先週の金曜日は「LIVE NEXUS PRESENTS 岡村ちゃんとかまってちゃん」@新木場 STUDIO COAST。

岡村ちゃんとかまってちゃん

神聖かまってちゃんと、岡村靖幸の対バンイベントだなんて!スゲエ!ある意味ムチャ。
●あのカッコイイ赤いスピーカーが天井からぶら下がるスタジオコーストはホントに久しぶり。前にココに来たのは MADONNA のシークレットギグだったです…。

神聖かまってちゃんの方は、まー相変わらずでした。相変わらず音がガチャガチャで。サポートのバイオリンのオネエさんが、とても楽しそうにその小柄な身体をビートに合わせて揺すぶっていたのが印象的でした。

そんで、岡村ちゃん。岡村靖幸。
●3回も薬物の不法所持で逮捕されながらも、失われないそのカリスマ。90年代サブカル~「モテキ」世代からの再評価、そして復活アルバム「ETIQUETTE」で最前線完全復帰。「岡村ちゃんは絶対見た方がイイ」と先輩からも大推薦されて、今回は無理矢理時間を作っての参戦でありました。
●腹に響くドでかいキックとベースのファンクビートにのって、ブラックスーツにブラックタイ、そんであの黒ブチメガネの岡村ちゃんが登場。誰にもマネできない痙攣的なダンスにコッチのテンションも急速沸騰!一曲目から代表曲「どおなっちゃってんだよ」、続けざまに名バラード「カルアミルク」、出し惜しみしない展開に鳥肌が立つ!そしてそのままノンストップのファンクショー。強靭なビートを完璧に支配してステージ狭しと踊り歌う岡村ちゃんは、確かにカリスマなのでありました。この人46歳なのになんでこんなにカラダが動くんだろう?天才とナントカは紙一重、MCなど1ミリもせずに楽曲だけに集中する彼のパフォーマンスには狂気寸前の近寄り難さがあるのでした。ライブ後半の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」「だいすき」の流れには、思わず涙チョチョ切れ、胸熱くなる思い。この辺りの楽曲を収録したアルバム「家庭教師」は1990年のリリース。20年以上も前のコトなのね。「青春って123ジャンプ!」ボクの青春って一体ドコ行ったのだろう?

エチケットLIVE2011

●これ、近日発売の「エチケット」ツアーを収録したブルーレイ。見たい!そんでこのメガネが欲しい!

http://okamurayasuyuki.info/「岡村靖幸 OFFICIAL SITE」
●現在、こちらでは「BU-SHAKA LOOP」という楽曲が無料ダウンロードできます。ミュージックプロモ全編もこちらで見られます。100%意味のナイ歌詞に妙な説得力が宿る天才が速やかに味わえます。「ペンペンペンペンペンペン草!」

●会場では、女優・成海璃子さんを見かけました。ゲストパスをつけたとてもキレイな美人さん…と思ったら、わホンモノだよ!みたいな。彼女、有名な日本パンクファン。フェイバリットにあぶらだこを挙げるような人ですから、この日は神聖かまってちゃんを見に来てたのかな。


●マンガ生活

久保ミツロウ「アゲイン!!」3

久保ミツロウ「アゲイン!!」3巻
「モテキ」岡村靖幸再評価に一役買った90年代サブカルマスター・久保ミツロウさんは、なぜか応援団にも一家言あるようで。絶滅寸前の応援団文化を背景にして、男子&女子高校生たちのアレコレすったもんだと逆ギレがギクシャクし続ける物語。この人こそ、青春をコジラセまくってるタイプなんだろうな。

天堂きりん「きみが心に棲みついた」

天堂きりん「きみが心に棲みついた」1巻
●コレも大分痛々しいマンガです。カワイい絵柄なのに、サディスティックな男が主人公の女の子・キョドコの感情をガチガチ踏み壊す様子が残酷過ぎます。恋愛ダークサイドキョドコPTSD寸前な挙動不審ぶりは、なんだかボクのビョウキ面を微妙に刺激して、他人事に思えないリアルさで迫ってきます。コレ痛過ぎて、続きが読めないかも。

西炯子「姉の結婚」

西炯子「姉の結婚」1~2巻
アラサー女性の枯れ専願望を甘く描いた「娚の一生」にボクは確実にシビレタのでありますが、コチラはさらに妄想度が深くてややついてイケない予感。中学生時代のブサイク級友がイケメン医師になってアラフォーの主人公をストーキングしてきて、結果なんだかマンザラでもありません、みたいな微妙なカンケイって…サスガにリアリティがない。でもでも、人生全般に醒め切ってるアラフォー女性の、潜在的な恋愛本能再点火願望ってのは社会的なニーズがある観点なのかもしれない。

中川いさみ「ストラト」1巻

中川いさみ「ストラト」1巻
●アラフォー女性が、老後をボンヤリ眺めながら、それでも自分のセクシャルな部分に仄かな残り火を感じてるという状況に比べ、ここに登場する47歳/男性/マンガ家&その周辺の人々は大分幼稚っぽいのであります。「どーも最近なんもかんもうまくいかない。仕事は減る一方だし、すぐ疲れるし、頭はどんどん薄くなるし…でもとにかくこのまま一生懸命がんばれば楽しい老後が待っているとでもいうのか?待っている訳がない!!楽しい隠居生活なんてありえない!もう老後なんてない!!楽しみを老後にとっておくなんてナンセンスだ!」で、結果思い至るのが、ギターを演奏する事。ギター初心者のまま棺桶に入りたくない!なんだか底の浅い思考でないですか?
●そんで中川いさみ氏は、楽器を買い、合宿で練習して、バンドを結成して、泉谷しげるに怒られたりすることになる。なんのこっちゃ!?でも結局のトコロ、男はこういう生き物で、奇妙なオモチャをイジって一生を終えるモノなのかも知れない。女性は常にオトナで、男は常にコドモ。

山田芳裕「へうげもの」

山田芳裕「へうげもの」(講談社文庫)
●この作品は「モーニング」の連載でチェックしてるんですけど、改めてマンガ文庫の一巻から読み返してます。連載では関ヶ原の合戦に突入、主人公・古田織部のキャリアもあともう少しで絶頂期に入るのかと。そこで今一度最初から読み直して、織田信長配下の弱小武将だった彼をおさらいしたいと思ったのでした。
中川いさみはギターにハマったワケだけど、この人は戦国の世にあって骨董や茶器、様々な美術に心奪われている。戦国武将文化系。物欲に命を懸けられるか?ある意味でナンセンスだし、ある意味でホンモノ。ボク自身は明らかにフェティッシュな文化系物欲礼賛主義者で、毎日楽しくCDやレコードを聴いたり、好きなマンガや本を読んだり、映画やDVDをゆっくり観て過ごしたい人間。根本は変わらないような気がする。彼の愚かさはボク自身の愚かさ。

