●ある日のヒルメシ。

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新橋駅前ビル地下一階「おくとね」、まいたけ天たまそば。
まいたけが好き。まいたけって、見つけたら舞い上がって踊り出すほどウレシいキノコ、ってのが名の由来だと、昔に先輩から教わった…これホント?でもそれがキッカケでキノコ類が好きになって。で、今でも時々この立ち食いそば屋まで出向いてまいたけ天を注文する。玉子を入れたのはちょっとスペシャルな気持ちで。普段は50円をケチって入れない。この店には必ず一人で行く。同僚などとは一緒に行かない。一人がいい。デスクの女性に「一緒に行きたいですー」なんて言われたけど、女の子が行く場所じゃないよと断ってしまった。
●立ち食いそば屋に一人の客が滞在する時間は、たかが10分程度。食券を厨房のご主人に渡して、セルフサービスのお冷をプラスチックのコップについだら、カウンターによりかかって天井近くのテレビで「ミヤネ屋」のニュースを2分ほど眺めて。ご主人が「まいたけ天たまのお客さま〜」と声をかけられたら、はーいと返事してピックアップ。ぱらぱら七味をふって、ズルズル。でも3分もしないで食べ終わってしまう。ツユは油断すると全部飲んでしまうので、ちょっと我慢して。ふーっと一息、お冷に口をつけて、もう一回「ミヤネ屋」をちらり見て。そしたら、器を返却口において「ごちそうさまでしたー」と声をかける。ご主人とおばちゃんが反射的に「ありがとうございましたー」と返す。視線は合わせない。何回も通ってるのにご主人やおばちゃんの顔は思い出せない。
それでも、これがボクの贅沢。一瞬は確実に仕事を忘れる。
●店を離れて新橋の雑踏の中に入ると、午後や夕方の予定の準備へ自然に頭が切り替わる。仕事に戻る。サラリーマンに戻る。



強くて芯の通った声をまっすぐ聴きたくて。

BEYONCE「I AM SASHA FIERCE」

BEYONCE「I AM ... SASHA FIERCE」2008年
●天下の BEYONCE、3枚目のソロアルバム2枚組。「I AM」というバラード基調のアルバムと「SASHA FIERCE」といういつも通りのパワフルなダンスチューン基調のアルバムを2枚組にしたという構成。無理に突っ込めば一枚に入るのに…。
●でも、この一枚目「I AM」の内省的なバラードの響きがとても可憐で。無敵の強さを誇るかのようなパブリックイメージがあるけど、そんな彼女の内側に秘められていた弱さや感傷が、しっとりとしたミッドバラード6曲で切々と歌われている。声の張りや芯の太さには、いつものブレない強さがあるけど、その力強さが、むしろ逆に様々な葛藤や孤独の中で必死に立ち続ける悲壮な覚悟を感じさせるほど。「AVE MARIA」であの有名なフレーズを実に綺麗な高音で歌い上げているところでは思わず涙腺がゆるんでしまう。
●ボクは、彼女に勝手なイメージを抱いている節があって。ステージ上ではパワフルで強い女性を演じきってはいるが、本来の彼女は実は奥ゆかしくて静かな女性。BEYONCE 本人へのインタビュー取材をした人にその様子を聞いたことがある。予想以上に声が小さくて、ゆっくり落ち着いて言葉を選ぶ人だったという。あれだけの活躍だからすごく自己主張の強い人だと思ってたら拍子抜けだったと。デスチャ時代のドキュメンタリーでは、開演直前のステージ袖でメンバーと共に神様にお祈りを捧げているシーンもあった。そんな本質の部分を、BEYONCE 自らが積極的にソングライティングに関わったこの音源では珍しく吐露しているわけだ。
最近はどうもカラダが消耗してしまっているボクには、今一番優しい音源だ。

●二枚目の「SASHA FIERCE」は普段のイメージの強そうな人格設定をしちゃったペルソナが登場してる。「I AM」サイドでは「BROKEN-HEARTED GIRL」なんて歌を歌いながら、コッチでは「SINGLE LADIES」みたいな曲で独立した女性を鼓舞するような楽曲を、エレクトロ度の高いトラックに乗せてバキバキにキメてる。このアゲアゲチューンは TRICKY STEWART & THE-DREAM が制作担当。「DIVA」&「VIDEO PHONE」はダーティサウスでクランクミュージックなアプローチの楽曲を MR. BANGLADESH & SEAN GARRETT が提供。「SWEET DREAMS」は何かのCMソングだったっけ。この曲と「RADIO」という曲で、JIM JOUSIN & RICO LOVE というプロデューサーが活躍。
「I AM」の方の制作陣は、STARGATEBABYFACE が関わっている他はあまり知らない人ばかり。R&Bには関係のないイギリス/ヨーロッパ系のソングライターとかも起用しているみたい。まー STARGATE も本来は北欧ノルウェーのチームだしね。ONEREPUBLIC のフロントマン RYAN TEDDER の楽曲提供なんかも受けてる。ふーん。

