●今日は最初から音楽の話題。
ニューヨークはクイーンズの公営団地出身の皆さん。

HAVOC「THE KUSH」

HAVOC「THE KUSH」2007年
●ニューヨークのゲットーライフを描き出した伝説のユニット MOBB DEEP のビートメイカー HAVOC が初めて放ったソロアルバム。90年代以来の東海岸マナーを正統派として今なお保守するスタイルが実に硬派。スクエアなビート配置に、どこか不穏で緊張感走るシンセのウワモノ。MOBB DEEP の相棒 PRODIGY の華やかな課外活動と比べて彼の存在は確かに地味だが、その地味さ加減が堅実でイイ。
MOBB DEEP の二人はニューヨークのクイーンズブリッジ団地の出身。この場所はアメリカ最大の公営団地であり、全米の低所得者向け公営アパートつまり俗に言う「プロジェクト」の典型のような存在だ。そしてある意味でヒップホップの聖地でもある。この団地からは、MOBB DEEP だけにとどまらず、多くのヒップホップアクトが育っている。80年代ヒップホップの超重要人物 MARLEY MARL や彼の JUICE CREW の構成員 MC SHAN ROXANNE SHANTE、さらにはデュオ CAPONE-N-NOREAGA CAPONE、そして90年代ニューヨーク・スタイルの象徴的存在、NAS が暮らしていたのだ。

NAS「UNTITLED」

NAS「UNTITLED」2008年
●というコトで、MOBB DEEP のご近所さん、NAS の登場。彼がラップで「QB」「QB'S FINEST」とかいうのは、クイーンズブリッジの略だったなー初めて意味がわかった。
●彼の9枚目に当たるこのアルバム、実はリリース前から物議を醸した。NAS はこのアルバムのタイトルを「NIGGER」とすると公言。これが黒人社会の中でも賛否が分かれる議論を呼び起こす。結局は「無題」というタイトルに落ち着くも、ジャケは十分に刺激的。ムチ打たれた跡が「N」の字を示している。中身の収録曲を見るとズバリ「N.I.G.G.E.R.」って名前の曲があったりもする。
●内容というと、相変わらず密度の濃いスキルフルなフロウがストイックに聴こえるんだけど、トラックや客演に注目すると素敵にキャッチーだったりもするのですよ。女性シンガー KERI HILSON を召喚した「HERO」や、やはり女性シンガーのサビが響く「AMERICA」が特に歌心たっぷり。CHRIS BROWN が華を添える「MAKE THE WORLD GO ROUND」には THE GAME も参戦。ヒップホップユニット DEAD PREZ のビートメーカー STIC.MAN 制作の楽曲もクール。もはや仲良し SALAAM REMI MARK RONSON がきっちりビンテージ風味の良い仕事。
●このアルバムがリリースされた2008年は何の年かご存知?バラク・オバマ大統領当選の年なのですよ。「BLACK PRESIDENT」という曲のサビフレーズに「YES WE CAN CHANGE THE WORLD」という言葉が響く。そんな時でも「N」の字は重たい意味を持っていたんだね。そこから時間が経って、別の大統領が誕生したのが今月の出来事。さて、これからのアメリカと世界はどうなることやら。



ノマド中学三年生の卒論が仕上がった。
●テーマは「原子力発電の未来」。おいおいデカイテーマを選びやがったな。そんなビッグイシューはボクなら手が出せない。先生からはドコカに取材に行くように、というアドバイスもあったものだから、8月にはボクとノマド二人で大洗にある「日本原子力研究開発機構・大洗研究開発センター」まで見学にも行った(それはこちらのリンク記事へ)。
●ザックリの結論をいうと「さらなる技術革新で、原子力発電を安全に運用できるようにする」。ふーん。

