体調を崩して、お休みもらって、一週間ぶりに会社に行ってみた。
●メールをチェックするだけで4時間くらいかかった。伝票精算するだけで3時間かかった…てか精算まだ終わらないし。ぶっちゃけ、まだ具合悪いワ。シンドイ。誰にも会わなかった数日の間は安定してられたけど、やっぱ大勢の人間とヤリトリしてると疲れるワ。



●この数日間で読んだマンガリスト。

松本次郎「女子攻兵」

松本次郎「女子攻兵」1〜5巻
●このマンガ読んだからアタマがオカシクなったのかも?巨大女子高生型生体ロボットに乗って異次元世界で戦争しまくり。長くこの「女子攻兵」に乗ってるパイロットは精神汚染されて、日常会話も女子高生風になっちゃう。ていうか女子高生ロボットから誰も降りないから登場人物の生身の顔は全く分からない。完全武装の巨大女子高生で、生体ロボットだからスグに臓物ぶちまけて、異次元空間の奇々怪々満載で、泥沼のゲリラ作戦進行中だから、もう「地獄の黙示録」ですよ。タイトルのダジャレだけでココまでイカレタお話描けるってこの作家ホントイカレテルよね常々そう思うよ。

荒木飛呂彦「ジョジョリオン」7

荒木飛呂彦「ジョジョリオン」7〜8巻
●怪しいと思ってた東方家当主・憲助がことのほかイイヤツって判明したけど、彼のスタンド、非力で役に立たなそう…。ワイフの指摘によると「この作家さん、ゲイかも…。ファッションがオシャレすぎるし、フルーツ屋さんとかスイーツとか、ことごとく趣味が女子っぽいんだもの!」たしかに第五部から一気にキャラの衣装が非現実的になったし、近年はグッチとコラボしてたりとファッション方面とは相性イイよな。ただ東方憲助さんの髪の毛についているマリモのような球体はなんなんだろう?彼の回想シーンでは子供の頃からくっついてたぞ。

市川春子「宝石の国」3巻

市川春子「宝石の国」3巻
●表紙の美しさが書店でも眩しいこの作品。宝石たちは冬眠するが、眠り損なった主人公・フォスフォフィライトが冬の間に奇妙な変化を遂げていく。月人との華麗な戦い、宝石たちの不思議な生態、ファンタスティックな空想世界として今一番の極上品。娘ヒヨコですら次巻が待ち遠しいって言ってる。

三宅乱丈「イムリ」16巻。
●ユニーク過ぎる設定で途中からじゃ絶対入っていけないファンタジーSFだけど、未読の人はド根性で一巻から全部読んで下さい。民族間のジェノサイド行為、容赦のない階級/人種差別、政権中枢の権力闘争、ココで取り上げられてるテーマは、今の地球社会全体、特に今後発展していく国々で今だ横行している蛮行を連想させるから。

三浦建太郎「ギガントマキア」
●あ、この作家「ベルセルク」以外の作品も描くつもりがあったんだーと思って手に取ったら、この一冊で完結なるも実に高密度な迫力と骨太な世界観でグッと引きつけられてしまった。基本は格闘技・プロレスの美学を下敷きにしながら、ダイナミックな戦闘シーンはそんなコト忘れるパワフルさでタマラン。

堀尾省太「刻刻」8巻
●完結。時間が止まった世界「止界」で、人間ではなくなったラスボスと最後の対決。そして脱出。ここ最近でかなりの重量級として読み応えを感じてました。

石井あゆみ「信長協奏曲」11巻
●何のマチガイかフジテレビが小栗旬主演で天下の月9でドラマ化してビックリ。一回も見てないけど。今回はくノ一・おゆきちゃんにフォーカスが。本来は上杉謙信のスパイだったのに、信長=サブローの脱力テイストでとうとうお国を裏切ってしまいました。このお話は猛将・信長のイメージを脱臼キャラで裏切るオモシロさが主眼、女性作家ってコトもあって、合戦シーンが全然ありません。そこも新しいね。

ai7n「ミミクリ」
●ネット連載から出版された問題作、って触れ込みだけど。ちょっと悪趣味かな。会田誠「食用人造少女・美味ちゃん」とモチーフが似てるんだけど、会田さんのユーモアにまで到達しないで終わってる。

