マンガで旅情をかきたてられて。あてもなく電車に乗る、スマホ片手に。

海街diary 8 恋と巡礼

吉田秋生「海街DIARY 8 恋と巡礼」
「鎌倉」を舞台に、個性的な4人姉妹の生活をみずみずしく描く作品もとうとう8巻。四女・すずは中学3年生の夏を迎えて、今後の進路について決断する。女子サッカー特待生として、「静岡・掛川」の強豪校で寮生活をすることを選んだのだ。「鎌倉」とそこに暮らす仲間たちとの別れに不安を感じながら。3人の姉にも新しい恋愛、そして結婚の場面が訪れて、4人暮らしの生活は徐々にバラバラになっていくのかもしれない。優しい時間は終わって、それぞれが独立する時期がやってくる。この「鎌倉」では、人と人の縁が優しく結びついてる。そんな暮らしのすぐそばで、古いお寺やお宮さまが息づいている。


●こんなマンガを読んだら、なんとなく電車に乗って、遠くに行きたくなってしまった。

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スマホゲームアプリ「駅メモ!ステーションメモリーズ」
「ポケモンGO」が登場する以前から、ボクはこのGPS位置情報を利用したゲームにハマってまして。始めてからそろそろ2年くらい経つかも。たくさんの鉄道の駅でチェックインすることでスコアを競う電車を擬人化した女の子キャラ「でんこ」がたくさん登場するのはご愛嬌。「艦これ」「けもフレ」などなど擬人化女子は時代の大潮流ということで。
●多分、7〜8万人くらいのユニークユーザーがいる中で、ボクは通算スコア1万3000位程度の成績でございます。それでも全国の鉄道駅のうち2040ヶ所にはチェックインしてる。東京都の駅は全制覇してしまって、遠征をしないといけない段階。さしあたり神奈川県が制覇目前なので、今回は、鎌倉よりもさらに奥地、小田原周辺から静岡県方面へ伸びる路線を攻めることとした。マンガに出てきた静岡の「掛川」って土地も気になったしね。
●で、伊豆箱根鉄道大雄山線というローカル線と、JR御殿場線という SUICA 利用可能圏外まで足を伸ばした。大雄山線はかわいらしい印象の鉄道。この路線にある「五百羅漢」駅のそばにある玉宝寺を見学したかったんだけど(ズバリ500体の羅漢像が並べられてるらしい)、本数の少ない御殿場線のスケジュールに合わせる為にお寺の前を通り過ぎるだけでガマン。御殿場のアウトレットなぞ目も向けず、そのまま終点の沼津までひたすら電車に乗るだけ。実は何気にスマホの操作がセワシいゲームなので、旅情に浸る暇もなく、観光なんて無視する「鉄オタ」仕様になってます。お尻が痛くなるほどひたすら電車に乗って移動するだけ。もし座れないと最悪なことになります。

「掛川」目指そうと思ったけど、東海道本線の各駅停車に乗りつつも「ヤバい、掛川は遠すぎてコレ帰れなくなるかも」と不安になって下車&Uターン。たまたまその場所が「東田子の浦」という小さな駅で、ホームからとてもキレイな富士山が見えた「田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ」BY 山部赤人 FROM 小倉百人一首を思わず連想した。奈良時代の人がこんな辺境の地までやってきて、この富士山の雄大さを眺めたら、そりゃもうすげースペククタル体験として写生したくなる気持ちになるだろう。

●電車乗りっぱなしとはいえ、思えばこのゲームをキッカケにして、イソイソと知らない土地まで出かけたものだよ。それは結構面白いよ。
舎人ライナーの終点駅は降りても何にもなくて、人気のない吉野家でモリモリ牛丼食ったっけ。チンチン電車みたいな都営荒川線に乗ってて存在を知った「あらかわ遊園」はゼヒ一度ゆっくり遊びに行きたい。区立の遊園地ってすごくないか?江ノ島から乗る湘南モノレールは、起伏が激しい土地のせいか、時に地面スレスレでビックリ、時に高い見晴らしがキレイと車窓が楽しい。夜遅くの高島平団地の様子はどこか神秘的。夕暮れ時の西葛西近辺は川沿いのマンションが優しくて。川崎の湾岸工業地帯で働く人しか使わないJR鶴見線は、朝と夕方以外は一時間に一本しかないので注意。まさしく東京湾のドン突きまで出る、ズバリ岸壁沿いの海芝浦駅は工場私有地にしか繋がってないので一般人は駅から出られない。。ユニークな場所が多すぎる。「鉄オタ」の気持ち、ちょっと理解できたかも。

