90年代の、ストリート・ゲームカルチャー。
そしてメタ視点からもゲーム構造をもつゲーム的演劇表現。ゲームで拡張される身体演技。

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舞台「TOKYOHEAD 〜トウキョウヘッド〜」@東京グローブ座
●演出:上田誠(ヨーロッパ企画)/出演:村上絵梨・尾上寛之・吉沢亮・菅原永二・石田明(NON STYLE)
世界初のフルポリゴンCG格闘ゲームとして登場し、アーケードゲーム界に激震を走らせた傑作ゲーム「バーチャファイター」&「バーチャファイター2」。このゲームは、都市伝説的な存在として多くの有名プレイヤーを生み出した……1990年代中盤にその武名はリアルタイムで大学生だったボクにも伝わってきていたものだ…ソーシャルどころかインターネットすらなかったのに!そんな時代の息吹を、ゲームセンターを舞台に描く芝居。映画化された「サマータイムマシーンブルース」など良質なコメディを描くカリスマ劇団「ヨーロッパ企画」&演出家・上田誠の手腕にも興味があった。

●まず、舞台セットに度肝を抜かれた。マジでいきなりセガの実物ゲーム筐体が4台ならんでいるのだ。しかも、対戦方式の向き合った配置で。そしてそのゲーム画面を映し出す巨大プロジェクターがどーんとそそり立ってる。ゲーセンにありがちな「セブンティーンアイスクリーム」の自販機まであった…よく見るけどアレ食ったことないなあとか言ったら一緒に芝居見に来た女子から「なんでですか、ちょー美味しいじゃないですか!食べなきゃダメですよ」と抗議された。贅沢だからコドモにもダメって言ってるよーとかいいながら、コドモにスマホ検討してる段階で順序が逆だなと自分でも思った。アイスよりもスマホの方が100倍贅沢だ…。ともかく、アレでタバコ臭い空気の悪さが立ち込めてたら、確かに90年代のゲットーめいたゲーセンの風景になる。クレーンゲームやプリクラとかでピカピカアミューズメント化してしまう以前の、無骨で不穏な気配のゲーセンだ。懐かしいゲーセンだ。

現実を切り取ったノンフィクションが原作。実在のムーブメントが舞台化されてる!
●実は、この舞台の原作「トウキョウヘッド19931995」は、この時期の有名ゲーマーに寄り添ったノンフィクション小説だ。つまりメインの登場人物として、知る人ぞ知る伝説的存在、「新宿ジャッキー」「ブンブン丸」などなどが出てくる。そして彼らがどんな思いでゲームに青春をかけていたかが語られる。ゲーセンという奇妙な空間で、ゲーム対戦という奇妙なコミュニケーションで、仲間〜コミュニティを育てていった様子。ソーシャルゲーム全盛の現代ではワリと当たり前になっているネット〜ゲームを通じた匿名的人間関係のひな型がこの時代に発生していた。ゲーセンに入り浸り過ぎていつしか全員失業、開店から閉店までプレイを続け、夜は仲間の家に泊まり込んで、朝になったらまたゲーセンへ。「ネトゲ廃人」ライフスタイルがネット以前に存在していたのね。それぞれの拠点になる街で名を挙げたプレイヤーはその地名を乗っけた名前を名乗る。「柏ジェフリー」とか「池袋サラ」とかね。そして地域抗争とかもあったりね。新宿対町田とか。へー、あのムーブメントの中心地にはそんなドラマや事件があったのか。そして実在はしなかったであろう女性プレイヤーのトーコ(村上絵梨)が魅力的で。バーチャにハマって自分を裏切った元カレを、バーチャで見返してやる!しかも最弱のキャラ・パイで見返してやる!

