二階堂和美「歌のパレード〜いつもまにやら15年〜」@東京グローブ座

二階堂和美

●先週の月曜日の祝日。あまりに疲れた神経と脳ミソに癒しと滋養を与えるために、この歌うたいのお姉さんのライブに行きました…。すごかった…パワフル過ぎて結果的にちょっと疲れちゃったくらい。
二階堂和美さんといえば、ジブリの近作「かぐや姫の物語」で主題歌を務めたのが一番の話題だったでしょうか。広島を拠点に実家のお寺も切り盛りしながらの活動などなども注目。

●その圧倒的な歌唱力と個性的なパフォーマンスはウワサに違わずスゴいモノだった。冒頭のご挨拶でイキナリ笠置シヅ子「東京ブギウギ」をアカペラで披露。この人のカバーは、やや本家のモノマネまで入るのでスゴい。その後に登場するバンドはアルバム「にじみ」の頃からのメンバーが主軸?ドラムとしてグルーヴの中核を担っていたのは ASA-CHANG。そんな強力なバンドを従えて、ヤリ過ぎ感バリバリのはしゃぎっぷり踊りっぷりを交えてPA要らないんじゃないかって声量で歌いまくります。この人、歌の神様に愛されてその歌唱の才能を授かっている。ユーモアタップリのMCが元気で楽しいオバちゃんオーラ(年齢はボクとほぼ同じで40歳ね)をぷんぷんに出しているのに、いざ歌を歌えばその豊かな喜怒哀楽が神がかったような説得力を持つ。お祭り騒ぎのニギヤカな曲で大暴れしたかと思えば、シットリとした曲が始まれば泣く子も黙るほどの緊張感を感じさせる。ボクの先輩は彼女をシャーマンと形容するけど、彼女は神様のために歌を歌うわけじゃない。ぼくら人間のために歌を歌い、ぼくらの生活を歌として歌う。その意味では、お盆の村祭りのような、聖俗の入り交じった生命力が人間のカタチになったような人だと思う。東京グローブ座=劇場ということで椅子席の落ち着いた環境で聴いたというのにクタクタになってしまったのは、アンコール二回含む3時間15分にも及んだ予想外のロングセットだったから。なのに彼女、ニコニコしながら「私まだまだ全然イケルのよね〜」なんて言ってのける。フリースタイルのMCをたった一人でスキマなくしゃべり続けて、歌も歌って、それでもまだまだって余裕。ビックリしたなあ。
「かぐや姫」主題歌の「いのちの記憶」や、アルバム「にじむ」からの数々のナンバー、バンド以前のギター弾き語り楽曲、美空ひばり「愛燦々」EDITH PIAF「愛の讃歌」などのカバー(ややモノマネ)などなど見どころがイッパイあったが、特にトリハダものだったのは李香蘭「蘇州夜曲」カバー。前日のライブで客席から上がったリクエストがこの曲でその場の即興で歌ったのだが、その後で李香蘭 A.K.A. 山口淑子さんがこの日に94歳で亡くなったコトをネットで知ったという。満州事変〜日中戦争の時代、日本人でありながら中国人として女優/歌手活動を行って両国の間で大きな人気を集めた女性。大局的に言えば日中融和のプロパガンダ装置として日本/満州国の国策として作られた偶像だったかもしれないが、結果的には多くの名曲を後世に残した。「李香蘭さんがまだ存命だったことも知りませんでした。偉大なシンガーと同じ時代を生きさせてもらったことに感謝を込めて、今日も蘇州夜曲を歌わせてもらいます」ここで披露した歌唱は、即興ではなく完璧にアレンジされたバージョンで、まさしくトリハダものの内容でした。
二階堂和美さん。2010年代を生きる、モダンでオルタナティブなシンガーソングライターでありながら、その遺伝子は真っ当なほどに戦前戦中も含めた20世紀の日本音楽の遺産を受け継いでいる。本当に不思議な存在だ。

