あららら~。天下のTK、小室哲哉が逮捕されちゃったよ。

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●90年代にあれだけ栄華を極めたサウンドメーカーが、金策にあえいで詐欺とは…。祇園精舎の鐘の音、諸業無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も終には滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。平家物語の冒頭のフレーズがアタマをよぎります………。

●確かに「コムロ楽曲全部の権利」って言われたら、そりゃ10億くらいの価値はあると思うよね。でもダマされた投資家さんは、音楽業界のコトは全然勉強してなかったんだろう、音楽著作権のシステムをちょっとでも知ってたら「そんなウマいハナシはありえねえ」ってスグに気付いたろうに。

音楽著作権ビジネスってスゴくヤヤコしい…。ボクも一時期勉強しました。
●音楽は、作家の著作権印税だけじゃなくて、「原盤制作者」印税とかもあって、天下のコムロでも全部の作品の権利をジブンで制御出来ない。曲を書いたのはコムロさんでも、曲を制作するにあたってお金を出資した人たち(そんな人たちの集まり「音楽出版社」という業種があるのよ)が結構な取り分を握ってる(しかも作家よりも多い)。更に、この音楽出版社という人たちは、この著作権&著作隣接権などなど音楽の転用から得られる権利ビジネスの専門家で、カラオケやレンタル、着うた、放送使用などの音楽二次使用からおカネを引っ張るプロでもある。作家本人や事務所がコレをヤリ切るのはとても大変なので、ベタベタのインディでもない限り、だいたいが彼らプロに委託するのがフツウなんです。
●オマケに予備知識を付け加えると、テレビでの音楽二次使用ってのがハンパない高額になるので、日本の在京キー局はグルーブ企業にこの「音楽出版社」を備えていて、放送での二次使用で出て行くおカネをグループ企業に還流する仕組みを作ってる。フジテレビは「フジパシフィック音楽出版」、日テレは「日本テレビ音楽」、TBSは「日音」、テレ朝は「テレビ朝日ミュージック」って会社があるんです。
●具体的には、ドラマやアニメなどの番組主題歌の決定&お金の流れを調整する仕事を担ってたり。音楽出版社発の企画CDなんてのもあるし、音楽出版社がアーティストのマネジメントに携わってる場合もある。ケツメイシや沖縄ミクスチャーの HYテレ朝ミュージックの一部門がマネジメントしてたような気がする。いや、この手の業界にもトモダチがいてね、イロイロ教えてもらった。
●もちろん、CDそのものを作り売るレコード会社「原盤制作者」に手を挙げるし、アーティスト事務所自身が加わることもある。音楽の権利は、作家だけでなく、事務所、音楽出版社、レコード会社がケーキを切り分けるように分割しているわけですね。だから相手がコムロさんとはいえ「全部権利譲渡しちゃう」っていうのは超ウサン臭い話だってワケ。

●さらに、昨今の多メディア化の中で、音楽流通がメチャ多様化したので、お金の配分ルールもスゴく複雑になってる。JASRAC のトモダチと話したら、次から次へと新規IT系ビジネスのプランを持ってべンチャーな人たちがコンサルを求めてやって来るという。「こんな場合、音楽使用料ってどうなります?」ってね。
●あ、ちなみによく名前がでてくる JASRAC ってのは「日本音楽著作権協会」といって、音楽出版社からさらに著作権を委託されて、実際の課金徴収を担う組織。テレビ局や着うた配信業者だけじゃなく、スナック一軒一軒回ってカラオケの使用料を徴収したりと、凄まじく草の根なトコロからもおカネを集める。コンサートでアーティスト本人が演奏しても、イベンターは音楽使用料を JASRAC に払うのです。非常にややこしくて大変な仕事。ボクが学生の時、学祭コンサート企画したら JASRAC から請求書が来てビビった。当時は全然意味が分かんなかったので無視し続けたらブッチぎる事が出来たけど。
●このヘンのハナシは、「社団法人音楽制作者連盟」というトコロが出してる「音楽主義」ってフリーペーパーが詳しい。インディアーティスト、インディレーベル向けの啓発目的で音楽活動するための知恵をわかりやすく解説してくれてる。今月号の特集は「練習スタジオ利用ガイド」だもんね。

音楽主義

●あと、新聞見て思ったんだけど、前の奥さん(シンガーの若いオンナノコをハラませちゃった)の慰謝料が7億円ってのがスゴい。そんで不払いになって印税収入を全部差し押さえられてるってのもスゴい。この勝負、前の奥さんの勝ち。ある意味ハラんで大成功。ちと不謹慎?


