やっぱりヒップホップだね。その4。
「ベイエリア」って言葉を聞いてナニを連想します? RCサクセションが名曲「トランジスタラジオ」で歌ってた。「♪ベイエリアから リバプールから このアンテナがチャッチしたナンバー 彼女教科書ひろげてる時 ホットなメッセージ 空に溶けてった~」あのベイエリアは、サンフランシスコから発信されたサイケデリックロックやファンクだったんだろ。SANTANA とか SLY & THE FAMILY STONE とか。
●しかし時代はすでに21世紀。今日は新世紀のアメリカ西海岸、サンフランシスコ一帯のベイエリアから発生したヒップホップのスタイル、HYPHY(ハイフィー)について語ります。


DJ SHADOW の変身。
DJ SHADOW といえば、7インチディープファンクの世界では世界的なコレクターとして有名でゴザンス。CUT CHEMIST と2DJ&4ターンテーブルで激レア7インチを惜しげもなくコスリまくったDJプレイ「PRODUCT PLACEMENT」の神がかったパフォーマンスは観てて圧巻。ハッキリ言って何やってるか全然わからんです。

CUT CHEMIST + DJ SHADOW「PRODUCT PLACEMENT」

CUT CHEMIST + DJ SHADOW「PRODUCT PLACEMENT」
DJ SHADOW は西海岸のアンダーグラウンドヒップホップシーンから登場した白人DJ。その超絶構成力からサンプラーのジミ・ヘンドリックスとの異名を持つ男。ヒップホップのフォーマットの中にありながら、抽象的でジャンルを超越する音楽を編み出した。これが最初にイギリスで評価され、JAMES LAVELLE (U.N.K.L.E.)が主宰する MO' WAX からデビュー。英国のトリップホップを牽引し、アブストラクトヒップホップというフィールドを切り開いた。
●その一方で世界屈指のヴァイナルコレクターとしても有名。特に激レアの7インチシングルだけを使ってDJプレイするツアー「BRAIN FREEZE」CUT CHEMIST (ex. JURASSIC 5) と組んで展開。そのライブ音源/映像が大きな評価を浴びた。「PRODUCT PLACEMENT」はその7インチプレイ第二弾の音源/映像で、東京でのプレイの映像も含まれている。シャドウケミストのプレイは完全にジャストで、どこまで事前に打合せをしてるのか、どれだけアドリブの余地があるのか、全く見当がつかない。しかもスピンされる音源は極上の濃厚ファンクでめまいがするほどだ。
DJ SHADOW の貪欲な音源探し、ディグっぷりはホントに偏執狂レベルにまで到達してる。ボクが爆笑したのは、彼が監修したコンピアルバム「SCHOOL HOUSE FUNK」だ。高校吹奏楽部の音源の中からシビレるファンクを発掘してきてる。どこまでチェックしてんだよこのニイちゃんは。スゴ過ぎるよ。

「SCHOOL HOUSE FUNK」「SCHOOL HOUSE FUNK」



そんな DJ SHADOW が「HYPHY」にハマったという。
●コレはマジで衝撃。ネタ師、掘り師、サンプルの魔術師と言われたあのシャドウが、スカスカの打ち込みトラックが主体の「HYPHY」(ハイフィー)サウンドにハマった。それって今までやってきた事と180度の真逆じゃん!極上のネタで音を敷き詰めてた音のコラージュ職人が、チープなシンセサウンドにハマるなんて…。ご乱心!殿のご乱心!

VARIOUS ARTISTS「THE HYPHY MOVEMENT」
VARIOUS ARTISTS「THE HYPHY MOVEMENT」2002-2007年
●日本のレーベルを経由して、日本のリスナー向けに HYPHY シーンの輪郭を説明するコンピまで編んでくれちゃった。マジ本気だよ。丁寧なライナーノーツまで彼自身が綴ってくれている。そもそも HYPHY とは何か?シャドウがなぜ HYPHY にハマったのか?それは彼自身の説明が一番適確だと思う。以下ライナーから部分引用。
シャドウ「2002年、サンフランシスコでスタジオを借りて、毎日45分通勤することになったんだけど、その時にラジオを聴くようになったんだ。ちょうどその頃地元局がローカルアーティストをプレイするようになった。ベイエリアで、HYPHY という新しいストリートカルチャーが生まれたんだ。オレは世界中を回ってるし色々な音楽を聴いてきたが、HYPHY はどの地域とも違うサウンドで興奮した。ヒップホップからそんな感覚を覚えたのは久しぶりだった」シャドウにとって HYPHY は自分が住む街が発信するローカルムーブメントで、その台頭を目の前に目撃し、その生命力に感服したのだろう。