石井あゆみ「信長協奏曲」6

石井あゆみ「信長協奏曲」6巻
●日本人は戦国時代が大好きで、この時代を様々なアプローチで描いて楽しんでる。「へうげもの」も抜群にユニークだが、ココに描かれる織田信長像もユニーク。彼は脱力系ゆとり美少年で、その脱力ぶりがそのままこの時代の革新性となって戦国社会を出し抜く。
●たくさんの戦国マンガが同時並行で、ときどき混乱する。「へうげもの」が1600年の関ヶ原で、「信長協奏曲」は1570年の姉川の戦いヤングマガジン連載の宮下英樹「センゴク天正記」は1581年因幡鳥取城の兵糧攻めが描かれている。ちなみに、野球マンガも混乱するんだよね。どこで誰がどんな立場で戦ってるのか、一瞬区別がつかなくなってくる。中原裕/神尾龍「ラストイニング」三田紀房「砂の栄冠」の甲子園大会は、両方ともオモシロ過ぎて混乱してしまう。

しりあがり寿「あの日からのマンガ」

しりあがり寿「あの日からのマンガ」
まーこんな風にムダに日々を浪費しているうちに、3月11日がやってきてしまう。あの日から一年。あっという間だったか、長い長い一年だったか。
●震災発生を受けて、3月15日の朝日新聞夕刊連載「地球防衛家のヒトビト」しりあがりさんは震災/原発/放射能に言及し始める。この本はそこから7月12日までに各所で発表された震災関連の作品を束ねて、なんと8月5日に発売された単行本だ。なんてテンポ感だろう。
●ココには、あの瞬間の不安がそのままの空気感で閉じ込められている。今は意識のスミに追いやってしまったあの恐怖や義憤や苛立ちや怯えや絶望がそのままのカタチで刻まれている。ウマいコト折り合いをつけて生きていくのが適応力の高い人間の賢いスタンスかもしれないけど、ボクはそんなに賢くないタイプの人間で、こんな時代を作ってしまったダメな世代としての後ろめたさを、どうすることも出来ずにずっと抱えて生きていくのだと思う。


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NHKの朝ドラに生まれて初めてハマった。「カーネーション」。

尾野真千子

●最初は「おはよう日本」をダラダラ見てる流れ以上のモノは感じてなかったんだけど。
●主題歌が椎名林檎で。そしてオープニングのフィギュア演出が辻川幸一郎さんだったりもして。彼の手掛けた CORNELIOUS のPVは一生忘れない傑作。
●そんで主演の尾野真千子さん。この人はチャーミングだなあ。「あさイチ」でのインタビューを見て、本来から快活な関西弁ネイティヴだったんだと知り、より好感が持てました。ご出身は奈良だとか。デビューは河瀬直美監督「萌の朱雀」だってのも最近知った。カンヌ作品「殯の森」も見たくなった。「文藝春秋」のインタビューも読んじゃった。30歳、ポッと出てきた人ではありません。
●次女・直子コシノジュンコさんがモデルってことだよね)が、ニューレイブばりのどえらくキッチュな自作衣装を着るようになってから目が離せない。あ、この男友達が高田賢三さんなのかー、と思うと日本のファッション史を見てる気分になる。
●そんで直近の関心は、三女・聡子ミチコロンドンってことだよね)。安田美沙子さんがニコニコ演じるマイペースなテニス少女が、どうやってこれからイギリスに飛び出しちゃうのかが気になる。
でもでも、彼女が気になるホントの理由はそこじゃなかった、聡子が我が娘ヒヨコに似てるからなのだ。醸し出す天然オーラが漠然と似てるから?いや、ニコニコして陽気に見えて、周囲の空気を敏感に察知して自分の準備すべき立ち振る舞いを探っちゃう末娘の様子が、我が家の末っ子・ヒヨコ9歳と同じ雰囲気なのだと納得してしまった。ヒヨコはヒヨコなりに空気を読んでいて、自分の主張を表明するのを躊躇するクセがある。女子同士のエグイ自己主張競争はかなり苦手なはず。ヒヨコー、これからの思春期をキチンとサヴァイブしてねー!それとバレンタインの手作りチョコありがとう!

●朝のたった15分で、そこまで感じさせる NHK の朝ドラってすげえコンテンツだな。しかも15分という尺が適切すぎる。ソレ以上は見てるコチラの集中力が持続しないし、ソレ以下ではメッセージも演出も成立しないだろう。



NHK もう一ネタ。大河ドラマ「平清盛」。加藤浩次さんの海賊王!

平清盛加藤浩次

●爆笑!マジでジャック・スパロウじゃないですか。または「ワンピース」黒ひげ/エドワード・D・ティーチ「オレは海賊王になるぞ!」ってもうまんまじゃないですか。加藤さん「スッキリ」のスーツ姿じゃ気づかないけど、ハラまわりが予想以上にボッテリでますますヘンなスゴミが出てます。小樽出身の加藤さんが関西弁ってのも実は微妙に珍しくてオモシロいです。
●さらに爆笑しちゃったのが、加藤さんの海賊団が登場する場面の挿入歌に、EMERSON, LAKE & PALMER「TARKUS」が使われてるんです。コレが的確にハマり過ぎててスゴい!なんじゃらもんじゃら得体のしれないモノが登場してくる瞬間。平氏/首都防衛のエリート部隊が初めて直面する、未知の大型外国船に乗った流民棄民のゲリラ集団の異様さを、この1971年のプログレッシブロックで演出するなんて!これスゴいアイディアだな!

