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●噂の「ハウス・オブ・カーズ 野望の階段」マジ面白くて本当に一晩で一気見した!

「ハウス・オブ・カーズ 野望の階段」

●アメリカのネット動画配信サービス「ネットフリックス」がテレビの地上波放送と関係ないところで独自制作&独自配信して大ヒット、なんとアメリカ・テレビ界の最高峰・エミー賞を奪取してしまった。このセンセーショナルな作品が Hulu にて日本でも配信開始!主演のケビン・スペイシーも、エピソード1&2の監督をデヴィッド・フィンチャーにしたのも、インターネット配信ならではのビッグデータから導き出した新型マーケティングの結果であったということも話題になっている。
●お話の内容は、アメリカ政府中枢・ホワイトハウスの中の権力闘争。民主党下院議会のボスである主人公・フランク(ケビン・スペイシー)が自らの野望を実現させるために、様々な権謀術数を繰り広げる。その執念の深さ、駆引きの複雑さ、にドキドキする。なぜボクはこんな丸顔のオッサンに、スゲえと感心してしまうのだろう。シーズン1全13話を全部見たのに、全然スッキリしない!はやくシーズン2を!
●脇を固める女性陣も気になる。駆け出しの女性新聞記者ゾーイ古着とパーカを重ね着してロングヘアを無造作にまとめる気取りないバイト風情の彼女が素朴で好き!と思ったら、女の武器を存分に使って主人公・フランクに接近していく。フランクに骨の髄まで利用される若きダメ議員ピーターを甲斐甲斐しく助けるクリスティーナは、真面目な性格がハッキリわかるクリクリお目目がチャーミングだが、その大きな瞳からポロポロ涙を流してばかり。

ゾーイバーンズ

ゾーイ・バーンズ。ワシントンヘラルド記者からニュースサイトのライターへ転身。フランクからのリークを受けて特ダネをツイッターで発信していく。幼顔にしてタフ!演じる女優さんはケイト・マラという人。




ジャズで少しチルアウト。
●お休みで家でゴロゴロできる今だからこそ、iPod で携帯できないアナログレコード音源をゆっくり聴く。うーん、贅沢な時間だなあ。

菊池雅章「POO-SUN」

菊池雅章「POO-SUN」1970年
和ジャズ。60〜70年代の日本のジャズに手を出すのはほとんど初めての経験。だから、知識もなにもないトコロから出発。ピアノ/キーボード奏者の菊池雅章(まさぶみと読む)さんの軽快なエレピが、エレクトリックマイルスを連想される軽快なファンクグルーヴをグルグルと回転させる。その優雅さが実にリラクシン。真っ直ぐに伸びるサックスの音色も可憐。
●60年代にはキャリアを起こして1968年の SONNY ROLLINS 来日に帯同。同年バークリー音楽大学に留学。帰国後のリーダー作品がこのアルバム…タイトルは彼のニックネーム「プーさん」に由来してるらしい。



鳥取・ボルゾイレコードと、鳥取の街並みについて。
●実は、このレコードは今年の島根〜鳥取旅行で見つけたショップ、BORZOI RECORDS(ボルゾイレコード:鳥取市新町201上田ビル2F)にて購入したもの。ここでもよい買い物ができたし、ご主人と楽しい話ができた。ちなみに、ボルゾイってのはロシア由来の犬の種類らしい。


鳥取の街には昭和モダニズムの香り残るビルヂングが多い。
●と教えてくれたのは、こちらボルゾイのご主人…といっても、ボクより少々年長といったトコロか。山陰地方のCDショップチェーンでバイヤーを担当していたが、その仕事の内容に疑問を抱くようになり、脱サラして自分の店を持つことになったとな。昨今の音楽業界の厳しさは重々承知の上、と思いながらも、独自の路線で5年もお店を続けている。海外の音源から地元アーティストの自主制作音源、東京ほか日本各地のインディものなどなど、一般のお店じゃ取り扱われないアイテムを、自分のセンスできちんと押し出す。そんな姿勢が信頼を集めるのか、来るお客さんがみな馴染みみたいで「お久しぶり!」なんて世間話がポンと飛び交う。
●さて、このお店の入っている建物が、実にシックなビルヂング上田ビルという建物の二階の一番手前がボルゾイのお店。この並びにオシャレなカフェ?みたいなお店がいくつか入っている。コンクリートが職人技でシッカリと塗られている堅実かつモダンなデザインがハッとさせる。しかも、実は鳥取の街の中にはこうしたレトロなモダニズム建築がたくさんあるのだ。なぜだろうか?

