●あー仕事始めだよー。
●仕事したくないねー。


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●三が日最後は、一応、初詣にも行ったよ。
生まれて初めての葛飾柴又帝釈天だよ。
●30歳代までは1ミリも興味が持てなかった場所に、ふと目が行くようになったのは40歳を超えてオッサンになったから?うーん、おそらく好奇心の向きが自分に都合のいいテリトリーの中に留まり続けては自家中毒になってしまうので、自然とアウエーな領域に関心が移っていくんだろうな。歳をとったら渋い趣味に傾くのは、若い頃の趣味にちょいと飽和したからなんでしょうな。
●だから、今回の外出もワイフと二人の夫婦デート。コドモたちは好奇心の方向が手近な場所にたくさんあるからね。コドモら諸君は、まず自分の基礎になる文化的ルーツを形成してなさい。ソコがなきゃ、どこにもいけないし、何も始まらないよ。

IMG_5913.jpg(柴又駅前・寅さん像)

葛飾柴又帝釈天といえば、やっぱり「フーテンの寅さん」でしょうね。
●もうこれこそ1ミリも縁がないわー。子供の頃、なんかの同時上演で見なくちゃいけなくて、でも意味わからないから爆睡したのを覚えてる。台湾・九份に出向いて、ロケ地としてこの場所を有名にした映画「悲情城市」をこの観光客の何%が見てるんだろ?なんて、すげー上から目線なコト考えてたんだけど、今回ボクは「男はつらいよ」見たコトないのに柴又来てるって訳で、上から見下ろされるダメ客だわなー。
●せっかくなんで、門前商店街の「とらや」というお店で昼飯食べる。たまたま入ったお店だったけど、「男はつらいよ」第一作〜第四作で寅さんの実家ロケ地に使われてた場所だった。「焼き草だんご」がめっちゃ美味しかったし、「とら特製味噌ラーメン」ていうのも美味しかった。台湾旅行直後、やっとホッとできる日本の味覚に出会った気持ち。

動画配信 HULU では「男はつらいよ」がアーカイブされてる。
●さすがに本編ガツガツ見るヒマはないけど、予告編だけ見てみても実に新鮮だわ。テキ屋である寅次郎の口上が意味わかんないけど切れ味が良くて痛快。「四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立ち小便、白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭いときやがった!」何コレ何コレ、昭和のテキ屋さんってこんなフレーズをフリースタイルで喋りながらセールスするの?昭和カルチャーの中に初めてヒップホップ的なグルーヴを見つけた気分だよー。
●それと、妹さくら役の倍賞千恵子さんが美人!1969年の映画第一作の時はすでにアラサーだったようですが、この当時の彼女、のちに声優を務める「ハウルの動く城」の主人公「ソフィー」にそっくり&ビックリ!宮崎駿さんが自作で倍賞千恵子さんをヒロインに抜擢したのは、「男はつらいよ」シリーズ48作の全てに出演して、嫁入り前からアラ還まで齢を重ねても芯がブレない彼女の様子を全部見てたからなのかも。呪いによって少女と老婆を往復するヒロイン「ソフィー」は、約30年もの歳月の間、「さくら」というキャラクターに一貫性を与えてきた彼女の技能なくしては演じられなかった気がする。


●さて、ボクの好奇心は、別に懐古的な昭和カルチャーに向かってるだけじゃなくて。
●未知の土地のポップカルチャーにも、ビンビンにアンテナが反応している。
冬休みに遊びに行った台湾で、たっぷり買ったCDを毎日楽しんで聴いている!



台湾ミクスチャー・ヒップホップがスゴすぎる!

Kou Chou Ching 拷秋勤

拷秋勤(KOU CHOU CHING)「發生了什麼事 ? (WHAT'S HAPPENING ?)」2012年
●えー、年末で台北三泊四日の旅行に行って現地のCDをたくさん買ってきたんですけど、どれもド肝を抜くユニークネスでアタマが混乱してます。こんなに豊作な収穫になるとは!台湾おそるべし!
●その中でも、抜群のユニークさを見せつけてくれるのがこのバンド(?)かと。複数ラッパーと楽器演奏メンバーの5人組。ヒップホップを軸にしながら、サンプルネタに伝統音楽や伝統楽器をふんだんに盛り込んで、完全に台湾独自のミクスチャーサウンドを作り出してる。イントロ&アウトロで中国琵琶のおじいちゃん演奏家をフィーチャー。SUBLIME のようなアメリカ西海岸のレゲエミクスチャー風のファンクネスを参照しつつも、中国伝統楽器〜チャルメラのような笛、琴、太鼓などなどをアザといほど駆使して、オリエンタルなアクセントを楽曲全体に振りまく。そこに中国語ラップの不思議なフロウが絡むと、もう異次元の領域に突入。スゴい。
●しかも、ゲストMCや客演シンガーなどを含めて、様々な声がどんどんマイクをリレーしていく。単純に中国語ってだけで耳に新鮮なのに、ラッパーごとに確かな個性がそのフロウにピカピカ光っていて、スリリングすぎる。しかもこのラップにさらにヒトクセ仕掛けがあって、北京語(標準語)/台湾語/客家語(台湾人のルーツ・中国福建省方面の言語)そして英語までを使い分けてるとな。もうその辺の区別なんてボクには全然ワカランけど、彼らバンド自身が、台湾の歴史が持つ多重的なルーツにすごく自覚的だ、ということは間違いない。
●ジャケ画像をわざわざデカく貼り付けてみたのは、台湾特有の特殊判型なCDパッケージであることをイメージしてみたいから。このCDパッケージは、普通のCDよりもかなりデカくて、ちょうど7インチEPレコードと同じくらいの大きさなのだ。…でもベラベラとジャケットをめくってみても、抽象的なグラフィティアートが続くだけで、クレジットも曲名やリリックの記載もない。なんじゃこりゃ?

