現在、このオッサンが気になる。ドナルド・トランプ氏。
●ホントに共和党大統領候補指名獲得を確実にするところまで来ちゃった。
●笑える存在だと思っていたが、笑えない事態になってきた。
オバマ氏「大統領職は、エンターテインメントやリアリティー番組ではない」って発言したそうだよ(5月7日AFP)。

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この人、発言がもう危険すぎます。
「包括的で完全なイスラム教徒のアメリカ入国禁止」「IS掃討作戦では戦闘員の家族も対象に」「テロ容疑者には(オバマが禁止した)水責め以上の拷問を」「戦術核兵器使用の可能性も否定せず」「オバマのせいでしばらく黒人大統領は生まれないだろう」「人工中絶した女性は処罰されるべき → 撤回して → 医師が法的責任を負うべき」「メキシコは薬物と強姦犯をアメリカに送り込んでいる」「メキシコ国境に万里の長城を作る…費用はメキシコ負担で」「不法移民1100万人を国外退去に」いやあ、どれをとっても実に香ばしい発言だ。完全に人種差別・性差別主義者じゃないか。日本も矛先を向けられている。「日本には米軍の防衛費用を返済してもらいたい」「日本・韓国の核武装を容認」「日本車の関税を2.5%から38%に引き上げる」メチャクチャだ。

彼は生粋の大富豪。現在69歳。裕福な家庭に生まれ、親から引き継いだ不動産業を80年代の好景気に盛り立てて、ニューヨークの「トランプタワー」を始め、リゾートやカジノ経営でさらに莫大な財を手にした。多くの組織団体企業から献金を受けてアメリカの政治家は選挙戦を戦うが、大富豪である彼は基本自費負担で選挙運動をしている。だから政党幹部も含め、暴言暴走を止める関係者がいないのだ。

●セレブとしてメディアに出てた頃から暴言癖は有名だったので、最初は泡沫候補扱いで彼を誰も真に受けてなかった。ハフィントンポストまでが当初彼の運動をエンタメ欄に載せてたほどだ。しかしハフポストは12月段階に創業者の言葉で姿勢を改めた。「最初の頃、彼の激しい外国人嫌いは人を小馬鹿にするような皮肉漫画のジョークに過ぎなかった。しかし、メディアの追い風を受け、トランプ氏の残酷さと無知は倍増している。「彼の言った事、信じられる?」最初は目新しく、私たちを面白がらせたトランプ氏の発言は、今や不快極まりなく、脅威を与えるものに形を変えた。そしてアメリカ政治のよくない面をさらけ出している。」「彼は他のどの候補者より注目を集め「ミート・ザ・プレス」から「サタデー・ナイト・ライブ」まで、多くのメディアに露出している。その点で、彼は特別な立場にいる。これまで彼が提供する話題に病み付きになり、その中身を非難しなかったメディアが、彼の不快で間違った意見を正当化してきたのだ。」(12月9日創業者アリアナ・ハフィントン氏のコラムから抜粋引用)

●有名ミュージシャンの中でも彼に対して抗議する者が現れた。キャンペーンの集会には音楽を鳴らしてショーアップするのが習慣になっているが、AEROSMITH、ADELE、R.E.M、NEIL YOUNG、そして THE ROLLING STONES が自分たちの楽曲の使用禁止を求めている。トランプ氏「もっといい曲はある!」だって。しかしストーンズに関してはバンドの要求をスルーして使用継続。「楽曲を使う権利はある!いつだって権利を買ってるんだ!」このリアクション、日本人のボクの感覚だとすごくイヤらしい物言いだと思う。

●しかし、これだけ数々の暴言を吐き散らかして、彼はなぜか人気を集めている。親から引き継いだ豊富な財産をぶち込んで好き勝手に選挙キャンペーンを繰り広げている彼を、誰が支持しているのか。それが白人労働者階級/貧困層だという。え?真逆の立場じゃないか?こんな金持ちセレブに、一般民衆の暮らしを想像することなんてできるのだろうか?自分たちの生活を守ってくれると思えるのだろうか?



