宇多田ヒカルが横浜アリーナのライブを USTREAM で生中継!
●つーか、技術革新過ぎる…。宇多田級のアーティストがフルパワーのステージパフォーマンスを生で配信するなんて。全世界向けにネット配信&各地の映画館にも中継。彼女のMC「地球を意識していきます」だって。コレは重要な事件だと思います。2010年ってスゲエ年だよ。

●だからね。今日はヤヤコシイ話ですけど、音楽ではなく、音楽を囲む状況についてチョイチョイ注目しつつ、「2010年にはナニが起こったか」というコトを、まどろっこしく書いてみたいと思うのです。…失敗するかも知れないけど。

●さて。準備はいいですか。ムダなハナシですよ。


ボクの中での音楽史的トピックとして、今年は特別な事件が3つ起こりました。

1、神聖かまってちゃんのブレイク~メジャーデビュー。
ニコニコ動画を駆使した自作自演プロモーション&楽曲ゲリラアップロードでカルト的存在感を熟成したこのバンドの存在を、ボクは当初まったく察知できませんでした。彼らの楽曲配信は2007年に始まってるらしいけど、ボクが彼らを知ったのは今年5月の iTMS「今週のシングル」「ロックンロールは鳴り止まないっ」を無料ダウンロードした時でございました。
●楽曲自体のインパクトもさることながら、彼らのユニークな活動スタイルが衝撃だったのです。ライブから路上パフォーマンスまでをリアルタイムでネット配信し、楽曲をフリーで公開視聴させてしまう彼らは、貨幣経済流通をすり抜けて自らのバンド存続ビジネスモデルを自爆させてしまうテロリストのようにも見えました。音楽コンテンツに対してはそれなりの対価を支払うことを当然と考えていたボクには、彼らの楽曲の無料供出は常識ハズレな蛮行に思えた。このような自己演出が新時代のロックンロールだとするならば、ボク自身のロックンロールは完全に鳴り止んでしまったとさえ考えましたですよ。いかに自分がパッケージメディアの呪縛にドップリ浸かってるか、既存のコンテンツ流通のイデオロギーに骨の髄まで支配されているか、トコトンまで思い知らされ、そんでトコトンまで凹まされた。ホントショックだった。
ニコニコ動画のアカウントを作ったのも、神聖かまってちゃんをもっとたくさん聴きたいと思ったから。遅いよね…オールドタイプ。ソコに踏み込んでボクはやっと初音ミクのシーンに接触することができた。いやいやマジで後手後手。こんなコトを告白するのはマジで恥ずかしいが、敢えて告白します。ボクの個人的2010年は神聖かまってちゃん経由のニコニコ動画接触元年であり、初音ミク元年でもありました。
●その後、雑誌「クイックジャパン」7月号で神聖かまってちゃんは表紙&巻頭特集を飾る。90年代サブカル雑誌が00年代テレビ/お笑い雑誌に変貌した結果距離を置いてた「クイック~」をボクは数年ぶりに買って読みました。今年3月にリリースされていたミニアルバム「友達を殺してまで。」もこのタイミングで聴いたね。今月にはメジャーレーベル(ワーナー)からフルアルバムをリリースすることになってる。コレはコレで期待大。ニコ動でメッチャ視聴した「美ちなる方へ」も収録されてるし。ブレイクしていくのだ。
●とはいいつつも、彼らのようなバンドがパッケージメディアの中で、果たしてスリリングに響くのだろうか?ソコは非常にギモンだ。彼らはネット上で自らが紡いだ物語の中にいるからこそ、大きく強く響くのかも知れない。実はそんな違和感を感じ続けている。彼らにナニが起こるのか、本当に予想がつかない。

