレジットに目を転じると、オーストリア・ウィーンでレコーディング、アレンジはウィーン交響楽団の人らしい。かなり本格的にオーケストラと向き合ったのね。ガブリ四つ。他の楽曲も優雅なストリングス使いに仕上がって聴き飽きない。「ブレーメン」「ジュビリー」に負けないスケール感を持ってるし、「アーナキー・イン・ザ・ムジーク」はストリングスが差し込まれるキレの良さが、シンプルなスピードロックにますますの迫力を与えている。「恋人の時計」「言葉はさんかくこころは四角」は実にチャーミング。
●でも別にクラシックとロックのハイブリットなんて珍しくないし、それこそ60年代からそんな挑戦はあるでしょ。このアルバムの魅力って別のトコロにあるんだよな~。根っからのメランコリー気質である岸田繁というソングライターが、ジャケ写にオトし込まれたヨーロッパの朝の風景みたいな陽性のオーラを、ウィーンという場所から目一杯吸い込んで、新しい希望と可能性を切り拓いた瞬間の気持ちよさ。って言って説明になります?


くるり「魂のゆくえ」

くるり「魂のゆくえ」2009年
●このアルバムの収録曲「太陽のブルース」チオビタのCMに使われてた。「ジュビリー」の目からウロコの衝撃とは違って、コッチは正直ピンとこない…イイ曲だし、岸田氏一流の諦観もココロに染みる…けど、それ以上の迫力は届かない。そもそもさ、いつのまに二人になってたんですか? ドラムが突然アメリカ人だった時もあったじゃん。岸田くんはメガネヤメてるしさ。ボクは自分がメガネだからひっかかるのさ。
●そもそもくるりに対してボクは不真面目なリスナー。入り口はセカンドアルバム「図鑑」2000年から。JIM O'ROURKE がプロデュースしたという評判が、聴く動機だった。当時はシカゴ音響派の時代だったから、その仕掛人 JIM O'ROURKE の存在はデカかった。だから、くるり、というバンドに興味はあまりなかった。
「TEAM ROCK」もよく聴いたが、「ワンダーフォーゲル」1曲だけのインパクトだった。たまたま後輩女子とあのシングルの良さで意見一致意気投合って場面があったから、アトからアルバムを買ってみた程度。「NIKKI」や二枚組ベストもお付き合いしたけど、特にコレといっての印象は…。実はアルバムとしてホントに夢中になれるのって「ワルツを踊れ」だけ、他は楽曲単位のヒッカカリしかない。
●そんなノリでコレをダラダラ流してたら、息子ノマドが「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」の挿入歌じゃないか!?と主張する。そうか??と思い調べてみると、「オトナ帝国」は70年代の歌謡曲を挿入歌としてたくさん使ってた。ほーう、70年代の日本フォークシーンと同じ聴こえ方がするんだな、こんなコドモにまで。コレは偶然?それとも狙い?岸田繁の引き出しはホント多彩だね。それはマチガイナイと思う。

くるりとユーミン「シャツを洗えば」

●今のCMソングは、「くるりとユーミン」という名義でリリースした「シャツを洗えば」
●コレがまだ入手できてない。雑誌扱いのコンビニ流通販売とはユニークな戦法を仕掛けたもんだ。宝島社、ナイスファイト。女性誌「SWEET」100万部突破の実力は伊達じゃない。ソレが故に買い逃したというのも事実なんだけど。
くるりがメジャーデビュー前だったのかな…。「クイックジャパン」というサブカル誌(現在とはテイストがかなり違ってた時代)が、くるり岸田くんのインタビューを掲載してた。コレが実に小賢しい内容。確かまだ立命館の学生だったのに、ジェイポップの構造を見切った、コレは自分たちが見出した「ユーミンコード」なるコード進行のパターンで説明出来る、と発言しまくってた…ような気がする。あくまで記憶と印象ですよ、その記事はもう手元にないしさ。でも、バンドの第一印象が悪かったのはこの記事のせいだったろうな。
●そんな彼らが、ホンモノのユーミン、松任谷由実とコラボしてるんだから、隔世の感は禁じ得ないわ。内容は、聴いてないからなんとも言えないけどね。


SINGER SONGER「初花凛々」

SINGER SONGER「初花凛々」2005年
ユーミンとのコラボはちゃんと聴けてないから、別のシンガーとのコラボを聴く。コレはオキナワ出身のシンガー COCCOくるりとその周辺のメンバーと合体したユニット。COCCO は90年代から個性派シンガーとして活躍してたのに2001年で音楽活動を一度ヤメちゃうのです。再び彼女がマイクの前に立つキッカケのキャリアが、このシングルであり、くるりとのコラボであったのでした。あと、ジャケ小さいから分かりニクいけど、久しぶりの COCCO ちゃん髪の毛短くしてて、カワイくなったなって思いました。ムカシは野趣溢れるロングヘアだったから。
●でもさ、ボクホントくるり絡みって楽曲単位のヒッカカリなのね、コレもアルバムは買ってなかった…。シングルしかねえじゃんみたいな。しかもツタヤのレンタル落ちで150円くらいで買った程度なんですよ。この曲はイイのにな。なんでボクは怠けるのかな? 今見たらアルバム、アマゾンマーケットプレイスで1円だったから注文しちゃったよ。
●作詞作曲は COCCO、アレンジがくるり軍団。爽やかに突き抜けるような COCCO の凛々しい声を、優しい春風で包んであげたような気持ちよさ。くるり(つまり岸田くんの声)にはない明るさが楽しい。音楽活動再開の離陸お手伝いとして、くるりの男子たちが実にジェントルな姿勢で COCCO と向き合ってる感じがステキ。ジャケにもその気分が出てるでしょ。

こっこちゃんとしげるくん「SING A SONG - NO MUSIC, NO LOVE LIFE-」

こっこちゃんとしげるくん「SING A SONG - NO MUSIC, NO LOVE LIFE-」2004年
●コチラは、タイトルからして明白だけど、タワーレコード限定シングルとして発売されたシングル。タワーはこのコピーの下、キャンペーンやコラボをイッパイやってますから。こっこちゃんとしげるくんは、SINGER SONGER の前身ユニットで、メンツは完全丸カブリです。この曲のサビが「シンガーソーング」っていうから、後のバンドがこの名前になったんでしょう。フィドル(バイオリン)やブルースハープがクルクルして色を添える楽しさ。実に愛くるしいフォークソング、ソフトロックです。


●…この文章書くために COCCO のコト検索したら、彼女が摂食障害と自傷行為で苦しんでるって記事見つけちゃった…。なんかボク、ちょっとオチたわ今…。その辺、もう他人事に思えないからさ、ボクは。あー同情じゃないよ、ジブンが味わったニガミがまず直接よみがえるのよ、こういう情報をキッカケに。違う病気だし、苦しみようも百者百様。それでもニガミを味わったモノとしては、複雑な感情が沸き起こるのはやっぱ否定できない。

●あー、最近、ムダに記事が長い。短くしなくちゃ。

さてさて、今日は、BECK のハナシをしたいんです。

I’M A LOSER BABY, SO WHY DON'T YOU KILL ME ?
オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ?
I’M A LOSER BABY, SO WHY DON'T YOU KILL ME ?
オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ?
 (「LOSER」1993年)

「ジャンジャンジャジャジャーん、ギューる。」間の抜けたスライドギターのリフが、ヒップホップ感覚でループされながら、ヘロヘロの小僧が支離滅裂なコトバを吐き出す。ラップのようにも聴こえるが、だらしなくてフザケてる。そして何よりも音質が悪い。リリックを訳してみたけど、ホントメチャクチャだよ。

チンパンジーの時代にゃ、オレはサルだった!
「味の素」を静脈にブチ込んで、ジャンキーから足を洗うゼ!
プラスティックの義眼と、スプレーで野菜に色塗り!
犬のエサを、ボディビルマッチョのパンストでごまかす!
ヘッドライトを切って、ギアはニュートラル!
負け犬を乗せたピカピカのレーシングカーと豪華クルーズ!
あのコは、カジノでビタミンD!
たくさんイスを拾って、ソファで寝る!
オレが狂ってワメいてると、誰かが言ってきた!
できちゃった結婚と、シャツのシミ!
オマエが呼吸してる全てを疑え!
交通違反しちまって、袖にはウジ!
闇の中で棍棒でヒゲを剃れよ!
食券だけを握って、トレイラーハウス村を焼き尽くせ!
ヨッ!終了!


でも、1994年のボクは、こんな曲に救われるような思いを感じたんです。

BECK「MELLOW GOLD」

BECK「MELLOW GOLD」1994年
●1994年のこのアルバムは本当に重要だ。ボク個人的にも、ポップミュージックの歴史においても。遠回しだけど、先日書いた FOO FIGHTERS ~ NIRVANA も絡んでくる。ちょっとボクの個人的な思い出に付き合って下さい。

●この曲を生まれて初めて聴いたのは、1993年の夏だったのかな…でもシチュエーションはよく覚えている。ボクはインカレサークル代表の座をセンパイから引き継ぐコトになり、つきあいのある関西方面の大学サークルへ新幹線に乗ってアイサツに行ったんです。…生粋の関東地方育ちであるボクは、初めて会う大阪のチームに少々ドキドキし、ボケもツッコミもできない自分は「コイツおもろないわー」となじられるんじゃないかと被害妄想的に思い込んだりもしてた。あ、ボク結構こういう思い込みが実際激しいんです。モトからね、ビョウキ体質だから。
●ただ、結局音楽系サークルの仲間、スゴくオモシロい音楽トークができてすぐ馴染めた。ミナミのレコ屋を何軒も案内してもらった。あ、あと今思い出したんだけど、先方のリーダーがおチビのカワイい女の子で、その子の関西弁がスゴくかわいかったのが一番ボクを安心させたんだ…当時はダウンタウンみたいな関西のイメージが強かったから。彼女、確か希望のレコード業界に就職したはず…今はナニやってるだろう。
●で、その最初のアイサツの場面の時、サークル部室でかかってたBGMがこの曲だったんですよ。すっごく覚えてる。当時はロックとヒップホップのミクスチャーってのが成功してる例ってとても少なかったし、フォークギターを荒っぽく演奏してるようなロウな音源をサンプルするなんてアプローチは誰もやってなかった。だから、とにかく斬新だった。ロックなのかヒップホップなのかもわからなかった。東京から一緒にやってきたボクのセンパイすらもが気になったらしく、思わず曲名を尋ねてしまったほどだ。「あのさ、この曲、誰の?」「あ~コレですか? BECK っていう人の「LOSER」って曲なんですけど、アタシもよくわかんないんですー」なにしろこの段階ではインディレベルの流通、しかもネットメディアも発達してないので、正体不明の新人はホントに正体不明のままだった。BECK というオトコの正体が明らかになるのは、1994年のメジャーデビューアルバム「MELLOW GOLD」(もちろん「LOSER」を一曲目で収録)がリリースされてからであった。


なぜ今この曲、そして BECK に注目したいと思ったのかというと…。
ボク自身が「負け犬」だからです。そしてボクの世代が「負け犬」。「オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ?」


年末年始にかけて、ボクは世代論マーケティングの勉強をしてたんです。仕事でね。
●…この辺の分析は広告業界周辺で活発に研究されてるし、実際そのへんの資料もホンも参考にしてて…でもジブンの仕事の数字実績とどのようにリンクするのかどのように活用すべきなのか、コレがピンと来ない。イヤイヤ、経験的な皮膚感覚はシッカリあるつもりだけど、明確な理論的裏付けがない。
●だから今のプロジェクトになんのデータが必要かってコトから一人で考え始めて、イロイロな部署からデータやグラフを借りて、そんで結局、それこそ様々な世代の一日の行動様式を15分単位で算出するような(26.3%の35歳女性が8時15分までに外出/出勤するってトコまで探り当てる)細かいデータ作りにまでツッコむハメになった。あ、しかも予算ゼロだから全部ボクのソロ活動…外注したらナンボかかる?
●だからですね、マジで安定剤をモリモリ飲みながら、カイシャの外のドトールで午前中の会議ゼンブサボってズーッとエクセル文書を眺めメモを書き留めるような生活をしとったんです。…ボクが会議をサボってドトールにいるというコトはその後バレてしまい、最近はベローチェに場所を変えてたりもして。夜は夜でジブンのデスクで表計算しまくる。ジブンの推測と計算値が重なると、ヨシ!ドンピシャ!と楽しくなっちゃったりもする。予想が外れたら、ナゼ外れてるか理由を突き止めるためのデータをイロイロな人にメールして探す。「ご希望の資料、ちょっと違うかもだけど似たのがあります。あ、それとその辺詳しいハナシがこんな本に書いてありますよ」「2005年の調査になっちゃうけどイイ?ホントは新しいのがイイよね?それとこの前渡したヤツはもっと新しい2009年版が見つかった」皆さんありがとうございます!
●そんで今週、やっとこのデータをまとめあげ、そのデータに裏付けられた戦略プランまで練り上げて、ガツッとプレゼンブチカマしたんですよ。エラい人も「なるほどなるほど」ってハナシ聞いてくれし、フーッ!コレで一区切りだぜ!と思った……んだけど、トップの上司が「コレはコレでいいんだけど、コレとはちょっと違う別の考え方で戦略を分析してほしいなあ」……あらそうキマシタか!いやーシレッとおっしゃいますけど、それチャブ台ひっくり返す勢いの発言すよ!でも構いません気合い入れ直すまでですから!……ということで、ボクのドトール/ベローチェ生活はまだしばらく続くコトになった。あのブレンドコーヒーをボクは何杯飲めばイイのか?


