●8月になると、戦争の本を読む。
●気づけばもう数年にわたる習慣になってたな。

ぺリリュー楽園のゲルニカ

武田一義「ペリリュー 楽園のゲルニカ」1〜3巻
●太平洋の島国、パラオの南にある島、ペリリュー。平和な楽園かのように見えるこの美しい島が、大戦の最中は激しい激戦地になったという。ここの防衛を担った日本兵約一万人はほぼ全滅。その戦いを三頭身マンガで描く。
●ただ、このかわいらしい絵と、作戦の悲惨さのギャップが激しすぎてキツイ。三頭身でも爆撃を受けて人体はバラバラになる。火炎放射器で塹壕ごと炙られたら黒焦げになる。
日本軍は本当に人命を安く見積もっていたんだなと思い知る。作戦の目的は「アメリカ軍を足止めし続けろ」。確かにこの島の飛行場を占拠すれば、アメリカ軍はフィリピン戦線に対して直接爆撃機を送り込むことができる。だからそれを食い止めろ。しかし援軍も補給もナシ。死ぬまで戦え。しかも「玉砕」禁止。粘り続けて地獄を戦い続けろ。
●この悲劇は、今回このマンガで初めて知った。ボクはまだあの戦争のことを全然知らない。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
●東京大学で日本の近現代史を研究する著者が、高校生を相手に「日清戦争」「日露戦争」「第一次大戦」「満州事変〜日中戦争」「太平洋戦争」それぞれの戦争に対して、当時の日本人がどのような思考と政策決定で突入していったのか、膨大な史料に基づいた知識を前提に講義を展開した様子を書籍化。どの時代も様々な勢力(国内外関わらず)と様々な思惑が錯綜して、戦争は引き起こされる。それが生々しい。
1894年の日清戦争から1945年の太平洋戦争終結までこの50年間は日本人にとって対外戦争は当たり前だったのかも知れない。それにしても、日中戦争激化に対する陸軍のスタンドプレーや、太平洋戦争の向こう見ずな戦略立案はあまりにも自己中心的でデタラメすぎると思った。一方で、日露戦争開戦はその1ヶ月前まで戦争回避の為に様々な人々が運動していたのに。
●しかし、根本の部分で、明治維新以降の日本はただひたすら帝国主義列強に対する安全保障の為に、綱渡りをするような気持ちで国を動かしていた、というコトを知る。帝国主義列強の代理戦争をやらされてると自覚しながら清王朝と戦うとか、南下するロシア帝国の脅威に対抗する為には、日本海の対岸〜朝鮮半島/中国沿岸地域にロシアに軍港を作らせないとか、満州の権益は日本の生命線だとか、強迫観念のように自己防衛の事ばかり考えている。日本の近代史を「防衛戦争」と考えている人々が少なくないのは、こうした文脈がロジックの根本にあるのだろうなと理解。中国や朝鮮半島から見れば明らかに日本は「加害者/侵略者」であったのに、どこか内面的には「被害者」っぽい気分があるのは、ロシアやアメリカにずっと苦しめられていたというトラウマがあるのだろう。
●反対に、1945年以降、70年にわたって安全保障問題を日米同盟に甘えて頭を悩ませずに済んできたのは、日本にとって本当にラッキーだったとも思える。刻一刻と変化する帝国主義のサバイバルにリソースを割き続けるのはとても負担が重く、結局戦中のドイツもそれをやりこなせなかったのだから。

●この本で引用されていたルソーの言葉が印象的で。「戦争は国家と国家の関係において、主権や社会契約に対する攻撃、つまり敵対する国家の憲法に対する攻撃という形をとる」
GHQの占領時代と日本国憲法をさっと連想させるテーゼ。天皇制(=主権)のあり方も改造された。これは何もアメリカ占領軍の専売特許ではなく、すでにフランス革命以前の哲学者によって看破されてたコトだったんだな。改憲云々を主張する保守政治家や運動家の方々が、太平洋戦争敗戦の結果、何がどう攻撃されたのか?どのように認識してるかは、よくわからんが。
●ただし、その一方で、20世紀前半で日本が関わった戦争では、反対に日本が「主権/社会契約/憲法」を攻撃したケースがあったはずだ。それに日本人はどれだけ意識的であろうか。例えば朝鮮=韓国。ボクはあの国が主張するアレコレの各論(慰安婦/強制労働/竹島)について今どうのこうの考えてる訳ではないが、間違いなく日本はあの国の「主権/社会契約/憲法」を根底から攻撃/改造してしまったのは間違いない。憲法は憲法のレベルまでいってたかは別にして、自主的な近代化の芽は摘み取った気がする。

