●誰か、ブリジストン美術館で今やってる「デ・クーニング」展に興味ある人いないかな。
●なんか、すごく気になるんだけど。まあいいか。


塩野七生、また読み終わった。

塩野七生「ローマ亡き後の地中海世界」

塩野七生「ローマ亡き後の地中海世界:海賊、そして海軍」1〜4巻
塩野七生は文庫本にしてこれで60冊くらい読んでしまっただろうか。43巻に及んだ「ローマ人の物語」からの腐れ縁で、ローマ帝国が滅びた後の世界がどーなったのか、その混沌とした中世世界を彷徨ってみた。ローマ時代は南欧&北アフリカは親密な仲良しで同じ帝国の政治的秩序に収まって交易も往来も盛んだった。しかしイスラム帝国の出現でこの海が危険な文明の裂け目になってしまう。ボクの中では、クレバーな東西交易で1000年栄えたヴェネツィア共和国の歴史を綴った「海の都の物語」&狂信的暴走が先走る西欧社会とイスラム社会の激突「十字軍物語」と並び、塩野七生ワークスの中ではローマ帝国とルネサンスをブリッジする位置付けの著作がコレ。イスラム海賊がいかに傍若無人に地中海を荒らしまくっていたか、そんな状況下でオスマントルコ帝国やローマ法王&神聖ローマ帝国皇帝、イタリア諸都市、スペイン王/フランス王がどう立ち振る舞ったかがアレコレ書かれていた。西地中海はトルコ帝国本土から見ても遠く支配がフワついた地域、無秩序な海賊行為がバンバン行われていたが、まー政治的ライバルの西欧諸国が痛むぶんには大歓迎と荒くれ者の狼藉をトルコは奨励、名のある海賊を正規海軍の最高幹部にフックアップする。まー海賊マンガ「ワンピース」な世界観とは無縁の凶暴なカオスがこれまた1000年以上も続いてたとな。軍事的にも非力で政治的分裂を克服できない後進エリア〜中世ヨーロッパの不甲斐なさが皮肉っぽくダラダラ綴られている。中世は暗黒。今のリゾート地帯としての地中海ビーチは18世紀以降じゃないと出現しないとな

「海の都」「十字軍」2シリーズを読破した上では、この本からはブッチャケやや出がらし感が出てしまっている。大事な歴史的トピックは別の本とネタかぶりしてて、重要なポイントになると「〜という本で詳述したのでご参照願いたい」と省かれてしまう。うお、おもろいトコロが抜けてる!うーん、塩野七生がなんだかオモシロくなくなってきたかも…。とつぶやいたら、ワイフが「アナタ、こんだけたくさん読んできて、やっと気付いたの!遅すぎるわよ!」とツッコンできた。でもコレで彼女の古代〜中世ものはほぼ網羅できたような気がするので、ルネサンス時代を扱った著作を読んでいこうと思う。人間の時代の到来。この前 Hulu で「ダヴィンチと禁断の謎」ってアメリカドラマを見つけたからね、この時代の有名人を眺めて行きたいんだ。




ヒヨコに「勉強をする意味ってナニ?」って聞かれた。
モノをたくさん知っていれば、新しい場所に行く時、新しい人に会う時、新しいコトを始まる時、感じ方や考え方が深くなって楽しくなってくる。沖縄に旅行に行った時、沖縄の勉強したろ。カチャーシーの踊り方も YouTube で調べたろ。じゃなきゃキレイな海で泳いでオシマイだろ。退屈に思える中世史もルネサンスの高揚を思えばすごく興味深くて面白いしね。
「はい、そのネタいただき!」ヒヨコは作文メモと称して、受験勉強の小論文の小ネタを書き集めているのだ。いつも与えられたお題に頭を抱えているので、噛み砕いてヒントを与えてやってる。

ヒヨコの受験勉強。
●我が娘ヒヨコも小学六年生、今や受験勉強も大詰めの段階ですわ。あと実質2ヶ月で本番の試験が始まる。
●で、この期に及んで模試の成績が落ちまくってる…うーん、困ったもんだ。夏休みまでは目標偏差値をキープできてると思ってたんだけど、ツルツル滑って偏差値40台に突入。いや、長男ノマドと違ってヒヨコはたいして勉強が好きじゃないし、将来身を立てるとしても高学歴とかでバリバリやってくタイプでもないと思ってるので、別に最初から目標も高め設定はしてなかったんだけど、平均より低いのはねー。