●演出もユニークで面白かった。なんと役者のゲームプレイがガチなのだ!それって実に大変で、そして実にコンセプチャルだ!
●座席の配置で役者の手元がよく見えていたんだけど、役者たちはみんなガチでゲームをプレイしているのだ。それが基本そのまま大きくプロジェクションされている。普通にアリがちで無難な方法を考えれば、役者はゲームをしてる演技をする/それに当てはめるゲーム動画をあらかじめ用意してそれをタイミングに合わせて再生する、そんな段取りが簡単だろう。しかしわざわざガチでプレイさせている!当然、ゲームの勝敗はその場の偶然で決まる。大まかなストーリーの流れは決めていたとしても、ゲームの偶然の勝敗がストーリー展開が変えてしまうリスクがあるのだ。だから、そのゲームプレイの直後に、役者のアドリブがゲリラ的に入ってくる。展開をどう整えていくのか、役者たちが呼吸を合わせてたり、悪ノリしてみたりしてる。そのライブ感が面白い!
●その本気度の仕組みが観客全体に浸透するのには、実は時間がかかっていた。なにしろ「バーチャファイター」は20年前のゲームで、観客の中心であった若い女性が知っているはずがない。ボクみたいに本当にプレイしてた経験がなければ、格闘ゲームのハラハラも理解できないだろう。ただ、そんな中途半端な前半を乗り越えたら、勝敗にマジの喜怒哀楽を示す役者から、お客も「あコレガチなんだ」という空気を感じとった模様で、ゲームの結果に大拍手が起こるようになってた。クライマックスの勝負に至っては、勝った役者さん自身が舞台を跳ね回る喜び方をしてて、観客も大喜びで割れんばかりの拍手!聞くところによると、ゲーム勝敗の結果で脚本もAプランBプランが用意されてるらしい。ボクが見た回はレアな展開だったのでよりお得だったようだ。
ゲームが題材でありながら、ゲーム自身によって芝居内容すら変わるという、メタ視点でもゲームのような構造を持っている舞台。役者のスキルとしても臨機応変な対応力が要求されるし、ゲームの本気度をキチンと伝えるリアリズムも重要だ。ゲームのプレイスタイルに役の個性が反映され、役者に操作されるゲームキャラに感情が宿る。コスいヤツの操るゲームキャラは、技もミミっちいし、ダサい勝ち方しかしない。大技を出して堂々と勝つ者にとっては、生身の人間には真似できないダイナミックな技がそのまま性格付けに意味を持つ演技になる。その意味で、役者の演技がゲームキャラに拡張されてるとも言える。リアルタイムで動作するモーションキャプチャー技術を用いて、実際の役者の動きをゲームキャラに完全シンクロさせる実験もなされていた。人物の身体を拡張するテクノロジーを用いた「演技」の可能性が、非常に興味深いと思った。

●ちなみに、ボクは「バーチャ・ファイター」では金髪美女キャラ・サラを使うのが好きだった。はっきり言ってヘタクソで、ろくに技も出せなかったけど。当時のセガポリゴン技術を用いた3DCG黎明期〜普及期の過渡的時期に、こうした野心的ゲームを数々繰り出していた。レースゲーム「バーチャレーシング」も何回もやった…ヘタだったけど。「バーチャ・ファイター2」以降は、ガンダムのようなモビルスーツが格闘する「バーチャロン」がブレイク。あのかっこいいロボットはプラモデルにもなったはずでは。有名プレイヤー「池袋サラ」が活躍してたセガの大型ゲーゼン「池袋GIGO」には大学の知り合いがバイトしてたっけ。格闘ゲームは全盛期で、カプコンが傑作「ストリートファイター2」で一世風靡をしてたのも同じ時期。他にも「鉄拳」「サムライスピリッツ」などの格ゲーがたくさんあったっけ。でも3DCGは「バーチャファイター」だけ。だからこのゲームが神格化されたのだろう。

●なお、さっそくこの原作本「トウキョウヘッド19931995」&その再発本「TOKYOHEAD REMASTERED」が読みたくなってアマゾンアレコレで入手しようとしたが、すでに売り切れ、というか絶版?Amazonマーケットプレイスで4万円以上の値がついていて手が届かない。くやしい。



