●先日、水戸に出張しまして。水戸ってなかなかイカナイ場所だよね…人生で二回目。
●で、その帰りに大洗まで寄り道して、アンコウ鍋を食べました。

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アンコウを食べるのは生まれて初めて。
大洗のアンコウ鍋は本場ということで、他ではナカナカにレアという「どぶ汁」というスタイルでいただいた。アンコウのキモをおナベでしっかり炒めてペースト状にした上で、そこから滲み出たアブラとともに、スープに加える濃厚な食べ方。味噌も加えてツユは茶色になる。そこにボリュームタップリのアンコウの身、エラ、ヒレ、卵巣、ゼラチン質の皮までが入ってグツグツ。いやーおいしーわ。シメのおじやも美味しかった。オナカイッパイ。


●グルメな先輩に連れられるままにやってきた、この茨城県・大洗という町。
実はアニメが観光の目玉らしい。よく知らなかったんだけどね。

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●街を見下ろす大洗マリンタワーに登ってみた…入場料320円。
●太平洋に面した港町。北海道まで行ってしまうフェリー「さんふらわあ号」があったり、アウトレットモールが見えたり。なぜか、明太子のテーマパーク「めんたいパーク大洗」なんて場所もある。屋根の上に大きな明太子がのっかってて目立つ。

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●そんで、なぜか実にアニメな女の子のパネルがある。「ガールズ&パンツァー」。この子たちのパネルやのぼりが、大洗には町中にある。水戸からこの町に続く鹿島臨海鉄道も、車両がこのキャラクターに完全ラッピングされてる。大洗の駅にはお土産屋さんにこのアニメのグッズがたくさんあって。で、しょうがないから「鹿島臨海鉄道&4号戦車」ミニミニプラモデル(2100円)まで勢いで購入してしまったよ。

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●でもさ、このアニメ、ボク見た事ないのよ。さっそくネット動画配信「U-NEXT」で第一話だけ見てみた。
●アニメ「ガールズ&パンツァー」。華道や茶道と同じように、女子のたしなみとして「戦車道」なるものがある世界。第二次世界大戦時の戦車を駆って、女子高生が戦車で互いに戦うという設定。ゴツいビンテージミリタリーとゆるふわな萌え女子の違和感がなんとも言えない気分。ここで凸凹なキャラを持つ女の子たちがチームワークを育てて行くお話らしい。

ガールズ&パンツァー

●で、このアニメの舞台が、大洗町らしい。彼女たちが通う「県立大洗女子学園」は、周辺の住宅地まるごとがなんと大きな空母の上にある設定で、大洗港がこの空母の主な寄港地なのらしい。
なんで大洗なの?ってのは、バンダイビジュアルのプロデューサー杉山潔さんの思い入れらしい。大阪出身ながら筑波大学に通った杉山さんはすっかり茨城県のトリコとなり、今の自宅も牛久、ビーチや水族館もある大洗には家族を連れて頻繁に訪れてたらしい。舞台を地方都市にしようということになった段階で、大洗町を提案。監督もすぐに現地視察して気に入ってくれたという。
大洗は、東日本大震災で大きな津波被害に遭った土地。しかし、被災三県という言い方が定着しつつあるけど、茨城県はそこから取りこぼされてる。ボク自身もアンコウ鍋のお店で311の話を聞かなければスルーしてしまっていただろう。そんな中、この町は復興に向けて知恵を絞り、このアニメを足がかりに様々な企画を打ち出してる。WIKIに出てるだけでも、様々な地域のお祭りで自衛隊戦車の展示を行ったり出演声優さんを招いたりしている。グッズも豊富で記念乗車券や特別住民票を発行するなど機動力ある施策を次々に打ち出してる。アンコウ鍋のオバちゃんもタクシー運転手さんもみんなアニメのカンバッジをつけてたもんね。
●北海道のある町は、村上春樹の作品に取り上げられたコトに抗議して作家に町の名前を修正させてしまった…世界的な知名度を持つ作家の作品に取り上げられる事の意味がよくわかっていないって残念だね…たぶん村上春樹を読んだコトがなかったんだろうね。



「先輩ROCKYOU」というトーク番組に加藤ミリヤがでてた。

「先輩ROCKYOU」というトーク番組に加藤ミリヤがでてた。

●ナニゲに、ウタを歌わないトークだけのテレビ出演ってのが初めてらしい。しかもこの番組に出たい!という本人発の希望。へー。確かにこの番組、けっこうマニアックなキャスティングで実際オモシロいんだよね。ミュージシャンも結構出てるしさ。

●そこで、彼女の楽器を使わないプロデュース・ワークがユニークに紹介されてた。
●まずは、楽曲のコンセプトになる「企画書」を作成するとな。メッセージの骨格や狙いをメモにして、歌詞のヒントにする。時にはプロモーションのアイディアまで書き込んで。そこから歌詞まで仕上がったら、スタジオに入ってトラックメイカーとオケの作成。楽曲の輪郭とアレンジを詰めるが、メロディはここでは手をつけない。そして自宅に戻って、何度もオケを聴いて。そんでMACを手元に近づけて。MAC のマイクに向かって。ドンといきなり歌ってみる。何回か歌って、メロディを極める。コレをデモにしてレコーディング。
●つーか、これ、完全にヒップホップソウルじゃん。トラック先行で、シンガーが後からメロディを乗せる。TIMBALAND などはトラックはいくらでも作れるけど自分じゃウタメロは作れないというし。そしてシンガーは、楽器も楽譜も介さずにメロディを編み出す。へー。と感心した。

だから、加藤ミリヤの音楽を聴く。

加藤ミリヤ「BEST DESTINY」

加藤ミリヤ「BEST DESTINY」2004-2008年
彼女のベスト盤なんだけど、ユニークなのはサンプリングを駆使した選曲になってること。彼女のヒップホップ的側面を強調する作りになってるんだよね。「19 MEMORIES」安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」1996年をガッツリ大ネタ使いした曲だし、「ジョウネツ」 UA「情熱」1996年をガッツリサンプルしている。BUDDHA BRAND「人間発電所」1996年を使った曲も二つ…1996年ばっかじゃないか!88年生まれのミリヤ本人はまだ10歳にもなってないよ?反対に1996年が当たり年ってことか?ボクの世代としては SHANICE「I LOVE YOUR SMILE」1991年がちょっと甘酸っぱい。RIP SLYME「ONE」2001年もイイ選曲だなあ。「FUTURECHECKA FEAT. SIMON, COMA-CHI & TARO SOUL」 ZEEBRA 兄さんの「PARTEECHECKA」のアンサーソングという位置づけ。ZEEBRA 兄さんもこの曲はお気に入りで「DANCEHALL CHECKER (LONG MIX)」と改題したレゲエ風バージョンでは、PUSHIM、BOY-KEN、YOU THE ROCK★、TWIGY、SUGAR SOUL、SHIBA-YANKEE、DEV LARGE、RINO を客演に召喚。豪華過ぎる。ミリヤちゃんバージョンは新世代版ということだね。

加藤ミリヤ「TOKYO STAR」

加藤ミリヤ「TOKYO STAR」2008年
●現役高校生としてデビューした彼女、この3枚目のアルバムの段階でもまだハタチになってなかった…。安室サンプル「19 MEMORIES」「FUTURECHECKA」を収録した作品で、ヨハン・パッヘルベル「カノン」のフレーズをざっくり拝借アレンジした「LOVE IS...」も有名。ヒップホップソウルアプローチはこのあたりで完成したのか、同年リリースの「BEST DESTINY」リリースでサンプル大ネタ使いは封印したという。若旦那 FROM 湘南乃風 をフィーチャーしたシングル「LALALA」ではトラックメイキングを奥サマ MINMI が担当。ただし、ソレ以外の楽曲はサンプルネタ/客演由来のクレジット以外は全て詞曲ともに全部本人が担ってる。早熟!

加藤ミリヤ「RING」

加藤ミリヤ「RING」2009年
加藤ミリヤ×清水翔太名義のヒット曲「LOVE FOREVER」が個人的にはよく耳に馴染んでいた音源。清水翔太×加藤ミリヤ名義のアンサーソング「FOREVER LOVE」もよく聴いた。音楽的には、ヒップホップテイストよりもハウシーな四ツ打ち感覚が目立つようになってきた頃。後発の西野カナがこの年にファーストアルバムを発表、「ケータイ系」「ギャル歌謡」などの言葉でこのあたりのシンガーがくくられる状況ができる。「ケータイ系」って…「着うた」の時代ってコトだね。まさかスマートフォンの登場でこの市場が溶解してしまうとは思わなかったな。大過去じゃないのに、もはや懐かしい。


●ガラケーと音楽。2008年、2009年は、着うた/着うたフルの時代。

青山テルマ「DIARY」

青山テルマ「DIARY」2008年
加藤ミリヤの最初のベストと青山テルマのこの出世作が2008年で、西野カナ2009年にアルバムデビュー。「ケータイ系」「ギャル歌謡」と言われたクリエイティヴがこの時期で一つの臨界点を迎えてたってのは覚えていてイイ気がする。着うた/着うたフルの累計有料ダウンロード数が10億回を超えたのが2008年。単年の市場規模としても着うた/着うたフルが最高潮だったのが2008年と2009年だ。2012年段階でこのピークから市場規模は半分になってしまう。ここが音楽の聴かれ方に携帯電話が大きく関わった時代。ボク自身は結局ガラケーで着うたフルを購入する事はなかった…他の媒体で聴けないってのがどうも馴染めなくて。MP3には抵抗がなくなってたけど、着うたはダメだった。
テルマちゃんの代表作である「そばにいるね FEAT. SOULJA」2008年上半期の着うた系ランキング6部門で一位を獲得してる。圧倒的なケータイからの支持だ。ジャケに写る白いヘッドホンが渋谷で流行なんて話題もあったが、携帯電話で彼女の音楽を聴くにはヘッドホンが前提、という意味でも暗示的だ。ちなみに2008年、2009年のスマホ契約比率は5%に満たない。世間はガラケー一色だった。

彼女の音楽がケータイ/ガラケーというメディアに、どのように相性がよかったのか?「そばにいるね」は、スローテンポのヒップホップソウルで、内省的に抑制されたウィスパーボーカルが特徴的な曲。複数人でラウドに聴くための音楽というよりは、ただ一人ヘッドホンで孤独に向き合って聴く音楽だ。「あなたのこと私は今でも思い続けているよ 〜 心の中ではいつでも一緒にいるけど寂しいんだよ」ケータイそのものもリリックに出て来る。「あなたからの電話待ち続けていた 携帯にぎりしめながら眠りについた」しかし、ただ音響の形態がケータイに向いていただけではない。
携帯電話は、音声通話だけのツールではない…メールによるテキスト交換のツールだ。携帯をにぎりしめた少女たちは、テンキーを巧みに操作しながら、自分の思いをどうやって相手に伝えたらイイのか、悩ましい夜を幾晩も乗り越えたに違いない。そんなに長文を送れない(送ったらなんかヒカれそう)という意味でも、和歌という31文字フォーマットで男性に想いを伝えた平安貴族の女性と同じ感覚だったと思う。「そばにいるね」のリリックは、そんな少女たちの本心を代弁したに違いない。この曲の歌詞はある意味直球すぎてメールにしたら「重過ぎる」ので、こんな内容は結局送信されず終いだったろうが、本当だったら送信してしまいたかった純度の高い本音がこの歌詞に結晶していたのだと思う。その意味でケータイ世代の内面をキチンと写し取っていたに違いない。そんな風にボクはこの音楽を聴く。