●ま、そんなコトはどうでもよくて。


「世代論」を考えるってコトは、様々な年齢の人が経験してきた人生史をなぞる作業なんだよね。団塊の世代の人生史には、終身雇用と高度経済成長があって、素朴な東京・アメリカへの憧れ、郊外にマイホームを建てることが目標ってのがある。コレ始めたら長いからもう書かないけど。
●ただ、50歳代、40歳代の上司たちにプレゼンする時、アレコレの質問を浴びせかけられる時、常に微妙なズレを感じる。この人たちはいわゆる「バブル世代」で高度消費社会を謳歌した世代。ソレはボク自身がバブル以降の「ロスジェネ世代」であるからという違和感と、同時にそれだけじゃないナニか別の違和感を感じる。
●そもそも、「世代論」のような広告業界的マーケティング手法そのものが80年代バブル世代が生み出した思考様式(糸井重里みたいなスターが広告分野から生まれたとか)。実は21世紀を分析するのに有効な手段でなくなっているのでは?とすら思えるんだ(雑誌「広告批評」廃刊とか)。だって60年代は政治思想(支持政党/左翼右翼ノンポリ)で集団がグループ化されてた時期なんだよ。今の世の中はそんなじゃ分析できないじゃん。
●だから、きっとドコかで広告業界アプローチも10年代において機能不全を起こしてる。ロスジェネよりさらに若い世代、「IT世代/ゆとり教育世代」には全く新しい別の分析様式が必要な気がするんだ。まだワカンナいけど……例えば、年齢ではなくメディア接触様式でグルーピングするとか。ソコはナゾ。ボクだけがザラリと感じる理論的裏付けのナイ感触。


●でも、この仕事のナカで、自分の人生史、世代論でいう「団塊ジュニア~ロスジェネ」のど真ん中とされる36歳としてのボクはナニモノなのか、という問いに直面しなくてはいけない場面があった。たった4歳差程度なのに、40歳「バブル世代」とはまるで思考様式が違うし、自分の両親の世代とも違う。今の部下の20歳代とも違うんだ。

ボクは「負け犬」だ。
●80年代の学歴競争社会で育てられたのに、90年代バブル崩壊/就職氷河期に晒され約束されてたはずの終身雇用は壊れていった。そして社会人生活を十数年続けていながら、無為のままに00年代の低迷を許し、社会を明るくすることも出来なかった。団塊世代/バブル世代のように「昔はよかった」という経験がないので「負けた」という思いが強い。その「昔はよかった」を100%知らない20歳代以降は「負けた/勝った」という意識がない。ボクらだけが「負けた」世代なのだ。

バブルという時代は、高度消費社会の頂点というだけあって、消費しなくちゃ楽しくない時代だったんです。
●つまり、カネがあれば楽しいけど、カネがなくては何にも楽しくない!90年代前半を高校生~大学生として過ごしたボクに、カネがあるか?あるわけないでしょ!あの当時は「アッシー」「メッシー」とか言って、オンナノコとデートするにも自動車からレストランまで全部オトコの負担が当たり前だ!その上ヴィトンシャネルだを買ってオンナノコにプレゼント出来るか?ボクは酒が一滴も飲めないが、一気コールでどれだけ酒が飲めるか、どれだけ高級なワインを飲んだことがあるか、結果ナンボお酒にカネを突っ込むかが自慢のタネになる。そんな時代が楽しいと思えるか?!ハッキリ言ってボクは「バブル時代」がダイキライだ!金持ちだけが楽しい社会など、もう一度来ると言ったら拒絶するね。なにが「ITバブル」だ、あの当時20歳ソコソコの小僧が小賢しくも「バブル時代って文化的にもアリだと思うんですよ」とヌカした時はマジでケチョンケチョンにしてやった。オマエはただの菊池成孔カブレだ!あの時も結局堅実な人だけが生き残った。

●そんな時代状況が、バブルに乗れないボクら時代の脇役を、グランジ/オルタナティブロックのようなイビツで崩れた表現に引きつけた。だから NIRVANA KURT COBAIN がヒーローになり得たわけだ。SONIC YOUTH PAVEMENT のように、自分たちの価値基準で自律自足するアーティストに魅せられたのだ。ボクらはバブルに踊らされない。地に足をつけた連中だけを信じる。…ボクの調査レポートにも書いてある、「団塊ジュニア~ロスジェネ」:オリジナルの価値観で自分独自のベストライフを。堅実志向で情報を取捨選択する。メディアに冷静。ちなみに「バブル世代」:情報感度の高さは今も衰えず、最新のスタイル/流行に敏感。ハイランク志向でややミーハー。他人よりもベターライフ。
●しかし、1994年4月。KURT COBAIN が死んだ。あの喪失感は若かったボクにはデカかった。自分が「負け犬」だってコトはわかってた。それでも、そんな「負け犬」でもヒーローになれるチャンスがあるって信じてた。その象徴が KURT COBAIN だったのだ。でもそんな彼に死なれちゃったらどうするよ!この先マジでお先真っ暗じゃん!やっぱ「負け犬」は負けたままか?
●話が回りくどくてホントにゴメンナサイ、そこで BECK なんですよ。この「MELLOW GOLD」のリリースは1994年3月。KURT 自殺の前の月。レーベルは GEFFIN NIRVANA と同じ(ちなみに SONIC YOUTH も)。BECK は、本当にドンピシャのタイミングで KURT COBAIN とスッと入れ替わるように登場したのんですよ。しかもこのタイミングで、ヤツはこう叫んだんですよ!「オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ? オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ?」もうね、偶然にしても出来過ぎてる。社会のスミッコからそのままのスタイルでスターダムにのし上がった KURT COBAIN が周囲の無理解の中で死んでしまった(殺されてしまった、と言い換えてもイイ)のに対して、もっとデタラメな表現手法でだらしなくラップする白人のコゾウ BECK は完全に開き直って言い放ったのだ。「オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ? オレは負け犬だゼベイビー、さあオレを殺してみろよ?」オマエらなんかに理解されようとは思わない、負け犬のママで結構だ、殺すほどの価値もない。それがどうした上等だ。コレ以上のチカラ強いメッセージはなかったし、「負け犬」「負け犬」のママでイイんだ肩肘張る必要なんてねーんだよと、ボクらに教えてくれたのだ。コレが BECK のファーストアルバムの歴史的意味。


BECK「ODELAY」

BECK「ODELAY」1996年
BECK というオトコがナニモノかが、この段階からだんだん分かってきた。本名 BECK HANSEN。オジイさんが AL HANSEN という前衛芸術家とのこと。このジイさん、1960年代のアートシーンを席巻した芸術家集団フルクサスのメンバー。オノヨーコフルクサス一派だからね。そんなアートな血筋に生まれたが、本人はロサンゼルスのチカーノ系エリアで育ち(BECK 自身は血筋で言えば北欧系だよ)、高校をドロップアウトしてからはギター片手に放浪生活。ヨーロッパからニューヨークまでをフラフラ。ヤケクソなフォークシンガーとして、どんなトコロでも歌うウザイガキだった。「長距離移動のグレイハウンドバスの中でライブをしたことがあるぜ、ガンズのカバーをしたんだ」ってハナシをどっかで聞いたことがある。ソレって人目を気にせずバス車内で突然ウタを歌い出すイタいヤツってことじゃん。
「LOSER」は住所不定の BECK がトモダチの家に転がり込んでた時に、サンプラーをゴチャゴチャイジくって作った曲だったはずだ(記憶不確か)。ある意味では偶然の産物。その証拠に「MELLOW GOLD」ではリズムマシーンやサンプラーを使った曲は「LOSER」以外では「BEERCAN」という曲だしか見当たらず、あとはヤケクソなフォークソングばっかだ。…厳密にはポストパンク状況で生まれた、アンチフォークってスタイルらしいんだけど。
●しかし、このサンプラーを使ったヒップホップのミクスチャー感覚に手応えを感じたのは事実だ。この領域に BECK はもっと突っ込む決意をする。新たに手を組んだのはプロデューサーチーム THE DUST BROTHERS。BEASTIE BOYS のセカンド「PAUL'S BOUTIQUE」1989年を制作した連中だ。この後には映画「ファイトクラブ」のサントラなども手掛ける。
●コレが世界のシーンの未開拓領域を切り拓く傑作になる。「負け犬」スタイルが実に90年代らしく高度に洗練されていく。チャーミングで気取らないマヌケさ加減。やる気があるのかないのかワカラナイそっけないボーカル。ソレでいてポップなサンプリングセンスが絶妙。技術は取り入れつつも、換骨奪胎してラップとかヒップホップとかはカンケイないトコロに到達した新型ポップミュージック。…今聴くと、この手法は普及し過ぎてて新鮮に聴こえないかも知れないけど、リアルタイムでは大変な事件だった。こいつタダの「負け犬」じゃねえ。新時代の「負け犬」だ。

BECK「THE NEW POLLUTION」

BECK「THE NEW POLLUTION」1997年
「ODELAY」からカットされたシングル盤だ。リミキサーがユニークだったので買ってみた。なんと APHEX TWIN がアルバム一曲目「DEVIL'S HAIRCUT」をリミックスしてる。90年代という時代を切り拓いてった天才同士のコラボだ。「RICHARD'S HAIRCUT」と曲名を変えちゃってるんだけど、うん、なるほど、原型がほとんど残ってない。ボーカルトラックを2倍速再生して、APHEX TWIN 自身が開発した様式ドリルンベースに再構築されちゃった。


BECK「MUTATIONS」

BECK「MUTATIONS」1998年
BECK は、ギター一本でウタを歌うフォークシンガーからキャリアを起こした男なので、基本はアレンジとは関係ない部分でウタゴコロを大切にする。このアルバムはヒップホップミクスチャーやダンスミュージックのアプローチからグーッと引き下がって、実に内省的な表現に向かった作品。あの「ODELAY」のニギヤカなサンプルマジックを期待するとスパーンとスベル。ぶっちゃけ、「ODELAY」第二弾を期待してたリアルタイムのボク自身がスパーンとスベッた。見事ウラをカカレた。
●フォークのアプローチとは言いつつ、バンドを駆使した甘美なサウンドデザインがサイケデリックにさえ感じられる、不思議な穏やかさに包まれている。参謀として加わったプロデューサーは RADIOHEAD などを手掛ける NIGEL GODRICH。この男、その後の BECK にとっての重要人物に。結果、ヤケクソ小僧が少し成長した。イヤ、しっかり成長した。
●この年のフジロックに、BECK は参加。ボクもこの時に初めて BECK のパフォーマンスをみた。1998年のフジロックはまだ2回目。苗場に定着する以前で、なんと東京湾岸、豊洲エリアで行われた。現在、築地市場の移転候補地になってるバショだ。ドコもフジじゃないね。ま、苗場フジじゃないけど。一日目のオオトリ一個手前。ちなみにオオトリは BJORK だった。
BECK がどんなライブを見せるのか期待して思ってたんだけど、なんか大幅に予想を裏切られた。サンプラーとかでガッツリ作り込んだトラックで歌うのかなーなんて思ってたら全然違う。大所帯のださいメキシカンバンドみたいなのを連れてきて、ドカドカ賑やかに演奏しまくる。そんで本人もCDで聴かせるような低いボソボソ声じゃなくて、超ハイトーンボイスで歌いまくる&踊りまくるんですわ。ぶっちゃけ、やってる曲はほとんど聴き覚えがなかった。アレンジを大幅に改訂してるのか?リアルに未発表の新曲なのか?でも全然退屈しなかった。最高に楽しかった。「LOSER」を演奏してもソレが沈むほどにライブ全体がハイテンションだった。BECK 本人はこの「MUTATIONS」のジャケどおり非常にキュートな好青年で、しかもプレイボーイのウサギマークのシャツを着てて、猛烈にサービス精神満載で、ホントにオレ音楽大好き!って全身で表現してた。ザッツ・エンターテイナー。
●英語のMCだからうまく理解出来なかったけど、多分彼はステージでこんなコト言ってた。「海に夕日が沈んで行く。なんて美しいんだ。東京はなんて美しいんだ。このステージで、フジロックで演奏出来て本当に最高な気分だ!」豊洲の会場は東京湾に面してて、その上をレインボーブリッジが走ってる。そしてちょうどソコに夕日が沈んで行くんだ。その時さっと巨大モニターに映し出されたステージ上 BECK 本人目線からの風景は本当にキレイで、10年以上の時間が経ってもその記憶は鮮明に残ってる。そしてボク自身が、この東京という街をとても誇らしいと思ったコトもよく覚えている。