EMERSON, LAKE  PALMER「TARKUS」

EMERSON, LAKE & PALMER「TARKUS」1971年
●久しぶりにLPを引っ張り出して聴いてみました。プログレ世界では名盤だけど、今のレコ屋でチョコチョコ探せば400円くらいで売ってるのよね。組曲「TARKUS」の中の冒頭の部分「ERUPTION」が劇中で使われておりました。ぼよぼよぼよぼよ…ジャケの奇妙な怪物がマグマの噴火と共に誕生する瞬間を、このロックトリオがハイテンションで表現するグルーヴ!
●もちろんドラマで聴こえるのは原曲ではなく、サントラを担当している吉松隆さんという方のオーケストラバージョンです…ただし、これは「平清盛」のための撮り下ろしではなく、元来から猛烈なプログレファンである吉松さんが2010年に発表したモノ。この吉松版「TARKUS」NHKが注目して今回のオファーがあったなんて話も。へー。



NHK さらにもう一ネタ。アンジェラ・アキの「WE'RE ALL ALONE」。
NHK-ETV「アンジェラアキのSONGBOOK IN ENGLISH」が楽しいって前もこのブログに書きました。洋楽の歌詞をなぞって英語の勉強をするこの番組、先々週のお題が BOZ SCAGGS の名曲「WE'RE ALL ALONE」だったのでした。この曲をアンジェラさんは2005年のデビュー作「ONE」で日本語カバーしております。そのデビュー当時の彼女のHMVインストアライブにまで行ってた、ワリと熱心なファンであったボクとしては実に感慨深いテーマでありまして、でソモソモの原曲も大好きなのでウットリするのでありました。

SCOTT WALKER SPECIAL COLLECTION

SCOTT WALKER & THE WALKER BROTHERS「A VERY SPECIAL COLLECTION」1973~1978年
「WE'RE ALL ALONE」はこの人たちもカバーしていて、ボクとしてはとってもお気に入りです。60~70年代のイギリスで活躍したシンガー SCOTT WALKER とその仲間たち。元々はアメリカ人なのに多くのビートバンドで沸くスウィンギンロンドンのシーンに参入、THE BEATLES なみの人気を集めた連中でございます。ボーカリスト SCOTT WALKERホレボレするような朗々とした太い声が実に特徴的で、PHIL SPECTOR 風のゴージャスなアレンジで見事なブルーアイドソウルを歌うのでありました。
●そんなアイドル的人気が一段落した70年代、SCOTT はソロに転向。このアルバムが網羅する時期はさらに再結成 THE WALKER BROTHERS を招集したりしつつも、結局はバンドサウンドと関係ない見事なアダルトオリエンテッドロックに変貌しておりまして、60年代のワサワサ感を期待したボクは、この70年代スタイルに一瞬ガッカリもしました。でもでも、味のあるカバーが多くて、聴き心地がいい。BOZ SCAGGS「WE'RE ALL ALONE」とか、JIMMY CLIFF「MANY RIVERS TO CLOSS」とか、RANDY NEWMAN の曲とか。
●一方で、同じ70年代の DAVID BOWIE と同じアプローチをしてるような曲もあって。1978年の「NITE FLIGHTS」というアルバムの時代かな?ココは今後注目したいです。

THE LAST SHADOW PUPPETS「THE AGE OF UNDERSTATEMENT」
THE LAST SHADOW PUPPETS「THE AGE OF UNDERSTATEMENT」2008年
ARCTIC MONKEYS のボーカル ALEX TURNER が、去年ソロ作をリリースして話題になった MIKE KANE、そして ARCTIC MONKEYS の全てのアルバムに関わっているプロデューサー JAMES FORD と共に組織したバンド。ALEX TURNER自分の60年代趣味を分かりやすく発現させてます。そもそもなんで SCOTT WALKER を聴こうと思ったかと言えば、彼らが SCOTT からの影響関係をハッキリ明言してたからだ。この作品以降の ARCTIC MONKEYS がアルバム「HUMBUG」「SUCK IT AND SEE」でどんどん60年代志向を強めていく中で、その元ネタにあたる SCOTT WALKER ってナニモノよ?という興味はぐんぐんモコモコと湧き上がりましたね。だから結果として、キドッたアダルトオリエンテッドロックでしかなかった前述のCDを、買って初めて聴いた瞬間はマジで「なんじゃコレ? ARCTIC MONKEYS と関係ない音楽じゃん!」とブチ切れそうになりました。
●60年代の THE WALKER BROTHERS がやってたという PHIL SPECTOR 風「ウォール・オブ・サウンズ」なストリングス/ホーンアレンジに、確かにこのバンドはしっかりこだわっていて、ムサいビートロックに、独特の奥行きが施されてる。ソレは洗練とは別の意味の、ヴィンテージのカビ臭とそういうのにハマっちゃう男臭さがググッと匂ってタマラン気分になります。ALEX TURNER の声はブルーアイドソウルとは言い難いスタイルだけど、バタ臭いビートサウンド&60年代風ゴージャスアレンジが描くオトコのムサ苦しさは、SCOTT WALKER の渋過ぎる太いボーカルと十分リンクするものであります。

●しかし「60年代回顧趣味」って今までの音楽史の中で何度となく繰り返された現象なのに、いつも新鮮なアプローチが登場してオモシロいものになる。素材は同じ時代のはずなのに、その都度解釈が違ってて新しい側面にスポットが当てられる。モッズというファッションに注目する人もいれば、サンフランシスコのサイケデリアに着目する人もいる。THE BEATLES のギターサウンド&メロディを目指す人がいれば、彼らのヘンテコな音響実験に可能性を見出す人もいる。モータウンのR&Bも、ジャマイカのスカも、JAMES BROWN も、インスパイアの源泉。そんで今回はイギリス製「ウォール・オブ・サウンズ」で彩られたポップスがヒントになった。オモシロいなあ。


WHITNEY HOUSTON が死んでしまいましたね。48歳は早いなあ。
11歳からゴスペルクワイアでソリストとして活躍してた早熟少女。天賦の才に恵まれ過ぎると、その後の人生で苦労するのでしょうか?なんだか MICHAEL JACKSON を連想してしまいます。
●バービー人形にまでなったのにね。ホント人生とはママならぬモノ。

Whitney_Houston_Barbie_I_Wanna_Dance_1.jpeg

●ヤマハのエレクトーン教室に通ってた小学生時代の妹が、彼女の初期のヒット曲「ALL AT ONCE」を器用に両手両足を使って弾くのをよく聴いてました。WHITNEY HOUSTON というと、まず最初にこの曲を思い出してしまう。この曲を収録したアルバム「WHITNEY」は1985年の作品。彼女にとっても初めてのアルバム。MICHAEL JACKSON のお兄さん JERMAINE JACKSON がメインのプロデューサーを務めています。

