近年まれにみるほどの具合の悪さ。
●ここ二週間で二日会社を休んだ。自律神経が完全におかしくなって、奇妙な緊張で足が重くむくんでいる。神経の異常は、理性的思考にも影響する…後頭部や目の裏側でザーーーっと永久に続くホワイトノイズが鳴ってて、もう仕事にならない。自分でも言ってるコトがアベコベになりそうで怖い。ケアレスミスが増えるし、仕事のやり残しもどんどん増えていく。

●最近、ヨガに行けなかったのがマズかった。
●ヨガに行ってもマトモにカラダが動かせない。恐ろしくシンプルなポーズでも激痛が走るほど、カラダが不自然に緊張している。ノイズがヒドくて先生の声も聴こえないほどだ。さすがに先生もボクのことを心配している。

●ふと気づくと、スマホゲームをダラダラと続けている。理性が摩滅するってこんな感じだ。


●地元の盆踊りで、ワイフやコドモたちが出ていった夕べ。
●ボクはゲームをヤメて、Hulu で映画を見ることにした。

「蛇にピアス」

「蛇にピアス」2008年
●2004年芥川賞のダブル受賞を、綿矢りさ「蹴りたい背中」と分け合った金原ひとみの原作小説を蜷川幸雄が監督を担って映画化。当時は、おっとりとしたお嬢様風ルックスの綿矢りさに目がいって彼女の「インストール」しか読まなかった…。でも、今は、神経が異常にササクレだっているので、この自傷行為願望でズタズタの作品が気分にフィットする。
●ヒロイン、吉高由里子園子温作品「紀子の食卓」でデビュー、主役ではないのにその存在感に強烈なショックを覚えて以来、とても気になる存在だったのに、その後の作品はイマイチピンと来てない。「GANTZ」「カイジ2」?TBSドラマ「ラブシャッフル」?むー。悪くはないけどね。ただ今期の朝ドラ「花子とアン」は気に入っている。美輪明宏さんのナレーションも気に入っている。彼の「それではごきげんよう、さようなら」の締めナレは毎日異なるニュアンスが込められていて、その多彩さに舌をまくほどだ。
●さて、吉高由里子の初めての主演作となるこの作品。ある少女が、スプリットタンとピアッシング、タトゥーに魅かれ、そして二人の男の間でゆらいでいく物語だ。スプリットタンとは、舌の先を二つに分割すること。ちょうど蛇の舌のように。痛みを伴って自分の身体に手を加えていくこうした行為に、なぜヒロインが魅せられていくのか、最初は理解ができない。場当たり的に、舌に穴を空け、場当たり的に、男たちとセックスをする。気づけば、一緒に暮らしていた男の本名も知らなかった。自分の本名も教えていなかった。
「痛みを感じている時しか、自分が生きていると感じることができない」。タトゥーを入れる施術から、そのまま首を絞められながらの乱暴なセックス。これは自傷行為なのか。しかし結果として、彼女は二人の男を人殺しにする。他人の欲望に絡めとられながら、自分の欲望に他人を絡めとる。蛇が絡み合うように、三人の男女は絡み合う。

●今のボクには生活がある。それなりに裁量を任された職業や、日々成長を続ける家族たちがいる。積み重ねた過去が今のボクの生活を作り、明日はそれを継続するための未来に繋がっている。しかし、この映画の登場人物たちには、それがない。過去から未来にかけて維持継続すべきナニかを持たない。その場限りの現在だけが、前後の文脈から切り離されて無意味に浮かんでいる。無意味な時間ののっぺりとした連続は苦役だ。その苦役に実体を与えるのが、身体改造の痛みだ。痛みこそが現在に意味を与えるリアルだ。そして痛みがキッカケになって、欲望が作動する。…マトモな人にとっては、意味がわからないかもしれない。でも頭の中で止まらないホワイトノイズを抱えて、昨日と今日と明日の区別がつかなくなるほどの混乱につかまってしまいそうになる時、彼らの世界が近づいてくるようでボクは戦慄する。


破滅した天才。JACO PASTORIUS。

jaco pastorius blackbird

JACO PASTORIUS & RASHID ALI「BLACKBIRD」1984年録音
●数年前に、新橋SL広場の古本市で購入したCD。新橋の古本市は、かなりベタベタの古本ばっかで渋すぎるんだけど、よーく見て回るとチョッピリだけLPレコードやCDを取り扱ってる店が見つかる。これもほんの十数枚程度だけ売られてたボロCDの中から発見したモノ。840円。ジャズベースの革新者、超絶プレイ能力とアレンジ〜コンポーズ能力を合わせ持つ天才、その一方で不安定な精神を持て余してドラッグ/アルコールに溺れ夭折するという悲劇。ベース・ヒーロー JACO PASTORIUS の未発表ライブ盤でこのお買い得価格じゃもう買うしかない。