BECK「MIDLITE VULTURES」

BECK「MIDLITE VULTURES」1999年
豊洲フジロックのパフォーマンスは、このアルバムのために準備されてたスタイルだったのか、と知ったのは苗場で初めてのフジロックが行われた99年暮れの、このアルバムのリリースタイミングだった。ここに収録されてる音楽が豊洲でやってた曲と同じかどうかはわからないが、やってる気分はまんま反映されてる。ホーン隊を従え、バンジョーをかき鳴らし、声が裏返るまでハイトーンへ歌い上げて行く。シングルカットされた「SEXX LAWS」はそういう曲だ。サンプルも使ってるかもだが、基本は人力で弾き出すゴッダ煮ファンクロック。そして強烈なバカサワギ感。楽しいぞコレは!イギリスでは FATBOY SLIM が世界制覇へ驀進してた時期だ。その人力版を BECK は目指してた。…しかしホントに引き出しが多い人だ。フォークからヒップホップ、ソウル/ファンク、テクノハウス、エレクトロ、ブラジル、チカーノまで貪欲にジャンルを横断してソレを全部自分の血肉に置き換える。そして新技ウラ声ファルセットが PRINCE みたい。ちなみに二曲で THE DUST BROTHERS と共闘。
●ジャケットのケバケバしいケミカル感覚ムキダシのアートワークは、日本が世界に誇るアヴァンギャルドバンド BOREDOMS の中心人物・山塚アイが担当。日米の「負け犬」「負け犬」のスタイルを研ぎ澄ますことで新しい世界基準の下に結びついた瞬間。


BECK「SEA CHANGE

BECK「SEA CHANGE」2002年
●時代の区切れ目を乗り越えて、2002年。そんでまた NIGEL GODRICH と組んでスローテンポで内省的なアルバムを作った。カレ、回遊魚のように正しく循環するんだよね、THE DUST BROTHERS と組むダンスアルバムと、NIGEL GODRICH と作るスローアルバムの間を。でコレが2巡目だ。……正直このアルバムはリアルタイムではあまり聴かなかった…ちょっとメランコリックすぎる。ボソボソ系のボーカルに戻っちゃったし、アレンジに斬新なトリックが見出せなかった…。
●実はコレは彼の失恋傷心アルバムなんだって。長年付き合ったガールフレンドと別れたコトが大きく作品に影を落としているという。……そうか。そういう事情なのね…。いやコレ今回聴き直して印象変わったんです。このボクが個人的に抱える自律神経失調症状況の中で今聴き直すと、この繊細さが実はシットリと優しいんです。キツい仕事のアトで「もうダメだ」とうつの深遠に落っこちそうになる時、典雅なストリングスアレンジが見事に精神のササクレを慰めてくれる。一曲目「THE GOLDEN AGE」四曲目「LONESOME TEARS」がツボ。その他にもイイ曲がイッパイ。「SUNDAY SUN」の諦観を通り越した清々しさも涙チョチョ切れ。ボクがビョウキで痛まなかったら、このアルバムの良さには気づけなかったな。
●ツアーは、たった一人のアコースティックライブと、THE FLAMING LIPS をバックに従えたスタイルの2つが行われたそうな。THE FLAMING LIPS ってのはなんか興味深いなあ。あのバンド大好きだ。このアルバムのアレンジをよりふくよかにするに違いない。


BECK「GUERO」

BECK「GUERO」2005年
THE DUST BROTHERS と仕事する時間が来たぜ。「ODELAY」で連中に潜在能力を覚醒させられた BECK「MIDNITE VULTURES」では自分一人でやってみようと思ったのか、ダスト兄弟と組んだのは2曲だけ。しかし、「MELLOW GOLD」をブチカマして10年経ったこのタイミング、プライベートでは失恋を克服して新しい女性と結婚&子供が誕生、もう一度ガッツリダスト兄弟と組んでオレの音楽を更新してみせる。そんな気合いに満ちあふれた作品。スローとダンスの両方をハイブリットしたサジ加減が新境地。
●多分、ダスト兄弟も進化した。トラックはサンプラーやシーケンサーを駆使しつつも、バンド演奏に見劣りしない見事な粘りを醸し出すファンクになってる。ヒップホップのテクニックをこんなに盛り込んで、全くヒップホップに聴こえない。そんなビートの上で、BECK は自由に歌う。ソレはラップにもなればフォーキーなブルースにもなり、NIGEL GODRICH とやってたような音楽だってやりこなす。ギターをフランクにつま弾き、ブルースハープだって吹く。
「GUERO」というタイトルは、チカーノ・コミュニティで育った彼のアイデンティティを示す。「GUERO」はスパニッシュで「白人のボウヤ」という意味のスラングだ。少年時代の BECK 自身が、街を歩くだけでよく声をかけられてた。「おいゲンキか?そこのグエロ!」白人のクセしてチカーノ社会に育ったが故に、彼は自由に音楽ジャンルを越境して、ロックやフォークをヒップホップやラテンビートと合体相対化してジブンの表現にしてしまう。
●共演者にも言及。トモダチ付き合いをしてる THE WHITE STRIPES JACK WHITE が1曲でベースをプレイ。ダスト兄弟つながりで、BEASTIE BOYS がクレジットに入ってる曲があり、そっからまたつながって、BEASTIE のキーボーディスト MONEY MARK が1曲でオルガンを弾いている。この作品のリミックスアルバム「GUEROLITO」では、やはり BEASTIE の一員 AD-ROCK がリミキサーに加わってる。他には EL-P、DIPLO、BOARDS OF CANADA、AIR など。エレクトロニカ系ユニットから、アブストラクトヒップホップまで網羅。DIPLO のその後の大活躍を考えると、目の付けドコロがよ過ぎる。


BECK「THE INFORMATION」

BECK「THE INFORMATION」2006年
●はいはい、その通り。今度は NIGEL GODRICH の出番だ。三回目のローテーションだ。つーかほぼ切れ目なくリリースされたこのアルバム、実は前作「GUERO」とほぼ同時進行で制作されてたらしい。だって制作開始が2003年というからね。難産だったようです。
●でもその仕上がりは実に軽やか。「GUERO」ダスト兄弟の芸風だけじゃない持ち味をもったように、この「THE INFOMATION」NIGEL の芸風であるメランコリックな音響モノだけじゃなくなった。むしろダスト兄弟を連想させるビートミュージックが満載だ。 調べると、なんと NIGEL から持ちかけたらしい。「今度はヒップホップを作ってみたいんだ」。へ~。そんで BECK は言う。「ある意味じゃヒップホップだし、ある意味じゃそうじゃない。今まで NIGEL と一緒に作った内省的な音楽もヒップホップもある。そしてその2つを統合した新しいモノがあるんだ」
●その NIGEL 風のヒップホップをタップリ賞味。「NAUSEA」のズムズムモサモサしたビートは21世紀版「LOSER」とも言えるような、洗練されつつも漂泊され切らない荒々しいファンクが宿っててカッコイイ!BECK のビート感覚や低い声が元来持ってるホコリ臭いニオイは、ボクの好きなミドルスクールヒップホップにもつながる感覚がある。ただし、トラックが踊ってても曲によっては BECK 特有のメランコリー漂うウタゴコロが切なく響いてる。そして、ソコに差し込まれる不思議な音の破片がユニーク…結果として実にワザアリ。ポップに聴こえるが聴き飽きない仕掛けが目一杯。
●プロモビデオも楽しい。このアルバムのプロモは MICHEL GONDRY などがガッツリ入って制作してるからドレもワザアリです。低予算だけど、それなりの楽しみと味がある。ボクが ITMS からオトした「NAUSEA」のPVは、BECK 本人は完全不在でスケーターが街中を気持ちよくスベリまくるバージョン(この曲のプロモは数種類あるらしい)。そんで iPod に入れて見てたら息子ノマドがソレに大関心、なんとスケボーを買ってくれと言い出したのだ。…うわーオマエ自転車もギリギリじゃん…ボクに似て運動神経イケテナイからなあ…なのにスケボーとか言ってヘイキなの?とは思いつつも、「遺伝的に見てオマエにはスケボー無理」というのは理不尽なので子供用スケボーを買ってやったのだ。コレ2年以上前のコト。
●で、そのスケボーは、完全にボクの予想通り、速やかに玄関の片隅でさみしく忘れ去られた存在となってしまった。しかしつい先日、ヒヨコが一輪車を買ってもらって練習を始めた時、ノマドは自分のスケボーの存在を思い出し、引っ張り出して滑ってみたという。そしてコレがなかなかうまくイったようで、本人大満足。「オレおおきくなったから、なんかスケボーのれるようになってた!」まー実際どれだけ乗れてるかはボクは見てないけどさ。じっくり目指せスケーター。……とっとっと、完全にハナシが脇道にそれた。
●今クレジット見て気づいた…。BECK はありとあらゆる楽器を演奏してる。アコギ、エレキ、メロディカ、ピアノ、オルガン、プログラム、スクラッチ、ベース、シタール、ハーモニカ、カリンバ、ドラム、グロッケンスピール…。マルチプレイヤー。そんで最後に GAMEBOY って書いてある。あ、ゲームボーイも楽器なんだ…。どんな音をどうやって使ってんだ?


BECK「MODERN GUILT」

BECK「MODERN GUILT」2008年
●で、今んトコの最新作。順番としてはダスト兄弟…のはずが、別人です。ココでローテーションが破れた!今度のパートナーはヒップホップのトラックメイカー DANGER MOUSE。元 GOODIE MOB の個性派MC CEE-LO とユニット GNARLS BARKLEY を構成してる奇才。出世作は伝説の「THE GREY ALBUM」THE BEATLES「THE BEATLES(通称 THE WHITE ALBUMから勝手にサンプルした音源でトラックを組み、JAY-Z「THE BLACK ALBUM」のラップパートを乗っけてしまった、驚異のマッシュアップアルバム。コレ聴く機会があれば是非チェックを!特にビートルズを愛してる人、衝撃を受けますよ!そうキタか!的な荒技がスゴいから。ボクは笑いました。もしかしたらハラ立つ人もいるかも。そんなヤツを参謀に迎えてしまいました。
●しかし、内容は全然ヒップホップになってません。あくまで BECK 独自のビートミュージック。一瞬60~70年代のフォークロックにも聴こえる「CHEMTRAILS」を始め、音のザラツキ具合が21世紀のモノと思えない。この鳴り/古めかしい空気感を録り収める DANGER MOUSE ってマジでナニモノ? ホントヒップホップのトラックメイカーなの? ビートルズの音源の生々しさを損なわずにループミュージックに変換したセンスは、やはりタダの思いつき一発屋とは一線を画す腕前。一方でメロディ含めニューフォークな音響が鳴るのにビートだけは高速ドラムンベースという楽曲「REPLICA」もビビる。そしてボソボソしてた BECK のボーカルに、枯れた侘び寂びが漂ってきた。
●クレジットに見当たらないので見過ごしそうになるけど、二曲で女性シンガーソングライター CAT POWER がバッキングボーカルで参加してます。アメリカンインディシーンの良心とも言えるレーベル MATADOR で活動する彼女は非常に注目すべき存在だけど、この場においてはハッキリ言って存在感全然ないッス。

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●2009年に来日した BECK。プロモーション来日だったのかな?写真はラジオの取材の時の写真。確か「R25」のインタビューも受けてた。内容は全然オモシロくなかったけど。イツモの長髪がサッパリしてて、アンディ・ウォーホルとイメージがダブってると思った。これで39歳。枯れた味わいが成熟を表す。