長男ノマドとヒヨコは人格のタイプが違うのよね。
●長男ノマドは受験志望校へのモチベーションが結構高く、弱点が判明すれば黙々と自力で克服したり、効率や能率を考えたりと、ちょっとのリードで自分なりのプランをイメージして勉強する。ここで苦労すれば素晴らしい結果が数ヶ月後に得られると自分で考える。だから、どこか安心もできた。根本的に、自分の好きな領域では知的好奇心が作動して勉強にも熱心になれるタイプだ。

IMG_2936.jpg IMG_2935.jpg

ノマドは自分でこういうのを作って壁や天井に貼ったりしてたのですよ。
●で、補欠合格というギリギリラインで、第一志望校に入学できた。まあ今では、ユニークな校風に憧れてたものの、外から見たユニークさのナナメ上をいく想定外のユニークさに翻弄されまくってビビってるけど。中学一年生とは思えない難易度の数学(ノマドから見て叔父さんにあたるボクの義弟フッキーくんに、メールで解き方を指南してもらってる)や、視点が意外すぎる歴史の授業(突然、沖縄の歴史だけに一学期全てを費やしたり、砂糖の流通という視点から世界史を俯瞰したり)に手こずりまくってる。


しかしヒヨコは、モチベーションを長いスパンで持続することができない。
●というか、目の前の楽しいコトにしか関心がない。というか、実際に毎日が本当に楽しくてすでに充足しちゃってるらしい。ここで我慢して何かを勝ち得るというモチベーションの持ち方を元来から知らない。3歳からやってるバレエも、先生にどんなに怒られても自分が楽しくてやってるのだからヘノカッパ。レッスンに行きたくないなんて聞いたことがない。塾の合宿ですら、最初は「こんなにいっぱい勉強するのやだなー」とか言ってたのに、直前になったら「軽井沢ってどんなトコロかな?新しいトモダチできるかな?」とワクワクしてしまう。なんでもない一日なのに「ああーなんかとっても楽しい気持ち!」と言いながら校や塾から帰ってくる。よくワカランけどワクワクが毎日いっぱいありすぎるなんて、ある意味で驚異的な才能とも思えるのだが、ともかく長期的な展望を持てないタイプなのだ。

●でもね、とにかく目の前の成績はよくないからね。
●様々な活性化作戦を実行してるのですよ。

「がんばったポイント作戦」〜アニマルパラダ〜イス!計画書。

ヒヨコの勉強1 ヒヨコの勉強2
(あ、右の写真は教科書への落書きね、文脈に関係ありません)

●壁にポイント表を貼って、1日分のタスクを良い子でキチンとやりきったらシールを貼ることができる。これが5ポイント貯まったら、下北沢のおしゃれトイショップ「プレゴランド」ドイツ製の動物フィギュアを一個買っていいというルール。これを定めた。そしたらヒヨコたちまちカリキュラムをザクザク進めて、たちまち動物を10匹ゲットしてしまった。ガゼルやムース、パンダの親子たちがヒヨコのデスクに飾ってある。次はどの動物にしようかと、プレゴランドの売り場に通うようになってしまって、お店の人に顔を覚えられてしまったほど。「一匹だけ売れ残ってるシカさんがいるの…仲間がいなくてかわいそうだからヒヨコが買ってあげるの!」
●個人の先生がやってる国語専門塾にも通わせているんだけど、ここでもポイントをゲットしてしまう。ノマドも通った私塾だったんだけど、作文などの成績優秀者には5枚集めると図書カードをもらえるポイント制度があったという。国語が苦手なノマドはそんなポイントには無縁だったので、去年は制度の存在すら知らなかったのだが、ヒヨコはいきなり3ポイントゲットしてきた。「このままポイント荒稼ぎだよん!」目の前にニンジンがぶら下がると、いきなりパフォーマンスがよくなる。とんだマテリアルガールなのだ。
●ただ、ヒヨコにとっては、根本的にはどこの中学校に行っても自分はソレナリに楽しく過ごせるという無根拠の自信が天然で備わってしまっているので、「あの学校には行きたくない、あの学校に行きたい」という動機が作動しない。もちろん目標校は魅力満点なのだが、ダメならダメで大丈夫だし!と本人が思っている。微妙だなあ。

