ハイスタの新譜を買っちゃったよ。

HI-STANDARD「ANOTHER START LINE」

HI-STANDARD「ANOTHER START LINE」2016年
事前にゼロ告知、突然店頭にドッサリ出現。これを「ゲリラ発売」と誰かが名付けた…宣伝をサボったネガを前向き転換表現 〜 SNSバズを念頭に仕掛けた「レーベル=流通=店舗」共犯の箝口令マーケティング。で、これが見事にハマってネットで拡散激賞。ハイスタ知らん人でも気になるほどで、ハイスタ知ってる人はタワレコに殺到。
●と、うがった見方で仕掛けを眺めてみたけど、きっと当事者は別にそんなこと考えてなかったと思う。このバンドの長い歴史、実にパンクでDIYな歴史では、ネット時代以前の90年代から、ノープロモーションで少ないロットのシングル発売をそっと出すとか、ライブの告知を関連バンドのライブ会場のビラまきだけで行うとか、そんなことを普通にやってた人たちなので。元からメディア露出もしないバンド、文字通りの「口コミ」で彼らの存在は大きくなっていったんだし。
●ただし、SNSで盛り上がるだけの「物語」は存在した。90年代の日米をまたにかけた大活躍。しかし2000年以来、メンバー間の確執も込みでトリオはそれぞれの活動に分散。けれども2011年の「311」に際してシリーズで主催していたフェス「AIR JAM」を復活させ、ゆっくりと歩調を整えながら満を持して新シングルのリリース。実に16年ぶりの音源だ。
●この「物語」が、レコード屋さんの愛情&気合がこもった店頭盛上げにつながった。twitterで報告されてる全国店頭の特別ブースのモリモリぶりは、いかにお店の人々にこのバンドが愛されていたかの証明。「箝口令」はある程度容易いこと(かな?)としても、「店頭でガッツリやってください!」は、お店に対して決して簡単じゃない要請。ボクの知人は、渋谷ツタヤに2週間ブース設営してもらっただけで大手柄と言ってたっけ。しかしこれだけの仕掛けはそんなネゴじゃ動かない。何も言わずとも、このリリースが歴史的エポックだと、レコ屋の感性が作動したんだと思う。

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だから、ウチの会社の近所のタワレコでも、こんだけのモリっぷり。
●同僚のデスク女性がLINEでボクに報告してきました。「unimogrooveさん、あるよー!」ボク「まじ!ボクの分も一枚買ってー!」同僚のドリくん20歳代後半も興奮気味で「オレも買ってきちゃいましたよ!ヤバイっすよ」ドリくんはパンクでアニオタ、ボクと話がよく合う。でそんなCDを持ってるだけで、周囲から人が集まってくる。隣席のSくんが「え?あのハイスタなの?」Kくんが「新曲出たの?欲しいよー!」みんなのハートの中にハイスタがそんなに巣食ってるとは知らなかったよ。デスクさん「どんどん売れちゃうみたいで、店員さんがあわてて補充してた」
●そんで残業までこなして家に帰って、そしてCDをプレイヤーに置く。聴く。日付の変わりそうな時間でもtwitterのトレンドには「ハイスタ」の文字があって。そして大勢の人が思い思いにハイスタを語る。そんなタイムラインを眺めて、パンクロックを聴く。良い夜だった。

