2016.03.23


●最近は。
●すごく素敵な音楽や、
●すごく興味深い本やマンガ、映像などなど、
●そしていろいろな場所へ訪れる時の感動。
●たくさんありすぎて、ブログに拾い上げきれない!

●昨日の夜中に聴いたCDたちが予想を裏切るほど素晴らしくて、もう手に負えないと思った。
●すごすぎて、最後まで聴き通せないと思ったCDもあった。

●これって幸せ…。平和…。
●他人と全く共有できないけどね…。

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この連休に、埼玉県の大宮に、レコ屋遠征に行ってみたよ。
●埼玉県って、ボクにとって縁が薄くて…大宮の街なんて生まれてはじめてじゃないかなあ。
●京浜東北線の窓から「ラーメン二郎・大宮店」の看板が見えたもんだから、生まれてはじめての「二郎」にも挑戦してみた。普通ラーメンで小ぶりに見えたけど、それは他の人が食べてる大盛りがデカすぎて目の錯覚を起こしてるだけみたい。大量のモヤシに手こずりながら、コテコテのスープと太麺をたっぷり堪能しました。

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●なんか、キャバクラやラブホが集まってるエリアの奥にあったよ…お店の隣もラブホだったし。


で、レコ屋。二軒まわってみた。

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「MORE RECORDS」
●埼玉県さいたま市大宮区大宮区仲町2ー63 金澤ビル 2F
●目印がなくてちょっと手こずったけど、二階立ての小さな建物の脇にある階段に写真の看板が出てた。大宮東口を出て、目抜き通りを右側に折れてちょっと歩いた、静かな場所。
基本、全部新品CDの品揃え。こだわりのセレクトで集めた洋邦のインディアーティストがたくさん。インディフォークからシューゲイザー、エレクトロニカ、ジューク/フットワークまで網羅してた。オシャレな雰囲気と几帳面なリコメンPOPが丁寧で、CD探しが楽しい。視聴も遠慮せずにどうぞ!な感じだった…ボクはもったいないから基本的に視聴しない主義なんだけどね。この日の買い物はアルゼンチン音響派から和製シューゲイザーあたり、全部女性ボーカルものに統一して買ってみたよ。

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「RECORDS SHOP GRIS GRIS(レコード屋グリグリ)」
●埼玉県さいたま市大宮区大門町3ー63
MORE RECORDS 店員のオシャレなお姉さんに教えてもらった。大宮駅東口からまっすぐ伸びる目ぬき通りをまっすぐ歩いて5分ほど、左側にある河合塾のビルの角を脇に曲がって、最初のT字路を右にまがった瞬間に看板と窓に貼られたレコードが目に入る。
●こっちは、古来からある古典的な中古レコード屋さん。在庫はアナログ7割/CD3割くらい、ブート系DVDの安売りもしてた。洋邦は半分づつかな…でも基本は60〜70年代の物件がメインで、歌謡曲からR&B、ロック、ポップスと種類は揃ってるけど80年代以降のモノは期待しないほうがイイ。価格はちょっと高めかな?390円から2900円くらいの幅。あ、99円のドーナツ盤売り場はチェックしきれなかった。変なヤツが出てきたかもな。

SAMMY DAVIS JR「EXCELLENT 20」

SAMMY DAVIS JR.「EXCELLENT 20」1954〜1959年
「グリグリ」にて999円で買ったLPがコレ。ソーシャルで友人が、彼が出演しているサントリー・ウィスキーのCMをシェアしてて、これが実に小粋でオシャレで。洒落者ってこういう人のことを言うんだろうね。ウィットの効いたユーモアと軽妙な語り口、そしてチャーミングな笑顔。気取っているわけじゃないが絶対に下品にならない。決してイケメンさんじゃないけど、すごく艶っぽい伊達男だと思う。
●ボク個人のリアルタイム記憶では映画「キャノンボール」1981年&「キャノンホール2」1983年での出演が印象深くて。お金に意地キタナい性分で、高額賞金の全米横断公道違法レース・キャノンボールにエントリー。なんとニセ神父に扮装、その話芸で周囲を翻弄しながら、ブロンド美女と一緒にドライブとかしちゃう。主役は別にいるんだけど(バート・レイノルズ)、その主役を食うほどの存在感があって。このシリーズにはまだ香港のローカルスターでしかなかった頃のジャッキー・チェンも脇役で出てるよ(しかも英語しゃべれない日本人という設定)。
●でもこのレコードは、ぐっと時代がさらに古くて、1954〜1959年、DECCA RECORDS に所属してた頃の彼の歌唱がコンパイルされてる。両親ともに舞台芸人だった彼は子供の頃から舞台の上で活躍、演技も歌もモノマネも達者。タップダンスまで勉強して一流の腕前。そこをあの FRANK SINATRA が惚れ込んで、自分の一派に引き込んだ。ミュージカルのスタンダード曲や、自分のブロードウェイの舞台の曲を録音してるけど、この時代では SINATRA 風の朗々とした歌唱でオフザケは少なめ。でも、思い切りスウィングするビッグバンドジャズに合わせて奔放にスキャットで歌う彼がかっこいいな。ちなみに60年代に入ると、SINATRA が立ち上げたレーベル REPRISE に移籍。

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●コレ、裏ジャケの写真。かっこいいなあ…いったい何歳ごろの写真なんだろう?