で、最近のボクは、ヒヨコの苦手問題の参考書を添削してやってる。
ヒヨコは、グラフや図表からのデータの読み取りや論理的な推測が死ぬほど苦手だ。ヒヨコは明白な物理的イメージができないと関心も持続できない。あれは4年生の時だったろうか、分数の割り算がワカラナイ!という。「なんで1を2分の1で割ったら二倍の2になるの?意味わかんない!」「りんごが何個とかさーピザの切れ端とかでさー説明してよーヒヨコでもわかるユニバーサルデザインでさー!」
●だから「グラフ・図表」問題集を買ってきて、みっちり寄り添って解説した。棒グラフや折れ線グラフの読み方、問題文の読み方から回答の書き方、為替変動と輸出輸入の関係(円高だと誰が得する?)などなど。本来はコドモが起きてる時間に帰宅しない残業常習社畜のボクなのだが、実は現在たまたま体調を崩して労務部から残業禁止措置を受けている。その結果、ほぼ人生で初めてといえるほどの密度でコドモの勉強を見てやってるのだ。ヒヨコも「パパ、なんでそんな先生みたいな解説ができるの?パパ恐るべし!」って言ってた。意外な父親パフォーマンスでボクが得点ゲット。

ただ、例題に上がってくるグラフの題材が、なんだか日本の将来が困難なように思えて、少々ゲンナリしてくる。日本の人口問題〜少子高齢化の推移。若年人口と老年人口の比率の推移。要介護者認定数の増加推移。年齢別の国民医療費。日本の食料自給率。小麦の国内供給量と輸入率。二酸化炭素排出料の国別比率。発電源別総発電量。世界のバイオエタノール生産量の推移。穀物などの国際価格の推移。林業の国産材/輸入材比率。大学進学率の変化。むー。これ、小学生に解かせるにはちと高度なテーマばっかじゃないか。むーボクが考え込んじゃうよ。



ということで、そんな社会問題のデータを、自分の読書に反映させる。

増田寛也「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」

増田寛也「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」
●人口減少局面に入った日本。しかし、決してのんびり緩慢に人口を減らしていくのではない。大都市圏、主だって東京に人口がどんどん流入しており、翻って東京に人口を吸い取られた地方は急速に人口を減らしてコミュニティが成立しないところまで早晩追い詰められる。こうしたレポートを著者を中心とした有識者会議が発表。福島県を除く全国市町村をデータで分類し、名指しで「消滅可能性自治体」がどこか列挙している。人口再生産のキーになる若年女性人口(20〜39歳)に注目して、この世代が2010年から2040年にかけて50%以下に減少する自治体「消滅可能性都市」と定義。これが全国で896市町村あるそうだ…表紙帯をみればなんとなくわかるだろうが、関東東海関西エリア以外はかなり真っ赤っかだ。この本は、あくまで統計データの読み込みと、対処策となるプランの提示に終始しているので、実際に「自治体が消滅する」とはいかなる状況なのか?そこには触れていない…が、なんだかぞっとする。無人のゴーストタウンが日本を覆う。
出生率でいうと、実は最大の人口密集地域・東京が最低である。東京はすでに人口の再生産/若者の結婚〜子育てにとって最悪の環境だ。近所の親類の物理的な助けもないし、生活費や養育費はズバ抜けて高い。子育てインフラも育休を認める企業文化も貧弱だ。この巨大都市は日本全国の若者を吸い上げているが、その若者が次世代を産み育てるチャンスを確実に奪う。これは、実際に東京に育ち、そして現在進行形で東京で子供を育てているボク自身もリアリティをもって感じる。下町風の商店街が賑わう高円寺の街で子育てを始めた頃、こんだけ店があるのに紙おむつを売ってる店が一軒もないと知って愕然とした…紙おむつまとめ買いのためにクルマを出して郊外店に買い出しだ。ベビーカーを押すだけでこの街がいかにバリアフリーになってないか思い知らされる。保育園探しで復職できない女性同僚。非正規採用スタッフは出産どころか結婚する余裕もないというし、正社員はキャリア育成のために子供は作れないと明言する。ボクの周りでは35歳に初産が普通…40歳でも珍しくない。ボクが生まれた70年代では危険な高齢出産だろうが…もちろん今の医学水準は進んでいるのでボクは普通にお祝いするが、リスクはどうしても高くなる。不妊治療に心身苦しんでいるケースもある。そうこうしているうちに、巨大人口都市・東京は、巨大高齢者都市になる。高齢者ケアインフラがパンクし、都会でサービスを受けるのはどんどん高額になるだろう。行政サービスの比重が高齢者に傾き、ますます若年層支援や人口再生産は後手に回るだろう。

