●今日は80年代から90年代、そんで00年代までにまたがる形で、「ミクスチャーロック」と呼ばれる分野のおハナシをしてみようと思います。

「ミクスチャーロック」ロックに対してファンク、ヒップホップなどの異種交配をしてみせた表現…そもそもその誕生の瞬間から異種交配で進化を続けてきたロックですが、80~90年代のアメリカにおいては一番の触媒になりえたのがヒップホップだったようです。さしあたり、RED HOT CHILI PEPPERS、そして RAGE AGAINST THE MACHINE という二つのバンドを軸にしてみます。

この前、テレビで映画「BECK」の放送をやってたでしょ。コレがキッカケ。

テレビで映画「BECK」の放送

●ボクは劇場で見てたのでスルーしてましたけど…意外なコトにウチのコドモたちがメチャ楽しんでたらしい。ライブシーンでは画面の前でヒヨコ小学三年生はジャンプしとったという。へー。ヒヨコのクセしてロックバンドに反応したのね。
●ヒヨコは、誰が好きなの?「タイラさん!」向井理が演じたベーシストですね。「でもさ、なんでハダカなの?」ハダカだよね確かに。アレは RED HOT CHILI PEPPERS のベーシスト FLEA を参考にしてるのよ。

RED HOT CHILI PEPPERS「IM WITH YOU」
RED HOT CHILI PEPPERS「I'M WITH YOU」2011年
●ということで、娘ヒヨコをヒザの上にのせて YOU TUBE で FLEA のパフォーマンスをチェック。最新アルバムのリード曲「THE ADVENTURE OF RAIN DANCE MAGGIE」のプロモでも、FLEA は上半身ハダカ&ハダシでファンキーなプレイを繰り広げております。ボーカル ANTHONY KIEDIS もマッチョでよいね。THE BEATLES「GET BACK」の故事にならった屋上ゲリラライブ。このオッサンたち興が乗るとパンツも脱いでポコチンをクツシタで隠すのよねー、と教えたらヒヨコ腹ヨジラセて爆笑してました。
●ギタリスト JOHN FRUSCIANTE が脱退して、なんだかスケールダウンな評価が漂う新作…ジャケが地味だからより一層テンションサガって見える。でもね、前作の2枚組が冗長でしんどかったのに比べれば、ズッとタイトに決まっててスゲエ楽しめる内容になってます。彼らなりの枯れ寂びるロックがなんともジューシー!枯れ寂びてるのにこのファンク高密度なドライブ感!最近ヘビロテです。

RED HOT CHILI PEPPERS「THE UPLIFT MOJO PARTY PLAN」

RED HOT CHILI PEPPERS「THE UPLIFT MOJO PARTY PLAN」1987年
●四半世紀も前にもなります、彼らのサードアルバム。ちなみにファーストアルバムは1984年まで遡る…もう30年近い活動歴を誇るバンドなのですよ。セカンドではファンク大統領 GEORGE CLINTON をプロデューサーに迎え、本格的なファンクを導入、白人としてのラップのスキルも当時としてはかなり進んだ印象でありました。彼らが登場した80年代のロサンゼルスでは、こうした文化交配の気配が濃厚だったのですね…ミクスチャーロックの中でロス~アメリカ西海岸という土地は1つの重要なキーポイントになっている感じがします。
●このアルバムは、今回脱退した JOHN はおろか、現ドラマーの CHAD SMITH もまだ加盟していない時代。オリジナルギタリスト HILLEL SLOVAK が参加した最後のアルバム…この作品の後に彼はオーバードーズで亡くなります。直球で性急なファンクネスが若い!なにげに SEX PISTOLS BOB DYLAN のカバーが仕込まれてるのもオモシロい。この後のアルバム「MOTHER'S MILK」でバンドは一気にスターダムにのし上がっていくのでした。

RAGE AGAINST THE MACHINE「RENEGADES」

RAGE AGAINST THE MACHINE「RENEGADES」2000年
●さて、また映画「BECK」に戻ります。ヒヨコお気に入りキャラ2位は桐谷健太扮する千葉。バンド「BECK」のラッパー。このキャラ造形が参考にしてるのは RAGE AGAINST THE MACHINE のフロントマン ZACK DE LA ROCHA です。さあヒヨコ、このバンドも YOU TUBE でチェックしよう。ZACK は千葉よりもっとアタマがモジャモジャだよ、アフロ通り越してドレッドだよ。ヒヨコにわかる表現で言えば「パイレーツオブカリビアン」のジャック・スパロウ風だよ。
●1992年デビューと RHCP に比べればかなり後発のバンドだけど、やっぱりロサンゼルス出身。崩壊気味のジャンキー家庭に育った RHCP のメンバーとチト違うのは、幼い頃から過激な政治思想と異文化闘争に触れて育ったことか?ZACK はメキシコ革命に関与した芸術家を父に持ち、ギタリスト TOM MORELLO はケニヤ独立の闘士~初代国連大使を父に持っている。バンド自身も過激な政治的主張を扇情的なラップとファンキーなリフロックで展開。
●2000年に一時解散する際にリリースされたこのカバーアルバムでは、人種越境的で反抗美学を漂わす選曲で実に興味深い。オールドスクールヒップホップと初期パンクを取り上げて、彼らのルーツを的確に示す姿勢がシビレル。AFRIKA BAMBAATAA、ERIC B & RAKIM、EPMD…。そして MC5、THE STOOGES、MINOR THREAT、DEVO…。しかも全てが重低音が実にビターなファンクに仕上がっててたまらんですわ。終盤に大胆解釈の THE ROLLING STONES「STREET FIGHTING MAN」と、BOB DYLAN「MAGGIE'S FARM」が…原曲と全然違うぞ。プロデューサーに RICK RUBIN が参加…RED HOT CHILI PEPPERS もこの20年くらいは彼がプロデュースしてる。