●アジアの近現代史の本は、アレコレ読んでる。
●気持ちが良くなるタイプの本じゃないことが多いんだけど、それでも飲み込む。




●本日の音楽は、フロリダ州マイアミのヒップホップ。
●アメリカの各都市には、ご存知の通りそれぞれに個性的なローカルのヒップホップシーンがある。特にサウスサイドのシーンは、アトランタ、ニューオリンズ、ヒューストンと軸になる都市がたくさんあって、シーンの全容を把握するのが難しいほど。ボクにとっては、マイアミこそなんだかよくワカラン都市だったんだけど、今日ハタとその核心に触れられたような気分になった。
「マイアミのアーティストは、アルバム一枚に色々なスタイルや仕掛けをバラエティ豊かに配置してて、ポップなサービス精神がたっぷり盛り込まれてる」。ボクが得た確信?はコレ。これがこの街の流儀なのかもしれないぞ。


本物の「サグ」稼業から転身、バラエティ豊かな芸風が光る地元のベテラン。

TRICK DADDY「THUG MATRIMONY MARRIED TO THE STREETS」

TRICK DADDY「THUG MATRIMONY: MARRIED TO THE STREETS」2004年
●なんとなく手に取ったCDだったよ。彼の名前は知ってたけど真面目に聴いたことなかった。マイアミを拠点にしてることも買ってから知った。でもコレが楽しかった!
ヒップホップのアルバムって、ラッパーの芸風、トラックメイカーの芸風で、CD一枚の基調が一本調子になりがち。ある意味、ワンコンセプトの一本槍を堂々と押し切るのが普通な気分がある。コレがオレのスタイルだぜ!とむしろその一徹ぶりに価値があるかのよう。普通のロック/ポップスならバラードありアップテンポありと緩急つけてみるところ、コチラにはその辺手加減がないかのような文化。ラップされてるリリックの中身に緩急あってもソレはボクにはほとんど理解できないし。
●でもね、この TRICK DADDY のアルバムは、意外なほど楽曲のスタイルが多様で、それがすごく新鮮に聴こえたんですわ。期待しないトコロで予想外のおもてなしをしてもらった気持ち。
●初っ端は思いっきりダーティラップな「F**KIN' AROUND」で達者な早業ラップを披露。T.I. YOUNG JEEZY らサウス〜アトランタ系の重鎮も召喚。その次の「LET'S GO」はなんと OZZY OSBOUNE のヘビメタ古典「CRAZY TRAIN」大ネタ使いしたクランクビートをド派手に炸裂。クランク大王 LIL JON のガナリ芸とカミカゼラッパー TWISTA もナイス助演。そんな硬派路線でやりきるかと思いきや、メロウなコーラスを従えた優しい曲もタップリ。「THE CHHILREN'S SONG」なんてホントに少年少女合唱団のコーラスを迎えてて無垢なポップスになってる。「U NEVA KNOW」はサウス系とは異質のウェッサイ・マナーを意識したG-ファンクを想起させるし、TALKING HEADS をネタにした「SUGAR (GIMME SOME)」とアルバムの締め「DOWN WIT DA SOUTH」は、ペタペタ滑っていく早めのビート感覚が、80〜90年代のマイアミベースを連想させる。芸歴50年!生ける伝説 RONALD ISLEY の美声をフィーチャーした「I CRY」は高機能なアーバンR&Bとして完璧。…という感じで、楽曲のスタイルが本当に多様なのです。そしてそういう構成感覚が、ボクにはおもてなしなサービス精神と受け取った。さすがリゾート観光都市・マイアミ。
●あと、この2000年代前半から「サグ」って言葉がヒップホップ界隈で目立つようになった気が。ここにもアルバムタイトルに「サグ」の言葉が出てくる。SLIM THUG とか自分のステージネームにする人も出てきたり。ギャングスタ、ハスラー、ピンプ、と続いて「サグ」かー。直訳すれば「チンピラ」。実際にこの人は、ローティーンの頃からピンプ稼業の父親と一緒にクラックやコカインを売り歩いてて、殺人未遂の嫌疑で懲役食らってるというホンマモン。ラップを始めたのは牢屋の中なんだってさ。
●さて、TRICK DADDY はこのアルバムで全米レベルのヒットをものにして、全国区の活躍を始めるが、すでにアルバム6枚目、芸歴は90年代後半にスタートと、すでに地元じゃ十分なキャリアがあった。拠点にしてたレーベルは地元マイアミの SLIP-N-SLIDE RECORDSこのレーベルから彼に続いてマイアミのローカルヒーローがどんどんブレイクしていく。


