ネコ

●道端を歩いてたら、ネコと目が合った。



今日は、ヘヴィメタル。BLACK SABBATH、新作。

BLACK SABBATH「13」

BLACK SABBATH「13」2013年
●おいおいおいおい!今このタイミングでなんでこんな昔のバンドなの?と自分でも思う。
●でも…。日本盤のライナーノーツの冒頭に書いてあった言葉にシビレタのだ。本作のプロデューサー RICK RUBIN がこの歴史あるバンドに向かって言った言葉だ。

「へヴィメタルのことは忘れてくれ。BLACK SABBATH はヘヴィメタルバンドではない。ヘヴィメタルなんかなかった時代に戻ってくれ」

●1970年にアルバムデビューした BLACK SABBATH とそのボーカリスト OZZY OSBOURNE は、その音楽でヘヴィメタルという様式を切り拓いたパイオニア的存在。そして今なお現役最前線でシーンを牽引する大御所だ。OZZY はロックフェス「OZZFEST」を主催、今年は幕張メッセでも開催され、大きな存在感を放っている。そんな彼らにヘヴィメタルを忘れろ、とはスゴい挑戦だ。
●しかし、彼らがヘヴィメタルの始祖ということは、つまり彼ら以前にヘヴィメタルはなかったわけで。RICK RUBIN の言いたかったことは、現代ヘヴィメタルのジャンル概念を吹き飛ばして、かつてキャリアを起こしたばかりの40年以上前の時に抱いていた若き初期衝動とふくよかな音楽の多様性をもって、この再結成に取り組んで欲しいというメッセージだったというわけだ。
●実際、このアルバムは非常に貴重なチャンスだ。OZZY OSBOURNE BLACK SABBATH のオリジナルメンバーとともにスタジオアルバムをリリースするのは35年ぶりだという。1979年に OZZY がソロ転向=バンドクビになって以来。BLACK SABBATH 自体は1997年に OZZY と再合流し、ツアー活動を行っていたが、スタジオアルバム制作はしていなかった。RICK RUBINBEASTIE BOYS を発掘し、SLAYER、METALLICA、RED HOT CHILLI PEPPERS、最近は ADELE まで手掛けた辣腕プロデューサーだ。これはオモシロいかも、と思った。
正直、ボクはヘヴィメタルが苦手だ。ただし、ヘヴィメタルじゃないと思って聴けば、この音源を面白がれるのでは?そう思って手をつけた。実際、この音楽は、いわゆるイマドキのヘヴィメタルやラウドロックとは一味違う。多分、だいぶフルクサイような気がする。疾走するスピードがない。分かりやすいサビもない。印象深いギターソロや技巧を凝らしたギミックが全くない。ないないない。
●一方で。ネバネバしたギターリフがグダラグダラととぐろを巻いている。そこにネバツく野太いベースライン。ドラムも独特のファンクネスが宿る。ちなみにドラムだけオリジナルメンバーの参加が叶わなかったので代打に RAGE AGAINST THE MACHINE のドラマー BRAD WILK が納まった。結果的に見事にファンキーだ。そこに低音で呪いの言葉を唸るように OZZY のボーカルが入ってくる。しかし OZZY が主役のバンドではない。ボーカル/ギター/ベース/ドラムが四輪駆動でドロドロの悪路をジックリと登坂していく感じ。テンポを早めたり遅くしたりしながら、ジャムの中でグルーヴが赤黒く燃焼していく。痛快なリフを周到に避けて、ワザとテンションを鬱積させて感情のボルテージを高めていく。コレがヘヴィメタル以前のヘヴィメタルなのか。イケル。

BLACK SABBATH「THE BEST OF OZZY OSBOURNE YEARS」

BLACK SABBATH「THE BEST OF OZZY OSBOURNE YEARS」1970-1975年
●となると、初期の BLACK SABBATH が聴きたくなった。このベストは OZZY 在籍時代の前半、バンドの全盛期をまとめた二枚組。デビュー当時ハタチそこそこのワルガキだった彼らのホンモノの初期衝動がココに収録されている。
●前身バンドではブルースロックをやってたはずの彼らだが、ドコかでナニかが本格的にメンドクサクなったのか、スコーンと底が抜けてしまった。模範とすべきブルースというフォーマットの枠がバコッと砕け散り、中から飛び出してきたのは悪趣味なヤリ過ぎ感。向こう見ずの若さが、オカネと刺激とオサケとクスリにブーストされて、タガが外れた凶暴なグルーヴを生み出した。どよよーんどよよーん!とただひたすらクダを巻く醜悪な轟音。空間をなます切りにする大味なリフの大循環。加えてオカルト趣味〜悪魔崇拝という悪フザケまで乗っけてきた。ファーストアルバム「BLACK SABBATH」は一日で全曲収録してしまったという…もう悪ノリ悪フザケの勢いだけだね。ナニかが決壊して溢れ出した真っ黒な毒水。
●二枚目のアルバム「PARANOID」は、マグレで出来た同名タイトル曲が高性能リフロックすぎて、その後のヘヴィメタルの原型になってしまったようだけど、ホントのトコロはアルバムを作ってたら3分ほど収録時間が余ってしまったので、その埋めグサに用意した小品のツモリだったらしい。「SNOWBLIND」は白い粉グスリでアタマキンキンになってるウタみたいだし、「SABBRA CADABRA」のダジャレ感覚もあんまりシリアスなモンじゃないよね。
●そんな野放図な混沌は、良識ある大人やマスメディアに黙殺されてたようだけど、あっという間に悪趣味なキッズの支持を集めて彼らは一気にスターダムに。しかし、シャレのつもりのオカルト趣味はイイとして、クスリとオサケはシャレにならないトコロまでエスカレート。結果、この全盛期を OZZY 本人はほとんど覚えてないらしい。ナニが夢でナニが現実か区別がつかない境地。シラフじゃないって考えれば、この暗黒のグルーヴは凶悪なカオス実験のドキュメントに聴こえてくる。…で、1976年あたりには OZZY はバンドに所属しているのかどうかもよくワカラン立場になって、1979年にとうとう完全解雇される。