●これ、話題に上ったサントリーのCMね。1973年のもの。


●同時期のジャズものをもう少々。ビバップの先駆者、MONK。

THELONIOUS MONK「THELONIOUS HIMSELF」

THELONIOUS MONK「THELONIOUS HIMSELF」1957年
●今、どの本に書いてあったかよくわからなくなってるんだけど、このモダンジャズの偉人とされてる THELONIOUS MONK演奏スタイルは、基本は「朴訥」としたトコロにポイントがある、みたいなコトを読んだのです。実際、その武名の大きさの割には、バンドの中での演奏で彼が大きく出しゃばったりする印象ってないよなーむしろ何してるかワカランくらいだなーと思ってたので、この「朴訥さ」という言葉にはメッチャ腑に落ちるものを感じたわけですわ。
●で、この、MONK がたった一人でピアノを演奏するアルバムを聴いてみることにした。彼のソロピアノは、やっぱり派手さや華麗さとは無縁な、地味な印象。音の数も少ないし、ゆったりノンビリしていてスキマたっぷり、わかりやすい超絶プレイは登場しない。しかし!テンポ感/タイム感が実に自由奔放で、自分のエモーションの赴くままに、時間感覚が緩急を繰り返し拡大縮小して絶妙な場所にアクセントを残していく。この計算とは思えない天性のバランス感覚が彼を偉大たらしめている、そんな風に納得しちゃった。一曲「MONK'S MOOD」では JOHN COLTRANE とセッション。パートナーがいればその人物との関係で、的確な場所に音を配置する。それが絶妙すぎる。COLTRANE の方も味わい深い。
●ボーナストラックに収録されている「'ROUND MIDNIGHT」21分バージョンの様子がすごく興味深い。この曲、MILES DAVIS のバンドでアルバムタイトル曲になるほどのスタンダードになる MONK の代表作。でも、この21分間は… MONK 自身がピアノがちゃんとなるのか一音一音確認するような、緊張感あるリハの様子を生々しく収録してて、ダメだと思ったらコンソールのスタッフと軽くヤリトリして、演奏をやり直したり、テープを一度止めたりするトコロまでそのまま録音されてる。どこにどんな音を配置したらいいのか、自分の美学と指の動きの感覚とピアノの鳴りを、じっくりじっくり確認…。誰かが彼を「ジャズの高僧」と呼んだらしいが、なるほど納得がいくかも。
●あ、ちなみに MONKベレー帽夜でも取らないデカめのサングラスは彼のトレードマークだったそうです。

MILES DAVIS「ROUND ABOUT MIDNIGHT」

MILES DAVIS「'ROUND ABOUT MIDNIGHT」1955〜1956年
●さて、同じ曲を演奏している MILES DAVIS のブツを聴いてみましょう。正確な曲名は「'ROUND MIDNIGHT」「'ROUND ABOUT MIDNIGHT」なのか、諸説あるようですが、どっちでもいいみたいです。作曲者の MONK ですらあんまりよく覚えてなさそうですから。
基本的に MILES DAVIS MONK は相性が悪かったようで…有名な「ケンカセッション」では、MILES「オレのソロの時はオマエは一切音出すな」と言い放ったりとか、せっかくいい感じに録音が終わりかけたところで「おーい、便所どこだっけ?」 MONK が声をだすとか、大人気ない二人の様子が伝承として残ってます。でも、実は彼らは似た性質があるから相性が悪い。
●これも引用元が見つからなくなってるんだけど、両者とも少ない音数を絶妙なタイミングに配置して音楽を作っていくタイプ。しかし、それぞれのテンポ感やタイム感は全然違うもの。そんな二人が簡単にかみ合うはずがない。特に MILES は自己主張が激しいし。で、この「'ROUND ABOUT MIDNIGHT」には MONK がいるはずもなく、ピアノはこのへんの時代の MILES バンドの常連 RED GARLAND が担当してます。
●…「'ROUND ABOUT MIDNIGHT」全然同じ曲と思えない…。ミュートを効かせて抑制させた MILES のメロディは明快でわかりやすくクールですわ。MILES を中心に統御されたバンドの規律正しさはクッキリしててわかりやすい。ここでも JOHN COLTRANE が演奏してるけど、なんだかすごくキビキビしてますわ。

THELONIOUS MONK「THELONIOUS MONK TRIO」

THELONIOUS MONK「THELONIOUS MONK TRIO」1952〜1954年
●はい、もう一回 MONK に戻ってきて、今度はピアノトリオ構成中心のアルバム。ドラムに ART BLAKEY MAX ROACH。ベースは、PERCY HEATHGARY MAPP(ベースの二人はよく知らん… PEACY HEATH MJQ の人だな)。リズム隊のお膳立てあって、軽快なピアノプレイが小気味良い感じだけど、無駄な力みも、無駄な気取りもなく、いたずらに音を増やすだけでもなく。なんだか実直で素朴な感じがする。

THELONIOUS MONK「GENIUS OF MODERN MUSIC VOL1」

THELONIOUS MONK「GENIUS OF MODERN MUSIC VOL.1」1947年
今まで聴いてきた音源とは一巡り古い時代の録音。ピアノに MONK、ドラムに ART BLAKEY、そしてサックス、トランペット、ベースが加わったカルテット編成がメインですわ(他の人々はよく知らない…)。ビバップというジャズの新しいスタイルが世界に発見されたばかりの頃なので、自由奔放に弾けるプレイが若々しくも聴こえるし、カシマシくも聴こえる。スウィングもいっぱいしている。で、そんな大騒ぎをしているので、油断すると MONK が何してるか全然わかんなーい。よく聴いたとしても MONK が活躍しているように聴こえなーい。相変わらず地味。ソロを取っても地味。ホントに「朴訥」
●それでもこのアルバムがわざわざ THELONIOUS MONK 名義になっているのは、後年からの評価でコンパイルしたからかな。一点はっきりしているところでは、収録21曲のうち半分以上の12曲が MONK 自らの作曲だということ。すでに「'ROUND MIDNIGHT」も含まれている。これは確かに才能なんだろう。…え?持ち歌として10年も演ってる曲なのに、「HIMSELF」であんなに神経質にリハし続けてるの?ああ、こりゃある意味マジで天才かも。

●ちなみに、このCDは BLUE NOTE から。最初の「HIMSELF」 RIVERSIDE「TRIO」 PRESTIGE から。MILES DAVIS はすでにドメジャーの CBS に移籍してる。ここに上がったレーベルはどこも名門と呼んでいい良心的なジャズ専門レーベルだったけど、やっぱり所詮インディーズ。流通量も少ないし認知も低い。メジャーと契約を結んだ MILES は、やっぱメジャーは違うぜインディでやってた仕事なんて誰も知らねえと思い知った上でメジャーなスターに変身していったのでした。



●あまりにも温度変化が激しいから、体調を崩してしまっている。
●しんどいなあ。


●この前、神楽坂でおいしいウナギを食べた。
●ウナギ屋さんって夜は早めに終わるんだね。知らなかったよ。


●地下鉄の中で、思わず隣の女性のスマホを覗いてしまった。
●電子書籍みたいなもので読書してる…おお!宮沢賢治「オツベルと象」を読んでる!
●スマホと宮沢賢治のギャップにクラっとする。なぜOLさんが今「オツベルと象」を読まなければならないのだ?人生って奥が深いなあ。


