●昨日に引き続いて、「バック・トゥ・ベーシック」路線により、PAVEMENT 関係の音源をモソモソ探ってる。

●日本で行われたライブのブート盤とかもCD棚のスミッコから発掘されたりもして、なかなか懐かしかったが、一番の感動は、一番最初に聴いたこのバンドの E.P.だ。

Watery, Domestic [12 inch Analog]Watery, Domestic [12 inch Analog]
(1994/08/19)
Pavement

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PAVEMENT「WATERY, DOMESTIC」1992年。
●この4曲入りシングルの12インチを聴かせてくれたのは、大学時代に出入りしていた放研もどきサークルの女の先輩ノリピーさん(仮名)だ。学年が2つ上だったこのノリピー先輩に、20歳前のボクはホントにイロイロな音源を聴かせてもらって、ものすごく勉強させてもらった。EVERYTHING BUT THE GIRL、THE MONOCHROME SET、ST. ETIENNE、BLUR の1ST、ジャーマンプログレの CAN(コレはノリピーさんの彼氏に聴かせてもらったんだっけ)などなど。このことにボクはメチャメチャ感謝している。
●以前に、この放研もどきに入った動機はココに使いこなされてないオーディオ&ビデオ機材がたくさんあるから、と書いたが、オシャレでスレンダーなノリピー先輩に憧れてというのも隠れた本音だった(コレわりとアリガチな展開でしょ!)。しかし当時生意気だったボクは、結局その感謝の気持ちをきちんとノリピーさんに伝える事のないまま、今や音信不通だ。年を経る事に、ノリピー先輩へ当時のお礼を伝えたい気持ちが強くなる。あの頃の出来事が水面に波紋を描くように、今の人生にどんどん大きく影響している事がハッキリ感じられるようになったからだ。

PAVEMENT のファースト「SLANTED AND ENCHANTED」1992年と昨日紹介した「CROOKED RAIN, CROOKED RAIN」1993年の間にリリースされたこのシングル。まずジャケがヒドくて笑った。だってコレ他所様のレコードのジャケットにメチャクチャなイタズラ書きをして自分のモノかのように使ってるんだもん。ウラジャケもヒドいよ。モトから書いてある文字をマジックで塗りつぶして、曲名を自分たちのモノに書き換えてる。このセンスだけでもう最高に気に入った。

WATERY,DOMESTIC

(細かくて見えないでしょうけど、表ジャケのニワトリ「ジムくん」に関するクレジットだけは原文を残してる。このバカ丁寧さもさらに笑える。)


●聴けば、イキナリ耳をつんざく目一杯のノイズ。ただ嫌がらせのタメだけに鳴ったそのノイズが終れば、地引き網を引っ張りながら演奏してるかのようなカッタるいダレダレの演奏が始まる。辛気くさくモゴモゴと呟くようなボーカルと、ゴリゴリしたギター、無愛想なベース。3曲目の「LIONS (LINDEN)」は今でもボクにはクールに響く重要な曲だ。ベースがモギもぎモギもぎと呻き、聴く者のリズム感を確実に脱臼させる。ここから始まって1999年の事実上の解散までボクはこのバンドに丁寧に付き合うことになった。ライブも行ったし、新譜が出れば速攻で買った。ファーストだけでクビになったヤク中のヒッピーオジさんドラマー GARY YOUNG のソロまで買った。コレは100%ムダな買物だったが。(↓これまたバカなジャケでしょ)

HospitalHospital
(1994/10/25)
Gary Young

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ロウファイシーンのど真ん中から出現した PAVEMENT だが、キャリアを重ねるごとに演奏も音質も洗練されていったのは事実だ。ジャケを見るだけでなんとなく分かる。1枚目の「SLANTED AND ENCHANTED」1992年とラスト作「TERROR TWILIGHT」1999年じゃ全然気分が違うでしょ。見てよ一枚目のこのヤケクソ加減。もう中身も耳障りザリザリの名盤だよ!

Slanted & EnchantedSlanted & Enchanted
(1992/04/17)
Pavement

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Terror TwilightTerror Twilight
(1999/06/08)
Pavement

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●ジャケが落ち着いていくとともに、バンドの持ち味は、単純に録音技術の粗末さとか技術の拙さといった表面的な問題から離れていった。人の期待を愉快に裏切る脱臼メロディ展開、ロックのダイナミックさを周到に避けてロックスターにアリガチなカッコ付けを拒絶する不完全燃焼型おフザケ心、そして時に意外なまでにセンチメンタルな哀愁を無骨なサウンドで奏でるなど、バンドは成熟した。ボクは成熟した PAVEMENT も大好きだ。20世紀も終ろうという時、ホントにヘタクソなロウファイサウンドは完全に淘汰されてた。90年代に、粗末な宅録が世界に流通するインディネットワークが進化したのはサブカルチャーには歓迎すべきことだったが、やっぱり長く生き残るモノは基礎がしっかりしてるのだ。


そこでだ、イキナリ解散だ。
●少なくともボクにとっては。でも本人たちにとってはそうでもなかったみたい。1999年のパフォーマンスはメチャメチャトゲトゲしくて、特にメロディメイカーの STEPHEN MALKMUS と他のメンバーの摩擦がヒドかったらしい。このバンドはサウンドだけが変なのではなくて、メンバーが全米のバラバラの地域に散らばって暮らしているとか、事務所やマネージャーがなくて全部事務はドラムの STEVE WEST がやってたとか、バンドの仕組み自体もヘンテコリンなのだ。メンバーそれぞれも各個のプロジェクトを始めたりとか(ベースの MARK IBOLT は、KIM GORDON (SONIC YOUTH) YOSHIMI (BOREDOMS) らのユニット FREE KITTEN に参加してる)、なにかと落ち着かない。STEPHEN MALKMUS はイラツいていたのだ。
●1999年にバンドは機能不全に陥り、2000年には雑誌のインタビューで STEPHEN MALKMUS は言い放つ。「PAVEMENT はとっくのとうに終ってんだ!なんで STEVE (WEST のこと。なんてったってドラマー兼マネージャーだからね) がソレを言わないのか不思議なくらいだ!」