よしながふみ「大奥」11巻
●巻を重ねて、男女逆転の江戸時代がナゼ成立したかのナゾを明らかにしてきたこの作品が、とうとう男性将軍を登場させたのに、結局権力はその母・徳川治済に集中、退屈しのぎに殺人も躊躇しないこの人の狂気に誰もが震え上がります(この人ぼく知りませんでした…実在の人物はどんな人?)。男女逆転の原因となった風土病の治療法に奮闘したキャラクターはみんな死んでしまって、このお話どうなっちゃうのだろう。

佐藤秀峰「特攻の島」7巻
●自殺兵器・回天の搭乗員として苦悩する主人公。一回目の出撃で還ってきてしまった後ろめたさで終わった前巻から二回目の出撃へ。沖縄地上戦突入、戦艦大和はじめ帝国海軍崩壊と、戦争はギリギリの最終局面。無謀な作戦と知りながら、敵艦を前に出撃命令をよこせと叫ぶ主人公。

日本橋ヨヲコ「少女ファイト」11巻
●主人公・大石練は全日本シニアの合宿に合流!ここでバレーボールのバケモノみたいな連中に遭遇してさらにレベルアップ。てか、読んでるボクがバレーボールに詳しくなるワ。亡き姉にまつわる因縁がまたひとつ明らかになるし。いつの間にか作家クレジットに「作画監修・木内亨」って入ってる。確かにこの作家さん、この作品に関してはブレのない輪郭線がスゴく効果的になって、スポーツマンガにありがちなゴマカシが一切ないもんね。そんなサポートがあってのことなんだね。

井上三太「もて介」1巻
「TOKYO TRIBE」シリーズにややついていけなくなって以来の、久しぶりの井上三太。ギャルにモテたい!ただその一念だけで押し切るギャグマンガだが、主人公が40歳の映画ライターとな。ここでわざわざボクと同世代の主人公を作ってくるのがニクいねえ。別に若い主人公でもイイのにね。結局、三太さんもボクと同世代だしね。

松本大洋「SUNNY」5巻
●その井上三太とイトコの関係にある松本大洋。相変わらず渋いね…。イタナイ関西弁が孤児たちの悲哀を一層リアルにするわ…。

林田球「ドロへドロ」19巻
●だんだんクサレ縁みたいになってきた…話が混沌としてきてよくワカラナクなってきたぞ。悪魔とかいっぱい出てきたし、主要キャラみんな死にかけてるし。おまけに前の18巻が家の中で行方不明になったから、なおさら意味ワカラン!困った!

こうの史代「日の鳥」
東日本大震災の被災地を、妻を見失ったニワトリが訪ねて歩く、という設定の1枚スケッチ。発災時からの経過を、ただ淡々と優しい眼差しで見つめている。「ぼおるぺん古事記」のアプローチと同じように、ここもボールペンで作画してるという。

山口貴由「エクゾスカル零」6巻。
●やっと七人のエクゾスカル戦士が勢揃いしたぞ。最後の一人「霧」は、比較的わかりやすい少年マンガ風の作品(「覚悟のススメ」以前とか「悟空道」とか)を描いていた人物造形になってて、読んでて窒息しそうになる「シグルイ」以降の緊張感がちょっと緩和された…気がするだけで、すぐに容赦のナイ展開になるにキマってる。

南條範夫「暴力の日本史」

南條範夫「暴力の日本史」
●表紙を前述「エクゾスカル零」山口貴由が担当。彼の代表作になった「シグルイ」南條範夫「駿河城御前試合」を原作にした作品だったという縁で、この作家の1970年の論評文庫化に際して表紙を手掛けたのだろう。
●この本は、日本史の中にある民衆の権力への抵抗の歴史を、古代・律令国家時代から室町時代の大規模一揆、江戸時代末期の社会不安と「ええじゃないか」運動などなどを取り上げていく。その思想の下にあるのは60〜70年代の全共闘運動へのシンパシーがあったのだろう。破滅すると分かって体制に挑戦する姿勢を見て、残酷物語を描き続けた小説家は感じるものがあったのだろう。西洋にはイギリス清教徒革命/アメリカ独立戦争/フランス革命という、民主主義の発端となる民衆革命があったが、日本史の中には対応させるものがない。だから彼は民衆の視点から、成功しなかった反抗を切り取っていった。成功しないからこそ残酷な美しさがある、ととれる倒錯した思考も手に取れるのがちと皮肉なのだが…。