WHITNEY HOUSTON「WHITNEY」



●しかし。ボク個人のライブラリーには、WHITNEY HOUSTON は一枚もなく。
●今までそんなに関心がなかったのね…今度レコ屋で探してみよう…激安LPワゴンとかに埋まってないかなあ。


そこで、突然だけど、CHAKA KHAN を聴く。

CHAKA KHAN「CHAKA」

CHAKA KHAN「CHAKA」1978年
WHITNEY の人生のピークであっただろう映画「ボディガード」のサントラの中で、彼女はこのアルバムの最初に収録されている曲「I'M EVERY WOMAN」をカバーします。彼女にとってこの曲はとっても思い入れのあるモノだったはず。WHITNEY はこの CHAKA KHAN のバージョンでバッキングボーカルを担当したのです。当時彼女はまだ15歳。ショービジネスの世界に本格的に乗り出していく最初の時期。うん、力強くて素敵なディスコチューンです。
CHAKA KHAN にとってもこの「CHAKA」は初めてのソロアルバムです。この人は、そもそも RUFUS というファンクバンドでボーカルを務めてた女性。RUFUS FEATURING CHAKA KHAN なんて名義で活動しておりました。1973年から活動したこのファンクバンドは、実にシッカリ70年代前半の土臭いファンクを鳴らしておりまして、折り目正しくボクの大好物な物件であります。ソコでスパイシーな声を聴かせる CHAKA も見事なのであります。しかし、このタイミングで彼女はソロをリリース。RUFUS としての活動も同時並行させますが、ココではアーシーなファンクではなく別のスタイルの音楽にチャレンジします。
●彼女に新しい色を加えようとしたのは、ATLANTIC RECORDS のトルコ系プロデューサー ALIF MARDIN でありました。この人がポップミュージックに与えた巨大な影響は計り知れな過ぎて、ボクの手には負えません。とにかくこの60年代から活躍するこの大プロデューサーは、豪奢なストリングスアレンジと最先端のフュージョンサウンドを組み上げて、土臭いR&B少女を、洗練されたディスコファンクを華麗に乗りこなす女傑に変身させるのです。クレジットには豪華なメンツがワンサカ。BRECKER BROTHERS GEORGE BENSON、DAVID SANBORN、CORNELL DUPREE といったフュージョニストたちがゾロリ。その中に WHITNEY HOUSTON も混じっていたのです。

CHAKA KHAN「WHAT CHA GONNA DO FOR ME」

CHAKA KHAN「WHAT CHA' GONNA DO FOR ME」1981年
●ソロ三作目、相変わらず ALIF MARDIN のプロデュース。最初の曲がいきなり THE BEATLES「WE CAN WORK IT OUT」のディスコファンクカバーでシビレル。都会的で80年代的なフュージョンファンクと、ソコに安住しないパワフルな CHAKA の声がこのアルバムをホットなものにしています。さらにクレジットは豪華になって、HERBIE HANCOCKDAVID FOSTER なども参集。そしてモダンジャズの重鎮 DIZZY GILLESPIE までが参加、彼の代表曲「A NIGHT IN TUNISIA」を組み込んだ「AND THE MELODY STILL LINGERS ON」という曲を披露しています。加えてもう一ネタ足しますと、この曲は、DIZZY のビバップ時代の相棒、故・CHARLIE PARKER のプレイをサンプルまでしてます。

●この後のアルバム「I FEEL FOR YOU」1984年に、KANYE WEST にサンプルされて一躍再評価された「THROUGH THE FIRE」が収録されてるんだな。でもココもまだチェックしてない。まだまだケツが青いなボクは。





●WHITNEY HOUSTON の「I'M EVERY WOMAN」は90年代風にハウシーな気分もあるのね。ン?1カット、CHAKA 本人が写ってるような気がする。




今日は、70~80年代UKダブから、00年代ダブステップへ繋がるおハナシ。
●イギリスにおける、ブラックミュージックの独自進化の流れをナゾってみようとするモノです。

●ボクには、基本的な史観として、白人文化と黒人文化の間の影響/受容/搾取といった緊張関係が20世紀のポップミュージックを豊かにしてきた、という認識に立ってまして。その具体的なケースを様々な音源を素材にして今までこのブログで自分なりの解釈を綴ってみました。
特にイギリスのシーンを眺める事は重要です。自分たちの社会の内部に黒人社会を抱えるアメリカと違って、イギリスは外来文化として黒人文化/黒人音楽を受け入れる社会だからです。それは結果、日本社会と同じポジションだというコトです。イギリスで起こった事は、日本でも起こるコトかもしれませんし、すでに起こっているのかもしれません。日本社会がどうやってロックンロール(はっぴいえんどからRCサクセションまで)やR&B(ドリカムから宇多田、JUJUまで)、ヒップホップ(いとうせいこうからスチャ、KREVAまで)を受容したか、というプロセスを眺める時に、イギリス人が同じコトをどのようにこなしていったか、知る事は意味があると考えています。そして、ソコには誤読誤解や失敗、歪曲や変容があり、だからこそ豊かな多様性と独自性が宿るという瞬間を知るコトが出来る。結果、ボクは日本のジェイポップの失敗も、ある意味で愛らしい多様性として受け止めるコトが出来る、と1人の音楽ファンとして考えているのです。

●これまでに綴ってみた関連記事をリンクしておきます。
「80年代末から現在まで、UKのブラックミュージックを一気に俯瞰する。」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-418.html
「1984年状況。MTV革命、英国の侵略、黒人&白人音楽の邂逅について。」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20090810.html
「80年代イギリス音楽を「ファンカラティーナ」という言葉で眺めてみる。」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-852.html
「ボクは「FREE SOUL」がダイキライ。でも許す(←ナニ様?)。」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-425.html
「トリップホップと UK ヒップホップの不思議。なんで正統派はイギリスに浸透しなかったのか?」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-608.html



●さて、長いムダ話のスタートです。シッパイするかも。




「プッ!」
●失礼。放屁。オシリからちょいとガスが。
●娘ヒヨコ。「パパの「サウンド」がきこえました」
●失礼。「サウンド」が漏れてしまいました。
●我が家では、ちょいとしたガスもれを「サウンド」と呼ぶのが流行ってます。
●息子ノマド。「すーって音させないヤツは「すテレオ」ね」
●じゃあモノラルはどんな音?5.1chサラウンドは?
●そんな話を夕食の時間に話してます。