HI-STANDARD「ANGRY FIST」

HI-STANDARD「ANGRY FIST」1997年
ハイスタの新曲ももちろんいいんだけど、やっぱり自分がリアルタイムに聴いてた音源に遡りたくなっちゃうよね。今回のハイスタ復活で盛り上がった年齢層は、ボクの周辺では30歳代がメインだった。高校生時代にハイスタ全盛期を迎えた人々。そこんところではボクはやや年長気味。このセカンドアルバムの時には既に社会人だったから。
●ただ、このアルバムは衝撃的だった…。渋谷系のソフィスティケートされた音楽を通過してたのがボクの世代だから、彼らのような日本製ハードコアにはさほど関心がなかったのよね。それでも高まりつつある武名からコイツに手をつけてみたら…本当にこの硬い拳でブン殴られたようなショックを食らった。
●一曲目の「START TODAY」。イントロもゼロでいきなり初速フルパワー、バンドの全てを最初の打撃でぶつけてくるような音塊が、ボクを突き飛ばす。「I WAS TAUGHT BY MY LIFE, NOTHING COMES FROM NOTHING. SO I GOTTA MOVE ALL THE TIME, I GOTTA FIND MY PLACE. THE MOST IMPORTANT THING IS TO KEEP YOUR FAITH STRONG.」そしてこの曲が一瞬にして終わる。たった1分11秒。そのまま怒涛のパンクショー。マッハのビートにマッシブなギターリフに軽快なメロディが乗ってそのまま止まらない。収録曲全てが3分いかない。短い!短すぎる!そして速い!速すぎる!モッタリした情緒なんて残さずに、その一瞬一瞬が真っ赤に燃えてるかだけを大事にして突き進む。
●社会人として駆け出しだった頃のボクは、こと特にこの年は、まーベコベコに凹まされるコトばかりで毎日がキツかった。仕事量も激しくて平気で週2回は徹夜してたわ。正直、この「怒りの拳」に鼓舞されて毎日を闘う、なんてトコまでも到達できなかったよ。周囲の先輩に怒鳴られないように、殴られないように、とだけ思って暮らしてたから。今じゃ信じられないかも知れないけど、ボクの職場当時は体罰当たり前だったからね。こんなにヘトヘトなのに、パンク聴くとまたヘトヘトになっちゃうよ。そこまで生命力えぐられてた。だからボクのハイスタ体験はそれ以上は広がらなかった。刺激が強すぎて簡単な覚悟で聴ける内容じゃなかったんだよ。一曲目の初速全開パンチだけが、ボクの中での尊い思い出になったよ。

●新曲と、この20年近く前の作品を聴き比べれば、やっぱり過去作の方が切れ味が鋭い。殺気がスゴイ。パンチの一撃一撃が、マジで命を獲りに来てる。ギターとベースの音がゴリゴリして、少しだけジットリ汗の匂い。ただ、今の音源には、ハードコアパンクというスタイルに人生を捧げてきた覚悟が硬い結晶として実体化してる。気負いや焦りなど余分なモノを全部削ぎ落としてしまったようなシンプルさが、そのまま素直に出てきている。なんだか、気持ち良い風がスッと通り抜けるような感じ。
●でも根本は変わってないよ。純度の高いハードコア。最初っから速くて硬くて熱くて、ガツンとぶん殴られるような刺激。年齢は重ねたはずだけど、バンドは何も変わってない。湿っぽい感傷は1ミリも必要ない。だからこそ、安心してボクらリスナーは20年前のことを思い出せる。


ハイスタ同時代、90年代のハードコアパンク。
ハイスタと縁が深いレーベル、FAT WRECK CHORDS

NOFX「THE WAR ON ERRORISM」

NOFX「THE WAR ON ERRORISM」2003年
ハイスタ の音楽を聴いて、彼らに縁がある音源をCD棚から探す。NOFX。ロス出身、80年代から活動してるバンドで、いわゆるメロコアの先駆ともいうべき存在。硬くて速くて熱くて乾いたパンク。ストレート過ぎるほど高い純度のハードコアの中に、ほんの少しのユーモア感覚がある感じ。オマケにピリリと辛い政治的風刺の精神もある。打ちのめされて荒廃した格差社会アメリカの狂気を叫ぶ。そしてハッキリとアンチ・ジョージ息子ブッシュ。怒気を孕んだギターが摩擦熱で火を噴く勢い。そのままデカイ声でワメキながら深い闇を走っていけ!
●このバンドのボーカル FAT MIKE/MKE BURKETT が主宰する FAT WRECK CHORDS は、ハイスタ世界流通を担ってたレーベルでもある(ハイスタの日本のレーベルはもちろん PIZZA OF DEATH!)。ハイスタのアメリカ音源制作にも FAT MIKE が関わった。世界へハイスタを紹介したのは、NOFX FAT MIKE FAT WRECK CHORDS なのだ。NOFX 自体は西海岸パンクの名門 EPITAPH の所属が長かったのだが、やっとこの9枚目のアルバムから FAT WRECK CHORDS に移籍。