今日の音楽は、ポストパンクがテーマです。

ECHO THE BUNNYMEN「CROCODILES」

ECHO & THE BUNNYMEN「CROCODILES」1980年
●この前、茶沢通り沿いの古道具屋・ばら商会で買ったLPレコードはコレでした。540円。盤面がちょいとだけカビッぽい気配がして、買うのはナイかなーと思ったんだけど、クレジット見たらプロデューサーが BILL DRUMMOND だってのに気づいてソッコー買ってしまった。彼は80年代末〜90年代初頭のレイブシーンでテクノユニット THE KLF を組織して活躍する男だ。ボクは当時のレイブ時代にリアルタイムで彼を知ったが、その時からコイツがオリジナルパンクスだってのは聴いてたんだけど…エコバ二のデビューに絡んでるとは知らなかった。
エコバニの中心人物 IAN MCCULLOCH JURIAN COPE と共にバンド THE TEARDROP EXPLODES を立ち上げたものの、即座に脱落して自分のバンドを作った人物だ。結成当初はドラマーがいなかったので、ECHO社のドラムマシーンを使ってたのがバンドの名の由来ってのは、ワリと有名な話。そんな因果があるのでナニゲにこの二つのバンドは似たムードがある気がする。両方ともデビューに BILL DRUMMOND が関与してるし。
●てっとりばやく言えば、ポストパンクの辛気くさい感じが濃厚ですわ。ペッタリしたドラムにうねるベース、そこに深いリバーブがかかったギターが切り込む。このころ1980年って JOY DIVISION IAN CURTIS が自殺しちゃった直後なんだよね…その気分を引きずった感じがあるし、当時のファンもその気分をこの新しいシンガーに見出したんじゃないだろうか。その一方で、辛気くさいダークなオーラがそのまま不思議な陶酔感を伴っていて。やはり深いエコーに埋もれた IAN MCCULLOCH のエモーショナルなボーカルとシンセやギターのアレンジが、ヒンヤリとしたサイケデリック表現に到達しちゃってる。本人にそのツモリがどれだけあったか微妙だけど。だって元祖サイケと時代が離れててシンクロしないし、この人ジャンキーに見えないモン。しかし結果として「ネオ・サイケ」とかいうジャンルができて、盟友 THE TEARDROP EXPLODES THE CURE などと束ねられることに。サイケという意味では THE TEARDROP EXPLODES にそのツモリはタップリだった気がする(バンド名がその気タップリ)が、基本このグループはタダの文系オタクって感じがする。

ECHO THE BUNNYMEN「HEAVEN UP HERE」

ECHO & THE BUNNYMEN「HEAVEN UP HERE」1981年
ダークサイケ基調の辛気くさいポストパンクは前作に引き続き進行中。でもややポップになった印象もあるか?ボクの耳が慣れただけか?薄っぺらいバンドサウンドで相対的に目立ってくるベースラインがファンキーに聴こえてきて。もちろん鋭いエッジで切れ込むギターも凛々しくてイイ。コレもばら商会で540円だったよ。
エコバニって、THE CURE とかやや後発の THE SMITHS とくくられて「ネオアコ」の仲間ってとられるコトもあるけど、やっぱ「ネオアコ」の仲間にはならないと思うなあ。この暗い雰囲気じゃあね。THE SMITHS は別格すぎるし、ネオアコでメジャーになった連中ってナニゲにブラックミュージックにインスパイアされたりしてて(ORANGE JUICE とか SCRITTI POLITTI とか)根っこが違ったりしてるからね。THE CURE の初期の粗末さとゴスへの進化が一番近い気分かも。
●でもね、結局のトコロ、ボクにとってエコバニは三枚目の「PORCUPINE」1983年が一番いいわ。あのアルバムに収録されてる「THE CUTTER」が一番いいわ。しかし、この二枚目のアルバムの最後の曲「PROMISE」には希望に向かって羽ばたく前向きさがあって少し好き。まるで朝焼けの空に飛び立つ海鳥のようだから。

