●娘ヒヨコが、タブレットで「MINECRAFT」夢中でやってたら、ぐるぐるまわる世界に酔ってしまって気持ち悪くなってる。コタツでグッタリ。

●イスラム教の本を読みすぎて、ちょっとシンドくなってきた。情報をいっぺんに吸い込みすぎてパンク気味。
●だから、バレンタインでいただいたチョコを、紅茶と一緒に食べてブログ書いてる。ちょっと息抜き。


「HULU」で最近観た映画。

「ONCE ダブリンの街角で」

「ONCE ダブリンの街角で」2007年公開
●ある人に勧められて観てみた…特に期待もしてなかった映画だったよ…だって一目でわかる低予算映画。粗末なカメラの手ブレ感と、フィルムのシックな質感とは別質のアナログテレビっぽい安い感じが、もう最初っからプンプン臭ってたんだもの。で、売れないストリート・ミュージシャンが虚しく路上で歌ってて。で、投げ銭を受けてたギターケースをいきなりひったくられたりして。しょぼい。
●と思ってたのだけど、このしょぼさが、いつしか愛着に変わる。人生を踏み誤った感タップリのギターマンが、人生ギクシャクさせてチェコからダブリンまで移民してきた女の子と出会う。路上での、他愛もない出会い。地味なダメ男と田舎っぽい少女の出会い。そんな二人が一緒に楽器を弾くとき奇跡が起こる。色めくハーモニーと歌心。音楽で結びついた二人は、ちゃんとしたデモテープを作るために奮闘する。

●実は遠目に見れば、たまたま出会った男女の数日のヤリトリを、ビデオで撮りっぱなしにしただけの話。お互いに好意を寄せつつも結局はくっつかない二人の関係も、地味なダメ男のリアリズムとして着地感タップリ。でも、音楽の力が、彼らの数日を貴重な時間にしていく。たった数日のヤリトリだけで、一生の思い出になるような出会いになっていく。付き合いの深さや時間の積み重ねじゃない。永遠に忘れられない出会いと交流は、数日で十分。そんな経験にボクはなんとなく身に覚えがある。別に深く言葉を交わしたわけでもない人物との出会いが、ジワジワと沁みてて、ふと脳裏によみがえる。きっと相手にとっては一瞬で忘れてしまうような出来事なんだけど、ボクにとっては大事だったよ、って感じの経験がね。ムサいダメ男オーラにも親近感。しかもそのダメ男が、その報われなさに、ちょっと慣れちゃってるところにも共感。ドラマチックなトコまで行く必要はないのさ、なにかが心にカスッただけでも十分なのさってね。
ただ、彼の歌う歌は見事だった。基本的にギター一本勝負なのに、決めどころのサビでは十分なエモーションが響いてくる。歌う彼は雄弁で、素直で、ロマンチックだ。ゆっくり聴きたいと思うほどだった。で映画を観終わってエンドクレジットを見てたら、この楽曲のほとんどが、主演俳優さん自身の作詞作曲作品だった!役者さんの名前はグレン・ハンザード。本職の俳優ではなくて、プロのミュージシャンだった。監督のジョン・カーニーとはバンドメイトで楽曲提供を頼まれていたけど出演するつもりはなかった。なのに、俳優が決まらないという理由で引っ張り出されてしまったそうな。チェコ移民の少女役のマルケタ・イルグロヴァもミュージシャンで演技経験はゼロ、映画公開時はまだ二十歳前だったそうな。そうか、滲み出てた素朴な空気はアマチュアの気配だったんだ。リアリズムだ。音楽は、アレンジこそ素朴だったが本物だったよ。アコギ一本でもこんなに雄弁になれる。それを久しぶりに感じた。そのうちこの映画のサントラをゲットしようかな。