●そんで、そのまま、音響のおハナシになったのね。UKダブ。


Rebel Vibrations [ボーナストラック6曲収録・解説付き・紙ジャケット仕様] (BRC90)

CREATION REBEL「REBEL VIBLATION」1979年
●ヒヨコが聴く。「パパ、重低音ってどんな音?ばびびび~ん!って感じ?」あーもっと低い音だね。「じゃあ、ばぼぼぼぼ~ん!」いやいやもっと低いね。「ぶぶぶぶ~ん!」もっと低いね。ちょっとこのCDの音聴いてみろよ。
●ということでプレイしましたのが、この音源。ダブです。UKダブです。粒立ちのイイスネアとハイハットと、深いエコーに滲むピアニカ、そしてクッキリとしたウネリを放つベース音!ヒヨコこれだよこのベース、ぶーぶぶぶーぶぶぶーぶぶ。ワイフ「もう夜なんだからうるさい音楽はやめてよ!」この音源は、UKダブの重鎮プロデューサー ADRIAN SHERWOOD がその後自分のレーベル ON-U SOUND を立ち上げる直前期にリリースしたモノ。UKダブとして傑作。何度も聴いてきた名譜です。

●ジャマイカ発祥のレゲエカルチャーは、70年代を経て技巧的にどんどん洗練されていきますが、ダブはその中から生まれた音響美学。レコーディングエンジニアの創意と電気的加工でエコー感覚や低音と高音のメリハリを極端に増幅する手法です。それがイギリスへ伝播することでさらに独自の進化を遂げまして、氷のような無機質的グルーヴと強烈な緊張感で、当時のニューウェーブサウンドやパンクシーン、そしてその後に続くクラブミュージックの系譜に巨大な影響を及ぼすに至ります。ヘンテコな比喩で言いますと、ジャマイカ本国のダブを「熱帯夜をチョッピリ快適にする結露タップリのクーラー」とすれば、UKダブ「血も凍る絶対零度の暗黒」です。南の島と北の島、音楽が聴かれる環境が違いますしその迫力の位置が違います。…そんな流れにおいて、この CREATION REBEL というバンドは、構造的には比較的オーセンティックなレゲエでありながらも、UKダブ独自の美学を見事に先取りした、とにかく大事な物件であります。



ADRIAN SHERWOOD ON-U SOUND は確かに先鋭的でアンダーグラウンド過ぎますが、もう少しメジャーなレベルでダブにトライした連中はまだいます。ロンドンパンクの爆心地、THE CLASH。

THE CLASH「SANDINISTA!」

●THE CLASH「SANDINISTA !」1980年
●当時は3枚組LPとしてリリースされた超大作。ボリューム満点、36曲収録されてます。タイトルは独裁者を失脚させて成立したニカラグアの社会主義政権の名前ですよね。パンクスとして世に出たはずの THE CLASH ですが、前作にあたるサードアルバム「LONDON CALLING」でその音楽性の幅がパンクの枠を逸脱していくコトが顕在化、この第四作目のアルバムではその超雑食性が炸裂しまくってます。ジャズ…ゴスペル…ロカビリー…R&B…。そしてレゲエ、ダブ、カリプソまでに到達してます。レコーディングの一部をジャマイカの名門スタジオ CHANNEL ONE で行ってたり、ジャマイカ人プロデューサー MIKEY DREAD を招いてたりと、その姿勢は本気そのもの。DUB や VERSION という言葉を使って、わざわざアルバム収録曲のダブヴァージョンを4曲も折込んだりまでしています。
●当時の日本のパンク雑誌を読んでみると、このアプローチは「難解」と受け止められたりしてて、何のつもりでこんなコトしてるのかよくワカラン?という反応が一般的だった気配が…ダブとしてのアプローチはワリとストレートですが、ダブの概念自体がまだ理解されてなかった時代だったということか?
●次のアルバム「COMBAT ROCK」1982年(名曲「ROCK THE CASBAH」を収録)でもレゲエやファンクへ果敢にトライする THE CLASH。このミクスチャー魂はスゴいね。それと、イギリスのロックシーンとレゲエの関わりとしては、2トーンスカ、の存在も忘れられないんだけど、ソレはまだ別の機会に。

THE CLASH「COMBAT ROCK」



●おハナシを、ADRIAN SHEWOOD ON-U SOUND に戻して。


ADRIAN SHERWOOD「ON-U SOUND CRASH - SLASH  MIX」

ADRIAN SHERWOOD「ON-U SOUND CRASH - SLASH & MIX」2005年
●1979年、ADRIAN SHERWOOD ON-U SOUND を立ち上げ、ココを拠点にイギリス独自のダブ表現を様々なアーティストと切り拓いていきます。このミックスCDは、その ON-U の長い歴史を分厚いカタログをブチ抜くように振り返る内容で迫力満点。プロデューサー/エンジニアでありリミキサーとしても大活躍の ADRIAN としては意外だがミックスCDはコレが初めてらしい…。
●収録されてるアーティストを眺めるだけで、UKダブ~ニューウェーブの歴史が鳥瞰できるようであります。NEW AGE STEPPERS と元 THE POP GROUP MARK STWART(←暗黒!)がたくさん出てくる。そして ON-U の看板アーティストたち… DUB SYNDICATE、AFRICAN HEAD CHARGE、PRINCE FAR ITACKHEAD もタマランなあ。もちろん CREATION REBEL も多数収録されてます。
●しかし、ここに含まれてるのはオーセンティックなレゲエチューンだけではありません。ON-U SOUND の最大の功績は、ダブによって発見された美学を、レゲエから切り離して純粋に抽出し、広く他のジャンルミュージックに応用できる手法として成熟させたことです。UKダブは、ダブではあるがレゲエではない。そういう状況を作った。それでいて、レベルミュージックとしての怒気孕むレゲエのスリルは、キチンと温存している。ソコがスゴい。

AFRICAN HEAD CHARGE「SHRUNKEN HEAD」

AFRICAN HEAD CHARGE「SHRUNKEN HEAD」1981~2003年
ON-U SOUND の代表選手によるベストアルバム。アフリカ太古のグルーヴと最新型のダブサウンドを結合させるというコンセプト、サイケデリック呪術が金属の装甲を身にまとってるかのような不気味な迫力があります。レゲエの中でもナイヤビンギのような特殊なビートに注目し、そしてソコから広がるイギリス独自のグルーヴ解釈が、ダブ様式に豊かな膨らみと強烈な鋭さを与えてくれていて、結果として実にユニークで実にUKダブらしい表現に着地しております。
AMERICAN HEAD CHARGE という名前ソックリなロックバンドがありますが、基本全然カンケイないのでお気を付けを。