●原発事故以前、そして以後にもよく持ち出された「原子力発電のコスト単価は火力発電よりも安い」というロジックに関しては、ノマドは検証を通じて批判/反論している。設備投資+設備廃止コストで、LNG火力発電所と原子力発電所で比較すると、1kW単位で26万円以上も原発はコストが高い。燃料費コストでは、為替レートの変動を見込むとほとんど変わらない程度。そして廃棄物処理コストに関しては原発は「底なし」。最終処分場建築には3.7兆円がかかるとされてるが、最終処分場候補地も処分方法すら決められていないという意味で正確なコストは全く見積もれない。この手の施設はフィンランドのオンカロ、アメリカのユッカマウンテンが有名だが、アメリカ・オバマ政権は、このユッカマウンテンの建設計画を放棄してる…あの広い国土を持つアメリカでも最終処分を持て余すのか。
●ただし、温室効果ガス排出による地球温暖化のリスクの方が影響が大きい、これがノマドの見立て。どんな影響が今後の地球環境にもたらされるのか?これこそリスクとコストが全く見積もれない。温室効果ガスの排出量を削減するには原子力発電に依存するしかない。火力発電を原子力発電に全て置き換えると二酸化炭素排出量は年間5000億トン、日本の排出量の30%の削減が可能だそうな。
●そして、大洗の研究施設では「もんじゅ」のような高速増殖炉とは別タイプの新型原子炉の研究が進んでいた。日本独自の工学技術を生かしたモノだ。こうした技術革新の可能性はまだ残されている。これを発展させていくしかない。

●まーボク個人とノマドの見解は違うが、自分が生きていく時代に対してノマド自身が自分の姿勢を自分で見つけることは意味があると思うのですよ。なかなか頑張ったんじゃないのかな。

●ボクもノマドに付き合って、色々と本を読んだよ。特に内容が濃かったのは、吉岡斉「新版・原子力の社会史 その日本的展開」という本だ。日本の原子力開発の通史を、戦中の原爆開発から2011年の311まで網羅している。むしろ逆に言えば、原子力の開発史を、政治・行政・研究・経済など広い視点で俯瞰してる本はおそらく他に存在しない。大変勉強になった。
高速増殖炉「もんじゅ」廃炉に地元・福井県が反対するとか、東芝がアメリカの原発技術子会社の投資失敗で数千億円の赤字計上が見込まれるとか、マジで原発マネーは引くも進むも地獄道。そのヘゲモニー争いが泥臭く詳細に綴られている。こりゃ大変でウンザリ。アメリカの原発技術子会社はかつてその技術を東芝にライセンスしてた立場だったのに、いつの間にかライセンシーに買収されちゃってたのね。

吉岡斉「新版・原子力の社会史 その日本的展開」


●ノマドの次の課題は、あるアーティストの作風を研究して、その作家が描くであろう作品を自分で考えて描け、ってお題。ホント変な学校だなー。
●学校側は、モネとかセザンヌとかを想定してるっぽいけど、ボクはアンディ・ウォーホルとかバスキアを薦めたんだ。しかしヤツが関心を持ったのはなんと村上隆「これ、サマーウォーズの仮想世界 OZ じゃないか!」あ、そっちから入るのね。最近の DOB くんシリーズは「寄生獣」タッチでもあるしね。確かに縁があるなオマエと。面白そうだからガンバレよー。

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●しかし、こんなアニメに夢中になってるのを見ると心配になる。「幼女戦記」
MXテレビのヘンなアニメにしっかり引っかかるのがノマドだ。しかしコイツはひときわ奇妙だ。9歳少女がヒロインというロリコン気味な設定だとか、20世紀前半のドイツっぽい世界観が欅坂46みたいにカジュアルナチスになりそうで心配だったりとか、異世界とか魔法とか無神論とか奇妙なモチーフが詰め込まれて色々と渋滞してる気配が微妙すぎる。ノマド、マジでお前大丈夫か?
●ということで、監視の意味も含めてボクも見る。おいおい結局一緒に楽しむのかよ。