●地方の実態は、ボクには体感がない。雇用がなければ若年層はその土地を離れるだろう…財政出動型の公共事業で無理くり雇用を産んでもナンセンスなのは明白だが、高齢化が進む医療・介護分野が雇用の受け口になるかといえば、そうでもない。すでに十分進んでいる高齢化の向こう側は、その高齢者も亡くなってしまっての人口減だ。介護を受ける人もいなくなれば医療も介護も雇用を生まない。結局、東京/大都市圏とは差別化した産業を形成しなければならない。ほぼ県内全域が真っ赤な「消滅可能性自治体」秋田で唯一の例外は、八郎潟を干拓して株式会社組織での大規模農業経営を確立した大潟村だ。ここだけが若年女性人口を上げていく予想が立っている。儲かる農業、儲かる産業、があれば人口は維持できるという。
「撤退戦」という言葉が頻出する。日本の人口減少は歯止めがきかない。歯止めがきかないなら、どれだけマシなやり方でそれをしのぐか、というコトを想定している。かつて第二次大戦の日本軍はこの「撤退戦」ができなかった。伸びきった戦線を縮めて被害を小さくするよりも、向こう見ずな玉砕を選んだ。人口減少を食い止める政策は散々議論されて結局効果を生まなかった。地方の産業振興も散々工夫されて実を結ばなかった。今は全国一様の政策や地方分権〜道州制のようなザックリ議論で問題を解決できる段階ではない。現在は、それぞれ個別の自治体が、自分たち個別の運命を見定めて、どのような存在価値を見つけるか、ということを考えるフェーズだ。地方の中でのハブ都市は、東京まで人口が流出する手前のダムの役割を担い、その周辺地域全体での役割分担をマネジメントしなければならない。
●2040年は、ボク自身が高齢者になる時期であり、ボクのコドモが今のボクと同世代になる時代だ。その中で、ボク自身も今後30年近くを我が家族がどうサヴァイブするのがマネジメントしなくてはならない。少々重たいノマドヒヨコの教育コストも、そのための布石投資だと思っている。


保坂展人「闘う区長」

保坂展人「闘う区長」
●ということで、ボクはボクの暮らす地域に責任を持つわけで。で、下北沢を含む東京都世田谷区の現区長・保坂展人氏の本も読んでた。これは結構前に読んでたんだけどね。2011年の東日本大震災直後に行われた選挙で「脱原発」を掲げて出馬し当選、この時の区長選挙は全国区でもニュースになった。彼は旧・社会党の流れをくむ元国会議員で元来はジャーナリスト、下北沢再開発反対運動の支援を受けてるコトもあってボクも彼に一票を投じた。この本では東京電力との摩擦を中心に、構造的な既存電力会社の独占市場をどのように打開し、自然エネルギー導入の余地を作るか、という内容に終始している。まー今のボクの感覚では、下北沢再開発問題ではかばかしい成果が出てこないので、ガッカリしているのが本音なんだけど。
●ただ、彼は再開発反対派のシンポジウムにもキチンと出席してアレコレ発言するし、批判にもキチンと応じる姿勢を見せている。ボクは彼が当選してから3回、そんなシンポジウムで彼の話を聞いている。そこで自治体運営、区政ってヤツの不思議を色々と知らされて、へーと感心した場面もあった。
●彼の発言で知ったのは、世田谷区は巨大な自治体だってコト。人口は2013年で89万人。東京23区でも第1位で、なんとこの人口を下回る県が7つもある(鳥取、島根、高知、徳島、福井、佐賀、山梨)えーっ!そんなに日本の人口って偏ってるの?!だから行政の方針を急カーブで曲げるのは大変だ、と彼はイイワケしたかったみたいだったけど。加えて、世田谷区の区長は1975年以降でたった2人しかいなくて、久々の3人目が保坂氏だってこと。なんと28年も務めてた人がいるそうな。そんな組織は硬直化するんじゃないの?なんだか不安だな。
●しかし、地方経済の困難さってのは想像を絶すると思った。山梨県はテレビ局が民放2局+NHK、徳島県は民放1局+NHK、島根&鳥取は2県のエリアを合体させて民放3局+NHKしかないって事情が奇妙に思えていたのだが、この人口状況を知れば納得だ、だって世田谷区だけにテレビ局が民放5つもあるなんて想像がつかない。いやひとつだって無理でしょ。2012年からJ1に昇格した佐賀県のサッカーチーム・サガン鳥栖もド根性の経営にちがいない。鳥栖市はJリーグ全体でホームタウンとしては人口最小らしい(2013年で7万人強)。ボクは東京関連のスポーツチームには全く興味ないよ…。人口最小県である、鳥取&島根に今年わざわざ旅行に行ったのも、いったいどんな場所なんだろうという興味があったのも事実だ。「格差社会」と呼ばれて久しい日本には、まずこの人口の激しい偏りがあって、そこでなんらかの差が生まれてる。そんな気がしてならない。


