学生時代のサークル仲間だった女友達、イミズ(仮名)と食事をした。
●キッカケは、年賀状だ。彼女は大学卒業以降も毎年几帳面にボクに年賀状をくれる。和紙や染めた布をコラージュしたような趣味のイイ年賀状だ。ところがボクはこの十年彼女に年賀状を返した事がなかった。ま、彼女に限らず誰にも返してないんだけど。
●そこで今年は病気で暇もあったので、イミズに年賀状を書いた。彼女のオフィスはボクんちから自転車圏内の代々木上原にあるので、軽くメシでも食おうと提案したのだ。そしたら先方からメールが返ってきた。下北沢で会う事になった。5年ぶりの再会だ。

イミズは、和歌山県から出てきた同学年の女子で、親御さんが立派なのか、とても素直でおっとりとしたタイプのコだった。関東育ちのボクには関西弁をしゃべる女の子がとても珍しく思えた。大学一年生のボクにとって関西弁は明石家さんまさんやダウンタウンがしゃべるテレビの言語、「女の子がしゃべる関西弁はカワイいんだなあ」と思ったのが第一印象だった。大学生活四年間のボクとその悪友たちは、今から振り返るとどうしようもない変人/ヒネクレモノで、やるコトなすコトデタラメばかり。そんなボクらと4年間通じてツルミ続けた彼女は素晴らしく忍耐深く性格がイイと思う。

で、会ってみたら、全然変わってなかった。
「あんた、かわってないねえ~」「よくいわれる(笑)」「いや、イイ意味でよ。人間ぼちぼち痛んで来る頃。ボクはもうボロボロにぶっ壊れてるからね。」彼女自身は決して自覚がないだろうが、関西弁なまりのイントネーションまで変わってない。上京してきて15年以上、完璧な標準語をしゃってるとイミズ自身は確信してると思うが、ボクの耳には十分関西弁だ。
でも一点だけ大きな変化。イミズは結婚してた。ボクは今年の彼女からの年賀状でそれを知りビックリしたが、ボクと同い年、妙齢なお嬢さんですからフツウと言えばフツウ。お相手は同期入社の同僚だそうな。浅草に立派なマンションを借りて、ダンナさんと一緒に家を出て一緒に出勤する毎日。ラヴいじゃねえか。結婚おめでとう。
●ボクは昔のように仲良しのお姉さんと二人暮らししてると思ってた。イミズの家に電話かけるとソックリの声のお姉さんが出てくる。「もしもし」「イミズ?あのさ…」「ちょっと待ってね、イモウトに変わりますから」お姉さんとイミズを間違えた事もあった。ああ、あの学生の頃は携帯電話がなかったから、基本自宅電話連絡だったんだな。お姉さん、結局直接お会いした事はないんだけど、なんか勝手に親近感感じてた。お姉さんもご結婚なさったそうだ。

●ボクらは、この5年の間に起こった境遇の変化を話し合った。仕事人としての彼女はネットビジネスの最前線で新しい社会の動きにアプローチしている。へえオモシロいねえ。ネット上の著作権処理はボク自身もかなり手こずらされた。非常に興味深い。ボクだって自分の病気をカミングアウトした。「ボクね、うつ病! ふふん、リアクションとりづらいでしょ」
●さらにイミズは、ボクがプッツリと交友を絶ってしまったサークルの仲間/先輩たちと今だに連絡を取り合ってる。懐かしい名前がイッパイ出た。なんかスゴくうれしかった。ボクが自律神経失調症を患って気付いた事は、社会人になって十数年、そして特にこの3年間ばかりは、本当に全てを仕事最優先に考え、家族や友達との交友も、そして自分自身の健康すらもないがしろにしてしまっていた事だ。キャリアが高まれば高まるほど、非人間的な生活に埋没していった。ボクは、そんな自分がなし得た仕事を否定しないし、共に困難な仕事にトライした後輩先輩仲間たち誇りに思う。しかし「後悔はしないが反省はする」。今後は昔の仲間や家族、親戚、コドモとの時間をもっと大切にすることにする。
イミズのマンションからは、隅田川の花火大会が素晴らしくキレイに見えるらしい。今年の夏は、是非そのマンションのベランダから、ウチのコドモたちに花火を見させてやって欲しい。よろしくお願いします。


自律神経失調症とのお付合い(その39)~「ホワイトカラー・エクゼンプション」編
●ここ数日に何人もの方から、励ましのコメント、メールを頂きました。この場でお礼の気持ちを伝えたいと思います。本当にありがとうございます。
自律神経失調症。この病気に悩む人がその辛さや戸惑いをブログに綴っている文章は、ネットの中でたくさん見つかります。病状そのものだけでなく、周囲の無理解や誤解なども含めて、その苦しみは複雑でややこしく、読んでいるだけでコッチまで気分が悪くなることがあるくらいです。
●一般的に、どのブロガーの方も、自律神経失調症になってしまった原因について深く深く考え、その理由を突き止めたり、または探している途中であったりしています。しかし、ボクは自分がなぜこの病気になったのかということについては、ブログに細かく記載していません。
●ボクは、ボクがこの病気になった原因に無関心である訳でもなく、状況を把握していない訳でもありません。敢えて触れる事を避けていました。理由があるのですが、それはおいおい説明します。