だから、今週の通勤BGMは、ELLIOTT SMITH にしてみた。

ELLIOTT SMITH「FROM A BASEMENT ON THE HILL」

ELLIOTT SMITH「FROM A BASEMENT ON THE HILL」2004年
素朴なスタイルのシンガーソングライターがいないかなーと iPod を探って彼の音楽を見つけた。CDを買ったのは7〜8年も前なのに、実はほどんど聴いてなかったよ。この頃はもっと派手な音楽に目移りしてたから…予想以上に彼の音楽が地味だったってのもあったし。でも今は彼の地味な音楽が心に沁みるんだ。音楽は聴くべきタイミングってのがある。ボクの中のチューニングがそのアーティストにハマるまで、数年時間がかかるなんてのは、実はボクの中では日常茶飯事。だから聴いたことのないCDを平気で100枚単位で積み重ねてられるんだ。
●このCDの一曲目「COAST TO COAST」が、90年代風のザラついたロウファイフォークのように聴こえるんだ。そのザラつきの中で、センチメンタルで繊細な ELLIOTT の声がクシャクシャと揉まれながら、でも確実に可憐、そしてとってもチャーミングでポップ(時に THE BEATLES 風な感じ)なメロディを正確になぞって響いている。ぶっきらぼうなギターもザックリ録音されたバンドサウンドも、グランジロックという退廃を通過してきた90年代のスタイル。ただ、そのグランジの飾らない等身大の佇まいは、美学としてボクの人生に深く影響している。10代に受けた影響はやっぱ一生モンだわ。何事も器用にヤリ切れない根性不足も、それでもしないよりはマシという開き直りも、できる範囲では目一杯やるけどできない範囲はダメだこりゃな意気地ナシっぷりも、完全に現在のボクのライフスタイルに沁み付いている。ELLIOTT の人生も音楽もそういう性質のものだったにちがいない。特別ルックスがよいわけでもない、生い立ちもなかなかに複雑だ、仲間とうまくやれないからバンドも抜けた、でも次から次へと湧き上がる美メロは抑えることができなかったんだろう。続くどの曲も、ザラつきと美メロの幸せな邂逅が甘美。そして、どこかの部分で常に、もの悲しい気分が漂っている。
実はこのアルバムの制作途中で、ELLIOTT SMITH は自殺してしまった。そして残された人々によって仕上げられたモノなのだ。アルコールやドラッグ、そしてうつ病などのメンタルヘルスにキャリアのほどんとで苦しんでいた彼は、一時期快方に向かうとみられていたが、ある日突然ナイフを自分の胸に突き立ててしまった。最終的なプロデュース/ミックスに彼は天国からケチをつけるかもしれない。ただ、その自殺の現実があったとしても、彼が現実社会と折り合いのつかない何かを抱えて苦しんでいたとしても、遺されたこの音楽から響く90年代的センチメンタリズムがボク自身の過去の甘酸っぱさと共振していく時、ボクの心には淡い気持ちが波紋のように沸き起こる。

ELLIOTT SMITH「ROMAN CANDLE」

ELLIOTT SMITH「ROMAN CANDLE」1994年
●そこで ELLIOTT SMITH の最初期の音源に立ち戻ってみる。いやいやすげーな、ボクは ELLIOTT SMITH のオリジナルアルバム全部持ってるのに、これとか初めて聴くわ。封も切ってなかった。自分でびっくりするわ。
で、これが実に貧弱で。自作自演自己プロデュース。全楽器自分演奏。マジで一人で作ってます。まさしくロウファイフォーク。本人もまさかこれがそのままアルバムになるのかよ?と思ってたかもしれない…だって収録曲9曲のうち、4曲はタイトルもないんだよ。完全にデモ音源気分じゃん。でも持ち込みを受けたレーベル CAVITY SEARCH RECORDS はホントにこれをリリースしちゃった。当時25歳だった彼は直前までバンド活動をしてたんだけど、ドカドカうるさいロックバンドは自分に向かないと思って転向したみたい。とはいえグランジ全盛/轟音ギター大流行のこの時期に(KURT COBAIN 自殺の年だな)、アコギ一本勝負は勝ち目があるとは思えない。
ただ、今聴けば、その貧弱さが愛らしい。深い夜に、小さな音で静かに聴けば、心が綺麗に静まっていくのが分かる。

