●あの地震が発生してから、もう数ヶ月が経ったような気分だ。

疲れた……。

●木金を徹夜で働き、終電でやっと家に帰りついた後。リビングのこたつに入った瞬間、そのまま動けなくなって失神するように眠ってしまった…。こんなにボロボロになるまで追いつめられたのは何年ぶりのコトだろう。風邪をこじらせて声が潰れた。咳と悪寒が止まらない。
●というか、体力よりも、精神的にエグラレた気分だ。正直言って「恐い」と思った。日曜日が終わる今、やっと気持ちが落ち着いてきて、ブログを更新する気力が出来た次第だ。


結局、地震発生の緊急対応に組み込まれて、ボロボロになるまで働きました。
●全く予想のつかない方向へどんどん進展していく状況。被災地から届く陰惨な情報。ポンポンと爆発する原子力発電所。続く余震。そしてなによりも辛かったのは、大量の情報に翻弄されるコト。マスコミもネットも、奇妙な熱に浮かされたように、ヒステリックな叫びを上げてる。震災直後にはその安定力が頼もしかったツイッターは、今やデマゴギーの絶叫の場所になってしまった。いくつかのデマにはホントに苦しめられた。果たして自分の対応が正しいのかどうか自信も持てず、すぐに職場を放棄して家族に会いたいと思った瞬間も。

ワイフもすごく消耗していた。ボクが徹夜勤務から帰ってきた時は、あまりに顔色が悪くてビックリした。コドモのクラスでは既に20%以上の生徒が疎開して教室から姿を消した。ママ友から渾身の善意でデマメールが届く。開店前からスーパーには行列ができて、在庫切れで早く店が閉まる。あまりの品不足に感覚がおかしくなる。ココは被災地じゃないのに。フツウの場所でフツウの暮らしをフツウに過ごそうとするコトが、間違ってるのか?


●そんな時、自分の正気を保つために聞いてた音楽。

FRIPP  ENO「NO PUSSYFOOTING」

FRIPP & ENO「NO PUSSYFOOTING」1973年
KING CRIMSON の頭脳 ROBERT FRIPP ROXY MUSIC の奇才BRIAN ENO がタッグを組んだコラボアルバム。20分前後の長尺楽曲が2曲だけ収録された偏差値の高いプログレ実験。ENO が構築するテープレコーディング音響に、FRIPP がギターで淡い輪郭線をなぞる。ビートもリズムもない空間を、エレクトロニカな響きがただひたすら漂うだけのアンチクライマックスな抽象芸術。その後 ENO が打ち立てた「アンビエントミュージック」という概念を先取ったコンセプト。ただ、それが発表から40年近く経った現在においてどれだけ刺激的かというと、実はそうでもないかも…という意味で過小評価してた作品。
●でも、この音源が、震災に始まる激しい周囲の雑音をシャットアウトしてくれた。ENO が用意した音響風景に、FRIPP がギターでジックリとインプロヴィゼーションを展開していく。感性と感覚を研ぎすまして、今ココで選び取るべき音を即興的に鳴らしていく。ボクは目をつぶってこの音に集中し、今ココで選び取るべき自分の行為をジックリ見つめる。FRIPP のギターは張りつめた糸のように緊張している。ボクは今慎重に自分の歩くべき道を、綱渡り芸人のように探り出さなくてはならない。すごく静かな場所に意識を持っていく。
音に合わせて深呼吸する。肺のどの場所に空気が入っていくか観察する。鎖骨の裏、肋骨の端、胸骨の中、肩甲骨のそば…。肩甲骨から呼吸が抜けてソコから羽根が生えていくイメージを作る。雑音と不安をココロとアタマから閉め出し、自分の場所を確認する。ブレるな自分。不安に飲まれるな。今やれるコトを真心込めてやりきれ。