90年代。ジャングル/ドラムンベース。イギリス黒人による独自フォーマットの開発。


ALPHA OMEGA「WORD OF MOUTH LP」

ALPHA OMEGA「WORD OF MOUTH LP」2005年
●コレは、実はシッパイした買い物であります。ON-U SOUND が成長していく80~90年代に、やはりUKダブシーンで活躍した2人組ユニット ALPHA & OMEGA という連中がおりまして。しかもこの片割れのベーシストは、CHRISTINE WOODBRIGDE という女性!そりゃもうスゴい面構えですよコワいですよ!
●でね、彼らの音楽が聴きたくて、このCDを買ったんです。そしたら…あれなんかコレ、全然UKダブっぽくないな。おかしいな?そんでもう一回ジャケを見ると…「ALPHA OMEGA」あ!「&」がナイ!「ALPHA & OMEGA」じゃない、「ALPHA OMEGA」という別人なんだ!ショック!結果として、これはアメリカ・サンフランシスコ産のドラムンベースなんです。高速ブレイクビーツにうねるベース、そして映画「キルビル」のヘンな日本語セリフをサンプルしたりしてて。ジャケも妙な和風だし。あらら。
●しかし、イインです!だってボクは90年代育ち、ドラムンベースは浴びる程よく聴いていた。個人的に一番クラブ遊びしてた時期とドラムンベースのシーンが重なっていたので、この手の音楽はある意味で非常に居心地がよいのです。青春です。

ALPHA  OMEGA(本家 ALPHA & OMEGA。)

●さて、そんなキッカケも交えて、敢えて今、このドラムンベースという音楽、そしてその初期の形態である、ジャングルという音楽について考えてみましょう。レゲエがイギリスに受容される流れにおいて、UKダブと同じくらい、いやそれ以上のインパクトを持った音楽が、ジャングル/ドラムンベースだとボクは思ってます。


「JUNGLE HIT VOLUME 2 1000 JUNGLE」

「JUNGLE HIT VOLUME 2 1000% JUNGLE」1994年
●イギリスにおけるレゲエの進化を考えるにあたって、80年代UKダブと同じくらい、イヤそれ以上かも知れない歴史的エポックが、90年代ジャングル/ドラムンベースだと思ってます。イギリス黒人が編み出した完全にオリジナルな音楽様式……ソレ以前までは黒人音楽はイギリスにとって必ず外来文化だった…60年代~70年代のロックアーティストが憧れたジャズ、R&B、ブルースそしてレゲエも全てが渡来物。しかしこのジャングル/ドラムンベースは完全にイギリスから発信されたスタイル。移民文化を社会の内部に抱き込んで、そこから育んだ音楽。
●人間のドラマーでは再現できない高速ブレイクビーツがスピード感を求める白人の心を掴み、大きく増幅されたベースが描く野太いグルーヴが黒人のハートを掴む。この絶妙な二重構造は素晴らしい発明でした。基礎としては打ち込みドラムと大きなベースとという、ダンスホールレゲエの構造が前提とされていて、そこにダブの音響実験の成果が盛り込まれる…。コレがジャングル/ドラムンベース
●さて、このコンピが興味深いと思ったのは、ダンスホールレゲエからジャングルへの進化過程がハッキリ痕跡として見えるからです。コンピがリリースされた1994年は確かに今だジャングルの時代…1996年あたりがドラムンベースへ洗練されていく時期とボクは捉えています。ちなみに、浜田雅功&小室哲哉 H JUNGLE WITH T「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーブメント~」が1995年です。
●なにせ、このコンピでパフォーマンスしているのは、当時ジャマイカの最前線で活躍してたダンスホールレゲエのヒーローなんです。これは珍しい!トラックメイカーやプロデューサーはイギリス人だけど、そのミュータントな後輩たちのトラックに合わせて本場のレゲエパフォーマーがワイルドな声を披露している。CAPLETON SIMPLETON、GARNETT SILK、HALF PINT、FRANKIE PAUL、そして NINJAMAN まで!これ、既存のボーカルトラックをそのまま拝借しちゃってるのかな?でもそのワリには「オリジナルジャングリスト!」とか叫んじゃってるもんな?ダンスホールレゲエが持つ独特の猥雑さがジャングルがもつ奇妙な体臭(人間くささ)を絶妙に膨らませてくれていて実に楽しい。激安ワゴンで発掘したこの物件は実にナイスな発見だ!

「HARDLEADERS 6 PRESENTS JUNGLE DUB 2」

「HARDLEADERS 6 PRESENTS JUNGLE DUB 2」1995年
●コチラのコンピは「JUNGLE DUB」と名付けられて入るいるものの、ジャングル世代というよりは、次に続くドラムンベース世代のアーティストで構成されている。RONI SIZE、DJ KRUST…このヘンは REPRAZENT のメンバー。他にも LEMON D.、DILLINGA(A.K.A. DILLINJA) とかとかの名前が見える。ただしこのあたりのアーティストがメジャーシーンで活躍し始めるのは1997年頃。このコンピがリリースされた1995年はまだ雌伏の時代、そしてジャングルの時代。しかしすでに高度な洗練に向けて進化が始まってる気配あり。UKダブの収穫を多様に活用し、ダンスホールのクリシェから自由となり、地球の重力を離れてよりスペーシーで抽象的な世界を描く段階に入っていく。
●ちなみに、90年代当時はどんどん進化/拡散していくドラムンベースのシーンに夢中でして、洗練以前のジャングルはイマイチダサイとボクは考えておりました。しかし!レゲエのイギリス的進化を考えるようになったココ4~5年の関心においては、むしろジャングルの方が大事でありまして。今日紹介した由来不明のコンピなど見つけちゃうとわざわざセッセと買ってしまうのです。実際、380円程度のゴミ価格だしね。