ELLIOTT SMITH「ELLIOTT SMITH」

ELLIOTT SMITH「ELLIOTT SMITH」1995年
●後の自殺の話を聞いてしまうと、これが飛び降りなのか?はたまた別世界への飛翔なのか?ジャケに漂うイメージが様々な勘ぐりを誘う。オルタナ時代の重要インディ KILL ROCK STARS からのリリース。シアトルの近所オリンピアとオレゴン州ポートランドを拠点としてたレーベルだ。女性が雄弁にロックするライオットガール・ムーブメントの中核を担った BIKINI KILL SLEATER-KINNEY のようなバンドがいたって印象。そんな純度の高いパンク・アティチュードが、これまた純度の高い ELLIOTT の音楽に注目したのは偶然じゃあるまい。
●シングルにもなった一曲目「NEEDLE IN THE HAY」がアコースティックながらもオルタナティヴロックの一本気な根性を漂わせている。でも、基本は奥ゆかしいインディフォーク。音質はファーストよりもよくなっているが、相変わらず DO IT YOURSELF な自作自演楽器もほぼ全部自分の自己プロデュース。基本はアコギ一本だが、貧弱なオルガンが入ってる曲「COMING UP ROSES」がワリとナイスなアクセントになってるし、バンド時代の友人がギターを加えてる曲もある。
●なにやらドラッグに言及する歌詞もいくつかあるようで。カスレてしまいそうなか細い声は繊細で可憐だが、基本は暗いトーン。しかし、別に明るく振る舞う必要もない。コッチだって明るく元気になりたいと思って、音楽を聴いているわけじゃない。自分の冷たい感情を見つめるには、このヒンヤリとした孤独感が丁度いい。

ELLIOTT SMITH「EITHER:OR」

ELLIOTT SMITH「EITHER/OR」1997年
●前作に続き、KILL ROCK STARS からのリリース。しかし外部プロデューサーが参加してる。ELLIOTT 本人と連名扱いで、ROB SCHNAPF と TOM ROTHROCK という男たちが加わった。こいつら、BECK の出世作「LOSER」をプロデュースした連中。つまりロウファイの体質を ELLIOTT と共有できる感覚の持ち主なのだ。結果として ELLIOTT の繊細な持ち味を損なうことなく、アレンジ面での豊かさを徐々に足していく役割を果たしていく。彼らは ELLIOTT が自殺するまで彼の作品にプロデューサーとして関わり、ROB SCHNAPF に至っては本人死後のアルバム「FROM A BASEMENT ON THE HILL」を完成させる仕事まで担っている。この作品ではまだ本格的な分厚いアレンジはこの作品じゃ行われてないが、ドラムがキチンと機能するバンドアレンジ風楽曲が増えてる。「CUPID'S TRICK」とか「ROSE PARADE」とか「BALLAD OF BIG NOTHING」とか。
●でも、このころから ELLIOTT は酒量が増えてアルコール中毒気味になっていく。そして抗うつ剤も飲み始めた。うつ病とアルコールって最悪のマッチングなんだけどね。うつ病経験者のボクとしては、このメランコリー漂う音楽たちの放つ脆さに、微妙に共感してしまうよ。

ELLIOTT SMITH「XO」

ELLIOTT SMITH「XO」1998年
前作から今作にかけて ELLIOTT の周辺は大きく変わる。シングルでリリースした「MISS MISERY」という曲が映画「グッドウィルハンティング」で使われて、1998年のアカデミー賞でベストオリジナルソング賞にノミネート。授賞式でオーケストラと一緒にプレイ。これがキッカケでメジャー契約も決まり、活動拠点もポートランドからニューヨークに移動。このアルバムは彼の生前においてはこのアルバムが最大のセールスを達成することにもなる。見事ブレイクを果たすのだ。まーオスカーの経験は彼にとってはシュールすぎてよくワカランかったみたいだったけど。
●メジャーということで、もちろん制作予算もデカくなったので、アレンジもストリングスやホーン隊を導入。バンドアレンジの楽曲が増える。本人も多彩な楽器を駆使。ピアノやマンドリンなどなども目立つ。ワルツの三拍子の曲なんかもやったりしてて。それが「WALTZ #2 (XO)」。爽やかな曲もある。「BLED WHITE」とか「BABY BRITAIN」とか「BOTTLE UP AND EXPLODE !」とか。タフなギターロック「AMITY」や、ホーンがアクセントの「A QUESTION MARK」も新路線。「I DIDN'T UNDERSTAND」のハーモニーワークには、彼が少年時代から聴き馴染んでいた THE BEATLES の気分すら漂う。
●しかし、相変わらず全体的なトーンはメランコリックなまま。それどころか、完全にメンタルをコジラせた彼は度々自殺をほのめかすようになる。実際に未遂までやらかしてしまった…崖から飛び降りたのだ…途中で木に引っかかってケガで済んだけど。ポートランドの旧友たちは自殺を思いとどまらせるよう彼を説得するのに苦労したよう。

