電車の中で、他人が読んでる本を覗き込むのが好き。
●この前、席に座ってたら向かいに立った40代後半とおぼしきメガネのオッサンが、「ニューミュージックマガジン」(現「ミュージックマガジン」)を読んでた。おおおー、「ミュージックマガジン」に「ニュー」が付いてたのってスゴい昔の話だよ?と思ったら、1974年の号。34年前。渋いの読んでるねえ。オッサン、GRAHAM CENTRAL STATION の記事を熟読してたよ。ネクタイ締めても、いつもココロにファンクネス。



自律神経失調症とのお付合い(その63)~「デイケア/ツエさん(仮名)の生き様」編
●本日月曜日のレギュラーメニューは「係の活動」というモノだ。新参者のボクは何の係にも関わってないし、どんな係があるかも知らない。よって午前中は、ソファに寝そべり横山光輝「三国志」を黙々と読んでた。中途半端なコトに5巻&6巻が紛失してて悶絶しそうになったが、顔の区別のつかない武将がセッセと殺し合う様子を淡々と描くだけのこのマンガ、どっから読もうとあんまり関係ないコトを悟った。この序盤に主人公・劉備玄徳が活躍する気配は全然ないし。ぬるーい。

●午後は「茶話会」という催しがある。コレも月イチのイレギュラーメニューだが、「係の活動」の延長として「茶話会係」さんが企画するゲーム大会を差すらしい。A&Bチームに分かれてタテに並び、伝言ゲームをしたり、クイズゲームをした。一ヶ月かけて「茶話会係」さんはみんなをエンターテインするゲームを考えて、問題を用意したりクジ引きを用意したりする。
●段取りを説明する司会っぷりにも必死さが滲み出る。係のリーダーは、ボクのデイケア初日に「ストライクガンダム」のマスターグレードのプラモを嬉々として制作してたガンダムさん(仮名)だ。大型メタボボデイから汗が吹き出ている。
●そんで、「酒がダイスキなスタッフのワーマさんは最近駅前の居酒屋で荒れまくっている」という伝言が回ってきたり(「ちょっと!事実じゃないですよ!」ワーマさん必死に否定)、「さて問題です、富士山の高さは何メートル?」というクイズに応えたりした。最後はビンゴ大会でシメ。賞品はアップルソーダ、イチゴポッキー、こんにゃくゼリー、野菜スナックなどなど。ボクは見事4番目でビンゴして、みかんゼリーを獲得した。メンバーの長老ツエさん(仮名)は「5個もリーチがかかってるのに当たんないとはどうしたコトか!」と憤慨してたが、最終的にはレモンソーダをゲットして美味しそうに飲んでた。


長老ツエさんの壮絶な半生。
●足が悪いのか杖をついて歩くオジさん、ツエさん(仮名)。朝のラジオ体操も出来ないほどのカラダの不自由さにも関わらす、毎日休まずデイケアに参加し、うまく回らない舌をゆっくり使って陽気に話す人。マージャンが好きでいつも同じメンツと卓を囲んでいる。………そんなツエさんが、とある紙媒体の取材を受けた時のインタビュー記事が壁に掲示してあるのに気付いた。それを読んで少々ショックを受けたので、それを記します。

ツエさんの発病は40歳代前半、まさに働き盛りの頃。会社の労働組合の事務局長を務めていたツエさんは、バブル崩壊の煽りを受け、激しい労使闘争に身も心もすり減らし、徐々に心身を病んでいった。その結果、不眠に始まり、病的な発言、奇行が目立つようになる。すると、妻や親戚、友人に疎まれ会ってもらえなくなったという。そこで一旦東北の実家に戻り数ヶ月療養。しかし妻からは「戻って来なくてイイから姉さんの所へ行って」と連絡が。しかし姉の家でも姉の夫から「あっちへ行け!お前がいると家の中が暗くなる。出て行け!」と罵られる有様。

