●すみません、また台北ツアーの話を、現地で書いてます。もう三日目。

●一応、家族4人での台北ツアーですから。
●足裏マッサージとか、夜市巡りとか、オミヤゲのごませんべい購入とかしてるんですよ。
でもね、どうしてもレコ屋巡りが止まらない。
本日は、6カ所も回ってしまいました。

「台北車站(TAIPEI MAIN STATION)」の南側にレコ屋集中地帯があったのですわ。
●台湾鐵道の拠点「台北車站」は言わば日本の東京駅のような存在で、台湾新幹線九份行きの特急に乗ったりする一大ターミナルであります。そこに地下鉄 MRT が二系統繋がっていて、そして広い広い地下街や日本の資本が入ったデパート「新光三越」がドンとあるのです。
●この重要なエリアからちょっと裏に入ると、ワリと地に足ついた小汚い雑居ビルが集まるエリアになります。本当に「新光三越」の真裏、「許昌街」という小さな通り周辺。ここに5軒のレコ屋がありました。わお。

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●これが「許昌街」。この中にレコ屋が紛れ込んでるのです。雑居ビル二階とかにね。
●せっかくですから、台北CDショップガイドの旅にお付き合いください。

●1軒目。
「光南大批發 台北許昌店」
台北市中正區許昌街40號

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●いきなりですけど、厳密に言えばココはCDショップじゃありません。ちょっと小ぶりなドン・キホーテ風なんでも屋さんです。3階に及ぶフロアには、生活用品から家電、オフィス用品まで揃ってる感じ。その1階の表側に、CD/DVD売り場がしっかり存在するわけです。ジブリやドラえもんのような日本アニメ、中国のドラマ、欧米の映画などなどがタップリ。CDも中国語、英語(西洋)、日本語、韓国語の各分野を網羅しております。まーこの辺までは当たり前で。
●ふと気づくと「WIND MUSIC」という不思議なカテゴリーがありまして。既存ポップスをインストめいた爽やかなアレンジでラウンジミュージックに仕立てたようなCDがまとまってるようです。確かに足裏マッサージの店では、BGMにオルゴール風にアレンジされた AEROSMITH「I DON'T WANNA MESS A THING」がずっと流れてたっけ。ふーん。
●そのコーナーのさらにハジッコに、台湾の少数民族の音楽がまとめられておりました。なるほどー。台湾は今や98%が漢民族が暮らす土地ですが、その漢民族渡来以前には多くの先住民族が独自の文化を育んでいました(ちょうど北海道のアイヌの人々のように)。こうした人々の音楽をきちんと記録する動きも、この国にはシッカリとあるわけです。とりあえずこの民族音楽2枚組のコンピを購入。台湾では先住民族の人々を「原住民」と呼んで、その文化の保全運動がアレコレ動いてるみたいです。

●2軒目。
「5大唱片(FIVE RECORDS)許昌店」
台北市中正區許昌街34號

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●前述の「光南大批發」のほぼお隣にあるかのようなお店です。赤い看板に「5大唱片」の文字が書かれてます。このお店は台湾全土で6店舗展開している系列店。特別大きくはないお店ですが、コンパクトに全ジャンルの音楽が収まってます。DVDは洋画から日本や韓国、中国そして台湾のコンテンツまで。CDは日本&韓国、洋楽などをキチンと押さえた上で、そして中国語系統をより細かく分類してます。ここがユニーク。
「華語音楽 MANDARIN」というカテゴリーを台湾、中国、香港でさらに分類。さらに「台湾音楽 TAIWANESE」というカテゴリーで台湾語楽曲のコーナーを独立させてました。店員の若いメガネ女子に話を聴くと、台湾語と標準的な中国語はハッキリと違うとのこと。カタコト英語だけのワリと軽いヤリトリキッカケなのに、台湾の方々は、自分たちのアイデンティティをキッチリ中国本土と区別してることを主張するのです。これは少数民族音楽がドンキみたいな店にまで並んでるのと意味が一緒でしょう。ただ、音楽の聴こえ方が二つの言語でどう違うのか?という問題は語学力不足で理解できませんでした。おまけに、台湾語楽曲の作品は、ジャケの気配から圧倒的に歌謡曲&演歌っぽい気分が濃厚で、全然若者に受けてる感じがしない。そこで一生懸命、今時の若者風女子シンガーを見つけて、必死にメガネ女子に内容確認しました。「ええ、多分ダンスミュージックです…」なんかムリヤリ言わせてる感じ。でも買うよ!