AUDIOSLAVE「OUT OF EXILE」

AUDIOSLAVE「OUT OF EXILE」2005年
ZACK DE LA ROCHA が脱退してフロントマン不在となった RAGE AGAINST THE MACHINE は、シアトルグランジの大御所 SOUNDGARDEN のボーカリスト CHRIS CORNELL を招いて新バンドへと改組する。それが AUDIOSLAVE。これは彼らのセカンドアルバムで、やっぱりプロデュースは RICK RUBINRAGE AGAINST THE MACHINE + SOUNDGARDEN というアイディア自体が RICK のプランだったらしい。あ、ご存知かと思いますが、RICK RUBINBEASTIE BOYS のファーストも手掛けた男。
SOUNDGARDEN 自体は好きなバンドだった…NIRVANA のブレイクで注目を集めたシアトルグランジのシーンの中でも独自のポジションを保持してた貫禄ある存在だった…。けど、音楽の性質としては、ワリと70年代ハードロックへの古典回帰復みたいな姿勢で、ヒップホップやファンクを貪欲に咀嚼した RAGE AGAINST THE MACHINE のスタイルとはあまり関係がナイのよね。攻撃的でキレのイイ ZACK のラップが、粘り気のあるハードロックボーカルに置き換わって…正直フツウになっちゃった。ボーカリストを除いてバンドメンバーはみな同じなのに、こんなにもフツウになっちゃうなんて。2007年に RAGE AGAINST THE MACHINE が再結成すると、ほぼ自動的にコチラのバンドは消滅してしまいました。

JANES ADDICTION「RITUAL DE LO HABITUAL」

JANE'S ADDICTION「RITUAL DE LO HABITUAL」1990年
●このバンドは RHCP とメンバーの交換関係があったのでピックアップしてみました。80年代後半、ロサンゼルスのシーンから登場した彼らは RHCP とも近い存在で、FLEA が彼らのアルバムに参加することも。そんでこのバンドのギタリストが RHCP に参加した時期もあったのです。
●実は RHCP からギタリスト JOHN FRUSCIANTE が脱退したのは今回が初めてではありません。1992~1999年の間、彼は麻薬中毒とうつ病で活動ができなくなっていました。その中継ぎ的存在として、このバンドのオリジナルギタリスト DAVE NAVARRO RHCP に参加。… DAVE 在籍時の RHCP は賛否両論…本人たちの中でも微妙な評価。DAVE 参加のアルバム「ONE HOT MINUTE」は実際異色の出来映えであります。ボクはワルイとは思わないけどね。
●このバンドは厳密にミクスチャーロックとは言いづらいかもしれない。スタイルの交配という観点ではそれほど意識的ではない。しかし確かに独特のグルーヴを備えており、90年代のオルタナティブロックを準備した存在、という言い方は間違っていない。90年代の重要野外フェス「LOLLAPALOOZA」を主宰したことでも有名。

FISHBONE「TRUTH AND SOUL」

FISHBONE「TRUTH AND SOUL」1988年
RED HOT CHILI PEPPERS と同世代/同郷ロサンゼルス出身のミクスチャーロックバンド。けど、ミクスチャーとはイイながら、彼らはヒップホップを自分の音楽に混ぜ込もうとはしてない…実はラップを大胆に組み込んだ先駆は RED HOT CHILI PEPPERSRAGE AGAINST THE MACHINE であって、その後定型化するラップメタルもこの2つのバンド以降のおハナシになります。FISHBONE を始め80年代に活躍したミクスチャースタイルは、スカやレゲエ、ソウル、ファンク、そしてパンクをうまく加工したモノが主流。特に FISHBONE はボーカリスト ANGELO MOORE 自身が黒人であって、全裸でサックスを吹き鳴らす様がとてもカッコイイのであります。
●このヘンの時代(というか80年代)には「黒人がロックする」というコト自体が奇妙に見えるという考え方があって、わざわざ「ブラックロック」なんて言葉があったりもしました… LIVING COLOUR がそんな範疇に組み込まれてて、BAD BRAINS「黒人なのにハードコアパンク」という実に不思議な扱いを受けてました。そんな時代に、白人コミュニティで育った ANGELO MOORE は自分の肌の色(黒人)と音楽的嗜好(白人)のギャップに苦しみアイデンティティクライシスに陥った時期もあったといいます。ロックは「白人が黒人から様々な音楽的エッセンスを搾取するフォーマット」という側面があって、実はその逆「黒人が白人のエッセンスを搾取する」構造にはなりません。ELVIS PRESLEY の時代から今日まで、その傾向は変わっていないと思います。