ツエさんは福祉事務所を経て通院を始める。その当時は、うつ症状の苦しみに家の中を転げ回っていたそうな。自分の思いを訴えようにも、頭が混乱し考えがまとまらず言葉にならない。カラダが緊張で硬直し、意思の伝わらないもどかしさ、苦しさ、悲しさでイッパイだった。
そしてとうとう精神病院に入院。エアコンもない一畳間、フトンだけの部屋。4重の扉に閉ざされ感じたことは「動物的だ」。その頃は「死にたい」と本気で考えていたから閉鎖病棟に移されたという。

●一年弱の入院生活を終えて、今ツエさんはお兄さん名義で借りたアパートで一人暮らしをしている。しかし追い打ちをかけるように今度はヘルニアを悪くしてしまう。一昨年に手術。毎月総合病院に通いながらも、痺れ・痛みは回復せず。今年頭に二度目の手術を決行するもやはり効果なし。経済的問題からもはやこれ以上の踏み込んだ治療は不可能…。今日気付いたが、彼のシャツの下に背中全面を覆うほど大きなコルセットが透けていた。

ツエさんは、杖をつき足を引きずりながら毎日デイケアに通ってくる。唯一の趣味はカラオケ。歌詞をメモにとって覚えるまで練習するという。そして記事の中でデイケアにおいて心掛けていることを3つ挙げている。
 1、「新人が来たら必ず声をかけて、新しい友達をつくる」
 2、「約束を守る」
 3、「人を気遣う、思いやりの心を持つ」
 この記事を読む人に伝えたいコト:「皆さん命を大切に」「無理をしない」

●ボクは第一印象でツエさんの年齢は70歳オーバーと信じ込んでいた。しかしバブル崩壊時に40歳代になったばかりということは、まだ60歳に達してないかもしれないということじゃないか。ホンの十数年前と今とではメンタルヘルス問題の社会的認知は雲泥の差で、ツエさんはモロにその偏見に晒され家族や友人からも見捨てられた。バブルイケイケ時代の「24時間戦えますか?」モードから、バブル崩壊の天変地異に突き落とされ、心身に二度と治らない傷を負ったツエさん…。ボクら若い病人は、ツエさんのように世間の誤解と偏見を生き抜き、メンタルヘルスの世界の道を拓いた人のおかげで、周囲の理解と新しい医療を受けることができる。大先輩に大感謝。
●そんなツエさんから今朝ボクは声をかけられた。朝デイケア室に入ったら必ず出席者名簿に名前を書くのがルールなのだが、それに名前を記入するボクに「ほう、キミの名前はイイ名前だな」。デイケア四日目にしてツエさんから声をかけてもらった。徐々にこのデイケアという社会に馴染んでいくボク。


一方、臨床心理士のチーさんとの久しぶりのカウンセリングもあった。
「どうですかデイケアは?」まー、皆さんイイ人たちばかりだし、ユニークな人も多くて楽しいですよ。ただカラオケだけはやっぱダメでした。気分悪くなってスミッコで居眠りしてしまいました。「ほう……あのユルーイ空気でもキツかったですか?」とんでもない!あれはユルいなんてモンじゃないですよ!

●誰も人のウタを聞いてないし、リアクションもしないし、歌ってる人も誰に向けて歌ってるか全然分からない。関心がない人は後ろのソファで昼寝してるし、メンバーさんそれぞれのモチベーションがどっち向いてるか全然理解できないです。ボクはそういう秩序の読めない空気ってのが一番居心地が悪いんです!「なるほど、あのカラオケをユルいと感じずに、その場の秩序が読めないというストレスと感じる訳ですね」冷静に考えると、カラオケの歌い手は自分の順番を少々緊張して待っているからこそ、ノーリアクションで静かにしてるのかも知れません。一方で普段は全く人と会話できない人がみんなの前で堂々とウタが歌える。ソレがとても不思議です。でも半数近くは完全に無視&昼寝。ボクはどういう立場でこの場に関わればイイのか混乱してしまいます。
「unimogrooveさん、いつもイチイチそんなコトを常に考えて行動しているんですか?」………そ、そう言われればそうです。自分でも今気付いたけど。仕事でも既存のチームの中に入る時には、チームの構成とルール、役割分担を把握して自分の役割/立ち位置を探します。でもコレは得意なコトではありません。基本的にストレスです。今日の「茶話会」だって、ゲームのルールが見えないくらいなら、自分でルールを作って自分で仕切った方がストレスがありません。
●基本的にデイケアの内容はメンバーさんスタッフさん共に完璧にルーチン化されてて、当たり前のように物事が自動的に進行していきます。でもボクには全く知識がないし事前説明もないからそのルーチンをその場その場で把握していくので結構な負担になってます。翌日クタクタになるのはそのストレスからだと思います。ただし、ゲームとか掃除とか食事の準備とか、ベクトルがハッキリしてるモノは大まかな予測で動けるじゃないですか。しかしあのカラオケだけは異常でした。タダでさえ苦手なのに、今まで経験してきたカラオケとスタイルが違い過ぎます。その場で具合悪くなるほどに。