BECK のキャリアは、信頼のおけるプロデューサーと彼自身のハイブリットな音楽感覚でドンドン洗練されてゆき、ポップミュージックのフロンティアへどんどん突き進んで行くカタチのモノになった。コレがメジャーデビューの「MELLOW GOLD」から最新作「MODERN GUILT」の流れ。
●しかし、やっぱり彼の芯には、「負け犬」としてのクソ根性が常に備わっている、とボクは思ってる。ジブンのスタイルに実直で忠実。周辺の評価にも惑わされない。コレが彼をホンモノにしている。だから敢えて、もう一回最初の1994年に立ち戻って、彼のインディ音源に迫ってみたい。
●そしてソコで強調したいのは「ロウファイ」というキーワード。


BECK「STEROPATHETIC SOUL MANURE」

BECK「STEROPATHETIC SOUL MANURE」1994年
●シングル「LOSER」の予想もしないブレイクで一気に注目を浴びた BECK は、メジャーと契約を進める一方で、1994年の一年だけでインディアルバムを二枚もリリースしている。「MELLOW GOLD」と合わせれば、一年で三枚のアルバム量産だ。コレってスゴいでしょ。コレは若い彼がデビュー以前に温めてたストック楽曲なのか? でも25歳にならない彼が、しかも放浪のヒッピー野郎が、ソコまで準備出来てたか? では彼が天才で無限に曲をひねり出すコトが出来たのか? ボクは別のカラクリがあると思う。ヒントは1994年ならではの「ロウファイ」状況だ。
●最初に言っておくと、このアルバムは280円程度で購入した。でね、マジで内容がその程度のモンなわけですよ。90年代の「負け犬」側の気分は、ホントにデストロイに荒廃し、ホントにヤケクソだったので、80年代的洗練から100万光年くらい離れたいという気持ちでイッパイだったと思う。そんな気分を象徴したのが「グランジロック」だし、NIRVANA であった。しかし、その NIRVANA がメジャーで活躍してる時点で、インディシーンは更なる深みにハマってた。それを「ロウファイ」と呼ぶ。ボクとしては常識用語だけど10年代に突入した今では死語ですから、敢えて丁寧に説明します。
あまりに粗雑な録音環境と、技術の拙さップリと、ステバチなヘタウマテイストが究極まで突き詰められて、楽曲としてコレは成立してないんじゃナイの?というレベルに至った表現をですね、敢えてリリースし「買えるもんなら買ってみやがれ」なんて姿勢に立っちゃうのが「ロウファイ」。そんな考え方がフツウに存在してた。パンク革命が完全に浸透し、DIY精神が極致まで進んだ結果、四畳半でカセット録音したようなダメダメ音源でもアリじゃねえの?的な発想が、フツウに存在してたのだ。BECK の初期音源はまさしくそういうシロモノで、耳障りが最悪なデストロイ音楽だった。ホントにポンとひらめいたアイディアをそのままガリガリ鳴らしてそのまま終了みたいな感じ。で、ほとんどがただのワルフザケにしか聴こえない。こんなんだったら大量生産も利くわけよ。このテのアーティストがホントたくさんいて。ちょっと名前出す? DANIEL JOHNSTON でしょ、HALF JAPANESE でしょ、SEBADOH とその関連バンド、初期 PAVEMENT、PUSSY GALORE(後に JON SPENCER BLUES EXPLOSION へと改組)、WEEN、TRUMANS WATER ってのもいたっけ。THE PALACE BROTHERS もキツいロウファイフォークだった。LIZ PHIAR もある意味でロウファイ。BEN LEE も彼のバンド NOISE ADDICT も結構ロウファイしてたような…。あ、でも基本はみんなマジメに音楽に立ち向かってるの。ただね、感覚が世間と大幅にズレテて、フツウの人がイイと思う領域には関心がないの。みなさんコダワリはあるけどソレがアサッテの方向なの。ね、イッパイいたでしょ思い出してきたでしょあの時代を。
●ただし、ボクらは小室哲哉の作るピカピカのバブル経済ジェイポップより、チンピラ白人が作るデタラメな音楽こそが自分たちの感覚に近いと感じていたし、「こんくらいのモンは余裕で買ってやるよ」という根性もあった(←ナンの自慢か?)。ノイズミュージックやアヴァンギャルドに寛容でもあった。苦行のようなノイズの音塊をヤセ我慢して聴いてたモンね。…ボクはホントに自分で感心しちゃうんだけど、この「ロウファイ」というバカげた音楽潮流を真っ正面から通過したことで、コレより最悪な音楽はナイという発想の下、どんな音楽でも聴けるようになったもんね。くだらないジェイポップでも、聴いたこともない国の民族音楽でも、ナンデモ聴けるようになっちゃった。
●とにかくそんくらいこの BECK の音楽はヤケクソで、実に90年代的で、10年代においてマジでゴミになってる。

BECK「ONE FOOT IN THE GRAVE」

BECK「ONE FOOT IN THE GRAVE」1994年
●コレは今の価値で180円だったよ。うん、まさに値段にふさわしいヤケクソフォークだよ。もちろんジャケ右のオトコが BECK。初めてこの男を知った時のイメージはまさにコレ。ヨレヨレの服、だらしなく伸ばした髪、人を喰ったような表情。そんで音はホント辛気くさいロウファイフォーク。ダルいし、覇気もない。音も粗末で、テキトーな感じが漂ってる。そしてこの時代においては、その気分こそが心地よかった。ギラギラの六本木とかに出てチャゲアスのカラオケ歌うのはボクには正直シンドイ。ワンレンボディコンのオンナノコなんて興味持てなかったし、そんなトコには行かずにダラダラしたかったんだよ。その空気がこの現在180円の音源に保存されてるというわけ。
●このアルバムは、シアトルの隣町で KURT COBAIN も暮らしてたコトのある街オリンピアを拠点とするレーベル K というトコロがらリリースされた。この K というレーベルはとてもユニークなんで90年代に興味がある人はチェックして下さい。一方でもうコリゴリですという人は、聴くと絶対損しますので忘れて下さい。K の主宰で自分でも音源を作ってた CALVIN JOHNSON という人が特にユニークで注目。結局このアルバムに「LOSER」のようなヒップホップアプローチの曲は存在しないんだけど、この人は自分の力で「LOSER」のスタイルを掘り下げて行く。…そこはまた別の機会にお話ししましょう。


●またムダに長い文章になった。誰も読まないのに。……こうやって、すぐに悲観的な感情に走ってしまうのが、ボクが「負け犬」であるイチバンの証拠なんだよね。NIRVANA についての関連記事、リンクしておきます。ご参考に。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20081001.html


●蛇足だけど。

ハロルド作石「BECK」34

ハロルド作石「BECK」34巻
●このロックバンドマンガも完結したね。そんで映画化されちまうことになった。水嶋ヒロ佐藤健作者のロック愛が迸る快作でした。音楽ファンならニヤリとできるパロディも仕込まれたりしてて。感覚がダブるのは、この人も年齢が近いからかな。BECK 1970年生まれ、ハロルド作石 1969年生まれ。


今日は、会社でモリモリ残業してた。かなり必死で。
●もう大量のマーケティング資料でデスクが洪水状態になって、様々なグラフが角膜に焼き付くほどガン見して、かなり必死にレポート作ってた。マジで一心不乱で。……その一方で、ウチの職場にはテレビがある。で「ゴチになります」新メンバー発表スペシャルとかやってるワケヨ。そんでナゼか22歳女子であるボクの部下は、ボクの隣でギャル雑誌(「小悪魔ageha」とか)をめくりながら、そのテレビ見てんの。つーか、ナニしてんの早く帰れよ。「いや、コレ、リサーチなんで。」なんのリサーチだよ?コッチはマジで明日の期限合わせでテンパッてんのよホントウザイから。
●そんで「ゴチ」ナイナイ岡村さんが散々もったいつけた上で、とうとう紹介されたのが、佐々木希ちゃん。は。「あ、佐々木希なんだ…」ボク思わず言っちゃった。「unimogroove さん、やっぱ気になってるじゃないですか。ゴチ。」……あ、なんか負けた感じ、22歳女子に。悔しい…。「つーか、ウチタメなんすよね佐々木希。この娘マジ自腹キりきれるんすか。どんだけ稼いでンの?」てかオマエなにもん?やっぱ帰れよ早く!

●あと、mixi で、なんの主体性もなく誘われるがママに、「サンシャイン牧場」とかいうアプリを始めちゃった。なんで残業でテンパッてるのに、メチャ遅くに家帰ってきてるのに、ボクはPCに向かって野菜育ててるんだ? ワイフ「これまた不毛なコト始めたねえ」言うなソレを!

音楽の聴き方の世代格差、ってトコロから今日のおハナシは出発。
●結構前の「R-25」で、石田衣良がコラムでこんなコトを言ってた。「オーディオを真空管アンプに替えたら、音楽を聴くのが楽しくなった、今は昔聴いてた音楽を聴き直すのが楽しい」とな。今読んでる三浦展「下流社会」の著者)も、「LPじゃないと癒し効果はナイ、キレる若者が増えたのはCDのせいだ」とまで書いている。
●このテの「アナログ神秘主義」ってのは、ボクには正直ピンとこない…。ボクはアナログもCDも音楽ファイルも聴くし、再生機器もBOSEスピーカー&アンプから、iPod、フツウのCDラジカセに、防水お風呂CDプレイヤーと四種類を使い分けてる。お風呂スピーカーはかなりショボイ装置だが、お風呂エコーがかかってワリとオツなもんである。要するに、聴く音楽の種類によって向き不向きのあるってコトだと思ってる。「オリジナル盤主義」「デジタルリマスター再発主義」も(ましてや「紙ジャケ主義」など!)、より高額なオカネをボクに使わせようと言う売り手の仕掛けだと思ってたり。エイベックス「DVD特典テンコモリ主義」の方が真っ当な付加価値だよ。コレはボクより年上の音楽ファンの人に対する違和感。

でもさ、最近衝撃を受けたのは、ボクより若い人の音楽の聴き方に対する違和感。
携帯音楽プレイヤーに接続する小型スピーカーを見せてもらったのよね。おサルさんのヌイグルミのカタチで、音楽を鳴らすと一緒におサルが踊り出すのよ。シャカシャカ鳴って、クネクネ踊る。……いやカワイいよ、おサルはさ。でもさ、ミンナはこの音でイイの?シャカシャカじゃないか。えっ!イイの?!マジで?コレしかスピーカー持ってないの?!PCからイヤホンで聴くからいらないって?あっそう!オジさんはそんな意見にちょっとショックだよ。

おさるのスピーカー(踊るおサルのスピーカー。)

●ちなみに、コレ、3990円。オーディオにこの程度しかカネかけないなら、3000円のCDアルバムは買わないよな…音楽業界の未来は暗い…納得。23歳の従姉妹のコは「アルバム買っても好きな曲はイッコか二コ、着うたフルで十分」って言うのさ。でもさ、着うたフルって300円くらいして、通信料別でしょ、ツタヤでアルバムレンタルするのと比べると格段に割高じゃん…あ、レンタル屋行くのも面倒なのか。


一方で、共通する言語がナイわけではナイ。FOO FIGHTERS。
●職場の若者(25歳、ボクより10年以上年下)と音楽トークしてた。カレは高校球児のクセしてパンクキッズで、坊主頭に革ジャンでライブハウスに通う少年だったそうな。で、ポッケにMDレコーダーを仕込んでライブの様子をブート録音するようなヤツだったという。だってダイブとかモッシュとかするんだろ?それで録れるの?「コレが意外と録れてるんですよ。その音をお昼の校内放送にかけさせたら、過激な歌詞ばっかだったんでセンセイに呼び出しクライましたけど」へ~。
●そんで、ナゼか NIRVANA のハナシになったわけさ。で、カレが言う。「unimogrooveさん、FOO FIGHTERS も聴きます?」うん聴くよ。「あのバンドの人、NIRVANA のドラムだったんですってね!オレ、後から知ったんですよ。FOO FIGHTERS も NIRVANA も大好きだったのに、同じヤツがやってたなんて!ビックリしましたよ!」うぉーそう来たか!ボクもありゃビックリしたんだよ、KURT COBAIN と一緒に殺伐としたロックをやってたヤツが、突然オレ楽器何でも演れるンですって突然言い出して、そこで作った音楽がメチャメチャ明るいロックで。オマエ芸風全然違うじゃんってさ。「unimogrooveさんから見るとそうなんですか!リアルタイムですもんね。オレは KURT が死んだ時からのアト聴きなんです」見方が時代/世代のウラオモテで違うんだけど、DAVE GROHL というミュージシャンが、NIRVANA FOO FIGHTERS という2つのバンドで全然違うキャラを見せてるってコトは共通認識。それがちょっとオモシロかった。

nirvanaのDAVE GROHL(右が DAVE GROHL。NIRVANA 時代)