2、DOMMUNE の出現。ダンスフロアの一体感を疑似体験。
USTREAM の超優良コンテンツとして巨大な存在感を放つ DOMMUNE も実は今年3月からスタートしたプロジェクトだ。キャパシティたった50人の小箱スペースから濃厚なDJプレイを週末を除いて毎日発信し続ける継続力と企画力。4月にはデトロイトのテクノゴッド DERRICK MAY をこの超小箱に召喚、でもストリーミング視聴者は一万人超えという伝説を打ち立てた。JASRAC との包括契約を取り付けた点でも革新的だ。DJ機器のパイオニアがスポンサードについていることで自律的なビジネスにもなっている。結果我々はこのコンテンツを無料で享受できる。ワオ!
●この DOMMUNE の主宰者が宇川直宏さん。映像作家、VJ、文筆業、メディアレイピスト(←高城剛級にウサン臭い肩書き)と幅広い活動を90年代から展開してきたこの人は、ボクにとってはスノッブなサブカル雑誌「スタジオボイス」の常連寄稿者という認識だった。その「スタジオボイス」が去年夏に休刊した時には「90年代サブカルもとうとう息の根が止まったのね~アソコにいた人たちも忘れられていくのね~」なんて思っていたのに、宇川さんはこの DOMMUNE で大逆転の大復活を遂げてしまった。2010年において最もエッジーな場所を作り出したのだ。
DOMMUNE がボクにとってエキサイティングだと思う理由は、ツイッターのタイムラインを併設させることで、コンテンツを多数の視聴者で共有している感覚を味わせる点だ。コレをソーシャルストリームと呼ぶのかな?ともかく、コドモができてから久しく夜のクラブ活動を自粛してたボクに、ダンスフロアの一体感を疑似体験させてくれる非常に小粋な演出だった。実際ボクは DOMMUNE のタイムラインに合流したいタメだけにツイッターアカウントを作ったし、そこにコメントを投げ込むことで何かを共有できるような気持ちになった。同じダンスフロアで踊る仲間たちという共有意識。

3、そして今日の宇多田ヒカルライブ。
●彼女の今夜のライブを視聴した人数は10万を超えたという。USTREAM では様々な実験や企画がコレまでも行われてきたことだろうけど、規模の大きさという意味ではブレイクスルーな瞬間に到達したのでは?と思えるディープインパクトになったと思う。
●奇しくも、昨日は市川海老蔵が暴行事件を受けての記者会見を開いた。ニコニコ生放送がコレをリアルタイムで中継、視聴者は10万人に到達したという。これも1つのディープインパクトだ。……フジテレビや日本テレビは自社で運営する衛星波&CATV向けチャンネルで生中継を行ったらしい。が、基本的に地上波放送はフツウにコレをVTR収録し、編集の上で翌日の情報番組でアウトプットしていった。ボクは先日の sengoku38 尖閣諸島漁船衝突映像流出も、一連の動きに絡めて考えている。巨大マスメディアがネット上の事件を後追いする状況、またはマスメディア不在で事態が進行する状況。既存メディアがスピードでネットに負けていく状況。コレが大きな現実になってきた。時代の大きな節目が到来している、そんな感覚をヒリヒリ感じている。
●ボクにとって、USTREAM、YOU TUBE、ニコニコ動画、ツイッターが渾然一体で作り出す今年の状況は、アナログレコードからCDにメディアが転換していく80年代中盤に匹敵するほどの、時代の切断面になっていくように思われる。
●過去に音楽を囲む外部状況でこれほどスリリングな状況があっただろうか?渋谷系~外資系CDショップの台頭、TSUTAYA &レンタル産業の巨大化、通信カラオケの高機能化、フジロックを発端とするロックフェスブーム、着メロ着うた着うたフルのような携帯経由の音楽流通、ナップスターに始まる P2P ソフトの出現と違法ダウンロードの横行、MYSPACE、MIXI などなどのソーシャルネットワークサービスの普及、アマゾン&iTMS&iPodの登場……。音楽への接触様式を変える事件はこの20年間様々なモノがあったと思うし、ソレゾレが重要な意味を持っていると思う。しかし、ボクは今年ほどジブンの価値観を揺さぶられたコトはなかった。


