芥川賞受賞作品、沼田真佑「影裏」を読む。

沼田真佑「影裏」

岩手県の美しい自然、川釣りの様子、同僚との友情。そこにチラリと忍び込んだ、ゲイセクシャリティと東日本大震災。淡々とした静かな世界の中を何事もなく歩いているつもりだったのに、一瞬主人公の性別がわからなくなった…一人称が「わたし」と書かれてるのは男女ドチラとも解釈できるギミックか?そこで読者を揺さぶったと思ったら、作中で地震が起きて東北地方が揺さぶられた。でも、実はゲイ要素も震災要素も作品の本質とは関係なくスルリと滑っていく。
文章が達者な人だと思った。文字の扱い方で世界の彩りを丁寧に制御しているようだった。また、新しい世界に出会った。芥川賞を毎回チェックする習慣は、やはり価値がある。


文学の世界を題材にしたマンガ。

柳本光晴「響 小説家になる方法」

柳本光晴「響 小説家になる方法」1〜7巻
●ここ最近で夢中になっているマンガの一つ。天才的な文学の才能を持つ現役女子高生・響。その圧倒的な作品の力は出版界や文壇社会すらを揺るがし、芥川賞+直木賞のダブル受賞を果たすほど。そこに輪をかけてセンセーショナルなのは、彼女の破天荒な行動。無礼な質問をする記者にマイクを投げつけ、カメラマンを蹴飛ばし、会見場から脱走する。大作家やマスコミにも物怖じしない。
●一瞬はサスガにムチャなキャラじゃないの?と思うのだけれども、かつて「文学」にはそのセンセーショナルな傲岸不遜さが期待されてたんじゃないのかと思い直す。作者自身が、自分が信じた「文学」の凶暴さ野蛮さを、このメガネのヒロイン、地味で無愛想で空気を読まない頑固な少女に託しているような気がする。

今でも誰でも、文字を読みたいし、書きたいと思ってる。でもミスマッチ。
スマホとアマゾンの時代において、書店の数が激減しているという。2000年と2017年を比較すると4割減、2万1654店から1万2526店に減少した。書店を一つも持たない自治体が全国で200もあるという(朝日新聞8月24日)。ああ、暗い話題だ。レコード屋も減ってるからすごくリアルに感じるわ。

ただ、文字表現は、今でも青少年にとって一番親近感がある表現だ。
●我が家の息子ノマド娘ヒヨコのラノベ消費量はかなりのモンだ。実はネット上に「小説」をアップしてる様子もある。当然ボクが読める場所には上げてないから内容は知らないが。ヒヨコは小説投稿サイト「小説家になろう」のヘビーな読者でもある。電車の中で移動中にスマホでたっぷりなテキスト読んでるから何してんだと聞いたら答えは一言「なろう、読んでる」実は潜在的な部分で、文字文化の需要は途絶えていない。YouTubeで動物カワイイ動画を探すように、連中はネットの世界で自分たちの感覚にフィットしたテキストを探査しているのだ。

ただし、既存の出版流通と彼らの世界観にはミスマッチがある。
●ヒヨコと、吉祥寺パルコの本屋に行った時、印象的な会話をしたなあ。ヒヨコは「文庫」がなんだか理解してなかった。やはり芥川賞作品の又吉直樹「火花」が文庫になって平積みされてるのを見つけたヒヨコ、「あれ、火花、こんなに小さくなっちゃったの?」本はね、最初は立派な単行本として世間に出るけど、十分売れたなーというところでお値段控えめの小さな本、文庫版としてもう一度売り直されるのだよ。で、ずーっと売れる本は文庫版としてずーっと名作として本屋さんに並んでいるんだよ。「えー!なんだかチッポケすぎるー!じゃあなんで最初があんなに立派だったの?」……まーそこは出版社の稼ぎドコロというか…確かにボクも高いと思うからハードカバーなんて古本でないと買わない。でも、こんな基本的な出版ルール、誰かに教わらないと察知できないものか?でも、今の中高生のリアルはその程度なのだ。
●文庫も新書も雑誌もマンガも。当然と思える出版のシステムが、ある世代にとっては全く未知のルールになってるんだな。そのミスマッチをどう埋めるのか、これが課題なのかもね。新聞テレビ含めてレガシーメディアは無自覚なミスマッチを正確に理解して対応しなくちゃいけないんだな。


