ロック雑誌が滅びました。ロックは滅びるのか?

CROSSBEAT (クロスビート) 2013年 11月号

「CROSSBEAT」2013年11月号、この号をもって休刊。25年の歴史に幕を閉じる。
●25年ってのは、やっぱ長い年月です。そんでこの25年はボクの音楽人生とほぼ重なり合ってて。当然、若い頃はそれなりに読ませてもらってました。勉強もさせてもらった。だから今日はこの雑誌の話を。
25年前のボクは中学生で、意識的に音楽を聴き始めた頃だった。時代は1988年、昭和最後の年。BOOWY が解散。THE BLUE HEARTS「TRAIN TRAIN」を叫んでいた。まだボクはロックに目覚めたばかりで、洋楽に到達していなかった。翌年1989年に高校へ進学すると、徐々に関心が広がって THE BEATLES に接触。一方で THE STONE ROSES がファーストアルバムをリリース。THE BEATLES の遺伝子を濃厚に組み込んだ THE STONE ROSES の登場は、ボクの中で大過去であった1960年代と目の前で幕明けようとしていた1990年代を太く繋ぐリンクになって、ロックを歴史で捉える感覚を植えつけてくれた。1990年には THE ROLLING STONES 初来日/東京ドーム公演。1960年代の生けるレジェンドの降臨に戦慄。1991年に NIRVANA「NEVERMIND」をリリース。グランジ旋風が巻き起こる。英米両極で新型の90年代ロックが動き出す。1989年、ベルリンの壁崩壊。1990年、東西ドイツの統一。1991年、ソビエト連邦崩壊。第二次大戦終結から続いた米ソ二大超大国の冷戦構造が瓦解して世界史が大きく更新される。新しい時代の風が吹き込んでくる気配をボクは感じていた。
洋楽雑誌「CROSSBEAT」を手に取るようになったのはこの頃だった。フツウの高校生だったボクが海外の音楽事情を知るのは雑誌しか手段がなかった。むさぼるように情報を吸い取っていた。もちろん「ロッキンオン」も読んでた。邦楽事情を知るためにソニーマガジン「ワッツイン」も読んでた…なにしろこの時代は日本でもバンドブームが巻き起こっていたし、その後にすぐ渋谷系の時代が到来する。音楽雑誌は結果としてたくさんあった。「PATI PATI」「FOOLS' MATE」「MUSIC LIFE」「ARENA 37℃」「DOLL」「バンドやろうぜ」「BURRN!」「MUSIC MAGAZINE」「INROCK」…もっとあったようが気がするけど思い出せない。バブル経済は本当は破綻していたはずなのだが、音楽業界はジェイポップのメガヒット時代をこれから謳歌しようとする段階で、実はかなり羽振りがよかったのだ。全部を自由に読めた訳じゃないけどセッセと立ち読みしたものだ。インターネット?まるで普及してなかった。マスメディアの時代だった。ということで、90年代前半までは、だいぶお世話になった。ホントありがとう!

●しかし、1996年以降となると、実は雑誌「CROSSBEAT」の情報ではまったく物足りなくなってきた。テクノ/ハウス、ヒップホップ、レゲエなどなどのジャンルミュージックが日本市場の中でも成熟してきて十分な奥行きを持つようになった。つまり、ロックを軸足に音楽シーン全体を俯瞰する時代が終わってしまったのだ。1992年に大学へ進学するとボクは都内のクラブに遊びに行くようになり、クラブミュージックに特化した情報が欲しくなっていた。その分野では「REMIX」「ELE-KING」、「GROOVE」といったクラブミュージック専門誌の方が格別にレベルが上だった。純度の高いロック評論で確固たる立場を作っていた「ロッキンオン」と比べて、そもそもの立ち位置が初心者向けだった「CROSSBEAT」は他のジャンルにも目配せする姿勢があって柔軟な姿勢を見せていたんだけど、それでももう時代遅れな雰囲気が漂っていて、さすがに卒業せねばならんなあと思うようになった。2000年代に入ると、「SNOOZER」「COOKIE SCENE」などなどロック誌の中でも細分化が始まって競争が激しくなったように思えた。
●そもそもで言えば、本当にエッジーな情報はカルチャー誌「STUDIO VOICE」の方がシッカリしていた。サブカル誌としては「QUICK JAPAN」も外せなかった。フラットな新譜情報ならタワーレコードのフリーペーパー「BOUNCE」の方が全ジャンルを網羅していて効率的だった。結局「CROSSBEAT」はお子さま向けに見えたのだ。結局買うのは年一回の「今年のベストアルバム」特集だけ。買い逃し買い忘れはないかチェックするためだった。でも「ロッキンオン」「BOUNCE」「ミュージックマガジン」も同じようなことやるもんね。どれでもよかった。