●しかし、これが難しい。このライブ、ドラムとベースの一対一編成。登場人物は、ベースの JACO と、ドラムス RASHID ALI という人物の2人だけ。一体どんなコトになってることやら?という期待を胸にCDをプレイヤーに載せたんだけど、ハッキリ言ってマジでナニやってるか全然ワカラン。あれー?ギターを加えたトリオ編成のライブ盤は数枚聴いたけど、ドレも見事に超絶テクのハードロッキンな内容でとても楽しかった。しかしコッチはトリトメのないギグでキツい。
●アルバムタイトル「BLACKBIRD」 THE BEATLES の同名曲に由来してて、それをカバー演奏してるはずなんだけど、JACO がたった一人でベースをベボベボベボベボベオ〜ンブアーンブーンベオオ〜ンと弾きまくってるだけで、全然「BLACKBIRD」に聴こえません。JIMI HENDLIX「PURPLE HAZE」はディストーションを思いきり効かせたベース音がジミヘン風ではあるけど、「PURPLE HAZE」とわかるフレーズが登場するまで5分40秒もかかるし、その後全部で13分間続く演奏の後半は相方 RASHID ALI のドラムソロだけ。むむむ。
CHARLIE "BIRD" PARKER の定番曲「DONNA LEE」JOHN COLTRANE のレパートリー「NAIMA」、そしてバンド WEATHER REPORT 所属時代に彼自身が書いた「CONTINUUM」の演奏もあるけど、ボクには評価が出来ない。確かに RASHID ALI のドラムと見事バッチリ決めたりするライブ格闘能力の高さや、とても一人で演奏してると思えないラインを描き出す超絶テクなどなど、ビビるほどの局面もあるんだけど、総合的には難易度が高くって。フリーインプロヴィゼーションといえばそういうことなんだけど、ややフリー過ぎます。

●このパリでのライブが収録された1984年の JACO双極性傷害がだいぶ重たくなっていて、演奏の出来不出来の差が激しかったという。1976年から1982年まで在籍していた WEATHER REPORT 時代も、一人目の奥さんと離婚してからは精神の不安定さが目立つようになってたらしい。そんで酒とコカイン。ソロ活動を志してバンドを離れた後は、その作品の高い評価とはウラハラに、やたらモメゴトを起こして周りを困惑させてたそうな。ベランダから飛び降りて大ケガとかしてるみたいだ。1985年には二回目の離婚、病気もどんどんヒドくなる。最後はクラブのガードマンとモメて脳挫傷、そのまま35歳の短い生涯を閉じてしまった。

JACO PASTORIUS BIG BAND「TWINS I II - LIVE IN JAPAN 1982」

JACO PASTORIUS BIG BAND「TWINS I & II - LIVE IN JAPAN 1982」1982年
●様々な危機/離婚を機に悪化する双極性傷害、ドラッグ&アルコール依存などを孕みつつ、WEATHER REPORT から独立して充実のソロ作「WORD OF MOUTH」をリリース。天才の名を欲しいままにしていた頃の日本来日公演。前述「BLACKBIRD」はこのライブから2年後でドラムとの2人編成だったが、この時の公演はビッグバンド、JACO はなんと20人ものミュージシャンを引き連れて来たという。円高ムードが高まるプレバブル期日本の豪気な招聘に、JACO も新しいスタイルのビッグバンドを見せつけるという気概を持っていたようだ。
●メンバーは、ドラムに WEATHER REPORT を一緒に脱退した PETER ERSKINE、トランペットに RANDY BRECKER、その他、フルート、クラリネット、フレンチホルン、チューバ、スティールドラム、ハーモニカといったメンバーまでいる。ただし、このビッグバンドが既存のスウィングジャズみたいな音を鳴らすわけじゃない。ファンク、カリビアン、R&B(JACO 自身がボーカルをとる曲もある)、様々な音楽が見事にフュージョンした音楽が自由に鳴り響く。一糸乱れず完全に統御されたアレンジをトリハダモノのアンサンブルで極める瞬間もあれば、そのアレンジを前提にして個々のプレイヤーが高度なアドリブを取り合う瞬間も。まるで緻密に訓練されたスポーツのようだ。ベース奏者である JACO 自身は決して積極的に出しゃばるワケではないが、このグルーヴを強力に推進するエンジンとして、饒舌で奔放なベースラインを描き出す。それが美しく、同時に野蛮で。弾き出す音の粒の1つ1つが、大洋を自由に疾駆するイルカの群れのように雄々しい。



●動画。
●JACO PASTORIUS BIG BAND「REZA / GIANT STEP / REZA」。
●CDとして紹介した1982年の日本公演の映像が YOUTUBE に上がってるのね。スゲエな。でもCDの音質で聴かないとその美しさは伝わんないなあ。自作のファンクチューンから JOHN COLTRANE の傑作に行ってまた戻ってくる構成。





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