「………そんなコトを普段から細かく観察なさって考えているんですね…。ただこのデイケアでは、もっと違うアプローチに挑戦してみて下さい。空気を敢えて読まない。秩序なんて考えない。それでまた違った感じ方が出来るかもしれませんから」………なるほど、こうやってボクの思考様式を一度分解していくのが治療の一環なんだな。でも自分でも気付かないほど深く染み付いた思考様式のクセは、こういうカウンセリングがないと、存在すら認知できないよ。臨床心理士はさすがプロ、まずは一つボクのクセを引き出して客観化した。今後もそんなコミュニケーションが続くのだろう。
●ボク「でもカラオケの練習に今週一発行けば、なんとか気合いで歌えますよ」……チーさん「あのー、そういうのをヤメましょう、ってハナシのツモリなんですけど…」あ…全然わかってないボクですいません。


●以前の「自律神経失調症とのお付合い」シリーズは下記の記事にまとめております。ご参考に。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-223.html



ボクは目下ブラジル音楽大陸を探索中。この前ボサノヴァDVD見たからね。

フリー・ソウル~フライト・トゥ・ブラジルフリー・ソウル~フライト・トゥ・ブラジル
(2003/08/29)
オムニバスオス・ジヴァネイオス

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●VARIOUS ARTISTS「FREE SOUL FLIGHT TO BRAZIL」
●おーい、また橋本徹かよ。日本のブラジルものは彼に支配されているのだろうか?陰謀?このCDは、行きつけのカフェのお姉さんから貸してもらった物件(ちょうどボクが「FREE SOUL」嫌いを克服した頃)で、iPod に入れてチョビチョビ聴いてたもんだ。
●というどうでもイイ邪推はおいといて、楽しくこのCDを聴くのであります。でもでもこのCDにコンパイルされているのは、古典ボサノヴァだけじゃなくて、サンバや70~80年代のMPBMUSICA POPULAR BRASILEIRA。ブラジルポピュラー音楽。ボサノヴァ以降の音楽をブラジルではそう総称する)までを網羅する内容なので、今だにボサノヴァの正体は掴めない…。