●関係ないけど、最近はカタカナ混じりの名前が多いよね。

黒木メイサ「ATTITUDE」

黒木メイサ「ATTITUDE」2010年
加藤ミリヤ、西野カナ、青山テルマ、ってみんな下の名前がカタカナだよね。沖縄出身のハーフである黒木メイサさんも英語由来の名前だからカタカナなのかな?ドーキンズ英里奈とかトリンドル玲奈とかダレノガレ明美とか、最近のトレンドは名字がカタカナが主流のアプローチみたいだけど。
●さて、女優が本業の彼女だけれども、音楽活動もやってる。ベートーベンの第五番をサンプルしたシングル「SHOCK -運命-」がキッチュに聴こえて気になってしまった。その後にリリースされたミニアルバムがコレ。フューチャリスティックな硬質アレンジに、彼女のクールな声が絡む。まーそれだけだけど。




●動画。



●加藤ミリヤ「19 MEMORIES」。安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」を大ネタ使い。サンプル元の安室奈美恵自身が今だにシーンに君臨しているトコロがスゴい。安室ちゃんは日本の MARY J. BLIGE か。



●加藤ミリヤ×清水翔太「LOVE FOREVER」。オーセンティックなヒップホップソウルから、軸足をハウシーな感覚に移行した段階。カラオケ男女デュエットとしても高機能。



●青山テルマ「そばにいるね FEAT. SOULJA」。この粘着質な女性の怨念が「ギャル歌謡」または「ギャル演歌」などと呼ばれる所以だと思う。でもアルバムを通して聴くと爽快で外向的な R&B がタップリなんだけどね。



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●朝メシに、ダノンのヨーグルト食べてたら「無理しないで」だって。

ダノン

●今週来週と、ちょっと無理してるんだよね…。来週は久しぶりに2日連続の徹夜仕事だわ。
●なのに、完全に風邪引いてる。パブロンと葛根湯飲んでる。しんどい。


●いつも着てるドイツ軍のミリタリーコートが重たいので。
●クローゼットから出てきたナイロン生地のコートを着るようにしたら、バックパックとこすれて静電気がスゴい。
●で、この静電気が、見事に iPod のイヤホンを経由して、耳の穴でパチパチしやがる。
●普段は気にならない静電気だけど、耳の穴はイヤだ。音楽聴くって、イロイロあるのね。



ヒューストンのヒップホップが、予想以上にソウルフルで。

UGK「UNDERGROUND KINGZ」

UGK「UNDERGROUND KINGZ」2007年
●イーストサイドのニューヨーク、ウエストサイドのロサンゼルスが圧倒的な存在感を放つのに対して、サウス系ヒップホップは一極集中型でななく、重要都市がいくつか並列して存在してる。アトランタ、ニューオリンズ、マイアミ。そんで、テキサス州の中心都市ヒューストン。それぞれが独自のシーンと独自のスタイルを持ち、共振しあってる。ホントに奥深い。
ヒューストンは、ジョンソン宇宙センターがある宇宙開発の街でもある。JPホーガンのSF小説「星を継ぐもの」では、国連宇宙軍の拠点がヒューストンに作られ宇宙開拓の最前線になっていた。実際のヒューストンも石油産業で栄えるアメリカ経済の超重要都市。息子ブッシュがテキサス州知事を経て大統領になったのも無縁ではない。ヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」では、ダウンタウンの高層ビル街があまりに非現実的な無機空間として切り取られていた。

●今日聴いている UGK は、そんなヒューストンで90年代初頭から活動していたヒップホップデュオ。UGK はアルバムタイトルずばりの由来で「UNDERGROUND KINGZ」の略。直球といえば直球だけど、たしかに90年代初頭においては彼らの存在はまちがいなくアングラだったのだろう。それ以降、このヒューストンにおいて王者として君臨し、シーンを牽引してきた。
●で、彼らが二人健在だった時代の最後のアルバムがコレ。メンバーの PIMP C がこのアルバムリリース後の2007年、ドラッグ禍で急逝するからだ。硬派でタイトなラップまわしが男前の BUN B と、ファンキーでかつ少々トリッキーなフロウが個性的な PIMP C の対比がこのデュオの魅力だったが、その片方がいなくなってしまった。こと、PIMP C はトラックメイキングも担っていたので、UGK はコレ以降実質的に機能を停止してしまう。実に残念。

「アングラの王」と名乗りながらも、ココで鳴っている音楽は、実にキャッチーでソウルフルだ。リリース初週でいきなりビルボードチャート1位を獲ってしまったほどだ。贅沢なサンプルやシンガーの熱いウタ、多彩なゲストが実にゴージャス。WILLIE HUTCHALLEN TOUSSAINT、AL GREEN、GLADYS KNIGHT & THE PIPS、EARTH, WIND & FIRE、LONNIE LISTON SMITH、などなどをサンプルしていて、70年代ソウル/ファンクに対する正しい敬意があることをキチンと示している。その上で、PIMP C自分で歌っちゃってる?印象的なサビがあまりにねちっこくて、ココにトロみのあるファンクネスが宿る。00年代のサザンラップには欠かせないチキチキバウンスビートの細かいハイハットは、やっぱり基調として全部に仕込まれてるが、その存在を忘れるほどウタの軸がシッカリしている。まさに王道。
●ゲスト/プロデューサーとしては、アトランタ派の加勢が目立つ。ソウルフルなトラックが印象的な JAZZE PHA。ヒットシングル「INT'L PLAYERS ANTHEM (I CHOOSE YOU)」では、OUTKAST も参戦。クランクミュージックの LIL JON もいる。同じサウス系としては、マイアミ RICK ROSS に、テネシー州メンフィス THREE 6 MAFIA が活躍。もちろん地元ヒューストンの後輩たちも参加。SLIM THUGZ-RO ね。特に Z-RO は気になる。あ、ヒューストンだけでなくサウス系全ての大先輩 SCARFACE も降臨。彼は80年代から活動するサウスの先駆者。イギリス/ロンドンのグライムMC DIZZEE RASCAL まで参加してるのは意外!

●この時代のサウス系に特徴的なミックススタイル「チョップド&スクリュード(CHOPPED & SCREWED)」にも触れておこう。ヒューストン出身の DJ SCREW という人物が編み出した、トラックの回転数を際限なく遅くするテクニックこの時空が歪むような感覚が、ドラッグ摂取の陶酔感と相性がよいようで。シロップとかコデインという種類のドラッグシーンと結びついてチョップド&スクリュードは流行し、サウス系のアーティストは、アルバム1枚分を全部スクリューリミックスしてスグにリリースするようなことをしてた。ここでもボーナストラックで「INT'L PLAYERS ANTHEM」スクリュー版が収録されてるし、曲名がズバリの「COCAINE」もスローダウンした不穏な空気がスクリューと同じ感覚に繋がってる。そんなことしてるから、ドラッグで死んじゃうんだろうね。DJ SCREW もコデインで死んじゃってるからね。

BUN B「TRILL」

BUN B「TRILL」2005年
●2007年の「UNDERGROUND KINGZ」以前、実は UGK 活動休止状態になってた…2002年に PIMP C が逮捕収監されちゃってたので。そこで相棒 BUN B はソロ活動を開始。男気迸るストリクトリーなラップアルバムを完成させる。イントロを経ての二曲目「BUN」で、ミニマルな高速トラックに BUN B たった一人がタイトにラップをさばく様子が実に硬派。
●とはいえ、このアルバムは豪華なサウス人脈ゲスト陣とのコラボこそが聴きドコロかも。地元ヒューストンからは、前述の Z-RO、SLIM THUG、そして LIL' KEKE、PAUL WALL、CHAMILLIONAIRE、MIKE JONES、LIL' FLIP。もちろん SCARFACE も。アトランタからは T.I.、YING YANG TWINS、LUDACRIS、YOUNG JEEZY、JAZZE PHA。ニューオリンズからは、JUVENILE、BABY A.K.A. BIRDMAN、MANNIE FRESH が参戦。
●サウンドのスタイルにおいても、サウスモノとしてある意味オーセンティックなバウンスビート。チキチキのハイハットをバラまいて、切れ目なくズルズルとテンションを持続させていく様子は、まぎれもないダーティサウス。「GET THROWED」のスクリュー感漂うドロドロ加減は、シンセ構築のトラックにドロを塗るようなラッパーのルードなワザが前提。一時は CASH MONEY RECORDS の全音源を手掛けてた MANNIE FRESH は、全盛往時の勢いは削がれているものの、空間を埋め尽くす小刻みなビートが生み出す特殊ファンクネスにはやっぱり敏感で実に濃ユイ。クランク野郎 LIL JON が手掛けた「TRILL RECOGNIZE TRILL」は、ギターもフィーチャーしたハードさがグツグツと煮えクリかえって不穏。 MR. COLIPARK が仕掛ける「GIT IT」は音数を絞ったスナップミュージックで、そのスカスカさを埋め尽くす技量と圧力をラッパーに要求する。ダーティサウスの楽しみは一種の畸形美で、そのイビツさを広く網羅するこのアルバムは確かにホンモノ。

BUN B「II TRILL」

●BUN B「II TRILL」2008年
●ソロ第二弾。ダーティサウスに軸を置きつつも豪華コラボは全米へ拡大。単純なバウンスビートに括られない多彩なトラックと様々な個性派のワザ師が次々と登場して、非常にバラエティに富んだ作品に。RICK ROSS、ミシシッピのラップ達者 DAVID BANNER、メンフィスのベテラン 8BALL & MJG を召喚した「YOU'RE EVERYTHING」は、なんと JODECI のサンプル使いでめっちゃソウルフル。ジャマイカ出身のシンガー SEAN KINGSTON を客演に招いた「THAT'S GANGSTA」もダーティな中に彼のウタが一服の清涼感として挿入されててイイ。他にもシンガーを迎えたトラックは多い。MYA、LYFE JENNINGS、レゲエシンガー JUNIOR REID
●それでもダーティサウスの特殊ファンク/バウンスビートは健在で。JUVENILE WEBBIE が客演する「POP IT 4 PIMP」の奇妙な重心に少し酔うし、LIL WAYNE がエイリアンのような声を披露する「DAMN I'M COLD」もダーティ。CHAMILLIONAIRE をフィーチャーした「UNDERGROUND THANG」はラテン風味か。



●動画。



●UGK FEAT. OUTKAST「INT'L PLAYERS ANTHEM」。
●WILLIE HUTCH「I CHOOSE YOU」をサンプルして華やかな結婚式。新郎は OUTKAST の ANDRE 3000、スコットランド風にスカートを穿いてやがる。PIMP C はピンプ風のファーコート、BUN B はブリンブリンな光り物にキャップ。最後はキャットファイト。なんでやねん。