SMITH  MIGHTY「LIFE IS …」

SMITH & MIGHTY「LIFE IS …」2002年
●21世紀に入りドラムンベースのシーンも一区切りついた時代の音源…。ドラムンベーストリップホップの要素をソウルフルなボーカルを交えてポップに仕上げたアルバム。彼ら SMITH & MIGHTY の出身地はブリストル。大西洋に面した港町であるブリストルは外来文化の玄関口として機能してて、ジャマイカ移民もタップリいる土地柄、故に音楽的には常に先進都市でありました。80年代ニューウエーブ期には、ON-U SOUND と深い関係を持つ MARK STEWART のバンド THE POP GROUP などを輩出し、ドラムンベース方面では RONI SIZE & REPRAZENT CREW を、トリップホップ方面では MASSIVE ATTACK を輩出しております。うーん、全部ダブに影響を受けたアーティストだねえ!
トリップホップは、スモーキンビーツ、ダウンテンポなどとも言われてましたね。ヒップホップを英国流にアレンジしようとした時、まずはダブを援用したというのが実にUKのセンス。ややメランコリックな趣きが英国の正統派。
●このユニット、ROD SMITH RAY MIGHTY の二人組から出発してるから、SMITH & MIGHTY。レゲエの世界を見渡すと、SLY & ROBBIE、STEELY & CLEEVIE、ALPHA & OMEGA、DRY & HEAVY などなど、&をつけた二人組が大勢いるね!



そして、00年代、ダブステップ。

ドラムンベースのムーブメントが一区切りした90年代末~00年代初頭。その後のシーンに登場したのは、2ステップ、UKガラージ、グライムといった音楽たち。それぞれに意味のある存在感を放ったスタイルでした。そんな様々な潮流が結集する事で、このダブステップというスタイルが出来上がったのです。すでにこのムーブメントも盛りを過ぎたとも言えますが、今日は敢えてこのダブステップという音楽にフォーカスを当ててみます。

「STEPPAS DELIGHT - DUBSTEP PRESENTS TO FUTURE」

「STEPPAS DELIGHT 2 - DUBSTEP PRESENTS TO FUTURE」
「STEPPAS' DELIGHT - DUBSTEP PRESENTS TO FUTURE」2008年
「STEPPAS' DELIGHT 2 - DUBSTEP PRESENTS TO FUTURE」2009年
●ボクがダイスキなイギリスの SOUL JAZZ RECORDS。レアグルーヴ系やオーセンティックなビンテージレゲエをコンピにまとめて紹介するレーベルでありましたが、ダブステップのシーンに対してはほぼリアルタイムに反応していくつものコンピをリリースしてきました。過去の音源を見事なセンスでコンパイルする彼らが、現在進行形のスタイルにアプローチする。そんなコトにドキドキしたのです。この「STEPPAS' DELIGHT」(オールドスクールヒップホップの古典 SUGARHILL GANG「RAPPER'S DELIGHT」の故事に倣った、意欲的なネーミングにも敬意!)シリーズ二枚に加え、SOUL JAZZ「BOX OF DUB - DUBSTEP AND FUTURE DUB」というコンピを2枚、2007年にリリースしてる。このシリーズを網羅すれば、DIGITAL MYSTIKZ、KODE 9、SKREAM !、BENGA、PLASTICIAN、といったこのシーンの主要アーティストを一括りでチェックする事ができる。
ダブステップという言葉が登場したのは、2003年頃のサウスロンドンであるようだ。2008年リーマンショック以前のロンドンは一種のバブル経済でどんどん再開発が進み、街も成金めいたビジネスマンが闊歩するようになったという。ドラムンベースの成果をコジャレたハウスミュージックで甘くコーティングしたような音楽として時代に響いた2ステップは、そんな気分を反映していたのかもしれない。一方で、分厚い階級社会であるイギリスで誰もがそんな好景気の恩恵を受けられるはずがない。移民系のマイノリティだってロンドンには大勢いる…彼らの不満や怒りはドコに?そんな層から支持されて成長したのが、グライムでありダブステップであった。アメリカでいうヒップホップのポジションを担うようになるグライムは、感情に喩えれば「爆発する激情」。ワイルドなストリートライフを言語化して世間に告発する。そしてダブステップ「秘められたる激情」グライムのようにMCやボーカリストを据えない純粋クラブミュージックであるダブステップは、非言語のレベルで怒りを表現する。
●野太いベースと鋭いドラムという構造としては、ダブステップドラムンベースダブと同じだ。ただ、そのグルーヴには独特の「未解決」感覚がある。…実は、ダブステップ、イマイチ痛快には踊れない。意図的に「つんのめる」ような欲求不満をリスナーに強いる。強烈なスネアがグルーヴをズタズタと寸断して、敢えて疾走感を遮断している。なのに、ダブのようにユッタリ腰を据えた安定感もない。ドコにも解決していかないダンス衝動が蓄積されていく…。実に奇妙な感覚をこの音楽を聴くボクに植え付ける。
●これはナニを暗示しているのか?コレこそが「秘められたる激情」だ。好景気に浮かれる世間から疎外された人間が、鬱屈とした怒りをタダひたすら内側に押し込める…この有毒ガスのような不完全燃焼グルーヴと、容赦のない重低音ベースの圧力で、グラグラ煮えたぎる怒りの感情が爆発寸前の緊張にまで高められる。暗黒の中で高熱を孕む沈黙の激情。これがダブステップの真価ではなかろうか。
ダブステップの存在をボクが察知したのは2005~2006年あたりのコトで、今日紹介している音源もほぼリアルタイムで入手している。しかしこのブログでなかなか触れるコトができなかったのは、長い時間をかけても、この音楽に通底している感覚を言語化できなかったからだ。コレで正解とは思ってないが、やっと感情レベルで理解が出来たような気がした。

BURIAL「BURIAL」

BURIAL「UNTRUE」


BURIAL「BURIAL」2006年
BURIAL「UNTRUE」2007年
●コンピレーションを買ってるとはいえ、一方でダブステップのアーティストアルバムを、ボクはほとんど買ってない…。敢えてワザワザ買ったのは、SKREAM !「SKREAM !」2006年とこの二枚だけだね。そう、ナゼかコイツは実に気になる。
BURIAL という言葉を直訳すれば「埋葬」。あまりに底意地の悪いダークさが本当に気になる。深いエコーが確かにダビー、暗い夜のベッタリした湿度を感じる。曲名に見える言葉は、DISTANT LIGHTS、NIGHT BUS、BROKEN HOME、IN MCDONALDS、HOMELESS…。視点はダンスフロアを離れて、都会の寂れた風景の中に移ろいゆく。底辺から社会を見上げる都市生活者の冷えた日常とやり場のない鬱憤を象徴しているかのよう。MASSIVE ATTACK の21世紀版みたいな表現をされる時もあるようだけど、あのヒップホップベースの腰の据わったグルーヴとは微妙に異質の、座りの悪さが緊張と不安を煽る結果となってる。セカンドアルバムの「UNTRUE」になると、ボーカルをフィーチャーする楽曲も多くなり、ソウルフルな印象も醸し出すに至る。
●彼の作品をリリースするレーベルの名前は、HYPERDUBダブステップシーンの初期から活躍するアーティスト KODE 9 の主宰するレーベルだ。「ダブを超えていく」。そんな強い意志を感じる。