FAITH NO MORE「THE REAL THING」

FAITH NO MORE「THE REAL THING」1989年
●ボクの覚えている限りでは、イチバン最初のラップメタルとして一発ヒットを放ったのがこの連中。「EPIC」って曲ね。そんでその中途半端なアプローチでスグに消えた泡沫バンド。ラップといえばラップ?89年だからそう聴こえたのであって、今の水準じゃキツいです。この時期のフロントマンは MIKE PATTON。その後様々なユニットで奇天烈なパフォーマンスを繰り広げて話題になるボーカリスト。

LINKIN PARK「METEORA」

LINKIN PARK「METEORA」2003年
RHCP RATM から出発したヒップホップとロックのミクスチャーが、ラップメタルとして高度な洗練を果たした1つの頂点がこの作品ではないでしょうか?メチャハードなリフロックに、専属のターンテーブリストがスクラッチを施して、ボーカルとラッパーが交代でスリリングにマイクをリレーする。KORN、LIMP BIZKIT90~00年代ニューメタルの流れがココでカチッとした様式に結実した感じがします。この後に JAY-Z との歴史的コラボアルバム「COLLISION COURSE」2004年、そして音楽的頭脳 MIKE SHINODA のヒップホップユニット FORT MINOR「THE RISING SUN」2005年のリリースが続きます。あ、ちなみに LINKIN PARK南カリフォルニアの出身ね。


ファンク/ヒップホップとは別系統のミクスチャーロック。レゲエ。

SUBLIME「40OZ. TO FREEDOM」

SUBLIME「ROBBIN THE HOOD」

SUBLIME「40OZ. TO FREEDOM」1992年
SUBLIME「ROBBIN' THE HOOD」1994年
ミクスチャーロックの文脈の中で、SUBLIME は忘れちゃイケナイ存在ですね。やはり南カリフォルニア~ロングビーチエリアから生まれたバンドで、レゲエとパンクの様式を独自の解釈で結びつけた重要な存在です。西海岸のカラリと乾いた陽気を連想させるリズムのヌケの良さ、サーフカルチャーやスケーターカルチャーとの相性の良さが滲み出るレイドバックな気分。RHCP もスケーターから支持されてシーンから登場した気配がありますからそういう意味では同じ土壌から発生した音楽。いわゆるスカコアとはまた別のスタイルがココからスタートしています。ご注目あれ。
●しかし、メジャーデビュー盤「SUBLIME」1996年がリリースされる直前、バンドのフロントマン BRADLEY NOWELL ヘロインのオーバードーズで死んでしまうのです。うわー残念。今回ピックアップした音源はメジャー以前のインディ音源。グダグダしたロウファイぶりがなかなかにビターなので、メジャー盤を聴いてもらってからコチラに入った方が無難な気がします…気合いの入ったパンク魂をお持ちの方はどうぞコチラから。

long beach dub allstars「wonders of the world」

LONG BEACH DUB ALLSTARS「WONDERS OF THE WORLD」2001年
●さて、重要人物をドラッグで失った SUBLIME のメンバーはその後どうしたか?地元ロングビーチエリアのミュージシャンを集めて新バンドを結成。これまた爽やかなレイドバックチューンを、WILL.I.AM をゲストに招いて発表したりしています。このスタイルの音楽は、SLIGHTLY STOOPID といったバンドもプレイしてます…そちらもチェックを。


●関連動画。




●RED HOT CHILI PEPPERS「THE ADVENTURE OF RAIN DANCE MAGGIE」
●夕刻のベニスビーチがイイ感じ。



●RAGE AGAINST THE MACHINE「RENEGADES OF FUNK」
●黒人文化史の偉人の名前が目一杯出てきます。ココに登場する固有名詞は全部ベンキョウしましょう。



●FISHBONE「FREDDIE'S DEAD」
●実は CURTIS MAYFIELD のカバーです。



●SUBLIME「WHAT I GOT」
●西海岸のワルガキどもの、ホノボノライフです。



●LONG BEACH DUB ALLSTARS「SUNNY HOURS FEAT. WILL.I.AM」
●西海岸のワルガキどもの、ホノボノライフ、その2です。



●RED HOT CHILI PEPPERS「WARPED」
●JANE'S ADDICTION のギタリスト DAVE NAVARRO 在籍時の RHCP のシングルです。異色なのは分かると思いますが、ダメってホドでもないでしょ?ただし、なぜか化粧が濃くなってるんだな。そこがキモイ。
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