●BUN B FEAT. RICK ROSS, DAVID BANNER, 8BALL & MJG「YOU'RE EVERYTHING」。
●追悼、PIMP C。そしてサウスの顔役たち。



今日は、LOU REED を聴いてます。

LOU REED「THE BLUE MASK」

LOU REED「THE BLUE MASK」1982年
●去年12月に、yuccalina さんという方からこのブログにコメントをいただいてました。LOU REED が去年亡くなった記事に対して、yuccalina さんは LOU REED の印象深いアルバムとして「LEGENDARY HEARTS」1983年の名前を挙げてくれたのです。で、早速、このアルバムを聴こうと思って、CD棚やレコード棚を探してみました…でも、見つからない。どんなに探しても見つからない。おっかしーなーどこやったっけ?その後も探して探して、そんでもう2か月がたって、たった今やっと気づきました。あーボクは「LEGENDARY HEARTS」持ってないんだ!
●あの有名なヘルメットジャケが印象に強く残ってて、てっきり持ってると思ってた…。わりと、持ってないと思って同じCDを二枚買うってのはよくやってしまうマチガイなんですが、持ってないものを持ってるって錯覚をしてしまったのはなんか新鮮な体験。うわー聴きたいのに聴けない!くそー。
●ということで、「LEGENDARY HEARTS」の1枚前の「THE BLUE MASK」を聴いてます。これはよく聴いてたアルバム。ボクが特にたくさん聴いてた時期は21歳の頃ですわ…アメリカ旅行に行ってしこたまレコード買ってきて…その中の1枚。今でも安っぽい値札シール「$6.99」がジャケにくっついてる。高校生の頃から聴いてた THE VELVET UNDERGROUND からボクの関心が LOU のソロキャリアに移ってきた頃。大学の先輩や友達からファーストソロ「LOU REED」「TRANSFORMER」を聴かせてもらって、そんで LOU REED は渋いよなーとかバカみたいに酔いしれながら、このレコードに針を落したものです。

●で、今聴いてもそのジットリとした落ち着きは健在で。独特の湿度が、このアルバムには漂っていて。乱暴でガサツな会社員生活から切り離して心をクールダウンするのに、この濃密な湿度は魂をジュグッとモイスチャリングしてくれる。ゲイ/バイセクシャルを気取ってきたこの男が「WOMEN」という曲で「I LOVE WOMEN」と何回も甘美に歌うとき、ギターはとても優しくて。ムリヤリな仮面や外装は重たくて、いつかは外して素顔に戻る必要がある。彼のキャリアの中でこのアルバムの位置づけでは、ゲイジャンキーのキャラをぬぐい去って、等身大の男一人として振る舞い出したタイミング、って言われてる。晩年は LAURIE ANDERDON と慎ましやかな夫婦生活を送った LOU。よかったね。豊かな人生だったね。
●そんなタイミングに相応しく、バンドもアレンジも最小限。ドラムとベースとギターのみ。特にベースがセクシー。FERNANDO SAUNDERS というプレイヤー。ギターは ROBERT QUINE という男、RICHARD HELL & THE VOIDOIDS でギターを弾いてたヤツ。ちょいちょいトリッキーなワザをギターに仕込んでるのはこの男の仕事か。QUINESAUNDERS は、やはりボクの愛聴盤である LOU REED のライブ盤「LIVE IN ITALY」1983年でも、yuccalina さん推薦の「LEGENDARY HEARTS」にも参加している。
●表題曲「THE BLUE MASK」は、このアルバムの中で一番タフなロック。重厚なグルーヴとノイジーなギターがロックンロールのカタルシスを味わせてくれる。「WAVES OF FEAR」もヒネクレたギターがイイ味出してイイネ。

LOU REED「MISTRIAL」

LOU REED「MISTRIAL」1986年
●もう1枚、LOU REED「LEGENDARY HEARTS」の次のアルバム「NEW SENSATION」1984年も持ってないことが判明しました…LOU REED、ちゃんと買いそろえてるつもりが、全然ヌケヌケになってるじゃないか。バカだなあ!ということで、さらに次のアルバムにあたるこのCDを聴いてみるのです。
●この「MISTRIAL」は、実はほとんど聴いてなかったです。たぶん一回しか聴いてない。だって、ビックリするほど LOU REED っぽくなかったんですもん。ドコをどう切ってもオモシロくない!軽薄な80年代ロックだねえ!そう思ったのを覚えてます。当時ボクはまだ20歳代で、こらえ性がまるでなかった。ジャケのテイストだって、彼のキャリアの中ではだいぶ異色ですよ、いっつも思いきりダークかモノクロトーンな気分なのに、真っ赤だなんて!いつものように400円くらいで買ったので、シレッと失敗だと決め込んでCD棚に収めときました。yuccalina さんのコメントがなかったら一生聴かなかったかも。
●そんで落ち着いて聴いてみるのですが、それでもキツい。だって LOU REED がラップしとるんですわ。むしろビビって逆にスゴい!80年代風ファンクの中途半端に速いテンポに乗って、ラップする「THE ORIGINAL RAPPER」という曲。そもそもの LOU のボーカルスタイルがポエトリーリーディングみたいだったりするので、ラップというかただ早口でしゃべってるだけに思える。「THE BLUE MASK」の頃から LOU REED を支えるベーシスト FERNANDO SAUNDERS が共同プロデューサーをやってるんですが、このタイミングでこの人が黒人さんだという事実を知る…はああ、そうなのね。
LOU REED のロックンロールの醍醐味である、ドライブするギターは、一応機能している。その駆動力こそがカッコイイ…はずなんだけど、なんかコレも80年代風のレコーディングなのか、イマイチ芯を外してしまってる。 あ!これ、もしかして LOU REED なりのニューウェーヴのつもりなの?!あーそういうことなのかー、なんかちょっとだけ納得できた。



LOU REED の流れから彼の曲にちなんだロックフェス・コンピへ。
「ALL TOMORROWS PARTIES 11」
VARIOUS ARTISTS「ALL TOMORROW'S PARTIES 1.1」2001年
「ALL TOMORROW'S PARTIES」といえば、LOU REED が60年代に率いたバンド THE VELVET UNDERGROUND の名曲タイトル。バンドのパトロンだったポップアートの巨匠 ANDY WARHOL の虚しきパーティの喧噪をも連想させる素晴らしい曲だ。そんな名曲タイトルを拝借したロックフェスが2000年からイギリス/アメリカで行われている。しかも、ただのロックフェスではない。ポストロックやアバンギャルド系、そしてアンダーグラウンド・ヒップホップといった、辺境地帯に偏った音楽性、加えて都度都度のイベントの出演者ラインナップは、バンドやミュージシャンのキュレーションによって決められるというルールを持っている。とってもユニーク。
●このCDは、そのアメリカ開催第一回目、2002年の UCLA で行われた出演者ラインナップを、彼らの未発表曲でコンパイルしたもの。キュレーターは SONIC YOUTHTHE VELVET UNDERGROUND を始祖とするニューヨークパンクの流れを直系として受け継ぐ存在だ。一曲目はもちそん SONIC YOUTHLOU REED が描く湿り気ある落ち着きを、冷めて乾いた音響で代替して抽象美に昇華させる。結果、落ち着く。
SONIC YOUTH と同時代に活躍したミュージシャン、そんでボクの音楽的ヒーローたちが数々収録されてる。脱力ロウファイバンド PAVEMENT を解散させた後のボーカル STEVE MALKMUS、イギリスの音響派 STEREOLAB、日本が世界に誇るアヴァンギャルドノイズ BOREDOMS、00年代フォーキー女子 CAT POWER(彼女は SONIC YOUTH のドラマー STEVE SHELLY と縁が深い)。ヒップホップからは、アングラ総本山とも言えるレーベル DEFINITIVE JUX CANNIBAL OX が参加。このあたりのアングラヒップホップは、BUSTA RHYMES の記事にコメントをよせてくれた「。」さんのご趣味に近いだろうか?

「ALL TOMORROWS PARTIES 20」

VARIOUS ARTISTS「ALL TOMORROW'S PARTIES 2.0」2002年
●これはイギリスでの第三回開催に対応するコンピ。キュレーターは SHELLAC。オルタナティブロックの職人プロデューサー STEVE ALBINI のバンドだ。彼は NIRVANA「IN UTERO」をはじめ、PJ HARVEY、THE JESUS LIZARD、MOGWAI、PIXIES、DON CABALLERO などなど、一筋縄ではイカナイ連中と一筋縄ではイカナイ音楽を作りまくってきた。自身もこの SHELLAC だけでなく、BIG BLACK、RAPEMAN といったバンドで実に大人げないロックを鳴らしてきた。その容赦ないサウンドは「ジェットギター」って呼ばれたりもしてたっけ。オルタナ世界で80年代から生き抜いてきたという意味では SONIC YOUTH とポジションは近いようで、二者はあんまり仲がよくない。クソ真面目な職人キャラなのに、クソ真面目に SONIC YOUTH の紅一点 KIM GORDON のパンティーの歌を作り、ブン殴られたという逸話を聞いたことがある。
●さて、そんな ALBINI のキュレーションだが、初耳のアーティストがほとんどだった。彼自身の作風に沿ったソリッドにゴツいオルタナギターが目立つと思いきや、意外と繊細な音響も目立つ。カワイらしくまとまったギターポップを鳴らす BONNIE "PRINCE" BILLY は、ヘナヘナロウファイフォーク PALACE BROTHERS のソロ名義と知る。プロデューサーとして関わった事のある女性ソングライター NINA NASTASIA も可憐なフォークだった。THRENODY ENSEMBLE はアコギ二本とチェロを軸にしたアブストラクト現代音楽。HIGH DEPENDENCY UNIT はニュージーランドのジャム・サイケデリア。同系統の叙情を奥ゆかしく鳴らすはカナダ・オンタリオから参戦のポストロック DO MAKE SAY THINK総じて言えるコトは、ギターの鳴りがことごとくコダワリ抜かれている。
●ど根性ロック部分としては、イギリスのパンク始祖 THE FALL の気合いの入ったタイトなプレイにシビレル。THE FALL って気になってるけどあんまり聴いたコトないのよね。
●CD には収録されていないが、フェスそのものには日本人アーティストとして、ハードコアパンク MELT BANANA、ハードコアノイズ ZENI GEVA が出演していたそうな。ホントにレンジが広いな、このイベント。

●ちなみに、この「ALL TOMORROW'S PARTIES」コンピ二枚は、奈良のレコ屋 THROAT RECORDS にて購入。よいお店だったなあ。






●動画。



●LOU REED「THE BLUE MASK」。他の曲はシックだけど、これだけだいぶタフなロック。



●THE VELVET UNDERGROUND「ALL TOMORROW'S PARTIES」。




●定額制動画配信「U-NEXT」ってのお試し無料サービスを試してる。

REV from DVL

●なんか、あんまり見るものが無い…だって新作とかは、追加でポイントが必要なんだもの。
●しょうがないから、「天使すぎる」「千年に一度」とネットで評判になった福岡ローカルアイドル・橋本環奈ちゃんのフッテージなんて見てる。グループの名前は、REV FROM DVL というらしい…環奈「かんな」って読む。15歳らしいナマイキッぷりがちょっぴり出てきて、よく動く表情がかわいらしいね…。この前会った女子学生さんが、わざわざ彼女のファンだって強調してたから、ちょっとチェックしてみました。いやいやアイドル業界は大変だね。


沖縄に行きたいから、沖縄のロックを聴く。

紫「WHY NOW? PEACEFUL LOVE ROCK CONCERT」

紫「MURASAKI WHY NOW...? PEACEFUL LOVE ROCK CONCERT」1983年
春休みに沖縄に遊びに行きたいんだよねー。息子の受験が終わってノビノビと家族旅行!そして沖縄!ワイフと計画中です。そんな時に見つけたレコードがこれ。70年代に活躍したハードロックバンド、のライブ盤だ。下北沢の音楽喫茶「いーはとーぼ」の中古盤売場で発見。1950円だった。雪が降ってる東京で、北国を象徴する名前を持つお店で、南の島のハードロックを買うって、ちょっとした奇縁。

