●噂の「ハウス・オブ・カーズ 野望の階段」マジ面白くて本当に一晩で一気見した!

「ハウス・オブ・カーズ 野望の階段」

●アメリカのネット動画配信サービス「ネットフリックス」がテレビの地上波放送と関係ないところで独自制作&独自配信して大ヒット、なんとアメリカ・テレビ界の最高峰・エミー賞を奪取してしまった。このセンセーショナルな作品が Hulu にて日本でも配信開始!主演のケビン・スペイシーも、エピソード1&2の監督をデヴィッド・フィンチャーにしたのも、インターネット配信ならではのビッグデータから導き出した新型マーケティングの結果であったということも話題になっている。
●お話の内容は、アメリカ政府中枢・ホワイトハウスの中の権力闘争。民主党下院議会のボスである主人公・フランク(ケビン・スペイシー)が自らの野望を実現させるために、様々な権謀術数を繰り広げる。その執念の深さ、駆引きの複雑さ、にドキドキする。なぜボクはこんな丸顔のオッサンに、スゲえと感心してしまうのだろう。シーズン1全13話を全部見たのに、全然スッキリしない!はやくシーズン2を!
●脇を固める女性陣も気になる。駆け出しの女性新聞記者ゾーイ古着とパーカを重ね着してロングヘアを無造作にまとめる気取りないバイト風情の彼女が素朴で好き!と思ったら、女の武器を存分に使って主人公・フランクに接近していく。フランクに骨の髄まで利用される若きダメ議員ピーターを甲斐甲斐しく助けるクリスティーナは、真面目な性格がハッキリわかるクリクリお目目がチャーミングだが、その大きな瞳からポロポロ涙を流してばかり。

ゾーイバーンズ

ゾーイ・バーンズ。ワシントンヘラルド記者からニュースサイトのライターへ転身。フランクからのリークを受けて特ダネをツイッターで発信していく。幼顔にしてタフ!演じる女優さんはケイト・マラという人。




ジャズで少しチルアウト。
●お休みで家でゴロゴロできる今だからこそ、iPod で携帯できないアナログレコード音源をゆっくり聴く。うーん、贅沢な時間だなあ。

菊池雅章「POO-SUN」

菊池雅章「POO-SUN」1970年
和ジャズ。60〜70年代の日本のジャズに手を出すのはほとんど初めての経験。だから、知識もなにもないトコロから出発。ピアノ/キーボード奏者の菊池雅章(まさぶみと読む)さんの軽快なエレピが、エレクトリックマイルスを連想される軽快なファンクグルーヴをグルグルと回転させる。その優雅さが実にリラクシン。真っ直ぐに伸びるサックスの音色も可憐。
●60年代にはキャリアを起こして1968年の SONNY ROLLINS 来日に帯同。同年バークリー音楽大学に留学。帰国後のリーダー作品がこのアルバム…タイトルは彼のニックネーム「プーさん」に由来してるらしい。



鳥取・ボルゾイレコードと、鳥取の街並みについて。
●実は、このレコードは今年の島根〜鳥取旅行で見つけたショップ、BORZOI RECORDS(ボルゾイレコード:鳥取市新町201上田ビル2F)にて購入したもの。ここでもよい買い物ができたし、ご主人と楽しい話ができた。ちなみに、ボルゾイってのはロシア由来の犬の種類らしい。


鳥取の街には昭和モダニズムの香り残るビルヂングが多い。
●と教えてくれたのは、こちらボルゾイのご主人…といっても、ボクより少々年長といったトコロか。山陰地方のCDショップチェーンでバイヤーを担当していたが、その仕事の内容に疑問を抱くようになり、脱サラして自分の店を持つことになったとな。昨今の音楽業界の厳しさは重々承知の上、と思いながらも、独自の路線で5年もお店を続けている。海外の音源から地元アーティストの自主制作音源、東京ほか日本各地のインディものなどなど、一般のお店じゃ取り扱われないアイテムを、自分のセンスできちんと押し出す。そんな姿勢が信頼を集めるのか、来るお客さんがみな馴染みみたいで「お久しぶり!」なんて世間話がポンと飛び交う。
●さて、このお店の入っている建物が、実にシックなビルヂング上田ビルという建物の二階の一番手前がボルゾイのお店。この並びにオシャレなカフェ?みたいなお店がいくつか入っている。コンクリートが職人技でシッカリと塗られている堅実かつモダンなデザインがハッとさせる。しかも、実は鳥取の街の中にはこうしたレトロなモダニズム建築がたくさんあるのだ。なぜだろうか?

ボルゾイレコード

●鳥取の街を南北に貫く目抜き通り「本通り〜若桜街道」沿いには、昭和20〜30年代に建てられた古いコンクリート建築がチラチラと目立つ。実は1952年に鳥取市街は「鳥取大火」という大火事に見舞われ、街全体が焦土になってしまった。それ以前にも1943年の「鳥取大震災」(震度6/死者1000人超)で鳥取の街は大きく傷ついていた。
●これを国が計画的な防災都市として改造すべく、当時の最新技術/最新設計の建築物をたくさん作る。それがそのまま現在まで残って、今や昭和の味わいが深いレトロモダン建築になっているというわけだ。地方都市の宿命として、大規模な再開発が行われなかったことが、こうした貴重な建築物を残す偶然を生んだわけだが、その価値はあまり評価されていないよう…時々、建築を学ぶ学生さんや研究者が訪れるだけで、冬には雪も多く降るこの街の重たいアーケードがその外観を大きく覆って存在感は薄まっている…。

●中身はシックなボルゾイのある上田ビルも、外から見ると、ワリと殺風景。一階は仏具屋さんだし。アーケードがなかったらもっと綺麗な漆喰の色が映えるのに…と思うけど、雪の降る街の商店街にアーケードは不可欠。ボルゾイレコードのある二階に上がるには、建物の右脇、より重たいアーケードの下に踏み込むと見える石造りの階段から。なかなか分かりづらい…見つけるのに結構時間がかかったねえ。

ボルゾイレコード上田ビル

●でも、よく意識して街を歩くと、ユニークで愛らしい建物が見えて来る。
●下の写真は、ボルゾイと同じ「本通り〜若桜街道」沿いにある、定有堂書店というお店の建物。

定有堂書店

定有堂書店。鳥取県鳥取市元町121 定有堂ビル1F。
●ちょっと傷んでしまってるけど、建物左側に5本の縦ラインが個性的。お隣の建物も角の曲面が愛らしい。この定有堂書店は、全国区のカルチャー誌(「BRUTUS」とか)でも紹介される本屋さん。小ぶりの店内から、時流や流行にとらわれない独特な品揃え、独自の視点から整えられた企画色の強い棚の構成、地元出身のマンガ家の分厚いライブラリー(谷口ゴロー作品など)、そして丁寧なコメントを記したPOPなどなど、本をじっくり愛している店主の気持ちがパーっと香り立つ。もちろんこのお店を教えてくれたのもボルゾイのご主人。

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角の曲面がキレイな建物。若桜橋北交差点、春には桜がキレイに咲くという袋川に面してる。この近所には、旧横田医院という、これまたレトロな建物があるらしい。昭和30年代に建てられた円筒型の建物で、病院跡地が今ではギャラリーとして使われているという。

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太平線通り交差点に面した建物。これもまたキレイな曲面が目について。二階には「喫茶1erぷるみえ」というカフェが。ご主人がフランスで学んだスイーツと美味しいコーヒーが印象的でした。




●そんな鳥取の街を思い出しながら、さらに、ジャスのレコードに針を落としてく。

「THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS」

VARIOUS ARTISTS「THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS」1971〜1976年
●ボクが好んでこのブログでもよく紹介するイギリスの再発系コンピレーベル SOUL JAZZ RECORDS。そのセンスにボクは100%の信頼を寄せてるし、その音楽愛にも最高の敬意を抱いている。このアルバムは、そんな彼らの重要なサブレーベル UNIVERSAL SOUND のカタログナンバー「USCD 2」。彼ら SOUL JAZZ にとっても最初期のリリースだし、その名にふさわしいソウルジャズの塊のようなアルバム。
BLACK JAZZ RECORDS とは、1971年から1976年までにアメリカ西海岸・オークランドに実在したジャズレーベル。当時では圧倒的に貴重だった、黒人主体の運営によるレーベルでその短い5年という活動期間で20枚のレコードを世に出した(イリノイ州のジャズレーベル傘下にあったので厳密なインディではないらしい)。ストレートなジャズからスピーディーなジャズファンク、ウェットなR&Bまで濃厚で自由なスタイルの作品が並ぶ。アーティストとしては、DOUG CARN、THE AWAKENING、CALVIN KEYS、ROLAND HAYNES、WALTER BISHOP JR.、RUDOLPH JOHNSON、HENRY FRANKLIN、KELLEE PATTERNSON CHESTER THOMPSON…などなどがここからキャリアを起こす。レーベル自身はプロデューサーであった GENE RUSSELL の死去で閉鎖。
SOUL JAZZ RECORDS の再発紹介がなければボクが知ることのできなかった世界は広い。感謝の思いこの上ない。このレーベルの存在を知ったのはいつのことだろう?このレーベルがロンドンで設立されたのは1992年。そこに先行する レアグルーヴ・ムーブメントの影響があったのは間違いないだろう。でおそらくボクがこのレーベルの音源を買い始めたのが1999年頃。ジャズからレゲエ、R&Bに始まり、現在ではハウス、ダブステップ、ビンテージパンク、民族音楽にまでその食指を伸ばしている。

DOUG CARN「DOUG CARN」

DOUG CARN「DOUG CARN」1971〜1974年
UNIVERSAL SOUND カタログナンバー「USLP1」。このサブレーベルがスタートしたのは1996年。その第一弾がコレ。もう15年以上前なのね。前述の BLACK JAZZ RECORDS の看板アーティストだった彼は、ここに4枚のアルバムを残しており、このコンピは2枚のLPでその断片を聞くことができる。オルガン/キーボーディストである彼の音楽世界は、ジャズファンクの駆動力と神秘的なスピリチュアリティが不思議なバランスで同居するような空間。COLTRANE「A LOVE SUPREME」を翻案した楽曲「ACKNOWLEDGEMENT」の誇り高き威容に震える。
●以前もこのブログで紹介した JEAN CARN というシンガーが、彼のジャズにより一層の艶っぽさを添えている。名の示す通り、彼女は当時の彼の妻。彼女と DOUG 本人ほかバンドメンバーたちのボーカルワークが、本来的にはストイックな彼の音楽をグラマラスかつキャッチーにしている。ちなみに、トランペット奏者でラッパー NAS の父親 OLU DARA が何曲かでクレジットされてる。

「SOUL JAZZ LOVE STRATA EAST」

VARIOUS ARTISTS「SOUL JAZZ LOVE STRATA-EAST」1969〜1975年
●こちらのコンピは SOUL JAZZ RECORDS カタログナンバー「SJRLP19」、1994年リリース。SOUL JAZZ の中でも初期のコンピ。ジャスへの愛がタイトルから迸っているのがわかる。その愛の対象になっているのが、完全なる黒人主体で運営されたジャズレーベル STRATA-EASTニューヨークを拠点としたこのレーベルは CHARLES TOLLIVERSTANLEY COWELL というミュージシャンによって設立された。本来は生粋のプレイヤーだった彼らがレーベル経営に踏み切ったのは、彼らが組織した MUSIC INC. というバンドの新譜が完成したというのに、どのメジャーレーベルにも取扱いを拒絶されたからだ。70年代に入るとソウルやファンクなど新しいブラックミュージックのフォーマットが完成される一方で、ストレートなモダンジャズは古い音楽とされてしまう傾向があったそうな。その一方で、そんなメジャーの無理解からアンダーグラウンドに潜った連中がプログレッシブなジャズの革新実験を繰り広げていくことになる。
●そんな STRATA-EAST の音源がココにコンパイルされる。軽快なファンクネスがクールな GIL SCOTT-HELON「THE BOTTLE」。90年代アシッドジャズの GALIANO にカバーされる PHAROAH SANDERS「PRINCE OF PEACE」の独特な浮遊感。SHAMEK FARRAH「FIRST IMPRESSION」のグラマラスなスピリチュアリティ。

「STRATA-2-EAST - 15 TRACKS ORIGINALLY RELEASED IN THE USA ON STRATA-EAST RECORDS 1972-1975」

VARIOUS ARTISTS「STRATA-2-EAST - 15 TRACKS ORIGINALLY RELEASED IN THE USA ON STRATA-EAST RECORDS 1972-1975」1972〜1975年
●1997年に編まれた SOUL JAZZ による STRATA-EAST コンピの第二弾。この STRATA コンピ二枚は下北沢の老舗レコ屋 FLASH DISC RANCH にて一枚3680円で買ってる。ボクの普段の傾向だと桁外れに高い買い物だが、SOUL JAZZ のアイテムは日本にちゃんと入ってこないので仕方がない。コイツラに関しては、見たら買う、または直でイギリスに発注する、と決めてる。じゃないと入手しきれない。初期アイテムは、だいたい全部持ってるつもりだけど、最初期のモノだけは買い逃したまま廃盤にされてしまったのではないかと心配だ。こいつのカタログナンバーは「USLP6」
公民権運動やブラックパワーへの自覚が、かれら黒人ミュージシャンを独立自営の音楽制作に駆り立てていたのは間違い無い。雄々しいジャズの躍動感がここで爆発している。KANO DUKE、CHARLES SULLIVAN、DICK GRIFFIN、HAROLD VICK、JOHN BETSCH…正直ココで初めて知る名前がたくさん。ただ、そのグルーヴに自然と体が動く。レーベル主宰 STANLEY COWELL「TRYING TO FIND AWAY」のシンセプレイがコズミックで痺れる。ONENESS OF JUJU「FROODOM FIGHTER」の熱いポリリズミック・パーカッションに煽られる。WEIDON IRVINE MADLIB など後年のヒップホップアーティストによって再評価されていたな。ジャズボーカル女傑 DEE DEE BRIDGEWATER のソウルフルな歌唱が素晴らしい BILLY PARKER'S FOURTH WORLD「GET WITH IT」も見事な聴き所。CECIL MCBEE「TURSA BLACK」の粘っこいジャズファンクにも震える。
●ちなみに、STRATA-EAST は今なお存続し過去カタログを管理している。継続は力なり。

MARCUS BELGRAVE「GEMINI」

MARCUS BELGRAVE「GEMINI」1974年
●このレコードのオリジナル盤は、デトロイトの黒人インディジャズレーベル TRIBE RECORDS からリリースされた…なんと1000枚だけの激レアアイテムだったという。西海岸の BLACK JAZZ、ニューヨークの STRATA-EAST、デトロイトの TRIBE、こうしたインディジャズレーベルが70年代の音楽実験を支え、次の世代に継承されていった。実際、このアルバムの一曲目、コズミックな12分の長尺曲「SPACE ODYSSEY」は90年代デトロイトテクノの代表格 CARL CRAIG によって翻案改作されているという。60年代のジャズ、そしてデトロイトの MOTOWN のような R&B〜ソウルの伝統は、ココを経由してテクノまで繋がっていく。
●とはいえ、ここでの音楽は、プログレッシブな構成ながらもオーセンティックなモダンジャズ。17歳からプロのトランペット奏者として活動する MARCUS BELGRAVE は、40年にも及ぶキャリアの中で CLIFFORD BROWN、MCCOY TYNER、CHARLES MINGUS、そして SUN RA とも共演してきた男。時に MOTOWN などでバイトをしながら、ジャズの巨人たちと仕事をし、地元の重要ミュージシャン(ここでは、サックス奏者 WENDELL HARRISON、トロンボーン奏者 PHILLIP RANELIN など)とこうした独自の活動をする。それが70年代のインディジャズの風景。



●ジャズは奥深すぎて、よくわからんのですよー。
●今回の副読本は、こちら。

小川充監修「スピリチュアル・ジャズ」

小川充監修「スピリチュアル・ジャズ」




●一曲だけ、動画を。PHAROAH SANDERS「PRINCE OF PEACE」。
●来年もよい年でありますように。そんな気持ちになる神々しいソウルミュージック。




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●Hulu で岩井俊二監督「花とアリス」見てた。

花とアリス

●花ちゃん、手鏡に新幹線マークの刺繍が入ってた。女子高生として素敵な趣味だ。



今日は、90年代渋谷系の時代を回顧してみる。

●今月、ニュージーランドで暮らしている大学時代の先輩のりぴーさんが、日本に一時帰国。やはり大学時代からの先輩わっきーさんと、一緒に下北沢でゴハンを食べた。場所は「ととしぐれ」。映画「モテキ」のロケ地にもなった和食屋さんだ。そのあとに曽我部恵一さんが共同経営するカフェ「CITY COUTRY CITY」でお茶。とても楽しかった。下北沢を堪能してもらえたかな。
●ニュージーランドでは、定額制音楽配信サービス「SPOTIFY」がすでに上陸してる。有料会員(12NZ$/月)ならオフラインでもある程度の曲が聴けちゃう。その上に、なんと P-VINE 系の日本のマイナーバンドがすでに配信されてるという!CERO とか。七尾旅人とか。イルリメとか。((((さらうんど)))とか。あらかじめ決められた恋人たちとか。すげー!