90年代初頭のテクノを聴く。

ORBITAL「ORBITAL」1

ORBITAL「ORBITAL」1990年
「バーチャファイター」のリリースが1993年なので、1990年リリースのこの作品はちょいと時期が早い。だけど、ゲームとテクノ、ジャンルが違えどもはやオールドスクールの古典になった名作としては同種の物件。80年代末のUKレイブシーン、アシッドテクノ全盛の熱をそのまま残して、ROLAND TB-303 のベース音を基調にガッサリとしたテクノをジェネレイトするユニットのファーストアルバム。PHIL & PAUL HARTNOLL 兄弟によるユニットで、日本ではやや過小評価されがちな気がするけど、本国イギリスでは UNDERWORLD THE PRDIGY、THE CHEMICAL BROTHERS に匹敵する存在感を誇っていた。
●とはいえ、今挙げた UNDERWORLD たちはちょっと時期が遅れたビッグビートの時代のヒーローで。1989年から活動してる彼らは僕としてはもう一枚上の先輩格。強いて言えば、THE KLF、808 STATE、THE ORB、と同格なんだよなー。強靭なダンス感覚もさることながら、インテリジェンスも感じさせるグルーヴ。まーでも今の感覚から聴くと古臭く感じるのはしょうがないかな。
●ちなみに、このアルバム「ORBITAL」は通称「YELLOW」と呼ばれるアメリカ盤だ。イギリス盤「GREEN」と呼ばれる黄緑色ジャケで曲順やミックスが違う。おまけにセカンドアルバムも同名「ORBITAL」で、こっちは茶色いジャケに由来して「BROWN」または「ORBITAL 2」と呼ばれてる。

LFO「FREQUENCIES」

LFO「FREQUENCIES」1991年
●シンセサイザー用語の LOW FREQUENCY OSCILLATOR からユニット名を拝借した初期インテリジェンス・テクノの代表格。絞り込んでスッキリさせた構成とブリープ音の多用で「ブリープテクノ」というジャンルを切り開くこととなる。これは彼らの一番最初のアルバムで、しかも純然たるテクノを鳴らしてるのに、そのグルーヴとシンセ音に豊かなセクシーさが漂っている。すごい才能だ…音響へのフェテシズムがハンパない。内ジャケの中にはこんな言葉が。「WHAT IS HOUSE ? TECHNOTRONICS, KLF OR SOMETHING YOU LIVE IN. TO ME HOUSE IS PHUTURE PIERRE FINGERS ADONIS ETC. THE PIONEERS OF THE HYPNONIC GROOVE, BRIAN ENO, TANGERINE DREAM, KRAFTWERK, DEPESCH MODE AND THE YELLOW MAGIC ORCHESTRA. THIS ALBUM IS DEDICATED TO YOU」。テクノ/ハウスのルーツはここにあり。「THE HYPNOTIC GROOVE」=催眠的グルーヴ…。
●中心人物の MARK BELL はその後プロデューサーとしても活躍して、BJORK DEPESCHE MODE などと仕事をする。BJORK のツアーにミュージシャンとして参加してた時期もあったっけ。しかし彼は2014年に亡くなってしまう。まだ43歳だったのに。残念。
●ちなみに、アニメ「交響詩編エウレカセヴン」では登場するロボットの名前を「LFO」と呼んでいたっけ(ガンダムで言うところの「モビルスーツ」ってところでね)。あのアニメは様々な固有名詞を音楽関係の言葉からたくさん借用してたし、登場キャラもテクノ愛好家が多かった。だからあの「LFO」は絶対このユニットから拝借した言葉だと思うよ。


●なんかテクノネタ、もうちょっと行きたい感じ。

CRYSTAL CASTLES「(III)」

CRYSTAL CASTLES「(III)」2012年
00年代エレクトロ旋風の中から登場したカナダの男女デュオ、CRYSTAL CASTLES の三枚目にしてラストアルバム。だって、去年ボーカルの ALICE GLASS が脱退、結果解散しちゃったんだもん。これも非常に残念。パンククイーンとしての貫禄と危なさがカリスマティックな女傑だったのに。彼らの三枚のアルバムはどれも傑作だよ。ちなみに彼らも不思議な匿名性にコダワリがあるようで、アルバムタイトルは今までの三枚全部が「CRYSTAL CASTLES」と名づけられてる。だから iTune の管理すら面倒くさいほどだった。ただ三枚目だけはあくまでカッコつきで(III)にしてくれた。
凄みのあるゴステイストのイメージとは裏腹な繊細さと、擦過傷のように音響をザラザラにするノイズエフェクトの奇妙な同居が、平凡なエレクトロとは別格の存在感を放っていたユニット。その印象は最後のアルバムでもそのまま。無機的なビートの薄っぺらい軽さとボーカルに加えた不思議なエフェクト、時に荘厳にも聴こえるシンセの分厚い壁が、儚い夢のような陶酔感さえ感じさせる。甘美なほどにキラキラと甘いシンセ世界を描き出す瞬間は、まるで COCTEAU TWINS のような美しさまで漂う。

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