●ちょっと前に読んだ書籍についても、メモ的に報告しておこう。
アメリカを軸に、異文化コミュニケーション。

ドナルド・B・クレイビル「アーミッシュの謎 宗教・社会・生活」

ドナルド・B・クレイビル「アーミッシュの謎 宗教・社会・生活」1996年
●イスラム文化圏の勉強をアレコレしてる中で、ふと考えたコトが一つ。ボクのような信仰のない者は、自然科学的世界観を客観的/普遍的な世界認識の基準と思い込んでる。一方、結果としてイスラム文化圏では必ずしもそうではない、神や預言者の言葉が自然科学的世界観の上位にあるのが普通だったりもする。さて、イスラム文化圏だけでなく、他の社会でも宗教的世界観が自然科学的世界観の上位に位置する文化があるのじゃないか?…と思ったら、あった。アメリカのアーミッシュだ。キリスト教プロテスタントの一派で、18〜19世紀水準の技術を維持して現代文明の恩恵を拒否して暮らす人々だ。彼らはある意味で完璧に原理主義者なので、教会すら持たない。集落の成員の中で儀式を全て賄う。アメリカ人にとっても不思議な集団なので、彼らの暮らす集落は観光名所になったりしてる。
●ただ、彼らは現代文明を全否定しているわけじゃない。集落全体の合議をもって独自のルールで何をどう取り込むのかキチンと定めてる。もちろん今だに自動車はご法度で馬車しか使わないし、公衆電話しか使わないし、高等教育も受けてはいけない。でも、自転車の利用を緩和してスクーターはアリになった。鉄道やバスなどの公共交通機関はアリ。飛行機はダメ。細かくは説明できないが、これは彼らの信仰生活に有益か無益かで判断されてる。信仰こそ第一。でも秩序をもって彼らは外界と共存する。こんな人々の生活に、文化間ギャップの克服のヒントはないものかな。

「フランス人は10着しか服を持たない - パリで学んだ”暮らしの質”を高める秘訣」

ジェニファー・L・スコット「フランス人は10着しか服を持たない - パリで学んだ”暮らしの質”を高める秘訣」2014年
●一時期話題本として本屋さんに平積みされてたこの本、古本屋で100円だったから買って読んでみたよ。いやー衝撃の内容だった。フランス人がスゴイんじゃない。フランス人を見て驚いているアメリカ人がスゴイのですよ。
●著者の女性は、アメリカの物質主義に異を唱えるブロガーからエッセイストになった人物。でも彼女のヨーロッパ経験って大学時代にパリへ留学したというだけのもんで、あとは旦那さんがイギリス人だからチョイチョイ欧州旅行の経験が多いだけって話。なのにドヤ顔でヨーロッパ文化のシックな優雅さを語るスタンスがすでにスゴイ。
●フランス人に肥満が少ないのは街をテクテク歩くから。階段を使うから。自分で掃除も炊事もするから。一方のアメリカ人はジョギングするために自動車に乗ってスポーツジムまで通いそこのマシンの上で走る。おいおい明らかにアメリカ人のライフスタイルが不気味すぎるだけじゃないか!家の目の前の道を走れない歩けない社会なんて!こんな感じにドヤ顔のアドバイスがイチイチスゴイ。歩きながらモノを食べない。アメリカは歩き食いが普通なのか!著者自身ですら、小腹が空いたのでプレッツェルを食べながら買い物をしたい誘惑にかられる。そこを必死でこらえて「レディらしく」フードコートで座って食べたと自慢。なんかアメリカ人が不気味に見えてきたー。



さてさて、それではまた激安で買ったゴスペルレコードのお時間だ。
●たくさんあるからキチンと聴いていかないとね。
                                          
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PENNSYLVANIA STATE CHIOR C.O.G.I.C. INT'L.「HE'S READY WILLING AND ABLE - RECORDED LIVE」1976年
千葉 DROPS RECORDS で買った激安ゴスペル、無名の皆さんのパフォーマンスをホッコリした気分で聴いてます。今日は、アーミッシュが多く住んでいるペンシルバニア州の音源。レーベルはやっぱり SAVOY。ジャケも実に無造作でますますイイ感じ。ソロイストがちゃんとクレジットされてるけど、先日紹介したシカゴのクワイアよりもコーラス隊がグッと前に出てくる印象。クレジットをよくみると、バンドはドラムとオルガン、ピアノだけなのね。あとは全部人間の声。素晴らしい人間の力と豊かさがあるよこの音楽には。
●ヨーロッパかぶれのブロガーさんより、慎ましいアーミッシュの人や、教会で真摯に歌を神様に捧げてるこのクワイアの人たちの方が優雅な生活をしてるような気がする。決して裕福じゃないかもしれないけど。





●動画つけとこ。NAS feat. KERI HILSON「HERO」。
●プロデュースは、POLOW DA DON。




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