ただし、ここで大きな前提に気づく。
●そもそもで、アメリカ合衆国という国の成り立ちを、その歴史を、ボクはどんだけ知っているだろうか?
●なんであの国が、あのような有り様になったのか?知識が足りなすぎることに気づいた…。
●日本の都道府県は47つ全部知ってるのに、アメリカ50州は全然覚えられない。
●歴代大統領の名前を何人知ってるだろうか。
●あの国が世界中で戦争をしていて、大きな影響力を行使したのは知ってても。
あの国の内側で、どんな歴史がゴトゴトと動いていたのか、実は知らない。

●だから、しっかりした本をきちんと読んで勉強しようと思ったのだ。
●最終的にこの記事を最後まで読んでも、なぜトランプ氏のような人間が大衆に受けるのか、結論は出ない。
●ただ、建国以来のアメリカ人の心の拠り所がどこにあるのか、考えてみたい。

サムエル・モリソン「アメリカの歴史」3

サムエル・モリソン「アメリカの歴史」全5巻
●原題は「THE OXFORD HISTORY OF THE AMERICAN PEOPLE」。下北沢の隣の駅、池ノ上の古本屋さんで買った、1964年に書かれた本だ。アメリカ歴史学会の中でも権威だったハーバード大学教授が、引退した後に記したタフな歴史書、実にいかめしい。でも、第二次大戦後の冷戦構造の中で超大国になった時期のアメリカ、まだベトナム戦争で凹まされる前のアメリカ、おそらく特に輝かしいアメリカの時代に書かれたとあって、その筆には自分の国への誇りと自信がみなぎっている。これはナイスなサンプルだろう!アメリカ人の「愛すべきアメリカ」像がここには浮き上がっているはずだ。
●しかし、これがなかなかにゴツくて退屈な本で…さすが大学の先生、マジで読み進めるのがシンドイ。1964年の本を1970年の翻訳で読んでるから尚のことキツイ…昨年末12月から読んでるんだよ。先史時代から始まる第1巻から、いまやっと第3巻、1830〜40年代のところまで到達した。南北戦争まであとどのくらい?



●アメリカは「自由」の国だ。トランプ氏も自分の「自由」を行使してるつもりなんだろう。
●この「自由」が、この国の歴史の中では、凶暴でワイルドすぎる。
「凶暴でワイルドな自由」とは。


ヨーロッパからの植民は、命をかけた「信仰の自由」
●北アメリカ大陸にイギリスはじめヨーロッパ人が植民を始めるのは17世紀初頭。日本なら江戸幕府成立と鎖国の完成みたいな時期。当時の感覚ではアメリカ大陸に行くなんて、今なら「火星に植民しろ」と同じように響くだろう。植民団が大西洋を渡っても、冬を越したら半分以上が死んでた、なんてザラ。完全に未開の地、文字通りワイルド。

●それでも、植民した人々の動機は何だったのか?当時のヨーロッパはカトリックとプロテスタントの宗教戦争、弾圧と虐殺の時代だった。このまま祖国にとどまっていればいずれ殺される。伝説的な植民団「ピリグリム・ファーザーズ」は新教サイドの英国国教会からも弾かれたピューリタン宗派が居場所を失って大西洋を渡ったグループだった。長老派、バプテスト、メソジスト、クエーカーなど、今のアメリカではぼちぼちマジョリティな宗派も、当時は異端扱いで大西洋を渡るしかなかった。祖国に残るも地獄、海を渡るも地獄この究極の選択が、彼ら初期アメリカ人の「自由」。追い込まれていた状況が「凶暴でワイルド」だった。

●このへんの過激な宗教的情熱はアメリカの中に今も残っていると思う。一夫多妻制を奨めたモルモン教会(←キリスト教ですよ)は19世紀アメリカに生まれた宗派だし、20世紀以降の科学技術を否定して移民当時の暮らしを守る宗派アーミッシュの人々も健在。そして、バイブルベルトと呼ばれる南部諸州は熱心なキリスト教信仰の影響で保守的傾向が強く、今なお進化論を認めない云々の議論を続けてる。



「いつだって自分たちでちゃんとやっていた」「自由」を妨げるなら独立します。
●大学のテキストみたいな本をソースに一行で独立戦争のことをまとめるのは乱暴ですが、敢えて言えば「勝手に税金払えというならオレらは独立します。元から自治してますから!」が全部な気がする。重要なのは「元から自治してますから!」の部分。この本に、独立戦争から70年近く経った後、この戦争に参加した老兵士91歳を取材した様子が描かれているのでサックリ引用してみる。これがとても象徴的で。あ、ちなみに取材者は当時21歳だった判事さん。