書店に元気がないのも事実かも。下北沢ヴィレッジヴァンガードでさえ。
熱のこもった手書きPOPがヴィレヴァンの代名詞ですよね。バイヤーさんの渾身のおすすめコメントがヴィレヴァンを別格の存在にしたんですよね。
ところが、マンガ売り場からそのおすすめコメントが減ってしまった気がする。少なくとも新刊マンガにはチョッピリだけだよ。ダブり買いを防ぐための発売日表記だけお義理にようにやってるだけだよ。バイヤーは作品読んでないよ。読む暇もないか、普通の新刊を普通に仕入れてるだけだし。そもそも新刊コーナーがお店の入口から離れてしまい、なんと TENGA 売り場の裏側になっちゃった。TENGA 売るのは構わないけど、マンガ新刊は TENGA のバリューに劣るのか、ってのがちょっと悲しい。
●店員の女の子が、大友克洋「AKIRA」のTシャツ着てたんですよ。名セリフ「俺達ァ健康優良不良少年だせ」の金田のドヤ顔がでっかくプリントされてるんですよ。当然気になったから、レジカウンター越しに「そのTシャツカッコいいですね、アキラ好きなんですか?」と声かけたら「ゴメンなさい、実は読んでないんですー」。えー、そこにドッサリ売ってるじゃん!DVDで映画まで流して。「他のお客さんにも同じこと言われましたー今度読んでみます!」……うーん、しかし「AKIRA」はヤンマガ連載当時は80年代でボクが中学生だった時代の作品、二十歳そこそこの彼女に読めは過酷か。ワイフには「説教くさいサブカルオヤジは黙ってな」と一喝された。



●音楽の話題。ここからはより一層意味のないカスな話題です。申し訳ないです。


激安ワゴンから買い集めてしまった、ワケの分からない買い物たち。
●今まで行ったことがなくて知らなかったのですが、横浜駅前のレコファンには広大な100円コーナーがあるんですね。いやー確かに産業廃棄物寸前の駄盤ばっかなのですが。でもココを数時間掘ったら捨て置けぬ物件もたくさん出てきてしまって、結果すげー無駄遣いしてしまったような。

●さしあたり、膨大な無駄遣いからジェイポップ関連をパラパラご紹介します。

TOMMY FEBRUARY6「EVERYDAY AT THE BUS STOP」

TOMMY FEBRUARY6「EVERYDAY AT THE BUS STOP」2001年
●このシングル、実は長年探してたんですわ。目当ては表題曲ではないんです。三曲目に STRAWBERRY SWITCHBLADE のヒット曲「SINCE YESTERDAY」1984年のカバーが収録されてる。これが聴きたい!一度別の場所で聴いて頭から離れなくて…マジで10年くらい気にしてたかな。
●原曲のセンチメンタルな気分をそのままキュートにパッケージした上で、いかにも80年代再評価なピコピコアレンジでダンサブルにしてる。ああ買ってよかった!思えばこの人は00年代に始まる80年代再評価の先駆を走ってた人だよね。変名・別名義の TOMMY HEAVENLY6 とか THE BRILLIANT GREEN とかを駆使して自己イメージに意識的な戦略家のイメージがある…キュート/ポップ路線は FEBRUARY に、ゴズ/ロックテイストは HEAVENLY6 に、バンドサウンド/ガンダム主題歌は THE BRILLIANT GREEN にとか。ガンダムに使われた「ASH LIKE SNOW」2008年はジャケも好き。

MIHIMARU GT「I SHOULD BE SO LUCKY : 愛コトバ」

MIHIMARU GT「I SHOULD BE SO LUCKY / 愛コトバ」2007年
●これも80年代カバーだね。表題曲は KYLIE MINOGUE の1987年のヒット曲のカバー。KYLIE にとっても出世作になったはずだし、プロデュースチーム STOCK, AITKIN & WATERMAN がガッツリ仕掛けたユーロビートの代表作としても有名。それにエイベックスのラップユニット MIHIMARU GT が日本語ラップをまぶしてます。原曲のウキウキ感はそのままですね。