山内朋美「こども東北学」

山内朋美「こども東北学」
2011年3月11日が保坂区政を生んだとすれば、この本も同じ3.11状況から書かれた本だ。帯コメは「<東北>っていったいなんだ?ーもしかするとそれは、架空の場所?そして幻想の呼び名?」東北は辺境なのか?辺境ならば辺境たらしめているものはなんなのか?辺境とはいったいなんなのか?辺境に対する中央=東京はなんなのか?この本は平易な文章で綴ろうとしていながら、内容は全く「こども」向きではなく、1976年生の著者(=つまりボクとほぼ同世代)の個人史にまで突っ込んだ、故郷と自分の距離の問題を描いている。
●ボクの中で(すでに間接的にこのブログで書いてるし、後日さらに詳述したいんだけど)人口最小県としての鳥取&島根には、辺境にはなりえない豊かな神話世界と歴史文化があり、独自の豊かさがあるように思えた。実際に旅行で感じた体感ね。同じ豊かさは、沖縄、北海道への旅でも感じた。近代国家・日本に編入される時期すらが大幅に遅い南北の辺境にも、豊かな歴史の積み重なりがあったのだ。こと沖縄は出生率でいうと日本で最高だ。そこまできて、次の関心は「東北」だ。実は一つのカテゴリーにくくるには広すぎる地域でありながら、3.11以降は特別な意味を持つ言葉になった。

東北に対しては、個人的なショックがあった。よく居酒屋で政治議論を戦わせるセンパイがボクにはいる。彼は良識ある左派ポジションから時勢批評などをグデングデンに酔っ払って叫んでたりしてて、ボクにとっては楽しい人だった。ただ、そんな彼が「東北を復興させるのはナンセンスだと思う。すでにあの地域は経済的に破綻していたのだから、そこに血税を投入して元に戻すなんて意味がない」と発言した。これはショックだった。確かに原発周辺地域は当面メドがつかないほど復興が困難なのは明白だ。ただ、太平洋岸の長い海岸線には多くの生活があって産業があって、かけがえのない価値があると素朴にボクは思っていたのだ。「あまちゃん」にアホみたいに感化されていたのかな…岩手県久慈の陽気な海女さんたちと再開通を目指す三陸鉄道の努力は価値があるんじゃないのか?ボクの近しい人にも東北出身が大勢いるし、仕事でも子供の頃の旅行の思い出でも、東北には思い入れがある。…ただ、ボクはやはり東京の人間で、その東北の本質を知らない。おまけに「消滅可能性自治体」として丸ごと真っ赤っかだ。

●遡れば日本史において東北は蝦夷が住まう未開の大地だった。その厳しい自然に豊かな収穫は期待できない。餓死や身売りが普通、それが戦前まで普通の現実だった。地主と小作には凄まじい経済格差があり、その時代に生まれ暮らした著者の祖父母たちは、貧困ゆえに様々な機会が奪われた。そんな運命を享受し「辛抱する」という美学が育った。大自然と古来からの村社会の構造、個人の努力ではどうにもならないモノが目の前にある。自己実現や個性の尊重とはほど遠い世界が当たり前だった時代から「東北」は100年と離れていない。
●著者の個人史は、自分の少女時代にも触れる。「僻地教育」のモデル校として標準語の発音練習や朗読会が行われていたという。方言で書かれた作文は丁寧に標準語に添削される。もしこの地域と都市部に学力差があるとするならば、方言が妨げになってはならない、と教育者も真剣だったのだ。僻地だから都市部に劣る、都市部に合わせることで水準を上げる。その時の基準こそが日本の「中央」である東京だ。福島第一原発は、東京に電力を供給していた。「僻地」が「中央」に奉仕する。この構造は、富国強兵政策で地方青年を軍人として徴発・訓練して標準化し「中央」に奉仕させる構造と同じではないだろうか。