●取材者「あなたが武器をとったのは耐え難い圧迫に反抗するため?」老兵士「圧迫?そんなものワシは感じなかったよ」「え?印紙税法で圧迫を被ってないと?」「ワシは印紙なんて一枚も見たことがなかった。1ペニーだって払ったこともない」「では茶税についてはどうですか?」「お茶も一滴だって飲んだことがなかった。連中がみんな海に捨てちまったものな(ボストン茶会事件…「ボストン港をティーポットにしてやる!」)取:「それじゃあ、あなたは永遠の自由の原則に関するロックらの著作を読んでたと思うんですが?」「聞いたこともないねえ。ワシらが読んだのは、聖書と教理問答集、賛美歌集、それと暦だけだね」「じゃ一体どうして戦闘に参加したんですか?」「なあ若い衆。なぜワシらがイギリスの赤服軍に立ち向かったか。ワシらはそれまでいつだって自分たちだけでちゃんとやっていた。そしてこれからもずっとそうするつもりだった。ヤツらはそうさせまいとしたんだよ」

●彼ら植民者は、バラバラに大陸へ向かい、人類が住める場所があるかどうか自分たちで一生懸命探して、その土地を自分たちで切り開いてきた。農場も市場も街も港も全部自分たちで作った。そしてココが素晴らしいのだが、彼らは法の秩序の元、共同体の方針を自分たちで導き出して運営した。そこには封建領主も王家も巨大な職業的官僚組織も必要なかった。全部がゼロスタートだったのだが、彼らは完全に「自治」を掌握して植民地を作り上げた。これが重要。

●もちろん植民開始から100年以上経っていて、話はそこまで単純じゃない。イギリス本国と植民地はアレコレの権益で十分に絡まってて、もはや共栄共存共依存の関係。なのに沿岸部の輸出入業者/一部都市エリートが本国に無理な関税を突然課せられてブチ切れたまで。これが独立のキッカケ。最初はみんなが独立に賛成してたわけではない。内陸部では最後まで独立機運が盛り上がらなかったほど。しかも、豊臣秀吉小田原攻めで動員した軍勢21万から見るとハナクソみたいな分量5000人程度の兵隊をエッチラオッチラ動かして独立戦争は戦われた。敵味方両方からの理不尽をひたすら忍耐して泥仕事を引き受けた将軍ワシントンが、その後初代大統領に選ばれた。ハッキリ言って全然ドラマチックじゃありません。退屈な戦争です。

●一方、「ベルばら」を始めドコを切ってもドラマ満載な後発組「フランス革命」をこの著者はバッサリ批判し、アメリカの偉大さをドヤ顔で謳い上げます。サクッと引用しましょう。「フランス国民が革命を起こした時には、彼らはそれまでに代議政体を持った経験は全くなかったのに対して、独立革命直後のアメリカ人は、ただ単に、既存の政治的、宗教的な状況を維持し、調整すれば事足りたのである。アメリカ人は世界の他の国民に比べて、より多くの自由を享受していたし、自治の枠も大幅に認められていたために、自治政体を完全なものにするための資格が備わっていたのである」

●ワイルドな状況下で自治を積み重ねたアメリカ人は、自分たちの自由を侵すものがあれば絶対に許さないし、時としてはそれが自分自身の利害と関係がなくとも武器をとる。なかなかに「凶暴でワイルドな自由」でしょ。中東との戦争に直接の利害がある人ってそこまで大勢いる?でも支持するんだよね。



アメリカはとにかく「自由」が大事!国は最低限のことだけやってろ!という気風。
●さて、新しい国ができましたが、これがすぐにまとまるわけじゃない。基本ベース、初期13州は全部それぞれの経緯で成立して、それぞれ100年以上の歴史を持ってます。日本の廃藩置県みたいに、国土全体を中央政府がチョキチョキ切って自治体を作ったわけじゃないのです。全員が自己主張するし言うことが違う。こうした州ごとの権利主張を「州権」と言います。今でもアメリカは州ごとにそれぞれの州憲法を持ち法律も違う。新しい連邦政府と「州権」がバチバチ当たりまくる。これが出来てホヤホヤのアメリカ政治であります。

●国としての体裁が整う前に、まずは前述の州憲法が先にできます。ここからもうたっぷりの「自由」が仕込まれます。独立宣言の年にはヴァージニアが州憲法を制定。今では地味な存在だけど当時のヴァージニアは最先端地域。その権利宣言の冒頭がこんな感じ。「人間は生まれながらにして平等に自由で独立した存在であり、一定の生得権を持っている。それは財産を取得所有し、幸福と安寧を追求獲得する手段を与えられて、生命と自由を享受する権利に他ならない」話が教科書っぽくなって恐縮ですが、「自由」が二重にかかってるんですよ。「人は自由な存在で、自由を享受する権利を持つ」。著者は「アメリカ人はそもそも自由の問題から出発した」とはっきり言ってます。とにかくアメリカは自由が大事!