●すでに全員が40歳代になり、一番年長のわっきーさんなど四捨五入すれば50歳代になるというのに、この三人が集まると、自然と90年代のあの頃に気持ちが帰っていく。「渋谷系」の時代だ。三人は音楽マニアだったし、「渋谷系」はマニアックな音楽にアプローチすることがオシャレな時代だった。今みたいに音楽が微妙な娯楽になった時代からは想像もつかないだろうけど。そしてそれぞれが、今も音楽をそれぞれのやり方で聴いている。それほどオカネも手間もかけてないけど、音楽はまだ身近に鳴っている。


●結構前の雑誌になるけど、興味深い特集があった。

「GINZA」2014:6

「GINZA」2014/6 特集「ファッション雑誌を読みましょう」
ファッション雑誌自身が「ファッション雑誌を読みましょう」って自己言及するってのは、厳しい出版業界を前提とすればかなり冒険的なのでは?ステータスの高い「GINZA」のような雑誌じゃなければ簡単には発信できないコピー。テレビが「テレビを見ましょう」ラジオが「ラジオを聴きましょう」レコード会社が「CDを聴きましょう」というとすごくカッコ悪いでしょう。なのにワザワザ「GINZA」はその自己言及に踏み込んだ。そんで「雑誌」というメディアが持つ美しい伝統と、その流れの延長にある現場からの深い愛情を、臆面なく紙面全体に散りばめてた。で、ボクはそれを楽しく読んだのだ。特に注目したのは、特集内特集の位置付けだった、「オリーブが教えてくれたこと」/「90年代 GIRLS CULTURE BOOK」という記事。

●雑誌「オリーブ」。1982年〜2003年。ボクが18歳だった時に初めて会った20歳ののりぴー先輩は、完璧なオリーブ少女だった。今回会った時も彼女自身がオリーブ少女だったとはっきり白状した。今の若い女性にはなかなか理解しづらいと思うが雑誌「オリーブ」は多くの女子の人生を転覆してしまった。「オリーブがなかったら、私は普通の女子として普通の生き方ができた。男の子に受ける普通のオシャレをして、普通の結婚をしてた……こんなにイロイロなモノをこじらせることはなかった…。」のりぴーさんにとって雑誌「オリーブ」はそれだけのインパクトがあった。その後に続く青文字系雑誌「CUTIE」「ZIPPER」「オリーブ」を代替できない。ライフスタイル誌「KU:NEL」も結局違うものだという。
「オリーブ」は間違いなく女性のファッション誌だったし、誌面の少女たちは可愛らしかった。でもそれだけじゃなかった。「オリーブ」は、少女が自分自身の意志で独自のスタイルを選び取るためのエッセンスを伝えていた。パリ・サンジェルマン・ドゥ・プレのカフェに憧れること、フランス映画や英米文学でちょっとした背伸びをすること、ファッションやアートの世界で活躍するクリエイターを夢見ること、淡い小説のような恋愛や女友達との友情、そして孤独の美しさを、思春期の少女に伝えていた。バブルに揺さぶられるコトなく、自分の研ぎ澄ましたセンスで本当の「自分らしさ」を選び取る姿勢。それが幻想なのか実体があったのかは、今となってはわからない。でも、90年代の少女は、「オリーブ」とベレー帽とボーダーシャツで武装していた。

●そんな90年代の中で、ガールズカルチャーとはなんだったのか?記事「90年代 GIRLS CULTURE BOOK」にはボクにとっても馴染み深いキーワードがたくさん出てくる。ファッションブランド X-GIRLSONIC YOUTH の女性ベーシスト KIM GORDON が立ち上げたブランド。ダボダボのスケータースタイル中心だった90年代グランジを乗り越えて、ナードテイストも加えた細身のプレッピースタイルを発信。モデルに若き CHLOE SEVIGNY を抜擢…ああ彼女も今年でもう40歳、ボクと一個しか変わらなかったんだ。そして、KIM のようなロックスターが推進した音楽ムーブメント RIOT GRRRL(ライオット・ガール)。アメリカのパンクバンド BIKINI KILL から BOREDOMS YOSHIMI、ニューヨークで活躍した日本人女子二人組 CHIBO MATT などなど。激しく時に可愛らしく自由に自己主張する女子たち。なんでも手作り D.I.Y.精神のロウファイ渋谷系とデザイナー信藤三雄SUBURBIA SUITE と橋本徹。ミニシアター映画。そしてあの時代から時計の止まったままのマンガ家、岡崎京子
●この辺が今の若い世代に再評価されるって、全然ピンとこないけど、本当に興味を持ってもらえるのは確かにうれしい。あの時代にあった、ボクらの夢と挫折がココに詰まっているから。


PIZZICATO FIVE「THE BAND OF 20TH CENTURY」

PIZZICATO FIVE「THE BAND OF 20TH CENTURY」1991-2001年
「渋谷系」の中でもっとも「渋谷系」らしいアーティスト、そしてもっとも90年代らしいアーティストといえば、PIZZICATO FIVE だろう。これは、彼らの6枚組+αのDVDボックス1990年に三代目ボーカリスト・野宮真貴が加入してから、2001年に解散するまでの10年間のミュージックビデオたち、そして解散直前に収録されたBSフジでのスタジオライブが収められてる。自分が20歳代だった頃を思い出させる懐かしさと、不思議と古びて見えない新しさが真空パックされているようで、見ていて実に楽しかった。デッドストック状態にあったものを友人がボクに譲ってくれたのだ。ありがたやありがたや。

野宮真貴さんの不思議。<THIS YEAR'S GIRL IN ACTON>
●つーか、この人年齢いくつだったんだろう?1991年の新加入紹介VTRは、アンディ・ウォーホルの撮りっぱなしインタビュー映画かのような、またはシリアスなフランス・ヌーベルヴァーグのつもりなのか、荒っぽいモノクロフィルムでザックリ撮られてる。で、野宮真貴さんは…その後の過剰なドレスアップとは別の、私服っぽいシンプルな着こなしで、ツイギーのようにやせっぽっちで、大きな瞳と謎めいた笑みを浮かべて、なんの気負いもなく振舞ってる。ザックリとしたボブが素敵…ボクの先輩のりぴーさんもあの時代のショートボブでとても素敵だったのですよ本人が自覚してないようだけど。実はモデル業やナレーター業、ポータブルロックというバンドで活躍していた彼女はこの時点で芸歴10年、少なくとも30歳にはなっていたはず。なのにこの初々しさ、というか、世間離れしたフワリ浮遊感がすごい。このミューズを見つけてアルバムに「女性上位時代」という言葉を選んだのは、やっぱり小西康陽さんの絶妙なセンスならでは。
●そんで彼女を囲んで、男性メンバー二人がこの時期の代表曲「トゥイギー・トゥイギー」を踊るクリップも秀逸だ。リハ風景をも織り込んだモノクロフィルムには、スタジオが実は圧倒的に昭和風建築だったり、スタッフは決してオシャレでもないみたいなトコロがチラチラというか全部丸見えで、PIZZICATO FIVE最後まで強い個性として抱き続けた奇妙なフェイク感覚/ハリボテ感覚を最初から象徴しているようで興味深い。
●そんで、彼らのダンスをみて感じたこと。90年代当時のイベントでチラチラみてた彼のDJっぷりでなんとなく感じてたんだけど、やっぱ小西康陽さんのダンスっぷりは思いっきりヘンテコ。申し訳ないけどイケメンとは3000里ほど離れている彼が、長くない手足を目一杯振ってリズムに身を預ける様子は滑稽に見えるんだけど、実は音楽に本気って気持ちが伝わってすごく素敵。わかりやすく言えば、ブサイクでヘンテコでも堂々と踊ればカッコよく見える!ってコト。西麻布や渋谷新宿のクラブに出入りして遊ぶようになる時に、小西さんの堂々としたダンスっぷりが背中を押してくれたおかげで、奥手のボクでもフロアで自由に振る舞えるようになったと感じてる。好きな音楽に対しては、好きだってハッキリ意思表示しなくちゃ。その意味ではオタ芸だってモッシュだって意味は同じだよ。

ファンクバンドとしての PIZZICATO FIVE。<MISS PIZZICATO FIVE SUPERSTAR>
●1991年、渋谷「ON-AIR」(現「O-EAST」)でのライブを収録。実は小西康陽さんも高浪敬太郎さんも、全く楽器に触れず、塩蔵に1ミリも貢献していない。サポートという身分だけど、ギター/ドラム/コンピューターオペレーションのバックミュージシャンが実働を全て背負ってる。その時…ああ、このバンド、キラキラの打ち込みダンスミュージックってイメージがあったけど、ライブに音楽を着地させる時には完全にディスコファンクへ変貌していくんだなと感じる。本来の小西さんはベーシストだしね。そのグルーヴィーな原則がCDパッケージじゃなくて、リアルに実体化するとファンクになる。

実はD.I.Y.精神のミュージッククリップ集<READYMADE TV VOLUME ONE>
●ピカピカのオシャレでディレクションされてたように当時は受け止めてた PIZZICATO FIVE のクリップたちをまとめてドサッと見返すと…ゴテゴテにお金を使った内容じゃないってことがわかる。ロケーションも特別な場所じゃない…むしろ知恵と工夫で選び込んだって印象。「SWEET SOUL REVUE」はレーベルがあった日本コロムビアの屋上で収録してる。名曲「東京は夜の7時」であっても、東京タワー旧東京郵便局(現・KITTE)の前でゲリラ撮影&山手通り沿いのガススタンドのロケ。「HAPPY SAD」だってきっと日比谷公園の中の建物だと思う。「SWEET SOUL REVUE」リミックスバージョンは、昭和風レトロビルヂングの一室に、オシャレなLPのジャケを床にばらまいて、野宮さんが歌い踊るだけのワンポーズを1カメノーカットで撮り切る。潔し。基本は手ブレ感満載でリアリズムをフィルムに放り込む感じ…これも小西さんなりのヌーヴェルヴァーグ解釈なのだと思う。でも野宮さん他スタイリング&ヘアメイクは完璧だから、結果としてゴージャスに見えてる。お金もCGも使わない(照明すら足りない)んだけど、創意工夫でイメージを膨らませていくスタイル、カッコイイと再確認。もちろんここに渋谷系デザインの総帥・信藤三雄氏が関わっているわけですが。
「東京は夜の7時」フジテレビ生放送バージョンは今や伝説の子供向けテレビ番組「ウゴウゴ・ルーガ」からの貴重なスピンアウト。「慎吾ママのおはロック」みたいなノベルティソングを小西さんが多く手がけるようになるのはこの辺からがきっかけなのかな。

GROOVISION のデザイン感覚が導入される時代。<READYMADE TV VOLUME TWO>
●1994年に高浪敬太郎氏が脱退して、野宮+小西体制になった時代。MATADOR 経由でアメリカデビューしたのもこの時期だったはず。ここから映像作品に GROOVISION のクリエイティブが加わる。「大都市交響楽」「モナムール東京」「ベイビー・ポータブルロック」などのポップ感覚に磨きをかける。「イッツ・ア・ビューティフル・ディ」の60年代テレビ番組風ギミックは、フジテレビ・プロデューサーきくち伸が制作に関わってるとな。彼らの事務所 READYMADE がリバイバル上映させた1961年市川昆監督「黒い十人の女」の予告も。これも GROOVISION の編集とな。もちろん当時ちゃんとこの映画を見たよ。ダンディな船越英二さん(船越英一郎氏の父)、若かりし中村玉緒さんがキュートでした。なんかあれこれ思い出してきたぞ。

渋谷系の喧騒を通り抜けて解散へ。<READYMADE TV VOLUME THREE>
●1998年以降の PIZZICATO FIVE …ボク個人にとっては就職をしてちょっとこのバンドから関心が薄くなってた時期。斉木しげる氏がダンディを演じてたり、ザ・コレクターズの加藤ひさし氏がワイルドなロックガイを演じてたり。一方で、「ポップ中毒者」故・川勝正幸が看破した「世界同時渋谷化」というテーゼをくぐり抜けて、欧米コンプレックスをアメリカ進出で相対化した PIZZICATO FIVE は、自分たちのルーツである「東京」に回帰、より厳密に「東京」をテーマとしてフォーカスする。アルバム「さえらジャポン」「東京の合唱」の浅草ロケシューティング&屋形船 WITH 松崎しげるYOU THE ROCK が象徴的。てかココに来てスノビズムから離脱してベッタリとベタに降りたってわけでしょ。「NON STOP TO TOKYO」もその路線によりそうのかな。
●今回初めてみた「きみみたいなきれいな女の子」信藤三雄ディレクション、ロンドンロケのシンプルかつクッキリとした色配置の可憐さにときめく。野宮さんのフワリと広がった金髪と、ナチュラルなメイク、赤いニットが可憐。やっぱこの人、美人さん。

バンドの終焉。<HAPPY END OF THE BAND - BS FUJI STUDIO LAST SESSIONS>
2001年3月31日、PIZZICATO FIVE は解散する。これはその解散直前にBSフジで行われたスタジオライブの様子を収録。ラストアルバムとなった「さえらジャポン」の出来が最高だった…このまま解散するのが一番カッコイイと小西氏が語る。PIZZICATO を経て世間は変わったかと聞かれて野宮嬢「ちょっと、おしゃれになったかな、デザインとかお洋服とか」
小西氏もベースをプレイするオーガニックなジャズファンク風バンドフォーマット。ギター&ベースは窪田晴男。パーカッションが猫沢ミミでカワイイ。オルガンがスリルなプレイを披露。「東京は夜の7時」を座りながら歌う野宮嬢はピンク〜パーブルのエミリオプッチ柄ドレスでおしゃれ。加入した1990年から一貫されてたイメージ戦略、お人形のような佇まいと乾いた質感のボーカルが、この解散ライブにおいても、イレギュラーなアレンジ編成でも、一ミリもぶれてない。ゲストに PIZZICATO FIVE 二代目ボーカリスト(そして ORIGINAL LOVE)の田島貴男が途中参加。見事にウェットなソウルボーカルである彼と、野宮真貴の合体は見事にギクシャクしてて、その意味でも野宮真貴の奇妙な独自性に、この解散ライブにおいてなお、さらにハッとされられる。
●ライブの最後はボクのフェイバリット楽曲「MAGIC CARPET RIDE」。チェロを加えて、コーラスを小西さん自身が担う。「きみとぼくは不思議だけど むかしから友達だよね 2000光年を愛しあってる そんなふうに感じだりしない? そしてふたりいつのまにか 年を取ってしまうけど いつまでもふたり 遊んで暮らせるならね」小西さん&野宮嬢の不思議なパートナーシップを象徴しているかのような楽曲。

1991〜2001年を一気に俯瞰してみて、一つの時代の始まりと終わりをみてしまって、じわり感動したりもするのだけれども、気づけば今は2014年、いや2015年を迎えようとしている。DVDで俯瞰した以上の時間がその後に続いている。やっぱり90年代は遠い昔だ。野宮さん一体幾つになったんだろう?解散の時には40歳あたりでしょ?え、今はアラフィフ通り越して次行っちゃう?想像がつかない。