●あ、ライブ終演後の会場廊下で高畑勲監督を見かけたよ。意外なほど身長の高い人だった…。


二階堂和美WITH大竹市民吹奏楽クラブ

二階堂和美 WITH 大竹市民吹奏楽クラブ「大竹で生きている」
今回のライブはCDシングル1枚のオマケ付き。二階堂和美さんの暮らす土地、広島県大竹市が市制60周年記念を迎えるというコトで、市のイメージソングを作って欲しいとのオファーがあったという。実はお姉さんが市役所にお勤めとのことで。「あなた、一度受けたら断れなくなるからね」なんて言われてたら市役所から3人男の人がやってきて。せっかくだから地元の人と一緒に作りたいと、ややこしい仕事を自分から一層めんどくさくして(本人談)、市民吹奏楽クラブの人達と小学校の音楽室でリハ/レコーディングを重ねたり。ホントは施設利用は夜10時までなのにクラブのメンバーが「教育長が知合いだから相談するわ」と夜11時まで延長してくれたり。二階堂さん「市民スゲエ」。コーラスはひかり児童クラブの子どもたちですって。
●陽気なブラスバンドに可愛らしい二階堂さんの声。「別に大竹の名物とかは全然歌ってませんから、地名を置き換えたらどこの土地でも使えますよ、著作権もフリーだし」なんてMCで説明。シンプルだけど、無垢でやさしい歌詞。こういう街で暮らしたい。
●ちなみに、ボクはこの大竹市ってトコロの知識はゼロで。検索してみたら、広島県と山口県の県境の街でお隣は山口県の基地の街、岩国市広島市から見ると宮島を通り越してもう一つ向こう側。



広島のステキなCDショップがなくなってしまいました。
「FRIPP MUSIC」というお店。今年8月に閉店。このお店がタタマレていく様子は現場から遠い東京のボクにもソーシャル経由で伝わっていて。なんだかとても悲しかった。
●このお店のコトは以下の記事で取り上げました。広島旅行で偶然見つけたお店。でもそこでご主人と語り込んでオモシロい音楽を教えてもらったこと。そしてその後このお店が始めた TWITTER 経由の宅配レンタルサービスを利用したこと。などなど。この記事の後でも、宅配レンタルは利用させてもらった。そして、その度に注文以外のおススメの1枚をオマケとして送ってくれるのもスゴく嬉しかった。

◯2012.09.02「夏休みの広島ツアーで、レコードショップ巡り三昧。いや楽しかったですよ全11店舗。」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-1406.html

◯2014.01.03「広島のユニークなレンタルCDショップ FRIPP MUSIC の「宅配レンタル」。そしてシカゴのゲットーミュージック、ジューク/フットワークとは?」
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-1594.html

●この一件で、今の日本、そして地方都市で、音楽の仕事を続けることの難しさを感じてしまった。
●その一方で、このご主人は地元でイベントのオーガナイズを続けるなど、粘り強い活動を行っている。好きな音楽を盛り上げていきたいという情熱は枯れることがない。そんな心意気に大変な敬意を感じる。

●そして、このお店が大事だと思っていた人達が大勢いたこともわかった。

「僕たちの大好きなお店」

VARIOUS ARTISTS「僕たちの大好きなお店 THANK YOU ! FRIPP MUSIC」2014年
「FRIPP MUSIC」は一義的にはCDレンタルショップなので、販売はメインの稼業ではないのでした。ただし、一部で展開していた販売コーナーでは、アンダーグラウンドやネクストカミングなアーティストがイッパイ取り扱われていて。イベントのオーガナイズを通じて、そんなバンドやアーティストが広島に来て活動できる素地も作っていた。そんな縁で繋がったアーティストたちが、なくなってしまう「FRIPP MUSIC」へのトリビュート盤を作ってしまったのだ。およよよ。イイ話だ。しかもコレが広島ローカルの出来事で終わってしまうわけでもない。ボクはこのCDを下北沢ディスクユニオンでゲットしたし、江古田の COCONUTS DISC や京都の名店 JET SET RECORDS でも取り扱われてたみたい。リリースの主体になったレーベル BAKERU RECORDS は札幌が拠点だったはず。
●参加アーティストは、BAKERU から音楽を発信しているカワイイ女子声バンド、ナンセンスラブレター。女子バンドと見せかけての野郎声ガレージバンド、ガール椿。遅れてきた渋谷系ギターポップ、OK?NO!。広島出身のジャズシンガー川本睦子さんはアブストラクトなトラックを提供。まやかしプラスチックは男女2人のトイポップで、FRIPP MUSIC がレーベル機能を担って音源をリリースした経緯がある。ガレージフォークな面々、笹口騒音ハーモニカ、世田谷ピンポンズ、マドナシ FROM キツネの嫁入り、久保モリソン。透明感ある女子フォークは、オカダノリコ、金子麻友美、柴田聡子。アコーディオン&歌唱のゴトウイズミさんは広島のサブカル拠点・ヲルガン座/ふらんす座/廃墟ギャラリーの女主人らしい。DJまほうつかいは、マンガ家・西島大介さんの音楽ユニット。彼は広島在住だってことはココで知った。
音楽産業が傾いているとしても、音楽の需要はなくならないし、音楽を愛する人はいなくならない。音楽を聴かせたい人もいなくならない。そう信じて、今日もボクは音楽を聴く。


●動画。

●二階堂和美さんの「大竹で行きている」メイキング動画。
●大竹市のFACEBOOK公式アカウントが発信している。ホントにお寺で音楽制作しててオモロい。





●「蝉にたくして」。
●広島にとって、日本にとって、8月は重い意味を持つ季節だ。






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