我がワイフ、缶コーヒーを飲んだことがなかったらしい。
「STAR WARS」の景品(R2-D2 BB-8 の形をしたアルミ容器)欲しさに、缶コーヒー12本も買ってきた…。我が家でコーヒー飲めるのはボクだけ。コレ全部ボクに飲めと!しかしボクはブラック派なので砂糖が甘すぎる缶コーヒーは好きじゃない。基本「微糖」も飲まない。「いいもん!ワタシだって飲めるもん」とか言って、ワイフ一缶飲んだだけでカフェイン効きすぎて「動悸がする…眠れない…」…すげえ人間がいるもんだなーしかも至近距離に。感心したわ。


娘ヒヨコは「百人一首」アプリに夢中。
●ヒヨコはアタマは悪いが、アタマを経由しないで体や指や耳で覚えるのは達者。アプリが読み上げてくれる百人一首をどんどん覚えてしまって、ランク「1級」をたちまち奪取。今や誰もヒヨコに勝てない。アプリに「ご祐筆」の称号を与えられたとな。


最近は、ビンテージなパンクが好き。無性に生き急ぐドタバタテンション。

999「999」

999「999」1978年
イギリスで日本の110番/119番を指す電話番号999をバンド名にした、パンクバンドのファーストアルバム。イタズラ小僧のようなカワイ気すら感じてしまうチャーミングなボーカルがおどけながら爆走する楽しいバンドサウンド。ギンギンとワメくギターとドタバタしたビートが痛快かつ愛嬌たっぷり。「999」って名前から、悪魔の数字「666」を連想しちゃってたんだけど、ヤンチャなロックンロールをノーテンキに楽しむのが正しい姿勢。パンクって楽しいんだねー。ボクは「NASTY NASTY」って曲が好きだよ。

RUTS「IN A RUTS」

RUTS「IN A RUT」1979年
●これもイギリスの同時期のパンクバンド。このバンドの初期シングル関係音源(ファーストアルバム収録曲も含む)をまとめた編集盤みたい。ブンブンとドライブするビートパンクに乗っかって悪ガキが大騒ぎ!このバンドもメロディが人懐こくって、少々のトゲトゲしさなんかどうでもよくなるほど、愉快で単純なロックンロール。と思ったら、突然オーセンティックなレゲエを演奏したりもするのでビビる。レゲエとパンクは最初っからイイ相性だったんだね。改めてそう思ったよ。
●ちなみに「RUT」って「轍(わだち)」とか「型」って意味。このCDのライナーノーツにはこう書いてあるよ。「REMEMBER - "IF YOU'RE IN A RUT, YOU GOTTA GET OUT OF IT"」覚えとけ!もしオマエが型にハマったらすぐにソコから出てけ!

THE VAPORS「NEW CLEAR DAYS」

THE VAPORS「NEW CLEAR DAYS」1980年
●これも一見人懐こいメロディとテケテケしたビートが愉快痛快なビートパンク。彼らの一発大ヒット曲「TURNING JAPANESE」は、他の人のカバーで馴染んでたけど(90年代の LIZ PHAIR のカバーとか)、やっぱ本物がカッコイイな。ちょっとニューウェーブ的なひねくれもあってさ。1979〜1982年しか持続しなかった短命バンドで、そのアルバム一枚目がこれ。
●でも見た目が甘めと見せかけて、けっこう社会問題への風刺やアイロニーを仕込むタイプのようで。アルバムタイトルの「NEW CLEAR DAY」は当然「NUCLEAR」のモジリね。イギリスの天気予報図のど真ん中に原子力マーク。「COLD WAR」とか「AMERICA」とか「BUNKER」とか、いかにもな曲名が並んでるよ。


●このへんのバンドで、動画なんかあるのかな?
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「村上隆の五百羅漢図展」六本木・森美術館

五百羅漢図

●この前、ワイフと二人で中野に行った際、BAR ZINGARO でお茶して、村上隆世界の雰囲気を吸ったもんだから、もう会期もお終いのタイミング、会社終わりの金曜夜に行ってみた。展覧会が終わる最後の週末は深夜1時までオープンしてるというナイスな配慮。レイトショー気分で絵画鑑賞とは。結果、終電ギリになっちゃったんだけどね。
●おまけに、写真は取り放題、ぜひソーシャルにあげてください、っていうんだから大盤振る舞いだよね。

●実を言えば、そんなに大きな期待はしてなかった…いつもの村上隆さんかなー程度の関心でさ。

●でも、作品のあまりのパワーに、胸が熱くなるほどの感動が溢れるような経験となったのです。

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「五百羅漢図」の制作の経緯。
この作品は、超でかい。高さ3メートル、幅100メートル!その100メートルが4つのパートに分けられており、その中に500人の羅漢が描かれている。制作は2012年。最初の発表は中東ペルシャ湾の豊かなオイルマネー王国・カタールの首都ドーハで行われた。カタール村上隆の縁は深くて、彼の武名をさらに高めたベルサイユ宮殿での展示2010年もカタール王国がスポンサードしてたはずだ。2008年リーマンショックで冷え切ったハイアート市場でも中東のパトロンはぶれずにアーティストを支援していて、村上隆はこの延長でドーハでの展覧会をオファーされた。現地で会場下見に行くも、小さいギャラリーとコンベンションセンターみたいなオオバコしかない。このくらいのサイズはどーですかねーとメモを書いたら、そのままの建物が更地から造られてしまったという。
●そんなタイミングで、2011年。東日本大震災が発生。この大きな災厄を契機にして、村上隆はこの巨大作品「五百羅漢図」を制作する。以下は、「芸術新潮」2012年5月号からの、村上隆本人による文章からの引用。

「挑戦のきっかけはもちろん東日本大震災。日本国家の有事を前にしたわれわれ国民の無力感がテーマになっているのですが、そんな無力感の中でも人は生きていかなければならない。数百年前に震災に遭ったり、戦国時代の戦争で疲弊しきった大衆はきっとみんなそういった気持ちだったのだろう想像しますし、その無力感からの救いを宗教的な説法に求めつつ生きていたはずだと推測。今また日本人の死生観のギリギリのところが問われるような状況が出現し、それに立ち向かってゆくための新たな説法が急務である、と、そんなことを強く感じ、描いた作品です。」