「渋谷系」の重要人物もう一人にフォーカス、CORNELIUS。

CORNELIUS「FANTASMA」

CORNELIUS「FANTASMA」1997年
「渋谷系」は、間違いなく FLIPPER'S GUITAR の出現に始まった。ポップ中毒者として博覧強記だった小西康陽は、なんだかんだ言って80年代前半からニューウェーブ〜細野晴臣文脈からキャリアを起こしたベテランだった。しかし、FLIPPER'S GUITAR は突然現れた。ヨーロッパの音楽事情や文学アートに目配せする天性のセンスをもった「恐るべき子供達」として登場した。しかも彼らは即座に解散、「渋谷系」のカリスマの地位すらも無価値といわんばかりの姿勢を見せた。野宮真貴 PIZZICATO FIVE のボーカルとして離陸する1991年には、すでにこのバンドは退場不在だったのだ。

小山田圭吾と小沢健二という二つの個性に分裂した後、彼らがどのようなデュオだったのか、ボクは彼らの活動を眺めながら、徐々に読み取っていたような気がする。FLIPPER'S GUITAR の冷めた諦観に一貫されたリリックは小沢健二の領分。彼はそのどこにも行けないニヒリズムをバンド解散で克服し、敢えてポップスターの道を選び、1998年で活動ペースを落とすまで走り続けた。時にはスチャダラパーとともにヒップホップに挑戦するほどに。
●一方で、膨大な音楽アーカイブから様々な情報を参照して極上の音楽を構築していたコンポーザーが、小山田圭吾の担当だった。スノビッシュなニヒリズムと厭世観を抱えたままで、カラフルな音楽世界を膨らませた CORNELIUS 名義のファースト「THE FIRST QUESTION AWARD」、悪フザケのつもりかハードロック/オルタナティブの要素を強調した「69/96」を経て、リリック要素に意味を持たせない作風に彼はシフトしていく。それが「FANTASMA」1998年だ。CORNELIUS「PET SOUNDS」というか「SGT. PEPPERS」というか、古今東西ありとあらゆるポップスを飲み込むかのような意気込みが盛り込まれてる。しかしそれはあくまで過去アーカイブの参照で、そこから自由になるためにはどうすればいいのか、散らばっていくベクトルをどう制御すべきか迷っているかのようにも見える。その上で、すでにシカゴ音響派などで一般的になりつつあったポストロックアプローチ、そしてそこからスピンアウトしたようなミュージックコンクレートの手法が、散見できる。次なる彼のアプローチが見えている。
●シングル「STAR FRUITS SURF RIDER」は可憐なポップスだ。ドラムンベースの収穫を盛り込みながら、彼一流のギターポップ的なメロディが優しい。ボクはこの曲の8センチシングル2枚組も持っている。シングル二枚を同時にミックス再生すると、完璧な「STAR FRUITS SURF RIDER」が鳴る。シングル一枚づつだけならば、独立した別の楽曲が別の表情を見せてくれる。非常に面白いアイディア。アメリカのサイケデリックバンド THE FLAMING LIPS がこのアプローチで4枚組アルバムを作ってた。

「STAR FRUITS SURF RIDER」

●CORNELIUS「STAR FRUITS SURF RIDER」1997年

CORNELIUS「POINT」2001

CORNELIUS「POINT」2001年
ハードディスク・レコーディングが一般化して、CORNELIUS のポストロック化も完全になったトコロ。無駄な要素を削ぎ落としたミニマリズム音響、アンビエンタルかつサイケな抽象美。時にドライブするダンス感覚。映像作家、辻川幸一郎とのコラボ「DROP」の水滴が落ちるビデオも大きく話題になった。渋谷系の90年代を経て、新しいディケイド00年代=ポスト渋谷系へ突入するにあたり、実は明確な新ビジョンを持っていたのは、小西康陽でもなく、小沢健二でもなく、小山田圭吾だったのかもしれない。

CORNELIUS「SENSUOUS」

CORNELIUS「SENSUOUS」2006年
●前作「POINT」から5年も空けてリリースされた5枚目のアルバム。でも小沢健二はもっと感覚が広いからマシか。ミニマリズムもより一層深化して要素がどんどん減る一方で、ヘッドホンでなければ認知できない音の配置などの細かいコダワリはより先鋭化している様子。しかし、きちんとしたスタジオアルバムのリリースはここで途絶えてしまっている。それからしばらく経って、NHKETVの番組「スコラ - 坂本龍一音楽の学校」で、YMO のサポートギタリストを淡々とこなしている様子を目撃。ちょっぴりビックリした。妻だった嶺川貴子とも去年離婚しちゃったみたいだし。さて、今後の彼はどう動いていくのだろうか。


●その他の渋谷系音源を軽くチェック。

ICE「SOUL DIMENSION」

ICE「SOUL DIMENSION」1996年
渋谷系のムーブメントの中では、多くのジャズファンクバンドが登場した。イギリスで起こっていたアシッドジャズのムーブメントがハウスやソウルの感覚をダイナミックに折衷した新しい感覚を投入していたからだ。結局のところ、PIZZICATO FIVE ですらその影響下にあったことを、彼らのライブをDVDで観て確信するした…。
●この時期に登場したジャズファンク系バンドといえば、元 PIZZICATO FIVE であった田島貴男率いる ORIGINAL LOVE大沢伸一 MONDO GROSSO、さらには LOVE TAMBOURINES、ESCALATORS、SPIRITUAL VIBES もいいバンドだったなあ。DJユニットではあるが UNITED FUTURE ORGANIZATION、KYOTO JAZZ MASSIVE も忘れられない。
ICE もこうした一群のジャズファンク系バンドのひとつだった。ギタリスト/プロデューサーの宮内和之とシンガー国岡真由美の二人を軸にしたユニット。1993年にデビューしてこれが5枚目のアルバム。「渋谷系」とはいえリリースのスビードが速いのは音楽産業にまだたっぷりお金があったからだろうか。クールでウエットなボーカルを、ファンキーなカッティングギターやグラマラスなピアノとベース、キレのいいホーン隊がスムースに推進している。シックなドライブミュージックに最適かも。
●ユニットの中心人物であった宮内は2007年でガンで亡くなってしまうが、国岡は形を変えつつも宮内の音楽を守って活動しているという。

RON RON CLOU「FIRST ALBUM」

RON RON CLOU「FIRST ALBUM」1995年
PIZZICATO FIVE 周辺からジャズファンクバンドがたくさん登場したように、FLIPPER'S GUITAR 以降にはギターポップ系のバンドが大勢登場したのも渋谷系時代の特徴だった。 BRIDGE 〜カジヒデキ、ROTTEN HATS 〜 GREAT 3、VENUS PETER、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER …とか。もうたくさんありすぎて思い出せない。NELORIES、B-FLOWER、デキシード・ザ・エモンズとかとかも。そんで元祖っぽいポジションにネオモッズだったザ・コレクターズがいて。
●このバンドは、こうしたギターポップバンドを紹介していた(そして今も進行中である)インディレーベル K.O.G.A. RECORDS からリリースされた音源。やはりこの時代のギターポップバンド N.G.THREE(改組して NORTHERN BRIGHT)と THE ELECTRIC GLASS BALOON というバンドのメンバーが結成した3ピースバンド。シンプルで荒削りな鳴らしっぱなしのギターをそのまま収録した気取りのない姿勢がフレッシュ。

FLIP FLAP「JUNGLE DJANGO JUMBO」

FLIP FLAP「JUNGLE DJANGO JUMBO」1998年
渋谷系は、90年代にメジャーとなった様々な新型音楽フォーマットを日本に移植した。ヒップホップ然り、テクノ然り。(スチャダラパー電気グルーヴの功績ですね)。この双子ちゃんモデル姉妹ユニット FLIP FLAP のこのアルバムには、電気グルーヴの初期メンバー CMJK も参加してて、キュートなエレポップをスマートに鳴らしてる。しかも楽曲の順番を変えられないように、アルバム41分間がまるまる一曲として構成されている。
●そんな彼女たちもすでに二人とも結婚。赤ちゃんを産んでママになっているとな。

「BENTEN BENTOH」

「BENTEN UNPLUGGED」

VARIOUS ARTISTS「BENTEN BENTOH」1994年
VARIOUS ARTISTS「BENTEN UNPLUGGED」1996年
日本のシーンの中に「RIOT GRRL(ライオット・ガール)」に対応する存在があるとしたら、この「弁天 LABEL」なのでは。ということで、このレーベルコンピを聴く。ガールズバンドだけにフォーカスして、三軒茶屋から海外に発信する大志。つーか、いま検索したらこのレーベル今も健在なのね!すげーご立派!
SUPER JUNKEY MONKEY は、ガールズバンドとしてはいち早くミクスチャーロックにアプローチしてて当時から注目されてた。けど他のバンドは本当にアンダーグラウンドだったねー。ロリータ18号とか素でハードコア音質だし、THE FLAMENCO A GO GO もロウファイガレージだったねえ。でも、あとはボクもほとんど名前しか知らないのですよ。DROOP、GUINNY VAMPS、NOODLES、LITTLE FUJIKO、LOVE PIGS…。みーんなガレージ。OLIVIA★NEW★TON★JOHN ABBA「DANCING QUEEN」アンブラグドカバーはかわいらしいなあ。
PETTY BOOKAウクレレを持った PUFFY なんてたとえで紹介された女性デュオだが、なんと襲名制で現在4代目と代変わりしてるとな。2代目が森山直太朗の姉でおぎやはぎ小木夫人の森山奈歩。この音源は初代 PETTY BOOKA で THE FLAMENCO A GO GO のメンバーの兼任。ニューオリンズファンクの古典「IKO IKO」をカバーしている。
JON というアーティストはハッキリと覚えている。ホルスタインの着ぐるみを着ながらオルガンを弾き鳴らして、たった一人ジョンという犬の歌をうたう女性。というかジョンの気持ちをそのまま代弁してるというか。「おうちにはいりたいーわん!」もう牛の服着て犬の歌を歌うという段階でズレまくってるのに、のどかすぎる犬のアタマの中をポコンとくりぬいて映写するかのようなリリックは脱臼しまくりでこれこそロウファイと感動した。当時、何回かライブを見た…一度はオルガンじゃなくて轟音ノイズバリバリバージョンの中、ぴょんぴょん飛び跳ねながら犬になるという演出で…もう爆笑を超えて神々しさすら感じた。JON田口史人さん主宰の OZ DISC JOHN ZORN のレーベルからもアルバムをリリース。やっぱわかる人はわかるんだなーって感じた。

少年ナイフ「嵐のオーバードライブ」

少年ナイフ「嵐のオーバードライブ」2014年
90年代のシーンの中でいち早く海外での評価を得たのはこのガールズトリオでしょう。SONIC YOUTH BOREDOMS少年ナイフの名前を挙げていて、なんじゃこりゃ?日本にこんなバンドがいるのか?!と驚いたのを覚えてます。そこから全く芸風を変えることなく、ソリッドなガレージロックを現在進行形で続ける姐さんたち。今回も内容はいつも通りのタフなロック。



●やばい、今回も長く書きすぎた。誰もよまない。

イブだ!クリスマスだ!楽しいな!

今回は、お得意先との定例会議でもプレゼント交換をやった。
●先方のチームリーダーさんが大真面目に先週提案してきたんですわ。「来週はクリスマスイブですから、プレゼント交換しましょう!」え、マジ?この人、外国人だからやっぱ感覚チガウわー…でもアジア系の人だしクリスチャンには見えないし。「それと、お値段は500円までってコトで。あまり高いのは大変ですよね!」はーそーですねー。「あ、でもラッピング代は別ってコトで。ラッピングもお願いするとお金かかる時もありますからね!」なんか、プレゼント交換、異常にヤリ慣れてませんか?ルール設定が鮮やかなんだけど。
●で、しょうがないからボクはヴィレッジバンガード行って、ワイフと一緒にプレゼント選びましたよ。グラスタンブラーを買いました。みんなはおいしいコーヒー豆とか、かわいいニットキャップとか、小さいスノードームとか。女子はカワイイプレゼントを選んでくるなー。で、ボクの手元にはくじ引きで、発起人のチームリーダーさんのプレゼントが。そしたら、ファンタ味のリップクリームが!ナニコレどーいうつもり?「そのオレンジ味でボクの顔を思い出してくれたらウレシいデス!」それはないだろう!つか、結果的に絶対忘れない記憶になったわ。


家に帰ると、娘ヒヨコが受験勉強をほったらかしてワクワクしてる。
●ワイフが、ここぞという時にだけ使う70年代ビンテージのお皿を出して、チキンのもも肉を乗せる。お皿とお揃いのカップに熱いポタージュスープを。大きめのボウルにサーモンのサラダを。特製のキッシュも登場。「今日のテーブルはきれいだなー」とヒヨコが写真を撮る。飯田橋のお店から買ってきたショートケーキをヒヨコが温めたナイフで丁寧に切り分ける。砂糖菓子のサンタさんは当然ヒヨコのもの。大きなイチゴもヒヨコのもの。フィンランドで買ったムーミンのマグカップで紅茶を飲みながら甘いケーキを食べる。ノマドが聞いてるNHKラジオ「基礎英語1」もクリスマス仕立てでローストチキンを注文するスキットを練習。クリスマスは楽しいね!


BGMもちゃんと演出しないと!

「GLEE THE MUSIC THE CHRISTMAS ALBUM VOLUME 2」

「GLEE THE MUSIC, THE CHRISTMAS ALBUM VOLUME 2」2011年
ミュージカル海外学園ドラマ「GLEE」このクリスマスサントラを鳴らそう!この傑作、わりと最近HDDに撮り貯めたシーズン3までを全部見ました!感動した!シーズン3の最後で主要キャストたちは高校を卒業。ワイフは感極まって「卒業しちゃうんだよ!ワタシ見たくない!」とまで言いだす始末。そのくらい一人一人のキャラに愛着がわいてる。シーズン1から三年間、彼らもイロイロあって成長して。そんなクラスがバラバラになっちゃう切なさまで感じちゃう。ワイフは自分があのクラスの一員かと錯覚してるんじゃないか?人前で歌うたえないくせして。まー「GLEE」はそれだけ中毒性が強いドラマです。
●その「GLEE」のクリスマス・エピソードがそのままサントラとして発売されてる。それをこの楽しい夜にプレイ!ヒヨコもウキウキ、ボクもウキウキ。シーズン3エピソード9「EXTRAORDINARY MERRY CHRISTMAS」の平和なストーリーが気持ちよくて、選曲も楽しい。今ウィキで調べたら、主要キャスト・ウィル・シュースター先生を演じる MATTHEW MORRISON 自身がこの回のディレクターを担当してるんだ!スゴイね!