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今回の帰り道は、「熱海」で遅いお昼ゴハンを食べた。
「熱海」って初めて行ったけど、駅前からズバリ昭和な商店街が並んでて面白そうだね。「五月みどりの店」なんて横断幕もあったよ。古めかしい定食屋さんに入って「今日のオススメ!サワラフライ定食」を食べたらとても美味しかった。今度はもっと時間をとって来よう。

なんで今「熱海」なのか?ドラマ「火花」でこの土地が重要な役割を果たしてるから。主人公・徳永が、その後ずっと尊敬し続ける芸人の先輩・神谷と出会う場所。そして物語の最後にも、まさしくこのアーケードを二人で歩いて、彼らはメシを食い、温泉宿に泊まるのだ。わお、あのシーンの場所だよ、って気分だよ。

ネットフリックス火花

ネットフリックス・オリジナルドラマ「火花」
又吉直樹先生の小説を配信サービス向けドラマとして映像化。結果として、映画ともテレビドラマとも違った質感の作品ができた。ペースが映画の感覚なのにそれが10話分もある。さすがに長くてシンドイ。でもカットを割らない長い長い芝居をコッテリと鑑賞する新しい感覚に最後は居心地が良くなってた。原作に忠実なところも、その原作のイメージを上回る映像美もあって最終的には満足しちゃった。

主人公たちの10年に及ぶ、芸人としての活動がとうとう終わる時の悲しさ。まさしくポッキリと「挫折」する。これほどまでにボッキリと「挫折」するってどんなコトなのか?…そして、その問いが自分自身に戻ってきて一瞬息を飲んでしまった。アレ?ボク自身は「挫折」したことがあるか?気づかないうちに「挫折」したことになってるのか?「挫折」を知らずに呑気にやってこれたのか?アレ?なんだか自分の状況に自信が持てなくなってきたぞ。
●ボクはハイパーな長時間労働でカラダもココロもぶっ壊し、2年も引きこもって廃人のような暮らしをしてた。それまでのキャリアを一旦たたんで、今は全然違うことをやってる。でも、ボクはそれを楽しんでるし、家族もみんな仲良く暮らしてるし、なんの不満もない。後悔もないし会社に恨みもない。悪い人もいたけど、助けてくれた人たちがもっと大勢いたから。廃人として廃人なりの面白い経験もできたしね。でも周囲から見るとキャリアにおいて「挫折」してる人になってるかも。あー微妙だなー。みんな気を使ってくれてるのかな。客観的には「挫折」してるかもしれないんだなー。なんだか、ゾッとしちゃったよ。

●さて、「火花」においても、土地の名前が記号的な意味を持ってる。「熱海」「吉祥寺」「下北沢」「三軒茶屋」などなど。下北沢と吉祥寺、三軒茶屋は、ボクには身近すぎる場所だからシビれるわ。うわココで撮影してるのか、ってのが瞬間的にわかる。下北沢の茶沢通りを自転車で疾駆する。吉祥寺のハーモニカ横丁で酔いつぶれる。こんな街でみんなが夢や希望や迷いや苦しみを抱えてジタバタしてる。ボクがリアルに暮らしてる場所でジタバタしてる。ボクもきっとジタバタしてきたのだし、今後もジタバタする。ひょっとすると、この東京でジタバタすることが出来るだけでアドバンテージがあるのかもしれない。ボクはこの土地で生まれ育った人間だが、芸人を目指した彼らは関西から志を持ってワザワザこの街を選んだのだから。

