●最近は、風邪を引いてることもあって。
●とってもココロがササクレ立っているのでした。木枯らしに吹かれて、もうカサカサだ。

●ということで、週末は写真を見に、上野方面へ。

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「ROBERT FRANK: BOOKS AND FILMS, 1947-2016 IN TOKYO」@東京藝術大学

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●ソーシャルの流れの中で、なんとなく見つけたんだ。ロバート・フランクの写真が東京藝大で見られるとな。しかもナゼかタダで。パンフレットは投げ銭制で好きなお値段を。不思議な展示だな。だから、週末に足を運んでみた。
写真家、ロバート・フランク。もう90歳を超えた現在ではカナダのノバスコシアに移住して、隠者のような生活をしてるはずだ。もし彼の近作が見られるなら、凍てつく北国ノバスコシアの寂寞とした風景が、残雪の気配と灰色の海が、カサカサになってるボクのココロにほんのちょっとの湿度を足してくれるかもしれない。そんな期待があった。

●そしたら、この展示は少し特別なプロジェクトだった。運営する学生さんの「教育」というコンセプト。
学生さんたちが主体性を持って企画運営する展示会。ロバートの信頼を得て数十年にわたり彼の写真集の出版を手がけるゲルハルト・シュタイデルという人物が、若い世代がロバートの作品に積極的に関わりあう場面を作るため、世界50都市で学生さんと共に展示会をプロデュースしているという。とはいえシュタイデル氏はドイツ在住。コンセプトは共有しつつも基本は全て東京藝大の学生さんが全てを運営する。展示の内容や方法、展示のための設備制作、広報&宣伝、クロージングイベントの企画運営演出までを学生さんが担う。ロバートシュタイデル氏は、この展示を通して若い世代の「教育」をも射程距離に置いているようだ。
●そんな雰囲気は確かにそこかしこに感じられて。なんと写真は模造紙(いや新聞紙だった!)に印刷されてて、作品の注釈は鉛筆書きだったりする。誰の文字だか、黒ペンキでベッタリなぐり書いたステートメントがイイ味出まくり。学芸員さん風のスタッフも二十歳前後の若い人だし、英語の新聞の体裁を取ったロバートのキャリアを俯瞰する図録めいたものとか、週刊誌の体裁を取った日本語のパンフレットもナゼか愛らしい。珍しく一緒についてきたワイフが「なんだか楽しいね」とボクにささやく。確かに。
●日本語パンフレットの内容は、この展示を準備する数ヶ月の学生さんの記録だった。ロバートの写真そのものよりも、打ち合わせや様々な制作に追われる学生さんたちの生き生きとした表情の方が印象深かった。最近の美大志望者は女性が多いと聞いたが、このプロジェクトチームも女性の方が多いのかな。男子も女子も個性的なオシャレさんが多くて、なんだかキラキラ。世界的な写真家と世界的な出版人と直接コラボレートするワクワクがひしひしと伝わってくる。
●自分の学生時代のことをちょっとだけ思い出す。今となっては恥ずかしいことばかりだけど、あの頃の仲間が今はすごく立派なコトをやってて少し誇らしい気分になる。コト今週は、かつての盟友が手がけているファッション雑誌の広告が表参道駅の構内にすごく大きく掲示されてる。そのクールさにしばし立ち止まってじっくり眺めてたもんだ。

ロバートの写真展示は、いわば定番作品が中心だった。「THE AMERICANS」
ロバートの写真には、強く惹かれてた時期があった…ボクが10〜20歳代の頃かな。1950年代のアメリカの様子を赤裸々に記録したロバートの代表作「THE AMERICAN」に強くハマった。モノクロフィルムで捕らえられた、ごく普通のアメリカ人の生活。その写真は、地味で、汚くて、でも地に足ついた暮らしがソコにはあって。影響されやすいボクは、自分の生活の中に、地味で、汚くて、地に足ついた暮らしを見出そうと思って、肌身離さずカメラを持ち歩いて過ごしていた時期もあったんです。それは携帯電話にカメラが搭載される前の時代、まだデジタルカメラが登場する前の時代。35mmフィルムで勝負する時代でした。1990年代のコトだよ。
●さて、その「THE AMERICANS」収録の写真を展示の中で見つけた…ずいぶん懐かしい再会だね。ワイフもすぐに気づいたようだ。「この写真集、あなた持ってるでしょ、ワタシ見たコトあるよ」。ボクの本棚をよく観察してるんだね、まあ25年も付き合ってればそこまでバレちゃうもんか…。スカラシップを得て、ロバートは全米中をウロウロしてこれらの写真を取ったんだ。アメリカ東海岸から、大陸の奥深くに潜り込んでいく旅。第二次大戦後の混乱したヨーロッパから移民としてニューヨークに移り住んだ彼は、この国の奥行きを測るようにして写真を撮影していった…。