そして、JAMES BLAKE。ポスト・ダブステップ。グローファイ/チルウェイヴ。暗い密室のソウル。

JAMES BLAKE「JAMES BLAKE」

JAMES BLAKE「JAMES BLAKE」2011年
●これは去年一番繰り返し聴いたかも知れないアルバムだ。イロイロなコトがあった2011年、日常生活の中でヘコム事があった時、この音楽の内向きな優しさに助けられた…。
●結局の部分では、救いのない歌詞がか細いファルセットで淡く響くのみ…ダブステップの延長にある過酷なベースの音響が真っ暗な空間を支配しており、そしてそのスキマに大きく用意された無音のブレイクがその暗闇の深さを象徴している。しかし、彼のボーカルと、素朴なピアノタッチが、その大きな闇の中で小さくマッチを摺るようにほのかな人間性の温もりを感じさせる。この人間性の部分が、ソウルとして響く。熱量で言えば小さいソウル、しかし絶対零度の暗闇の中ではコレが暖かく優しい。そんな音楽。
●ロンドン出身の22歳。このファーストアルバム以前はストレートなダブステップのシングルを発表していた男。コンピ「STEPPAS' DELIGHT 2」にもそんな楽曲が収録されている。しかしこのアルバム以降は時代の寵児として様々なメディアやフェスで活躍することとなった。これは新しいソウルミュージックだ。ダブがイギリスのダンスフロアの中で化学変化を起こして生み出した、21世紀のソウルミュージック。世間では、この傾向の音楽を、グローファイ/チルウェイヴと呼ぶらしい。正直、現段階でこの言葉が指す意味や気分はボクにはあまりわからない。ただし、ダブステップが新しい段階に進化したのは明白となった。このような人間性の細かい機微を表現するに至ったのだ。
●一方、SOUL JAZZ RECORDS はダンスフロアにおけるダブステップの進化系を模索する新たなコンピをどんどんリリースしている。新型のグルーヴは次々に開発されていく。



●今日は、ジャマイカで生まれた「ダブ」という手法が、イギリスという全く別の環境で独自の進化を遂げて、実にユニークな音楽を生み出していった流れを見つめてみました。JAMES BLAKE の表現は実際とてもユニークで、イギリス人ならではのクリエイティヴだと思っています。これをソウルミュージックと呼ぶか?それは人それぞれかも知れません。ただボクが一番意味があると思っているのは、このような奇妙な曲解誤読が起こるコトの楽しさです。突然変異が発生し、新しい進化が起こる。そのユニークさに注目してそれを育む視点を持ちたいと常に思っています。







●大分、ブログ更新を怠ってきました。
●Facebook も twitter も完全放置してます。とにかく仕事が忙しい。
●でも退屈じゃないので楽しいです。


FLORENCE & THE MACHINE の来日公演(2月1日@赤坂BRITZ)に行ってきました!

FLORENCE + THE MACHINE の来日公演

スゴかった…。ちょっと涙出てきちゃった。
●裾を引きずるほどの長いガウンを羽織って登場してきた…と思ったら、それは桜色の振り袖だったのね。両手を大きく広げて栗色の髪を振り乱しながら渾身のボーカルを鳴らす FLORENCE WELCH の姿は、中世ヨーロッパの神話世界から抜け出てきたような異教の精霊のようでした。力強いドラム隊が打ち響かせる大きなグルーヴの中から、聴く者の胸を真っ直ぐ射抜くように彼女の声が放射される…ただただ圧倒されるばかり。
●目を閉じてマイクに声をぶつけるだけに専心しているように見えてた彼女、徐々に高揚してきたのか振り袖を翻してステージ狭しと飛び跳ねる。その顔が実に眩しくてコチラまでその高揚感が伝わってくる。初めて訪れた異国の地で音楽を鳴らす嬉しさが、エネルギーになって会場を包んでる。CDで聴いていたイメージではもっと華奢な印象だったのに、実にエモーショナルで生命力溢れるパフォーマンスでした。

FLORENCE + THE MACHINE「LUNGS」

FLORENCE + THE MACHINE「CEREMONIALS」

FLORENCE & THE MACHINE「LUNGS」2009年
FLORENCE & THE MACHINE「CEREMONIALS」2012年
FLORENCE WELCH はロンドン郊外出身の25歳。去年の U2 の北米ツアーでオープニングアクトを務めたり、グッチが衣装のデザインを手がけたりと、各界から高い評価を得ている話は聞いてた。けど自分の目で見るまではピンとキてなかった…オーバープロデュースで作り込まれたチェンバーポップと思ってた。でもパワフルでした。バンド THE MACHINE の演奏が実にタフだった!
●この二つのアルバムにまたがって仕事をしているプロデューサーは、PAUL EPWORTHFRIENDLY FIRES ADELE などを手掛ける00年代注目の人物。ボクにとっては BLOC PARTY の傑作「SILENT ALARM」で印象深い。THE FUTUREHEADSTHE LONG BLONDES、MAXIMO PARK も手掛けてるのね。みんなボクの好きなバンドだ。BABYSHAMBLES「KILLAMANGIRO」ってのも重要な仕事だ。ちなみにセカンドは ABBY ROAD STUDIO で収録だ。
FLORENCE & THE MACHINE でお気に入りの曲をメモしておくと…「DOG DAYS ARE OVER」イントロのハープがチャーミング。力強い肯定感が気持ちよい。「RABBIT HEART (RAISE IT UP)」ウチにもウサギが一匹いるもので。「KISS WITH A FIST」彼女の曲には珍しいタイプの小気味いいガレージロック。「SHAKE IT OUT」ライブで感涙してしまった曲。「SPECTRUM」パワフルなサビが大迫力。