ELLIOTT SMITH「FIGURE 8」

ELLIOTT SMITH「FIGURE 8」2000年
メジャーで二枚目、そして彼の存命中最後の作品。アレンジが多彩で、バンドサウンドがキラキラした印象を放つ快作。相変わらずほとんどの楽器を自分で演奏しているが、ピアノやギターが弾むバンドアレンジは実に凛々しいパワーポップになっている。THE BEATLES っぽさも今回もちゃんと香っている。今回はあの ABBY ROAD STUDIO でも録音をしたそうな…そんな縁も影響しているのか。ボーカルの繊細さは従来通りだが、メロディに強い生命力が宿っていて、明るさがある。一連の彼の作品としては、珍しいほどの明るさとたくましさ。バラエティ豊富なアイディアが多面的で様々な表情が見える。「SON OF SAM」「L.A.」のパワーポップぶり。ピアノとハーモニーが可憐な「EVERYTHING MEANS NOTHING TO ME」。ギターとストリングス、そしてボーカルハーモニーが力強い「EASY WAY OUT」。聴きどころが多すぎる。メランコリックな彼の今までの音楽と比べると、ちょっと戸惑うほど。でも、これがそのまま彼の成長となってくれたなら…どれだけよかったことか。
しかし、この作品以降の彼はメチャメチャになっていく。これに続く作品制作は難航。うつ病がひどくなり、ドラッグやアルコールへの過剰な依存もエスカレート。そんなだから ROB SCHNAPFJON BRION との共同作業が破綻。こと、JON BRION との友情の決裂は彼をひどく傷つけたようで、そのセッションの音源を全部廃棄してしまったほど。ライブをやっても最悪で、曲も覚えてない、ギターもまともに弾けないという体たらく。友人 THE FLAMING LIPS のコンサートでモメてブタ箱で一晩過ごしたり。それでもビバリーヒルズのリハビリ施設に入ってなんとかクスリを抜いたりとかして、復帰を目指していた。でも。2003年に彼は自分で命を絶つ。

ELLIOTT SMITH「NEW MOON」

ELLIOTT SMITH「NEW MOON」2007年
ELLIOTT の死後に編まれた未発表音源集2枚組。ポートランドを拠点にしてたインディ KILL ROCK STARS 時代、アルバムで言えば「ELLIOTT SMITH」〜「EITHER/OR」の頃で、1995〜1997年の録音が中心。真摯な気持ちが伝わるアコギ一本勝負の数々。ブレイクのきっかけになった「MISS MISERY」の初期バージョンも収録されてる…でも他の曲のキラメキに比べると地味に感じるほどだ。それだけ、純粋で可憐な楽曲がたくさんあるっていうこと。どれもが手触り感たっぷりな素朴なアコギアレンジ。暗い印象は否めないが、そんな感情から目を背けない真っ直ぐさが伝わって来る。



●苦手意識があった、ELLIOTT SMITH が楽しめてよかった。彼が今なお生きてて活躍してたらなおのことよかったんだけどね。

●動画もつけておくね。続きをみる、でみてください。

●ELLIOTT SMITH「COAST TO COAST」
●アルバム「FROM A BASEMENT ON THE HILL」より。
●グシャッと崩れた感じのバンドサウンドが90年代的。でも彼の死後に仕上げられたものだけどね。




●ELLIOTT SMITH「SON OF SAM」
●アルバム「FIGURE 8」より。
●これもバンドサウンド風だね。きちんとしたパワーポップになってる。




●ELLIOTT SMITH「COMING UP ROSES」
●アルバム「ELLIOTT SMITH」より。KILL ROCK STARS から出たセカンドアルバム。
●このロウファイフォークの質感もたまらん。




●ELLIOTT SMITH「NEEDLE IN THE HAY」
●これもアルバム「ELLIOTT SMITH」より。
●ぶっきらぼうに聴こえるこの冷たい質感が沁みる。



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