●ポイントはDVD「ディズ・イズ・ボサノヴァ」にも出演していた女性シンガー JOYCE か。彼女はボサノヴァ第三世代?とも言うべき存在で、デビューは68年、キャリアのブレイクは70年代末~80年代初頭とかなりの後発組。フォーキーなスタイルをベースに繊細なグルーヴとスキャットが美しい。80年代ともなるとボサノヴァはフージョンやソウルミュージック、シティジャズに接近してバイブリット進化してしまっている。グルーヴィーで楽しいが元の原型がわからない。
●本来はボサノヴァ第二世代 MARCOS VALLI も、世界ブレイク作「SAMBA 68」でアメリカに軸足を動かし欧米のロックやソウルに接近、70年代前半にはボサノヴァとは一時期離別する。その後90年代に入るとクラブシーンからの再評価を受け、更にダンスミュージックへ接近する。優秀なボサノヴァプレイヤーは優れたクリエーター、ジャンルに拘ることなく新しい音楽へどんどんトライしていく。
リオ、サンパウロなど海岸に沿った都会から、内陸に踏み込んだミナス州には独自の音楽文化があるが、60年代末から活動しているこの土地の代表選手 MILTON NASCIMENTO は以前からダイスキなシンガーだ。風に乗ってドコまでも響いていくような透き通った声に、欧米のトップジャズプレイヤーが集って支援する。でも彼の音楽はソウルミュージックで、全然ボサノヴァじゃないんだよね。
●アメリカで評価された DJAVAN もブラジルの真髄を異邦の地で失わなかった魂のシンガーでダイスキだけど、ボサノヴァとは関係ない音楽をやる。MILTON NASCIMENTO DJAVANアフロブラジルを体現してるんだよね。収録曲も81年モノだ。
TANIA MARIA はブラジルよりも海外のジャズシーンで活躍した女傑らしい。サンバとファンクのリズムを結合した力強いバンドに彼女の声が絡む。71年のデビュー作から収録曲がピックアップされてるが、彼女を認めたのはブラジルではなくヨーロッパ・パリ。
OS TRES MORAIS は男女コーラスにホーンアレンジが鮮やかなジャズボッサ。CONJUNTO 3D というバンドはサンバで駆動する男女ツインボーカルのソフトロック。OS DEVANEIOS もサンバ駆動バンドで熱い男性ボーカルがコーラスを構成する。
PAULINHO DE VIOLA はアコギ&ささやき声でコレこそ「ディズ・イズ・ボサノヴァ」かと思いきや、後から入ってくるドラムリズムは典型的サンバ。60年代のサンバ革新者というのが彼の位置づけらしい。TONIHHO HORTA も繊細なギタープレイとホッコリする声で癒し系男性シンガーだが、その音楽は見事なサンバ。ドン、ドンと腹を打つバスドラに、ウホッホホホホなリズム感覚がいつの間にか部屋の中を熱帯雨林にする。
LENY ANDRADEボサノヴァ以前の世代に属する50年代の女性シンガーで、ボサノヴァ第一世代の憧れ的存在だったよう。ここではファンクベースにうねるジャズファンクでスゴくソウルフルな喉を披露してる。

ブラジル大陸おそるべし。純然たるボサノヴァが出てこない。
ブラジル音楽という大きなカテゴリーの中には、凄まじい量のレイヤーが折重なっていて、ショーロサンバなどボサノヴァ以前の音楽、ジャズやフュージョン、ファンクといった外来音楽の影響、黒人移民の血の中に流れるグルーヴや隔世遺伝したアフリカンテイストなどがいわゆる「ブラジル音楽」を構成している。ボサノヴァ運動は、ブラジル史の中で大きなハイライトだったかも知れないが、結局は多くのレイヤーの中に埋没している。ボサノヴァにコダワルと、ブラジル音楽の真の多様性を見過ごしてしまう。つーか、ボサノヴァ不在でもブラジル音楽はスゴい。



●ちなみに、このCDを貸してくれたカフェのお姉さんは、イタリアのスクーター・ランブレッタで通勤するほどのモッズ魂の持ち主で、彼氏さんもモッズバンドやるような人らしい。だから、お礼にCDを何か貸してあげようにも、中途半端なモッズものじゃ多分ダメだ。悩んだあげく選んだのがこのCD。


青春舞曲~モダーン・モンスーン・グルーヴィン!!~青春舞曲~モダーン・モンスーン・グルーヴィン!!~
(2007/09/19)
旺福

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旺福(WON FU)「青春舞曲」2007年
●これね、なんと台湾のモッズバンド。台湾にもモッズはいるのよ!ツィギーカエラちゃんみたいにカワイいオンナノコが60年代風なキッチュでポップなコスチュームで、モロ渋谷系(フリッパーズ~ブリッジ~コレクターズ)な甘いメロディを歌うわけよ(ゴメン、厳密には男女ツインボーカル)。そんでその中国語がスゴくカワイい。オンナノコの中国語はカワイい!オンナノコの韓国語もカワイいけどね。日本語バージョンも数曲あって見事なジャパニーズを披露してます。
●でも、さすが気合い入ったモッズのお姉さん、CDを一目見て「あ、ワンフーだ」え、知ってんの?「ええ、ライブを何回か観たことあります」ふああ、苦労して選んだのに歯が立たなかった…。「でもでも音源は持ってないからウレシいです」フォローありがとうございます…でも、そんなにしょっちゅう日本来てるの?このバンド。「わりと…コレクターズのライブとかで」すげえ。負けました。

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