●で、ここから期待される、連邦政府の仕事ってのは、これも著者の言葉ですが「たとえ政治上の権限を削られても、人民に対しては絶対不可侵の自然権(天賦の人権)を保証することができるような代議政体」であって、反対に言えばそれ以上のことはするな、というニュアンスがある。アメリカでは「個人が自由を追求し、州はそれを代弁し、国は最低限黙っとけ。」これって極端でしょ。この辺が「自由が凶暴でワイルド」と思った点。だって、ワシントンが初代大統領になってみると、連邦政府には給与支払いが滞っている13人程度の事務員しかいないという有様。とりあえず税金は取れない、関税だけは認めてもらえたけど長い海岸線をカバーする徴収官吏はまだ一人もいない、軍隊は600人しかいない、連邦司法部も機能してないので作った法律を施行できない、ないないづくしにも程がある。ちなみに彼はバージニアの実家から当時の首都ニューヨークに引っ越すのに借金までしたという。これはナニかのバツゲームか?

●連邦議会もスタートしました。せっかくできた連邦政府を強化したいグループと、この「州権」重視グループの二派に、しょっぱなからパカッとアメリカ議会は割れて、そのまま現在の二大政党制につながってます。独立革命のキーパーソン、トマス・ジェファーソン「州権」重視派をまとめてアメリカで最初の政党「共和党」を立ち上げます。おお!共和党ってこんな時代からあるのか!すげえなー設立1791年って!日本じゃ松平定信寛政の改革やってる頃。…と思ったら、この「共和党」は紆余曲折あってその後改称、現在の民主党に繋がります。紛らわしい!真逆かよ!言わんとしていることは「主導権を中央エリートに丸投げしねえぞ、民衆は言いたいことがあればモノを言うぞ」とザックリまとめておきます。

●ちなみに、アメリカ合衆国憲法は1787年に出来上がりました。今なお機能しているモノとしては世界最古の成文憲法。憲法改正議論の時にアメリカはコロコロ変えてますってロジックが出てくるけど、これ見ると当たり前だよねー。だって江戸時代に作った法律を今も使ってるんだもん。そりゃ修正するわ。



「自由」と奴隷制度ってツジツマ合うの?南部奴隷州のガンコさがスゴイ!
●奴隷制度が気持ちイイものだとアメリカ人は思っていなかったよう…。ま、この著者のバイアスがかかってるかな?公民権運動が盛り上がる時代に書かれてる本だし。とにかく、アメリカには大勢の黒人奴隷が独立前から輸入されてましたが、憲法制定の時代には連邦政府のレベルではなんとか奴隷貿易を禁止する法律が通過し、北部の州では露骨にアフリカ人が売買されることは無くなりました。しかし奴隷制度そのものはなくせなかった。「州権」をかざして南部奴隷州は奴隷貿易を続けたし、その奴隷労働力を前提に綿花の大農園が南部一帯に広がっていくのです。まだ誰のものでもない原野がどんどん開墾されて畑は無限に広がっていく。人が足りないから奴隷は大歓迎。というか奴隷がいないと産業が成り立ちません。その陰で、気の毒なアメリカ先住民は奥地に追いやられて、のちに手加減なく打ちのめされます。あれ?「自由」って白人移民限定かよ?そーゆー話ですよね。

●著者の考え方か、19世紀当時の一般的感覚なのか、時々わからなくなるが、奴隷制度を知らない日本人のボクにはビックリするロジックが出てくる。「アフリカ奴隷貿易はアフリカ人が始めたことで、旧大陸にいるよりアメリカに渡った方がマシな暮らしができた」「ヨーロッパの貧しい労働者や小作人よりもずっと暮らし向きが良かった」「黒人は融通のきく人間だった。差別のない天国を信じる信仰に慰めを得て、可能な限り生活を楽しんだ。」自分たちの奴隷状態と出エジプト記を結びつけて感動的なゴスペルを作ったとな。陽気な精神と高い順応性、重労働に耐える能力を備え、奴隷として優秀だったそうな。ちなみに先住民奴隷はふさぎ込んですぐに死んでしまうらしい。なんじゃこりゃ。