NEIL YOUNG「LIVING WITH WAR」

NEIL YOUNG「LIVING WITH WAR」2006年
●このアルバムは、息子ブッシュが大統領二期目に入ってイラク/対テロ戦争をエスカレートさせていく最中にリリースされた、ド根性の反戦ソング作品集。直球過ぎる風刺が、猛烈な怒気を込めた無骨ギターに乗せてこれでもか!とぶつけられる。100人もの大コーラス隊を背負いながら、シンプルなメッセージを繰り返し繰り返し叫ぶ YOUNG。勢いに任せて書かれた荒削り加減(レコーディングにかけた時間はたったの二週間)が、その直球ぶりに磨きをかける。
「I'M LIVING WITH WAR EVERYDAY. I'M LIVING WITH WAR IN MY HEART EVERYDAY. I'M LIVING WITH WAR RIGHT NOW」毎日戦争と共に生きている、心の中で毎日戦争と共に生きている。たった今戦争と共に生きている。そう、震災でボクらの生活は変わった。これは戦争だ。心の中の戦争だ。生きるための戦争だ。何かのために戦わなくてはならない。大切な何かを守るために戦わなくてはならない。混乱と不安に打ち勝ち、ヒステリーを押さえ込め。状況に翻弄されない、強い足腰を準備しろ。60年代から活躍するこのド根性ロックオヤジのパワーを、自分の肝っ玉に取り込むために、貪るようにこの音源を聴いた。爆音ギターの迫力に合わせて、腹式呼吸を繰り返せ。そして、下っ腹、丹田に熱を蓄積しろ。戦う勇気を奮い起こせ。
●このアルバムの最後の曲は「AMERICA THE BEAUTIFUL」。楽器演奏なし、コーラス隊の合唱だけで、アメリカの美しさを歌い上げる。YOUNG は決してアメリカに失望していない。ボクも故郷日本を諦めていない。多くの人々が東北地方の被災地に様々な形で支援の手を差し伸べ、放射能の恐怖を乗り越えて勇敢なアタックが原発の前で繰り広げられている。ボクのしている仕事が何の役に立つのか皆目見当がつかないが、とにかくやるコトをやる。迷ったら負けだ。ノイズに飲まれるな。丹田に熱を貯めて、目の前の難局を乗り越えろ。


LILAC TIME「ASTRONAUTS」_

THE LILAC TIME「ASTRONAUTS」1991年
●80年代後半から活動しているイギリスのネオアコバンド。とはいいつつ、90年代初頭のマッドチェスター/インディダンスの気配もホンノリ忍び込んでて、ラーガロックなサイケ風味がこくまろな隠し味になっている。90年代の名門インディレーベル CREATION の主宰者 ALAN MCGEE にフックアップされた時期の作品。ちなみに同時期の CREATION はまさに黄金時代で、同じ年に MY BLOODY VALENTINE「LOVELESS」PRIMAL SCREAM「SCREAMADELICA」をリリースしている。まーそこまでの過激なスタイル革新はナイが、スゴく慎ましやかで奥ゆかしいメロディとリリカルなギターサウンドがココロを落ち着かせてくれる。ウィークデイは前述二枚で神経を研ぎすましていたけど、週末はこの1枚で神経を弛緩させていた。こわばった筋肉を一本一本丁寧に緩めていく。


●つーか、マジで震災以降はホントに音楽に助けられた。


●カゾク四人で回転寿司を食べようと思って歩いたシモキタザワの街は、節電モードで商店街の照明が落とされ、不思議な奥ゆかしさを醸し出してた。そしてポッカリまんまるお月サマ。



●不安を掻き立てるニュースを避けるために、ワイフがDVDを借りてきた。

DVD「若草物語」

●DVD「若草物語」
ウィノナ・ライダー主演の1994年版。子役としてキルスティン・ダンストまで出てる。このタイミングで「若草物語」を選んでくるワイフのセンスは絶妙だと思った。アメリカ南北戦争の最中、慎ましやかな生活を地道に営む四人姉妹の物語。家族を大切にしたいと思った。娘ヒヨコが楽しんでくれたのがウレシかった。


今週会った人が言ってた。今の世間に飛び交っているのは「感情に乗った善意」だと。
●誰もが「正しい」と思って発言している。誰もが「善意」で発言している。ネットでもマスコミでも同じ。反原発でも親原発でも同じ。でもソコには過剰な感情が乗っかり過ぎている。冷静とは言えない。気持ちや思いを伝えるコトが、良い結果を生むとは限らない。敢えて黙るコトが、良い結果を生むコトもある。だからボクはツイッターでもフェイスブックでも発言をヤメた。ブログもしばらく放っておいた。ボクは今、地震や原発のコトを語る気にはなれない。それにはまだ早い。準備が整ってない。ボクはボクの日常を見失わないようにして、フツウに暮らしたい。


●祝日であるはずの今日も、シッカリと仕事だった。
●疲れが抜けてないのか、朝の電車で乗換えに2回も失敗し、スゴく遠回りしてやっとの思いでカイシャについた。ダメだな…ヘトヘトだ。そもそもこの記事も下書きの状態を間違って公開して一日無惨な文章を晒してしまった。ふう、とにかく少し休みたい、本当の意味で。

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