なんだか、本来の自分の音楽の趣味を見失いそうになる…。
AKB48 のようなアウェイの領域に侵入するのは、知的興奮を感じるけど居心地は決してよくない。
●でも自分の既知のフィールドにいるだけでは、刺激が薄い…これ微妙なさじ加減。

●最近は、自分が大昔に通ったはずの時代/場所から、あっ!っと思うような新鮮な刺激を受ける場面があった。
具体的には90年代モノ。ボクにとっては10〜20代の多感な時期に当たる。つまり、ホームベースみたいな場所なんだけど、ホームに立ち止まっていてはいけない、という奇妙な強迫観念もボクの中にはハッキリとあって、この90年代という時代の音楽には微妙な緊張感を感じる。なのに、それを乗り越えて、キラリと光る新鮮な感動をくれる音源に出会えた。

竹村延和「CHILDS VIEW」

竹村延和「CHILD'S VIEW」1994年
90年代渋谷系ど真ん中のアシッドジャズだ。レーベルは BELLISSIMA ! 。うわ懐かしい!TRATTORIA、CRUEL RECORDS、READYMADE RECORDS などなど当時百花繚乱しまくった渋谷系インディレーベル(メジャー内インディ含む)の中でも、キラキラのオシャレな個性を放ったレーベル。SILENT POETS、COSA NOSTRA、SPIRITUAL VIBES などアシッドジャズ系バンドを多く輩出。その中の SPIRITUAL VIBES の中心人物がこの竹村延和で、彼の最初のソロがこの音源。当時から SPIRITUAL VIBES はガラス細工のように繊細なアレンジを施した美しいサウンドでメチャメチャ愛聴してた覚えが…。ただ、竹村氏のソロを聴くのは今回が初めて。
●実は、この音源は偶然のもらいモノ、というか拾いモノ。惜しまれつつ閉店した下北沢のカフェ「現代 HEIGHTS」がその最後に「ご自由にお持ちください」と不用品をお店の前に並べてたところで、たまたま発見したCDだった。で、さほどの期待もせずにプレイヤーに乗せてみたら…うわー甘美だわ…。ジャズファンク、サンバ、ヒップホップといった要素を雑多に吸収しつつも、ヒンヤリとした上品な佇まいと丁寧に組み上げられた構成美がキラキラしてる。ウットリするわ。オーボエやフルート、ビブラフォンといった楽器選びも印象的。
●この時期のシーンは、90年代アシッドジャズのムーブメントが盛りを過ぎて、次の展開を探っていたタイミング。このあと彼は「CHILDISC」という名前のレーベルを立ち上げ、シカゴ音響派などに接近してより抽象的なエレクトロニカに傾斜していく。それがやや難解なイメージで、ボクは彼の音楽を敬遠してしまっていた。でも1994年発表のこの作品は、その一歩手前の過渡的な段階にあって、エレクトロニカ風の音響美やサンプルの魔法も採用しつつも可憐なフュージョンミュージックの体裁をしっかり残していて実にポップ。結果、今の耳には実に優しい。
●アルバムの収録は、バンド SPIRITUAL VIBES のメンバーと共に制作した東京ブロック、黒人女性シンガー DEE-C LEE をフィーチャーしたロンドン・ブロック、フレンチラッパーをフィーチャーしたパリ・ブロックに分かれてる。そんな体制をインナーで確認してまた興奮。
DEE-C LEE は当時 PAUL WELLER の奥さんだった女性で、THE STYLE COUNCIL のバックコーラスを務め、その後はソロでハウス系のアルバムもリリースしてたはずだ。しかもロンドンでエンジニアを務めているのは HOWIE B!彼はこのあと BJORK U2 とも仕事をする売れっ子プロデューサーになり、ソロ音源でも個性的なトリップホップ表現を展開。彼のレーベル PUSSY FOOT の作品を含めてボクは彼の関与した音源をだいぶ買い漁ったよ。パリ録音でラップを披露している MENELIK というラッパーもボクにとっては既知の存在。たまたまの偶然だがフィンランド・ヘルシンキを旅行した時にボクはこの人物のアルバムを買って聴いていた。フレンチラップって質感が英語と圧倒的に違うからクールなんだよねー。この竹村作品でも MENELIK は出しゃばらない存在感で絶妙な空気を醸し出してる。ふうう、たまらん。