●映画「風とともに去りぬ」みたいな大農園に限らず(むしろ少数派)、一般的な小規模農場でも奴隷は普通に使役されてた。白人家族ー世帯に6人ほどの奴隷がいて、主人と一緒に並んで鍬を振るい、一緒に食事をすることもあった。こんな物言いも書いてある。「南部人は黒人を理解している」イギリス人も北部人も黒人そのものを嫌うが、南部人は家族のように甲斐甲斐しく面倒を見るし「その分を知る黒人を愛している」。でも処罰は笞打ちがポピュラー。過度な虐待は法律で禁じられている。ただ法律の手前に理屈がある。「黒人を脅かすな。逃げるぞ」。南部には奴隷を買えない貧農もいたが、彼らは明白に黒人を憎んでいた。出世した白人同胞を羨みながら、肌の色だけで自分たちの誇りを維持していた。……もうこの辺になると、この本の淡々とした奴隷制度の解説が不気味に見える。

●1820〜30年代に黒人による蜂起未遂事件が起こった。ここから潮目がよりスゴイところに流れていく。「黒人たちは幸せで満足しているとされていたので」この蜂起は外部の煽動者が仕掛けたモノとされた。そこで北部から来た自由身分の黒人は船から一歩も降ろさないという対策がとられた…これってトランプ氏「イスラム教徒入国禁止」「メキシコ国境に万里の長城」と同じ反応だよね。組織的な黒人への締め付けも強化された。黒人は消灯後の外出や集会は禁止、読み書きを教わることも禁止。イギリスや北部では当たり前のように奴隷制度廃止は議論されるようになっていたが、南部ではそのイギリス/北部からの郵送物が検閲されてた。著名な奴隷制度廃止論者の首には賞金がかけられ、宗教家が廃止論者がリンチを受ける必然性を語るくらいまでになっていた。こうなると、南部の諸制度全てに対して批判できる状況じゃなくなる。北部じゃ盛んになっていた無料の普通義務教育制度を求める運動も、南部ではシャットアウトされた。「奴隷を持つ自由」社会の全てに優先する不寛容な状況が生まれたのだ。これが「凶暴でワイルドな自由」と言わずしてなんというか!

奴隷制度維持の理論武装がスゴイ。聖書によるとヘブライの預言者と聖パウロは奴隷制の道徳的な妥当性を認めているらしい。黒人は人間以下の存在らしい。カルフーンというこの時代の代表的な政治家によると、独立時に謳われた「人間の自然権」を更新する理論として、奴隷制度は民主主義の本質的な条件になるらしい。「豊かな社会は、一部の者が他の人々の労働によって生きられるようでなければ存立しえない。恵み深い神の摂理によって南部には、神が木こりや水汲み人夫として創り出した人種が運び込まれている。そのお返しとして、心優しい主人たちは自分の奴隷の要求を叶えてやり、惨めな窮乏生活の不安から救ってやる。奴隷主自身は手の労働と浅ましい競争から解放されて、知的・精神的な高さに達するだろう。」…もう吐き気がする。


「凶暴でワイルドな自由」トランプ氏。
●ボクは前述したように1840年代までしかこの本を読み進めていないので、1861年の南北戦争勃発という最悪の事態までどんな風に事態がエスカレートしたのかはまだよく分からない。そしてその後のアメリカも。本の中身はケネディ時代で終わってるはずで、著者は21世紀を知らないし、911もイラク戦争もISも知らない。
●ただ、南軍で勇敢に戦ったのが、奴隷を持たなかった白人貧困層だったということはすでに書いてあった。……なんだかココにすごくドッキリする。生まれながらの大富豪のトランプ氏と彼を支持する白人貧困層の関係と、この南北戦争前の社会格差状況〜大農園地主階級と白人貧困層が共に奴隷制度を守ろうとした事実は、相似しているように思えるからだ。

●南北戦争時の白人貧困層(ホワイトトラッシュと呼ばれた…今でも使われる言葉だよね)は、奴隷制度が大好きだったわけではないが、奴隷制度がなくなって黒人たちがイイ思いをする方がもっと嫌だった、という本音があったようだ。一方、トランプ氏が煽る、不法移民として治安を悪化させるメキシコ人へのヘイト、テロの恐怖を連想させるイスラム教徒へのヘイト、貿易不均衡で国内雇用を奪う日本韓国へのヘイトは、失業や低賃金に苦しむ貧困層だからこそ、本音の部分で共鳴できる主張になっている。ハフィントン氏にはジョークとしてスルーできる余裕があったが、スルーする余裕がない人々がいた。