MARIAH CARRY「ALL I WANT FOR CHISTMAS IS YOU」を元気よくカバーするのは、太っちょ黒人女子のメルセデス。シーズン3の彼女は女子リーダーのレイチェルとセンター争奪を張り合い過ぎて、ちと意地っ張りだったけど、この回では楽しく振舞っててチャーミング。ユダヤ系の空回りヒロイン・レイチェルは痛快なオリジナルナンバー「EXTRAORDINARY MERRY CHRISTMAS」を、ライバル校から転校してきたイケメン・ブレインと熱唱。結婚を決意したウィル先生とエマ先生のラブラブなデュエット「CHRISTMAS EVE WITH YOU」もかわいらしい。JUSTIN BIEBER BOYS II MEN などなどもカバーした「THE LITTLE DRUM BOY」は、車椅子のナード少年アーティが担当。シーズン3のアーティは、車椅子のハンデを乗り越えて舞台演出の才能に目覚めていく。このエピソードで、彼はローカルテレビ局の要請を受けて、クリスマス特番の演出を担当することになるのだ。シーズン3ともなると、いじめられっ子だったグリーのメンバーは、いつしか自分に誇りを持ち、自分の個性を実にノビノビと伸ばすようになる。そんな成長を眺めてると、見てるコッチも嬉しくなるんだ。だから「GLEE」は楽しい。
アーティ演出の番組は、わざわざモノクロに仕立てたおしゃれなミュージカルショー。ゲイのカップルであるカートとブレインが、おしゃれな紳士としてパーティのホストを担当。雪降る夜、暖炉の大きなお屋敷にお客を招くにあたり、FRANK SINATRA バージョンが有名な?「LET IT SNOW」をビッグバンドの伴奏で小粋にデュエット。「レリスノウ!レリスノウ!レリスノウ!」そこにナゼか「スターウォーズ」のルーク&ハンソロのコスプレをした男子メンバー2トップのフィン&パックがやってきて、BRUCE SPRINGSTEEN バージョンの「SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN」を歌う。「スターウォーズ」ネタを盛り込むのもアーティのコダワリ演出。意味不明だけど。
●超天然少女ブリトニーが担当するのは THE WAITRESSES「CHRISTMAS WRAPPING」という曲。元ネタは、ポストパンク系エレクトロレーベル ZE RECORDS から1981年にリリースされた曲…うわコレ全然知らない…原曲チェックしたい。アイルランドからの留学生ローリーが歌うのは「BLUE CHRISTMAS」。訛りがキツイ田舎モノって設定で、クリスマスも孤独で予定がない彼は辛気臭いこの選曲でバカにされちゃう。もちろん原曲は ELVIS PRESLEY。このローリー演じる DAMIAN MCGINTY 「GLEE」出演権を賭けたオーディション番組で勝ち抜いた男。その朴訥とした佇まいはシャイな田舎モノそのものだけど、飾らない純真さが地味に目を引く。
●そんなローリーのテレビショーでのアドリブがキッカケで、グリークラブのメンバーはホームレスの子供達が集まる公民館へ移動。ボランティアの奉仕活動として全員で BAND AID「DO THEY KNOW IT'S CHRISTMAS ?」を合唱。本来なら悪役の宿敵スー・シルベスター先生も合流。初期はホントに憎たらしい彼女もシーズン3大詰めでどんどん味方に近づいていくからたまんないね。「DO THEY KNOW IT'S CHRISTMAS ?」は1984年の曲だけど、2004年にはスーダンのダルフール紛争難民支援でリメイクされ、そして今年2014年にも西アフリカのエボラ出血熱禍に際してリメイクされたばかりだね。

「GLEE THE MUSIC THE CHRISTMAS ALBUM」

「GLEE THE MUSIC, THE CHRISTMAS ALBUM」2010年
前年放送のシーズン2でも、クリスマスエビソード「A VERY GLEE CHRISTMAS」(エピソード10)があって、そしてオリジナルサントラがある。コッチの方がトラディショナル要素が高め。ぶっちゃけ日本人のボクには馴染み薄い曲が多いんだけど、グリーの贅沢なコーラスワークはどの曲もステキ。メルセデスが活躍する「ANGEL WE HAVE HEARD ON HIGH」のゴスペルアプローチとか。フィン&パック&アーティ男子勢が楽しい「JINGLE BELLS」の陽気さとか。レイチェルの丁寧な歌唱がしみる「O HOLY NGHT」の荘厳さとか。
●ここでの宿敵スー先生は、グリークラブのクリスマスパーティを粉砕するため徹底攻撃してくる…大人気なさすぎる。彼女に向けてウィル先生が歌う曲が「YOU'RE A MEAN ONE, MR. GRINCH」。1966年の古典アニメ「HOW THE CRINCH STOLE CHRISTMAS !」に登場する緑色の魔物グリンチはアメリカ人にはテッパンの基礎常識なのか?しかしそのパロディについていけないボク。でもグリンチに扮したスー先生は顔を緑に塗りたくってイタズラに没頭。
●このグリンチの曲のカバーでメインを張るのは、なんとカナダのカントリーシンガー K.D.LANG実は彼女と同じで、スー先生演じる JANE LYNCH さんもレズビアンであることをカミングアウトしてる人。役柄でも男前だけど、実生活でも立派に女性パートナーと結婚してるという。ドラマの総合プロデューサー・RYAN MURPHYゲイであることをカミングアウトしている人。この人の思いが込められているのか、ドラマの中では、ゲイ&レズビアンの子たちの葛藤がかなりの比率で描かれている。友人や周囲からのイジメ。家族に理解されない苦しみ。パートナーを得た時の喜び。ゲイのカートとゲイの両親(父親2人)を持つレイチェルの友情も楽しい。性的マイノリティだけじゃない。車椅子やダウン症、吃音、貧困、通院が必要なほどの潔癖性などなど、このドラマはハンデを持った人々が数多く登場して、スクールカーストの中で苦しんだり、自己実現に成功したりして、複雑で凸凹な陰影を描き出す。様々な個性とそれを尊重する多様性の重要さを説いてくれる。
●このころは主人公フィン&レイチェルの恋愛もまだギクシャクしてて。そんな中で二人のデュエットと仲間たちのコーラスで WHAM !「LAST CHRISTMAS」をカバー。この歌って冬の定番だけど、去年のクリスマスは一緒だった元カノをメソメソ振り返る曲なのよね。噛み合わない若い二人はそんな思いを込めてこの有名曲を歌う。


「GLEE」はキャストによるライブショーが映画/DVDになってる。

DVD「GLEE THE 3D CONCERT MOVIE」

DVD「GLEE THE 3D CONCERT MOVIE」2012年
●早くシーズン4を見たいと思ってるボクだが、ワイフが「卒業しちゃったらベツモノなのよ!」とその先を見進めるコトに賛成してくれない。せっかく HULU で配信されてるのに。でもボクも出来れば日本語吹替で見たいと思ってて。字幕では取り込めない細かいジョークや辛辣な毒舌が、吹替には丁寧に反映されてて。声優さんも豪華だし。この吹替バージョン完成を待ってる。その前に、このコンサート映像を見てようかと。
●ドラマ「GLEE」は、ゴールデングローブ賞などなどのテレビ番組の賞をたっぷり獲得し、とうとうスピンアウトしてキャストによるコンサートツアーまで発展。2011年のツアーは4か国39か所、72万人動員とハンパじゃない。スゲえ、「GLEE」。結果その年の公演が収録されてなんと劇場用3D映画になってしまった。もちろんボクが見たDVDは3Dじゃないけど、その熱狂ぶりは完全なロックコンサートと同じ。

シーズン1〜2からの代表曲をバッキバキに披露してくれます。
●シーズン1の初回と最終回を飾る重要曲 JOURNEY「DON'T STOP BELIEVIN'」で幕切れ。街の中の孤独に迷う人々を励ますビッグチューン、80年代アメリカンロックとしてはベタベタ過ぎるこの曲を、ボクはドラマ「GLEE」の新解釈カバーがなければ知ることがことはなかったでしょう。そこから、不当で不公平な世界に歌で異議申し立てをする MY CHEMICAL ROMANCE「SING」レイチェルが熱唱する。ビッグなロックコンサート。そこから JAY-Z のニューヨーク賛歌「EMPIRE STATE OF MIND」
ALICIA KEYS が担ったサビの突き抜けたボーカルをメルセデスがソウルフルに歌い上げる。
●全員での勝負が一区切りつくと、キャラクターのイメージを背負った楽曲が続く。天然おバカだけどダンスは一流のブリトニー BRITNEY SPEARS「I'M A SLAVE 4 U」をセクシーに舞い踊る…原曲は THE NEPTUNES のプロデュースでボクの大好物。続いてハードなブギーロック QUEEN「FAT BOTTOMED GIRLS」パックがワイルドに歌う。シーズン2のパックは、百戦錬磨の女たらしのはずが、ワザワザおデブ女子ローレンにハマってメロメロ、彼女に冷たくされてますます興奮。レイチェルは敬愛する BARBRA STREISAND「DON'T RAIN ON MY PARADE」をビッグバンドジャズアレンジでパワフルに歌う。この歌もミュージカルナンバー…60年代のね。彼女が何度も何度も BARBRA 推しをドラマでするから、今度まとまって BARBRA STREISAND を聞いてみようと思ってる。
●車椅子を器用に操ってアーティが歌うのは MICHAEL JACKSON「P.Y.T.」。その脇ではグリーメンバー最強ダンサー・マイクが長い手足を機敏に動かしてキング・オブ・ポップに敬意を表明。アジア系なのにあそこまで踊れるってクール。ARETHA FRANKLIN のバラードを歌うメルセデスPRICK SPRINGFIELD のパワーポップをアメフト部のスタジャンで歌うフィン
AMY WINEHOUSE を歌うサンタナ。彼女はシーズン3でキャラが炸裂。メキシカンだから興奮するとスパニッシュで罵詈雑言を喚き散らす。毒舌家でグリー部を何回も裏切るけど、いつしか心を開いてレズビアンであることを告白する重要人物。「GLEE」性的マイノリティ問題をトコトン掘り下げる。続いてレイチェル KATY PERRY「FIREWORK」。突き抜け感が最高。
中盤は、ウォブラーズのコーナーがスタート。本来はライバル校のコーラスグループだったのに、フロントマンのブレインお揃いブレザーがオシャレで人気者に。カートは一時期転校してウォブラーズに所属したし、その後元のグリーに復帰してからは、なんとブレインが追いかけてこちらに転校してくる。幸せなゲイカップルの誕生だ。KATY PERRY「TEENAGE DREAM」のカバーは彼らの必殺技で、そこから PAUL MCCARTNEY & WINGS、P!NK と続けるコンボ攻撃。男性コーラスチームなのに、女性の歌、男性の歌を選ばない芸風の広さとブレインのカリスマっぷりが素朴にカッコイイ。
●女子友達として親友になったゲイのカートレイチェルのデュエットは、JUDY GARLAND & BARBRA STREISAND「HAPPY DAYS ARE HERE AGAIN / GET HAPPY」JUDY & BARBRA のバージョンは1963年だけど、それぞれの原曲は戦前だよ。「GLEE」アメリカン・ショービジネスの歴史と伝統を心の底から愛していて、その上に現代のエンターテインメントを積み上げようとしている。そんな姿勢が、こんな選曲に見て取れる。作り手が、エンターテインメントの先人たちに対して丁寧な敬意を払っている。本当に素敵なコトだ。
アーティがドラマの演出通りに車椅子から立ち上がり(妄想という設定なんだけど)、自由に踊る曲が MEN WITHOUT HAT「SAFETY DANCE」という激シブ80年代エレクトロポップってトコロもセンスが良すぎる。この原曲最悪にかっこ悪いのに、わざわざ光を当ててカッコよく仕上げてるんだもの。敬意がなければ出来ないワザだね。サンタナ&メルセデスのファンキーシンガーズが TINA TURNER「RIVER DEEP, MOUNTAIN HIGH」で対決するのも見もの。
●終盤近くの豪華ゲストは、ちと変わり者の代用教師ホリー先生として登場した GWYNETH PALTROWGOODIE MOB 〜 GNARLS BARKLEY CEE-LO GREEN「FORGET YOU(原曲は FUCK YOU って言うんだけどね)を歌う。カート THE BEATLES「I WANNA HOLD YOUR HAND」カバーはしっとりしたバラード仕立て。彼はドラマの中でも可憐な声で THE BEATLES「BLACKBIRD」を歌う。ホントにゲイかと思うほどの名演技だよ。
最後に向けて全員でなだれ込むのは、LADY GAGA「BORN THIS WAY」様々な多様性と自由を訴える GAGA の力強いメッセージは「GLEE」と同じモノ。ドラマと同じ演出でメンバー全員が自分の弱点をでかくプリントしたTシャツを誇らしげに着てこの歌を歌う。そしてオリジナル曲「LOSER LIKE ME」。そう、みんな負け犬なんだよ。いろいろなモノに負けてきたボクはここに居心地の良さを感じてる。誰か辛い思いをしている人がいれば、ここに集って楽になってほしい。締めは QUEEN「SOMEBODY TO LOVE」愛を捧げる人を探して欲しいと、最後に叫ぶ。

「GLEE」の熱狂的ファンを、ギーク(GEEK)にかけて「GLEEK」と呼ぶ。このコンサートムービーは、そのライブの合間に、「GLEEK」の様子や、ドラマに励まされた人々のコメントがたくさん挿入されてる。アスペルガー症候群を患いながらも「GLEE」をキッカケに仲間を見つけた女性。小人症でありながらチアリーダーのコアメンバーを堂々と担う少女。ゲイであることをカミングアウトした黒人少年。学園生活のマイノリティに優しい視線を投げ続ける姿勢が、ボクの好きな「GLEE」らしさ。ライブもさることながら、そのライブに熱狂するファンの姿も含めて、ドキュメントするのがこの映画。涙を流しながら、救われた思いの丈を語る様子に感動する。不格好でもイイって認められるコトで、人は勇気付けられる。

「GLEE THE 3D CONCERT MOVIE - MOTION PICTURE SOUND TRACK」

「GLEE THE 3D CONCERT MOVIE - MOTION PICTURE SOUND TRACK」2011年
DVDでライブを見てるのに、わざわざサントラまで買うのかよー、と思う方もいるでしょうが、買ってしまいましたバカだから。ライブとしての音に集中したい人はこちらでどうぞ。曲の順番が大胆にシャッフルされてたり、収録曲が微妙に違ってたりしてます。圧倒的な祝祭感を煽る FLORENCE + THE MACHINE「DOG DAYS ARE OVER」カバーが聴き逃せないっす。



●で、ここで話がガラリと変わるのですが。

この「GLEE」が、今年のメガヒットアニメ「アナと雪の女王」に、深い縁があります。


●当然我が家はめっちゃ楽しんだもんね、「アナ雪」

「アナと雪の女王 MovieNEX(ブルーレイ+DVD+デジタルコピー)」

「アナと雪の女王 MovieNEX(ブルーレイ+DVD+デジタルコピー)」
●まず、劇場で観ました。話題の「みんなで歌おう」上映会で観ました…歌ってたのはウチの娘ヒヨコだけだったけど。この段階でワイフとヒヨコは二回目でした。まー話題の物件だし一応チェックしとくか気分だったボクは、結果的にめっちゃ楽しんでしまって、「劇場じゃ日本語吹き替え版しか見なかったなー」とかいって、DVD+ブルーレイ+デジタルデバイスでも見られるサービス MOVIE NEX のセット版を買いました。どんだけお金ブチ込んでるんだ。

●このお話は、「こじらせ女子」「天然リア充女子」という分裂したパーソナリティの和合がテーマだと思った。
●雪の女王であるエルザ望まない魔力を持て余してヒキコモリになって、自分の本性を隠して隠して我慢して、とうとうブチ切れて「ありのままに」そのチカラをフルパワー全開にしたら、全世界を氷河期に突入させるほどの暴走ぶりこじらせ切ったネジレを一斉に解放させた瞬間のカタルシス。床をガチーンと踏みしめて広がる氷の結晶。「LET IT GO」熱唱で氷の宮殿を魔法で組み上げるあの一瞬だけで、ゴハン三杯いけると思う。不敵なドヤ顔で「少しも寒くないわ!」
●一方、妹のアナは、事情をすっかり知らない上に、無邪気な天然ぶりを振りまいて、周囲の男子をくるくる巻き取る「天然リア充」。悪気も全くないのに結果として男子二人を手玉にとるのがすごい。しかし「こじらせ」「天然リア充」もきっと全ての女性が一つの胸の中に宿しているコインの両面のような性質のもの。これを正反対の性格を持つ姉妹として描きつつ、最後はその姉妹が和解し合体するという物語が「アナ雪」の構造なのではないか?実はツマハジキにされてる男性としてはモノ足りない気持ちもあるんだけど、女性同士の結びつきを描くストーリーとしては、ディズニー作品として斬新。だからボクはハマった。面白いと思った。

「アナと雪の女王 オリジナルサウンドトラック デラックスエディション」

「アナと雪の女王 オリジナルサウンドトラック デラックスエディション」2014年
●ちなみに、この二枚組サントラをボクは映画を観終わった直後の劇場売店でソッコー買いました。二枚組ってのは、英語盤と日本語盤の二枚セットって意味です。吹替版の松たか子か、英語版の IDINA MENZEL か、迷いに迷って全部買っちゃった。