GORIE WITH JASMINE JOANN「MICKEY」

GORIE WITH JASMINE & JOANN「MICKEY」2004年
ガレッジセールゴリさんがフジのバラエティ「ワンナイR&R」で演じたキャラ・ゴリエがそのままCD出しましたってヤツ。もうみんな忘れてるのでは?実はボク自身はリアルタイムでも全然この番組見てないのであまり理解できてないです。ゴリさんはほとんど歌ってなくて、JASMINE JOANN がメインのボーカルをこなしてるみたいです。
●でもね、これもズバリ80年代カバーでしょ。TONI BASIL「MICKEY」1981年でしょ。これ原曲も欲しいんだよなー。まーあまり高額で買うってほどでもないんだけど。あ、このゴリエシングルは50円でした。今日の紹介音源ほとんど50〜100円だよ。

GORIE WITH JASMINE JOANN「PECORI♡NIGHT」

GORIE WITH JASMINE & JOANN「PECORI ♡ NIGHT」2006年
あ、もう一枚シングル出してたんだ、ついで買っちゃおう。で、聴いてみたらコッチは BAY CITY ROLLERS「SATURDAY NIGHT」1974年の日本語替え歌カバーでした。音楽で聴く範囲じゃもうゴリエさんほぼ不在だけど。

NICOTINE「太陽(ティダ)の木の下で」

NICOTINE「太陽(ティダ)の木の下で」2004年
90年代前半から活動している日本のパンクロックバンド。ボクの印象では HI-STANDARD BRAHMAN のようなバンドと同世代で、日本のメロコアシーンを盛り上げた存在。この曲はタイトルの雰囲気で伝わるように「沖縄」にインスパイアされたスカ風味な内容で、英詞にも関わらずメロディもギターフレーズも島唄ニュアンスがたっぷり。
●で、オマケのように MADONNA「LA ISLA BONITA」1986年のパンクカバーもやってる。スパニッシュで「美しい島」だもんね、沖縄に繋がるよね。でもコッチは手加減のないファストなハードコアパンクなアプローチですわ。

JINDOU「なごり雪」

JINDOU「なごり雪」2003年
●ズバリ、イルカ1974年の代表曲をカバー。しかし、このバンドは実にマッチョな男臭いミクスチャーロックで、ラップパートまで挿入してゴツいロックに仕上げてます。2006年にはバンドが解散してるんだけど、メンバーの一人がその後、芦田愛菜&鈴木福「マル・マル・モリ・モリ!」2011年の作詞作曲を担当したという逸話がウィキに乗ってる。人生いろいろ。

LARC~EN~CIEL「SEVENTH HEAVEN」

L'ARC~EN~CIEL「SEVENTH HEAVEN」2007年
●ラルクのベストを聴いた時に、収録されてないシングルがあると思って気にしてた楽曲。なんかのテレビのタイアップがあったので耳になんとなく残ってたんだよね。彼らの中でもダンサブルなスタイルなこの曲、やっぱり80年代のユーロビート、DEAD OR ALIVE を意識して作ったらしいよ。ボーカルの気分も一際グラマラスなニュアンスにしてるのは、DEAD OR ALIVE のトランスセクシャルなフロントマン PETE BURNS へのトリビュートな表現なのね。

GLAY feat KYOSUKE HIMURO「ANSWER」

GLAY feat. KYOSUKE HIMURO「ANSWER」2006年
GLAY とその大先輩ヒムロックが合体したシングル。完全にヒムロックにセンターを譲って GLAY はバックバンドに徹してます。ヒムロックの気になるキャリアとして昔から気になってました。ヒムロックといえば、あとは KAT-TUN に提供した「KEEP THE FAITH」のセルフカバーね。これを入手したいなー。

GTS「THROUGH THE FIRE」

GTS feat. MELODIE SEXTON「THROUGH THE FIRE」1996年
90年代トーキョーハウス番長だったこのユニットが、CHAKA KAHN 1984年のヒット曲をカバーしたシングルです。「THROUGH THE FIRE」といえば、ワリと初期の KANYE WEST がガッツリこの曲をサンプルした「THROUGH THE WIRE」を連想します。ガラケー時代はこの曲を着メロにしてたっけなー。GTS の中核人物 DJ GEE は音楽事務所 ARTIMAGE の社長で、かつては m-flo とかが所属してたっけ。

石野卓球「STEREO NIGHTS」

石野卓球「STEREO NIGHTS」2001年
石野卓球のソロと言っても一口にくくれない幅がありますが、今回は明るい未来がパッと開けるようなエレポップディスコ。80年代風なような気がします。二曲目の「HIROSUEBASEBALLBAT」のストイックかつ音数多めの一本槍テクノの方が本来の芸風なような気も…でもなんで「HIROSUE」?広末涼子?