味のあるモコモコ声で、毎日毎日ハスラー稼業の、デビュー&セカンド作品。

RICK ROSS「PORT OF MIAMI」

RICK ROSS「PORT OF MIAMI」2006年
「マイアミの港」ってなんの意味?と思ったら、中南米からのコカインの密輸先としてマイアミはとっても有名なんだそうです。TRICK DADDY と違ってこの人は犯罪に関わったことはないそうですが。ただ、TRICK DADDY とツアーを回ってキャリアを立ち上げた、SLIP-N-SLIDE RECORDS のレーベルメイトであります。
●このアルバムもバラエティ豊か、というか、あまりサウスサイドのマナーにこだわらないスタンスが結果的にポップに楽しめます。AKON MARIO WINANS、LYFE JENNINGS といったシンガーを召喚した曲はどれもサビが渋く決まるR&B仕様で、メロウネスがとてもキャッチー。ハイハットがうるさ過ぎるチキチキなバウンスビートはここでは目立たない。とはいえ、それでもどこか不穏な気配が全体に漂うのは、RICK ROSS の声が元来から低くくぐもっていて、わざとレコードの回転速度を下げて音をモコモコさせる「スクリュード&チョップド」というサウス独自のスタイルを連想させるからかも。
●聴きどころはヒットシングルになった「HUSTLIN'」か。「エブリディ、アイムハスリンハスリンハスリンハスリン」と連呼しまくる(しかもスクリュー気味に)ところが中毒的にハマる曲。ドロリとした質感のトラックも気分が出てるわ。ただ、こんなに「ハスリンハスリン」言われると、「毎日セッセと稼いで稼いで稼いで稼いで…」と追い立てられてるようで、ハスラー稼業もサラリーマンと変わらないような勤労意欲が大事なのかなと思ったり。この曲を御大 JAY-Z も気に入ったようで、彼と YOUNG JEEZY が客演したリミックスもある。そんで、ここでハッキリしましたが、RICK ROSS「サグ」じゃなくて「ハスラー」。ハスラーの意味は「敏腕家/やり手」。「サギ師」って意味も出てきますが。
●それと、大ネタ使いが派手な「I'M BAD」もイイね!70年代ディスコチューン「THEME FROM S.W.A.T.」がバタ臭く鳴らされてて痛快。このアルバムの中で、一番ポップに聴いちゃった。

RICK ROSS「TRILLA」

RICK ROSS「TRILLA」2008年
●前述のデビューアルバムでいきなりブレイクした RICK ROSS。セカンドにしてすでに高級車乗ってます。
前作のドロリとした質感からメジャー仕様にランクアップ。やっぱりサウスマナーにこだわりない感じ。R. KELLY T-PAIN、TRAY SONGZ ら手練れのシンガーを贅沢に使った曲はみんなクールなヒップホップソウル、華やかでピカピカしてるぞ。NELLY らと組んだ「HERE I AM」は軽快で爽やか過ぎるほど。成金趣味も炸裂してて「MAYBACH MUSIC」「BILLIONAIRE」「LUXURY TAX」と三連投で金持ち自慢をメロウにかましてる。
●で、やっぱり大ネタ使いがある。最後の曲「I'M ONLY HUMAN」は、THE HUMAN LEAGUE「HUMAN」1986年をガッツリサンプル。マイアミ系ヒップホップ、サンプルネタがザックリしてて、ちょっと笑えちゃうほど。こういうところも見事にポップだよ。