●バンドとしての、そのキャリアはなんと60年代まで遡る。つまりは1973年の沖縄日本返還以前だ。本土に暮らすボクなどはついつい忘れがちになってしまうが、当時沖縄は全く別の国だったわけ。高倉健主演のヤクザ映画「網走番外地 南海の対決」は舞台が沖縄だが、時代が1966年、返還以前は旅行するにもパスポートが必要って場面が出て来る。この映画をビデオで見るまであまり考えた事がなかったんだけど、やっぱり沖縄には特殊な歴史があるんだと感じた。
●60年代末の沖縄はアメリカ統治下にあって、ベトナム戦争への前哨基地となっていた。嘉手納基地にはアメリカ軍の兵隊が大勢いて、そんな基地があるコザの街はそんな兵隊相手の店が賑わい、特別な異国情緒があったらしい。の前身バンドはそんな街のクラブで兵隊相手にロックやソウルをカバーしてたという。メンバーはフィリピン系のハーフ兄弟。そこに日系三世の男・ジョージ紫が加わって、DEEP PURPLE に影響を受けたハードロックを導入する。バンド名をに改称したのはコザ暴動があった1970年。バンド名もジョージの名前も、由来は DEEP PURPLE というワケだ。そんなジョージ RICHIE BLACKMORE の役を担うかと思ったら彼は実はキーボーディスト。なるほど、JON LORD の役なんだね。
●日本のレーベルからデビューを果たすのは、沖縄返還後の1976年。3枚のアルバムをリリースして高い評価を得るも1978年にバンド内がゴタゴタして分裂状態に。で、このライブ盤は、一瞬だけ仲直りして再結成した時の演奏というワケだ。だから全盛期の質には及ばない演奏と、なんだか評判はよくない気配だけど、そもそもハードロックがあまり得意でないボクにとってはそんなに不満は感じない。
●一曲目なんてちょっと BLACK SABBATH 風の重厚なリフロックだし、「海人」という名のインストナンバーは、アートロックと呼ばれてた頃の初期 DEEP PURPLE を連想させる。さすが70年代をシッカリ通過してるバンドの貫禄だなーと感心。アメリカ人相手にプレイをしてたから基本ボーカルは英詞。後半では DEEP PURPLE「SMOKE ON THE WATER」もカバーしちゃう。「HOME」という曲だけが日本語詞。スローバラードで故郷・沖縄の風景を歌う。沖縄風メロディが展開の随所に登場する曲「FLY-AWAY」も聴きドコロ。とはいえ、時代は80年代、どこかカラリと乾いた印象が爽やか。
80年代は日本に数々のハードロックバンドが登場して活躍した時代でもある。LOUDNESS が海外進出するとかね。ボクにとっては全くの未知の音楽だが、いつか試しに聴いてみようかな。広島のレコ屋にジャパニーズメタルのコーナーがあって、うわーコレはとっつきづらい!と思ってしまったんだけど、そこに敢えて手を突っ込むもアリ。1枚300円なら買える…。

●2005年頃かな?ボクが沖縄旅行でコザのアロハショップをひやかしてたら、そこのオバちゃんが全く日本語が通じずビビった覚えが。完全に日本人顔のオバちゃんだったのに。カリカリにアタマを刈り上げた若い白人の兵隊たちがタトゥーショップで談笑してて、こりゃスゲエなアメリカみたいじゃないかと思ったよ。カーナビに登場する米軍基地のデカさにも驚いた。ラジオをつけると、ボクには全く理解できないウチナーグチ100%の放送でめちゃ楽しそうだった。沖縄、楽しみだ!


EUROPE「LIVE FROM THE DARK」

EUROPE「LIVE FROM THE DARK」2005年
南国のハードロックを聴いたので、北国のハードロックへ。EUROPE…このバンド、スウェーデン出身だったのね。80年代にヒットした「THE FINAL COUNTDOWN」しか知らない。そんなバンドだけど、ライブDVDを知人にいただいてしまった。ちゃんと聴いてみよう。
「北欧メタル」ってカテゴリー。ブラックメタルとかデスメタルとか、北欧の中で独自進化してるようで、さぞ伝統も深いのだろうと思ってたら、実はこの EUROPE 以前はほとんど存在感がなかったとな。そんな彼らがアメリカのメジャーレーベルからデビューしたのは、前述紫の再結成盤リリースと同じ1983年。そして1986年に「THE FINAL COUNTDOWN」が大ヒットして、世界でも日本でも人気者に。しかしこの大ヒット以降は少々ポップになったとかで方向性がギクシャクし、1992年に活動休止。しかし2004年に黄金メンバーで再結成、アルバムをリリースしての世界ツアーを実施。このDVDはその時のロンドン公演を収録してるという。ふーん。
●で、これが思った以上にキャッチー。スカッとさわやかコカコーラな気分。さすがのベテランさんとあって安定感ある手堅いグルーヴと、難しくならない程度のギタープレイが、最短距離のハードさ加減でテンションをアゲてくれる。ハードロックが苦手なボクでも、さーっと観ることができた。特にギタリスト JOHN NORUM のギターはこれ見よがしなテク披露みたいなイヤラシさが全然なくて、でもシッカリ内容があって、実に味わい深いプレイが楽しかった。実はヒット曲「THE FINAL COUNTDOWN」はあの有名なシンセフレーズが目立ち過ぎてて、ギターの持ち味が損なわれてる曲と思い知る。あのヒット以降でこのギタリストがバンドを脱退してしまった気持ちがわかったような気がする。でも、この再結成以来、バンドは今でも健全にアルバムを制作し、ツアーを活発に行ってるらしい。よかったよかった。



●動画。



●EUROPE「THE FINAL COUNTDOWN」。


●東京、今週も大雪。
マンションの前を雪かきしたら、なんだか気持ちよかった!



●息子ノマドの中学受験が終わったので、ノビノビとDVDも見られる。

「パシフィック・リム」

DVD「パシフィック・リム」
長男ノマド小学6年生の中学受験がやっと終わった。ボク自身にもワイフ自身にも中学受験の経験はないので「なんのために受験するんだろう?」という問いに関してはスゴく頭を悩ませた。そんなこんなで四苦八苦しながら(当然一番がんばったのはノマド自身)なんとか第一希望への入学を勝ち取って、やっと訪れた我が家の平穏。しばらくゲームもテレビもお預け状態だったノマドといっしょに、こんなバタ臭い映画をノウテンキに見られるのはうれしいことだ。
●太平洋から由来不明の「KAIJU」(=怪獣)が襲来する。迎え撃つは超巨大ロボットギレルモ・デル・トロ監督が迸る「日本特撮」への愛がギュウヅメになった作品。わざわざ敵モンスターを「KAIJU」と呼ぶんだもんね。尊敬する人、円谷英二だっていうものね。
未知の敵と巨大ロボットで戦うという構造は実は「エヴァ」と同じ。庵野秀明もハードコアなウルトラマンチルドレンだから、デルトロ監督&庵野監督は同じ遺伝子を汲み取った兄弟筋なのかもしれない。パイロット二人と巨大ロボット(イェーガーと呼ばれてる)をシンクロさせる「ドリフト」という概念も「エヴァ」を連想させるしね。とはいえ、ハリウッドが「エヴァ」を作ったらこうなった、的な仕上がりがとてもアメリカンで愉快。メカ造形もパイロットもめちゃマッチョ。「エヴァ」のプラグスーツみたいなフェティッシュな感覚は1ミリもないパイロットの衣装のゴツさが実にお国柄。中国産イェーガー・クリムゾンタイフーンの、腕三本というアシンメトリーデザイン(パイロットは三つ子)とかスゲエイイ感じなのに、繊細さが微妙に足りないんだなあ。香港が主な舞台になってるってのは、やっぱ中国市場を意識しての設定?日本市場からシフトチェンジ?
●でもヒロインは、菊池凛子さんだもんね。マーシャルアーツに長けた日本人女戦士。そんでクールビューティ。そのトラウマ体験を描く回想シーンで、話題の芦田愛菜ちゃんが登場。ああ忘れてた!これは彼女のハリウッドデビュー作でもあったんだ。KAIJU に破壊される東京を、あのタレ目で号泣しながら逃げ惑ってます。タフなドラマ「明日、ママがいない」ではあのタレ目が釣り上がって見えますが。それと、英語表記になると、MANA ASHIDA(芦田愛菜) MAO ASADA(浅田真央) と空目でソックリになるコトを、ソチ五輪とこの映画クレジットで気づきました。


●最近は塩野七生を読んでるんですわ。

塩野七生「十字軍物語」上巻

塩野七生「十字軍物語」上巻
●たまたま、ソチ五輪の女子アイスホッケーを見てたんです。そしたら、ドイツチームのユニフォームが中世の騎士みたいで。胸に鷲の紋章と、いかついプロテクターがまさに重装騎兵。冬季オリンピックは、国旗に十字があしらわれてる北欧の選手が大勢活躍してるから、ついつい十字軍騎士を連想してしまう。
●以前、「アラブが見た十字軍」という本を読んで、とかく西洋視点から見られがちな「十字軍」という歴史的事件をウラガワから見ることが出来てとてもエキサイティングな思いを感じた経験を思い出す。文明としては西欧社会よりも高度に洗練・発達していたイスラム社会に、野蛮な狂信者が侵略してくるイメージ。それと比較すると、塩野七生さんは比較的オーソドックスにヨーロッパ史観から十字軍を眺めてる様子。それでも、この事件は興味深い物語になっている。
塩野七生さんは女性だ。そして、1000年前の騎士・諸候たちを相手にして、彼らが男としていかにシッカリしているか、そうではないコシヌケなのか、女性として冷静に品定めしているかのような気分が、実はどの著作にも通底している気がする。で、それが同じ男としては非常にキビシーので、苦笑まじりでニヤニヤしてしまう。3部作の上巻であるこの本では、初期十字軍で活躍した騎士、ヨーロッパの方々から諸事情や目論見を抱えて集まった質の違うキャラクターたちが、メリハリをつけて描かれてる。冷徹な現実主義者、尊大な虚栄心がどうしても抑えられない男、有能な若武者…凸凹がオモロいねえ。フランス、ベルギー、イタリアなどなどから結集したこの連中は、いったい何語で会話してたんだろ?
●はやく中巻下巻と読み進めたいんだけど…この本、定価が2500円とすげえ高い!Amazonマーケットプレイスでも2000円するぞ。この上巻は下北沢の古本屋「ほん吉」で1600円で買えたんだけど、続きに手が出せない…。ということで、同じ塩野七生「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年」上下巻を代わりに買ったよ。これもハードカバー一冊2200円なんだけど、下北沢ドラマ古書店で一冊500円だった。文庫より安いや!こっちもすごく楽しい。イタリアに行きたくなる。彼女の最新刊「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」も読みたい。「ローマ亡き後の地中海世界」も読みたい。


ハードウェアガールは、理解されにくい。

『はーどうぇあ・がーるず』 HARDWARE GIRLS

JULIE WATAI「はーどうぇあ・がーるず HARDWARE GIRLS」
ビンテージ・ビデオゲームやキーボード機材などなどのメカメカしい要素と、フェティッシュな女の子がハイブリットな表現として合体したら?そんなナード系諸兄が妄想してきた世界を、カワイらしい女子自身が主体的にクリエイトしているという状態。めっちゃヒップだと思った!この写真集の表紙で、ビンテージのシンセたちに囲まれた女子が JULIE WATAI さん。一番最初はグラビア系アイドルからキャリアを起こしつつも、独自の趣味から「ハードウェアガール」というコンセプトを打ち出し、自分で写真撮影/背景や衣装のディレクション/モデルまでを手掛けてこの世界観にカタチを与えている人だ。
●床一面に散らばるファミコンのカートリッジ。秋葉原のパーツショップ。アーケードゲームの基盤倉庫。ガンプラ。ギター・エフェクター。ファミコンベーシックのキーボード。80年代のロービットテイストがチャーミングなピンナップガールと重なることで湧き上がるキッチュなオタク的親近感がまぶしいね。ギークガール!