●震災発生からドーハでの発表まで1年強。こんな大作をよくぞ1年という短い期間で制作したもんだと驚く。鑑賞していくウチにどんどんハマり込んで気づいていくのだが、これがただデカイだけじゃないのよ、とにかくすごいのよ描きこみようが!これぞ現代の狩野派工房・株式会社カイカイキキの実力なのかな。

猛烈な芸術的熱量にアタマとココロが混乱していく。
「スマホでどうぞ好きなだけ撮影してください」って言われると、絵画鑑賞のスタイルって激変する。スマホの画面の中でトリミングされた、絵画のデティールが奇妙な見え方になってくる。どんなに撮影しても無限に撮影すべきパーツが出てきて止まらない。カシャ、カシャ、カシャ、いつしか興奮してる自分を見つける。
●仏教の神格/「羅漢」という人物たちが広い画面の中で500人もいる。しかもこれが、3メートルの巨大なものから、数センチ程度の小さいものまで、すべて違う衣装、違うポーズ、違う表情で登場する。でっかい羅漢ちっちゃい羅漢それでも全部羅漢、まるで同じパターンが極小から極大まで連続するフラクタル図形のような無限の連鎖に迷い込んだ気になる。これも含めて仏教のアレゴリーなの?しかもこれがスマホの画面に入ると、これが全部同じサイズの羅漢に写っちゃって、等価値のフラットな存在になって浮きだす。極大から極小まですべての要素からの均等な総攻撃にボクはボコボコタコ殴りにされる。
フラクラル的表現は人物である羅漢にとどまらず、画面に巨大なリズムを作る渦巻きや火炎の奔流、ドット模様も、極大から極小まですべての要素が饒舌に自己主張してくる。この高密度大容量なメッセージやドラマを、アーティストが100メートルの大絵画にこってり盛り込んだ事が脅威。そんな大作が、カタールでの発表以来、初めて日本で展示される。それが今回の意義。

●作品は4つのパーツに分かれている。「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」
●サブタイトルのように書いた言葉は、ボクが受け止めた印象であって、作家のメッセージではないのでご注意を。

「青龍」:津波の奔流
●高い空から降りてきて、その巨躯を水面に叩きつける「青龍」。一方では海底から巨大な白鯨が急浮上。その結果、無数の大きな渦が巻き起こる。人智を超えた圧倒的なパワーは描きこまれた螺旋のエネルギーに象徴されている。

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渦巻きが織りなす曲線の力と、フラクタル的に無限に増殖するかのようなエネルギーに、ただひたすら圧倒。そして、そのデティールが細かく細かく設定されているところが本当にすごい。この大画面の細部に渡る全部に、作家の冷静な意図が仕込まれていることに驚愕する。

「白虎」:業火と祈り
大火炎が画面全体を燃やし尽くしている。この火炎は元来この地球上では燃えてはいけないもの。この星はこの炎に持ちこたえられない。が故に、羅漢の大幹部をはじめ最も多くの羅漢が動員され、それぞれが強くこの炎に対抗して念じている。「白虎」もこの炎に苛立っているようだ。

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●そんなに多くない、横顔で描かれた羅漢の一人が、我々を強く糾弾するように此方を睨んでいる。「この炎を起こしたのは誰だ?」…大火炎は奔放に空間を暴れ回る。その様子は、後期のリキテンシュタインが接近した抽象表現や、平安時代の絵巻物で描かれた火災の様子を連想させて、接近すればするほど重厚に塗りこまれていることに気づく。

「朱雀」:静寂と鎮魂
画面は一気に暗くなり、静謐なイメージが神聖さを感じさせる。羅漢たちはこの宇宙空間で座禅を組み、人々の魂を慰撫するかのように優しい。そして中央に巨大な「朱雀」=「火の鳥」手塚治虫を連想させる神々しい生命の象徴が画面中央で優美に羽ばたく…。

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●宇宙空間を構成する細かいドット柄も細かく計算されて、美しいグラデーションを描くべく、微細にその色彩や形状が個々別々に調整されている。これが実に眩しく美しい。そしてこの羅漢の慈愛の表情。凍てつく宇宙空間の中で、温かい感情に触れる。

「玄武」:快復する生命
画面は快活さを取り戻し、阿吽の関係にある赤鬼青鬼がダイナミックに跳躍する。亀のイメージで知られる「玄武」はここに登場しない。が、四つ目のモコモコした怪物と、「もののけ姫」「シシ神」を連想させる動物が、健全な生命力を運んできてくれているようだ。

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●赤鬼青鬼に挟まれて、黄色い山がニョキニョキと育っていく様を一人の羅漢が見上げている。山の斜面にはおどけるようにカンフーのポーズを決める小さな羅漢の群れが。岩のような雲が徐々に吹き流されて、眩しい空が戻って来るようだ。
●正直、このあたりでボクはもうクタクタで、絵画のパワーに飲まれてしまって…。しかしその一方でこのゴールのパーツで癒しを感じてもいた…。

●この作品は「村上のゲルニカ」と呼ばれているらしい。納得できる。


●この作品は、当たり前だが村上隆本人が絵筆を片手にモリモリ全部描いたわけじゃない。
●彼にはこうした制作を組織的にこなすカイカイキキという会社組織がある。さらに今回は、全国の美大から志望者を募ってチームに編成。24時間シフトを組んで彼らを稼働。スタジオも絵画のスケールに合わせて改装/拡張してしまったほど。最終的には200人ものスタッフが関わったとな。チームの中にはリサーチ班もあって、彼らは古典美術の中から参考になる意匠をレポートのようにまとめたりしていた。資料ファイルは100冊を超え、使用されたシルクスクリーンは4000枚以上になったという。
この作業がいかなる激闘だったか、その資料や指示書などなどの展示から、読み取れてしまう「まんだらけ」のセル原画売り場みたいな感じに展示されてた指示書には、これまた厳しいダメ出しが…。

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・右上:「指示書どうりにヤレ!ボケ!」
・左下:「赤印の肌やり直し ひでーなー 低レベル…」
・右下:「この小さな空間にキッチリドラマをブチ込め!!」