ワンコンセプト推しでマイアミ風のトラップミュージック。それが彼のリアル。

PLIES「THE REAL TESTAMENT」

PLIES「THE REAL TESTAMENT」2007年
SLIP-N-SLIDE RECORDS から三人目の刺客がデビュー。ホントこの時代のマイアミは人材が分厚かったし、世界からも注目されてたね。次から次へと才能ある新人が現れる。でもナニげにみんな「遅咲きの新人」で、RICK ROSS PLIES も後述する FLO RIDA もほぼ同世代ですでに30歳超えてたはず。実は年齢では大先輩 TRICK DADDY ともそんなに変わらない。オマケにボクとも変わらない(ボクと TRICK DADDY は同い年)。
彼のアプローチは、豪華な客演はそんなに盛らずに、己のラップで勝負のスタンス。バラエティ感あるポップネスとは反対の硬派なワンコンセプト推しだ。この一徹ぶりが彼のリアル感覚なのか。トラックのスタイルもそんなにアレコレと手を広げない。奇数拍のアタマにハンドクラッピングまたは乾いたスネアをパチパチ鳴らして、キックとベースはむしろ自由に動いてスムーズなファンクネスを演出する。これが00年代後半型のマイアミ風トラップミュージックか。ニューオリンズの NO LIMIT 一派や同時期の CASH MONEY 一派に比べると、スネアにアクセントを持つ意味では同じサウスマナーだけど、マイアミテイストは明らかに洗練されてる気がする。
●とはいえ、ヒットシングルは客演を迎えたポップな楽曲でした。T-PAIN を召喚した「SHAWTY」はトラップマナーをベースにしながら圧倒的な洗練で耳に気持ちいい。そもそもで T-PAIN の高音ボイス(オートチューンで加工)が気持ちいいんだよな。AKON 召喚の「HYPNOTIZE」も文字通りうっとり幻惑させられるわ。
●ちなみに、このヘンなキャップのかぶり方。中途半端に軽く乗っけるスタイル。アトランタの帝王 T.I. が同じコトやってたと思うんだよね。この手のファッション、ボクの生活じゃ全く応用できないわ。ただ、2010年代に入って EDM にまで影響を広げるトラップミュージックの本当の先駆は、T.I. だとボクは考えてます。(詳しくはコチラの過去記事をご参照)

PLIES「DEFINITION OF REAL」

PLIES「DEFINITION OF REAL」2008年
●セカンドアルバム。リアルにこだわる PLIES くんなので、またタイトルに「REAL」の文字が入ってます。このアルバムも硬派だなー。客演はそんなに多くなくて(TRAY SONGZ、KEYSHIA COLE、J. HOLIDAY とか)、彼のラップを同じコンセプトのトラックで押し切ってる印象であります。ただ、ポップな曲はやっぱりありまして…NE-YO 参加曲「BUST IT BABY, PT.2」は客演家のスウィートネスでタマランですわ。