マキヒロチ「吉祥寺だけが住みたい街ですか」

マキヒロチ「吉祥寺だけが住みたい街ですか」1〜3巻
●スバリ「吉祥寺」批判マンガ。それは言い過ぎか。吉祥寺で不動産屋を営む双子姉妹(双方おデブ)が、訪れる客のオーダーを聞いて、「住みたい街ナンバーワン・吉祥寺」以外の場所を提案する。マイナーな街が毎回紹介されて、ちょっとしたエリア情報まで差し込まれて、東京の本当の多様性を楽しむコトができる。
●ボク自身は東京全体の駅をアレコレ歩いたワケだけど、結局画一的な表情ばかり出てくることにウンザリするコトも多かったのですよ。すぐに家系ラーメンが出てきたり、ブックオフやその類似店が出てきたりとかね。そんで吉祥寺自体の劣化も激しいよ。大手資本の進出により地元オンリーのお店文化が衰退しつつある。レコ屋がどんどんなくなっていったしさ。その一方で、中央線の他の駅(三鷹以西)が一斉に吉祥寺コピーになろうとしている。これも没個性で退屈な話だ。
●それでも、その土地に住んでみないとわからないことはいっぱいあるワケで、それがリアルで身近な情報となればより面白い。メモ取りながら読むマンガなんて他にないよ。差し当たりボクが気になってるのは、2万枚のレコードが収蔵されてるという茗荷谷の小石川図書館かな。
●あと、この主人公であるトコロの、おデブの双子姉妹が、ヘヴィメタ好きだって設定も好き。

「東京と地方の距離感」を、1964年の視点で描く、NHK「ひよっこ」

ひよっこNHK

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」
●いつのまにか、完全な朝ドラ信奉者になってしまったボク。コレはただのオッサン化か?ワイフからは「電車でフラフラどっか行くなんて「ちい散歩」とか「ぶらり途中下車」みたいなもんじゃない!」。オッサン通り越してジジくさい。しかし、今回も注目作です。久しぶりに実在のモデルがいないストーリーで先が読めない、戦争の時代も出てこない、有村架純はあの「あまちゃん」のキャストだった!ボクは結構気になってます。
●前作「べっぴんさん」戦中に子供を産んだ女性たちが主人公で、つまりそれはボクの祖母の世代だ。今作「ひよっこ」の主人公たちは1964年段階で18歳設定。つまり戦争直後のベビーブーマー/団塊の世代で、ズバリ団塊ジュニアであるボクの親の世代だ。茨城の奥地という設定にも親近感を感じる。ボクの父親はお隣・栃木の奥地、茨城との県境近くの出身だ。役者さんの喋る方言も馴染みを感じる(父親は東京に出て50年近く経とうというのに、まだ北関東のイントネーションが抜けてない…本人は抜けてるつもりだけど)。朝ドラは、ボクの祖父母、父母の物語を描いているんだな。

●さて、東京オリンピック開催に湧く昭和ど真ん中。主人公は茨城県の奥茨城村(架空の土地)から上京する少女。父親は東京に出稼ぎに行ってそのまま失踪し、家計を支えるために長女のヒロインが集団就職で東京に出る。今後描かれようとするのは、地方と東京のギャップのようだ。みんなが全員顔見知りの農村生活から大都会のライフスタイルに切り替わる中で、主人公たちはどのようにたくましく生きて行くのか。それはこれから描かれる。


●今日、紹介しているコンテンツは、全て「土地が持つ物語」を前提としている(少なくともボクにとっては)。
「鎌倉」「吉祥寺」「下北沢」「熱海」という固有名詞が持つイメージやコンテキストを、読み手側も文脈として飲み込むコトでさらなる奥行きを感じるコトができる。逆に言えば、その「土地の物語」を了解していなくては意味がわからない。「吉祥寺」が持つ文脈を知らなくては、デブの不動産屋が客のオーダーを裏切って「吉祥寺」以外の土地を紹介する意味がわからない。実は暗黙のコンテキストを共有することを読み手に要求するハードルが高い作品だ。結果的に「東京」の内部やその周縁部にかなりコミットしていないとダメという意味で、無邪気ながらに高圧的な「東京中心主義」をゴリ押している。