VARIOUS ARTISTS「ROCK AGAINST BUSH VOL1」

VARIOUS ARTISTS「ROCK AGAINST BUSH VOL.1」2004年
FAT WRECK RECORDS が送り出した、ブッシュ大統領をケチョンケチョンにする内容のコンピアルバム。この時期に燃え上がっていたイラク戦争に徹底反対しているんだよね。そしてそのイラク戦争のために国内の弱者が痛めつけられてることにも傲然と抗議している。CDのライナーノーツは、全部ブッシュ政権の具体的な批判でビッシリ。「ヤツは金儲けと権力維持に夢中なただのカウボーイだ」「911テロとも関係ないし大量破壊兵器もないイラクへ数十万人の兵隊を送り込んで何ら気にしない」「若年層の失業率が13%もあるのに若者の就業支援プログラムを大量にカットし予算を戦争に回した」「ブッシュ政権下には健康保険を持たないアメリカ人が4300万人もいる」「退役軍人の健康保険給付金を削減した」「選挙に対する企業献金額の世界最高記録保持者」「未だに同性愛者は罪人と仄めかし、同性婚の基本的人権を否定しようとしている」などなどテンコ盛り。
●そんな主張に賛同結集したバンドたちもスゴイメンツ。NOFX と同じくらいのべテランから当時の新興バンドまで26組が参加。THE OFFSPRING、DESCENDENTS、LESS THAN JAKE、PENNYWISE、SUM-41、NEW FOUND GLORY、MINISTRY、THE GET UP KIDS などなど。
●このアルバムで知ったバンドも多いよ。ALKALINE TRIO「WARBRAIN」という曲がすごく好き。RISE AGAINST AUTHORITY ZERO ってバンドも勢いがいいね。THE SOVIETTES ってのはガールズパンク。レゲエアプローチの RX BANDITS もずっと気になってるバンド。

LAGWAGON「LETS TALK ABOUT FEELINGS」

LAGWAGON「LET'S TALK ABOUT FEELINGS」1998年
FAT WRECK CHORDS から出てる音源を立て続けに。カリフォルニア州サンタバーバラ出身のパンクバンド。結成は1990年とこれまたベテランで、そんで今でも元気に活動している…ハイスタと同世代だね。90年代のメロコアシーンの中でイイ味だしてたんだけど、ボクがコレを真面目に聴いてるのはここ数年と最近のコト。やはりコイツも硬く熱く速い。ビリビリとしたソリッドギターと疾走するビート、メロディとメリハリある展開がキャッチーで痛快。時代がオルタナ期からエモ期に移行していく、過渡的な感触も感じる。

NO USE FOR NO A NAME「KEEP THEM CONFUSED」

NO USE FOR NO A NAME「KEEP THEM CONFUSED」2005年
●これも FAT WRECK CHORDS からの音源。彼らも80年代末から活動してるベテランだな。やっぱり西海岸サンノゼ出身。そして硬く速く熱い。ただ時代が降ってる影響もあるのか、メロディが実にエモい。コーラスワークふくめて青臭いメロディがベテランとは思えない瑞々しさタップリだ。なんてセンチメンタルで、爽やかで、気持ちいいんだろう。







●歌詞付き音源。HI-STANDARD「START TODAY」。



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