●とかいって、この表紙の写真をつかったステッカーを、新調した WI-FI ルーターに貼ってみたら劇的に不評。職場のデスクさんが「コレ引きますよー」いやいや、ウチの部で全く同じルーター使ってる人が二人もいるのよ、区別するために目印をつけないと。
●しかしワイフと娘ヒヨコからも抗議攻撃が。「これはナイわ〜」「なんでパンツなのよ!」パンツじゃなくて下着だよ、後ろにあるのはリズムマシーンの名機 ROLAND TR-909 だよ!…全然理解してもらえない。結果、娘ヒヨコのたまごっち+マクドナルドコラボキャンペーンでもらったハンバーガーのシールが JULIE WATAI さんのパンツの上に貼られてしまった…ていうか、むしろパンツも穿いてないように見えてもっとヤらしくなった気がするんだけど。
●娘に上からシール貼られちゃったよーと翌日デスクさんに報告したら「そこまでされても、元のシールを剥がすという決着にはイカナイんですね」と、むしろ一層呆れられてしまった。

JULIEWATAIさんのステッカールーター
(ハンバーガーと JULIE WATAI)

「HARDWARE GIRLS MAGAZINE」

「HARDWARE GIRLS MAGAZINE VOL.1」
●さて、こちらは JULIE WATAI さん本人の責任編集で作られたムック。ハードウェアガールのコンセプトをさらに拡張。「メカと女子」マッチングの妙を、機材フリークやクリエイターのインタビューを交えてより立体的にプレゼンテーション。うしじまいい肉を乗せて話題になった「攻殻機動隊」風歩行マシン「イヌコマ」(仁葉工芸)から、80年代ロービットゲームと周辺ギア、ファミコンカセット風アートワークコレクション(吉祥寺METEOR)、古い電子機器おもちゃを改造して新しい音を出させるテクニック「サーキットベンディング」、メディア芸術祭でも評価されたハイパーニットクリエイター・力石咲…人が着られる大きさの iPhone をニットで編み上げる作品がボク的にはヒットで、現物を渋谷PARCOに見に行った…などなどが登場。
ネット系ミュージシャン座談会が濃密。kz A.K.A livetune、tomad(MALTINE RECORDS)、ダーヤマ(秋葉原 MOGRA)、チップチューン・アーティスト hally が、00年代の濃ゆいネット系ダンスミュージックの世界を語ってる。これが熱い。秋葉原的なオタク〜アニソン・シーンと、クラブシーンの邂逅。キーワードは、アニソンDJ、ニコニコ、Ustream、ビートマニア、とか。サブカルとオタクの境界線がなくなったということ。

●で、このムックは付録としてCDが1枚ついてきてる。「CHIPTUNE COMPILATION」
チップチューンという言葉がどれだけ一般的か?ボクの中では、ファミコン風ゲームサウンドを導入したテクノポップという認識ってツモリだったんだけど(YMCK とか RAM RIDER といったアーティストが00年代中盤に登場してましたよね)、なんだかもっと表現に幅がある。ゲームボーイを改造したサーキット・ベンディングで鳴らす音響も登場してるし、FM音源ていうの?PCMっていうの?都度都度にいちいち鳴りが野蛮なシンセがドラマチックに暴れてタマラン。音楽のスタイルもミニマルアシッドでシリアスなテクノから、ビリビリした感じがイマドキのEDMなんだけど駆動力がロウテク不安なエレクトロ、ヨタヨタとロウファイすぎるエレポップ/エレクトロニカまでと、広いレンジで多彩なアプローチが楽しめる。
●既知のアーティストさんはちょっとしかいなかった…アタマにファミコンを乗っけてゲーム音楽をライブすることで有名なサカモト教授くらい。でも濃厚でオモロい音源がいっぱい!メロディ展開がスリリングなヒゲドライバー、ハードコア?ナードコア?な不気味さが爆走する撲殺少女工房 UMAHARA VUKEME、ストイックなアシッドテクノが360度まわってディスコする MUTRON、ゲームメーカーに在籍して有名タイトルに楽曲提供してるアメリカ人 CHIBI-TECH の丁寧なテクノポップ、民謡をサンプル/マッシュアップしてエレポップに変換/誤変換するキッチュさがピカイチの OMODAKA あたりが大注目。

JULIEHALLY「MAJI-KAJI」

JULIEHALLY「MAJI-KAJI」2013年
JULIE WATAI さん本人も音楽やってます。前述のチップチューン・アーティスト HALLY 氏(コンピCDにももちろん参加)とのユニット JULIEHALLY でボーカルを披露。ボーカロイドのようなプラスチック質感ボーカルが密度の濃い英詞を、丁寧に組み上げられた高速チップチューン・トラックの上で弾けさせてます。音の粒の1つ1つ、シンセの音の震え、それぞれがスゴくフェティッシュに響いているので、ホント楽しい。
●リミックス・トラックも興味深い。解体度合いが猛烈に高い TAPPY 氏の「MSX DUB」って、ずばりあの MSX マシンで主旋律を鳴らしてるんでしょうか。MSX80年代に日本の主要電機メーカーがそろって乗っかった8ビット・16ビットのパソコンの共通規格で、そのクソ低価格で一気に普及し任天堂・ファミコンと並んでボクらアラフォー世代の小学生ライフをゲーム漬けにした首謀者ですよ。パソコンのくせしてROMカートリッジのスロットが必ずあるコトも味わい深い。ソコにクソゲームを差して何時間も遊んだ…あ、初期RPGの傑作「ブラックオニキス」のROM版は異常に速くてスゴかったな。


「けいおん」じゃないよ、「ざつおん」だよ!

zatsu(((onn!!!【ざつおん】 ZATSU(((ONN!!! 22Less Than Music Girl22

HTC* COMMUNICATION「ZATSU(((ONN!!!【ざつおん!!!】」
HTC* COMMUNICATION「ZATSU(((ONN!!!【ざつおん!!!】"LESS THAN MUSIC GIRL"」
「けいおん!の女の子がノイズやダブをやったらなあ」というコンセプトから生み出された同人流通マンガです。つーか、このコンセプトを聴き付けて、やっと入手したのが去年7月の神楽坂某所で行われた「インターネットヤミ市」というイベント。フリーマーケット風に有象無象のギークアイテムがワサワサ売り買いされる気分がオモシロくて、で、今日紹介しているアイテムはだいたいココでいっぺんに買いました。おもろかったなー。
●で、このマンガの内容もオモシロい。ゲームボーイから出力するチップチューンな爆音ノイズとロックギターのフィードバックノイズを対決させるめちゃくちゃなノイズサウンドを、女子高生が無邪気に鳴らしまくるデタラメな設定が、萌え要素を回収しきれてないやや乱暴なタッチで描かれてるのが実に珍味で。ノイズなんだから、画もノイジーで十分。ジョジョもビックリな「ゴオオオオオオオオオ」「ギャリギャリギャリギャリ」擬音表現が迫力満点です。ボクはゲームボーイからノイズを出すというテクニックはココで初めて知りました。ギターエフェクターをカマしてアンプに繋ぎ込むやり方をコラムに書いててくれててますます興味深い。
●あとがきに書かれたステートメントが実に深い。「おもちゃみたいな楽器やフリーソフトウェア、CDRやらMP3やら動画サイトの繁栄で知識やテクが無くても音楽を作って発表しやすくなり、割と身近になった音楽の鳴っている現場を、それもネット上やロックフェスみたいな仰々しい場所でもなく、学校とか公園とか、割と日常的な場所を舞台に描きたかったのでした。/前半に出て来るでっかい公園でのサウンドシステムの描写がありますが、2009年8月現在、都条例だかでこの光景も観られなくなってしまいました。/これは音楽やまんがとかだけの話じゃなく、自分の「遊び場」は自分で探すか自分で作るしか無いのではと日頃思っており、これはその「遊び場」を探し続ける人達のお話です」
●このマンガが最初に発表された2009年には妄想レベルだった「女子+ノイズ」は、2013年段階、BIS階段でホントに結実してる。第二巻にあたる「LESS THAN MUSIC GIRL」の方では、でんぱ組INC.夢眠ねむがコラボ出演してるし。妄想が現実に追いつく瞬間。

●ちなみに、この文章書くために、元祖のかきふらい「けいおん!」は全部読破しました。もう「けいおん!」が全くもって物足りなくなってきた。でも、ウチのコドモが音楽やりたいって言い出したら、パパめいっぱい応援しちゃうだろうね!

zatsu(((onn!!!COMPILATIONCD:BRITNEYFUCKEDBUSINESS

「ZATSU(((ONN! COMPILATION CD / BRITNEYFUCKEDBUSINESSS」2010年
●こちらもコンピレーションアルバムが編まれてるんですよね。ネット上で活躍するダンスミュージック系のアーティストが、「ざつおん!!!」へオマージュを捧げております。これまた全然知らない人たちばっかり…でも DJ NEWTOWN は重要だ、これ今をときめくトラックメイカー TOFUBEATS の変名だもん。MALTINE RECORDS では DJ NEWTOWN 名義でのリリースの方が多い(というかそればっか)。MALTINE 系でいえば、QUATRA 330 という人も有名。迫力あるゲットーベースっぷりを発揮。MIRRORBALL INFERNO MALTINE 界隈で聴いてました。MALTINE RECORDS マジ重要!
ACIDWHITEHOUSE が名前の通りアシッドハウス+ホワイトノイズっぷりが実に耳障りで良し。R-9 とか、DENNIS KOZLWSKI AND MTR とか、DJ ULTRALIGHT とか、ことごとくハードコアなアシッドで気持ちイイ。マンガのヒロイン、天然チップチューン少女・泡水河さかなちゃんのキャラクターによりそったボカロ曲「さかなのトンカカ」を提供している いぬ A.K.A. 三好史さんは、ディスコの時代80年代から活躍しているベテランさんなのにアニソンDJにトライしまくる貪欲さがスゴい。あ、この人、MALTINE でリリースしてる NONSECTRADICALS の人でもあるんだ…。

「BLEEPING SUBWAY VOLUME ONE GINZA LINE」
「BLEEPING SUBWAY VOLUME ONE : GINZA LINE」2012年
「ざつおん!!!」を発信している HTC* からさらに繰り出されたコンピCD。折り紙みたいな特殊紙ジャケがいきなりかさばる変形っぷり地下鉄銀座線をモチーフにしたキッチュっぷりが、ボクのツボに入りまくり。そんでコンパイルされてる音楽が、なんとブリープテクノ。渋い!ブリープテクノって、ボクの解釈だと80年代最末期〜90年代初頭にかけてイギリス方面でかかってたテクノの一支流で、機材環境未整備に由来するワイルドなブリープ音が特徴とされてた粗末なスタイルだったような。レイブ旋風の大味なダンスミュージックと、WARP あたりで巻き起こる知的テクノ(「ARTIFICIAL INTERIGENCE」シリーズ的な)のスキマに落ち込んだ真性アングラ。そこに今このタイミングにフォーカスするとは、実に秀逸なセンス。
●で、そんなブリープテクノを現代にて鳴らす武者たちが、なぜか銀座線に結集。シリアスでストイックなテクノっぷりが重厚で良し!またまた MALTINE 勢が目立つ。909 STATE、MADMAID、GUCHON基本に忠実なアシッドテイストと、あくまでフロアライクな現場実用主義がクール。野蛮なゲットーベース風味も付きまとって、地下鉄の比喩はアンダーグラウンドの意味なんだと納得。