「東京中心主義」をスマホゲームで思い知る。
スマホゲーム「駅メモ!」はソレをハッキリと視覚化させる。ある画面を開くと各都道府県の駅の数が一覧になっている。そこでは「東京」とそれ以外の格差がどデカイコトが一目瞭然だ。狭い面積の東京に600以上の駅があるのに、その隣の山梨県は72しか駅がない。社会インフラの激しい偏りを意識せざるを得ない。
●実際にゲームをプレイするとよりインフラの偏りを感じる。東京近郊路線を踏破するのに、時刻表の研究なんて必要ないし、駅の間隔も狭いし、駅前には何かしらのお店がある。しかし、一旦そこから離れると、時刻表を検討しないと移動効率が極端に悪くなるし、駅の間隔も広くなるし、無人駅ばかり。スコアを競うに圧倒的有利なのは、東京在住の人間だ。

●文化資産や社会インフラが東京に大きく偏るコトを今一度体感した流れの中で、NHK朝ドラが「東京」対「地方」の構図を描きなおす。昭和の「東京」は昭和の地方人にどのように見えたのか。それは、実はボクのルーツにも直結している。団塊の世代であるボクの両親がかつて経験した風景を朝ドラ「ひよっこ」は描くはずだ。所詮、ボク自身も、一世代前に地方から東京に移り住んだ移民の子なのだ。しかし、その程度の存在でありながら「東京中心主義」を自明の理と錯覚してしまう危険がある。そこに慎重になりながら、立場をわきまえないといけない。


●さて、話はガラリと変わって、音楽の話へ。


●えーと、ドラマ「ひよっこ」は主題歌に桑田佳祐を抜擢。これはこれでその昭和歌謡テイストが非常に興味深い。

●しかし、その前にもう一つ気になることが。ヒロインの叔父という立場で、銀杏BOYZ のフロントマン・峯田和伸が出演してるのだ!ヘンテコなマッシュルームカットとヒッピーかぶれなヨレヨレ衣装、ユニオンジャックをはためかせてラッタッタを走らせてくる。明らかに親戚に必ず一人いる変人ポジション。なんでここで峯田が登場!?と戸惑った瞬間、本編ナレーションがすかさず「朝ドラには変なおじさんがよくでてきますよね、なんででしょうね」とメタ視線な自己ツッコミを入れる。そもそもでナレーターが増田明美ってのも意味不明なんだけど。ツッコミどころが多すぎる!

●ということで、今日の音楽の話題は、峯田和伸のバンド・銀杏BOYZ にフォーカス。

銀杏BOYZ「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」

銀杏BOYZ「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」2005年
江口寿史のジャケで可愛いじゃん、とか思ってるとヤバイ。内容はザラザラのパンクロックだ。00年代のポップパンクみたいな洗練された感じもない。80年代の初期ハードコアパンク並みに録音が粗末でメチャクチャだ。なんでこんなミキシングにしてしまったのかと思うようなバランスの悪さが異形。エレキギターの音が大きすぎるし、音の重心が上に設定されてるのか、低音部分〜ベースやバスドラが何してるかよくわからないし、リズムもドタバタしてて不安定。このひしゃげたバンドサウンドのど真ん中で強烈なオーラを放つのがボーカリスト・峯田和伸崩れかけの爆音の中、身を焼くようなテンションで絶叫を続ける様子は、まさに珍獣。
●リリックの内容も実にユニーク。小賢しくなった今時の中学生は決して口にしない、頭の悪い思春期の妄想を猛烈に肥大化させて巻き散らかす。「学校帰りに君の後ろをつけてみたんだよ 君はどっかのオシャレ野郎と待ち合わせをしてた そいつが君のおしりの辺りに手を当てた時 僕は走って逃げてCD万引きしたんだ」「ボクのあそこがなんだかムズムズするんだーボクのあそこがボクのいうことを聞かないー」「あーなんてイカ臭い愛と青春だろう」「あー僕はなにかやらかしてみたい そんなひとときを青春時代と呼ぶのだろう」時として、センチメンタルな詩情も漂う。
●最後の10分の大曲「東京」が実にセンチメンタル。「僕と別れて君は仕事をやめて新幹線に乗って郡山へ帰った 車窓から眺めた空は何色だっただろう … 二人の夢は東京の空に消えていく」。ここにも東京と地方のズレが詩的な意味を響かせている。「環七沿い」とか「小田急線」とかの固有名詞を散りばめて。ああ、またワリとウチの近所だ。ちなみに、峯田和伸は山形県出身。