ボルゾイレコード

●鳥取の街を南北に貫く目抜き通り「本通り〜若桜街道」沿いには、昭和20〜30年代に建てられた古いコンクリート建築がチラチラと目立つ。実は1952年に鳥取市街は「鳥取大火」という大火事に見舞われ、街全体が焦土になってしまった。それ以前にも1943年の「鳥取大震災」(震度6/死者1000人超)で鳥取の街は大きく傷ついていた。
●これを国が計画的な防災都市として改造すべく、当時の最新技術/最新設計の建築物をたくさん作る。それがそのまま現在まで残って、今や昭和の味わいが深いレトロモダン建築になっているというわけだ。地方都市の宿命として、大規模な再開発が行われなかったことが、こうした貴重な建築物を残す偶然を生んだわけだが、その価値はあまり評価されていないよう…時々、建築を学ぶ学生さんや研究者が訪れるだけで、冬には雪も多く降るこの街の重たいアーケードがその外観を大きく覆って存在感は薄まっている…。

●中身はシックなボルゾイのある上田ビルも、外から見ると、ワリと殺風景。一階は仏具屋さんだし。アーケードがなかったらもっと綺麗な漆喰の色が映えるのに…と思うけど、雪の降る街の商店街にアーケードは不可欠。ボルゾイレコードのある二階に上がるには、建物の右脇、より重たいアーケードの下に踏み込むと見える石造りの階段から。なかなか分かりづらい…見つけるのに結構時間がかかったねえ。

ボルゾイレコード上田ビル

●でも、よく意識して街を歩くと、ユニークで愛らしい建物が見えて来る。
●下の写真は、ボルゾイと同じ「本通り〜若桜街道」沿いにある、定有堂書店というお店の建物。

定有堂書店

定有堂書店。鳥取県鳥取市元町121 定有堂ビル1F。
●ちょっと傷んでしまってるけど、建物左側に5本の縦ラインが個性的。お隣の建物も角の曲面が愛らしい。この定有堂書店は、全国区のカルチャー誌(「BRUTUS」とか)でも紹介される本屋さん。小ぶりの店内から、時流や流行にとらわれない独特な品揃え、独自の視点から整えられた企画色の強い棚の構成、地元出身のマンガ家の分厚いライブラリー(谷口ゴロー作品など)、そして丁寧なコメントを記したPOPなどなど、本をじっくり愛している店主の気持ちがパーっと香り立つ。もちろんこのお店を教えてくれたのもボルゾイのご主人。

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角の曲面がキレイな建物。若桜橋北交差点、春には桜がキレイに咲くという袋川に面してる。この近所には、旧横田医院という、これまたレトロな建物があるらしい。昭和30年代に建てられた円筒型の建物で、病院跡地が今ではギャラリーとして使われているという。

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太平線通り交差点に面した建物。これもまたキレイな曲面が目について。二階には「喫茶1erぷるみえ」というカフェが。ご主人がフランスで学んだスイーツと美味しいコーヒーが印象的でした。