●絵画を描くというよりは、アニメ監督が、作画担当にワンカットづつチェックを入れてる感じだね…。宮崎駿もきっとこういうことしてたんじゃないか?って勝手に想像しちゃった。
●でも、美術の世界で、そんなスタジオのシステムを組み上げたこと自体が、大いなる挑戦とその成果ってことだね。だってその宮崎さんのジブリだってもう開店閉業状態になるご時世なんだよ。なのに彼は世界中からドデカい仕事をとってスタッフを養い、自分の後裔としてアーティストを送り出したりもしてる。

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●その他、ゴールドやシルバーでピカピカの大きな立体作品や、抽象度の高い絵画がたくさん展示されておりました。
●とくにボクは、ゴールドにただの丸、の作品が好き。タイトル失念…。これはズバリ禅宗系書画の一ジャンルである「円相」でしょ。ホントの「円相」だったら、白紙に墨汁でまるっと筆書き。でも、きっとこの丸は、その筆致やペンキの滴り、一周回ってのかすれ具合も、その点々の一つ一つも、全部PCでデザインされてて、緻密に造詣されてるはず。バックのゴールドも狩野派絵画から引用されたイメージなのだろうけど、よく見ると「タイムボカン」シリーズのどくろべえさまが全面を覆っておりまして。このどくろべえさまも、作家が20年来用いているモチーフだし、どんどん進化をしている。「五百羅漢図」をはじめ、東洋古典美術の様々な文脈、そしてアニメやマンガ、キャラクターたっぷりの戦後文化、を現代の東洋人作家としてのアイデンティティ(または「タカシムラカミ」というキャラ設定/海外顧客からの見え方)として、最新の手法を用いて打ち出していく感覚。それがやっぱりこの人をスリリングな存在にしているのだなと、今一度感じ入ったのでありました。

●そして、彼は、こうして磨き上げた技術と組織をフルに駆使して、日本が新たに抱えてしまった(抱えきれないかもしれない)新しい物語=東日本大震災&福島原発事故に対して、素早く反応して見せた。ボクは同じ日本人として、この作品の迫力あるメッセージに震える。あの時に流れてた即席の復興応援ジェイポップよりもずっと。


「芸術闘争論」 「芸術起業論」

●この文章を書きながら、以前読んだ作家の著作「芸術起業論」2006年「芸術闘争論」2010年をペラペラめくってみたんだけど、ホントこの人は日本の美術界に対して激しく苛立っているんだなーと再確認。
●そもそもこの「五百羅漢図」日本初公開だし、日本での個展自体が14年ぶり日本にニーズがないから海外で商売してますと、てらいなく発言しますもんね。でかいことをするなら、でかいスポンサーが必要だし、そのためならルイヴィトンでもベルサイユでもオイルマネー王国でもお客様としてお付き合いさせていただきますっつーことだもんね。で、これを他人がやろうと思ってすぐできる話じゃないし。既存美術界から見れば、取り扱いが面倒くさいということでしょうか。
●似たことをしているのは「チームラボ」かも。テクノロジーを駆使したインスタレーションをシンガポールとかで売ってるよね。あそこのカリスマ・猪子寿之さんも東洋古典美術に傾倒してて(というかマーケティング的にネタを嗅ぎ当てた?)、伊藤若冲作品を4K画質で動かしたりしてるもんね。ただ、海外市場にうって出て、自分の見え方に意識的になっている点では同じかも。


●さて、音楽。90年代の村上隆さんが関与してた物件。

攻殻機動隊サントラ1

「攻殻機動隊 MEGATECH BODY. CO.,LTD. プレイステーション・サウンドトラック」1997年
プレイステーション(初代)のゲームソフトのサントラを、石野卓球キュレーションで当時欧米の一線級テクノアーティストが手がけた場面がありました。卓球の声掛けに集まったのは、MIJK VAN DYKE、WESTBAM、HARDFLOOR、CJ BOLLAND、JOEY BELTRAM、そしてテクノゴッド DERRICK MAY などなど。そんな豪華なメンツが二枚組の内容で新曲を提供しております。
●で、裏ジャケにご注目。

攻殻機動隊サントラ2

●こっちの「DOBくん」は、今回の個展で展示されてた作品の一部。

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この2つの絵、似てる!似てる気がする!
「攻殻機動隊」の多足戦闘ロボット・フチコマは人工知能搭載で、作中ではマスコットのようなカワイイキャラになってる。そして村上隆が20年以上にわたって愛してやまない自作キャラ「DOBくん」。これが同じような造形の雲?煙?に乗っかってる「攻殻」の方にはサイバーパンクな内容とは一見無縁な東洋風の鬼まで描きこまれている。で、クレジットを改めて読み込んだところ、「ART DIRECTION:TAKASHI MURAKAMI (HIROPON)」の記載を見つけたのでありました!内ジャケにおいても、「攻殻」のヒロイン・草薙素子の周辺に奇妙な東洋テイスト(鬼も何匹か)が仕込まれており、ますます村上隆テイストが盛り込まれていることに気づいてしまう。約20年前のCDにこんな発見しちゃうなんて!
●それにはある思い出が関係しているのです。もちろん士郎正宗原作でも、押井守のアニメ映画でも「攻殻機動隊」はボクの大好物であります。だからこのゲームのリリースパーティにも友達と行ったのですよ、1997年にね。たしか場所は恵比寿ガーデンホールMIJK VAN DYKE、石野卓球、JOEY BELTRAM の三人が朝までDJしてました。ゲームプレイブースも賑やかで、実物大のフチコマもあったような。…そこで、ボクは物販ブースで「DOBくん」Tシャツを買うのです。当時新進気鋭のアーティストだった村上隆「DOBくん」はボクにとってヒップなアイコン。ただ、なんで「攻殻」のイベントに「DOBくん」なんだろ?とは思ったけど。でも、納得!村上隆は、サントラのジャケデザインでこのプロジェクトに関わってたのね。
●で、ボクはこの物販ブースで、丸メガネのお兄さんから直接Tシャツを買ったのです。暗い会場でお客さんもワンサカしてる中、正直自信が持てなかったんだけど、後から考えるとアレは村上隆さん本人だったのでは?とイベントから帰ってから思ったわけですわ。でもなーアーティスト本人がTシャツ手売りしてるかな?…でもこの疑問も氷解しました。今回の個展では過去20年ほどの彼のテレビ出演映像をNHKさんが提供してまして。で、現在のでぶっちょヒゲ面ちょんまげ村上隆からは想像もつかないほど、20年前はほっそり茶髪青年であることが判明、そして間違いなくあのイベントでTシャツを売ってくれたお兄さんと同一人物であることが判明したのでありました。なんかウレシい!
●でも、そのTシャツは一回だけ来ただけで、奥さんが洗濯に失敗し、プリントが剥げて台無しに…。しかし捨てることも出来ず…だって作品が数億円で取引される作家だよ…状態がよければ鑑定団的に数十万とかになったかも。だから今もタンスの奥にしまってあります。



