「逃げ恥」ことTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」、最終回だったねー。
新垣結衣&星野源の不器用な恋愛っぷりに「むずきゅん」と名前がついて、視聴率は尻上がりに上昇、最後は20%超えというから見事なもんだよね。
●でも、このドラマってそんな「むずきゅん」って言葉でカタがつく内容じゃなかったね。すげーハイコンテクストな思考実験が繰り広げられてて、それなのに、そのメンドくささをよくぞこんなポップに仕上げたもんだと恐れ入る表現でした。

●ボクが思う、このドラマが繰り広げた思考実験とは、「恋する理由がない男女はシステムで恋に落ちるか」という問い。
●少子化社会がより一層深刻になってく現代日本社会、恋愛や結婚をする理由が完全に溶解した状況の中で、その状況を前提にしながらもう一度、恋愛や結婚をする意味を「小賢しく」再構築する。ややアクロバチックに、とってもユーモラスに。これがこのドラマを特別にしたポイントだ。

新垣結衣が演じたヒロイン・森山みくり「職業での自己実現に失敗した女性」。彼女は就活失敗/派遣切りの末に住む家まで失って、「住込みの家事代行業者」という職業を選択することになる。相対するのは星野源演じる津崎平匡。極端に自尊心が低い彼は「女性との交際を拒絶し孤独を守る男性」で、ドラマの言葉を借りれば「プロの独身」。この男女は、お互いの利害から、二者関係を「結婚」という形に擬態して、家事労働を金銭価値に置き換えた雇用関係を結ぶのだ。
●しかし、そんな場所からスタートしたにもかかわらず、二人は共同生活をより円滑なものにするために、契約形態の更新とか新ルールの導入を大真面目に合議、「システムの再構築」なんて言葉を使ってまでして、その距離感を調整する。「かもしましょう新婚感」とか「火曜日はハグの日」とかね。
●こうして、ドラマは、緻密なロジック(ヘリクツ寸前)から演繹された「システム」で徐々に外堀を埋めながら、本物の「夫婦」が構成されるステップを詳らかに図解する。恋愛を拒否した男性が恋に落ちる、職業に挫折した女性が主婦として自己実現する、そして雇用関係はいつしか共同経営責任者という関係に改訂され、二人は見事に恋愛感情を育み、そしてやっと彼らは本物の恋人/夫婦になるのだ。この壮大な「小賢しさ」が大いにバカバカしい。
●しかも「小賢しさ」に真剣になればなるほど二人の愛情は深まる。主人公たちは実にイノセントで、自分たちの「システム」に忠実。「普通」じゃない状況に常にフラット。だから彼らの関係は純粋に育った。既存の常識や雑音に流されてないんだ。どこもかしこも痛快だよ!誰もが恋する理由を再獲得できるんだ!それが「小賢しく」実証されたってことです。いやいや面白かったよー。

●劇中のセリフにあったんだけど、この二人は確かに「普通」じゃない。そこでこのドラマでは、もう少し一般常識に近いレイヤーをパラレルで配置してる。
●みくりの伯母・ユリちゃん(石田ゆり子)は「職業的に大成功したバリキャリ・アラフィフ」。そして津崎の同僚・風見(大谷亮平)は「女性に全く不自由しないイケメン」。主人公たちと正反対の超リア充だ。しかしこのリア充ですら素直に恋愛関係を結べない。エキセントリックな「小賢しさ」を発揮するわけでないが、このパラレル配置のカップルも、遠回りをしなければ恋に落ちることができないのだ。色々な意味でメンドくさいんだねーこの日本社会は。でもドラマのセリフを借りれば、「同じくメンドくさいなら二人でもいいじゃないですか」。だからさ、みんな、もっと恋しようよ。


●音楽。この流れで星野源「恋」に行くかと見せかけて。

チャラン・ポ・ランタン「借りもの協奏」

チャラン・ポ・ランタン「借りもの協奏」2016年
●ドラマのオープニング曲「進め、たまに逃げても」を担当した、姉妹ユニット。大道芸をルーツに持つアコーディオニストの姉・小春と、インスト中心の活動からボーカル楽曲にシフトした時に誘われた妹・ももが、ロマ音楽やバルカン半島方面のハチャメチャしたグルーヴを鳴らすバンドを背負ってかしましく突進して行く音楽が楽しい。ウィキには「オルタナティブ・シャンソン」なんて言葉もあるぞ。ファンキーなアコーディオンも味があるけど、ボーカルもキュートだね。
●このアルバムは、ジェイポップの名曲などをチャラン・ポ・ランタンがたっぷりカバーしてく企画盤。FLIPPER'S GUITAR「恋とマシンガン」、PUFFY「アジアの純真」と、なんとまあ90年代育ちのボクを楽しませてくれる選曲よ。電気グルーヴ「SHANGRI-LA」の人力推進ぶりがタマラン。SHAMPOO「TROUBLE」の日本語カバーまでしてる…ブリットポップの徒花一発屋。
最高のカバーは、1971年のヒット曲、ヘドバとダビデ「ナオミの夢」。イスラエル人男女ユニットがなぜか日本語で歌って日本歌謡界でバカ受け。ボクは原曲が大好きでいつも7インチシングルで聴いてます。オリエンタルでエキゾチックなグルーブはチャラン・ポ・ランタンにピッタリ。序盤に曇り気味な昭和風エコーをまぶしてるところが原曲に忠実で最高。


●動画。FLIPPER'S GUITAR「恋とマシンガン」カバー。




●動画その2。チャラン・ポ・ランタン「進め、たまに逃げても」。





●あーそうだ、大河「真田丸」も最終回を迎えたんだけど、なんとなくカタルシス不足だった気が。
豊臣家滅亡の瞬間を、もっと陰惨に、悲壮感たっぷりに描けばよかったのか?しかし、三谷幸喜さんはあえてソコを回避したかったのかもしれない。死んだ人は皆死んだと小学生でも教科書でハッキリ知ってるのだから、別に仔細に描く必要もない。死ななかった人は死ななかったし、死ななかったかどうかわからない人はわからないままにしてる。キリちゃん、サスケといった架空キャラたちは、きっと生き残ったかも、と思えるスキマをわざと残した。それでいいんだよね、きっと。




スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://unimogroove.blog4.fc2.com/tb.php/1940-6e67828c