バラエティ感最高!ダジャレに終わらぬ、フロウにワザがありのエンターテイナー。

FLO RIDA「MAIL ON SUNDAY」

FLO RIDA「MAIL ON SUNDAY」2008年
●彼は SLIP-N-SLIDE の所属ではないけど、TRICK DADDY RICK ROSS の近辺でキャリアを積み上げてきた男。生粋のフロリダ男ってワケだけど、名前を「フローライダー」にしちゃったのはスゴイね。実際のところ、彼のフロウは、緩急のメリハリが印象的な、バリエーションの豊富なスタイルで、非常にポップに聴こえるのです。完全にラップを忘れて自分で歌っちゃう曲もあるしね。「MS. HANGOVER」は軽快なポップチューンで全部一人で歌っちゃってるよ。プロデューサーの J.R. ROTEM は硬派なヒップホップから BRITNEY SPEARS まで手がけるユダヤ系の男で、ナニげに今日紹介している他の音源でも活躍してる。
そんなわけで、トラックのバリエーションも実に豊富。サウスマナーなトラップミュージックを逸脱した意外なスタイルがドコドコ投入されてる。出世シングル「LOW」「ロウロウロウロウロウ!」とサビで連呼するフックが印象的なんだけど、BPMは異常に速いし、T-PAIN がまたも参加してキャッチーなボーカルを披露してくれてて、今までの文脈の中では異色の存在。一方で、同じように「ローローローロー」というフックラインが出てくる「ROLL」という曲はドロリとしたトラップ系。このアルバムは、サウスマナーに充実なドロリと幻惑的な楽曲と、それを大きく逸脱したポップネスてんこ盛りのスタイルの間を反復横跳びするように往復しまくるコトで、飽きのこない構成をなしてる。
逸脱型ポップネスの方面では、TIMBALAND と組んだ「ELEVATOR」がイイ。TIMBALAND が手がけた MADONNA FEAT. JUSTIN TIMBERLAKE のヒット曲「4 MINUTE」と似た質感のダンスポップがイイ。あ、この曲と MADONNA の曲は同じ年の曲なのか。ビキビキのシンセビートにホーン系のムサイサンプルが加わってるトコロがそっくり。TIMBALAND のトレードマーク「ピキピキ!」の口癖もたっぷり。「IN THE AYER」ももはや異端派クリエイターとなった THE BLACK EYED PEAS WILL.I.AM が担当。いつの時代を参照してるのかよくわからんエレクトロヒップホップを投入。西海岸チカーノ系のトークボックスプレイヤー FINGAZZ を登用した「ME & U」は、メロメロメロウなスローナンバーでアルバム全体から浮いてるほど。前述の「LOW」は、パンクバンド BLINK-182 の元メンバーが完全なロックバージョンにリミックスしたものまで収録されてる。うわ、パンクロックまで採用するのね。
硬派なサウスマナー方面では、ニューオリンズの一大勢力 CASH MONEY RECORDS の社長 BIRDMAN を客演に召喚しての「PRICELESS」が典型的。出たがり社長の BIRDMAN はスキルというより味と雰囲気で楽しむべし。その彼のルードでルーズなキャラと一緒にドロドロとした世界を作ってる。不穏なベースラインに重心が偏るこのトラックは、厳密にいうとトラップでもないかもな。青CASH MONEY のスーパースター LIL WAYNE も一曲目から登場しているよ。アトランタの若手 YUNG JOC との共演「DON'T KNOW HOW TO ACT」はシンセベースのトラップがチープすぎて、むしろこれが味。トラックがチープなほどラッパーの技が映えるのもヒップホップの真実。マイアミの朋友 RICK ROSS も客演参加。モコモコしたラップが耳を引く。FLO RIDA の方が、ラップが明瞭でフロウの幅が広いってことがわかっちゃった。

FLO RIDA「ROOTS」

FLO RIDA「R.O.O.T.S」2009年
これまたバラエティ豊かな異色の楽曲がたくさん収録されててビックリ。この一枚で、マイアミの街の個性は「バラエティ感」なのではと思い至ったといっても過言じゃない。ヒップホップじゃないじゃん!って楽曲も遠慮なくぶち込んであるんだもの。老いも若きも全米から人が集まってバカ騒ぎして夏休みを楽しむ観光都市マイアミは、人種やスタイルを超えて、踊れて楽しい音楽が要求されてるのかも?とマイアミが舞台だった映画「スプリング・ブレイカーズ」を思い出しながら考えたよ。
●独特のミクスチャーセンスを持つボルトガル系カナダ人SSW NELLY FURTADO を召喚した「JUMP」は素朴にダンスポップだし、それに続く「GOTTA GET IT(DANCER)」はカッコで示されてる通りに80年代エレクトロのアップデートっぽいダンスミュージックでラップらしいラップもないぞ。WILL.I.AM 制作の「AVAILABLE」も完全なダンサー。客演の AKON もテンポ早めのビートにうまく乗ってます。とにかくビートがみんな早いなあ。「SHONE」という曲ではトランスめいたシンセリフが採用されてる。00年代後半のどっかのタイミングで、アメリカのアーバンシーンはヨーロッパのDJカルチャー(=トランス)を採用したんだよな。それがその後の EDM 世界制覇に繋がったとボクは考えている。
●メロウ系としては NE-YO さん召喚の「BE ON YOU」だな。FLO RIDA 自身のフロウもメロが乗っかってるから、素朴にアーバンR&Bとして聴けちゃう。…ムー、結果的にここまで来た感じ、ヒップホップアルバムじゃなくてダンスポップアルバムみたいだなあ。ラップ楽曲には下積み修行が長い彼の苦労を綴ったものもあるらしいけど、飛び道具がすごすぎて…
●そうそう、最高の飛び道具!久しぶりの大ネタ使い!KE$HA を召喚した「RIGHT ROUND」はズバリ DEAD OR ALIVE「YOU SPIN ME ROUND (LIKE A RECORDS)」をネタ使いというよりカバーアレンジしちゃってます。こういう時、70〜80年代の一周以上回りまくったヒット曲を使うのが、イケてる技ってコトになってるんでしょうか。ボクは初めて聴いた時は思わず吹き出して笑っちゃいましたけど。結果的にはこのシングル、大ヒットしてます。今や誰もが忘れたイタリアの一発屋ユニット EIFFEL 65 のダンスポップ「BLUE (DA BA DEE)」1999年をネタに使った曲もあるんだよ。「ダサかっこいい」って感覚はアメリカにもあるのかな。この選曲は率直に「ダサい」と思ったけどね。でも「ダサい」もボクには好物、EIFFEL 65 のこの原曲もボクは持ってるよ。