●追記:「月刊ヤングチャンピオン烈」に連載されてる、「バイク+女子高生」というコンセプトのマンガ「ばくおん!!」は、気になってるんだけどまだチェックしてない。世間にはいろんなのがあるね。



「GIGAZINE」かなんかで、人間は35歳を過ぎたら新しい音楽が聴けないという記事を読んだ。

「音楽などの嗜好と年齢の関係を研究したロバート・サポルスキー氏は、「人は人生の中で20歳を過ぎると音楽の好みに対する『好奇心の窓』が閉まり始める」と話しています。35歳ごろには窓がほぼ閉じきった状態になるので、たとえ新しい音楽のジャンルが流行しても、約95%の人は聞くことがないとのこと。「好奇心の窓が閉じる」というのは食べ物やファッションについても同様で、「舌にピアスを開ける」というような過激な文化に対しては23歳までに好奇心の窓が閉じてしまい、新しい食べ物への挑戦は39歳が限度である、とサポルスキー氏は述べています。」

http://gigazine.net/news/20140212-favorite-music-personality/

今ボク、40歳。まだまだ新しい音楽を開拓していきますよ。


フラッシュディスクランチは、選挙の日に必ず割引サービスをするお店

本日、東京都知事選挙投票日。
●前日の大雪で投票率低いんじゃないのかなーと心配しながら、一応ボクもワイフと選挙へ行くよ。
●そして、下北沢の老舗レコード屋さん「フラッシュ・ディスク・ランチ」は、「選挙割 20%OFF」を実施。そんなお店が元気だから、ボクは下北沢の街が好き。



ヒップホップソウルが、保守王道に聴こえる。KEYSHIA COLE の音楽。

KEYSHIA COLE「WOMAN TO WOMAN」

KEYSHIA COLE「WOMAN TO WOMAN」2012年
「ミュージックマガジン」の2013年ベストアルバム特集を立ち読みしてて(がゆえに記憶に自信がないんですけど)、R&B 部門の傑作にコレが選ばれてるのを知った。そこで、知人にいただいたにも関わらず、ろくに聴いてなかったこのアルバムをちゃんと聴いてみたら…うお!コレいいじゃん!と感動。…あれ、冷静に見ると、アルバムの発売は2012年なのね。

このアルバム、一口にいって、ディスイズ・ヒップホップソウル。しかも、スタイルがある意味でフルクサイ。90年代に確立したヒップホップと R&B の直結形態を当時のままの気分で採用してる。00〜10年代の R&B 〜アーバンソウルはトラックやリズムの中にアレコレのギミックを仕込み過ぎて、装飾過多だったりフューチャリスティック過ぎたりして落ち着きがナイ。しかしこのアルバムは、スネアとキックを4発キチンと配置する90年代の基本的マナーを堂々と踏襲ヒップホップソウルとして実に王道。この態度が実に痛快に思えてタマラナイ。ヒップホップソウルの女王、MARY J. BLIGE の音楽をすぐ連想してしまった。
ヒップホップソウルもかつてはシーンの最前衛の表現で、90年代当時も音楽を聴いてたボクにとっては、80年代ソウルを打倒する新型フォーマットとして印象深いモノだった。それがいつの間にか、むしろ保守的表現としてしっかりとした落ち着きと安定感を醸し出すスタイルとして採用されている。90年代から10年代へ、時代がグルリと巡ったコトがボクには感慨深い。若いリスナーには意味がワカラナイかも知れないけれどもね。

●この KEYSHIA COLE というシンガー、エンターテインメントの世界に入ったのはなんと12歳。リリース時は32歳で芸歴はなんと20年、ちょうど結婚〜妊娠〜出産を通過した時期だそうだ。円熟味というにはまだ若い、少々スパイシーなボーカルスタイルはちょっとアグレッシブ過ぎて落ち着かない気分もあるんだけど、腰がドッカリと座ったスロー〜ミッドテンポだけで固めた選曲は、彼女が女性として次の段階にステップアップしているコトを象徴しているようで。WOMAN TO WOMAN。一皮剥けて新しい女性へと進化する。

●クレジットで制作布陣をチェック。ボクがノックアウトされたアルバム1曲目でリードシングルでもあった「ENOUGH FOR NO LOVE」は客演に LIL WAYNEが参上…彼は敢えて慎ましやかに振る舞ってるけど。制作はイギリス系プロデューサー HERMONY A.K.A. H-MONEY。そして DRAKE 周辺で活躍するカナダ〜トロント系プロデューサー T-MINUS を2曲で抜擢。彼が奥行き豊かでキラリと光るクールなトラックを制作。表題曲「WOMAN TO WOMAN」では、同世代でやはりヒップホップソウルで活躍してきた女性シンガー ASHANTI を召喚&デュエット。「STUBBORN」では制作に RODNEY JERKINS を登用。90年代からアーバンソウルの進化を牽引してきた大物。オーセンティックなピアノアレンジから、一気にイマドキのEDM的シンセ使いに転調する気分がワザアリすぎる。

KEYSHIA COLE「THE WAY IT IS」

KEYSHIA COLE「THE WAY IT IS」2005年
●5枚目にあたる「WOMAN TO WOMAN」から彼女のデビュー作「THE WAY IT IS」へワープ。サンフランシスコのローカルシーンから抜け出た彼女は、大手レーベル A&M 社長 RON FAIR に気に入られてロサンゼルスのショウビズ界のど真ん中に突如登場。ジックリと準備されたこのアルバムは一年以上チャートに乗り続け、結局160万枚も売れたという。黒人さん系チャンネル BET はこのデビューしたてのシンガーを6週連続放送のドキュメンタリーで描いている。よく知らなかったけど、かなりの大物なのね彼女は。
ヒップホップソウルのマナーに忠実なのは、この頃からすでに顕著。王道こそヒットの秘訣。一番ステキだと思う曲は4枚目のシングルとして全米19位までに達した曲「LOVE」。故郷シスコにいる頃から温めていた楽曲で、この曲を披露する事で大手 A&M の契約をゲットしたという。直情的なまでにエモーショナルで、少しハスキーな声が力強い。

KEYSHIA COLE「JUST LIKE YOU」

KEYSHIA COLE「JUST LIKE YOU」2007年
●大ヒットのファーストに続いて繰り出されたセカンドの本作もチャートで全米2位をゲット。売り手側も気合いが入りまくって、制作陣やゲストがメチャメチャ豪華ですわ。MISSY ELLIOTT、SCOTT STORCH、RODNEY JERKINS、TOXIC、LIL KIM、TOO $HORT、ANTHONY HAMILTON、T.I.…などなど。オーセンティックな楽曲から、ちょっとした変化球までバラエティ豊かな内容。彼女が客演した曲もしっかり収録されてますわ。 SEAN PAUL のダンスホールレゲエヒット「(WHEN YOU GONNA) GIVE IT UP TO ME」や、P. DIDDY のアーバンポップ「LAST NIGHT」ね。結果、モダン度の高い多彩なアプローチが聴けてゴージャスであります。とはいえ、流行のスパンが一番速いアーバンソウル、5年も経てばそんなにビックリするコトもない。フツウに楽しんで聴けます。
●そんな中でも、王道ヒップホップソウルの濃度が一番高いのは、ビート職人 PETE ROCK 制作のストリクトリーにヒップホップなトラックに、KEYSHIA が涼しくボーカルを乗せる「GOT TO GET MY HEART BACK」。落ち着くわー。



●動画だよ。




●KEYSHIA COLE FEAT. LIL WAYNE「ENOUGH OF NO LOVE」。




●KEYSHIA COLE「LOVE」。彼氏の役をしてるのは、TYRESE なんだって。



東京は大雪。下北沢も大雪。

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●ソフトバンク下北沢南口店の前には、お父さんがおりました。


雪の日に、スキーの音楽。

一十三十一「SNOWBANK SOCIAL CLUB」

一十三十一「SNOWBANK SOCIAL CLUB」2014年
●下北沢で評判のスープカレー屋さん「MAGIC SPICE」は、我が家でも大人気のお店。この前も娘ヒヨコにせがまれて2人で食べに行った。でもやっぱ辛いねー。激辛ランク上から3番目の「極楽」を食べたら激しく胃モタレ。もうムチャな食べ方できない年齢なのか?ヒヨコは下から2番目「覚醒」食べてちょっとオトナ背伸び気分。今までは一番辛くないヤツにチーズでまろやかにしてたからね。

このスープカレー有名店の社長の娘さんが、このシンガー一十三十一だ。一十三十一って書いてヒトミトイと読む。そんな彼女のリリースされたばかりのアルバムが、お店のBGMとしてプレイされてた。南〜東南アジアのゴッタ煮エキゾチック色彩でギラギラな店内には実は全然似合わない、ツヤツヤしたシティポップがクールに聴こえて、ボクとヒヨコのカレーのお支払い時に、このCDを一緒に買ってしまった。
●ジャケがクールと思った。スキーだよ。スノボ要素全部キレイに忘れて、このイマドキにスキーのみ。敢えてスノボ以前の80年代キッチュを狙ってる。でもソレがアザトイ感じを匂わせないのは、スキーウェア/スキーブーツをスタイリッシュに履きこなすヒトミトイさん本人の佇まいがクールだからかな。スープカレーの発祥って札幌って言うでしょ…「MAGIC SPICE」も本店は札幌、そして彼女も北海道出身で。だからクールなんだろう。
●スノーボードはスケーターカルチャーと結合してパンクやミクスチャーロックと結びついてる感じがある。でもスキーは違う。古来、ホイチョイ・トリロジー「私をスキーに連れてって」1987年以来から、スキーはトレンディで都会的なレジャーなのであります。ややサイコがかった激しいツンデレ気質の児童養護施設の長を演じて芦田愛菜から「魔王」と呼ばれてる三上博史も、この時代はパリパリにトレンディ俳優で、原田知世と瑞々しい恋愛を見せつけてくれるのでした。この時のサウンドトラックは、松任谷由実「恋人がサンタクロース」

●で、このアルバムは、あの時代をデジャヴさせるような、実にクリアなシンセポップになっている。元来からヒトミトイは、日常生活から1センチだけ浮き上がっているかのような、独特の柔らかい非現実感〜浮遊感を漂わせるシンガー。幼さと落ち着きが入り交じった年齢不詳な響きもボクにとっては魅力だ。結果、妙な現実感にベトつかない、不思議なパラレル架空世界がココに描かれた。雪山とシティポップという矛盾した設定が、白銀の美しさを伴ったカタチで見事に結晶してる。レトロなコーラスワークや、トークボックスの導入、ややナードな気分を持つラッパー PUNPEE の客演など、アナドレない味付けの仕方にも満足。
ヒトミトイは、去年の夏には「SURFBANK SOCIAL CLUB」というアルバムもリリースしてる。まさしく「サーフ天国、スキー天国」に夏盤/冬盤で対応しているわけで。こっちも今度聴いてみよう。夏になったらね。

●余談だけど、「MAGIC SPICE」の店員さんたちが互いに注文情報などをヤリトリする言葉が、完全に日本語じゃなくてちょっとスゴい。アレ、何語?東南アジア方面? なにごともないかのようにフツウにナゾの言葉で会話するからコワい。






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節分の豆まきが、異常に整然としていてビビる。




●相変わらず、需要のない文章を書き散らかしています…。
●いわば、このブログは排泄行為のようなもの?