だから今日は FOO FIGHTERS の音を聴いてる。

FOO FIGHTERS「FOO FIGHTERS」

FOO FIGHTERS「FOO FIGHTERS」1995年
コレが衝撃のアルバムだったんだよ。一曲目の「THIS IS A CALL」でぶっ飛ばされた。この陽性のロックはなんだ? 当時はグランジロックの時代、陰気で殺伐としたロックが当たり前の雰囲気が支配してた。そこにこの前向きに力強いメロディと骨太のビートはある意味異質だったし、とにかくコレがあの NIRVANA のメンバーが鳴らしてる音楽だってコトに誰もが驚いてた。負のオーラ満載のまま地獄の業火に焼かれた NIRVANA の燃えカスから、こんな見事な生命力が立ちのぼろうとは…まだ KURT の死がシーンに大きな影を落としてた時期、DAVE GROHL の復活劇は不死鳥のように鮮やかだった。
●この段階の FOO FIGHTERS DAVE のソロプロジェクトで、ほとんど一人で全部の楽器を演奏している。アレコレ調べると、NIRVANA 以後の DAVE は身の振りように悩んでいたようだ。シアトルグランジの先輩 MELVINS からも仕事をしようと声がかかってたし、TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS の常駐ドラマーにならないかとも誘われてたらしい。「残りの人生全てを、オレは他のバンドの一ドラマーとして過ごしていたかも知れない。しかし、オレは誰も期待してないようなコトをしたいと思った。曲を書くのもウタを歌おうとするのも楽しい。そこにオレをヘコますモノは誰もいない」ここから奇跡の大逆転が始まったのだ。

FOO FIGHTERS「THE COLOUR AND THE SHAPE」

FOO FIGHTERS「THE COLOUR AND THE SHAPE」1997年
●この二枚目前後でバンドの体裁が整ったみたいだ。LA パンクの伝説的バンド THE GERMS に所属してたギタリスト、PAT SMEAR が参加したってのが話題になった。末期 NIRVANA のサポートに彼が関わってたのが縁らしい。立派なパンクである彼は、その後バンドを出たり入ったりと落ち着きがないような立場になるんだけど。
●好きな曲は「MONKEY WRENCH」。高圧力なパワーポップで王道ロック勝負をかます。そして「MY HERO」。ダイナミックに歌い上げるサビがココロを震わせるミドルチューン。…着うた世代のコトを批判出来ないな、ボクはこのバンドに関してはアルバム単位というより曲単位で好き嫌いがある。引っかからない曲は引っかからない。

FOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」

FOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」2005年
●アルバム二枚をスルーして、久しぶりに聴いたのは2枚組の大作。ここで引っかかったのは「BEST OF YOU」だよ。とにかくプロモが印象的で。DAVE GROHL の顔面アップを効果的に使い、マイクをしゃぶるように歌うヤツの克明な表情を映し続けるアプローチ。「IS SOMEONE GETTING THE BEST, THE BEST, THE BEST, THE BEST OF YOU ?」ザベストベストベストベストオブユー!ベスト連呼!テンション上がります。この曲一つに引っかかって…でも二枚組は少し分量が多過ぎるかな。
●後半ディスク2はアコースティックセットをメインに据えた、落ち着いた楽曲だけで構成してます。レイドバックしつつもウタゴコロに温もりを感じさせる気分が NIRVANA のアンプラグドライブを連想させる。よく見ると、NORAH JONES までが参加してるんだ…。久しぶりに聴いたら、ちょっと楽しかった。この時期にアコースティックツアーも展開したらしく、芸風の幅を膨らますキッカケになった模様。

FOO FIGHTERS「ECHOES, SILENCE, PATIENCE  GRACE」

FOO FIGHTERS「ECHOES, SILENCE, PATIENCE & GRACE」2007年
●またアルバムを一枚スルーして、今の所最後のアルバムになってる作品がコレ。とか言って、ゲットしておきながらほとんど聴いてなかった。久しぶりに聴くなあ。王道一直線のポップパンクアプローチから、「IN YOUR HONOR」のロック/アコースティック二面体制を経て、1曲の中でアコギスタイルからラウドロックへ展開するメリハリある曲作りに取り組む姿勢が読み取れる。特に後半ね。円熟する大人のロックって何なの?って問いが見えるかも。前半にあるシングル曲などはシンプルに高機能なポップロックですよ。「THE PRETENDER」&「LONG ROAD TO RUIN」
●それと「BALLAD OF BEACONFIELD MINER」という曲にはイイ話が。短いアコギのインスト曲なんだけどね。…2006年、オーストラリア・タスマニア島ベーコンフィールド炭坑ってトコロで落盤事故があったんだって。その時生き埋めになってしまった二人の炭坑夫を救う為にレスキューが稼働。五日間にわたる救出作業の中、彼らが閉じ込められてる場所の12m手前まで接近。直径9センチの穴を掘り抜いて、水、食糧、通信機を炭坑夫たちに届けるコトが出来た。すると、彼らが穴の底からリクエスト。「iPod に FOO FIGHTERS の曲を入れてよこしてくれないか」。家族の手紙と共に彼らは音楽を受け取ったという。コレを聴いた DAVE GROHL 本人はすぐさま現場にファックス。「オレはツアーで移動中だけど、ココロはキミらと一緒だ。キミらが無事に帰ったら、オレのショーのチケットと冷たいビールをおごりたい。どうだい?」その後ホントにシドニー公演で炭坑夫の1人と DAVE は会い、ビールを酌み交わしたと言う。そんで、彼らに捧げるアコギ小品をアルバムに織り込んだわけだ。イイヤツだね。


FOO FIGHTERS の歴史を総括する巨大ライブ。

Foo Fighters Live at Wembley Stadium

DVD「FOO FIGHTERS - LIVE AT WEMBLEY STADIUM」2008年
●イギリス・ロンドンにある巨大アリーナ WEMBLEY STADIUM でライブをするのはアーティストにとっては実に感慨深いコトのようだ。2007年にオープンした9万人収容可能の巨大会場。ココでソロ公演をしたヤツはそんなに多くない。OASIS、U2、MADONNA、COLDPLAY など10アーティストほど。その中に FOO FIGHTERS も加わった。1997年から加わったドラマー TAYLOR HAWKINS がスゴく楽しそうに演奏する。彼のボーカル曲も披露されるしね。PAT SMAER も途中で登場。「こんな大観衆の前でヤルのは初めてだ」と気合い十分の DAVE。NIRVANA で一度テッペンをとった男が、もう一度テッペンをとった瞬間。 そんなライブの模様を収録。
●そして DAVE は感極まって、MCの途中で言葉を詰まらせちゃうのよね。ココ泣き所。「一応言っておく。ウェンブリーで演奏出来て…(涙)…本当に光栄だ。だからこのチャンスを生かしたい。そして結成以来の最高の夜にしたい。オマエら全員のため、8万6000人のバカ共に最高の夜を届けたいんだ。この特別なショーのために半年もの期間をかけて計画を練った。ここは特別な国だ。オマエらが今のオレたちを作り出した……だから特別ゲストを呼んだんだ!」
●ココでビックリ!ステージ左右から出てきたオッサン二人…は、JIMMY PAGE & JOHN PAUL JONES!英国音楽が生んだ伝説 LED ZEPPELIN のギター&ベースだ!楽器を構える二人の生ける伝説を迎えて、DAVE はドラムセットの前に座る。そしてドラマー TAYLOR がボーカルマイクを握った。そして…
DAVE が勢いよくドラムを叩く!LED ZEPPELIN の名曲「ROCK N' ROLL」のイントロだ。NIRVANA のトリオとしてドラムを叩いていた DAVE の姿がこの時スッとよみがえる…伝説のハードロックチューンを伝説の男たちとプレイしながら、NIRVANA という伝説も透けて見えるのだ。このサプライズは感動的だよ。 「今日はオレの人生で最高の日だ。このバンドの14年の歴史を讃えてくれ」伝説の男たちとの演奏を終えて、DAVE はそう言う。そしてラストソング「BEST OF YOU」を会場全員と合唱するのだ。
●この巨大ライブで燃え尽きてしまったのか、FOO FIGHTERS はこの後から活動休止状態になる。DAVE GROHL NIRVANA FOO FIGHTERS2つのバンドで伝説を作った。カレ自身も伝説の男になったのだ。そしてまた新しい伝説を作る為に戻ってくるのはいつの日か。

Dave-Grohl-Wembley.jpg(DAVE GROHL。WEMBLEY での勇姿)


●その他の NIRVANA 関係者の音源も。


HOLE「LIVE THROUGH THIS」

HOLE「LIVE THROUGH THIS」1994年
KURT COBAIN の奥さん COURTNEY LOVE のバンド、セカンドアルバム……彼女が世間に注目されたのは、やっぱりシンガーとしての成功ではなく「90年代のシド&ナンシー」としてのゴシップの対象になったからだと思う。KIM GORDON にプロデュースされたファーストがほとんど無視された上、KURT との結婚でプライヴェートが混乱する最中になんとか作り上げたアルバムが本作だったのに、発売日の一週間前に KURT が自殺。ドンピシャすぎるバッドタイミングと世界を駆け巡る衝撃の中でリリースされたこの作品を、あの当時誰が冷静に聴けただろう? ボクも正直リアルタイムではマトモな感覚で聴けなかった。ゴシップとドラッグに爛れきったボロボロのロックオンナが呻いてるだけと思った…ジャケすらが虚栄にまみれた気分を煽る。オマケに、この年にはバンドの女性ベーシスト KRISTEN PFAFF もオーバードーズで死んでるんだって。
●今冷静に聴けば…やっぱりウンザリする内容でドス黒い気持ちになる。彼女の音楽にウンザリするんじゃない、90年代という時代にウンザリするんだ。あの頃はバブル崩壊直後で時代そのものがウンザリした気分に包まれていたし、極端な露悪主義がロックの中に巣食ってた時代だったんだわ…ソレをクッキリと思い出させてくれる…あの時代のヤケクソ感覚が久しぶりに甦って、口の中が苦くなる。暗黒の90年代。COURTNEY の酒ヤケしたようなデストロイな声、ルーズなバンドサウンドや鬱々としたメロディ、そして悲しいほどのボロボロな告白を綴ったリリック。この退廃が90年代の正体だと思えば、KURT COBAIN は死ぬべくして死んだのかも知れないし、DAVE GROHL の華麗なる転身は本当に希有だった、と思える。

SWEET 75「SWEET 75」

SWEET 75「SWEET 75」1997年
●もう一人の NIRVANA、ベーシストの KRIST NOVOSELIC は一体ドコに行ったのか?KURT とは DAVE GROHL よりもズッと長い付き合いだった彼は、KURT の自殺にはかなり参ったはずだ…酒乱で知られた彼がバンドメイトの自殺の後は禁酒したって話もあるくらいだから。DAVE GROHL FOO FIGHTERS をバンドとして組織する中で彼を誘ったらしいが、KRIST はソレを断っている。
●代わりに自分で立ち上げたバンドが、この SWEET 75 だ。ココで登場するのはベネズエラ系の女性シンガー YVA LAS VEGAS 。落ち込む KRIST を友人が励まそうとして開いたサプライズパーティで彼女がウタを歌ったのがキッカケで知合い、結局バンド結成にいたる。スペイン語楽曲も歌う彼女はオルタナロックのシンガーにふさわしい貫禄がある…んだけど、なんか深刻にブサイクなんだよねコレどうしたらいい? 音楽はやはりこの時代特有のルーズなロック。やっぱスペイン語ってのは新味に聴こえるし、カントリーミュージックにも挑戦してるが、総じて凡庸な仕上がりってのが率直な印象かな。このバンドは本作だけしかリリースできず解散する。そして今、激安ワゴンを一生懸命探せばこのCDは100円でゲットできる。

YVA LAS VEGAS

(右が SWEET 75 のシンガー YVA LAS VEGAS。う~お世辞にもスウィートとは言えない。)


●過去に NIRVANA KURT COBAIN について書いた記事があります。ソチラもご参照に。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20081001.html