いつしか、ボクはすっかり雑誌を買わなくなっていた。インターネット時代の到来だ。独特過ぎるヴァイブを放ったカルチャー誌、マガジンハウス「RELAX」が休刊して以降、新しい号が待ち遠しい雑誌はこの地球から消え去った。「雑誌は人にモノを買わせる機械だ」そんな風に思うようになった。結局「今の流行りはコレだから買え!」というメッセージしかないじゃないか。…雑誌に関わっている人には申し訳ないけど。
●2009年に「STUDIO VOICE」が休刊した時、実はだいぶ悲しくなった…それこそ、今のボクのサブカル体質を育ててくれたのは「STUDIO VOICE」だっただろうと。しかし、ホントに永い間買っていなかったから、残念というのも申し訳ないほどと思った…雑誌を休刊に追い込んだのは、読者として雑誌を見限ったボク自身じゃないか。そんな負い目を感じながら、申し訳気分で買った最後の号を読んだ。そしたら…寄稿者が十数年前からちっとも変わってないコトに気付いた。野田努さんとか宇川直宏さんとか。むー。彼らは結局、新陳代謝しなかったんだな。細胞が入れ替わらないなら、むー、生き物としては死ぬしかない…そう思ったのを覚えている。むー。

●で、今日、最後の「CROSSBEAT」を読んでいる。特集は「ロックンロールに明日はあるのか?」
●むー。微妙だ。ロックンロールに明日は…ないんじゃないでしょうか。明日はない気配が濃厚。明日はないよコレじゃ。明日どころか、今すぐ死ぬ。特集を読んでそう思った。
「ロックンロールアイコン100の肖像」という最初の記事。100組のロックスターが紹介されます。そのナンバーワンが、THE ROLLINNG STONES。次が THE WHO。そんで T.REX、RAMONES、LED ZEPPELIN、BRUCE SPRINGSTEEN、LOU REED、ELVIS PRESLEY、THE CLASH、DAVID BOWIE。おい!100組のウチ最初の10組は全員70年代以前のアーティストじゃないか!25年の歴史に幕を閉じるのに、25年で取材した同時代アーティストは評価しないのか!16番目に NIRVANA、26番目に THE WHITE STRIPES、31番目に OASIS、34番目に ARCTIC MONKEYS、38番目に QUEEN OF THE STONE AGE。前半50番目の中で「CROSSBEAT」創刊1988年以降のデビュー組は以上この5組だけ!おいおいおいおい!いつの間にかモノスゴイほどのオッサン雑誌になってたのかい!ボク自身が40歳のオッサンなのに、ソコから見てもコレはオッサン、またはジーサン志向が強すぎる。これで「明日があるか?」と聴かれたら「伝統芸能として生き残ってください」と返したくなる。
●あれれ。せっかく最後なんだからさ、もっと前を向こうよ。ボク、結構ロックが好きなツモリだったのにさ、ガッカリするほどロックがカッコ悪く見えたよ。そりゃストーンズはカッコいいけどさ、好きだけどさ、あのベテランに全部を背負わしてたら、ソレはやっぱ滅びるよ。次々に時代の中で変貌するのがロックと思ってたよ。なのに様式の中で矮小化されてるように見えたよ。これじゃ「CROSSBEAT」は滅びるしかなかったね。