さて、「アナ雪」と「GLEE」の深い縁とは。
「GLEE」の主要キャストの一人、ライバル校のグリー部顧問であり、ヒロイン・レイチェルの生物学的母親(レイチェルの両親はゲイカップルのダブルパパ、なので、この女性が代理母を担ったのです)という複雑な関係であるシェルビーという女性。そして彼女は、パックとの間に出来てしまったクインの赤ちゃんを、里親として引き取る。そんな重要な役柄をシーズン1〜3で演じたのが、IDINA MENZEL。つまり、英語版のエルザの声を担った人物なのだ。あの「LET IT GO」を YOUTUBE で聴いてたら…この声の主演の人どっかで見たことあるなーと思い…調べてみたら、あらあら同一人物!実はこの人ブロードウェイの傑作ミュージカル「WICKED」のオリジナルキャストとして主演しトニー賞を受賞するほどの大ベテラン女優。すでに40歳代半ばという年齢で、お姫さまエルザを演じるってスゲえなと思いつつ、コレで一気にテンション上がった。様々なバージョンがあるなかで「LET IT GO」はやっぱり IDINA MENZEL 版が一番好き。

神田沙也加に感動したのです。
●ワリと予備知識なしで日本語吹き替え版を劇場で見てしまったので、エンドクレジット見たら、アナ神田沙也加!雪だるまのオラフはピエール瀧松たか子以外はその時初めて知ったのでびっくり!ピエール瀧はすげえなあ…電気グルーヴでもこんなに真面目に歌ったことないでしょうに。
でも一番の注目は、神田沙也加。巨大すぎる母親・松田聖子という存在を十字架のように背負って、でも同じ芸能界の中で努力を重ねて、ようやく掴んだメガヒット。彼女こそ他人には理解されない理解され得ないハンディキャップに苦しんできた当事者だろう。トーク番組「先輩 ROCKYOU」で証言していたけど、舞台をメインに活動する彼女はすべての仕事をオーディションでとってくるという。事務所パワーでねじ込んでもらうとか、ぼけーっとオファーを待つのではなく、進んでオーディションで審査を受け、役をもらってくる。芸能人の父母を持つプリンセスという環境が逆作用してハマリ込んだ難しさを、独特な成り立ちで自ら育てたハングリー精神で克服してきた。彼女にとっては「アナ雪」もそうしていただいた仕事だったし、これからもそうやって仕事をいただいていく、と謙虚に、でも生き生きと語っていた。歌ってること、ステージに立つこと、ただそれだけを純粋に嬉しく思っている、彼女のオーラ。感動。およよよ…いいお話だ。彼女が担う「雪だるまつくろう」や「生まれてはじめて」には、ミュージカル女優としての訓練で磨き上げられたテクニックがしっかり組み込まれている。実は松たか子さんよりすごいかも。
松たか子も、CDをリリースした経験がある人物だし、その縁でジェイポップを支える大御所ギタリスト・佐橋佳幸と結婚したってわけで。実は彼女の方が MAY J. よりも声のキーが高い。少々の憂いと硬質な張りが声にみなぎっており、ぴりりとした緊張感とカタルシスを呼び込む爆発力を楽曲にもたせている。という意味で MAY J. バージョンに対して松たか子バージョンにボクは軍配を上げる。MAY J. も悪くはないのだけれども、少々甘口…まーそういうアレンジでトラックが作られているのだから仕方がない。英語版エンドテーマを担った DEMI LOVATO というシンガーは全然情報を持たないが、一番平凡だなあ。この二枚組には「LET IT GO(マルチ・ランゲージ・メドレー)」というトラックもある。20ヵ国以上の言語で歌ったパーツをつなぎ合わせて一曲にしてる。これも一興。



●翌朝の25日、ヒヨコの枕元に届いたものは…。

シュライヒ詰め合わせ

ドイツのメーカー・シュライヒ(SCHLEICH)の動物フィギュア詰め合わせ。
●ヒヨコが受験勉強ポイントシール5枚を集めると一体買ってもらえてた動物フィギュアを、このタイミングでどっさりサンタさんから入荷。これでポイントもう集めないーなんて言い出したら大変だ…。
●長男ノマドの枕元には、赤いヘッドホン。これで心おきなくボカロを聴くのだろう。




●動画も「続き」に貼っときました。
... 続きを読む


●全然脈絡ないけど、新橋駅前SL広場の目の前にある「椿屋珈琲店 新橋茶房」という実に昭和チックな喫茶店に入ったら、ウエイトレスさんの制服が、完璧なメイド服でビックリした。おそらく世間とは無関係に昭和から継承してるであろう制服なのだが、アキバ系よりもずっと正統王道のメイドスタイル。めちゃかわいくてドキドキした。コーヒーはレギュラーで930円と新橋にしてはいきなりハイコストで、そこもびっくりした。


娘ヒヨコ小学6年生の成績が暴落。
●前々回模試で偏差値40台まで下落していたトコロを、アレコレ手を入れて前回模試で偏差値60台まで持ち上げてホッとしていたのもつかの間。やっぱり付け焼き刃じゃしょうがないのか、なんと偏差値30台まで大暴落。取ろうと思っても偏差値30台ってなかなか取れないよ…。塾の先生も「乱高下が激しすぎます」と心配顔。本人は…「ちょいとヘコむー」と危機感があるんだかないんだか。結果最近は、ボク自身が作文の添削まで始めることになった。マジ大変。

そこで、神頼みまで始めることに。
●上野公園に「おたぬきさま」がいるという。お稲荷さんじゃなくてタヌキ。

上野東照宮地図

●場所は、上野公園の動物園のワキの方にある、上野東照宮の中。

上野東照宮

上野東照宮ってなんですか。
●上野公園にある寛永寺は、江戸時代において徳川将軍家の菩提寺として、芝・増上寺と共に歴代将軍の墓所を一代交代の順番で担っていたお寺。この寛永寺の上野の山に大きな伽藍の一部をなしていたのが、この上野東照宮寛永寺は、江戸幕府最初期のブレーン・天海上人が家康に働きかけて作ったもので、そのパーツを一部となるこの上野東照宮は、戦国期に足軽から身を起こして秀吉〜家康に仕えた藤堂高虎という人物によって建てられた神社。日光東照宮と同じで、徳川家康を祀っている。おまけに八代将軍・吉宗、十五代将軍・慶喜も祀っている。
●比較的ハジっこの目立たないトコロにあるので、存在は知りつつボクも初めて見た…ら、すげーゴールドなウルトラバロック建築でビビる。三代将軍・家光がわざわざ改築してこのヤリ過ぎなキンピカスタイルに仕上げたという。藤堂高虎日光東照宮の造営にも関わっているので、きっとこの上野東照宮も現場のスタッフがカブっているのかも。カラフルな装飾彫刻の中には様々な動植物が彫り込まれてて、いやいや見事なもんだ。参拝客は日本人より外国人が多い…ガイドブックにしっかり紹介されてるのかな?みんな手元に本を持ってやってくる。

おたぬきさま

で、その敷地の隅っこに、ちんまりとしたお社がある。これが「おたぬきさま」
●拝観料500円を払うと、この東照宮本殿をさらに間近に見られるのだけど、その有料内側エリアの中、神木大楠の隣にあるのがこのお社。正式な名前は「栄誉権現」とされてる…「四国八百八狸の総帥。奉献された大奥で暴れ追放後、大名、旗本諸家を潰し、大正年間本宮に奉献された悪業狸。他を抜く(たぬき)強運開祖として信仰が厚い。縁起日は五の日」。うーむ、意味が微妙にわからない。悪い妖怪タヌキじゃないか/
●むしろ英語解説の方がわかりやすいか。「O-TANUKI-SAMA (RACOON DOG) 以下ボクの訳:江戸時代にわたってコレは災厄を招く"タヌキ"の霊として信じられていた。しかし大正時代以降は"タヌキ"は凶事を予防するものになった。災厄を減ずる"タヌキ"の名前を日本人は変えて、敬意をこめて"おたぬきさま”と呼ぶようになる。とくに、試験での成功や勝ち誇るべき人生を体現する神格と信じられている」へー。

たぬき絵馬

●絵馬も買って奉納しました。かわいいタヌキ絵馬。これで他の受験者を出し抜くのじゃヒヨコ。
絵馬に関しては、外国のお客が書いたものがすごく多くてびっくり。英語はもちろん、中国語からタイ語、ロシア語、スペイン語、アルファベットを使ってるけど綴りが不思議でどこの言葉だかさっぱり分からないモノなどなど、すげーインターナショナル!これはおたぬきさま自身もびっくりしてると思う。いかに強運開祖でもこんなにグローバルなオーダーはサバけない気がする。


進撃の巨人展

●一方で興味深い催しが。「進撃の巨人展」@上野の森美術館
●全日予約制で当日券も売り切れとった…それでもすごい行列。残念ながらこの大きなポスターを眺めておしまい。今年注目のデバイス・オキュラスリフト「立体機動装置」360°映像体験が出来るってのも目玉らしいけど、それだけで75分の行列が出来てた。むむむ。ジョジョ展といいワンピース展といい、人気マンガの展覧会は最近弾けすぎじゃなかろうか。

諌山創「進撃の巨人」15巻 「ブルータス」2014:12:1 特集「進撃の巨人」

諌山創「進撃の巨人」15巻
「ブルータス」2014/12/1号 特集「進撃の巨人」
●マンガの進展では、巨人の襲撃から身を守るために人類社会が「壁」の中に身を隠した100年余&それ以前の歴史が、為政者たちによる様々な欺瞞によって改竄されているらしいこと、そしてそれは人間を捕食する謎の巨人たちの存在にも関わっているらしいこと、という状況までが突き止められた。大土地所有者である貴族階級とそれに担がれる王家による非民主的な寡頭制政権は、主人公たちが加わる軍隊・調査兵団のクーデターにより打倒され、この奇妙な世界の全貌が徐々に明らかになる気配。

●壁という防衛線が巨人の攻撃により突破されるごとに、活動領域を縮めざるを得ないこの作品世界の人類の様子は、ある意味で人口減少局面の日本を象徴しているかのように思えてきた。巨人の侵略&殺戮のような目に見えた惨事はなくとも、この現代日本は人口減少でその活動領域を急速に狭めている。豊かな国土を維持できないで放棄する局面が、離島部で、山間部の集落で、すでに実際に始まっている。人口減少という見えない壁に、日本社会は取り巻かれ、徐々に活動領域を狭められているのだ。ある朝、辛坊治郎さんの番組を見てたら、五島列島の一部にある人口2人の島が紹介されていた…高齢化が進み島民が離れ、とうとう90歳代と70歳代の母娘しか住民がいなくなってしまったのだ。この島と比較的人口のまとまった島を結ぶ定期フェリー便に大きなコストがかかる。迷惑をかけたくないと2人は島を離れる決意をしている…そんなレポート。
●限界集落を維持するための社会的インフラを維持するコストが地方財政を圧迫し、むしろ経済的効率化のためには僻地の集落を放棄して地方の中核都市郊外まで出てきてほしいという本音(選挙では絶対言えないけどね)も見えてくる。以前紹介した書籍「地方消滅」は、これを人口減少時代の「撤退戦」と呼んだ。東京一極集中にも当然救いはない。いまさらの道州制的地方分権にも救いはない。しかし農業/林業/漁業生産力に富む地方経済が機能停止し、高齢化による医療/介護施設需要が分散して社会的負担になるのはすでに目の前の現実。そんな事態が致命的になる前に、真実に目を向け防波堤を築く必要がある。市町村の枠を超えて地方社会のインフラ分業と効率化をその状況にフィットさせる形でデザイン改造する必要がある。
そんな危機は、マンガに描かれる壁の中の人類に隠喩されてるモノかもしれない。活動領域を狭められた社会は、その限られた資源を奪い合うカオティックな緊張に取り囲まれている。富む者はその富を独占し、貧する者は困窮の底に叩き込まれる。それに無策な政治は、マンガの中においてはクーデターで打倒された。これが現実のモノとならないことを願う。




●で、前段の文脈とは関係なく、今日はヒップホップ。
しかも、テキサス州ヒューストンのヒップホップを聴いております。

サウス系ヒップホップと一口に言っても、広大なアメリカ南部にはたくさんの音楽拠点があります。ジョージア州アトランタ。ルイジアナ州ニューオリンズ。フロリダ州マイアミ。そんでテキサス州ヒューストン。それぞれの街にはそれぞれの個性あるシーンがあって、それぞれの音楽が鳴っております。
●ただ、ヒューストンのローカルシーンって、ボクにとっては最奥部というか、一番遠くにある世界。アトランタはド王道、マイアミでも日本盤が流通する中、ヒューストンのローカル音源はメジャー流通してないし、日本じゃよっぽど意識しておかないと入手できない。そんな奇妙な好奇心から、わざわざアメリカAmazonのマーケットプレイスから取り寄せた音源が実は手元に何枚かあって。それを引っ張り出して聴くのであります。


LIL KEKE「BIRDS FLY SOUTH」

LIL KEKE「BIRDS FLY SOUTH」2002年
●実は購入してから数年放ったらかしてた…。それこそインディ音源でクレジット情報も足りなくて、トラックメイカーも全然知らん人ばかり(SOLOMR.MISTERSINCLAIRBEEZIE2000?)。ただ、この人 LIL KEKE男気プンプンのマイクフロウが実にソウルフルかつ力強くて気に入った。以前アトランタのラッパー T.I. を紹介した時にも注目した「トラップ・ミュージック」のポイント、偶数拍にスネア/ハンドクラップに「ペチッ」とした音を鳴らすマナーは、サザンヒップホップの特徴として引き継がれながらもあくまでアクセント程度の存在。ややテンポを落としたゆるくルードな倦怠感、セクシーで野太くウネる手引きのベースラインが、緊張感あるスキルフルなラップフロウとキャッチーなフックラインと相まってワイルドなファンクネスを醸して実に渋く決まっている。ヒューストン発のスタイル、スクリュー(音源の回転数をさらにテンポダウンしてディープなドープネスを獲得する手法)もボーナストラック的に収録されてる。これまたやっぱりファンキーで渋い。
●この一枚で、ヒューストンのヒップホップって改めてスゲえんじゃね?という気分になった。以前、この地域の90年代からの大物デュオ UGK を紹介した時も感じたが、独自のファンクマナーがこの街にはある。そこでこの街のラッパーたちの音楽をもっと掘り下げる。

LIL KEKE「LOVE BY FEW HATE BY MANY」

LIL KEKE「LOVE BY FEW, HATE BY MANY」2008年
●1997年に初めてのアルバムをリリースしてから12枚目のアルバムにして、初めてのメジャー流通盤(UNIVERSAL MOTOWN)。ソウルフルなマイクフロウとキャッチーなフックラインが体を揺さぶる LIL KEKE の個性は全くブレないし、独特なファンクネスも変わらない。メインのトラックメイカーは MR.LEE という人物 … ヒューストンの顔役とも言える存在のようで、打ち込み主体のバウンシー/トラップなトラックはサザンマナーの王道。結果的にルードでルーズなコッテリ感がグルーヴに沈殿し、奇妙なレイドバック感覚がクセになる。

DEVIN THE DUDE「JUST TRYIN TA LIVE」

DEVIN THE DUDE「JUST TRYIN' TA LIVE」2002年
LIL KEKE とほぼ同時代を活動しているヒューストンのラッパー。少々鼻歌っぽく節をつけてつぶやくようにラップするメロウなフロウとスムースなフックが特徴的で、それが却ってレイドバックなマリファナ酩酊感につながるコクまろなアプローチが批評家の中でも評判らしい。やや高い声で、ガナらない所がややナードラップっぽくもある。が、その微妙な按配の地味さ加減が商業的成功にはさっぱり結びつかないとか。質感だけではサザンヒップホップのバウンシーなマナーとは関係が薄い印象、むしろ西海岸のGファンク的なダークなファンクの香りさえ漂わせる。これがさらに地味な渋みを演出する。これは彼のセカンドアルバム。
●トラックメイカーのクレジットを見ても、さすがにボクにはさっぱりなのだが、MIKE DEAN、DOMO、という人物がメインで手がけている(ああ、いまWIKI見たら MIKE DEAN は最近の KANYE WEST のツアーミュージシャンを担ってるわ)。一部で DR.DRE、DJ PREMIER、RAPHAEL SAADIQ もトラック提供。ODD SQUAD という連中がフィーチャーされているが、元来は DEVIN 自身が所属するラップデュオで、ここでの相棒は BLIND ROB QUEST という男。名の通り盲目のラッパーで、トラックメイカーとしてもクレジットされている。
●レーベルは RAP-A-LOT RECORDSJ PRINCE という男が80年代にヒューストンで立ち上げた老舗で、サザンヒップホップの先駆、SCARFACE 率いる GETO BOYS もここから活動を始めた。ラップデュオ UGK のメンバー BUN B PIMP C もソロはここからリリースしている。前述トラックメイカー MR.LEE もこのレーベルの関係者らしい。流通としてはメジャーと連携し大きな存在感を示している。