●そして「凶暴でワイルドな自由」
●ボクが引用したバージニア州の権利宣言は「人は生まれながらにして平等に自由」と書いてある。でも「人は生まれながらにして平等」とは書いてない。
●あそこで生得権として保証されていたのは「財産を取得所有し、幸福と安寧を追求獲得する手段」であって「財産/幸福/安寧」そのものは保証されてない。
●財産の有無も幸福/不幸も全部自由。アメリカのコンセンサスでは、生まれながらの大富豪・トランプ氏みたいな存在がいることは社会として当然のことで、羨ましいとは思えど不公平な存在ではない。チャンスをつかめば成り上がればいい。失敗すれば落ちぶれればいい。これも全部自由。最低限の医療を保証したいという思いを込めて、国民皆保険を目指したオバマケアが総スカンだったのも、国家が余計なことをするな!オレの金を勝手にいじるな!オレが払う税金を他の貧乏人に使うな!の意思表示だったと言えよう。
●そして、こうした発言を堂々と世界に発信するのも全部自由。そんな発言を真に受けるのも全部自由。
自由は、かくも、凶暴で、ワイルドだ。


●アメリカの全てがトランプ氏のような思考に陥っているとは思わない。
●ボクは、西部開拓もまだ終わらない古いアメリカしかまだ見てないからね。1830年代ではカリフォルニアはまだメキシコ領だよ。だから今日の文章はあくまで暴論です。
ただ、南北戦争の時のように、今のアメリカは、引き裂かれているのかもしれない。
●没落する白人層は人口構成の中でもいずれ過半数を割ることが明白だ。
●一方で目立って成功するのは、マイノリティ層エリートだ。オバマ氏自身がその象徴だ。




アメリカンドリームって、なんなんだ?

MIKE JONES「THE AMERICAN DREAM EP」

MIKE JONES「THE AMERICAN DREAM EP」2007年
●ヒューストンのラッパー。非常に地味です。MIKE JONES って本名。厳密には MICHAEL JONES です。アメリカ人がどう思ってるかワカンナイけど、これ「鈴木太郎」ってくらい普通すぎる名前でしょう。もうこれ明らかに狙いでしょう。もっとラッパーはDQNネームであるべきでしょう、その裏を行く、それが彼の戦略。わざと本名名乗って、Tシャツに携帯の番号書いたりして話題作ったという逸話あり。
●このシングルはDVD付で彼主演の一本の映画が入ってる。主人公である MIKE JONES その人は、ラッパーを目指しつつも地味にファストフードのお店でバイトしてる。仲間と一緒にクルーを作ってブリンブリンなネックレス作ったり、でも地元のチンピラに絡まれたり、女の子にフラれたりと、英語わかんないから結局意味もワカンナイけど、なんか地味に終わりました。え?どの辺がアメリカンドリームだった?ギャングスタがドラッグディーリングするとか、ドキドキな場面ゼロ。達成感も身の丈に無理さがなくて、むしろ等身大すぎてビックリするわ…。
●で気になった楽曲が「MY 64」。客演に SNOOP DOGG BUN B が入って豪華だし。でもコレってヒップホップ関係の人が大好きな1964年型シボレー・インパラのことでしょ。ローライダーでボヨンボヨン跳ねたりさせちゃうヤツ。…でも、そのクルマ買って自慢してる歌だとしたら、アメリカン・ドリームとしちゃスケール小さくないか?トランプタワーみたいに、自分の名前付けたビル建てるわ!とかじゃなくていいのか?
●と、不満ばかり言ってますが、そもそものトラックが実に地味なんで、もうショボい印象がついちゃって、むしろそこのショボさが愛おしい。この人はデビューが SWISHA HOUSE という、CHOPPED & SCREWED が得意なレーベル出身なんで、このマキシシングルも低速スクリュー気味でわざとモッタリした感じになっている。まーともかく、アメリカン・ドリームも人それぞれなんだなあと思うのでした。


●動画つけとく。MIKE JONES「BACK THEN」スクリュー気味の緩さが味。





●今日はダメだな、話がややこしすぎる。

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