まとめ。エッジーなコンテンツが無料で転がっている。結果えぐり出されたボクの強迫観念。0
神聖かまってちゃんしかり、初音ミク楽曲しかり、DOMMUNE しかり、そして宇多田ヒカルの活動休止ライブですらが、全て無料でネットに公開されている。しかもそれは個人所有という形態をスルリとくぐり抜け、むしろ不特定多数の共感という形でフワフワと存在している。一方でネット上のリテラシーがかなり訓練されていなければ、そのヤバい出来事に到達できない。宇多田のライブ生配信もボクはツイッターで存在を知ったのだ。現在起こっているシーンは、貧富の差なく誰もに開放されている。コレは素晴らしいコトだ。だが望む情報に到達するためのテクニックを強く要求するのも1つの現実。受動的な消費者であってはイケナイ。能動的にシーンに関わる姿勢を問われている。ネットはとりもなおさずコミュニケーションメディアであり、一方向な受信体勢にある人間には十分な恩恵をもたらさない。
●この状況は、ボクが胸の奥に根深く巣食わせている強迫観念のカタチをあぶり出した。ボクはカネと収集欲をコツコツと積み上げれば、古今東西の音楽をアーカイブし切れるだろうという貪欲な願望を握りしめていた。出来れば自覚したくはなかった無意識下の醜い欲望であった…しかし音源枚数7000超で部屋がカオスになっている我が家の惨状は、そのオブセッションをドロリと具現化してたということか。変化する状況に対応し切れないボクの音楽中毒者としての本性が、腐臭を伴って見えてきたと感じたのだ。
●そして、シーンに対する態度を明確にせよ、ツイッターのように名前の見える人々と接触してシーンに貢献しろと問われているような気がする。受動的消費者としての安全地帯に安住しようとすれば、それなりの薄いコンテンツにしか到達できない。必要があれば、アーティストをスポンサーすべき場面すら出てくるのかも知れない。ボクのように全方位的関心で音楽を聴いている姿勢は、淘汰されるかも知れない。価値観が揺さぶられている。

次のディケイド、2010年代の予感。
貨幣経済流通の外でムーブメントが発生する。
音楽の所有の概念が変化する。
本当にオモシロい場所に到達するためには、ネットコミュニケーションを尽くしてシーンの当事者になる、シーンに貢献する覚悟が必要になる。



●やべ。失敗したかも。



●参考文献的なモノ。

未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか

津田大介/牧村憲一「未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか」
●70年代から現代に至る日本音楽産業史をキチンと踏まえてるトコロが、地に足着いた視座を形成してくれているし、実にベンキョウになる。タダの楽天的ネット礼賛論になってないトコロが安心。でも読む人が読むと、既存産業否定、ネット文明全能ってトーンでとっちゃうかも知れない。

「クイックジャパン」90号

「クイックジャパン」90号「神聖かまってちゃん国民的ロックバンド宣言」
●今回の文章じゃ全然触れませんでしたけど、神聖かまってちゃんのメンバーたち、特に頭脳であるの子くんがスンゴく濃ユイキャラであるコト、それを持て余し切りまくって結果としてこんな音楽が出来ちゃったんです的なバックグラウンドをつぶさに描写しようとしてて、読み応えありまくりです。

韓国が警告するメディア・ビッグバン

キム・テクァン/イ・サンボク「韓国が警告するメディア・ビッグバン」
●大学時代の恩師にいただいた本です。2005年段階での韓国のメディア状況を、既存マスメディアの側から描く内容。簡単に日本と韓国を比較は出来ないが、IT先進国として一歩先を先行してた韓国は、新聞/テレビ/出版など既存マスメディアがネット革命の前に大混乱に陥ったらしい。ややペシミスティックすぎる気分にあてられて、読んでて気分が悪くなりました。日本でも起こって不思議じゃない混乱だからね。…帯コメが猪瀬直樹さん…別の場面で今ホットになっちゃってる人だ。


神聖かまってちゃん「友達を殺してまで」

神聖かまってちゃん「友達を殺してまで。」2010年
●以下に動画を貼ります。



神聖かまってちゃん「ロックンロールは鳴り止まないっ」

「昨日の夜 駅前TSUTAYAさんで 僕はビートルズを借りた セックスピストルズを借りた
 ロックンロールというヤツだ しかし、ナニがいいんだか全然わかりません!
 夕暮れ時 部活の帰り道で またもビートルズを聴いた セックスピストルズを聴いた
 ナニかが以前と違うんだ MD取っても イヤホンとっても なんでだ全然鳴り止まねえっ!」




神聖かまってちゃん「美ちなる方へ」

「出かけるようになりました 出かけるようになりました」

…からっぽな郊外都市が彼らのバショ。そこで生まれる狂気。ひきこもり。脱出?

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