●都会へ出ることと「村」の規範。都会に出るコトは村のコミュニティから切り離されてること、都会の中で根無し草になること。気持ちの中での村への負い目、これは都会で育ったボクには理解しづらい感覚だ…地域に育ててもらった感覚がないからだ…ボクは関東郊外で引越しを繰り返してるし、友人たちも同じで集合離散が激しい。もう地域として人脈がつながった場所は存在していないのだ。かつて育った街を訪れてもそこには誰もいない。全てが入れ替わっている。グーグルマップで確認したら、小学生の時に暮らしていた団地そのものが消滅していた。ただし、東北には送り出した側の感情もある。親や親戚などとの衝突、村全体から「結婚もさせずいつまで遊ばせておくのか」という批判。共同体に重きをおく価値観、個人の裁量に重きをおく価値観。そこのギャップを内側外側から身に受ける「東北」出身者の心情。

●ここまで来て、ボクはイメージする。ボクは東京を離れることができるだろうか?
●都市生活者として染み付いてしまった価値観は、地方では受け入れられないのでは。ITの世界では地方に拠点を置く例も出てきている…スカイプで愛媛県の会社と会議をした時は不思議な感覚だったっけ。ただ、都会で介護難民になるくらいなら、遠い静かな場所を選びたいと思うのかもしれない。または、自分個人の裁量で選び取った、今を暮らす街・下北沢にこだわり続け、区政や地域の問題に積極的にコミットすべきなのか。
人口問題を解決する方法に移民受け入れという考え方がある。「地方消滅」では、人口問題を解決するために移民を受け入れるとすればその量は本当に大きなものになり、日本社会を大きく改変することを覚悟しなければならないとして、現実的ではないという立場を取っている。最近国際結婚をした人に話を聞くと、日本に外国人が永住権を取得するのは本当に大変なコトらしい。結婚するだけでも一苦労なのに、一緒に暮らすのは全く別の苦労が必要だと。そんなに移民障壁が高い国が舵を切ることができるか?それではボクが移民するとするなら?台湾?タイ?インドネシア?オーストラリア?持病を抱えるボクら夫婦が完全移住するのはややこしいなあ。
あ、ボクはコドモたちが外国に移民するのは歓迎するよ。好きな国に行って好きな人と結婚するのもいいだろう。ロンドンで所帯を持つもいい、シリコンバレーなんてうまいこと行ったらスゴイね。シンガポールにボクが遊びに行くよ。日本が泥舟なら、マシな船に乗り換えるのは当然だろう。



転じてアメリカに、人口減少はあるのだろうか?

Huluの楽しいドラマ「アグリーベティ」はクイーンズのラテン系。

アグリーベティ

●名門出版社のハイファッション雑誌「モード」の編集長付きアシスタントに採用されたベティは、ご覧の通りブサイクちゃん。社長のドラ息子でプレイボーイの編集長ダニエルが絶対手をつけないという理由で採用されたのが真相。虚栄だらけのハイファッションとは無縁の生活をしてきたベティが、健気で必死に仕事していく姿がとてもチャーミング、彼女の頑張りに周辺も影響を受けて変わっていく様子が微笑ましい。
●彼女の名前は、ベティ・ソワレス。名前からわかるようにメキシコ系。ニューヨークの下町クイーンズのラテン街で、料理が得意な父親と、ダイエット食品のセールスで身を立てるグラマーな姉、ちょっと乙女趣味な甥っ子と仲良く助け合って暮らしてる。モード界のファッションと、下町感覚ベトベトの野暮ったいベティの衣装の落差が凄すぎる…お姉さんは美人なのに、なんでベティは太っちょでブサイクなんだろう?ただ、すましたマンハッタンの都会生活とはハッキリメリハリをつける下町の温かい人情は、この作品で重要なフックになってる。家族の絆を大切にするベティとその家族!実はこのドラマの制作総指揮は女優サルマ・ハエック(超美人!)で本編にも登場してくる。その彼女が生まれ育ちともにメキシカンなのが、この設定を選んだ理由なのではないだろうか。
●ご存知の通り、アメリカ合衆国の中でヒスパニック系(メキシコ〜カリブ海系)はアフリカ系を抜いて今や最大の人種集団になっている。白人の中でも小分けしたカテゴリーでは最大のドイツ系よりも多い。アメリカも白人社会では少子高齢化が始まっているが、続々と移民してくる彼らヒスパニックを受け入れることで人口を維持し、健全な人口ピラミッドをキープしている。ヒスパニックの若年人口は他の人種に比べて高く、これからもグングン増えていくはずだ。