銀杏BOYZ「DOOR」

銀杏BOYZ「DOOR」2005年
●前述「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と、この「DOOR」は同年同日同時発売のアルバム。いきなりのデビューでアルバム2枚とはすごい才気だな。いや実は前身バンド GOING STEADY 時代の楽曲を再レコーディングして収録してるのだ。それでも、ナニカを振り切ってバンドを改組して、もう一度取り組んだ楽曲は、本作においても「〜恋愛革命」においても、より鬼気迫る内容になってて切れ味が深い。相変わらず激しいアンバランスに耳がおかしくなるようなパンクサウンドだけど。
「僕のエレキギターであなたの苦しみを叩き斬ってやる ケツ毛のツヤの光のごとく輝く明るい未来じゃないか」「自転車の変速を一番重くして商店街を駆け抜けていくんだ だけど悲しい噂を聞いた あの娘が淫乱なんて嘘さ 僕の愛がどうか届きますように ああ世界が滅びてしまう あの娘はどこかの誰かと援助交際」「あの娘は綾波レイが好き あの娘は睡眠薬が好き あの娘はバカだから ヤリマンのバカだから 僕たちバカだからバカばっかしだから コンドームの風船お月様まで飛んでいけ」もうキレキレのリリックが満載だわ。

銀杏BOYZ「あいどんわなだい」

銀杏BOYZ「あいどんわなだい」2007年
●バンドとしての初めてのシングル。「あいどんわなだい」相変わらずの無鉄砲で無節操な妄想ラブソングパンクロック。一方、カップリング楽曲「東北新幹線はチヒロちゃんを乗せて」は、「東京」の続編に当たる内容とされてる。北へ帰っていく女性を思う歌が優しくて。この作品と次のシングルは、ジャケ写真を川島小鳥さんが担当してる。

銀杏BOYZ「光」

銀杏BOYZ「光」2007年
悪フザケパンクではなくて、センチメンタルなバラードが前面に出てきたシングル。「光」はシンプルな言葉で綴られた純愛と死の歌。アコギとピアノの弾き語りが、峯田の才能が本質的にはフォークシンガー的なものだと気づかせてくれる。前半5分が優しく響く一方、後半5分はハードなバンドサウンドが津波のように押し寄せて激情を煽り立てる。ああ、素晴らしい。
●バンドの本質が、キワモノパンクから、やや不器用に純粋な詩情を奏でるロックバンドだということが徐々にはっきりしだしたのがこのころ。いや、こうした名曲は前から、GOING STEADY 時代からあったのだけど、やっとコチラの認識が追いついた。

 銀杏BOYZ「17才」

銀杏BOYZ「17才」2008年
なんと、南沙織のヒット曲1971年をカバー。しかも猛烈なパンクで凄んでます。カップリングは波打ち際で収録したアコースティックバージョン。「病室にいるあの娘へ」というサブタイトルが添えられてる。生命感溢れるはずのリリックを、その生命力を失いつつある誰かに贈る行為が意味深いな。あ、原曲の作曲家は筒美京平さんなんだ。
●映画「俺たちに明日はないッス」の主題歌だったとな。これ、さそうあきらの原作マンガ大好きだったけど、映画はスルーしてたな。今チェックすると、柄本時生安藤サクラが出てる。これドッカで観たいなあ。

銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ

銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ「SEX CITY 〜セックスしたい〜」2010年
映画の主題歌から、舞台のサントラ版を銀杏メンバーが手がけた音源へ。劇団ポツドール主宰・三浦大輔の依頼で舞台「裏切りの街」の劇伴を制作することになった。
峯田和伸俳優業はバンドの初期から実は盛んだ。2003年「アイデン&ティティ」はいきなり主演。原作・みうらじゅん、脚本・宮藤官九郎、監督・田口トモロヲ、サブカル大先輩たちによる大抜擢だ。2009年「少年メリケンサック」は監督/脚本/原作・宮藤官九郎で、田口トモロヲ演じる中年パンクロッカーの過去を演じている。同じく2009年には「色即ぜねれーしょん」黒猫チェルシー・渡辺大知、くるり・岸田繁と共演。これも原作・みうらじゅん、監督・田口トモロヲという布陣。そして2010年は「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で主演&主題歌を担当。ポツドール・三浦大輔はこの作品の監督で、その縁でこのコラボが成立してる。
ここにはいつもの銀杏BOYZは存在しない。サウンドトラックという裏方に徹した、ピアノやストリングス、ギターの小品があるだけ。それはそれでテーマのメロディが切なくて味わい深い。しかし唯一のボーカル入り楽曲である主題歌はなぜか「ピンクローター」って名前で。ユニット名には「壊れたバイブレーター」がくっついて、アルバムタイトルは「セックスしたい」「裏切りの街」がどんな物語かわからないんだけど、そんなに直球で下品じゃないでしょ?映画版だと池松壮亮寺島しのぶが出演してるみたいだし。
●演劇からはしばらく遠ざかってるけど(振り返ると「劇団、本谷有希子」以来ゼロか?)、ポツドールは観てみたい劇団だなー。

銀杏BOYZ「光のなかに立っていてね」

銀杏BOYZ「光のなかに立っていてね」2014年
「〜恋愛革命」「DOOR」の二枚同時発売アルバムから9年経って発表されたセカンドアルバム。これもライブテイク編集アルバム「BEACH」と共に二枚同時発売されている。制作には7年かかっており、最終段階でバンドメンバーが続々と脱退。このアルバムリリース時には、銀杏BOYZ峯田和伸のソロユニットになっていた。
●そんな激動を反映してか、幾分サウンドの気分が変わっているGOING STEADY 以来のバランスの悪いパンクサウンドに、一部で打ち込みリズムが採用されてて意外だ。リズムですら拡縮自在だった彼ら独特のグルーヴが一気に整理されてる。「金輪際」のインダストリアルビートまでは飲み込めても、「愛してるってゆってよね」チップチューンなアレンジには当惑する。既発シングル曲「あいどんわなだい」の改題バージョン「I DON'T WANNA DIE FOREVER」圧倒的なエレポップになってビックリ。ボーカルスタイルも変わった。闇雲な絶叫には歯止めがかかってリズムに乗って流していく感じもある。「SEX CITY」の仕事を経ての成果でもあるのかな。
GOING STEADY 以来3回目のアルバム収録となる「銀河鉄道の夜」「新訳 銀河鉄道の夜」に改題、パンクのスタイルはほぼ放棄されて壮大なロックバラードに変身、シンセの神々しい響きでそのセンチメンタルさに磨きが増している。シングル曲「光」も、より死の気配が濃い形にリリックも改変されて、ピアノアレンジも可憐で荘厳さが増した。同じ曲でも練り直されて成熟していくのが実に楽しい。もちろん過去アレンジとの聴き比べも乙な楽しみだ。
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」はシングル盤未聴なのだけど、このバージョンはシンプルなビート感覚が素朴のように思えて、その分リリックはよく響いて、青春の暴走が眩しい。映画見てないんだよな。原作マンガは全部読んだよ。「アイアムアヒーロー」花沢健吾だよね。新曲「ぽあだむ」「僕たちは世界を変えることができない」完全に新スタイルだ。ポップなプログラムリズムとファンキーなギターにキラキラシンセ、そして甘口ボーカル。渋谷系みたい。
●この後、峯田和伸のソロユニットになった銀杏BOYZは、活動のペースをグッと落として、アルバムのリリースは止まっている。昨年シングルを2枚出してるけど、そこはまだ聴いてないんだ。