コドモたちと一緒に、「日本科学未来館」@お台場に行った。

日本科学未来館(館長は宇宙飛行士の毛利衛さん。)

コレは自律神経失調症を患うボクにとって偉大なるチャレンジなのだ。
ボクはビョウキを患ってから、コドモたちが楽しめるような場所にボクが連れて行ってやるコトができなくなった。自動車は売却したし、体力も衰弱したので、買物や食事にも行けなくなった。旅行などもっての他、学校の行事ですら、時間をうまく計算して半分だけ参加するという具合だ。ディズニーランドもキッザニアも、ボク不在でコドモたちは遊びに行く。しょうがないこととは言え、コドモが大きくなるにつれ、それがちょっと悔しいと思うようになってた。ボクじゃなければ経験させられないコトがあると思ってたんだ…ソレが博物館だ。

博物館に行くってのは、楽しい。ボク自身が子供の頃大好きだった…あのワクワク感はタマラナイ。ボクの息子ノマドもホントにノビノビと楽しむ。ビョウキになる前、度々連れて行った博物館や水族館でアイツが見せるワクワクの表情がタマラナく好きだった。図鑑や本を与える時にもそういう表情を見せる。そんな「知的好奇心」は、ボクがヤツに遺伝させてやれたたった一つの美徳だ…完全にオタク気質ってコトだけどね、そりゃこのブログを見てもらえばボク自身の性質もご理解できるでしょ…コレが明白に息子に遺伝したワケだ。ノマドはジブンの関心領域には非常に粘着質なので、博物館に行けば「もうココはイイだろ」って位に粘っこく食らいつく。ソレに付き合うのは大人にとってホントに大変なコトで(ヤツは本気で閉館時間まで遊び尽くすツモリだし)、同じ気質を備えた父親のボクでなければ、ヤツの好奇心を満足させられないだろうと思ってたのだ。

●で、今日は約3年のブランクを空けての博物館だ。ボクのビョウキの回復ぶりを計る大きなチャレンジだし、ボクとコドモたちの突っ込んだコミュニケーションのチャレンジだ。やっぱり電車移動はボクの体力では無理なので、自動車をボクの実家の父親に出してもらった。「今日は、オトコのほうが多いネ!」ジジとパパとノマド、3世代オトコ。このフォーメーションはノマドには新鮮らしい。ボク「そうだノマド!博物館はオトコの世界だからな!」

P1105981.jpg(シンボルマークの巨大地球儀)

●しかし、この「日本科学未来館」ってのは内容が難しいね!最先端科学の紹介がマジで最先端すぎてわかんないよ。人工光合成の研究について8つぐらいのアプローチをパネル紹介してるんだけどハイレベルだわー。それでもボクはノマドの脇にピッタリ沿い立ち、ノマドの理解出来るコトバで難しい内容を一生懸命噛み砕いてやる。ワイフにはコレができない、ボクにしかできないコトなんだよな…ノマドとオモシロポイントを共有できるボクじゃなきゃ。
●アレコレ見ましたよ…。8つのタイヤを節足動物のように動かして走るロボットやソレの操縦システムのデモとか、国際宇宙ステーションの居住棟(宇宙飛行士の小さな個室に無重力対応のトイレ)とか、潜水艦しんかい6500とその調査で採取された深さ1500mの海に住んでた真っ白いカニさん(きららちゃんというナマエがついてた)とか、H-2Aロケットが搭載してる直径2.5mのエンジンとか、人間の内臓や脳、眼球の模型がバラバラになる組み立て式の立体パズルとか、白黒のボール16コを16ケタの二進法データと見立ててソレが文字情報として伝わるインターネットの原理を説明する展示とか。うーん、文字にするだけでも難しいなあ。結局展示のゼンブをキチンと網羅出来なかったけど、キッチリ閉館時間まで楽しみました。ヒヨコは癒し系アザラシの赤ちゃん型ロボット、パロちゃんをナデナデ出来たのがウレシかったらしい。

P1105984.jpg

(DNA (RNA?) の塩基配列とタンパク質の生成システムを積木で学ぶノマドヒヨコとボク。)


なんで今「日本科学未来館」なのかっていうと、事業仕分けの対象になったから。
●このニュースの時、初めてココの館長が毛利衛さんだってコトを知った。お台場をドライブすれば自然と目につく不思議デザインの建物、ニュースで話題になるほどの内容って?毛利衛さんのセンスならばワルいことはないだろう、なんて興味も実はあった。実際ベンキョウになったし、ボランティアのスタッフさんが大勢フロアにいて熱心に解説してたのも好感が持てた。結果、息子ノマドに明白なメッセージも伝えることができた。帰りの駐車場へ歩く途中、ノマドにこう言えたからね。「日本は小さい国だから、みんながイッパイ勉強して、最先端の科学を作り出していかなきゃいけないんだ。ノマドもあの博物館で紹介される研究をしてみせるくらいにならないとな」

●しかし、ノマドの時代はさておき、ボクの時代は難しいコトになってる。
●あの「事業仕分け」で、この博物館は、予算縮減の努力/運営組織構造の見直しって宿題を課せられてた。この博物館だけじゃない、日本全体が組織構造の見直しを迫られている。自動車を出してくれたボクの父親も JALトヨタの不振を憂う。ボクの従事する業界もかなりのピンチ。そして日本は今年でGDPで中国に抜かれちゃうんだってさ。経済大国日本の三位転落。必殺仕分け人・蓮舫議員の「世界で2位じゃダメなんですか?」はナニゲに笑えたが、さて蓮舫サン、世界で3位はどうですか?
●…そして、ボクが今週読んでいたマンガは、奇しくもそんな国内外の気分を反映してしまったような舞台背景を持った作品だったんです。

福島聡「機動旅団八福神」10巻

福島聡「機動旅団八福神」1~10巻・完結
●日本全土の米軍基地に中国が特殊爆弾で一斉攻撃。そのまま日本は中国の覇権下に置かれ、日本人はアメリカ人を相手に戦争をしている。そんな時代の物語。新兵器「福神」を巡って様々な思惑がうごめき、その新兵器を操縦する兵士たちは世界の荒波に翻弄される。先日紹介した「フリージア」コチラの記事)でも日本は戦時下にあったが、社会は混乱して退廃の極みにあった。この作品の日本は国家としての尊厳を失い天皇陛下はスイスへ亡命、「環東軍」なる軍隊に支配されている。主人公たちは、その「環東軍」への志願兵。凸凹ヘソ曲がりの面々たちが集められ理不尽な訓練を経て到達したのは、絶対防御パワードスーツ「福神」。核攻撃にも耐えられる強力なジェル素材で作られた最新鋭兵器だ。

●まるで野比のび太を連想させるメガネヘタレの主人公・名取不二夫は第一巻で上官にブン殴られながらこんなセリフを吐く。「自分は考える軍人であります」。ヘタレのくせして、かつ自分がナニをしようとしてるかわかってもないクセして、コイツは戦争に行く。軍隊に加わる。……しかしコイツは「考える」。確かに常に考える。自分がナニと戦って、自分がナニを成すべきか、考える。「フリージア」の登場人物はもれなく狂ってた/病んでた。しかし「福神」の登場人物たちは、もっとも理不尽な組織「軍隊」の中、常に考え続けるコトで正気を維持し、そして着実に自分のルールをデザインするのだ。が故に、彼らは中国人兵士とも結ぶコトができるし、武器商人とも結ぶコトができる。仲間として結束することが出来る。この物語が過酷ながら前向きな逞しさを感じさせるのはそのポイントにおいてである。

「フリージア」は殺人を合法化して「特殊なゲーム」として描いた作品だ。「福神」もある段階で戦争をゲーム(「疑似戦争」または「茶番」)と捉える所へ到達する、この最終巻で……結果としてココがこの作品を非常にユニークで興味深いモノにしてる…。「福神」は絶対防御。そのスーツから出ない限り絶対に死なない。主人公は「福神」の性質をフルに活用し、人を救う戦争/戦闘とはナニかを必死に模索する。自分が一体ナニを守るべきか、絶対に防御すべきはナニか、考え続けるのだ。…結局、日本の主権は回復する事もなく、大国のエゴが地球を軋ませる現実は変わらないが、主人公たちは人間一人が成す事の範囲でキチンとオトシマエをつける。

●……ホントに中国が世界を支配するかはよく分からないし、ある意味でどうでもイイ。そんな心配をモジモジグズグズする前に、考えるべき事を考え、成すべき事を成せばイイ。ソレだけで十分なのだ。日本という国が傾いても、日本人は世界を舞台に活躍できるはずだから。ノマドヒヨコにはそういう大人になってもらいたいね。チャンスがあるなら、上海にでもムンバイにでも移住するとイイ。



日本のターンテーブル技術は、世界水準。
●ある日、例によって音楽のDVDをリビングで見とりました。するとコドモたちがとあるポイントに注目した。バンドのスミッコで不思議な事をしている人物を見つけたのだ。ソイツは、レコードプレイヤーの上にテを置いて、なにやら意味の分からない作業をしている……とコドモは言う。ああ、ターンテーブリストっていうのよあのヒトは。レコードをコスルと、ヘンな音が出るのよ。キコキコキュワッキュワッ、ボワッ、ドズドズドズ!ってね。
●そんで、ボクのターンテーブルとDJミキサーで、そのヘンテコな音を出してやった。キックの頭をヘッドホンで見つけて、コスル。ドズ!ドズ!適当に一回転ほど逆回転させる。クルキュワワワ!ね、へんな音がするだろ。このクロスフェーダーってのも大事なんだわ。コッチによせると音が出て、反対にすると音が出ない。わーオモシロい、ちょっとヤラセて!とコドモたち。このプレイヤーの針の部分は、曲がっちゃったらダメだから丁寧にやるんだぞ。赤ん坊の頃のノマドに、左右2つのプレイヤーの針をいっぺんに折られて、パパかなり凹んだコトあるんだからな。

DVD「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP 2007」

DVD「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP 2007」
●パパは難しい事は全然できないんだけど、ウマい人はスゴい技をイッパイ持ってるんだぞ。世界大会まであるんだからな。というコトでこのDVDを見せた。ご存知の通り、ターンテーブリストの技術を競うあの有名な世界大会「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP」の様子を収録したモンだ。うーん、オモロいね。アメリカ、ヨーロッパ各国は言うまでもなく、ウクライナ、中国、メキシコ、南アフリカからも参加者が集まってきている。当然日本人もね。

「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP」の歴史は1985年まで遡ることができるらしい。実は大会の本拠地はヒップホップ生誕の地アメリカではなくイギリス・ロンドンなのだ。当時は「ターンテーブリスト」という概念がまだ成熟してなかったので、第二回大会では準優勝のDJがブチ切れて司会者のマイクを奪い、こう叫んだという。「コレはミキシングのコンテストなのか?スクラッチのコンテストなのか?一体ドッチだ!?」
●そこから毎年、スクラッチを軸にしたターンテーブルトリックが沢山生み出された。1990年代にはサンフランシスコのフィリピン系DJ、Q-BERT や、BEASTIE BOYS のDJ として活躍する MIXMASTER MIKE が登場。この辺は、ターンテーブリストとして独自のアルバムをリリースする存在になってる。MIXMASTER MIKE のパフォーマンスは、BEASTIE BOYS「THREE MC'S AND ONE DJ」で是非チェックして!速攻で YOU TUBE へ!プロモとしても笑えて最高!(リンクしてみました…MIXMASTER ! CUT ! CUT ! CUT FASTER !)
●そして90年代末にこの大会を支配した DJ CRAZE!1998年、1999年、2000年と、三年連続で優勝した伝説の男。他にも A-TRAK、日本人DJ AKAKABE などが活躍する。……00年代ド頭、ピアトゥピア技術、つまりナップスターが登場した瞬間、ボクは一番最初にこの大会の音源を検索した。DMC の様子は当時音としてメディアにほとんど流通してなかったので、こういう手段でボクは CRAZE のプレイを聴くしかなかった。…そん時思ったのは、ターンテーブリズムってのはもうヒップホップの技術ではなくて、もうハウスやドラムンベースすらを呑み込み、独自の音楽領域を作ってるってコトだった。