●3軒目
「大眾唱片(TACHUNG RECORDS)許昌店」
台北市中正區許昌街24-1號2F

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●こちらも雑居ビル二階のお店でした。青い階段にお店の名前が書いてあって、壁にはアーティストのポスターが。しかし、こちらは、基本がクラシック専門店。漢字で書いてあるけど、全部ヨーロッパ系のレーベルからリリースされてるクラシック音源ばっか。漢字で書いてあると中国人演奏家と思っちゃうけど、シューベルトとかベートーベンやカラヤンを漢訳してるんだよね。ポップスも多少置いてあったけど、買うものはなかったよ。ここはギブアップ。

●4軒目
「再生工場二手雑貨舗 站前店」
台北市中正區許昌街12號2F

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●ココは珍しく中古CDやアナログの取り扱いがあるようで(今までのお店はみんな新譜のみの扱い)、楽しみにしてたんだけど、ちとキツかった。雑貨も含めて色々な中古品があるんだけど、CDに関しては盤質の割に価格のメリットが薄い。日本盤も多かったんだけど、日本で買ったほうがいいかなと。アナログはお店の一番奥にドサドサと積んであったけど、カオティックすぎて手がつけられなかったです。時間をかけて全部チェックしても報いがなさそう。
●中古品の文化が社会に備わるって、物を大切に経済的効率的に使うってコトが前提だからね。CDやLPに対してそういう感情が社会全体で持てるのかどうかってのは、その国々で違うでしょうね。ただ、CD/LPは国境を超えてフェティッシュなほど中古品文化を重んじるクラスタがあるので、きっと台湾にもその手のフリークさんがいるはず。そこにコネクトできるかは、完全にボクの腕次第。

●5軒目
「佳佳唱片行(CHIA CHIA RECORDS)漢口店」
台北市漢口街1段3號B1

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●このお店だけ「許昌街」から西に1ブロック隣の「漢口街」というエリアにあります。でも、このケバケバしい看板は簡単に見つかるので、矢印に従って地下一階に降りていくだけ。前々回の記事に書きました「佳佳唱片行 中華店」と系列関係にあるお店。品揃えも規模もほぼ中華店と同じ。気になったけど買い控えた意味不明なアーティストを数枚買いました。もうこのへんになってくるとレコ屋巡りの感覚が麻痺して、ジャケの女の子がカワイイとか、そんな根拠でしかCDが選べなくなってくる。
このお店、日本語音楽をだいぶヒイキにしてくれてました。とにかくジャニーズ、特に「嵐」一文字というネーミングは中国語文化圏マーケティングを見越した戦略だったのでしょうか。漢字ばっかりのCD売り場の中で、違和感なく並んでる。そしてエイベックス系音源。白地に水色のエイベックスマークをつけたCDがドサっと並んでますわ。AAA とか安室奈美恵とか浜崎歩(あゆみ)とか大塚愛とか TRF とか。本当に売れてるのかな?AKB系もあるんだけど存在感が薄い…中華&韓国系女性シンガーの写真集サイズなゴージャスパッケージの中にあっては、ジャケ違いシングルがペラっと置いてあるだけじゃ叶わない。ぶっちゃけ現地のシンガーの方が美人さんだし。「クールジャパン」な日本のコンテンツ輸出、本当に大丈夫かなあ。
●お店のハゲご主人が THE BEATLES「イエローサブマリン」ロゴを全面にあしらったカーディガンをヨレッと着こなしてるのが印象的でした。


●さらにもう一軒。「許昌街」とは関係ない場所のお店。
そして、自主レーベルを起こして日本人とコラボしたお店。
「上揚唱片(SUNRISE RECORDS)」
台北市中山區中山北路二段77-4號

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●このポツネンとした存在感。CDショップであるオーラが感じ取れません。よしんばCDショップであることを察知できたとしても、わざわざ出向くほど期待が持てません。パッと見の印象ではね。でもね、とってもイイ話が聞けたのです。それを報告します。レコ屋巡りはだからヤメラレナイ。
●このお店、最寄りはMRT淡水象山線「雙連」駅。「台北車站」駅などから夜の観光スポット「士林夜市」へ遊びに行く時に通り過ぎるような位置。そこから徒歩3分。駅前を通る「民生西路」と台北を南北に串刺す大通り「中山北路」の交差点に面しています。看板には「古典・爵士」の文字が。これはクラシック・ジャズの意であります。