で、STEPHEN MALKMUS のソロデビューだ。


Stephen MalkmusStephen Malkmus
(2001/02/13)
Stephen Malkmus

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STEPHEN MALKMUS「STEPHEN MALKMUS」2001年
●見て下さい。コイツが、PAVEMENT の首謀者だ。人を喰ったかのようなおフザケ感覚とシニカルなセンス、どこか手抜きでやる気レスで煮え切らない PAVEMENT の体質をデザインしたヤツの顔だ。PAVEMENT の他のメンバーは、ハゲのバカ面とかメガネオタクとかとっつあん坊やみたいな顔してるが、司令塔のコイツは中途半端にイケメンでイケスカない顔だ。こんなスカシたヤツが、ダメ人間連中を仕切って皮肉っぽいバンドの持ち味をモクモクと吐き出していたワケだ。
●ボクは大好きなバンドを滅ぼしたコイツが一気に嫌いになって、発売当時速攻で買ったこのファーストソロも1回しか聴かずCD棚の肥やしにしてしまった。内容は末期 PAVEMENT の延長再生産にすぎなくて、わざわざバンドを潰すほどのモンじゃねえじゃんと、とても憤ったもんだ。そんで今日、数年ぶりにもう一度聴いて、やっぱし印象が変わらず「コイツはイケてねえ」と感じた。


リアル・エモーショナル・トラッシュリアル・エモーショナル・トラッシュ
(2008/04/18)
スティーヴン・マルクマス&ザ・ジックス

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STEPHEN MALKMUS & THE JICKS「REAL EMOTIONAL TRASH」2008年
●そんで、ヤツは今年もソロを出した。実は21世紀に入ってヤツのソロはもう4枚目だ。2、3枚目は全部スルーしてきた。 でも今回は何となく買っちゃった。なんでだろ?タイトルの「REAL EMOTIONAL TRASH」に引っかかったのかなあ。ゴミ貯めの中から這い出てきたようなサウンドでシーンに登場し、そんで20年経とうというのにまだ「ゴミ(TRASH)」のウタを歌ってる。
●ボクが90年代ロウファイに果てしないシンパシーを感じているのは、自分が「ダメ人間」であるというコンプレックスを共有できるような気がしたからだ。で、ボクの「ダメ人間」度は年を経てさらに磨きがかかり、もはや病気になって社会から転落する寸前だ。……で、イケスカない皮肉屋の STEPHEN MALKMUS も未だにゴミの中で這いずりまわってる…。時代は2008年だぜ、気付けばロウファイオルタナティブロックも死語同然で、周りの若造はエレクトロ混じりのダンスロックエモゴスに夢中だよ!そんな今、オマエがどんな音出してるのか聴いてやる!そんな気分だった。

したら、良かった。
いい意味で変わってない。強いて言えばヘヴィになった。ヤツ独特のユニークなメロディで勝負。そして、ゴツゴツしたイビツにねじれたギターも健在だ。一曲目なんて、前述の「LIONS (LINDEN)」を連想したわ。BLACK SABBATH ばりの捩じれたヘヴィギターリフが下っ腹にゴーーンと響く。表題曲「REAL EMOTIONAL TRASH」は、ヌルヌルと始まるブルージーなメソメソ哀愁ロックかと思ってたら、そのままジャムジャムの混沌としたインプロヴィゼーション状態に突入し、そんでそのまま加速して疾走ロックにシフトチェンジ、アウトロはメランコリックに着地。息つかせぬ展開で10分越え。もうちょっと乾燥冷却したら SONIC YOUTHになっちゃうよ。
スキマの多い歌詞に長めの間奏。クレジットに「& THE JICKS」というバンド名が出てきたのは、音自体にバンド感がドカッと前に出てきたからか?ファーストソロから「THE JICKS(THE DIRTY JICKS)」は内ジャケにクレジットされてたけど、今回は全面に出てる。しかもドラムとベースが女性なのね(内ジャケに意図不明のコスプレで登場)。女声コーラスが入るととてもイイ感じ。PAVEMENT にはありえない味だしね。……なんか大昔の友達と仲直りができたような気持ちになれた。


大きくハナシは前に戻って、ノリピー先輩のハナシ。
彼女はある大手レコード会社が組織していたインターカレッジのサークルに所属していた。アメリカのカレッジラジオを日本に移植することを目指した団体だ。入会するには幹部との面接試験が必要とのコトだったが、ボクはノリピーさんの勧めでボクはこの団体に入会し、素晴らしくエグイ活動で身をすり減らし、素晴らしくエグイ仲間たちにモミクチャにされる事になるのだった。そこでのオハナシは、またまたイロイロありすぎるので今は説明しませんが(今後も永久に説明しないかも)、ボクの人生の大きな転機となったその団体での経験に、最初の道筋を作ってくれた、ただそれだけのためだけでも、ボクはノリピー先輩に深く深く感謝したいと思っているのでした。ノリピーさん、マジで、ありがとうございました!

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