2002年は重要な年だ。DJ KENTARO が登場、日本人として初めて優勝、世界制覇を勝ち取ったのだ。まだ二十歳前後だったカレの快挙は、日本のDJカルチャーが成熟しているコトを証明した。ボクは世界大会優勝直後時期のカレのプレイを見ている。アレは青山のクラブだったかな……DJブースを真上から見下ろす吹き抜けのフロアから、カレがターンテーブルの上でナニをするのか興味津々で見つめてた。生でターンテーブリストの演奏を(そして手元の操作を)見るのは初めてだったからね、アレはビックリしたなあ。薄いテープをベットリ貼られた12インチヴァイナルと、色とりどりのシールでマークされた12インチヴァイナル。針がテープの上に乗っかる度にズボッ!という大きな音が鳴るので、その音をベースのリズムに仕立てる。そしてマークされた音を正確なタイミングで叩き出す緻密なスクラッチ。それでもナニやってるのか今だに全然理解できてないんだけど。

2007年の大会にも日本人選手が二人も出てる。ジャジーな音源で地味ながら正確なプレイを奏でる DJ MIYAJIMA(実に日本人らしい情緒ある表現)、そして2006年大会にも参加し、今回もかなりのトコロまで勝ち上がった DJ YASA。……人種を問わず、様々なDJが様々な言葉で自己紹介し、様々なトリックを駆使して戦う。陳腐なコトバですが、音楽は国境を超えます。ミネラルウォーターのペットボトルをターンテーブルの上にトンと置き、それをスティックで叩く事でボン!ボン!と音を鳴らすヤツもいた…もうなんでもアリだな、針に振動が伝われば全てが音になる。ある意味で自由な世界だ。そしてその自由競争の中で、高い能力を発揮する日本人がいる。
ディージェーケイリーなどなど、ジェイポップでクラブプレイをしたり聴いたりするスタイルが一般化したコトを先日の記事に書いて(コチラの記事)、日本のDJカルチャーはクるトコロまでキたなって感じてたんだけど、その一方で、ターンテーブリズム世界の最先端水準に日本人は立派にアプローチしてるってワケで。そしてコレもまたDJカルチャーの成熟ってワケで。……そもそも、クラブカルチャーの世界水準になってる名機 TECHNICS SL-1200シリーズ は日本製品なんだしさ。ヤレるヤツはヤっていけるのさ日本人ってのは。



●2010年の楽天的日本人を代表しそうな大河ドラマ「龍馬伝」、今週も見ました。…広末涼子って高知出身だから土佐弁ネイティヴなんだよなーと、つまらないコトに気づいてしまった。ただ、それだけ。


●なんとか今週を乗り切った…イロイロな意味でタフだったが、手応えはあった。



今日は家族みんなで「もののけ姫」を見てました。

もののけ姫

●テレビでやるっていうから、ノマドヒヨコがすっごく楽しみにしてました。
●ところがドッコイ、このおハナシは難しい。人間の逞しい進歩への努力と、畏怖すべき神聖なる大自然の間に生じる切ない矛盾。その摩擦と軋轢の中でボーイミーツガール。エボシ御前がシシ神さまの首を撃ち落とした瞬間、ノマド「やっちゃいけないコトをシチマッタ!」と思わず絶叫。ヒヨコはコワいコワいとカオを突っ伏し、ノマドはクッション握りしめてマバタキも出来ない様子。番組終了後、あまりの虚脱に、その場でバッタリ倒れて寝てしまいました。
●今朝になってヒヨコ「もののけってナニ?」と聞く。「もののけ」「物の怪」だから「妖怪」って意味かなあ。ヒヨコ「もののけ姫はもののけをカブッテたオンナノコってイミ?」…いや彼女がかぶってたのは「物の怪」ではなく「モノの毛皮」であって、ソレはストーリー本旨とはあまりカンケイないだろう。

もののけ姫サン

(ファーファッションがお好みの、もののけ姫・サン。)



●クリスマスに向けてカウントダウンするお楽しみカレンダーってあるじゃん。

アドベントカレンダー

●こんなヤツ。ホントは「アドベントカレンダー」ってのか。その日の部分をペリッとめくるとイッコお楽しみが出てくる。でもコレってあくまでクリスマスだけの物件でしょ。

しかし、その「一月ヴァージョン」ってのを、ヒヨコが勝手に作ってる。

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●どうコレ?
●一月一日にはカガミモチの絵が描いてある。二日は…ロケット?「あのタケのとんがってるヤツかこうとおもったらシッパイしちゃったの」ああ門松のつもりね!あとはネコちゃんとかパンダさんとかヒツジさんの絵が仕込んであるという。…そんで1月5日のトコロだけマスがデカイ。ヒヨコにとって神聖な日だからだ。ジブンの「おたんじょうび」なのだ。ケーキの上にひよこさんが描いてある。「いちご 1がつ5にちはいちごのひ」とも書いてあるし。彼女の中には、ジブンはストロベリーな運命の下に生まれたという自負があるのだ。

●ということで今週は、バースディパーティだったわけだ。

P1055959.jpg

そしてヒヨコは、大量の「シルバニアファミリー」をゲットした。
●実はコレ、「シルバニア森のキッチン」@吉祥寺で売られた、1月2日初売り限定20個の「シルバニア福袋」。コレ買う為に、ワイフとヒヨコは朝から行列してました。中身も吟味できたようなので、イチイチチェックしながら選んだらしいけど、ヒヨコは大量の商品にアレコレ迷い過ぎて、結局ジブンがナニを最終的に選んだのか忘れてしまった!「フクブクロのナカミなにが入ってるかなー?ワクワク」……自分で必死に選んで、それを瞬間的に忘れて、そして改めて中身にワクワクできるって、ある意味スゴい才能だなあ。呆れるのを通り越して、尊敬するわ。
●で、実際中身を開けてみると、ホントにスゴい量のアイテムが出てくる!大小10アイテム!ワイフに聞く…おいおいおいおい、あのさコレマジでナンボした…?「でもね、コレは全部シルバニアの「青箱」っていって、イギリスからの逆輸入版だから元からスゴく高いの、コレ一個でも5000円くらいするの」いや言い訳はイイからひとまずナンボよ?「…一万円。」キタよ……ワイフは生粋のドールハウスマニアであるので、完全にヒヨコ側のポジションに立っている。ジブンでも楽しむつもりだ。
●しかし実際よく見ると、その細かいツクリ込みは、さすがドールハウス文化の根付いているイギリスならではの立派な水準でビックリする。1センチ四方の積み木箱には8~4ミリの積み木が詰まってるし、5ミリのカップケーキや7ミリのクレープ、6ミリのオレンジなどなど、細かいパーツが200個くらい出てきた。あまりに細か過ぎてボクは気分が悪くなるほどだったけど。そしてそんなシルバニアキットに囲まれて天国気分のヒヨコなのでした。

●そんな天然ヒヨコのアートワーク。
●非常に理屈っぽい気質のアニキノマドに対し、イモウトヒヨコは実に感覚的なオンナノコであり、天然チカラで駆動するイキモノであります。そんなヒヨコが紅白歌合戦を見ながらラクガキをしておりました。次から次へと登場する贅を尽くした衣装にインスパイアされたスケッチのようです。シルバニアの子たちもおります。

ひよこの紅白スケッチ

●ヒヨコ、このトリは…?「つる!つるがでてきたの!」ああ、鶴ね。鶴はオメデタイ生き物だからね。



で、今週のボクは、珍しくプログレなんて聴いてるんですよ。

YES「FRAGILE」

YES「FRAGILE」1971年

YES「CLOSE TO THE EDGE」

YES「CLOSE TO THE EDGE」1972年

●年末からボクのココロの健康は微妙に荒れている。すると聴く音楽にもソレが反映されたりするようで、普段聴かないようなモノに手を出したりするみたいだ。ハッキリ言ってプログレッシヴロックに関してボクは門外漢
●このプログレ世界の超ド級有名盤がナゼ今週のヘビロテになってるんだろう?多分「FRAGILE」の邦題「こわれもの」ってフレーズに揺らいだんだと思う。うん、ボクのハートは今かなり取扱注意。もう一枚「CLOSE TO THE EDGE」の邦題は「危機」。今週は完璧にテンパッテルもんなあ。イロイロな意味で危機だ。
●とか言ってるけど、このCDの内容がそんなにナイーブかっていうとそうでない。さすが超有名盤。ヘビロテに耐え得るキャッチーさがあって実に取っ付き易い。胃もたれ起こして何回も聴けないタイプの音楽ってあるけど、そんでプログレってジャンルは聴くのにそういう覚悟が必要な物件がままにあるけど、この二枚はそうじゃない。ポップとして十分な弾力性があって、実に楽しい。だから何回も聴いてるんですね。YES というプログレ大看板バンドの、一番幸福だった時期の作品という評判は、なるほど強い説得力がありますねえ。

YES に見出す GROOVE 感。
●プログレ世界では評価の定まったこの作品に、ボクがアレコレ言い足すコトなんてナイし、この音楽のどの辺がプログレッシヴ(=進歩的)なのか指摘するのもおこがましいので、そんな話はしません。でもボクは unimogroove と名乗ってるだけあって、基本的に GROOVE 感やダンスミュージック機能にコダワって音楽を聴いてる人間ですから、この二枚のアルバムが持つ GROOVE 感について語りたいわけです。あっ、クレグレも強調しておきたいんですけど、メチャ GROOVY ですわこの音楽。プログレってホントスゴく幅の広いベクトルに向けて進歩的であったもんだから、GROOVE 感で音楽を捉えるボクの感覚ではアタリハズレが激し過ぎるジャンル。がゆえに得意としないんだけど、コレは GROOVY です。そして好物です。

「こわれもの」は、全然壊れる気配のナイ強靭な足腰で駆動するロックチューン「ROUNDABOUT」で幕明けます。そして終幕を担う鉄壁の高速アンサンブル「HEART OF THE SUNSHINE」。この二曲ばっか聴いてる。前者は8分、後者は11分という長尺曲ですが、中ダルミさせない展開が楽しくてしょうがない。長い歴史を持ちメンバーチェンジも激しい YES のバンド人脈で中核の役割を果たしていたベーシスト CHRIS SQUIRE の高密度高圧力演奏と、後に KING CRIMSON に移籍する BILL BRUFORD のドラムが圧倒的。ソコに鮮やかな彩りを加える RICK WAKEMAN のキーボード(なんか色々な種類の楽器を駆使してるな、ハモンドオルガンからムーグシンセサイザー、メロトロンまで)がメチャ楽しい。STEVE HOWE のトリッキーなギターもスゲエユニーク。
●特に「HEART OF THE SUNSHINE」の、変拍子も駆使される緩急取り混ぜた複雑な展開が、ボクにはマスロックと同じニオイと受け取れるんです。高速かつ緻密なアンサンブルでガキッとキまるテーマが何回も立ちのぼり時空をギュッと緊張させると、アブストラクトなシンセ音響が漂うスローテンポ場面へと一気に弛緩する。この往復運動がスリリング。ジャズの要素が…と言われてるけど実は即興の余地がほとんど取れナイほどカッチリ作り込まれた構成美こそが真骨頂。アドリブを許さないバンドの一体感がマスロックを連想させます。
●オマケにボクのCDは、ボーナストラックで SIMON & GARFUNKEL「AMERICA」という曲のカバーを収録してるんですよ。当然込み入ったアレンジがなされてて尺は10分越え。「I'VE GONE TO LOOK FOR AMERICA」という有名サビフレーズが登場するまで3分以上かかるし、それが聴こえてもまさか S&G のカバーだと確信が持てなかった、偶然似てるだけの曲?と思っちゃったほど。ただし独特のファンクネスを弾き出す SQUIRE & BRUFORD のリズム隊の上でノビノビと特殊ギターを演奏する HOWE の技が実にカッコよく、それを乗り越えてようやく着地するキャッチーなサビボーカルの勿体つけ具合がこれまた最高。

「こわれもの」は8分越えの曲が3曲(ボーナス曲除く)で、あとは小品が6曲という内容なんだけど、「危機」はもっと極端です。18分の表題曲と、10分曲&8分曲の全3曲。長いなあ。曲少ないなあ。プログレってやっぱバランスを欠いてるよ。
●そんでですね、「わかっちゃねーなーコイツは」という批判を恐れず言ってしまうと、四部構成の18分大曲「CLOSE TO THE EDGE」や、やはり組曲構成の10分曲「AND YOU AND I」をスッ飛ばしてですね、最後のシンプルなロックチューン「SIBERIAN KHATRU」がダイスキなんですよ。それでも9分弱で展開も複雑ですけどね。リズム隊の打ち出す四ツ打ちビートにテコテコカシマシく絡む微分的ギタープレイの組み合わせがユニーク&スリリング。ポリリズミックな仕掛けもマブしてあるけど、そんなテクニックを無視しちゃえるダイナミックなグルーヴを評価します。コレ、非プログレリスナーのぶっちゃけ意見です。ただこの曲ならウマく使えばダンスフロアでも十分に破壊力を持つと思うんだよなあ。