●先日、ライブに行ってきました。
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団「2016 LAST TOUR」@恵比寿リキッドルーム。

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「ラストツアー」ってのは文字通りで、このトラベルスイング楽団というバンドはこれで解散という意味。奇妙礼太郎ソロ名義や、天才バンドという別名義で彼は今後も活動するけど、このバンドはおしまい。うーん残念だね。ドラム+ベース+ギター+パーカッションに、ホーン隊三人&キーボード二人と豪華な編成で弾き出す熱量高いファンクロックグルーヴは、文字通り「ドカドカうるさいロックンロールバンドさ〜」って感じで、80年代全盛期の RC サクセションのような迫力があったのだ。アルバムで聴いてた「どばどばどかん」がライブで聴くとまさしくRC節でホントたまらん!
●マッチ棒のようにヤセっぽっちな印象だと思ってた、奇妙礼太郎その人は、スリムな体にタイトなスーツがバチっと決まってて、ステージでの立ち振る舞いが実にクールだった…。マイクをつかみながら身をよじらせて声を絞り出すその様子が実にカッコイイのだ。少々支離滅裂で人を食ったMCをダラダラ続ける様子も、タダモノじゃないオーラを感じさせるのだ。ああ、この人の歌はもっと聴いていたい。
中でも素晴らしい一瞬となったのが、松田聖子のカバー。「赤いスイートピー」「スウィートメモリーズ」。この二曲がなんと雄弁なことか。男性シンガーにしてこんなに説得力を持って松田聖子が歌える人間が他にいるだろうか?大幅にメロディを崩しながらもすごくソウルフルに仕上げてパワフル。ああなんていい歌だろう、そう思えるパフォーマンスだった。解散ツアーだというのに、カバーが満載。大迫力ファンキーレビューな「東京ブギウギ」もすごかったな。
●今度はどんなスタイルで活動していくのかな。ライブで感じたのは、彼が独特なチャーミングさを漂わす存在ってこと。あの飄々とした佇まいが、時に爆発的に燃焼するのが実に楽しいんだ。


●こんな感じで最近はロックバンドの活動停止のニュースをよく聞く。

N夙川BOYS「THANK YOU !!!」

N'夙川BOYS「THANK YOU !!!」2011〜2013年
奇妙礼太郎と同世代、同じくらいの活動キャリア、同じ関西出身、そんでハチャメチャなロックンロールを目指す!なのに絶妙にキャッチー!という点でなんとなくイメージが似通うこのバンドも解散してしまうそうな。
●男女3人のスリーピースロックバンドで、担当楽器はその時の気分で持ち替えるみたいなラフな加減が実にガレージロック。気のせいか録音もすごくラフで、その粗末で雑な感じが勢い任せの疾走感とロックの遠心力にすり替わって、聴くモノの耳をガリガリと八つ裂きにしてくれる。このアルバムはメジャーデビュー2年目にしてリリースしたベスト盤。初期楽曲は再録もしてるが、全然洗練されてないのでご安心。ボクは「物語はちと?不安定」が好き。
●とはいえ、メジャーファーストアルバムは、故・佐久間正英氏なもんだから、ナニゲにその荒々しさを丁寧に制御してポップスとしての強度が強くなってる。「プラネットマジック」とかが象徴的かも。
●このバンドを知ったのは、映画「モテキ」のサントラで BARBEE BOYS「目を閉じておいでよ」をカバーした時だったな。あのカバーはよかった。ボーカル男のマーヤLOVEと、ボーカル女のリンダDADAツイン体制の危うい均衡がそのままこのバンドのスリルになってたし、バンドとしての艶っぽさにもなってた。BARBEE BOYS もそういうバンドだった。このベストでは、なんと THE CURE「BOYS DON'T CRY」のカバーをやってるけどね。

モーモールルギャバン「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」

モーモールルギャバン「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」2011年
●こちらも男女ロックトリオ。2014年に無期活動休止へ。やっぱ関西系、同世代、同時期デビューのキャリアを持つ。しかし2015年に復活、ニューアルバムをリリースしてライブを旺盛にこなしている。復活ってやり方があるのだから、ロックファンは一喜一憂することはないのかもね。
●編成もとってもフシギだよ。ドラム兼ボーカル、キーボード女子、そしてベースってバンド編成。ギターはいつしかいなくなっちゃったようだよ。だから、ロッキンなナンバーだとベース圧力がブリブリとパワフルでカッコいい。キーボードのドラマチックな繊細さもイイ。DOORS のキーボードみたいにサイケに作用する瞬間もある。そして、このバンドも男女のツインボーカルが特徴的かも。グラムロックな外見も N'夙川BOYS に似てるかも。
●でも、ただのロック衝動で壁をつき壊せ!みたいなポジションだけじゃなくて、本来的にはリリック重視のバンドなのかも。「J・O・E」って曲が気になるのさ。ピアノ基調の中でボーカル男ゲイリー・ビッチェがファルセットで優しく歌うリリックは、詩的で柔らかくて…その優しい甘美さが、真っ白く灰になった男の姿を連想させるのさ。ボーカル女ユコ=カティの担当曲は、ユーミンが出てくる寸前みたいな懐かしい甘さまであるよ。



●さて、世間から退場するのはバンドだけでなく…レコ屋も退場する。

中野レコミンツ

中野ブロードウェイのCD屋さん「レコミンツ」が今年4月で閉店してしまうという。
●ショック…これ友達がFACEBOOKでつぶやいていたので知ったよ。ついこの前にもここで買い物したのに!今年で50周年を迎えるという中野ブロードウェイ、あそこのサブカル的磁場はコスプレからオカルトまで全方位型に散らばってたのが面白かったはずなんだけど、さすがに、ここ数年はまんだらけ方面ばっかりに偏りすぎてるよな。レコ屋系で言えば頑固なニューウェーブ専門店「SHOP MECANO」がまだ健在。特殊書店「タコシェ」はこれまた踏ん張ってるし、村上隆「ZINGARO」「BAR ZINGARO」から「PIXIV ZINGARO」まで)のようなアート拠点もあるから、ボクとしては縁はまだ切れないと思うけど。