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●と思ったら、専用アプリ「AR! KOU」を IPHONE に仕込んでスマホ越しでのぞくことで、このグラフィティからARが立ち上がる!…なんて手が込んでるんだ…。なんだか色々なもんが出てくるぞ。いきなり表ジャケをのぞくと、世界各地の大新聞のロゴが流れてくる。映写機とスクリーンが出てくるページをタップすると、彼らのYOUTUBEチャンネルへ。戦車がゴロゴロ登場するページでは、バンドメンバーと思しき人影をタップすると戦車が爆発。メガネの男性の写真が出てくるページでは、二人の人名が出てくるのでタップしてみると、この人物の WIKIページへ。なんと台湾の民主化と表現の自由のために1989年に抗議の焼身自殺を遂げた運動家なのでした。もー君達すごくシリアスだよー。
BUBBLE-B という人物が一曲でリミックスを担当してるけど、この人はナードコア系の日本人クリエイターさんとのこと。MYSPACE経由で仲良くなっちゃったらしい。ナードコア系の気分は全然なくて、むしろシックでジャジーな仕上がり、中華歌謡な女性ボーカルのサビが妖しくメロウに響いてかなりの美味。
●なんだか、このアルバム一枚だけで、たくさんのレイヤーからモノを問われてるぞ。ヒップホップというフォーマットを独自の形で内在化・ローカライズする方法、言語的アイデンティティの多重性、伝統音楽/伝統楽器への軽妙なアプローチ、ARアプリまで駆使したジャケットの特殊演出、そこで政治的メッセージまで含ませる信条。これ、今の日本のアーティストで網羅できてる人いるのかなあ。


●台湾ヒップホップ/レゲエ、奥が深すぎる…。

大支「硬」

大支(DWAGIE)「硬」2016年
「大支」というステージネームを「ドゥアギー」と発音するのは、北京語ではなく台湾語なのだという。彼は台湾ヒップホップの開祖的存在。同時に台北ではなく南部の都市・台南をレペゼンする男でもある。台湾の北京語化を推進してきた政治的中心地・台北よりも、そこから離れた、台湾語が日常レベルで色濃く残る地方都市で台湾ヒップホップは生まれたというワケだ。ローカルのスタイルを大事にしろ、それがヒップホップのリアリティだ。台湾には台湾語のリアルがある。
●そんでアルバムタイトルが「硬」文字通り、ハードコア過ぎる。ラップのスキルは超一流で超高速。密度の濃いラップを緻密にトラックへ注ぎ込む。これってスゴイ情報量じゃないか?漢字を用いて高効率に情報圧縮する中国語、漢文の授業で教わった「五言絶句」はたった20文字で全ての詩情を盛り込んじゃうんだよ。なのに16分音符も駆使してラップされたら「五言絶句」の情報量はたった2小節程度でこなしちゃう計算。その超絶技巧にひたすら戦慄する。
●加えて、トラックが実にハードコア。ヒップホップはダンスミュージックであるはずだが、彼のトラックはストイックに研ぎ澄まされた結果、ダンス要素がすっごく薄まってる。重苦しいビートと不穏なアトモスフィア、必要最低限ギリギリまで削ぎ落とされた音の数、フックラインやサビフレーズにも甘さがない。ただひたすら彼のラップに意識を集中させる構造で、息が詰まりそう。強いていえば、00年代のクランクやスナップの系譜につながるスタイルかも。アブストラクト系のアングラヒップホップのダークさと同じと解釈もできる。でもファンクネスがあまりに薄い…中華文化圏においてはファンクネスは重要じゃないのかな。ある意味で目からウロコの衝撃。