BAUHAUS「IN THE FLAT FIELD」

BAUHAUS「IN THE FLAT FIELD」1980年
●実は同タイミングにデビューしとったゴシックロック/ポストパンクの本命バンド。昔の音楽マニアはポジティヴ・パンクとかいうね。ボクは違和感感じる…全然ポジティヴじゃないもん。暗黒&悪意で真っ黒だもん。圧倒的に耳障りなギターにドロドロしたドラムとベース、そして気が触れた呪術師のように叫ぶボーカル。いわゆるパンクロックのように明快な構造やフォーマットでもないから分かりづらい、むしろネガティヴパンクだわ。ただ、ロックとしてのスリルは、申し訳ないけどエコバニよりもずっとレベルが高い。まさしく恐いもの見たさ。DANIEL ASH の乱暴なギターがとにかくカッコイイ。もちろんテンション高過ぎるボーカルの PETER MURPHY も猛烈にカッコイイ。
●それと、意外なコトに T.REX「TELEGRAM SAM」をカバーしとる。意外なほど真っ当に、そのブギウギなテイストをワイルドに増幅しててすっげーカッコいいッス。アルバム未収録だけど DAVID BOWIE「ZIGGY STARDUST」もカバーしてより人気を集めたそうな。コッチも聴いてみたい。こんな感じに彼らの芸風はグラムロックにも影響されてたよう。コレは意味があるコトだ。結果として彼らは大分ケバケバしいカッコをしてステージに上がったし(髪の毛をツンツンに逆立てて、顔は白塗り)、それが後代のヴィジュアル系バンドに大きな影響を与えるのだから。まさか極東の島国がそのヴィジュアル系の拠点になって「VISUAL-KEI」として海外に逆輸出されるとは思わなかっただろうけど。
●レーベルは 4AD だわ…後には耽美的で美しい音源を次々に出す名門だけど、最初はゴスの暗黒から出発してたのね。

BAUHAUS「MASK」

BAUHAUS「MASK」1981年
●ナゼかのパンダちゃんジャケ。狂気のブッ壊れパンクサウンドから、少し整理されたニューウェーヴ風味に移行してみた感じ。グルーヴに弾む疾走感と多彩多芸になったギタープレイ。シングル「KICK IN THE EYE」は完全にニューウェーヴ・ファンクだもんね。CD版ボーナストラックではダブのアプローチやレゲエ、トライバルビートにもチャレンジ。THE POP GROUP 周辺のブリストル一派を意識してる感じ。とはいえクールなポストパンクの佇まいには留まっていられず、PETER MURPHY は相変わらずアグレッシブ。

BAUHAUS「THE SKYS GONE OUT」

BAUHAUS「THE SKY'S GONE OUT」1982年
●ポストパンクの疾走感が痛快な三枚目。一方で耽美的な奥行きを備える楽曲も登場。この新機軸ともとれるシングル曲「SPIRIT」は、奇しくもエコバニの二枚目を手掛けた HUGH JONES のプロデュース。基本はセルフプロデュースの彼らにしては珍しい施策。三部構成の組曲風のアプローチはちと退屈だけど。