HIEROGLYPHICS「3RD EYE VISION」

HIEROGLYPHICS「3RD EYE VISION」1998年
●ジャンルは全然違うけど、これもよかったなあ。90年代西海岸アンダーグラウンド系ヒップホップ下北沢ディスクユニオンのヒップホップ激安バコで300円程度でした。エジプト古代文字(ヒエログリフ)の名前をそのままクルーの名前(英語読みだとハイエログリフィクス)に冠した連中のクルー名義作品。メンバーは、4人組ユニット SOUL OF MISCHIEF、その後 GORILLAZ と仕事するラッパー、DEL THA FUNKY HOMOSAPIEN、そして CASUALPEP LOVE、トラックメイカーの DOMINOPEP LOVE 以外の連中のそれぞれのアルバムはみんな当時に買って聴いてた。ちなみに、ピラミッドの土手っ腹に書いてある、丸い顔がクルーのマーク。三つ目なんだよね。3RD EYE。
●彼らの拠点はサンフランシスコ・ベイエリアの主要都市オークランド。70年代には TOWER OF POWER などのファンクバンドを輩出してオークランド・ファンクというジャンルの名前で知られるくらいになるし、00年代のヒップホップシーンではハイフィーの拠点としても知られるようになる。90年代においては、ズバリ彼らの街。ギャングスタラップに荒れる西海岸のトレンドとは一線を画して、東海岸〜ニューヨークのコンシャスネスなヒップホップに共鳴。ロスの THE PHERCYDE JURASSIC 5、サクラメントの BLACKALICIOUS、シスコの DJ SHADOW など西海岸に点在していた異端の存在の一つとして捉えられていた。
●時代としてはいわゆる「ゴールデンエイジ」が終わってヒップホップの商業主義に加速がかかる1996年を過ぎたあたり。その中でも、あえて「ゴールデンエイジ」の流儀、もう少し突っ込めば DE LA SOUL、A TRIBE CALLED QUEST など NATIVE TONGUE 一派のような文系ラップの美学を見失わない姿勢が貴重。ふっくらとしたオーガニックなトラックと弾んで腰に響くベースラインが奥ゆかしい。ここに決してガナリ倒すような不粋さのない、ナードラップのまろやかさと節々にほとばしるヒップホップ愛が、これまた耳に優しい。

THE THE「HANKY PANKY」

THE THE「HANKY PANKY」1994年
●これまた全然違うジャンルで感動。THE THE MATT JOHNSON という男のオレバンドで、彼の太く濃ゆい声のセクシーさが特徴。80年代までさかのぼって彼の音源は買い集めて聴いていたが、でもこいつはスルーしてた。なぜならこのアルバムは、1940年代アメリカの伝説的フォークシンガー HANK WILLIAMS のカバー集なのだ。さすがに当時20歳代のボクは思ったよ……フォークシンガーは古臭くてツライなあ…。当時は誰もがそう思ったのか、このアルバムは凡打に終わり、THE THE の活動自体がこのあと鈍化してしまう。
●でも、これを4月頭に閉店した中野ブロードウェイのCD屋さんレコミンツにて400円で発見。まー400円だからってのと、内容とは別にこのジャケの面構えは20年経ってもインパクトが強いままで、思わず手に取ったというか。
●しかし、これも実際に聴いてみると、フォーク要素1ミリも残ってない、完全な THE THE 節。MATT JOHNSON のワキ臭が匂ってくるほどの濃ゆい渋声が耳をゾクゾクさせる。フェロモンモン。誰得のフェロモンかは全く不明だが、声がかすれて小さいボク自身の声と比べると、やっぱちょっと羨ましいと思っちゃう。アメリカンルーツとしてのフォークって、無限の荒野と強すぎる日差しをバックに白茶けたアコギ一本のスカスカサウンド、ブツブツ念仏を唱えるようなメロディのつかみづらさ、って偏見がボクの中にある。しかしご安心を。ここには地下室のような湿気とエコーとその中でヌメリ黒光りする男の肌と体臭しかない。ってそんなもん誰も要らないか。まー HANK WILLIAMS のCDも結局持ってるんだけど、聴き比べなんかするのはむしろ野暮だと思って結局本家は今回聴いてない。
●この辺の時期には元 THE SMITHS のギタリスト JOHNNY MARR が所属してた気がしたんだけど、ここには参加していないみたいね。さすらいのギタリスト JOHNNY MARR…。

●一個だけ動画。THE THE「I'M LONG GONE DADDY」。




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