トランプ氏を支持したアメリカ支持しなかったアメリカ。アメリカは分断されてるのか。
●ボクはこの前の記事(こちらにリンク)で、アメリカ大統領選挙のコトを書いた。トランプ氏を拒否した青いアメリカと、トランプ氏を支持した赤いアメリカ、その二つの中身を、本を読みながら想像したもんだ。で赤いアメリカが人種差別的感情を乗り越えられなかった、みたいなコトを書いてしまった。しかし、これをボクは反省している。青いアメリカ人と赤いアメリカ人のステロタイプを描いて満足するのは、ただの単純化だ。彼らは全員が一様に「THE AMERICANS」なのだ。それぞれが多様な思考、多様な立場、多様な文化、多様な感情を抱いている。その奥深さを写真集「THE AMERICANS」でクッキリ写し取ったのが、ボクが強く惹かれたロバート・フランクその人だったんじゃないか。そこに気づいてしまった。「おまえはニッポン人だから、アベシンゾウを100%支持しているんだな」と唐突に決めつけられたらボクは困惑する。でも、そういうコトじゃないでしょう。「THE AMERICANS」はモノクロの陰影の中にその多様なグラデーションを描いている。もちろん白人がいて黒人がいる。彼らが直面していた問題もある。でもそれが全部「THE AMERICANS」


ビート詩人との交流でも知られるロバート「THE AMERICANS」の序文はジャック・ケルアックだ。今回の展示でもジャックをはじめ、アレン・ギンズバーグウイリアム・バロウズ、グレゴリー・コルソなどが写った写真がある。彼らもみんなボクのヒーローだった。
●彼らもロバートも、人生を旅だと考えてる。「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす」。禅に通じたビートニクスたちは松尾芭蕉も読んでたのかも。ジャックアレンも、あれだけドラッグにハマりながら結構長生きしたバロウズすらも今は故人だけど、ロバートの旅はカナダの果てまで流れ着きながら、まだ終わらない。そして彼の過去の作品は、いま世界50都市の若者たちの元へヒラヒラと舞い飛んでいく。もしロバートが死んだとしても、彼の作品は旅を続けるのだろう。

●実は、ロバート自身はもうほとんど写真を撮ってないらしい。カナダの写真がほとんどなかったのも、それが理由か。彼の写真のオリジナルプリントは、もはや天文学的価格で取引されるようになって、美術館ですら稀にしか展示しない。その倉庫から貸出しをするとなれば法外な保険料を払わされる。そんなマーケットの状況にウンザリして、彼はもう市場に作品を供給しないのだ。
●だから出版人・シュタイデル氏が登場する。彼はロバートの作品を新聞紙に印刷して安価に展示するという企画にたどり着いた。しかも運営は学生。そしてルールがもう一つある。展示が終わったら、新聞紙の写真は必ず破り捨てるコト。この新聞紙がアート市場に回収され、高価な値段でトレードされるのだけは許されない。シュタイデル氏曰く「腐ったようなマーケットのためには絶対に何も残さないし、彼らに利用されない」ロバートは、このコンセプトに対して、こんなコメントを。「安くて、素早くて、汚い。そうこなくっちゃ!」
●このアンチ商業主義な姿勢は、村上隆のような世界のアート市場にがぶり四つで組み合うアプローチから見れば、ある意味で甘っちょろく、グローバル市場に対抗できない虚弱なアーティストしか育たないロジックのようにも写るかも知れません。昨今のキーワードであるところの「意識高い系」なら、このプロジェクトに関わるよりも、起業や出資受入やキャピタルゲインの方に執心するんでしょうか。何が正解かわかりませんけど、ボクはこの展示で汗をかいた学生さんの方に親しみを感じます。本質的な意味で、このプロジェクトは「意識が高い」と思うから。

●東京藝大まで歩く途中の上野公園では「福島フェア」が盛大に行われていた。会津地方?の美味しそうなおソバに行列ができてた。福島のゆるキャラ大集合のステージイベントからマヌケな音楽が聞こえてくる中、噴水の縁石に座って、渋谷のパン屋さんで買ったサンドイッチをワイフと二人で食べた。こんなピクニックみたいなことをするのは、今まであったろうか?「珍しいことしてるから、写真でも撮ろうか」とワイフが言うのだが、なんとなく恥ずかしいのでスルーしてしまった。ただ、ロバートの写真を見た後では、公園でサンドイッチを食べるボクら夫婦の写真は撮っておくべきだったな、と軽く後悔したのでした。



●音楽。とりとめもなく。フランクにフォーキーに、そしてちょっぴりファンキーに。

THICKER THAN WATER

VARIOUS ARTISTS「THICKER THAN WATER」2003年
●2000年に公開された同名映画のサウンドトラック。サーファーたちのドキュメンタリーフィルムのようだが、世界各地で撮影されたサーフィンの映像を彩ったのは、JACK JOHNSON を中心としたアフターサーフなアコーステックギターサウンドたち。枯れた感じのしないふくよかなフォーキーさと、ちょっとしたファンキーなアクセントが気持ちをユッタリさせてくれる。JACKJACK の盟友 G.LOVE & THE SPECIAL SAUCE が基調を作りつつ、インド風味の KALYANJI/ANADJI、UKソウルの FINLEY QUEYE、そしてニューオリンズファンクの THE METERS などまでが収録されてる。日本人ユニット NATURAL CARAMITY「DARK WATER & STARS」のメロウサウンドが本当に甘美

「THICKER THAN WATER」って言葉が気に入ったんだ。この前、下北沢の日本茶カフェに行ったら、メニューに英語の記載があって。抹茶が「THICK」で、煎茶が「THIN」。あーそうやって言いわけるんだー。なんだか納得。映画のタイトルが「水よりも濃い」って抹茶風ってこと?…ちょっと飛躍してるか。ただモノクロになったサーファーが対峙する波は、確かにただの水より濃く重たいのだろう。モノクロ写真のもつ不思議な濃度に対して敏感になってるのは、やはりロバート作品に触れたからかな。




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