BAUHAUS「BURNING FROM THE INSIDE」

BAUHAUS「BURNING FROM THE INSIDE」1983年
BAUHAUS 解散のキッカケになるアルバム。ボーカル PETER MURPHY が病気でうまく参加できないままに制作されたため、メンバー間で亀裂が発生。このアルバムの発売直前にバンドは解散してしまっていた。制作の主導権を握っていたのはギターの DANIEL ASH とベース DAVID J の二人。彼らがボーカルをとる曲もいくつかある。気のせいかギターがいつもよりも奔放。トラディショナルギターみたいなアプローチもあるし、ザクザクコードを刻んでいくのも珍しいっていうか。いつも軋むように叫んでくギターばっかりだったから。確かに結果的にはバラエティ豊かな内容になったけど、いわゆる BAUHAUS らしさとしては散漫になったかも。
●この経験で自信を得たのか、ボーカル PETER MURPHY 以外のメンバーは新バンド LOVE AND ROCKETS を始動。BAUHAUS とは直接関係ないニューウェーヴ路線を歩んでいく。PETER MURPHY はソロ活動に移行するが、その前に JAPAN のメンバー MICK KHANDALIS CAR という短命ユニットを結成してる。このユニット、今まで知らなかったんだけど、レコ屋にいつも売れ残ってて。なるほど、そんな由来の物件だったのね。今度買っちゃおう。
●結局、CD版のボーナストラックが一番オモシロかったよ。シングル曲の「LAGARTIJA NICK」、ニューウェーヴ・ダブ「HERE'S THE DUB」、解散記念ファンクラブ限定音源「THE SANITY ASSASSIN」、どれも傑作。

SAVAGES「SILENCE YOURSELF」

SAVAGES「SILENCE YOURSELF」2013年
●80年代から飛躍していきなり去年の音源。こちらはロンドンで結成された女性4人組。タワレコで見たPOPには「女性版 JOY DIVISION 21世紀に登場!」。これにココロ奪われた。POPに違わぬダークでモノクロームなアトモスフィアと生き急ぐような疾走感&焦燥感。もちろんゴス要素もシッカリ抱きしめてる。ポストパンクリバイバルと言われて数々のバンドが登場したが、ココまで80年代のダークっぷりをカッチリ共有している連中は他にはナカナカ見つからないよ。チリチリと赤黒く燃えるガレージ魂もアナドレナイ。あ、しかもボーカルの娘はフランス人なんだ。

CAIFANES「MATENME PORQUE ME MUERO」

CAIFANES「CAIFANES VOL2」

CAIFANES「MATENME PORQUE ME MUERO」1988年
CAIFANES「CAIFANES VOL.2」1990年
CAIFANES「EL SILENCIO」1992年
CAIFANES「EL NERVIO DEL VOLCAN」1994年
これは3年前に行ったメキシコ旅行の時に買った物件。4枚入りでこのバンドのアルバムが全部網羅できるセットで買った。そう、メキシコにもポストパンクな連中がいたのですよ。まー言葉がほとんど通じない買い物だったから、店員さんがレコメンしてくれるままに、しかも関係ないお客さんまでレコメンしてくる状態で、なんだかワカランけどメキシコではモストフェイマスなロックバンドだ、って説明だけで買った。
●で、日本に帰って聴いてみたら…こりゃ珍味だと。つーか、メキシコでのCDの収穫はヌグイさるコトが不可能ってくらいに徹底してメキシカンなのですよ、ラテンのリズムがベースになってないモノがない。平積みされてるのは JENNIFER LOPES とか SHAKILA だし、ヒップホップも限りなくレゲトンだし、クンビアとか健在だし。でも、このバンドは、ヌグイされないラテン風味はあるけれども、英米のロックへのシンパシーもシッカリと根を下ろしていて独特の風味を放っているのです。アゲアゲこそが命のメキシカン・ミュージックとは異質な、奇妙に冷めた感覚が残っている。しかもただのロックではない…コイツはポストパンクだ。時代が大分下っているからその風味は溶けて薄まっているが、ECHO & THE BUNNYMENTHE CURE、JOY DIVISION のダークな感覚がキチンと備わってる!と感動したのでありました。あの国民性でダークでいるってかなりシンドイ気がするぞ、きっと大変だったろうな。
●英語のWIKIに詳しくキャリアが乗ってて助かる。結成は1987年。彼らのデモを聴いたディレクターもスグに THE CURE THE JESUS & MARY CHAIN の影響を感じたという。「GENRES」の記載も POST-PUNK / PROGRESSIVE ROCK って書いてあるぞ。1980年代は「ROCK EN ESPANOL」=スペイン語ロックが一気に国際化する時代。同じ言葉を話すラテンアメリカ諸国から国境を超えてヒットするバンドが登場する段階。メキシコのロックはメキシコ人だけではなく中南米全体で聴かれるのだ。アルゼンチンから、ペルーから、チリから、様々な才能が登場する中、この CAIFANES もこの「ROCK EN ESPANOL」第二世代として打って出る。そして国民的支持を得るのだ。メキシコのロックバンドとしては初めての一万人動員コンサートにも成功。全盛の1994年にはスタジアム級バンドに成長、THE ROLLING STONES のメキシコシティ公演のオープニングアクトを務め、PETER GABRIEL の主催するワールドミュージックの祭典 WOMAD にも出演する。そしてその全盛の中で解散するのでした。
●デビューアルバムのタイトルを英語にすると「MATENME PORQUE ME MUERO」=「KILL ME BECAUSE I'M DYING」。やっぱりどっかポストパンクでゴスの気配がするでしょう。セカンドは通称「EL DIABLITO」=「THE LITTLE DEVIL」クールで冷えたテンションはキャリアが進むほど冴え渡り、土着のラテンリズムから脱却していく様子も見て取れる。というかポストパンクというククリも超えて最終的に普遍的なロック表現に到達してる。「ROCK EN ESPANOL」ムーブメントが広く認知された結果でしょう。もちろん英語はゼロ、全部スパニッシュなので言葉の節回しや響きも独特で非常に新しい気持ちで聴ける。