HYPHY というスタイルを敢えて一口で表現してしましょう。基本的に虚飾を完全にぬぐい去った鉄骨剥き出しのビートミュージックで、トラックだけ聴いたら死ぬほど退屈。ゴツゴツしたキックがゴンゴン響き、チープなシンセが申し訳程度に乗っかっており、マヌケにピーヒャララと鳴ってる。南部の CRUNK ~ SNAP BEAT 経由で進化したスタイルだと思う。90年代に初めて南部発のヒップホップ MASTER P 率いる NO LIMIT 軍団の BOUNCE BEAT を聴いた時のショックと似ている。ダサい。チャチい。でも聴き込むとソコに不思議な中毒性が出て来る。キャラ立ちしまくるナイスなMCがこの難易度の高いトラックを完全に掌握して、血肉を宿らせる。そしてカッコいいと思えてきてしまうのだ。
シャドウは語る。「ベイエリアの音楽にはユーモアのセンスがある。ハードコアなんだけど、あえてソレに触れる必要を感じない。楽しむ事がベイエリアでは大事な事なんだよ。エネルギッシュな音楽で我を忘れて解放することが、HYPHY の精神なんだ…。…レイヴカルチャーがベイエリアで廃れて、エクスタシーがヒップホップクラブでも使用されるようになった。ここの気候はわりと寒くて、若い連中はエクスタシーをやってるから、早くてダンサブルな音楽が流行ったんだ。CRUNK の音も好きだったけど、遅いビートが合わなかったから、BPMが速い曲が生まれた」60年代のベイエリアもマリファナとアシッドで浮かれてたけど、今のベイエリアはエクスタシーでハイになってんのね。そう思うと、90年代初頭のアシッドハウスのチープさ加減もリンクしてきて、よりこのハイっぷりがイメージできる。
●このコンピでは、HYPHY に関わる重要人物が網羅されてる。HYPHY の先駆にして凶弾に倒れた故人 MAC DRE から、現行シーンのリーダー E-40、ユニークなフロウがファンキーな MISTAH F.A.B. TURF TALK、ザラついた声が渋い KEAK DA SNEAK、強靭なチームワークがスゴいラッパー集団 THE FEDERATION、フィリピン系MC NUMP、E-40 の実子でトラックメイカーの DROOP-Eなどなど聴きドコロ満載。


そんで、シャドウ本人の音楽はどう変貌したのか?

DJ SHADOW「THE OUTSIDER」

DJ SHADOW「THE OUTSIDER」2006年
●ここでシャドウHYPHY の重要人脈を取り込んで、ガンガンラップさせてる。KEAK DA SNEAK、TURF TALK、THE FEDERATION、E-40、NUMP。基本は煙たいアブストラクトなインストを多く作ってきた彼が、奔放にラッパーをフィーチャーさせるのは新戦略だ。そしてソレは大成功。同じHYPHY でもシャドウが組むトラックは一癖も二癖もあって、曲者ラッパーの粘り気あるフロウを「納豆は最低20回かき回しましょう」的にネバネバさせててHYPHY のスタイルを高次元に引っぱり上げてる。シンセ主体でもビートの難易度は高く、ラップを乗せる方も苦労するはずだぜ。
●しかし、シャドウHYPHY だけを演ってるワケじゃない。コレでもかっつーほどのクールなサンプリングトラックも4割くらいの比率で楽しめる。イントロ明けからいきなりオトコ汁ソウルでグッとくる。極上のブレイクビーツも満載。昔のシャドウが聴きたい人は安心して下さい。元 A TRIBE CALLED QUESTQ-TIP を誘った曲など、普通にヒップホップとして高性能。
RAGE AGAINST THE MACHINE ZACK DE LA ROCHA と組んで作ったロックトラックもある。ZACK のヴォーカル入りバージョンは大人の事情で収録できなかったとのことでインスト。悔しい!以前配信限定で発表された ZACK とのコラボ曲「MARCH OF DEATH」は鳥肌モノのカッコよさだった。LITTLE BROTHER(トラックメイカーが 9TH WONDER のグループ)のMC PHONTE COLEMAN をブルースロックに乗っけた曲、UKロックバンド KASABIAN のメンバーと組んだ曲、女性ボーカルをフォーキーに使った曲など、ロックリスナーも十分楽しめる内容。ジャンルを大胆に横断するオトコ、間違いないっす。


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