●そんな鳥取の街を思い出しながら、さらに、ジャスのレコードに針を落としてく。

「THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS」

VARIOUS ARTISTS「THE BEST OF BLACK JAZZ RECORDS」1971〜1976年
●ボクが好んでこのブログでもよく紹介するイギリスの再発系コンピレーベル SOUL JAZZ RECORDS。そのセンスにボクは100%の信頼を寄せてるし、その音楽愛にも最高の敬意を抱いている。このアルバムは、そんな彼らの重要なサブレーベル UNIVERSAL SOUND のカタログナンバー「USCD 2」。彼ら SOUL JAZZ にとっても最初期のリリースだし、その名にふさわしいソウルジャズの塊のようなアルバム。
BLACK JAZZ RECORDS とは、1971年から1976年までにアメリカ西海岸・オークランドに実在したジャズレーベル。当時では圧倒的に貴重だった、黒人主体の運営によるレーベルでその短い5年という活動期間で20枚のレコードを世に出した(イリノイ州のジャズレーベル傘下にあったので厳密なインディではないらしい)。ストレートなジャズからスピーディーなジャズファンク、ウェットなR&Bまで濃厚で自由なスタイルの作品が並ぶ。アーティストとしては、DOUG CARN、THE AWAKENING、CALVIN KEYS、ROLAND HAYNES、WALTER BISHOP JR.、RUDOLPH JOHNSON、HENRY FRANKLIN、KELLEE PATTERNSON CHESTER THOMPSON…などなどがここからキャリアを起こす。レーベル自身はプロデューサーであった GENE RUSSELL の死去で閉鎖。
SOUL JAZZ RECORDS の再発紹介がなければボクが知ることのできなかった世界は広い。感謝の思いこの上ない。このレーベルの存在を知ったのはいつのことだろう?このレーベルがロンドンで設立されたのは1992年。そこに先行する レアグルーヴ・ムーブメントの影響があったのは間違いないだろう。でおそらくボクがこのレーベルの音源を買い始めたのが1999年頃。ジャズからレゲエ、R&Bに始まり、現在ではハウス、ダブステップ、ビンテージパンク、民族音楽にまでその食指を伸ばしている。

DOUG CARN「DOUG CARN」

DOUG CARN「DOUG CARN」1971〜1974年
UNIVERSAL SOUND カタログナンバー「USLP1」。このサブレーベルがスタートしたのは1996年。その第一弾がコレ。もう15年以上前なのね。前述の BLACK JAZZ RECORDS の看板アーティストだった彼は、ここに4枚のアルバムを残しており、このコンピは2枚のLPでその断片を聞くことができる。オルガン/キーボーディストである彼の音楽世界は、ジャズファンクの駆動力と神秘的なスピリチュアリティが不思議なバランスで同居するような空間。COLTRANE「A LOVE SUPREME」を翻案した楽曲「ACKNOWLEDGEMENT」の誇り高き威容に震える。
●以前もこのブログで紹介した JEAN CARN というシンガーが、彼のジャズにより一層の艶っぽさを添えている。名の示す通り、彼女は当時の彼の妻。彼女と DOUG 本人ほかバンドメンバーたちのボーカルワークが、本来的にはストイックな彼の音楽をグラマラスかつキャッチーにしている。ちなみに、トランペット奏者でラッパー NAS の父親 OLU DARA が何曲かでクレジットされてる。

「SOUL JAZZ LOVE STRATA EAST」

VARIOUS ARTISTS「SOUL JAZZ LOVE STRATA-EAST」1969〜1975年
●こちらのコンピは SOUL JAZZ RECORDS カタログナンバー「SJRLP19」、1994年リリース。SOUL JAZZ の中でも初期のコンピ。ジャスへの愛がタイトルから迸っているのがわかる。その愛の対象になっているのが、完全なる黒人主体で運営されたジャズレーベル STRATA-EASTニューヨークを拠点としたこのレーベルは CHARLES TOLLIVERSTANLEY COWELL というミュージシャンによって設立された。本来は生粋のプレイヤーだった彼らがレーベル経営に踏み切ったのは、彼らが組織した MUSIC INC. というバンドの新譜が完成したというのに、どのメジャーレーベルにも取扱いを拒絶されたからだ。70年代に入るとソウルやファンクなど新しいブラックミュージックのフォーマットが完成される一方で、ストレートなモダンジャズは古い音楽とされてしまう傾向があったそうな。その一方で、そんなメジャーの無理解からアンダーグラウンドに潜った連中がプログレッシブなジャズの革新実験を繰り広げていくことになる。
●そんな STRATA-EAST の音源がココにコンパイルされる。軽快なファンクネスがクールな GIL SCOTT-HELON「THE BOTTLE」。90年代アシッドジャズの GALIANO にカバーされる PHAROAH SANDERS「PRINCE OF PEACE」の独特な浮遊感。SHAMEK FARRAH「FIRST IMPRESSION」のグラマラスなスピリチュアリティ。