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●小さな店内は、予想通りクラシックとジャズばかりの品揃え。正直、このジャンルは欧米の録音物を買うなら日本国内の方がうまく選べるので本当ならスルーです。でも、この柔和な笑顔のお姉さんが、丁寧な英語で尋ねてくれました。「どんな音楽をお探しですか?」ボク「えーと、台湾のバンドミュージックを探してます」台湾では男女ともにソロシンガーがメインでバンド物自体がメジャーじゃありません。つまりオルタナティブな音楽を探してるとメッセージしたのです。するとお姉さん、非クラシック・非ジャズ系の少ない在庫から、他の店では見たことないような台湾インディ音源を即座に見繕ってくれて、おまけにYOUTUBEを鳴らして視聴までさせてくれたのです。あら、趣味がイイわ。
●しかも、この柔和な笑顔とイメージがかぶる、女性シンガーのバンドを選り出してくれて。いわゆるうるさいロックバンドとは一線を画すスタイルをいくつも提案してくれました。へー。30分くらいヤリトリして4枚もCD買っちゃいました。
そして、その去り際に。

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●買ったCDを入れたお店のビニールバッグに記されたマークと、同じマークをつけたCDがゾロリと並んでいるのです。ん?これはなんですか?
●お姉さん「あー、実はこのお店は創業40年の歴史があって、オーナーはお店と同じ名前の「揚」〜「SUNRISE」というレーベルを運営しているのです。これは1980〜90年代に収録された音楽。当時の日本のクラシック演奏家や作曲編曲家とコラボレートして、台湾の伝統音楽を数々レコーディングしたのです」
●ナニ?それってとても面白い話じゃないか?確かにCDのクレジットにはNHK交響楽団の名前や、ボクが知らない日本人の名前がたくさん書いてある。「この人はバイオリンのソロ演奏家です。こっちの人は台湾の四季を題材に組曲を全部作ってくれました」へー、台湾からの呼びかけに応じて、日本人の音楽家がこんなに積極的にコミットしたのか!とても素敵なことじゃないか。80〜90年代の台湾は、急速な経済成長を遂げながらも政治の民主化が進まず、国民党の軍事独裁政権の色合いが濃い時期だったはず。そこに巨額ビジネスでもなく、政治的リスクも高いのに、(失礼ですが)一介のレコード屋の亭主の働きに多くの日本人が手を貸したって事実が素敵だ。老オーナーはすでにご隠居の様子だけど、このCDはお店の一番目立つ場所に置いてある。

そしてココでも台湾人としての誇りを感じた。
●ボク「あの、これは中国の音楽なのですか、それとも…」お姉さん「いえ、これらは全て台湾の音楽です。中国のものではありません。私の好きなこのCDには1920〜30年代に作られた唱歌が収録されてます。台湾人ならCDなど必要とせず、自然と歌える曲ばかり、楽器を持てば演奏もできるでしょう」キッパリとした語り口。すごいなあ。…うーん、1920〜30年代か…。国民党政権が台湾に乗り込んでくる前の時代、つまり日本統治下の時代だ。このへんの歴史問題にどんなナイーブさがあるのかどうか、台湾の歴史に疎いボクはリアクションができずに思わずフリーズしてしまった。が、お姉さんはただ静かにCDをステレオに入れて音楽を鳴らす。それがなんとも優しい音楽で。ああ、イイなあ。コレ買います。

大陸から来た国民党独裁政権の下で、非大陸系・台湾独自の音楽を、その前の統治者である日本人と共に演奏・収録して世に出す。こんな冒険めいた挑戦を30年前に繰り広げていた老オーナーの気持ちとは、いかばかりの物であったか。簡単なことではない気がする。
そして2016年の今、その作品を、若い世代のお姉さんが、創業以来同じ場所にお店を構えたまま、そして一番イイ場所に並べて売り続けているという現状。なんか素敵な話じゃないですか?ボク、結構ジーンと来ちゃうんですけど。やっぱレコ屋巡りはヤメラレナイなあ。


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