そしてマイアミは EDM の街になりました。

PITBULL「PLANET PIT」

PITBULL「PLANET PIT」2011年
PITBULL はマイアミ出身のラッパーだが両親はキューバ人とあって、今まで紹介してきたラッパーたちとちと出自は違う。完全なラティーノであって容姿も白人と同じ。マイアミのストリートシーンからは早々に離脱し、メジャーレーベルへ積極的にアプローチ、年齢は今日のアーティストに比べて5年以上年少なのにデビューは2004年とグッと早い。2005年には P. DIDDY とディールを結んで、彼の BAD BOY RECORDS のサブレーベル BAD BOY LATINO を設立。完全にラティーノ市場/トロピカル市場を狙い撃つ戦略と体制を整えた。ああ、確かにこの辺のパーティノリはマイアミでバカ受けしそう。
●このアルバムは、そんな彼の6枚目の作品。時流に合わせて手加減ない EDM サウンドが炸裂しまくってる。NE-YO まで召喚した「GIME ME EVERYTHING」は制作がオランダ人トラックメイカー AFROJACK でマジ手加減のないヨーロッパ型 EDM になってる。というかアルバムのどこもかしこも、完全にディープハウス/トランス経由の EDM になってて、確かに PITBULL はラップをしてるけど、もうヒップホップって感じじゃなくなってるのですよ。ラティーノ路線というコトで、客演も MARC ANTHONY とか ENRIQUE IGLESIAS とかいるし。ワリと異世界な感じ。あ、トラック提供に DAVID GUETTA(フランス)、REDONE(スウェーデン)の名前も見える。
●ただ、完全なハウスになり切らず、どこかファンキーな気配が残っているのは、トラックの中に奇妙な反復があってそれが無愛想ながら粘着質なファンクネスに聴き取れる瞬間があるからかも。ヨーロッパの流行をそのまま移入すれば成功するわけではないのがアメリカという広い国の宿命で、クリエイターはこのアメリカのリスナーが何にフックを感じるのか、必死に探ってる感じはある。


マイアミの気合い入ったビッチ姐さん、だったはず。

TRINA「STILL DA BADDEST」

TRINA「STILL DA BADDEST」2008年
●今日最後の音源は、SLIP-N-SLIDE RECORDS の初期から所属してる女性ラッパーの作品。すでに4枚目のアルバムだ。この人、マイアミでデビューを果たすと、その後 MISSY ELLIOTT に接近してコラボを繰り広げてる。その路線が一区切りした段階の作品なんで、なんだか結果的に地味な印象が。
●異郷の師匠 MISSY ELLIOTT の援護射撃もあまり効いてないし、PITBULL ROCK ROSS の客演もそんなに効いてない。ビッチ姐さんは前線から撤収か?金髪から黒髪にしてちょっと落ち着いた感じが出ちゃってるもんな。


●むー。なんとか自己流でマイアミのシーンを飲み込んでみた。マジョリティの見解とはズレてるかもしれないけど。






●ROCK ROSS と FLO RIDA は顔が似てる。ヒゲが似てる。


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