●読書。最近は女性作家を読むことが多くて。

本谷有希子「自分を好きになる方法」

本谷有希子「自分を好きになる方法」
本谷有希子はダイスキな作家だ。彼女の作品で見事に造形される、とってもヘンテコで奇妙だがニクメないキャラクターが、生きづらい世間と必死に折り合いを付けていく姿が、オカシクてイジらしくて。
ただ、今回は、ある意味でストレート…。奇妙なフリークショーだったりするほどヘンテコキャラがテンコモリにクスクス笑っちゃうテンションは、この作品にはなかったかも。微妙なリアリティが笑ってはイケナイ気分を漂わせていて。
●主人公の女性の人生の折々を、いくつかの1日を切り取って描き出す構造…様々な年齢に至った主人公が過ごす1日を短編として描きながら、彼女の一生を俯瞰する。些細なコトでイラついたり、イジワルな感情がチリチリとしたり。そんな日常は、ボクにも誰にでもある風景で。だから、奇妙なオカシミも突飛なキャラ造形もない。おお、作風が変わってますがな!と素朴に驚いた。

作家本人も、結婚して周辺や心境に変化があったのかな。ダンナさんは詩人で作詞家の御徒町凧森山直太郎の共作詞で知られる人物…ていうか、この御徒町凧って森山直太朗のアルターエゴだと思ってた。だってほぼ全部の楽曲にクレジットされてるんだもん。ユーミンが詞曲提供のときに呉田軽穂という別名義を使うようなノリのイメージ。なんだ違ったんだーと思った、この結婚ニュース知った時に。
●タイトルがちょっと恥ずかしい。「自分を好きになる方法」って…電車の中とか、会社の同僚にはあまり見られたくない題名だわ。だって一目見ただけじゃ自己啓発本みたいで。リアルに「自分を好きに」なれてないボクが読んでいると、シャレにならない見え方になる。

山崎ナオコーラ「浮世でランチ」

山崎ナオコーラ「浮世でランチ」
●コッチの作品は、一人の女性の、25歳現在と中学生時代を、行ったり来たりのカットバックで描く。級友たちと戯れながら「宗教ごっこ」を遊ぶ、少女特有の無邪気さと幼い世界観。そしてそんな主人公が、成人して眺める無常の「浮世」。
●先日、ボクは就職活動で企業研究をしている女子大生から「OB訪問」を受けた。なんでわざわざ40歳のボクに…もっと若いヤツの方がイイだろうに…と思ったが、ボクの仕事が特殊っぽく見えたみたいで(確かに自分でも時々そう思うけど)他に代替品がいなかった模様。そんな21歳の女の子(1992年生まれだってよ!)は、まだ無邪気な妄想に包まったままの赤ちゃんに見えて。中高と女子校で育った彼女曰く「ジャニーズか、韓流か、二次元にハマるんです。女子高にはその三種類しかいないんです!」リアルに男の子と遊ぶ子はいないの?「2%だけです!」キミ自身は?「あたしは…二次元にドップリつかっちゃって…「ナルト」とか「BLEACH」とか。でも大学に入ってからは韓流です!」あ、三次元に一応昇格なのね。
●小説の主人公25歳は、韓流21歳がこれから挑む企業社会からも離職/離脱しての、あてどない東南アジアの旅の中。妄想が完全に剥がれ落ちても、そんなつもりじゃなかったと思っても、ライフイズゴーインオン。


●娘ヒヨコも読書する。そんでゴスを知る。

シーナ・マーサー「バンパイア・ガールズあの子は吸血鬼?」

シーナ・マーサー「バンパイア・ガールズ〈no.1〉あの子は吸血鬼?」
●21歳の女子大生が赤ちゃんに見えるなら、実娘ヒヨコ11歳はただの珍獣。人間でもありません…コロポックルみたいな存在か。妄想に包まれてるんじゃなくて、存在自体が妄想っぽい。「春休みにオキナワ行くか」とフワリ提案したら、ガイドブックで知ったカチャーシーをキャーキャー言いながら踊ってる。
●そんなヒヨコが図書館で好んで借りてくるのが「黒魔女さんが通る」シリーズと「学園バンパイア」もの。この前までマンガ「ゲゲゲの鬼太郎」読んで爆笑してたくせに、だいぶ昇格しやがったじゃないか。「バンパイアガールズ」では、チアリーダー女子とゴス女子の関係がでてくる…「主人公のお友達にゴスがいるのよー!」ヒヨコおまえの口から「ゴス」なんて言葉が出るとは…。
●そもそもゴスってなんだか知ってるの?「えーとね、服はいっつも黒と白だけでね、黒髪の半分を紫に染めてるの」おー確かにゴスっぽい。でも、ゴスってとっても分かりづらい概念だよね。ファッションとしてのゴスって、辞書的な意味のゴシックから果てしなく遠ざかってる気がするよね。難しいよね。

妖怪獣 水木しげる

水木しげる「妖怪獣 ゲゲゲの鬼太郎4」
●これ、おととしくらいのヒヨコの愛読書ね。ゲゲゲの鬼太郎は、ある意味で真っ当にジャパニーズ・ゴスだろうな。キャラの雑味と親しみやすさに反して、繊細な筆致に由来するダーク過ぎる背景のコントラストはタマラン。あれ、今の世代のマンガ家でかける人いないんじゃないか?




だから、今日はゴスを考えてみる。音楽は、THE CURE。

THE CURE「BLOODFLOWER」

THE CURE「BLOODFLOWER」2000年
●イギリスのロックバンド THE CURE のフロントマン、ROBERT SMITH は王道のゴスだろう。顔を白く塗り、目の周りは黒く、唇は赤く。黒髪をふわり持ち上げて、前髪をハラハラと目の前に垂らす。そのイメージは、このジャケが一番分かりやすいと思った。
●ただ、音楽様式としてのゴスってイマイチよくわかってない…。00年代以降のエモ文脈から出てきたゴスロックとか、果ては元祖ゴスな位置づけの BAUHAUS とか、一貫性がないよねー。THE CURE 自身も70年代末から活躍してもう30年以上のキャリアを重ねてて、時代の中で作風を変えているし。その意味では、この作品も中途半端な時期のものなのか。メランコリアの中で、エモーショナルに叫ぶ ROBERT SMITH のウタ…の意味、あんまりよくわかってません。そんな中でファーストアルバムから聴き進めてみるのです。


THE CURE との出会いは、20年前…。そしてやっとわかったポストパンク。

THE CURE「THREE IMAGINARY BOYS」

THE CURE「THREE IMAGINARY BOYS」1979年
●このCDを最初に聴いたのは1992年でボクが大学一年生だった時。音楽サークルで知り合ったヴィジュアル系信者の女子サトミ(仮名)さんと NINE INCH NAILS のファーストアルバム「PRETTY HATE MACHINE」の話題で意気投合して、その流れで貸してもらったのだ。「ヴィジュアル系の元祖みたいなバンドなんだよ、って今井寿さんがインタビューで言ってた」今井寿ってのは、当時全盛だった BUCK-TICK のギタリスト。この女の子サトミさんは BUCK-TICK の大ファンだったのだ。
しかし、実際に音楽を聴いてみて、面食らった。この最初期の THE CURE は、まだ18歳だったボクの耳には、NINE INCH NAILS にも BUCK-TICK にもヴィジュアル系にも無縁に聴こえた。コレのどこがヴィジュアル系なんだろう?むしろ素朴なギターポップに聴こえるんですけど。そもそもジャケが冷蔵庫と掃除機と電気スタンドなんですけど。意味がワカラナイ。加えて当時の若いボクはゴスという言葉も知らなかった。つーことで、カセットテープにダビングしたものの、スゴく長い時間マジメに聴かずに放っておいた。

●このCDを再評価したのは、それこそボクの年齢が三十代も後半に差し掛かった頃だ。ディスクユニオンで適当に物色してる時に、コレをお値ごろで発見。あーコレ懐かしいなあー、サトミさんはナニやってんだろうなーなんて思いながら、CDとして買い直したのだ。
改めて聴き直して、ブッ飛んだ!この音楽スゴい!メチャクチャ乱暴に作られてる!演奏がスカスカで粗末過ぎる!「THREE IMAGINARY BOYS」というだけあって、この時期の THE CURE はトリオなのだが、トリオにしたってもうちょっとトリツクロってもらいたいほど、楽器の密度が薄くてチャッチイ。
●特にギターがヒドい!一曲目の「10.15 SATURDAY NIGHT」のイントロだけでもう脱臼する。単音をペーンペーンと鳴らすだけの粗末な態度がスゴい。そんなお世辞にも技巧的とはいえないギターソロが時々不協和音を鳴らしたりする。ボーカルもメロディも、粗末すぎて最低かつ最高。ドラムやベースもペッタリしててグルーヴ感はゼロ。よくぞコレで生き残れたなと感心する。JIMI HENDLIX「FOXY LADY」のカバーもやってるけど、全く原曲の面影がナイ。
●で、納得する。これ、ヤケクソなポストパンクだったのね!確かに1979年と時代もドンピシャ、JOY DIVISION と同時期だもんね。聴けば聴くほど、ヤケクソで粗末なギターから、奇妙な味が滲み出てきてクセになる。ゴスとかビジュアル系とかの文脈を全部抜き去って捉えた方がシンプル。とにかくワキが甘くてスカスカ、その投げやりな態度がパンク過ぎてタマラン。そんな物件と捉えて、やっと理解できた。
●ちなみに、ヴィジュアル系女子のサトミさんは大学を卒業した後、自分の希望を叶えて音楽ライターとなった。ジェイポップのコンサート会場で、見かけた事もあったりもして。そんで、ワリと最近結婚して、一旦仕事はヤメたらしい…。


ポストパンクから、ミニマリズム曇天のゴス空間へ。

THE CURE「SEVENTEEN SECONDS」

THE CURE「SEVENTEEN SECONDS」1980年
●前述の「THREE IMAGINARY BOYS」、さすがに ROBERT SMITH もファーストアルバムはヤラカした〜みたいな気分を抱いていたよう…。制作の主導権が自分になかった、選曲もジャケもオレの決定権は制限されてた、みたいなコトを言ってるらしい。そこで ROBERT SMITH 本人がプロデュースに入ったセカンドアルバムのコイツが、これまた難解な物件で理解に苦しむ。
作風は一変。死ぬほどのミニマリムズ空間に聴く者を突き落とすのだ…まるで深い霧の中に彷徨いこんでしまったよう。相変わらずテクニカルとは言えないが、ヘタクソをツッコンで楽しむ余地はない。この淡いジャケットのように、ツカミドコロがない不気味さに悪寒を感じる。無邪気さが無謀に発散されてるファーストの方がまだ掴みやすい。
●英語版 WIKI に紹介されてる音楽ライターの評が見事。「悲しい癒し…冷たい部屋に座って時計を眺めている(SAD CURE, SITTING IN COLD ROOMS, WATCHING CLOCKS)」。ココで鳴ってる音楽は、ひどくミニマルで、起伏も少なく、ボーカルも最小限に留められている。淡々と刻まれるリズムが実にフラットで、寂寞とした風景しか見えない。枯れたモノクロの世界…重苦しい曇天から薄い夕闇へ。この荒涼ぶりがゴスの出発点なのか。