明けましておめでとうございます。
●本年もダラダラと需要のナイムダ話を垂れ流して行きますが、ご容赦のほどよろしくお願いします。

さて、正月のボクは、体調を崩しております。
●つくり置きのカレーを食ったら、見事に痛んでたらしくてハラ壊しました。それをキッカケに精神/神経崩壊が始まって、意味の分からない頭痛と腹痛、腰痛と筋肉痛に苦しめられています。胃腸薬から沈痛剤、安定剤、眠剤、漢方薬を駆使してうつの深淵に落っこちないようにしてますが、具合はサイアクです。う~ん、結果的にはおそらくアウトです。…正月やGWって体調を崩す絶好のチャンスみたいなんだよね…日常の緊張感が緩んで一気に崩れるというか…ソレがイヤで夏休みとかもワザと取らなかったんだけど…うまくいかないねえ。

年賀状、ありがとうございます。
●ボクに届く年賀状なんて、コドモのノマドヒヨコ以下だろうと読んでたのですが、意外なほどの量が届いてしまいました。年度末に向けてボクの人徳が上方修正。…しかしコチラは完全な怠慢で5~6通しか出してないもんですから、せっかく年賀状をくれた方々も、とんだ空振りなのでございます。来年はコレに懲りてきっと誰もよこさなくなるだろう。……もひとつぶっちゃけると、年賀状に絡む事務作業ってボクをテンパらせるに十分な内容なのよね。アレやると絶対おかしくなる。修正の利かない手書き作業が神経を尖らせて見事悪影響。だから極力最小限にしてるんです。すみません。


ココロが弱る時には、なぜかココロが不安定になるようなモンを欲しがる。

松本次郎「フリージア」12

松本次郎「フリージア」1~12巻・完結。
●犯罪被害者が加害者に対して復讐の殺し合いを認める法律「敵討ち法」を背景に、その「敵討ち」を高額なギャラで代理執行する職業殺し屋さんたちの狂気を描く物語、とうとう完結。多分、作品の着想には、凶悪犯罪に対する司法判断が世間の常識から乖離しまくって見えた一時期の社会的気分(結果「裁判員制度」なんてモンがホントに出来ちゃった)が影響してると思う。「デスノート」もそういう作品だったはず…殺されるべき人間が殺されてないという義憤から主人公はデスノートで殺人を始めるんだからね。ただ、「フリージア」においては、犯罪被害者の感情とか義憤という段階を瞬間的にすっ飛ばして(作中ではほとんどそんなコトには触れてない)、合法的に殺人が出来るプロの殺し屋というイキモノの生態に迫ってる。で、もれなくそんな連中が全員狂ってる。う~ん、具合が悪い時には読むもんじゃないねえ。

●主人公の同僚でありながら敵愾心を剥き出しにする男・溝口は、スリルと快楽、根拠のナイ優越感を味わう為に殺人を生業にしてる。自分は肉食獣、他人は草食動物、狩るモノ/狩られるモノとに区別して、自分を特別視してる自意識過剰ヤロウだ。おまけに常習のDV野郎でもある。しかし主人子・叶ヒロシの登場で、その優越感が破綻、徐々に精神のバランスを崩し現実を見失う。殺人が職業というイカレタ状況で元々現実が歪んで見えてるわけで自分が他人に対して優越してるなど100%錯覚、そこに自分よりも高性能な殺人者が登場すれば世界観が破綻するのは当然だ。…しかし、ヤツが手のひらイッパイのクスリを一気にザラザラ飲む時、勝手な思い込みで「オレには薬なんて用はねーんだ」とマトモぶりやがる時、ある意味でボクは自分が目一杯のクスリを飲んでた頃を思い出し、非常にイヤな気分になる。そんでボクも、安定剤を一発キメるのである。

●後半の重要人物・田中慶太は、若き新進政治家、というイメージを周囲が丁寧に用意した虚構の存在で、ホントはチッポケな不良少年だ。コレがまた強烈な PTSD を患ってて、母親との不幸な思い出がフラッシュバックを起こすと前後不覚の支離滅裂に陥る。そのフラッシュバックの勢いで罪なき少女をウイスキーの瓶で殴り殺した、片目が飛び出るまで。…フラッシュバックってのは、過去の苦い経験、ヒドい経験が突然よみがえってしまう現象だ。天災被害者や戦争体験者の人にはコレがつらい後遺症になったりするという。コレが実にリアルで、記憶だけじゃなく、その時の強烈な感情までがイッペンに、予測もしないタイミングで起こる。ぶっちゃけボクも細かいフラッシュバックは随分と味わったもんだ。ボクのココロは戦争や犯罪のような大ケガに至る記憶などないけど、ナニゲにカスリ傷&カサブタだらけだったようで、少年時代から大人になるまでの様々な苦い記憶がビシビシリプレイされたもんです。クスリを飲むようになってスッカリ収まったけど。

●そんで一番闇&病みが深いのが主人公・叶ヒロシくんだ。兵役で特殊部隊の訓練を受けたキャリアと殺人スキルを買われてスカウトされたが、ソレ以前にホントにヘヴィな統合失調症だ。「友人」と称して架空の人格を作り上げ、毎日トークしてる。幻聴幻視幻覚のオンパレードで、現実との境目が全く見えてない。「電話の音がずっとしてるんだ…」困った人だね。うつ病と統合失調症はザックリ言って別ジャンルの病気らしく、ボクには幻聴その他の経験はない。つーかコレはさすがにヤバい。幻聴と現実に区別がつかないとホント社会生活が困難になる。治療としては服薬で幻聴を食い止めつつ、幻聴を錯覚と客観視できるスキルを身につけるのがポピュラーらしい。…主人公・ヒロシくんはソレがかなり苦手らしいけど。それに銃器を持たすんだからムチャもいいトコ。
●しかし、このヒロシくん。ヘヴィな症状のワリには自分の中の原理原則に忠実で、常人には理解出来ないカタチで世界や人生を把握しようとする。天才的殺人技術と合法的殺人稼業は絶妙な触媒として作用して、自分が殺す対象との密度濃い対話(いや見た目にはただの殺し合いなんですけど)が、混乱した人生に生きる意味を見つけるべく歩み出すキッカケになっていく。結局彼の行く手には破滅しか待っていないし、彼に普通の人間のような理性と感情が芽生える事もないのだか、彼は自分の生きる意味について誠実に立ち向かった。彼を「狂人」とするのは簡単だが、一方で些事にかまけて毎日を惰性に任せて生きる我々が狂っていないと誰が保証できるのか。作者・松本次郎がこの物語の背景に描く混沌とした世界は、戦争/汚職/欺瞞/欲望/暴力/思考停止に満ちあふれてる。結局ゼンブ狂ってる。

●ボクがこのマンガをテーブルの上に積み上げてたら、娘ヒヨコが興味深げに手に取るので「この本はとてもコワいので中を見てはいけません」と注意した。以前も同じようなボクの蔵書を見てホントにコワかったコトがあったらしいので、素直なヒヨコは絶対に中身を見ないのだが、表紙を見比べてドレがイチバンコワいかチェックしてた。

松本次郎「フリージア」3

(ヒヨコが選んだイチバンコワい表紙大賞。サドキラー・溝口。)




●そんな時には、ブレない、王道の音楽を聴いてます。

ENYA「AND WINTER CAME...」

ENYA「AND WINTER CAME...」2008年
●ブレない音楽ってコトで、この前 U2 のコト書きました。そんで今日は同じアイルランドのアーティストを。ブレない音楽ってのは別にロックだけじゃないわけで。この人、20年以上のキャリアでほとんど芸風を変えてないのだからエラい。
●ジャケやタイトルからも察する通り、今回は「冬」がテーマでクリスマス気分が濃厚な内容。「きよしこの夜」をはじめトラディショナルも収録。日本の正月に厳かなクリスマスソングを聴くってのは、ワリと相性がよいです。テレビでバカ騒ぎバラエティを見るより価値があります。ココロが弱るとテレビがウルサくてかなわない…。
●さて、ENYA が芸風を変えない要因ですが、ポイントはその制作チームにあると思います。出世作「WATERMARK」1988年(「ORINOCO FLOW」収録)以来、この人は決まったチームとしか仕事をしてません…ボクの知る限りね。アレンジャー/プロデューサー NICKY RYAN、その奥さんで作詞家の ROMA RYAN。ENYA は作曲家/演奏家/シンガー。この三角関係は鉄壁。「ENYA」という存在はこの三人のトリオユニットと思えるほどです。3人で同じ家に住んでた時期もあるっぽいですから。
●この人の生活って神秘的…。ダブリンの南に古城を買って、1人そこでひっそり暮らしてるとな…。モノクロ映画を鑑賞するのが好きで、水彩画を描くという。一人じゃ一生遣い切れないほどお金を稼いでるのに(じゃなきゃ城は買わないだろう)、露骨なセレブ暮らしもしない。時々はテレビに出るけど、気の遠くなる多重録音という音楽の性質上、コンサートはしない。自動車にも乗れないらしい。いつもたった一人でナニやってんだろう? 普通なら気が狂っても不思議じゃないような…そうでなければかなりのタフな精神力の持ち主だ。20年頑固に自分の芸風を追究してきた根性はダテじゃない。
●それでも、彼女なりの実験と挑戦はある。前作の「AMARANTINE」は日本語含むイロイロな言語、そして「ロキシアン語」とかいう架空の言語でウタを歌ったなんて実験をしてる。今回はクリスマスという一貫したテーマがあるのでソコまでの冒険はない。ただアレンジ上のトライとしてへえ~と思ったのが、エレキギターのパートを設けた曲があることだ。ENYA の曲でギターが活躍した曲なんてあったっけ?しかもリズムの気分とAメロがなんかビートルズに似てる…なんの曲かな~あとちょっとで出てきそうなのに。

ENYAのお宅

(こちらが ENYA のお宅。見事なお城ですわ。19世紀ビクトリア朝時代のモノですって。)


あ、さっき NHK「龍馬伝」放送第一回見ました。
「坂の上の雲」に続いて出演する、香川照之さんが一番スゴいね。一時期の竹中直人みたいなズルムケの汚れ役を今後全部引き受けて行くんだろうな…。正岡子規の時はゲッソリ病人顔だったのに、今回の岩崎弥太郎という人物では野心ムキダシ&キタねえ歯ムキダシの生命力旺盛な男になってる。切替えも速くてお見事。あと、草刈民代がことのほかオバさんになっててショック。もっと美人さんだったよね…。病人メイクだから?福山龍馬の評価はコレからかな。佐藤健岡田以蔵は結構似合ってるかも。直情的なテロリストとしての信念が面構えからもう覗けてる気がする。
大河ってそんなに見慣れないんだけど(「天地人」は一回目で挫折した)、あのリアリズム照明って常套手段なのかな?自然光だけ、または自然光の入る角度からだけの照明で役者を照らすから、暗い室内のカットだとマジで役者の顔が見えなかったりする。役者が演技する屋内より、その背景に見える庭の方がカッチリ見えるほどだからね。どこから光が差し込んでるか分かり易くするための空間把握のカットもキチンと忍び込ませてあるし。「坂の上の雲」はより徹底してた。深夜のシーンも手加減なく照明を削ってて、マジでランプだけで撮影してるかのようだった…。
「篤姫」「坂の上の雲」の時は重厚なカメラワークがインパクトを演出してたけど、下級武士社会から描写が始まる「龍馬伝」では、感情的なシーンは水平を大きく傾けたポジション(ハンディカメラ?)で撮ってた。編集もテンポ感重視でカツカツ切り刻んでた部分もあった。飄々とした龍馬のスタイルが演出に反映された結果かな。民放じゃやり尽くされた当たり前の手法だけどね。
●でも、とにかくコイツをしばらく楽しみます。イントロで掴まれたもんね。坂本龍馬は忘れられた人間で、三菱財閥創始者(岩崎弥太郎/香川照之)の回想でその人となりが明かされるって設定だもんね。身分もなく明治新政権にも関われなかった彼の男が、歴史上から忘れられてても不思議じゃないってリアルでしょ。そこから物語を掘り起こしてくスタンスで、一気に期待度5割増です。彼の存在を英雄に仕立て上げた後世の評価自体が、何らかの意図をもったプロパガンダかも知れないって端的に気づかせてくれたんだもん。それだけで儲けモンですよ。