DEVIN THE DUDE「WAITIN TO INHALE」

DEVIN THE DUDE「WAITIN' TO INHALE」2007年
●相変わらずサザンマナーにはとらわれないスタイルで、囁くような語り口で独特のラップを聴かせる4枚目のアルバム。鼻歌フロウの気分も高まってナードラップの気配が濃密に。打ち込みの度合いは高まったが、バウンシーな感覚とは無縁の東海岸的流儀のメロウネスが聴くものをチルアウトさせる。この雰囲気には客演の SNOOP DOGG ANDRE 3000 もシックリしている。ああ後半にかけては完全にサウスものと無縁の R&B アプローチまで登場してきた。スウィートすぎるほどだ。THE O'JAYS THE OHIO PLAYERS をサンプルしてるくらいだからね。フロア向けじゃなくて、夜しっとりと聴きたい音楽だ。
●90年代末から長く RAP-A-LOT RECORDS の看板を担ってきた彼だが、このアルバムの翌年に移籍。ニューヨークのレーベルと契約する。

Z-RO「CRACK」

Z-RO「CRACK」2008年
RAP-A-LOT に今も所属するラッパー。LIL KEKE DEVIN THE DUDE とやはり同世代。RAP-A-LOT と早くから契約し数々のアルバムを出してきたが、このキナ臭いタイトルのアルバム「CRACK」の後には、「COCAINE」「HEROIN」「METH」「ANGEL DUST」アルバムタイトルにドラッグの名前を羅列していく悪趣味野郎。と思って、どんな奴だろうと思ってアマゾンで入手。実際バリバリのゲットー育ち、ストリートの売人上がりという経歴があるというので、もっとドロドロしてた内容をイメージしてたが、ワリと軽いトラックに朴訥としたフロウを淡々と並べるシンプルなスタイルにやや拍子抜け。しかしこの朴訥フロウとテンポが遅いトラックは、結果としてレイドバックした薄暗い倦怠感を醸していて、気分のよいモノには仕上がっていない。その苦さをそのまま興味深いと思って聴く。ドラッグと相性がいいという、本作のチョップド&スクリュード&・バージョンアルバムは別にキチンとリリースされたとな。ミックステープものが追いきれないように、ボクはチョップド&スクリュード・アルバムも追いかけてない…え?追いかけたほうがいい?
ヒューストンの代表的ヒップホップクルー SCREWED UP CLICK には、スクリューの創始者 DJ SCREW から LIL KEKE、そしてこの Z-RO、後述する YUNGSTAR LIL FLIP も所属している。スクリューというスタイルと、ヒューストン人脈は絡み合ってシーン一体を形成している。一方で、創始者の DJ SCREW はドラッグ禍で2000年に死去。スクリューはシロップと呼ばれるドラッグをキメて聴くのがお行儀のようだが、やっぱり当たり前のように健康に悪い。

YUNGSTAR「THROWED YUNG PLAYA」

YUNGSTAR「THROWED YUNG PLAYA」1999年
●彼、YUNGSTAR が90年代前半に SCREWED UP CLICK へ加入してラップを始めたのはなんと10歳の頃らしい。なるほどヤングスターだわ。そんな早熟な彼の、しかも1999年と今日の音源の中でも特に古い音源とあって、バウンスマナーもまだカッチリと取り込まれていない。同時期のウェッサイなGファンクマナーの方が親近感があるかもしれない。TONY TONI TONE「IT NEVER RAIN IN SOUTH CALIFORNIA」ネタなどを用いて歌い上げる「GRIPPIN GRAIN」は染みるね。DESTINY'S CHILD「BILLS BILLS BILLS」もネタにして弾き直してる。青さの残る声で器用なラップを披露するがやや重さが足らぬか。しかし差し込まれる気持ちの良いシンガーのフックラインが楽しいし、クレジットに見えない仲間の客演もバラエティに富んで飽きさせない。最後は、17分間以上を仲間たちと次々にマイクリレーしていく「*JUNE 27」。多彩なスタイルのラップがブンブンと飛び交うスリルがいい。
●ジャケは、当時一世風靡していたデザインチーム PEN & PIXEL GRAPHIC が担当。CASH MONEY NO LIMIT などサウス系新興レーベルのブリンブリンなジャケデザインは全部彼らが担っていた。ムダに豪奢でギラギラ光りものを配置するイメージは、個人的には最初ついていけなかったねえー。ココではなぜかママにシリアルをご馳走してもらってるけど、よく見るとシリアルじゃなくて全部ダイアモンドじゃないか。豪邸の前でメシ食うのも意味不明だが、その豪邸の左右には観覧車とジェットコースターが。どこまでマジでどこまでふざけてるのか見当がつかない。
●その後このアルバムは収録曲を増やしジャケも変えて 2CD で再発されてるらしい。今から買うならソッチがオススメでしょう。

LIL FLIP MR CAPONE-E「STILL CONNESTED PART 3」

LIL FLIP & MR CAPONE-E「STILL CONNESTED PART 3」2008年
●たしか、秋葉原タワーレコードの激安ワゴンにて100円で発見した一枚。LIL FLIP は強面のクセしてなぜか四つ葉のクローバーをシンボルにしちゃう奇妙な趣味のラッパーで、何枚か聴いてきたけど全然好きになれなかったのが本音。しかしそんな彼が、ロサンゼルス・チカーノラップの大物 MR CAPONE-E と共作ってのはナカナカに興味深い。しかも「PART 3」というからには3回目?ロスのチカーノラップも日本じゃ思うように入手できないから嬉しい買い物だ。LIL FLIP SCREWED UP CLICK の一員ってのはすでに触れたね。
MR CAPONE-E LIL FLIP のどちらに主導権があるのか?気分としては西海岸マナーのGファンク〜チカーノファンクの気配が美味。うねるベースと甘いキーボードのライン、程よい気だるさ、歯切れのイイラップがウエッサイのドライブミュージックとして高機能。本当はチカーノラップはもっと掘り込みたい領域。2007年に急逝した UGK の片割れ PIMP C へ捧げられた曲「WE MISS YOU」がトークボックス使いで実にセンチメンタル。ヒューストンマナーの打ち込み色強目のバウンスビートは LIL FLIP の芸風だが、トラックがややスクエアすぎるかも。

CHAMILLIONAIRE「ULTIMATE VICTORY」

CHAMILLIONAIRE「ULTIMATE VICTORY」2007年
●この人もヒューストン出身のラッパー。カメレオンとミリオネアという単語を合体させてカミリオネアと読む。とメモっとかないと、いつも名前を噛んでしまう。キャリアの初期は後述するラッパー PAUL WALL とコラボを重ねていて連名アルバムもリリースしている(PAUL WALL と共に THE COLOR CHANGIN' CLICK というグループも結成…この辺で体の色を変えるカメレオンのイメージが出てくるみたい)。地元レーベルの SWISHAHOUSE に残ることを決めた PAUL WALL と違って、首都直結のメジャー契約を求めた彼は UNIVERSAL MOTOWN から2005年にデビュー。ここで見事にブレイクしてのセカンドが本作。
しかしメジャー仕様とあってスケールがデカイトラックが目立つ。ヒューストンマナーとは関係ないかのような、地域性を超えた内容という印象。シングル「HIP HOP POLICE」で下敷きにされてるのはロスの Gファンクだし、バウンス系のトラックもヒューストンマナーを超えた派手さがアトランタやニューヨークっぽくもある。「INDUSTRY GROUPIE」ではなんとハードロックバンド EUROPE「FINAL COUNTDOWN」のあのシンセフレーズをまるっと大ネタ使い。LIL WAYNE 召喚の「ROCK STAR」はエレキギター使いのド派手なアトランタ・クランク風。ゲストも豪華。UGK BUN B & PIMP C 両雄が別個に参加。そして DEVIN THE DUDE という地元組から外様メジャープレイヤー、KRAYZIE BONE、SLICK RICK、K−CI みたいな連中まで召喚している。

PAUL WALL「FAST LIFE」

PAUL WALL「FAST LIFE」2009年
●前述の CHAMELLINAIRE と盟友関係にあった PAUL WALL は珍しいことに白人ラッパー。とはいえタトゥーだらけの巨漢ぶりに、歯が全部ギラギラプラチナ仕様のブリンブリンで貫禄は間違いなし。彼は地元レーベルの SWISHAHOUSE と長く付き合う。このレーベルこそ、DJ SCREW が創始したチョップド&スクリュードを商業的に発展させた拠点。共同経営者の MICHAEL '5000' WATTS はプロデューサーとして活発にチョップド&スクリュードの音源を活発にリリースし、ヒューストンの重要な個性に育てる。現在は LIL KEKE もこのレーベル所属。1997年創始とはいえ、もはや名門。なんとなく日本語の「水車小屋」を連想させる名前は…よく由来がわかりません。
●で、この SWISHAHOUSE も流通契約ではメジャーとつながってまして。2005年のアルバム「THE PEOPLE CHAMP」で全国区ブレイクを果たしてから、この PAUL WALL もキャリアをメキメキと伸長。本作では地元から南部全域から全国区からゲストを召喚。地元ヒューストンから Z-RO、LIL KEKE、チカーノ系ラッパー BABY BASH、アトランタから GORILLA ZOE、YUNG JOC、ルイジアナから WEBBIE、西海岸から TOO SHORT などなど。トラックメイカーは相変わらずボクの不明でよくわかんないんだけど、チカーノ系だったはずの HAPPY PEREZ と地元系の XFYLE という人物は他の音源でも見たことがある。
●そんな布陣で鳴らすのは、打ち込みでガチッと組み込まれたスクエアなシンセグルーヴ。その無機質なカッチリ感の中を、ドロドロとした個性のラッパーたちがベロベロと泥を塗るように有機物へと変換していく様子が、いかにもサウスバウンスな典型的な構造。



●衆議院選挙。自民党圧勝。それでいいのかな。
●計画どおり物価が上がってデフレからインフレにシフトチェンジした。
●財布の出費は増えてるが、ボクの給料は全然増えてないのでね。暮らし向きはよくならないよ。



アイドル meets ヘヴィメタル。
●アイドルグループ群雄割拠の中で、注目すべきプレイヤーはいっぱいあるけど、今年のブレイクスルーは、この3人の少女たち、BABYMETAL だろう。

BABYMETAL「BABYMETAL」

BABYMETAL「BABYMETAL(初回限定版)」2014年
●エッジーなエレクトロサウンド(中田ヤスタカ)と最先端テクノロジーのステージ演出(ライゾマティクス真鍋大度)で、世界進出を着実にすすめる PERFUME を擁する大手芸能事務所 AMUSE が次のブレイクスルーを目指して育成している三人組アイドル。それが BABYMETAL。なんとコンセプトは可愛い女の子3人がヘヴィメタルで歌い踊るというもの。察知した去年くらいには完全にキワモノだと思ってました。それがマジマジで侮れない存在になってきた。マジマジのヘヴィメタルフリークが彼女たちを面白がってきて、それが海外にまで波及しているからだ。
●彼女たちの FACEBOOK ページは完全英語で、しかも熱心な海外ファンのコメントに溢れてる。しかも海外メタルフェスにマジマジでドシドシ出演してる。その活躍レポートがボクのソーシャルタイムラインにもドクドク流れ込んできてる。ヤバイ。ここまでくると本物だわ。ということで、早速チェックしてみた。のが数ヶ月前。

●で、音源を聴いてみると、マジマジでマッシブな高速メタルサウンドで完全武装なわけですよ。ツインバスドラでドコドコ驀進するビートがギターとベースでザクザク16分音符で微塵切り。重厚なリフロックが荒れ狂う金属暴風雨で吹き飛ばされそうになる。なのに、そのど真ん中にいるのが、ロリータボーカルの女の子。呆れるほどにブリブリアイドルソングなリリック。この壮絶な違和感。だって曲タイトルが「ド・キ・ド・キ☆モーニング」とか「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」とか「おねだり大作戦」とかだよ。
●ただ、アイドル+ヘヴィメタルという水と油な壮絶違和感も、言わば出オチ、あくまでコンセプト一発勝負。何回も鑑賞に堪えるものではないじゃないですか。だから短命のキワモノだと思った。がしかし、周辺の評価はむりろ徐々に沸騰してる。なんでやねん。

●で、このデビューアルバムの初回限定版を、同僚に借りてチェックしなおしたのです。実は初回盤にはDVDがついてて、SUMMER SONIC 2013 のライブ映像が収録されている。やっぱ、これは映像で、しかもライブパフォーマンスで評価しなくては意味がわからないのではないかと思ったのだ。
●これで理解できた!マジマジでマジマジだ。彼女たちはハイプじゃない!神バンドなる、実力派ミュージシャンを組織したバックバンドを従えてド迫力の演奏を背負いつつも、ローティーンの少女たちは緻密な振付をパッキリと決めている。ゴステイストの衣装の悪趣味を乗り越えて的確にキュートな立ち振る舞う様子、メタルというギミックを乗り越えて高性能かつ王道のアイドルパフォーマンスを繰り広げる様子。メインボーカルの SU-METAL 以外の二人、YUIMETAL & MOAMETAL は、CD音源だけでは役割がほとんどわからない。だが、ステージパフォーマンスでこの二人は双子のように瓜二つのツインテール風貌で、シンメトリックなダンス(&スクリーム)を爆音に負けず披露していて、マジ健気。ああ、ちゃんとアイドル要素が担保されている。そこでボクはやっと腑に落ちた。PERFUME がエレクトロ&テクノロジーというギミックを乗り越えて、実に緻密な高性能アイドルであるように、BABYMETAL実直な研鑽訓練を積み重ねた高性能アイドルだったのだ。彼女たちはアイドルグループさくら学院のメンバーたちの別動部隊という出自があって、PERFUME の振付/ステージ演出を長く務める MIKIKO 先生(真鍋大度氏夫人/ここでは MIKIKOMETAL)に振付をつけてもらっている。マジマジでマジマジだ。
●その上で、メタルに寄り添ったタフ・チューン「メギツネ」「ヘドバンギャー」、そしてメッセージアンセム「イジメ、ダメ、ゼッタイ」といった冗談かマジか見分けがつかない物件が、回り回って結局マジってことに納得出来る。ローティーンであった彼女たちは自分たちでメタルを選択したわけではないはずだ…それはまず間違いなくマネジメント発の押し付けだろう。ただ、その与えられた環境に対して彼女たちは真剣に最適化して結果輝きを手にしている。シノゴノ言わずに黙ってヘドバン!メタルの轟音は彼女たちのステージにかける純粋さを妨げない。むしろ自分たちの居場所に対する彼女たちの覚悟を象徴して、美しさすら感じる。