OZZY OSBOURNE「DIARY OF A MADMAN」

OZZY OSBOURNE「DIARY OF A MADMAN」1981年
●そんなこんなでいつの間にか迎えた80年代。ヘヴィメタル/ハードロックの様式化はカッチリと進行し、ソロに転向した OZZY の新しいバンドは見事なまでにジス・イズ・ハードロックな音楽をヤリ切ってる。このアルバムはソロ第二弾。一曲目「OVER THE MOUNTAIN」はヘヴィメタルファンじゃないボクでも知ってるハードロック・ディスコチューンだし、もう圧倒的にキャッチーで聴きやすい。後半にメロウなバラードまで仕込むバランス感なんて!相変わらずオカルト趣味は抜けてないみたいだけど、そこはご愛嬌ということで。ウィキに乗ってる、「ハトのアタマ食いちぎり事件」とか「コウモリのアタマ食いちぎり事件」とかはこの頃のエピソードなんでしょうか?

OZZY OSBOURNE「TRIBUTE」

OZZY OSBOURNE「TRIBUTE」1987年
BLACK SABBATH をクビになった直後の OZZY はそのままロサンゼルスにわたってホテルでクスリまみれの生活を送ってたみたいだけど、その滞在の中で才能あふれる若手ギタリストを発見。それが本作の主人公 RANDY RHOADES。彼は OZZY のソロ第一作「BRIZZARD OF OZ」&第二作「DIARY OF A MAN」で実にテクニカルなハードロックギターを披露し、OZZY の新しい船出を見事に成功させる。…しかし、1982年に軽飛行機の墜落事故で、OZZY の目の前で死亡してしまうのだ。25歳の早過ぎる死。OZZY は彼の死にいたくショックを受けて、ますますにクスリとオサケに依存する始末。結果、その死後5年目の1987年に RANDY と演奏したライブ音源を1枚のアルバムにしてリリースするに至った。それが本作。
これが非常にキャッチー。1970年の BLACK SABBATH と比較すると、その洗練ぶりやバランス感覚は圧倒的。だって聴いてて疲れないもん。古い BLACK SABBATH も最新の BLACK SABBATH も、結局あまりにもナニかが過剰なので、聴いてるとコッチは疲れてくる。しかし本作は明らかにハードルが低く、スッと聴いていられる。RANDY の高度な演奏技術が耳に負担をかけない。RANDY のプレイは手数というか要素がタップリでエンターテインメントとして高度に成熟してる。ぶっちゃけ、OZZY の役割が小さく感じるほど。悪魔の神官 OZZY は象徴としてど真ん中で突っ立っててくださいな、ソレで十分絵になるんで。あとは RANDY が俊敏な猛獣の動きで全ての敵を仕留めてきます。そんな役割分担ができてしまっていると思うほど。1970年以来のヘヴィメタルの進化がココに美しく結晶している。RANDY の腕にかかれば BLACK SABBATH の楽曲も違った印象に聴こえる。「PARANOID」「IRON MAN」「CHILDREN OF THE GRAVE」などがことごとくクール。原曲の混沌の中にハッキリとした輪郭線を描き加えて楽曲の背骨の場所をハッキリと知らしめる。
●しかし、成熟と洗練がある閾値を超えた場面で、時代は野蛮な表現を呼び込む。80年代に全盛を迎えたヘヴィメタル/ハードロックの文脈は、90年代グランジ/オルタナティブロックというアンチテーゼの登場で大きく改変させられるのだ。90年代育ちのボクにとっては、感覚として80年代ヘヴィメタル/ハードロックは旧世代の音楽。この成熟を解体することから、音楽の個人史が始まっている。だから、ボクはヘヴィメタル/ハードロックが苦手なのだ。

BLACK SABBATH の新作をプロデュースした RICK RUBIN は、今でこそラウドロックをベースにした仕事で有名だが、元はと言えば、白人ながら DEF JAM RECORDINGS の立ち上げに参加したヒップホップのプロデューサーだ。結果として彼はジャンル横断的な視点に立ち、アーティストの中からエクストリームな部分を見出し研ぎすます。それが今回の仕事では長寿バンドの中からカオティックな初期衝動がフォーカスされた。ヘヴィメタル/ハードロックの洗練を今一度剥ぎ落とす作業。
●その結果、ボクは BLACK SABBATH が持つ本質の野蛮さを知覚することができたし、そこを経由することで、80年代の OZZY ソロの高度な洗練に意味を見出すことができた。苦手な音楽は誰にでもあるもの。でもそのままにしないで、敢えてその苦みに深く顔を突っ込んでみると、楽しい世界に到達出来る。よかったよかった。





●そんなノリでいつも音楽を聴いているんだけど、最近は、自分の嗜好の一貫性のなさがだんだんヒドくなってきたような気がして。過去の記事を遡ると、マジで音楽ジャンルの一貫性がなくて、統合失調気味に思えてくる。

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