●さあ、こうなったら、銀杏BOYZの前身バンド、GOING STEADY にも触れるぞ。

GOING STEADY「BOYS GIRLS」

GOING STEADY「BOYS & GIRLS」1999年
峯田和伸、21歳、90年代のアルバムだ。ここからがスタート。当時は「青春パンク」というバズワードがあって、日本語詞で青臭いコトを喚くバンドがたくさん登場してた。今となっては思い出せないほどなんだけど…ロード・オブ・メジャーとか?175R(イナゴライダー)とか?太陽族ってバンドもいたっけ?ガガガSPもそうかな?STANCE PUNKSも?GOING STEADY もそんなバンド群の一つと思ってた。
●このアルバムなんて、楽曲タイトルが全部英語でまるで HI-STANDARD 風じゃないか。歌詞は THE BLUE HEARTS ばりに全部日本語なのに。それでも、銀杏BOYZに繋がる、イビツで荒削りすぎるサウンドデザインは当時の耳には十分衝撃的で、登場の瞬間から只者じゃないと思ってた。峯田和伸の若気が至りまくる佇まいもこの時期から健在。
銀杏BOYZ時代に到るまで重要なレパートリーであり続ける楽曲がここですでに登場。「MY SOULFUL HEART BEAT MAKES ME SING MY SOUL MUSIC」は、その後「もしも君が泣くならば」と改題されて二回もレコーディングされてく作品だ。「YOU & I」「YOU & I VS. THE WORLD」に改題されて銀杏BOYZに継承されてる。

GOING STEADY「さくらの唄」

GOING STEADY「さくらの唄」2001年
●セカンドアルバムのタイトルは、発売当時から、90年代初頭の安達哲の同名マンガを連想させた…マンガ「さくらの唄」はヤバい内容だったよ。影の深いトラウマ青春を描くマンガと、このバンドの業深い青春の爆発力は明らかにシンクロして見えた。そして、ここの楽曲たちもいくつかがそのまま銀杏BOYZへ継承されて、改作されてる。
●とはいえ、この時代の楽曲たちが銀杏BOYZの準備の意味しかない訳ではなくて。ディストーションギターの高圧力下で歌われるラブソング「佳代」の力強さ、「GO FOR IT」のメロコア展開とオイパンクばりの大合唱アンセムぶりがまさしく「青春パンク」で眩しい。

GOING STEADY「若者たち/夜王子と月の姫」

GOING STEADY「若者たち/夜王子と月の姫」2002年
GOING STEADY は二枚のアルバムを残して解散する。でも前述2作品以降もシングルを3枚残してて、これも侮れない内容になってる。こと「若者たち」はパンクロックのロマンチシズムが全部詰め込まれてて、この段階で十分輝かしい。本作シングル楽曲2つもそのまま銀杏BOYZへ継承されて、再レコーディングされた。この時期のシングル「青春時代」2003年も銀杏BOYZに持って行かれたね。この時期のアルバムアートは峯田和伸自身が手がけているようだ。味のある画才も発揮。
GOING STEADY は解散するも、後継バンドの銀杏BOYZ とメンバーを比べると結局ギターが交代しただけの変更だ。ギター担当のアサイタケオとソリが合わなかったのか?ベースとドラムは2013年までずっと峯田和伸と共に行動してた。しかし、銀杏BOYZ への改組が、峯田和伸のサウンドやアレンジのスタイルに影響しているのは確実だ。THE BLUE HEARTS 以降の日本語パンクの素朴な解釈から、さらに一歩踏み込んだ独自解釈に進化してる。もっと自由に、もっとダイナミックに、もっとうるさく下品で猥雑に。ただ、ソロユニットになった現在の銀杏BOYZも、さらなる変化の季節を迎えることだろう。今後は一体どんな音楽を聴かせてくれるのだろう?



●「SKOOL KILL」。もう何が何だかわからないが、とにかく IGGY POP みたいだぞ。





●関係ないけど。「海街DIARY」のサブタイトルは、なぜかいつもデジャヴを感じる。
●第4巻の「帰れない二人」井上陽水の楽曲だよね(忌野清志郎との共作詞だったような)。第6巻「四月になれば彼女は」SIMON & GARFUNKEL「APRIL COME SHE WILL」の邦題。第7巻の「群青」もスピッツがそんな名前の曲をやってて。「陽のあたる坂道」MISIA「陽のあたる場所」を連想させる。「真昼の月」 REBECCA「真夏の月」を。いつも音楽の響きがそこはかと伝わってくる。ただ今回の「恋と巡礼」は連想ネタがなかった。もっとストーリーそのものに寄り添ってた。

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