BABYMETAL「LIVE LEGEND 1999 1997 APOCALYPSE」

BABYMETAL「LIVE LEGEND 1999 1997 APOCALYPSE」2013年
●つーことで、引き続き同じ同僚から、ライブDVDまで借りてしまった。「1999」年は年少メンバー YUIMETAL & MOAMETAL の誕生した年。DISC1 は「LEGEND "1999" YUIMETAL & MOAMETAL 聖誕祭 @NHKホール」2013年6月。聖誕祭ってのはお誕生日記念ライブの意味ね。1999年誕生という因果を、日本メタル史で無視できないバンド・聖飢魔IIに引っ掛けた演出が憎い。そんで自己紹介チューン「BABYMETAL DEATH」でデスデス連呼。ルードなヒップホップミクスチャー要素を含む「いいね!」でお立ち台に立ちコール&レスポンスを煽るのも良い…なにぶんちびっ子なのでお立ち台が必要ってのがカワイイ。アルバム未収録曲「君とアニメが見たい」の不毛なリリックを激マジで歌う勇姿に震える。プッチモニ「ちょこっとLOVE」&モーニング娘。「LOVEマシーン」のメタルカバーを、YUIMETAL & MOAMETAL それぞれがメインをとってパフォーマンス。実はこの2曲1999年リリースなのだ!わおマジかよ!あの頃のゴマキの若さ(13歳)にも驚異したけど、その年に生まれた子がこんな大観衆の前で戦ってるのね。つかボクの長男2001年生まれだし、もう完全にボクの子供といってもイイわけよこの子達。で、実際その健気さにガンバレーってパパ目線になっちゃうのですよ。
●後半戦に入って、バックバンドが当て振りバンドから、白塗り白装束の神バンドに転換。スキンヘッドの6弦ベースさんが気になるんだよなー。重厚なヘヴィネスでブーストした中でプレイされる「メギツネ」がクール。BABYMETAL が度々用いるキツネというモチーフが、この曲で和製メタルの個性として炸裂してる。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」も実はキツネモチーフの楽曲。アンコールを経て SU-METAL がソロパフォーマンスで「紅月ーアカツキー」を熱唱…口パクじゃないのね。ラストトラックは「ヘドバンギャー」。ポニーテール&ツインテールがブンブン振り回される。汗だく。

●DISC2は「LEGEND "1997" SU-METAL 聖誕祭 @幕張メッセイベントホール」2013年12月。コレもお誕生日記念ね。荘厳なアヴェマリアをBGMに、巨大マリア像の前にうやうやしく献上したモノが、純白の首ギプス。どんだけヘドバンしても首痛めない配慮?それを装着した SU-METAL「ヘドバンギャー」EDM風ミックスでビリビリに攻めてスタート!つか続く「いいね!」も含めて SKRILLEX 風のスタジアム系ダブステップのアレンジも忍び込ませてあるのね。神バンドの支援なくとも、作り込まれたEDM要素を楽しめばいいのね。
●加えて、本人MCゼロの代わりにユルい一枚絵とユルいナレーションのストーリーテリングが、ユルいなりに作り込まれててクスリと笑えるフリになっててステージ進行をうまく繋げてくれてる。キャラ化された三人の女の子はカワイイ。実物は真剣勝負すぎるのでいいバランス。あと、ステージ中央に据えたアオリ目のカメラにパリッと収まるサイズで、3人がキレのいいダンスを切り取る画撮りがとにかくクール。PERFUME もそうだけど、三位一体の呼吸のあったダンスがアイドルとしての真骨頂だからね。
●そんでお誕生日 SU-METAL メタルカバー選曲は高橋洋子「魂のルフラン」!これもSU-METAL が生まれた年、1997年の楽曲。「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生」主題歌。ふう、隔世の観。でもアニメ古典の「エヴァ」が今だ伝説を継続進行中で古びてないコトを考えると、それ自体もすげえ。「ルフラン」は今の若い子でも普通にアニソンカラオケするもんね。
●そこから後半は定番チューンのコンボ攻撃。「メギツネ」「イジメ」。アンコールを経てバックを神バンドに換装、クリスマスなので「おねだり大作戦」でサンタコス。パパにお願いオネダリする曲は、ある意味大正解…ボク、息子にはキツく当たるのに娘にメロメロに甘いもんね。かくれんぼをモチーフにした「CATCH ME IF YOU CAN」のメジャーコードに鮮やかに乗り替わるサビ展開を高機能ポップスとして堪能、そしてもう一回王道メタルで「ヘドバンギャー!」、ピアノバラードアレンジでの「紅月ーアカツキー」。そして最後に「BABYMETAL DEATH」。ここで SU-METAL は十字架に磔にされ、セットの巨大マリア像は爆破されてしまう…なんだかもう訳わかんないけど面白くてしょうがないね!

●パフォーマンス終了後に、次回公演への因縁を残していく演出があって…それがプロレスのストーリーテリングみたい。ヘヴィメタルってプロレスと相性いいよね、つかファン層カブってるよね。アイドル〜ヘヴィメタ〜プロレスまでのハイブリット感覚って、日本独自の文脈からしか生まれ得ないクリエイティブって意味で、もっと評価されるべき。そしてその使命(彼ら曰く「メタルレジスタンス」)をこなしきる少女3人に敬意を。
●やべえな、これ1月のさいたまスーパーアリーナ公演行かないといけないかもなー。


●だから、今日はマジモンのヘヴィメタルを聴く。

SEPULTURA「ROOTS」

SEPULTURA「ROOTS」1996年
BABYMETAL の音楽から連想するホンモノのヘヴィメタル、はボクの中ではこのブラジルのバンドになる。ブラジリアンメタル。腹に響くベースとギターのシンプルかつダークなリフ、おどろおどろしいドラミング、そして渾身の絶叫。スラッシュメタルの速度とソリッドな鋼鉄感覚がゴリゴリで死にそう。禍々しさだけが先立って、ちょっと聴いただけでは、いったいどの辺がブラジル的なのかサッパリわからない。根源的なヘヴィメタルのイデアだけがとびっきりの純度でいきり立っているだけだ。しかし、何回か聴いているうちに、ここに特殊なグルーヴが渦巻いていることに気づく。
●一曲目から激しいテンションに気圧される。「ROOTS BLOODY ROOTS」根源、血塗られた根源。南米大陸の巨大なジャングルの中から、ヨーロッパ文明によって圧殺された先住民文化の呪いが立ちのぼってくる。ねばり付くスネアとキックの着実なドラムビートと正確なベースリフが暗黒のグルーヴの中で確実なファンクネスを噴射している。イタヅラに加速しなくても体が自然とユサユサと揺れる。暴力的騒音の向こう側に、カポエイラのようにしなやかなうねりが見える。基本的にボーカルの咆哮がデス声すぎて何歌ってるんだかよく分からないが、「RATAMAHATTA」ではフィーチャリング・ボーカリスト、CARLINHOS BROWN がポルトガル語のユニークな響きで不思議なオーラを出している。よーく聴くと各所に特殊なパーカッションが配置されてたりもする。これがサンバ由来なのかブラジル先住民由来なのか確信は全然持てないけれども、ナニモノかがしっかりとこのヘヴィメタルをグルーヴィーでユニークなものにしている。
「ITSARI」という曲では、露骨にブラジル・ルーツへのアプローチを展開。シャヴァンテ族(XAVANTE)の男性合唱&パーカッション(フィールドレコーディング?)とコラボ。自分たちの内部にあるブラジル的コンテクストとヘヴィメタルという世界水準フォーマットの有機的結合が、様々なレイヤーで仕掛けられて実に含蓄深い。現代日本のアイドルカルチャー/カワイイカルチャーとヘヴィメタルフォーマットの合体も同じ視座からのアプローチと考えれば、地球の裏表でありながら、BABYMETAL と SEPULTURA は近い場所に立っている。

SOULFLY「SOULFLY」

SOULFLY「SOULFLY」1998年
SEPULTURA の中心人物でボーカリスト MAX CAVALERA「ROOTS」発表後にバンドを脱退。彼の俺ユニットの性格が強い新しいバンド SOULFLY を結成する。SEPULTURA で実験した、アマゾンの内側に由来する特殊ファンクネスとグルーヴをさらに発展させていく野心が増幅。この手のヘヴィメタルをグルーヴメタルとも呼ぶらしい。
●アメリカ勢との共振も聴きどころ。ラップメタル LIMP BIZKIT のボーカル FRED DURST、DJ LETHAL が激突。DJ LETHAL「ROOTS」にも参加しており、その際は KORN のフロントマン JONATHAN DAVIS と変態ボーカリスト MIKE PATTON を召喚している。徹底的にヘヴィメタルだが、90年代以降のラウドロック/ラップメタルとも積極的に共振する。これが、ブラジル先住民のトライバル要素とアフリカ移民系パーカッション・グルーヴと絶妙にマリアージュ。結果的に、ニューメタル、とも呼ばれてるっぽい。

SOULFLY「PRIMITIVE」

SOULFLY「PRIMITIVE」2000年
●より原始の根源に深く潜り込むアプローチで、トライバル要素/グルーヴ要素が伸長。ヨーロッパ文明による「新大陸発見」に続いた蛮行を糾弾するメッセージも、より先鋭化しているらしい。楽曲「MULAMBO」(←ならず者の意)の中で、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラやメキシコ革命の英雄エミリアーノ・サパタ、ブラジルで100年間存在した逃亡奴隷自治州パルマーレスのリーダー・ズンビの名前を挙げている。不死鳥のジャケは、BOB MARLEY のアートワークを手がけた人物が制作。こうした文脈からレベルミュージックとして鋭さをより研ぎ澄ましているようだ。なんと一曲ではあの SEAN LENNON も参加。イノセントなコーラスを差し込んで鋼鉄音楽の中で絶妙なアクセントになっている。ヒップホップのミクスチャーにも挑戦する場面もある。
●メタル業界から豪華ゲストが集まってるみたいだけど、そっちはボクには理解できない… SLIPKNOTDEFTONESSLAYER。すごいっぽいけど、誰の絶叫かは区別がつかなくて。ボーナストラックには「SOULFLY」からのライブパフォーマンスも入ってて嬉しい。
●本来ヘヴィメタルは苦手なボクでも、このユニークネスにはもう耳が馴染んだ。通勤電車の中でも聴いてる。音漏れで怒られそうだけど。ちなみに、各所にでてくるべよんべよんべんべんという不思議な弦をはじくような音は、カポエイラで用いられるビリンバウという楽器らしい。カボエイラは格闘技とダンスが入り混じったようなモノだから多彩な楽器が用いられるが、SOULFLY の音楽にはこうしたものがたくさん投入されているようだ。他にもパーカッション楽器・アタバキ、サンバでも使われるパンデイロ、ギコギコと凸凹の楽器を擦るヘコヘコ(ギロと同じ音)などなどが聴こえてくる。


さて、今日は他のヘヴィメタル/ハードロックにも触れてみよう。

PANTERA「VULGAR DISPLAY OF POWER」

PANTERA「VULGAR DISPLAY OF POWER」1992年
●これはちょっとした誤解で買い物したもの。SEPULTRA で味をしめて、なんとなくバンドの名前が似てる語感のこのバンドもブラジル系だったりして、と思ったんだけど、別にそんなこたなかった。アメリカ・テキサス州出身のヘヴィメタル。ただ、PANTERA はラテン系言語(スペイン語/ポルトガル語含む)の「豹(つまりパンサー)」が語源みたいだからあながち語感が似通うのもしょーがない。
●実は活動した時代もややカブっている。活動開始は1981年とめっちゃ古いが、知名度を上げたのはフロントマン PHIL ANSELMO が1987年に加入し、作風がスラッシュメタルに転向してから。アメリカ風の伝統的なハードロックとは違う成り立ちのスラッシュメタルとは、ハードコアパンク由来のスピード感と虚飾を排してリフに特化した形態が特徴で、技巧を凝らしたギターソロやメイキャップなどの演出を剥ぎ取ったスタイル。ハードコアパンクと共振しながら1980年代に発達するが、第二世代にあたる SEPULTURA PANTERA がこれを更新して、ポストスラッシュ/グルーヴメタルというシーンを作っていく、らしい。
●この1992年作品は、それまでハイトーンボーカルだった歌唱法をハードコア風の絶叫系に転向したブレイク作。スラッシュ=THRASH は「鞭打つ」という意味、正確に鋭くギターを鞭打つリフは超高速のザクザクみじん切りで、その高速リフの音の粒立ちもきめ細やか。手数の多いドラムもその手数を正確に再現する収録で、結果的にこの音楽は細かい歯がキレイに研ぎ澄まされた回転ノコギリみたいな印象に聴こえる。ギュイーンと回転するビートに全てのモノが真っ二つに切断される。
●ジャケも悪趣味でいいね。「進撃の巨人」で繰り広げられる巨人同士の肉弾戦みたいだ。巨人エレンの拳がザコ巨人をぶん殴るみたいな。

MANAFEST「FIGHTER」

MANAFEST「FIGHTER」2012年
●時代はぐーっと下がって、一昨年の音源。オルタナティヴロックの90年代でヘヴィメタルも変質して、00年代に成熟完成したヒップホップとのミクスチャー音楽ラップメタルがもうごく普通になった10年代。コイツはカナダ出身である MANAFEST 一人のユニットで、その作風から「一人 LINKIN PARK」「カナダの EMINEM」って呼ばれてるそうですウィキによると。クリスチャン・ヒップホップというククリにも入っているみたい。ラウドでありながら、歌詞の中身は敬虔な宗教家であるみたい。ゴリゴリしたリフロックに、ラップ&スクリームで乗っかる感じは、元スケーターだけあってドライブ感がある。
●日本盤ボーナストラック「KIMI WA FIGHTER」は表題曲「FIGHTER」に日本語詞を加えたバージョン。サビの「I'M A FIGHTER」「きみはファイター」と置き換えて、2011年東日本大震災で痛んだ日本人にエールを送ってる。「オソレテモ フルエテモ タオレテモ ソレデモ WON'T BREAK YOU WON'T BREAK / タチアガレ YOU WILL RISE AGAIN YOU'RE A FIGHTER キミハファイター DON'T BE AFRAID TO STAND ミライヘ JAPAN」

LINKIN PARK「A THOUSAND SUNS」

LINKIN PARK「A THOUSAND SUNS」2010年
●2000年にシーンに登場して以来、ミクスチャーメタルの世界をクレバーに更新してきた頭脳派バンド。そのヒップホップとのハイブリット感覚は JAY-Z との合体共作アルバムなどなどで証明済み。しかしそのキャッチーなイメージはセカンド「METEORA」で一区切り。三作目「MINUTES TO MIDNIGHT」以降そしてこのアルバムは、ラップメタルの枠と関係ない境地を切り拓く姿勢で、作風が往時とガラリと変わっている。まー全盛期に比べると地味。ヘヴィメタル様式にとらわれない自由な感覚でエレクトロも導入されてる一方、ラップもシャウトもラウドギターすらも大きな要素ではなくなってしまった。とはいえセールスをシッカリ確保する王者の貫禄。こうして鮮やかにスタイルを更新していく様子はさすがの頭脳派。

STONE TEMPLE PILOTS WITH CHESTER BENNINGTON「HIGH RISE」

STONE TEMPLE PILOTS WITH CHESTER BENNINGTON「HIGH RISE」2013年
90年代オルタナティヴロックバンド STONE TEMPLE PILOTS に、LINKIN PARK のボーカリスト CHESTER BENNINGTON が加入!うわーグランジバンドとして知られた STONE TEMPLE PILOTS がこんなカタチで復活とは。このバンドはブレイクを果たした90年代からフロントマンの SCOTT WEILAND のドラッグ問題&他メンバーとの確執で機能不全を起こしていて、ずーっとくすぶっていた。そこに以前からバンドの大ファンだった LINKIN PARK のボーカルがナゼか突然加入。CHESTER BENNINGTON LINKIN PARK にとっても重要な存在、どのくらいのテンションでこの兼業を続けるのかよくワカランけど、本人は頑張るって言ってるみたい。
●しかし、いきなりトップスピードというわけにもいかず、この音源は5曲だけのミニアルバム。ワリとオーセンティックなハードロック。90年代でいうと PEARL JAM SOUNDGARDEN といったシアトル系の連中と印象がカブる。グランジ革命は、NIRVANA SONIC YOUTH が目立つようでいて、ハードロックルネサンスのニュアンスも内包してたのを連想する。さて、90年代の STONE TEMPLE PILOTS と比べて…と聞かれると、実は当時のこのバンドをマジメに聴いたことがないことに思い至る。今度ユニオンの激安コーナーに転がってないかなーなんてノリで過去音源をチェックしてみよう。