THE CURE「FAITH」

THE CURE「FAITH」1981年
●基調としては、前作に引き続いてのミニマルな曇天路線…よりダークな気配が強まって行く。アレンジはシンプルなままながら、ボーカルにエコーがまぶされて重苦しい霧がもっと濃くなった印象。前作から控えめに導入されていたキーボードも、不気味な気分を効果的に演出している…いや、神聖なイメージといってもいいかも。アルバムタイトルは「信仰」なのだし。特に「ALL CATS ARE GREY」「THE FUNERAL PARTY」という曲が印象的。ジャケの印象から連想する、薄暮の中の美しさを感じる。
●一方で、ヒリヒリするような緊張感と疾走感が駆け抜けるスピードチューン「PRIMARY」「DOUBT」が、クールなポストパンクとしてキャッチー。ROBERT SMITH の絶唱ボーカルもスリリングに響く。
「FAITH」のカセットテープ版に収録されたボーナストラック「CARNAGE VISORS」は27分の大曲。当然、入手は超困難だけど、過去ネット上で一度聴いたことがある。もはやアンビエントな領域に突入した、ボーカルなしのダークな反復世界が延々に続く世界だった。


THE CURE のゴス世界が完成。スリルと暗黒。エコーとギターサイケデリア。

THE CURE「PORNOGRAPHY」

THE CURE「PORNOGRAPHY」1982年
●1979年のファーストから模索されていたバンドのアイデンティティが、ここでひとつの臨界点を迎えた。「SEVENTEEN SECONDS」「FAITH」を手掛けてきたプロデューサー MIKE HEDGES を、その後の一時期を正式メンバーとしてバンドに加わる PHIL THORNALLEY へと交代。ここで特別な奥行きと説得力をバンドは獲得する。軋むギターサウンドとリバーブエコーが描く暗黒のサイケデリック世界。
●一曲目の「ONE HANDRED YEARS」とシングル曲「THE HANGING GARDEN」が新鮮な質感を放つ。スピード感溢れるテンポに絡み付くラフなギターがエコーの波動を鮮やかに染め上げて、独特のスリルを疾走させる。叫ぶ ROBERT SMITH と軋み上げるギターが、闇の中に深紫の煙を巻き起こして、聴く者へサイケデリックな幻覚を描き出す。
●一方で、闇に闇をさらに塗り込めるようなダークな世界観も純度を高める。深い霧のような輪郭のトボケた感触は、露悪的にグルーヴを断ち切ったドラムが存在感を増強させたことで、そのまま深い暗黒へと移行。不安をあおるシンセの色添えと神経質なギター、そしてエコーの中にジワリと滲む ROBERT SMITH の叫びがおどろおどろしい空気を噴霧する。アルバム後半は、黒い影に窒息するような密度の濃さに圧倒されるしかない。これが THE CURE のゴスか。深く納得する。
●このアルバムは、薬物&アルコール漬けの生活や、メンバー間の緊張〜ベーシスト SIMON GALLUP の脱退など、バンドの存続を左右する緊張の中で作られた。がゆえのこのダークな品質。そのあまりのダークさ加減に、自ら疲弊してしまった ROBERT SMITH は、バンドの解散を仄めかす…。


驚くほどのポップさと多様性を獲得する THE CURE。

THE CURE「JAPANESE WHISPERS」

THE CURE「JAPANESE WHISPERS」1983年
あまりに重苦しいゴス世界に浸り続けていると、音楽を聴くコチラも息が詰まる…正直しんどい。そんなトコロにきて、THE CURE は突然ポップに転向する!このアルバムは、この時期にリリースされたシングルをまとめた日本独自の企画盤(だったけどその後に世界発売される)。このシングル群が、シンセで彩られた明るいニューウェーヴ・ポップスでビックリ!キッチュなほどポップで拍子抜けしてしまうほど。ともかく、一旦息抜き出来て、ウレシイ…。
●ゴス路線の中でカリスマとなっていた ROBERT SMITH THE CURE は、ここで世界的支持を集めるビッグバンドへの道を歩み始める。…しかし、この後に続くアルバム「THE TOP」「THE HEAD ON THE DOOR」はボク自身が未聴。そのうちゲットせねば。

THE CURE「KISS ME, KISS ME, KISS ME」

THE CURE「KISS ME, KISS ME, KISS ME」1987年
●オリジナルLP盤では全18曲二枚組で発売された大作。「JAPANESE WHISPERS」以降のポップ路線から、初期のゴス〜サイケ路線まで、実にバラエティ豊かな多面性を見せつけてくれる。バンドメンバーも度重なる交代を経て最強の布陣に。結果どんなアプローチの楽曲でも、骨の太い演奏が聴こえてくる。世界中でヒットしたシングル「JUST LIKE HEAVEN」の多幸感が眩し過ぎてたまらない。おそらく、この作品こそ THE CURE の本質と捉える人も多いだろう。サックス導入などなど、アレンジやギミックでも見るべきポイントがたくさんあるし、ポップ面で言及すべき点や、サイケデリアとして高性能な側面もいっぱいある。しかし、今日はあくまでゴス路線にフォーカスするので割愛。きりがないからねえ。


そして、暗黒への回帰。美しきゴスの世界。

THE CURE「DISINTEGRATION」

THE CURE「DISINTEGRATION」1989年
●世界的ポップアーティストとして驀進して行く THE CURE は、ココにきてまたまたゴスへ回帰。うわまた暗黒に逆戻りかとレーベルは大変心配したようだが、それでも世界で300万枚をセールスするヒット作になった…それは納得出来る事実だ。このアルバムは「PORNOGRAPHY」とは異質の、美しさがある。
この場で THE CURE のゴスは、透明感溢れる耽美に到達した。彼らにとってはやや後輩格でありながら、80年代に独特な耽美世界を描いて名声を得ていたバンド COCTEAU TWINS と同じような位置に至ったのだ。澄み切った空気の中で可憐に歌い上げる ROBERT SMITH の新境地。
ゴス=GOTHという言葉は、古代ローマ帝国を圧迫して滅亡に至らしめたゲルマン系蛮族の一派ゴート族の名前に由来している。ゴシック建築といえば、中世ヨーロッパの協会建築の様式の名前だが、鋭い尖塔やアシンメトリーな構造、異教由来の装飾(ガーゴイルのような彫刻)が、当時の保守層には蛮族的と見られたための蔑称だ。つまりゴスは、キリスト教的世界観からは禍々しいものとされたり、不可視だったりした領域にある美学という意味だ。不安や恐怖を煽るのがゴスではない。王道の価値観を自由に逸脱した中に、美しさを見出す姿勢。これがゴスだ。それが異形であろうと、異教的であろうと。その意味では、この「崩壊」と名付けられたアルバムは、既成の価値観が崩壊した後に立ちのぼる美学を、儚く可憐に描いている。そして美しい。エコーも、ギターも、ドラムも、ボーカルも圧倒的に美しい。


懐かしき90年代の THE CURE。

THE CURE「WISH」

THE CURE「WISH」1992年
ボクが生まれて初めて THE CURE の音楽に、ファーストアルバム「THREE IMAGINARY BOYS」に出会った年に、リリースされていたアルバム。これを聴いて、ボクはスゴく安心してしまった。ああ、コレはボクの肌の感覚に一番あっているかも。
●18歳の時に馴染めなかった THE CURE の音楽を長年寝かしてしまったコトはすでに書いたが、30歳代半ばにやっと辿り着いたファーストの再評価から、このバンドの魅力にすぐ到達できたかといえばそうではない。そこからカタログを一枚づつ買い集めて行きながらも、ボクはこのバンドの本質に辿りつけず、数年の時間をかけてしまった。初期のゴス作品は本当に苦く重い音楽だし、簡単に聴きこなせるタイプの音楽ではない。THE CURE はボクには聴きこなせない…そう思っていた。

●何の気なしに安く買ったこのアルバムも、実は全く聴く気になれず2年ほど放っておいたモノだ。それを先月、何の気なしにプレイヤーに乗っけて鳴らしてみた。コレが予想以上によかった!1992年はボクにとって欧米のロックを真剣に聴き始めた時期、そこでフツウに鳴っていた時代の音楽のクセみたいなモノが、このアルバムには組み込まれていた!THE CURE ファンにはどう聴こえるかワカラナイが、ボク個人にとってみれば馴染みのタオルケットに顔を埋めるような居心地のよさを感じてしまったのだ。ああ、懐かしさで一杯だ!ここで初めて THE CURE の音楽を自分の感覚と直結させて捉えるコトが出来ると思えた。
●いつもの THE CURE よりもホンの少しだけザラついたギター・オリエンテッド・サウンド、それがグルグルと渦巻いてサイケデリックに響く感覚。コレは同時代の MY BLOODY VALENTINE 他ギターにフォーカスを当てたシューゲイザー・バンドにも繋がっているし、アメリカのオルタナティヴバンド、例えば NIRVANA のようなグランジのササクレたシリアスさとも同じ質感だ。ダンサブルな明るさは、初期の THE STONE ROSES のキラメキを連想させる。この時代に生き残っていた THE CURE の同世代バンド、NEW ORDER の当時の音楽にも似ている…。実に90年代っぽい音楽だ。90年代のゴス。
この感覚を前提にすれば、THE CURE の音楽を自分なりに咀嚼して文章に出来るかも知れない。初めてそう思えた。それでも実は、今日この文章を書くにも、かなりの覚悟を必要とした。こんなコトをイチイチ考えてブログ書いてるのかと呆れる人もいるかも知れないが、そんな納得がなければ苦手とわかってる音楽には立ち向かえない。まー、なんとか、ファーストからこの9枚目のアルバムまで辿り着く事ができてホッとしている。

●最初に紹介した「BLOODFLOWERS」2000年の段階で ROBERT SMITH はバンドの解散を一度宣言している。もう限界と思う場面があったのだろう…結局うやむやにしてバンドはまだ継続していて、ライブやツアー、そしてリリースも続けているんだけど。ただし、ぶっちゃけ、この「WISH」以降のバンドはやや気抜けしてる気がして。ただ、またナニかの納得があれば、まだ聴いていない時代、近年の作品を聴いてボクはココに文章を記すだろう。だって、音楽中毒者は、音楽に誠実になるしかないんだもの。





● THE CURE の動画。




●「10.15 SATURDAY NIGHT」。アルバム「THREE IMAGINARY BOYS」より。いびつなポストパンク。



●「PRIMARY」。アルバム「FAITH」より。ポストパンクの疾走感。



●「ONE HANDRED YEARS」。アルバム「PORNOGRAPHY」より。初期ゴスの頂点。



●「JUST LIKE HEAVEN」。アルバム「KISS ME, KISS ME, KISS ME」より。ニューロマンティクスのようだ。



●「PICTURE OF YOU」。アルバム「DISINTEGRATION」より。ゴスの新境地。可憐な耽美。



●「HIGH」。アルバム「WISH」より。90年代風のサイケデリア



●「FRIDAY I'M IN LOVE」。アルバム「WISH」より。とびきりポップでキャッチー。