●でもね、そんな縁のあったお店が消えてしまい、街は面白くなくなるだけではなく。
どんどん面白くなっていく、復活していく街もあると思うのです。

●高円寺の超個性派レコ屋「円盤」オーナーで音楽評論家の田口史人さんと軽くお話しする機会があって。
「円盤」というお店を通じて高円寺という街をずっと眺めていて、どんどんダメになっていく様子に残念さを感じていたという。ボクも高円寺に住んでたことがあるが、レコ屋が徐々に減っていって…むむむ。ところがここ最近、またユニークなお店が増えつつあるらしい。幡ヶ谷にあったこれまた個性派のお店「ロスアプソン」が高円寺に移転したし、新しいお店も出来てるらしい。街はダメになるときもあるけど、よくなるときもある。

●ボクが暮らす下北沢は、再開発の影響で、ボクが暮らし始めた約10年前から比べても激変した。それを知人は「久しぶりに行ったら知ってる店が全部なくなって、どうしちゃったのよって感じよ!」と評したもんだ。この変化はまだ途中であってもっとさらに激変してくだろう。大好きなカフェが閉店したし、レコ屋も店長さんが入れ変わっちゃったりね。
●でも、それはあくまでボクらオッサン視点のノスタルジーで、今のキッズにとって価値化されてるお店はナニ気にどんどん発生してるのですわ。老舗お風呂屋さんの跡地にできた古着屋「NEW YORK JOE」(←これ絶対「入浴場」のモジリ)はいつも買取希望の若者で行列が出来てるし、2012年位にできた個性派書店「B&B」はトークイベントをどんどん繰り出してネットメディアによく取り上げられてるし、ライブハウス GARDEN は2011年に改装してグッと存在感増したもんね。たしか今月は「リアル脱出ゲーム」 SCRAP が直営する「ナゾビル」ってのが出来て、ゲームを常設のハコで楽しめるようになるんだよ。悪いこともあるけど、いいこともある。

●だから、中野もね。今は残念な時期だけど…ブロードウェイから音楽の専門店が減っちゃったけど、きっと面白いことがまた起こるさ。息子ノマドはあそこの本屋さんのラノベのラインナップを気に入ったみたい。ブロードウェイで見つけた、ボカロキャラをもじった赤いパーカーを買ってお気に入りにしてるよ。悲観はしないさ、簡単には。

●だから、前向きな気持ちも込めて。
●このレコミンツで今まで買ったものを聴く。

NETWORKS「WHITE SKY」

NETWORKS「WHITE SKY」2010年
●これは、職場のフシギ女子から教えてもらったバンドだね。「インストなんですけどメッチャかっこいいんですよー、ライブ必ず行ってるんですよー」東高円寺在住の彼女はこのバンドを、あの街にある UFOクラブ とかで見てるんだろうか?なぞとテキトーに聴き流していたんだけど…SEO対策を無視したそっけないバンド名だし、あんまりその会話だけでは興味がわかなかった。でも。このレコミントで見つけてしまった…CDを。400円で購入。
●そしたら、華麗なマスロックだった。幾何学ギター+リリカルキーボード+テクニカルドラムのロックトリオ。ポリリズミックなグルーヴの積み重ねでキラキラと音楽が光る。5曲のミニアルバムと見せかけて、10分超えの楽曲が多くて聴き応えもある。マスロックなアプローチは、アメリカだとヘヴィロックの文脈の先にあるけど、日本だと澄み切ったポストロックの延長線にあって進化が独特。とても気持ちがいい。

OPUS III「MIND FRUIT」

OPUS III「MIND FRUIT」1992年
あーこれはもう「懐かし」型な買い物です。大学生になって12インチアナログを買うようになった最初期の一枚が、このアルバムからのリードシングル「IT'S A FINE DAY」1991年でしたわ。テクノもハウスもレイブもまだ未分化だった時代の、ディープなボーカル物テックハウス。ほとんど坊主までに短く髪の毛を刈り込んだジャケの女性 KIRSTY HAWKSHAW の神秘的で透明感あふれる声が、少しトーンの暗いビートの中で美しく響く。全英1位になったはずですわ。ボクもフジの深夜番組「BEAT UK」のランキングで知ったんだもん。 JANE という歌手が歌ってた1983年の同名曲のカバーだってのは、今回CDアルバムの解説を読んで初めて知った…25年後も経ってるのに。今度元ネタも探そう。二曲目もKING CRIMSON「I TALK TO THE WIND」のカバーだ。原曲の持つ奥ゆかしい静謐さを、このユニットのテクノ感覚は丁寧に細工してて気持ち良く聴けるようにしてくれる。ダンスミュージックとして扇情的、というより、涼やかなグルーヴの中でチルしてくれる感じ。えーと、確か200円コーナーで拾ったんだっけかな。
●これも今回初めて知ったんだけど、この作品を出してる 380 RECORDS ってのが、80年代ユーロビートで大活躍したプロデューサーチーム、STOCK AITKIN WATERMAN の関係レーベルなんだって。テクノハウスは、90年前後に突然発生した新型音楽のように思えてたんだけど、その手前のダンス・ムーブメントと人脈的つながりがちゃんとあったんだね。OPUS III と同世代的に THE KLF を結成してレイヴカルチャーアンビエントをメジャー化するパンキッシュな連中 JIMMY CAUTY BILL DRAMMOND も、下積み時代はこの一世代前のプロデューサーチームに関与してたって解説されてる。ふーん。THE KLF もね、当時買いまくったよ。大好きだった。

THE ROLLING STONES「LIKE A ROLLING STONE」

THE ROLLING STONES「LIKE A ROLLING STONE」1995年
●テクノでカバーした案件から、そのまままたカバー案件にいくね。THE STONES BOB DYLAN の名曲をカバー。彼らがこの曲やるってあまりに直球だけど、こんなに長いキャリアで今更かよーもっと前にやってなかったのかよー、なんて感じたりもする。この曲を収録したアルバム「STRIPPED」は確かまだ持ってなかったね…もう THE STONES の仕事は網羅しきれないよー。全然ワビサビることもなく、ゴリゴリとローリングしてます。「HOW DOES IT FEEL ? HOW DOES IT FEEL ?」こいつも200円コーナーで見つけた。