BURNING BRIDES「FALL OF THE PLASTIC EMPIRE」

BURNING BRIDES「LEAVE NO ASHES」

BURNING BRIDES「FALL OF THE PLASTIC EMPIRE」2003年
BURNING BRIDES「LEAVE NO ASHES」2004年
●このバンドは、90年代のオルタナティヴロック世代最末期と00年代初頭のガレージリバイバル世代の間をつなぐ過渡的なサウンドスタイルを持っている。オルタナ世代ほどのイビツさはナイが、イギリス勢主体で進行したガレージリバイバルのスタイルほど洗練されていないハードロック。一番近い感覚は THE WHITE STRIPES なのだが、アソコまでのホンモノ感までには到達してない…。コアメンバーが男女のカップルというところも THE WHITE STRIPES 風なんだけど、彼らほどまでルーツとしてのブルースロックやビンテージ・ガレージロックへの造詣の深さを感じさせない…もっと勢い任せのラフな作り込みで、そのワキの甘さがオルタナ風であり、アメリカンなハードロックとも言える。ハードなリフロックがメタル風でもある。一方で、単調なメロディがややヒネくれてサイケガレージっぽくなる瞬間があって微妙に面白い。

PUDDLE OF MUDD「LIFE ON DISPLAY」

PUDDLE OF MUDD「LIFE ON DISPLAY」2003年
●このバンドも90年代と00年代の橋渡しのような立ち位置で登場した。90年代ラウドロックのど真ん中でラップメタルをドメジャー世界に認めさせた LIMP BIZKIT のボーカル FRED DURST にフックアップされてデビューという経歴。しかしそのワリにはラップメタルみたいなギミックはまるで用いず、むしろオルタナ世代の収穫を捨てて古典回帰したハードロックという印象すら感じさせる内容。実際、この時代についてリアルタイムで感じてたコトは、保守主義的な音楽が増えたという印象。2001年の911テロで音楽が鳴り止んでしまった気分があの瞬間にはあった。能天気なポップパンクとおセンチなエモが溢れ、アイドルグループまでもが登場。ロックの分野で実験精神は後退した。その一方でヒップホップは激しく進化するんだけどね。このバンドは、ゴリッとした LIMP BIZKIT 譲りのメタリックなリフロックマナーは継承しつつ、決してスピードに逃げず、実直なテンポとメロディで勝負する王道のアメリカンロック。

SYSTEM OF DOWN「MEZMERIZE」

SYSTEM OF A DOWN「MEZMERIZE」2005年
●保守的な音楽が増えて行く中で、奇妙な存在感を放ちまくっていたメタルバンド。ロサンゼルスのアルメニア系コミュニティの中から登場という出自がもう不思議。アルメニアって?旧ソ連のカスビ海と黒海の間の、コーサカス三国の一つだよね。古代ローマ時代は、ペルシャ王国との緩衝地帯としてキリスト教文化圏の最東端を担ってたような。でも、中近東の文化を吸いまくってるのも事実…だって近所がイランやトルコだもんね。だから、あまりにもそのルーツがユニークな上に、その影響をキチンと音楽に表出しまくってるトコロでも異色を放ちまくってた。そんな彼らの奇妙さに雑誌「ニューズウィーク」すらが注目して記事にしてて(「これが21世紀のロックだ」的な記事見出しだった)、それをボクは読んでこのバンドの価値を認識したもんだ。
変拍子やテンポの緩急転換を駆使して繰り出す様々なバリエーションの激しいリフの上に、ボーカリスト SERJ TANKIANオペラのようなボーカルや中東音楽のような節回し、ギタリスト DARON MALAKIAN実に耳障りなスクリームが乗っかって、全く先の展開が読めないジェットコースターのようなロックをブチ鳴らす。正直、ルックスもややヘンテコなこの二人のフロントマン、見た目だけでプレッシャー。その上で、セレブ連中への辛辣な批判や反戦メッセージを打ち出してくる。このアルバムは4作目に当たるが、収録シングル「B.Y.O.B」でグラミー賞受賞。その他にも「CIGARO」「RADIO/VIDEO」「VIOLENT PORNOGRAPHY」などなどユニークな楽曲が満載。同じ年にリリースされた続編アルバム「HYPNOTIZE」よりもコッチの方がイカれてると思う。




●さて、動画はこちらから。
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●最近は、大物が亡くなる。
高倉健さん。菅原文太さん。二巨星堕つ。

高倉健さんは…小学生の時に見た「南極物語」か。ナニゲに今あのサントラ聴いてみたい。80年代シンセ観点で。アレって VANGELIS でしょ。

菅原文太さんは…大学生の時にビデオ屋に通って「仁義なき戦い」シリーズ1973年〜を全部観たっけ。一方で「仁義なき」の直前期に制作された「現代やくざ 人斬り与太」1972年の方がワイルドで衝撃的だったのを覚えてる。
●ボクの中での文太さんの最高傑作は、長谷川和彦監督「太陽を盗んだ男」だ。核爆弾を自力工作して政府を脅迫するテロリストを沢田研二が主演した怪作で、菅原文太さんはこの主人公を異常な執念で追い詰める警部を演じる。クライマックスで沢田研二に迫る文太さんは、拳銃で撃たれようとも何度も立ち上がる驚異の闘志を剥き出しに…というかもうゾンビみたいで薄気味悪いほどの迫力。
●彼が、3.11以降状況をきっかけに、映画界を離れて農業に携わっていった局面も、ソーシャル経由でリアルタイムに知り、考えさせられたっけ。あれだけのキャリアを、あの年齢で投げ打って、そして新しい挑戦に立ち向かう。なんという勇気だろう。
●娘ヒヨコは、テレビを見ながら「あ!この人、赤犬でしょ!顔が赤犬!」。マンガ「ワンピース」の登場人物に、文太さんそっくりのキャラクターが登場する。その名前が赤犬。昭和の名俳優をモデルにしたキャラが「ワンピース」にはいくつか登場する。松田優作青キジ田中邦衛黄猿。そして勝新太郎藤虎。ヒヨコ、よく反応したなー。

赤犬マグ

●これは大阪・USJで買ったワンピースマグ菅原文太さんをモデルにしたキャラ、赤犬。そして、青キジ、黄猿もプリントされてる。ボクのお気に入りで、これでミルクティーを飲むのが好き。実は、ボクはマグカップ集めも好きで、各地でキッチュなノベルティものとかをついつい買ってしまうのだ。


一方で、美術界の巨星も堕ちた。
●先月10月26日、赤瀬川原平センセイが亡くなった。77歳。
●ツイッターアカウントの様子から、随分前から体調を崩されているようだったが…。とても残念。読売アンデパンダン、ハイレッドセンター、千円札裁判、路上観察学会、超美術トマソン…。とかくシリアスになりがちな前衛美術をユーモアをもって表現し、視点の変化でナニゲナイ世界の風景をユニークで意味深い鑑賞対象に変換する鮮やかさ。ボクは彼を尊敬していた。
●だから、彼の著作を今読んでいる。

赤瀬川原平「ちょっと触っていいですか 中古カメラのススメ」

赤瀬川原平「ちょっと触っていいですか 中古カメラのススメ」
●大学時代にマニュアルの一眼レフカメラを少しだけいじってた覚えがあるが、もうてんでカメラ気分なんて忘れてしまったボクに、ここで紹介されてるハイパービンテージのカメラなんて全然理解できない。1930年代のカメラとかが出てくるのですよ。音楽で喩えれば戦前のジャズやブルースを75回転のSP盤レコードで聴くような感覚、古すぎて渋すぎてボクのような小僧には手に負えない世界。しかもドイツ製だったり日本製だったりソ連製だったり。名前が、キネ・エキザクタとか、プラウベルマキナⅡS とか、アグファ・スーパージレッテとか。もうスゲエ強そうなモビルスーツ/モビルアーマーみたいだよ。専門的なパーツの名前も全然理解できない。クイックリターンミラー、フィルムマスク、ギロチンシャッター、絞り羽根、軍艦部、ドレーカイル方式、よく意味のわからない言葉がいっぱい出てくる。正直苦痛なほど意味不明。
●ただし、赤瀬川センセイの、細かい観察と対象への愛情、細部への注意と制作者/メーカーへの敬意が、積み重なる意味不明の言葉の中からナゼか伝わってくる。実に丁寧なカメラ本体のスケッチにはじまり、パーツの触り心地から金属の質感、機構の緻密さやシャッターの音、などなどをじっくりと描き出す。そう、カメラに限らず、彼の仕事を最初から最後まで貫いていた縦軸は、「ちょっと触っていいですか」的な…大切な対象を謙虚かつ誠実に愛でる感覚なのだ。これに大きな敬意を感じる。

●ボクは、毎日のように音楽を聴いて、本やマンガを読んで、映像を見たりしていて、このブログにただひたすら感想を書き散らかしている。多分、ヨソさまには意味がわからないと思う。ときどき他人様が書いてる音楽関係のブログを読んだりするけど、アプローチが違いすぎて自分の奇形性に呆れることもある。でも、対象に対していつも誠実でありたい。ただそれだけを考えている。その時、赤瀬川センセイのように、ありたいと思うことがある。彼は、ボクにとって憧れの存在だったんですよ。

●職場の後輩の女の子。二眼レフのビンテージカメラで6×6の写真を撮ってるとな。いつも細身のパンツにブーツを合わせて履いている。ボクは今、自分の目の前の景色に価値を発見する神経を腐らせてしまってるよ。

赤瀬川原平さん死去(赤瀬川原平センセイ。2011年の写真)



●もう一つ、残念なニュース。

PEZ「I WANT YOU」

PE'Z「I WANT YOU」2010年
「侍ジャズバンド」PE'Z が来年いっぱいをもって解散することを発表、15年間の活動に終止符を打つ。
PE'Z は好きだった…ライブも何回か見に行ったし、その度、彼らの迫力ある演奏にシビれた。たまたまジャズバンド編成の形をしていたけど、単純に渡来文化としてのジャズを真に受けるような性質のバンドでもなかった。ジャズのようでジャズじゃない…いい意味で非ジャズの違和逸脱感を常に抱きしめているのがこのバンドの不思議さであり最高の魅力だった。いわゆるジャズよりも、もっと乱暴で奔放でワンパクでヤンチャで、でも正確なアンサンブルがキレキレで。突然海外のレーベルと契約したり、しかもそれがオランダ発のヘヴィメタル専門レーベル ROADRUNNER だったりと、マジで先が読めないバンドでもあった。90年代以降のジャズだというのに、アシッドジャズやクラブジャズの影響を一ミリも受けてない。これも希有だった。唯一無二のバンドだったのだ。

●今手元にある新しめのアルバムがコレ。実はしばらくこのバンドに遠ざかっていたな。いつも PE'Z は PE'Z らしくあって、常に変わらずこのまま突き進むだろうと、勝手に安心して、なんとなく目を離してしまったんだな。公式サイトの発表〜ドラムのさんがこう綴る。「いつの間にか…俺たち5人がPE’Z っていうバンドを追いかけるようになってしまったんだ。PE’Z はこうあるべきだ、とか、PE’Z なんだからこうしなくちゃ、とか、PE’Z らしい音楽をつくらなくちゃとか…これって、何かちがうんじゃないかって5人全員が思った。」PE'Z は止まらないし、音楽も止まらない。がゆえに、バンドは解体されるべき。そうかー。残念だが、潔い決断だ。
●一曲目から、オチャメにベートーベンの第五番「運命」をカバー。持ち前の明るさを振りまきながら、ハイテンポで疾走していく。ヒイズミマサユ機の歪んだキーボードがヤンチャすぎていつも通り最高。後半はファンク要素がいつもよりやや粘ってサンバにまで突入。まさしくドタバタと激しく突進していく暴走機関車。その上で、OHYAMA "BMW" WATARUトランペットが太く雄々しい輪郭線をクッキリと描いて…そして遠く広い地平線が見えて来る。そんな音楽。に、ゆったり身を預ける。浸る。

PEZ × 土屋アンナ「UHA-UHA : 暴食系男子」

PE'Z × 土屋アンナ「UHA-UHA / 暴食系男子 !!」2010年
土屋アンナとバンドがコラボしたシングルを、MVを収めたDVDとともに、ムックとして宝島社がリリースしたという不思議なケース。雑誌付録に RAG-TAG のポーチ付きってのは、宝島社の必殺技だが、速攻でなくしたので覚えてない。
●ココでの土屋アンナが、なんだかデタラメでスゴイ。へんな節回しをつけてるのは笠置シヅ子みたいな昭和日本語ブギウギーな感じを狙ってるんだろうか?歌詞の内容は草食系男子を煽ってオマエもっとガッツケよと噛み付く気分ーてかアンナさんあなたが一番ウハウハ暴食系ですよって感じ。白兵戦は死ぬほど得意な筋肉質バンド PE'Z がニッカポッカをはいてこの暴食&食逃げ上等の姫君をおもてなし。お似合いっちゃーお似合いの組み合わせだね。MVは下北沢 GARDEN でのライブの様子もあって。バンド&姫がシモキタ南口商店街方面を歩くシーンもある。
●基本的にインストバンドであり続けた PE'Zボーカルを入れたケースは実は稀。シンガーソングライター SUZUMOKU と合体した短命ユニット PE'ZMOKU の他は、この土屋アンナと UK のソウルシンガー NATE JAMES とのコラボシングルしかない、と思う。NATE JAMES とのコラボシングル「LIVE FOR THE GROOVE」は爽やかな R&B チューンで、60〜70年代スロウバックな気分が最高の、神盤だ。


●ついでにさ、土屋アンナもいくよ。

土屋アンナ「STRIP ME ?」

土屋アンナ「STRIP ME ?」2006年
ボク、この人、基本的に大好きなんですよ。最近はよゐこと一緒にテレ朝「無人島0円生活」に出たりと、ただのバラエティ向けお姐さんになっちゃってるかもしれない。ルックスと言動がヤンキーすぎるような気もする。でもこの2006年前後の彼女は、中島哲哉監督の「下妻物語」蜷川実花監督の「さくらん」で女優として異彩を放っていた。それ以前の青文字系女性誌でモデルとして活躍する彼女も好きだった…「CUTIE」とか「ZIPPER」とか。ショートカットのティーンモデルだった彼女は、少年のようにも見えるユニセックスな存在で間違いなくクールだった。

●マンガ「NANA」の実写映画化で主演が中島美嘉になった時、いやいや土屋アンナこそがふさわしいだろうと考えていた。あのゴスパンククイーンをあの時点で最高に演じ切れるのは彼女しかいないと思ってた。一部で同じことを考えてた人もいたのだろうか?アニメ版「NANA」では土屋アンナが主題歌&歌唱キャストを担当。このアルバムにはそこで使われていた楽曲が収録されている。「ZERO」「ROSE」というギターがソリッドな疾走パンク。ハスキーな声が破滅に向かって急降下して空気との摩擦で発火しそう。燃え尽きてもいいから速く遠くへ疾走したい焦燥感が眩しい。さすがハーフ、達者な英語での堂々としたシンガーっぷり。土屋アンナ名義での初めてのフルアルバムとは思えない貫禄。CYNDI LAUPER「TRUE COLOR」のカバーも気持ちイイ。こういう、小細工なしのストレートなガールズパンクをヤリきる人って実は稀かもしれない。
●DVDのMVでカメラに様々な表情を見せる彼女の様子、久しぶりに見返して、ホレボレしちゃった。まだ二十歳を超えたばかりの土屋アンナ。若くて生意気。

土屋アンナ「NUDY SHOW !」

土屋アンナ「NUDY SHOW !」2008年
●アニメ版「NANA」関連の曲を含めながらも、ギターパンクを軸にした前作に比べてバラエティの幅を広げた内容…なんだけど、やや作風がバラけて散漫な印象も。パワフルソウルシンガー AI をフィーチャーしたり、仙台のロックバンド MONKEY MAJIK を召喚したり。いろいろな可能性を試してみたい段階だという気持ちはわかるし、バラエティ感溢れるショーアップを心がけた努力もわかるけど、ヒリヒリするギターパンクの様式に、もっと深くダイブしていて欲しかったかもしれない。だって彼女、パンクだもん。ヤンキーで、ハスッパな駄々っ子だもん。器用なコトをボクは期待していないんだ。




●動画でも見る?それは続きで。
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