EINSTURZENDE NEUBAUTEN「DRAWINGS OF OT」

EINSTURZENDE NEUBAUTEN「DRAWINGS OF O.T.」1984年
●メキシコのポストパンクまで来ちゃったので、さらに飛躍して、ドイツのポストパンク/ゴス、ていうか、ノイズ・インダストリアルとアヴァンギャルドの極北まで行ってみました。東西統一以前の西ベルリンで結成されたこのバンド、難しいドイツ語は「アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン」って読みます。英語にして「COLLAPSING NEW-BUILDING」=崩れ落ちる新しい建築物って意味だそうです。オフィシャルとしては二枚目のアルバム。LP二枚分にタップリのノイズ塊。
●インダストリアル・ビートのスゴいヤツを期待すると拍子抜け。リズムらしいリズムもビートらしいビートも、なんもろくにないママ、ボソボソとしたツブヤキと叫び、金属を叩くような耳障りな音が、カキンカキンコンコンゴーンゴーンキーコーキーコーチンチンカーンカーンキューンカカカカカカンコーンとずーっと続きます。ハードコアにパンク的価値解体が音楽表現そのものに対して突き詰められた結果、音楽ではなく音響、というか雑音だけという素粒子レベルへの分解が徹底されて、その様子はまさしく暗黒。無意味の暗黒。ダークマターか?不可知の境地。ゴスの美学もここまで切り刻まれるとカタチを成すコトが出来ません。あ、LPの二枚目はライブレコーティング。でもスタジオ録音となんら質感は変わりません。虚無。
こんなの聴いてるからメンタルヘルスがおかしくなるんだよ、とご指摘あるかもしれませんが、まー反対に健康な時には却って聴けないタイプの音楽かも。解体の果てのニヒリズム。ニヒリズムって理性によって世界の価値体系を否定する姿勢と思ってる人いるかもしれないけど、ホントはちょっと違うと思う。世界の価値体系を否定する理性すらを否定分解すると、世界の現象は全てノイズの奔流になり、統合失調症のような認識不全に陥る。そんな光景をレコードに記録したこの作品はある意味で純粋。そして結果的に価値がある。
●バンドの中心人物 BLIXA BARGELD はこのバンドと、NICK CAVE のバンド THE BIRTHDAY PARTY NICK CAVE & THE BAD SEEDS を兼任していく。NEUBAUTEN に専念するようになったのは2000年代になってから。へーそんな縁が NICK CAVE とあったんだ。そっちの方も今度聴いてみるか。


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