ERIKA「FREE」

ERIKA「FREE」2007年
沢尻エリカのシングルですわ。まだ映画「ヘルタースケルター」は見てない…いつでもSVODサービスで見られるんだけどね。この曲は気になってた…ちょうど中川翔子「空色デイズ」みたいなロックとしての痛快感がちゃんとある。異分野の人がそういうことをするってのが、この時期にはよくあったからね。アニソンかと勝手に思ってたけどただのCMタイアップ曲だった。でも ERIKA沢尻エリカは別人設定というありがちなオルターエゴ物語がウザい…その一方で、彼女が映画/ドラマの中のシンガーソングライターとして歌った KAORU AMANE 名義シングル「タイヨウのうた」もそのうちゲットしたい。
●さすがにハイパーメディアクリエイターとの混乱した私生活やヘンテコなトラブルには閉口したけど、映画「パッチギ」のヒロインとしてデビューした瞬間の彼女はマジで可愛かったよ…。まーがんばってください。200円からさらに30%オフで買ったね。それ以上の価値はないと思う。

松浦亜弥「松浦シングルMクリップス1」

松浦亜弥「松浦シングルMクリップス1」2002年
モーミング娘。「LOVEマシーン」で全日本を制圧した時期に、そのハロプロ一派のアイドルとして14歳で芸能界デビュー。そのキャリアの最初期2001〜2002年のシングルMVをまとめたDVDミドルティーンにして、この完成度はスゴイ!13歳の茶髪ゴマキがやや荒削りのままモー娘。のフロントを務めてく一方で、つんくさんはじめアップフロント幹部が、彼女はグループの一員ではなく一本立ちでイケると判断したのは、ひとえに彼女の才能がスゴかったからだと思う。ボクは当時の彼女を「アイドルサイボーグ」って呼んでたもんね(野村萬斎「狂言サイボーグ」みたいな感じね)。確かな歌唱力とダンスセンス、親しみやすいルックス、多彩な表情を状況に合わせて的確にくるくると変える賢さが完璧すぎる。ここでは初期の代表曲「YEAH! めっちゃホリディ」「LOVE涙色」などのビデオを収録。200円の30%オフで購入。
●もう時間も経ったので、ある事件を、思い出として語る。
●デビュー1年目の頃だと思う…たしか日比谷野音の野外ステージで彼女のミニライブがあった。多くのファンの前、ピンク(または赤)のチューブトップを着た彼女がサービス満点のはしゃぎぶりでおもてなし。しかしあまりにも彼女が元気よくピョンピョン跳ねるもんだから、なんとこのチューブトップがすとんと落ちてしまって、中身がポンと丸見えに!一部の情報では全部が見えちゃったという話にもなったが、ぼく現場にいたのでちゃんと証言しますけど、肌の色と同じベージュのプラジャーが見えただけ。でも14〜15歳の女の子だったら、数百人の前でそんなことヤラカシたら恥ずかしくてその場で座り込んじゃったりしても不思議じゃないじゃん。なのに彼女、ダンスに夢中で一瞬その事態に気づきもせず、気づいた瞬間も「あ!やっちゃった!テへ!わたしってドジっ子!」みたいな満面の笑みで、振り付けの中で落ち着いてチューブトップをグイッとズリ上げ直す。その爽やかな処理にボクは「この子スゲえ!完璧じゃん!この清潔感ある手際の良さ、まさしくアイドルサイボーグ!」と感動したものだよ。この日のライブはテレビ局の取材もいっぱい入ってたけど、ワイドショーではこのハプニングは一ミリも紹介されなかった。ま、そりゃそうか。14歳の少女をわざわざ電波で辱める必要はない。一部のファンだけが目撃した出来事。
●今では立派なアラサーのママになって落ち着いた家庭生活を送っているのでしょう。辻希美ちゃんのように私生活をビジネスする必要もないようだし。おしあわせに。

安田レイ「BEST OF MY LOVE」

安田レイ「BEST OF MY LOVE」2013年
●このシンガーは、キラキラハウスユニット・元気ロケッツのボーカリストとして活動してた人。ただ、元気ロケッツ「LUMI」という架空のキャラクター(30年後の未来の17歳、宇宙生まれで地球を知らない)を設定、ライブもわざわざホログラム映像を用いていたり、MC部分は声優さんをつかうなど、まるで今でいう初音ミクみたいなバーチャル存在を目指したもんだから、生身の彼女の存在は極力薄められてしまっていて。まー彼女はまだ当時13歳だったし、突き抜けたハウス感は気持ちよかったし。結果的に元気ロケッツは今でもボクは好きだし。そんなわけで実名の彼女としては更地からの再出発だよ。この二回目のデビューシングルは、レコミンツじゃなくて、SHOP MECANO の方で300円で買った。
「中の人」を卒業して再デビューした彼女のことは、その当時から即座に気になった。けど…軽く視聴したらちょっと違うというか…あれれ、普通のシンガーになっちゃったぞ元気ロケッツと制作陣は変わらないはずっぽいのに、着うた世代の和製R&Bみたいな、西野カナのエピゴーネンみたいに聴こえちゃって。きっと声が変わっちゃったんだ。元気ロケッツ=2006年から、安田レイ=2013年までで、女の子って激変するよね。子供から大人の女性になっちゃった。そのギャップにボクがまだついていけてない。今回、少々時間をかけてやっと買ってみたけど、やっぱもうちょっとハウシーな方がたのしいな。

LITTLE TEMPO「MUSICAL BRAIN FOOD !」

LITTLE TEMPO「MUSICAL BRAIN FOOD !」2003年
●日本が誇るルーツレゲエ/ダブバンドもこのお店で買ってみた。土生 "TICO" 剛が演奏するスティールパンが聴きどころのはずなんだけど、このアルバムにおいては、エキゾチックなオリエンタル風味が漂うフシギな質感が耳を奪う。なにしろ一曲目のタイトルが「MOROCCO」リアルにモロッコ旅行に行ってきたボクにとっては、あの国に流れていた独特のグルーヴを連想させるえも言われぬ芳香がプンプンしてきて。…でも、あの国で大量に買ってきたCDたち、完全に消化不良で全然聴けてないんだよね。そもそもジャケの文字が100%アラビックで、英語表記がゼロって段階でくじける…。