宇宙犬

宇宙犬「CORECCA」1996年
●時代も古いのでしょうがないですが、直球で電気グルーヴ最初期の作風のフォロワー/エピゴーネンです。シンプルなブレイクビーツテクノに、日本語ラップ(非ヒップホップ)であーだこーだ言い散らかす感じ。1991年「FLASH PAPA」時代の電気グルーヴそっくりな気分です。名前は知ってた程度だったので…50円だし、まーいいやー。暴力温泉芸者リミックスが入ってる感じも、ある意味渋谷系時代ですね。両者とも超傍流渋谷系でしたけど。

テイトウワ「火星」

テイトウワ「火星」2000年
●さすがテイ先生、17年も経過しても新鮮なセンスを感じさせるダンスポップ。と言うか完全に2ステップですね。当時、日本じゃテイトウワさんが2ステップの一番の唱導者だったイメージがあるんですけど。コロコロ転がっていくリズムの楽しさがやっぱイイね。しかも聴き馴染みあるなーと思った女性ボーカルが、クラムボン・原田郁子さん。ナイスすぎる。

NIRGILS「KING」

NIRGILS「KING / アイススケート・フォー・ライフ / LEMON」2004年
●このバンドの持ち味、エレクトロダンス感覚とボーカル嬢・岩田アッチュのエピックな熱唱が見当たらなくて残念。と思ったら、その成功方程式を見出した「SAKURA」(アニメ「エウレカセブン」主題歌)2006年以前の模索期だったのかと。石野卓球の高弟 DJ TASAKA のリミックスも収録。彼らが手がけた渡辺美里「MY REVOLUTION」も探してます。彼らはこの曲をマッシュアップサンプルしたことがあって(ていうか当時バズワードだった「マッシュアップ」という手法に積極的だったバンドなのでした)、その流れで改めてキチンとカバーした経緯がある模様。

wyolica「愛をうたえ」

WYOLICA「愛をうたえ」2000年
●この前 MONDO GROSSO 名義で新譜を出したばかりの大沢伸一が、この男女2人ユニットのキャリア初期をプロデュースしてたことで注目。アシッドジャズやフリーソウルのトーンに、可愛らしい女性ボーカルが乗るのが時代としてフィットしてたなー。好きで結構音源を買ってたんだけど、この曲を持ってないのに最近気づいた。シングル楽曲なのにベストに収録されてないんだ。
●キャッチーなメロディとキュートなボーカルに、ギターとベースがうまく絡みながら進むグルーヴ。ストリングスアレンジが途中に切れ込む具合が、大沢伸一スタイルでナイス!二曲目に収録されてるリミックスはボサ風味。

MISIA「陽のあたる場所」

MISIA「陽のあたる場所」1998年
●この曲90年代の歌だったのか、月日が流れるのは早い。日本のヒップホップソウルの傑作だと思ってます。で、シングルとしてわざわざ買ったのはカップリングされてる MASTER KEY(FROM BUDDHA BRAND)のリミックスが聴きたかったから。フィーチャリングにラッパー K DUB SHINE(FROM キングギドラ)が参加。90年代ヒップホップレジェンドが降臨。硬派でストイック。ラップもトラックもね。
●勢い余って、MISIA「LUV PARADE」2006年ってシングルも買った。ドリカムみたいなディスコナンバーだった。彼女はドリカムと合体コラボもしてるよね、確か。

SUGAR SOUL「ON」

SUGAR SOUL「ON」1999年
●こちらも日本のヒップホップソウルを代表するシンガーさんだよね。K DUB SHINE ではなく ZEEBLA さんとコラボしてた印象が強い。女性が歌うにはキワドイリリックをセクシーかつ堂々と歌う感じが、シーンのリスペクトを集めてたような気が。ここでは「GIN & LIME」という曲が印象的で。SNOOP DOGG の出世作「GIN & JUICE」を連想させるような、ルードでレイジーなソウルが効いてます。この人の他の音楽もちゃんと聴きたいな。歯抜け程度にしか音源持ってない。


●こんなに紹介したけど、これでも無駄遣いのほんの一部。ツーか、分量が多すぎて簡単に聴き切れない。まだ聴いてないんじゃ、紹介できないしね。また続報書きます。この夏は、ホント各所で無駄遣いしたわー。








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