音楽。アメリカのラティーノ/チカーノ世界。

FRANKIE J「WHATS A MAN TO DO ?」

FRANKIE J「WHAT'S A MAN TO DO ?」2003年
●暗い記事を書いているウチに気分が落ち込んできたので、プレイヤーに差し込んでみたメキシコ系シンガーの歌声が予想以上に優しくて、神経が実に癒される。爽やかな風のようにソフトで優しい声がスマートに洗練されててとても気持ちいい。メキシコ旅行の前後でラティーノカルチャーに興味を覚えて買い集めてた音源だったんだけど、実はほどんど聴いたことがなかった…メキシコ風味を求めたらカラスベリするほどスマートでオーセンティックなR&B、しかし、が故にすごく新鮮に聴こえる。とにかくハイトーンのボーカルがスイートで。
●彼はメキシコ+アメリカ国境の街ティファナで生まれ、カリフォルニアのサンディエゴで育った男。キャリアの初期は KUMBIA KINGS というメキシカンバンドのメンバー(担当はパーカッション)を務めてたようだが、その後ソロシンガーとしてメジャー契約、最初のアルバムがコレだ。ラティーノ系のR&Bプロデューサーなんて全く知識がないのだが、クレジットを見る限り、彼の音楽には CHARLES CHAVES HAPPY PEREZ という人物がかなりの比率で関わっている。そして彼のブレイクを助けるテキサス・ヒューストンのチカーノ・ラッパー BABY BASH も二曲で参加。なお、同じ年に同じ曲をスペイン語で歌ったスパニッシュアルバム「FRANKIE J」もリリースしてる。

FRANKIE J「THE ONE」

FRANKIE J「THE ONE」2005年
このアルバムが彼にとってのブレイク作になった。テキサスのメキシコ系ラッパー・BABY BASH を客演に迎えたシングル「OBSESSION (NO ES AMOR)」がラジオでヘビロテ。コシのあるヒップホップソウルを爽やかに乗りこなし、セクシーなスパニッシュをサビに挟み込む様子がクール。BABY BASH とはもう一曲「SUGA SUGA」で共演。これは BASH のデビューアルバム「THE SMOKIN' NEPHEW」2003年に収録されたヒット曲で、FRANKIE が客演。その FRANKIE 主体バージョンがこちらにも収録されている。この曲、湿ったメランコリーがクールでサビが実にキャッチー。
●制作総指揮は CHARLES CHAVES、プロデュースに HAPPY PEREZ の他、王道R&B/ヒップホップソウル職人 BRIAN MICHAEL COX が光る仕事を見せてる。客演にはやはりテキサス・ヒューストンのラッパー、PAUL WALL や三人組女性シンガーグループ 3LW が参上。

FRANKIE J「UN NUEVO DIA」

FRANKIE J「UN NUEVO DIA」2006年
●ヒットアルバム「THE ONE」と同じ年に出されたスパニッシュアルバム。多少のヒット曲にカブリはあるけど、内容はほぼ別物。リリックがスパニッシュになっても、ベタつかない爽やかなセクシーさは健在。チカーノにありがちなコテコテモリモリ感を絶妙に回避して、ストレートなR&Bを展開している。抑制された高音が可憐な「PENSANDO EN TI」は本当に美しいね。あ、この曲は FRANKIE 自身のセルフプロデュースなんだ。基本は HAPPY PEREZ が制作を担当しているけど。「MORE THAN WORDS (MUCHO MAS)」はハードロックバンド EXTREME 1991年のシングルのカバー。なんとなく聞いたことあると思ったら。

