2011.03.10 落語 ROCK ME !

「スゴい落語は、サザンのライブに匹敵する熱さがある」という。
●少し前のハナシ。音楽業界の人と食事する機会があって、楽しい話をした。その人は5000枚のアナログを保有し、その重さでリアルに床が抜けた経験を持つほどのロックフリーク。そんで時間を作っては、アメリカやヨーロッパへ飛んで海外の大物アーティストの巨大公演を生で見てくるほどのアグレッシブな人。ストーンズエアロスミスも世界各地で何回も観ているという。音楽トークがひとしきり盛り上がったその後に。
●この人にはもう一つの趣味があるという。それが「落語」「落語の寄席ってのはね、東京なら毎日必ずどこかしらでやってるんです。調べればいくらでも出てくる。だから時間ができたらサッと寄席に行ってみて下さい。ダマされたと思ってね」ロックと落語、これは簡単には結びつかない。なんで落語なんです?「最初はボクも人に薦められたんですよ。で、行ってみたらスゴかった。ロックバンドのコンサートと同じモノを感じたんです。スゴいモノはね、サザンオールスターズのライブに匹敵しますよ。もうね、毛穴が開くのがわかる!」えーサザンと同じなんですか!スゴい比喩ですね!
●そっかー落語か…。一度行ってみようかな…。などと思いつつもなかなかそんなチャンスは見つからない。我が街シモキタザワでは、立川談笑さんとかが北沢タウンホールで公演をしたりしてるんだけど、チケットも入手困難くさくて。むー。この時はそこで止まってしまった。

先日。カイシャで隣のデスクに座る先輩が落語のCDを。
●9月以降カイシャでデスクを並べてる先輩とは、オリコンデータを毎週チェックしながら注目のジェイポップアーティストを品評し合う仲。オタクとは完全別目線のマーケティング観点で AKB48 の動きとかセールス枚数を細かくチェックするこの先輩と話してると実にベンキョウになる。ことお笑い芸人やアイドルのマーケティングに関してはメチャメチャアンテナが高い。重盛さと美のブレイクを一年以上前から予言してたもんね。
●そんな先輩が4枚のCDを握ってデスクに戻ってきた。今度はナニを聴いてるのかなーと思ってそのCDを覗き込むと、それは意外なことに落語のCDだった!へー先輩、落語も聞くんですか?「お、オマエ興味あんの?」いやーちゃんと聞いたコトないんですが、以前人に薦められて、気になってたんです。「よし、じゃあこの4枚オマエに貸してやる!いいかこの順番で聞くんだぞ…」ワンポイント解説まで添えて、先輩はCDを貸してくれた。そんでボクはコレを iPod に格納して、先輩おススメの落語を、イロイロなトコロで聞き耽っているのであります。

桂文珍「らくだ 朝日名人会ライブシリーズ8」

桂文珍「らくだ 朝日名人会ライブシリーズ8」2000年
「コレを一番最初に聞け。一番の初級編だ。古典を題材にしながら、ココまで崩してイイんだ~、と思うほど大胆に現代風に解釈してるトコロがスゴい。だからスゴく取っ付きやすい」文珍師匠なのですから、当然上方落語。しかし滑らかで陽気な関西弁は、ダウンタウン以降のお笑いが骨の髄まで染み込んだ現代感覚と完全に密着してて、100%関東育ちのボクでもフツウに笑えてフツウに楽しい。テンポの良さに、散歩で近所をフラフラしながら最後まで一気に聞き入ってしまった。

柳家小三治「落語名人会29 らくだ」

柳家小三治「落語名人会29 らくだ」
「そんで敢えて同じ演目を聞き比べてみろ。コレが笑えない。始めに聞いたら絶対退屈に思える。だがコレが古典だ。今の感覚だと馴染めないが敢えて聞け」柳家小三治さんという人は、ビッグネームすぎてボクには全然イメージがわかない。マクラの部分で出てくるエチオピアでのバイクツーリングの話を聞くと、ジャケ写の気分も含めて粋なオジさんなんだなと思える(ウィキで調べたら、750ライダーでした)。……ただ、たしかに渋いなあ。文珍さんに比べて展開が遅いし、楽しげな気分がない。お客さんの笑いも部分部分に留まってて気分が乗らない。本来のバカバカしい話が、少々押し付けがましいトーンで聞こえる。

柳家小三治「落語名人会40 鼠穴」

柳家小三治「落語名人会40 鼠穴」
「でもな、コレがスゴい。古典のルールに則って、じっくりイイ話を聞かせてくれる。落語はただ笑うだけじゃないんだ。この人がスゴいってのがコレでスグにわかる」聞いていて気持ちがキレイになった…通勤電車の中で聞いていたにも関わらず、話のディテールに気持ちがスッとノメり込み、会社で待ち構えるヘドが出るほどの些事に対するココロのコワバリを、さっと忘れさせてくれた。話の筋にビックリするほどの展開があるわけじゃない、ああやっぱりそうなっちゃうのねあららーっていう先読み可能なストーリーなのに、登場人物たちの感情にピットリ寄添える気持ちになれた。うーん実にチルアウト。テンポ感でイタヅラに速度を上げず、訥々とジックリとペースをしっかりと掌握して気分を熟成してくる感覚は、極上のアコースティックライブを目の前で観てるかのような臨場感。落語、コレは素晴らしい、と素朴に感じてしまった。江戸時代のウンチクについても子細に解説してくれるのもウレシいと思った。

古今亭志ん朝「落語名人会13 お直し」

古今亭志ん朝「落語名人会13 お直し」1980年
●前述の柳家小三治師匠の音源がいつの時代の録音かよくわからないけど、多分このCDと同じ80年代の頭なんだろうなと思う。ポストパンクの時代。先輩に言わせれば「最後にコレを聞け。古今亭志ん朝は天才。古典のよさと、現代感覚が同居してる。もう完璧だな。でもこの人は早くに死んじゃうんだけどな」2001年に亡くなってます。さて、内容と言えば勢いのイイ江戸弁が気持ちよくストトーンと響き、メリハリの利いた展開が実にキャッチー。設定が「廓話」つまり吉原遊郭の話題というメチャ古典的な題材なのに古くささを感じさせない。録音自体も30年以上前なのに、なんとまあライブリーなこと。笑う所はアッケラカンと笑わせてくれるし、話のトーンもバカバカしいことなんだけど、夫婦のつながりの温かみをチョッピリ心の中に残してくれる後味のよさがタマラナイ。

結果、落語にやられました。スゲエな、日本にはこんな娯楽文化がフツウに継承されてるんだ。もっと注目しないと。それと、CD4枚コンボ攻撃を紹介してくれた先輩のカッコよさ。あーこういう趣味人でありたいね。印象とかウンチクじゃなく、文脈でモノを語れる。そこまでコンテンツを愛したいね。

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