KELLY ROWLAND「HERE I AM」

KELLY ROWLAND「HERE I AM」2011年
●二人目のデスチャKELLY の三枚目のソロ。前述の BEYONCE ソロと同じくモノクロでシックなジャケだけど、コッチの中身は完全にイケイケのアッパーです。時代としては、「SASHA FIERCE」からもっと進んで、R&Bへのエレクトロ導入〜EDMとの合体がぐんぐん進んでいる時期。たとえスローナンバーでも、キンキンしたハイファイシンセと硬質なビート感がツーンと突き抜けている。制作陣は TRICKY STEWART、RODNEY JERKINS、JIM JOUSIN、RICO LOVE、などなどやや BEYONCE の前述アルバムにかぶるメンツ。
●そして REDONE、DAVID GUETTA も参加。LADY GAGA をブレイクさせた REDONE も、EDM の王者 DAVID GUETTA もヨーロッパ系クリエイターだ。この時期はヨーロッパのセンスがドコドコとアメリカのアーバンシーンに移入されてる感じだった。「EDM」という概念自体が、アメリカからのヨーロッパ系ダンスカルチャーの発見のように思える。
「EDM」とは「エレクトロニックダンスミュージック」の意味だが、実はスタイルとしてはユーロポップの世界では00年代から一般的だったトランスやディープハウス/プログレッシブハウスの手法から激変してるものでもない。ただ、実は結構閉鎖的なアメリカR&B/ヒップホップ業界が、今まで無視してきたヨーロッパのスタイルを最新のフレイバーとして組み込んだ時に「EDM」と名前をつけてしまった、そんな気分がある。つまり実質的には「EDM」=「ヨーロピアンダンスミュージック」の略だってこととボクは思ってる。

DESTINYS CHILD「DESTINYS CHILD」

DESTINY'S CHILD「DESTINY'S CHILD」1998年
●突然、BEYONCE KELLY ROWLAND の音源が気になったのは、最近このアルバムを人に頂いたのがキッカケ。これが DESTINY'S CHILD のデビューアルバムだ。BEYONCE KELLY 当時はまだ16歳。だけどすでに芸歴にして8年目。彼女たちは8歳の頃から音楽活動をしていたのだ。すげー。それと、この時は四人組だったね。
●リアルタイム感覚では、ボクがデスチャにハマったのは次のアルバム「THE WRITING'S ON THE WALL」1999年から。そのあたりから、サザンヒップホップ由来のバウンシーな最新系ヒップホップトラックに彼女たちがガッチリ乗っかってきて、ボクのアンテナに引っかかったのだ。この2000年前後は、TIMBALANDAALIYAH の合体コラボによるサイバーなR&Bや新世代トラックメイカー THE NEPTUNESBRITNEY SPEARS をプロデュースするなど、新しいプレイヤーが次々に登場してきて、R&Bがいきなりスリルな分野になるのだ。しかし、その一歩手前のこのアルバムは、まだまだオーセンティックでウェットなR&Bと、90年代マナーなヒップホップソウルでしかない過渡的な状態。とはいえ、4人のメンバーが年齢に釣り合わないスキルでハーモニーを織り成す様子はお見事。早熟すぎる。

●製作陣で目立つのは、TONY! TONI! TONE! のメンバー DWAYNE WIGGINSウェットでオーセンティックなR&Bのアプローチを丁寧に担当。「NO NO NO PART,1」「SECOND NATURE」をはじめとしたオーガニックソウルを捌くにはうってつけの人材だ。そして、THE FUGEES でブレイクしてソロ活動に移行したあたりの WYCEAF JEAN「NO NO NO PART.2」でフロア向けの改変を仕掛けてる。加えてアトランタのプロデューサー JARMAINE DUPRI彼らがヒップホップソウルなアプローチで支援。ちなみに KELLY ちゃんはアトランタ、BEYONCE はヒューストンの出身ね。サウスな育ちってわけです。そんな流れで、ニューオリンズの新興レーベルだった NO LIMIT RECORDS の社長 MASTER P が客演でラップを披露。CASH MONEY の社長 BABY BIRDMAN よりも10倍ザックリした彼のラップは、彼の決め技「ウァー」というウメキ声ばっかりが目立つけど、サザンラップのワイルド感を演出する意味では一応効果的。