FRANKIE J「PRICELESS」

FRANKIE J「PRICELESS」2006年
ジワリとヒップホップ濃度が上がった5枚目のアルバム。一曲目からダーティサウス代表プロデューサー MANNIE FRESH のトラックで、ヒューストンのラッパー CHAMILLIONAIRE と共演。バウンシーにうねるベースと爽やかに戯れるハイトーンボーカルにワイルドなラップのフロウが交錯する。他にもクリーブランドの個性派 KRAYZIE BONE & LAYZIE BONE の速射砲メロラップとも共演。でも基調はオーセンティックなR&Bで、安心して身も心も預けられる。


ドミニカの音楽、バチャータがニューヨークで鳴っている。

AVENTURA「14+14」

AVENTURA「14+14」2011年
FRANKIE J の出世曲「OBSESSION」は実は彼らのオリジナルをカバーしたモノだ。この四人組男性グループは、ニューヨークで育ったドミニカ移民の連中で、故郷の音楽・バチャータを故国の言葉スパニッシュで歌う。いわゆるコテコテのラテンテイスト全開チャカポコリズムに哀愁のギターが絡んで、悲恋などなどの嘆きを歌うのがバチャータという音楽。ラテン文化とアフリカ文化が溶け合った結果生まれたリズムがドミニカ経由カリブ海諸国に伝播、そしてそれがニューヨークの移民の子供たちに遺伝しているというわけだ。しかしやっぱりキチンとニューヨーク育ち、そこはかとなく洗練された R&B の要素を忍び込ませ、ボーイソプラノのような高く甘い声が可憐。とはいえ、アーバンR&Bに消化しきった FRANKIE J のバージョンと彼らのバチャータ・バージョンは、英語×スペイン語の差もあって全然同じ曲に聴こえませんわ。
実はメキシコ旅行の時に買ったんだけど、日本に戻ってからアメリカのグループと知ってビックリ。1994年から活動して2011年に一旦活動休止、その際にリリースされたベストアルバムがコレらしい。

AVENTURA「LOVE HATE」

AVENTURA「LOVE & HATE」2003年
ヒューストンにて FRANKIE J BABY BASH「SUGA SUGA」への客演で注目されつつあった同時期に、リリースされた彼らの3枚目のオリジナルアルバム。ベストと違って脇道に逸れる瞬間が多いので、そこでヒップホップテイストが垣間見れたりもする。でも基本はコテコテのバチャータ哀愁のギターは、エレキギターを単音で爪弾くだけでも十分に機能するんだなあと感心。そして甘いハイトーン。ちなみに、FRANKIE J カバーの原曲「OBSESION(綴りがちと英語と違う)」は、この一枚前のアルバム「WE BROKE THE RULES」2002年に収録されてる。

AVENTURA「GODS PROJECT」

AVENTURA「GOD'S PROJECT」2005年
●このグループの三枚のアルバムはみんなメキシコで購入。メキシコ人バンドだって一ミリも疑わなかったね。英語もまるで出てこないし。と思ったけど、アルバムタイトルは英語だわ…あー。ジャケ写にちゃんとした本人肖像ない上に、赤ん坊写真が代わりに入っちゃってるけど、あくまでこの4人組すっごくゴツいニイちゃんだよ。どんなに甘いファルセットでも、女々しい悲恋を嘆いても、コテコテのラテンリズムでも、無精ヒゲとマッチョな体格、刈り込んだ短髪が見事にラティーノだよ。
●さて、この局面ではレゲトンのアーティストとのコラボが目玉。ちょうどこの時期がニューヨークを発端にプエルトリコ由来のスパニッシュレゲエ/ヒップホップレゲトンブームが巻き起こるタイミング。2004年に DADDY YANKEE「GASOLINA」が大ヒットしてるという感じ。前半はオーセンティックにバチャータだけど、後半は客演にプエルトリコ出身のラッパー、DON OMAR TEGO CALDERON、そして一卵性双生児の女子二人組 NINA SKY を召喚。スマートなレゲトンに挑んでいる。こうしたバチャータとレゲトンの合体バチャトンと呼ぶらしい。あ、あと一曲でオリエンタル/インド風味のトラックも仕掛けてる。この時期のヒップホップは本当に珍妙なモチーフを持ち出してムリヤリトラックに組み込むのに夢中だったなあ。




●一応、動画もチェックしておく?

●FRANKIE J「OBSESSION (NO ES AMOR)」




●BABY BASH FEAT. FRANKIE J「SUGA SUGA」




●AVENTURA FEAT. DON OMAR「ELLA Y YO」



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