「STRATA-2-EAST - 15 TRACKS ORIGINALLY RELEASED IN THE USA ON STRATA-EAST RECORDS 1972-1975」

VARIOUS ARTISTS「STRATA-2-EAST - 15 TRACKS ORIGINALLY RELEASED IN THE USA ON STRATA-EAST RECORDS 1972-1975」1972〜1975年
●1997年に編まれた SOUL JAZZ による STRATA-EAST コンピの第二弾。この STRATA コンピ二枚は下北沢の老舗レコ屋 FLASH DISC RANCH にて一枚3680円で買ってる。ボクの普段の傾向だと桁外れに高い買い物だが、SOUL JAZZ のアイテムは日本にちゃんと入ってこないので仕方がない。コイツラに関しては、見たら買う、または直でイギリスに発注する、と決めてる。じゃないと入手しきれない。初期アイテムは、だいたい全部持ってるつもりだけど、最初期のモノだけは買い逃したまま廃盤にされてしまったのではないかと心配だ。こいつのカタログナンバーは「USLP6」
公民権運動やブラックパワーへの自覚が、かれら黒人ミュージシャンを独立自営の音楽制作に駆り立てていたのは間違い無い。雄々しいジャズの躍動感がここで爆発している。KANO DUKE、CHARLES SULLIVAN、DICK GRIFFIN、HAROLD VICK、JOHN BETSCH…正直ココで初めて知る名前がたくさん。ただ、そのグルーヴに自然と体が動く。レーベル主宰 STANLEY COWELL「TRYING TO FIND AWAY」のシンセプレイがコズミックで痺れる。ONENESS OF JUJU「FROODOM FIGHTER」の熱いポリリズミック・パーカッションに煽られる。WEIDON IRVINE MADLIB など後年のヒップホップアーティストによって再評価されていたな。ジャズボーカル女傑 DEE DEE BRIDGEWATER のソウルフルな歌唱が素晴らしい BILLY PARKER'S FOURTH WORLD「GET WITH IT」も見事な聴き所。CECIL MCBEE「TURSA BLACK」の粘っこいジャズファンクにも震える。
●ちなみに、STRATA-EAST は今なお存続し過去カタログを管理している。継続は力なり。

MARCUS BELGRAVE「GEMINI」

MARCUS BELGRAVE「GEMINI」1974年
●このレコードのオリジナル盤は、デトロイトの黒人インディジャズレーベル TRIBE RECORDS からリリースされた…なんと1000枚だけの激レアアイテムだったという。西海岸の BLACK JAZZ、ニューヨークの STRATA-EAST、デトロイトの TRIBE、こうしたインディジャズレーベルが70年代の音楽実験を支え、次の世代に継承されていった。実際、このアルバムの一曲目、コズミックな12分の長尺曲「SPACE ODYSSEY」は90年代デトロイトテクノの代表格 CARL CRAIG によって翻案改作されているという。60年代のジャズ、そしてデトロイトの MOTOWN のような R&B〜ソウルの伝統は、ココを経由してテクノまで繋がっていく。
●とはいえ、ここでの音楽は、プログレッシブな構成ながらもオーセンティックなモダンジャズ。17歳からプロのトランペット奏者として活動する MARCUS BELGRAVE は、40年にも及ぶキャリアの中で CLIFFORD BROWN、MCCOY TYNER、CHARLES MINGUS、そして SUN RA とも共演してきた男。時に MOTOWN などでバイトをしながら、ジャズの巨人たちと仕事をし、地元の重要ミュージシャン(ここでは、サックス奏者 WENDELL HARRISON、トロンボーン奏者 PHILLIP RANELIN など)とこうした独自の活動をする。それが70年代のインディジャズの風景。



●ジャズは奥深すぎて、よくわからんのですよー。
●今回の副読本は、こちら。

小川充監修「スピリチュアル・ジャズ」

小川充監修「スピリチュアル・ジャズ」




●一曲だけ、動画を。PHAROAH SANDERS「PRINCE OF PEACE」。
●来年もよい年でありますように。そんな気持ちになる神々しいソウルミュージック。




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