●ボクの中で、大きくロックへの信頼感が揺らいだので、ロックな音源を聴いてバランスを取る。

THE ROLLONG STONES「STILL LIFE」

THE ROLLING STONES「STILL LIFE」1982年
●そりゃ、ストーンズがキライとは言えないけど。でも神様みたいに扱うようなコトじゃないと思う。彼らのスゴさは、神業とか神演奏とか神作曲とかではないと思う。どんなにカッコ悪くても、どんなにダメダメになっても、粘り強くロックンロールし続けたコトがスゴいのではないだろうか。
●たぶん、このライブ盤の時期は彼らにとって微妙な時期だったはず。1978年パンク/ニューウェーブ革命以来、ストーンズは時代遅れの恐竜のような存在として批判にさらされていた。そんな攻撃を打ち返すべく、1978年「SOME GIRLS」1979年「EMOTIONAL RESCUE」といったジャンル越境の実験冒険を彼らはカマす。なんとディスコファンクを斬新な解釈でストーンズが自分たちの血肉に組み込んだのですよ。ある意味でスリリング。ある意味で不気味。この二枚のアルバムは個人的に楽しく聴けるようになるには、結構時間がかかったなあ。10代20代ではうまく聴けなかった。30歳代に入ってやっと楽しめるようになった。それに続くアルバムが「TATTOO YOU」。1990年の初来日公演で第一曲目に選ばれた「START ME UP」が収められてるロックアルバム。これは10代にして比較的スッと入ってきた。
●さて、この「STILL LIFE」「TATTOO YOU」を受けての1981年ツアーを収録したライブ盤。60年代から盤石たる不動の基盤を積み上げてきた彼らが、若い世代から下克上を挑まれたパンクの季節をなんとか通り抜けた後でのライブ実況。この内容が、これまた意外。この時代に放った変化球な楽曲たち、不穏なディスコファンク「MISS YOU」やウラ声コーラス「EMOTIONAL RESCUE」が披露されると思いきや、なんと60年代のレパートリーがメイン。一曲目が「UNDER MY THUMB」。続いて「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」。B面では「TIME IS ON MY SIDE」、シメに「SATISFACTION」が披露される。EDDIE COCHRAN SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES のカバーまでヤる。リアルタイムな曲は前述「START ME UP」「SOME GIRLS」収録の「SHATTERD」だけ。このタイミングで、あえて60年代限定シバリを自らに課して「オレたちのマナー」をハッキリと打ち出し、ワカイモンにケジメをつけたってコトなのかな。やろうと思えば新しいコトだってやれるけど、オレのロックはコレなんだよ!で、2013年の今でも現役続行中。
●ただ、ジャケの軽薄さがそのまま録音にも反映されてるのか、アッサリとしたミキシングでドカドカとした重みがない…尺も短いしね。そんなわけでそんな評価がお値段にも反映されたか、下北沢 YELLOW POP にて100円で購入出来ました。あ!このジャケ、日本人のイラストなんだって!英語のウィキに書いてある…KAZUHIDE YAMAZAKI…誰だ?

THE ROLLING STONES「GRRR !」

THE ROLLING STONES「GRRR !」1962-2012年
キーピン・オン・ロックンロールで50年経ってしまいました…継続は力なり。そんな彼らの3枚組ベストです。アルバムほとんど持ってるのに、それでもこういうの買っちゃうのってバカだよね。でも古くから聴いてるヤツがアナログLPなのでCDにしておきたいってのもあって。
●ボクが生まれて初めてストーンズを意識したキッカケを今の瞬間思い出した!1988年の映画「花のあすか組」「SATISFACTION」が主題歌に使われていたんだ。同名の少女マンガを、つみきみほというショートカットの女優さんを主演にした映画だった。当時中学生だったボクはショートカットの女子が好きだったし、そんな彼女が敵と戦う勇ましさとこの曲の暑苦しいサックスリフがイメージとして絡まってよく覚えてる。ウィキ見たら監督は崔洋一さんだった。本来の目当ては同時上映だった「ぼくらの七日間戦争」だったんだけどね…こっちは当時15歳だった宮沢りえが映画初主演。彼女はボクと同い年で親近感タップリだったんです。そんな甘酸っぱい思い出。
●まーどの時代を輪切りにしても、様々な思いが湧き上がる。鉄板の60年代〜70年代はもうキリがないので手のつけようがない。前述「STILL LIFE」の延長で言えば、そのまま80年代に言及すべきか。「TATTOO YOU」の次は1983年の「UNDERCOVER」。一曲目の「UNDERCOVER OF THE NIGHT」が好きなんだよなー。ダンサブルなビートに KEITH のザックリとしたギターストロークが絡まってグルーヴしまくる。一旦終わると見せかけてもう一回盛り返して MICK が極めるアウトロが10代のボクには分かりやすくて良かったんだよなー。バンド内の人間関係が最悪だった1986年「DIRTY WORKS」においても、リード曲になった「HARLEM SHUFFLE」は大好きだった。ルーズなファンクと不良感たっぷりのボーカルが10代のボクには響いたね。BOBBY WOMACK のコーラスが黒い。確かナニかのCMソングに使われていて、コレ聴いた事あるなーという印象を抱いたのを覚えている。古典R&Bのカバーだったコトは随分アトで知ったっけ。
●1989年「STEEL WHEELS」は、MICK & KEITH が友情を修復した結果の作品。「MIXED EMOTION」はそんな二人の新しい絆を感じさせるリリックで、思わず感涙してしまう。「YOU'RE NOT THE ONLY ONE WITH MIXED EMOTION, YOU'RE NOT THE ONLY SHIP ADRIFT ON THIS OCEAN ! YOU'RE NOT THE ONLY ONE, YOU'RE NOT THE ONLY ONE !」複雑な思いを抱えているのはオマエ一人じゃない、この海を漂っているのはオマエ一人じゃない、オマエは一人じゃない!オマエは一人じゃない!リアルタイムなアルバムリリース体験はこの時代からだよ…だからイッパイ聴いたね。「A ROCK AND A HARD PLACE」も切れのイイギターがリフをカッコよく刻む熱い曲だった。…ということで、思い出は尽きない。



つーか、結局、ボクはロックが好きだな。


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