下北沢演劇祭

●いつものようにシモキタザワの街は賑わってます。でもそこかしこにたくさんのポスターが。「下北沢演劇祭」。毎年恒例のフェスティバルのようです。ボクも演劇祭参加作品を早速観に行きました。

新しい橋

城山羊の会「新しい橋 ~ LE PONT NEUF ~」
●基本的に演劇素人であるボクは、普段から事前情報ゼロ(チラシのみ)で観る芝居を選んでるんだけど、コレだけは事前情報アリで観に行きました。演出・山内ケンジ。この人、有名CMディレクター、山内健司の変名なのです。
●この山内さん、記憶に残る傑作CMを数々残してます。ボクが印象深いのは「クォーク」のCM。少年クォークが誕生して小学生になるまでの連作シリーズ。クォークが何の会社だかさっぱり記憶に残ってないが、少年クォークのび太のメガネのようにクォーク社名ロゴを顔にくっつけてたのは印象的だ。
●あとは「トーソーシン」。女子高生の娘がギャル風のシリアガリ平板アクセントでダラダラしゃべる。それに父親がぶち切れる。「アクセントはアタマに付けるんだ!」そんで「トーソーシン」。外人ナレーションがアタマにアクセントつけて社名を告げる。トーソーシンが何の会社だったのかはやはり不明だが、インパクトはあった。
●一番の傑作はポータルサイト「goo」の1分間CM。4~5人の映像クリエイターが「検索」というお題で一分間の映像を作る競作キャンペーンで、テレビではほんの数回だけ、後はネットで見るという仕組みだった。他の人の作品も含め全部最高にオモシロかったが、彼のものは群を抜いてドラマチックだった。10年の昏睡状態からふと目覚めたオトコ。10年の歳月で世の中は様変わり。オトコは混乱「わからない、わからない、インターネットって?ブタ丼てナニ!?」看病を続けてきたイモウト「兄さん落ち着いて!」そして静かに一行のコピー。「生きることは知ること」最後に社名ロゴ。「goo」
●愉快なユーモアをベースにしながらも、映画のワンシーン、または短いドラマを感じさせる彼の作風。本来ならピカピカに照明を明るくするCMで、わざとやや暗め設定で撮ったのも彼が先駆だと思う。そんな彼がどんな舞台を作るのか。ワクワクするじゃん。

●お芝居の中身。思った事を直球でブチまける快活なイモウトと、それとは真逆な慇懃無礼な超遠回しザマス系しゃべりの姉。それぞれの夫は会社で部下/上司の関係。上司はクールを気取ってるけど、下に責任をなすり付けるイヤなヤツ。職場の若いコと不倫中。部下はバカで単純、上司に理不尽を強いられた先輩を慰めてる。「しょうがなイッスよ先輩!」
●そんな微妙な均衡でギリギリ成り立ってた人間関係が、キリキリと音をきしみ立てて傾き始める。セレブ妻であるはずのザマス系姉が熟女デリヘルのバイトをしていたことが発覚するのだ。それぞれの人物が抱える闇と病みがヌルヌル明らかになってく。オフトーンなクスクス笑いをちりばめながら、コトはドンドン険悪になってく。
●役者の演技はグッと抑え気味で、耳をそばだてないと聴こえない。でも細かく積み上げられたセリフは緻密で研ぎすまされてる。美術も最低限で椅子数脚の向きを変えるだけ。照明は暗く極力シンプルにされてる。

●CM仕事をしている山内健司の作品は、15秒に圧縮された固い結晶のようなもの。演劇を演出する山内ケンジの作品は、結晶を細かく打ち砕いてサラサラ光る砂にしたようなもの。前者は明快でシンプル。後者はシンプルだが構成要素同士にスキマがある。黒いビロードにサラリと撒かれた結晶の粒は、粒自身が光る事でそのビロードの暗黒をも美しく世界観に取り込む。
「トーソーシン!」というギュウ詰めお笑いテンションを期待すれば、大幅に肩すかしを食らう。でも、15秒にドラマを詰め込んできた手腕が枠の制約から自由になれば、こうした表現に落ち着くのは想像できる範囲。ボクは楽しみました。
●デリヘル発覚のセレブ妻を演じた深浦加奈子さんと、その夫でクールかつイヤミな上司を演じた古舘寛治さんが、もう最高。グッと抑えた自然体のテンションで、人間のオカシミとオロカサを繊細に演じてる。力みもせず、大げさにもならず、深刻ぶりもせず、どこか他人事のようで、でも事態は泥沼。オモロいわ。

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