デスチャが三人組になっちゃうのは2001年以降。マネジメントが BEYONCE のお父さんということもあって、BEYONCE 以外のメンバーは結構頻繁に入れ替えがなされてたのですよ。同時期の日本では、モー娘。がメンバーの入れ替えを劇的に描くことでグループを盛り上げていく手法を当時繰り出していたので(後藤真希加入が1999年)、このデスチャのメンバー入れ替えもそんな戦略だと思ってた。今や日本のアイドルビジネスでは常套手段というかデフォルトで仕込まなければダメな戦略ね。
●そんな鉄板のアカレンジャー BEYONCE のトナリにいてアオレンジャー的ポジションを解散の最後まで全うした KELLY ROWLAND は実にラッキーだったよ。いつ入れ替えられちゃうか本当心配だった…KELLY のヒョロリとしたスレンダーな体型とでボーイッシュに刈り込んだショートヘアが実はとってもボク好み。ボンキュッボンでフェロモンモンの BEYONCE まで行くとちょっと引いちゃうんだよね。

BEYONCE「DENGEROUSLY IN LOVE」

BEYONCE「DENGEROUSLY IN LOVE」2002年
●この BEYONCE のファーストソロは、既に買って聴いてると思い込んでたのに持ってなかったという物件。だから今回あわてて買い直した。380円だったけど。いやいや傑作ですよ。00年代のヒップホップソウルとしての頂点をサクッと極めてますよ。00年代以降のヒップホップは毎年のようにトレンドが入れ替わって、バウンスだ、クランクだ、スナップだ、レゲトンだ、中東〜インド風サンプルだ、エレクトロだ、などなど落ち着かなくなるわけですが、そんな落ち着かない流行に足を取られず堂々の王道覇道を歩む力強さがあるのです。このころから半ば公然交際していた JAY-Z の王道路線にかぶるアプローチでもありますけど。もちろん彼女のボーカルがスキルフルかつパワフルってのも前提にあります。
●そんなんだから、当時の王道プロデューサーがガンガン参加しています。つーか今尚現役の大物ばっか。RICH HARRISON、SCOTT STORCH、MISSY ELLIOTT、KANYE WEST、THE NEPTUNES など。BEYONCE 自身が筆頭でプロデュースにクレジットされてる曲も多々。ゲストにはレゲエシーンから SEAN PAUL、サウス系〜アトランタから OUTKAST BIG BOI と彼の盟友 ORGANIZED NOIZESLEEPY BROWN。もちろん彼氏の JAY-Z もいるよ。
●80年代ソウルの大物 LUTHER VANDROSS とのデュエットも注目。原曲は ROBERTA FLACK FEAT. DONNY HATHAWAY のデュエット「THE CLOSER I GET TO YOU」圧倒的な伝統的王道ソウルを大物と見事歌い切る根性。その後に続く終幕の曲「GIFT FROM VIRGO」もクワイエットストームなバラード。メリハリが達者。
●日本版で入手したので4曲もボーナストラックが入っててお得!映画「オースティン・パワーズ:ゴールドメンバー」のサントラに収録されてる「WORK IT OUT」が入ってて嬉しい。THE NEPTUNES プロデュースの洒落たトラックでファンキーなサックスと絡む BEYONCE が実にホット。

LETOYA「LETOYA」

LETOYA「LETOYA」2006年
デスチャといえば、BEYONCE KELLY に、MICHELLE WILLIAMS という体制が一般の認識でしょうけど、初期にはこの LETOYA LUCKETT LATAVIA ROBERSON というメンバーがいたのです。ファースト、セカンドの4人体制の頃のメンバーね。でもマネジャーである BEYONCE パパ MATHEW KNOWLES と待遇面で揉めて、ある日突然解雇。2000年のシングル「SAY MY NAME」のプロモ撮影の段階で、後任の MICHELLE とアオ FARRAH FRANKLIN と交代させられるのです。ちなみに、後任だった FARRAH は活動態度が不真面目ということで瞬殺でクビ。こうして3人体制のデスチャが出来たというわけ。当然、この強制脱退に不服な LETOYA LATAVIA は裁判を起こしたりもする。
●クビになった二人はR&Bグループを結成してデビューを画策するもマネジメントが倒産して音源はお蔵入り。その後はソロとしてアレコレがんばってやっと掴んだ再デビューのチャンスがこのアルバム。故郷であるヒューストンのシーンに即した形で、PAUL WALL、SLIM THUG(彼氏だったみたい)、MIKE JONES、BUN B など地元のラッパーを召喚。ミッドレンジの甘めの声を、ヒューストン風の少々ルードでムサいトラックに乗せるスタイルは、まー悪くはない。一方のオーセンティックなR&Bアプローチでは、THE STYLISTICS「YOU ARE EVERYTHING」をサンプルした「TORN」が気合は入っている。ただ、コッチのスタイルで突き抜けた刺激はないかなあ〜。初期デスチャ風ではあるけど、もうそれでは時代遅れなんだよなー。だってもう2006年だもん。
●ちなみに、このCDは三軒茶屋、太子堂バス停そばの古本屋 SOMETIME にて300円で採取。



●動画。
●BEYONCE「AVE MARIA」。リップがズレちゃってるけど口パクじゃないと思うよ。



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