ちょっと、旧友イミズの話に戻ります。
イミズと前回会った5年前。それはサークルの先輩のお葬式だったのだ。亡くなった2年上の先輩オタローさん(仮名)は大手広告代理店のマーケティングセクションで働いていた。ボクの就職活動の時は、一番最初のOB訪問に付き合ってくれた人だ。
●理系専攻でありながらマスコミ志望で職を探したオタローさんは、物腰は優しいがコツコツ努力を積み上げる頑固モノでもあった。バブル崩壊が明白になった時期で、就職に大変な苦労をしたはずだが、見事希望の職種に就き生き生きと仕事してた。OB訪問とは言いながら、ボクはバブル崩壊も就職活動もワケ分からないバカで、先輩オタローさんにはスンゲえ無礼な質問をしたもんだ。「スーツってどうやって買うんすか?」「広告代理店って何で『代理店』っていうんすか?」「すんません、なんでOB訪問ってするんすか?」OB訪問でOB訪問する意味を聞くなんぞ、今のボクだったらその学生の顔に水引っ掛けてやるだろう。でも優しいオタロー先輩は、懇切丁寧に色々教えてくれた。
そんなオタローさんが、死んだ。急性心不全。一人暮らしの自宅マンションで倒れていたのを発見されたのは死後3日後の事だったという。たしか32歳。今のボクより若い。死の直前はかなりの激務をこなしていたようだ。オタローさんの会社関係者が斎場に大勢集まっていた。「過労死じゃないか?」誰かが言っていた。コトの真相は知る由もない。


「ホワイトカラー・エクゼンプション」という言葉。
●最近2冊の本を読んだ。

水島宏明「ネットカフェ難民と貧困ニッポン」

水島宏明「ネットカフェ難民と貧困ニッポン」

雨宮処凛「生きさせろ!難民化する若者たち」

雨宮処凛「生きさせろ!難民化する若者たち」
●今年の流行語大賞に選ばれた「ネットカフェ難民」という言葉は、日本テレビの優れたドキュメンタリスト、水島宏明さんが自分の番組の中で使った造語だ。この言葉に代表される現代日本格差社会の現実と、ワリを食った若者たち(ニート、フリーター、ワーキングプア)の姿がこの2冊に克明に描かれている。
派遣社員/契約社員など、非正規採用中心の雇用体制が確立した今の労働市場。正社員として職を得る事が本当に困難になっている。保険制度や諸手当から切り離された不安定な暮らし。そしてアパートから追い出され、ネットカフェに流れ着く。
●だが一方で、正社員が果たして幸せかと言うと決してそうとも言い切れない。「ホワイトカラー・エクゼンプション」。一定額以上の収入がある労働者には、労働時間に縛られる事なく、自分の裁量で働いてもらうという仕組みだ。報酬は成果に応じて。短く働こうが長く働こうが結果を出した人が稼ぐ。分かり易い日本語では「裁量労働制」。出勤も退勤も自由。フリーでいいじゃん、ともとれる。でもウラを返せば、どんなにたくさん働いても残業代はでませんよ、という仕組みだ。
●最近のニュースでは「偽装管理職」という言葉が出てきた。日本マクドナルドの店長さんが「店長は管理職だから残業代は出さない」という会社の方針に異議を申し立て裁判に勝訴した。この人は、店長に昇進したとたんに残業代を失い年収が300万もダウンした。責任は重くなりギャラは安くなる。24時間営業だし、勤務時間も猛烈に長くなる。店長と言えど実質上勤務時間に裁量の余地はない。だから「偽装管理職」。企業はこうして人件費を削り取り、人の健康を損なう。病気になる人、心を病む人、死んでしまう人、自殺する人。ボクはオタロー先輩のように死にたくはない。


ボクが病気になった一番の原因は、勤務時間の長さだ。
●ボク自身の労働形態が「裁量労働制」である。そして成果を達成するためにベラボウに働いた。その一方で、ボクの職場は120名ほどのスタッフの内、正社員の比率はたったの約20%弱、残り80%近くが派遣/契約社員の若者たちという状況。つまり、ボクのいた場所は、現代日本の雇用事情をモロに反映してる最前線だったわけだ。本で得た知識が自分の実感と完全に符合したこの瞬間、自分の病気が個人的な問題ではなく、一般的な社会構造のユガミの一端である事に気付いた。
●ボクは、自分の会社を批判するつもりはないし、この病気を健康被害だ労災だと叫んで労組や労基署に飛び込むつもりはない。今の所、組織としての会社や、直接の上司、会社診療所の個人的なサポートに不満はない。前述のマクドナルドの店長さんと比べたら恐れ多いほど恵まれている。だから今後もこの会社で長く働きたいと素朴に思っている。
●しかし、勤務の仕方が自律神経失調症の原因なのは明白なのだ。ボクの仕事の仕方はホントにエゲツナイものだった。マジでイカレテた。色々な医者が何度も言った。「これじゃオカシくなるのは当たり前です」ただしコレを不用意に書き散らせば、へんなトコロでカドが立ってしまうかもしれない。ボクはやっぱり自分の仕事が大好きだ。元の職場に穏便に帰りたい。だから今まで触れなかった。

●でも、ちょっとだけ考え方を変えた。ボクの問題が何らかの社会性を帯びるとするならば、それはブログに書き綴る意味があるのかもしれない。だから、丁寧に気をつけてちょっとだけ書いてみよう。ある1つのケースとして。ボクはブログで自分の職業を明かしていないし、それは秘密のままにします。そしてこのお話はとても長くなるので、次回に持ち越します。

●以前の「自律神経失調症とのお付合い」シリーズは下記の記事にまとめております。ご参考に。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-223.html

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