HCC「TAYAL SQUAD」

HCC「TAYAL SQUAD」2016年
●こちらのヒップホップグループは、ある意味直球でアメリカ・サウス系のバウンスビート/クランク・スナップのマナーを踏襲してる。どこかスカスカしたチープなビート感覚が完全にサウス系気分であり、その隙間に匂うルードなファンク感が病み付きになる。チープなシンセフレーズも、ある意味でギャングスタラップの気分。そこに、やっぱりユニークで高密度高速度なフロウとマイクリレーが絡みついて、奇妙な楽しさに思わず腰が動く。
●でも、ココで終わらないのがスゴイところ。調べてみると、彼ら4人組は台湾の先住民族の一つ、タイヤル族の血脈を受け継いでおり、そのタイヤル族の言葉を交えてラップしているという。あーだからアルバムタイトルが「タイヤル・スクワッド」か(ちなみに、HCCHSINCHU CITY=新竹市の意、台湾北西部の都市で彼らの地元)。客演シンガーの丁繼という人物はパイワン族の出身だとか。台湾ヒップホップは、先住民族の文化をレペゼンするフォーマットにもなっているのか。
●説明を付け加えると、漢民族が大陸から移住してくる前から台湾には先住民族が独自の文化を育んでいた。17世紀以降、漢民族の移住が進んで同化が進むが、それでも現在16の民族グループが存在する。しかし人口は全体で54万人程度。小さいグループではもう数百人しかいないらしい。沖縄でウチナーグチが、北海道でアイヌ語が廃れてしまっているように、少数民族となった彼らの言語も話者が減ってしまっているそうな。あえてそんな言葉でラップするって素晴らしいね。…それと、彼ら先住民族は台湾で「原住民/原住民族」と呼ばれてる…日本人の感覚だとなんかザラつく言葉と思ったけど、これは清代〜日本統治時代から続く蔑称を当事者自身が長年の努力で追放して勝ち得た呼称だ。1997年制定の「アイヌ新法」以前は「北海道旧土人保護法」なんて法律が堂々と残ってたことを連想させる。
●いやー、台湾の歴史や社会の仕組み、知らないことばっかりだなー。勉強しなくっちゃ。

東南美 Vu Vu Reggae

MATZKA「東南美 VU VU REGGAE」2015年
●こちらは、先住民族メンバー4人による、ルーツレゲエバンド。ヒップホップといい、レゲエといい、そのフォーマットの強度に感嘆します。レゲエはカリブ海/ジャマイカの生まれだというのに、太平洋諸国にも広く伝播してる。今までボクが旅行してきた国/地域の中では、ハワイ、フィジー、そしてオキナワ〜日本と、ホント様々な土地で愛されてる。そしてここ台湾でも愛されてるなんて。みんな島の子供、海の子供。
●バンド名にもなってるボーカリスト・MATZKA の声はワイルドな扇動力があるけど、女性ボーカルを伴う時はとてもピースフル。そして大味な人力バンドグルーヴがザックリとしてダイナミック。時としてゴリゴリしたギターでミクスチャーロック濃度も上がる。
●ブックレット歌詞を見ると、漢字の歌詞とアルファベット表記の歌詞が入り混じってる。先住民族の言葉は中国語とは別系統の言語なので漢字に置き換えずアルファベットで表記するのだ。MATZKA というバンド名/ボーカルの名前も「族名」と呼ばれる、先住民族としての名前だそうな。なんと、先住民の人々は、漢民族風の名前と先住民族の名前「族名」の二つを使い分けて暮らすのか!ちなみにバンドのギタリストは MATZKA と同じパイヤン族で、族名は SAKINU PAVAVALJUNG というそうな…え、発音は??……えーと WIKI をさまよって知ったんだけど、かつて日本の芸能界で活躍してた美少女ビビアン・スータイヤル族出身で、漢民族風の名前では「徐若瑄」となるけど、タイヤル族の族名では「BIDAI SYULAN」というそうな。
●なんだか思った以上に、「台湾人」であるということは、アイデンティティの持ちようが複雑であることが、だんだん分かってきた気がする。国家としては中国全土に主権主張する立場を貫く「中国人」なのに、しゃべる言葉は「北京語/台湾語/客家語/先住民族諸語」と分裂しており、民族的ルーツも様々、同じ漢民族でも「本省人/外省人」つまり日本統治時代から台湾にいた人々と、大戦後に大陸から逃れてきた人々の間にもギャップがある。予想以上に込み入った社会なのだな。
●ちなみにこれも変則大型判型のパッケージサイズだったので、大きめに画像を貼ってみた。しかし、あんまりジャケの大きさで得をする演出はなかったなー。



●ということで、全然知識が追いつかなくて、音楽の理解に不自由しそうなので。
●取り急ぎ、吉祥寺・ジュンク堂「台湾の歴史」って本を買ってきた。なんだか古代から現代史まで網羅する台湾の通史って思ったほど本が少ない。だから3000円もする本を買うしかなかったよ。
●と思ったら、その少ない理由がいきなり説明されてもうビックリ!一言で言えば「台湾の歴史研究」は1990年代までタブーだったのだ!著者の言葉によれば「台湾人が台湾の歴史を学べなかった歴史は100年にも及ぶ」とのこと。だが、その詳細はまた別の機会に。



●動画。拷秋勤(KOU CHOU CHING)「電光影戲夢(Taiwan Movies)」



●すげえユニークネスに震える。そしてMV出演のメガネ女子、カワイイ。


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