音楽権利ビジネスのハナシはこの程度にして……、アーティストとしての「小室哲哉」を考えよう。

83年から活動して、800曲以上も作ってきたって立派。しかも彼はイノベーターでもあった。
●テクノポップユニット、TM NETWORK がブレイクしたのは1987年、「SELF CONTROL」の時だったんじゃないかな。あの曲のサビに出て来る「セルフコントロール!」というコーラスが、思いっきりエフェクトされてたのに「未来」を感じてしまった。今聴くとたいしたコトないんだけどね。でも沢山のキーボードに囲まれて、未知の機材を華麗に操作し、音楽のほとんど全て(ボーカル&ギター以外ゼンブ)を演奏してたコムロは、確かにカッコよかった。
●同じ年に叩き出したシングルヒット「GET WILD」はアニメ「シティハンター」のタイアップも取って大ブレイク。冷静に聴くと、同時代のUKシーン、DURAN DURANニューロマンティクスなバンドが持ってた、薄口だけどちゃんと仕込まれてるファンク感が、正確にトレースされてる。コムロ海外の最先端音楽からヒントを得て邦楽ポップスに着地させる天才的なセンスは、最初から発揮されてたわけだ。
●怒濤の勢いは止まらず、「SELF CONTROL」「GIFT FOR FANKS」に続き、この年は3枚もアルバムを発表する。

TM NETWORK「HUMANSYSTEM」

TM NETWORK「HUMANSYSTEM」1987年
ブックオフでLPが3枚100円で売ってた…。このアルバムには後に鈴木亜美にカバーさせた「BE TOGETHER」とシングル「RESISTANCE」が収録されてる。「RESISTANCE」は思い出深いなあ…。沢口靖子&後藤久美子主演のドラマ「痛快!ロックンロール通り」の主題歌だった…。当時は「~通り」というタイトルのドラマシリーズが流行ってた。特にゴクミはボクと同い年(早生まれで学年は一コ上)、超親近感を持ってた。まさかF1レーサー・アレジと結婚しちゃうなんて予想もしなかったけど。
●ただし、アルバムの基調はスッパンスッパン軽くファンクするダンスナンバーが中心ジャケのデザインがイタリア未来派の彫刻を連想させるように、リリックはサイバーパンクな匂いをふり撒いてる。


TM NETWORK「CAROL ~A DAY IN A GIRLS LIFE 1991~」

TM NETWORK「CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~」1991年
●前作もコンセプチャルな気配の強かった TM の作風、ここではロックオペラを展開しちゃってる。キャロルという女の子が彷徨い込む冒険のオハナシ。まーたいしたモンとは思わなかったけど。なんてったってジャケが萎える。メンバー三人が劇中のキャラに扮してるんだけど、コムロRPGの王子キャラみたいになってるのに、ギター木根耳トンガリの戦隊モノ雑魚キャラのカッコさせられてる。可哀想にこのカッコで木根はライブ時ワイヤーで釣り上げられてギターを弾いたという。当時の感覚でも十分ダサイと思った。
●それでも印象的な曲がある。宗田理原作の映画「ぼくらの七日間戦争」の主題歌「SEVEN DAYS WAR」だ。ハッキリ言って名画。やはりボクと同い年である宮沢りえの初主演映画。1989年の公開当時、彼女は16歳。「サンタフェ」も高花田も激ヤセも知らない無垢な彼女が、白いTシャツと薄いインディゴジーンズで快活に演じるフレッシュさだけで眩しくてたまらない。オンナノコは常に早熟で、ゴクミも宮沢りえもドンドン大人になってしまう。何者でもないバカな中学生だったボクは、クラスメートに置いていかれるような気分になってジリジリした気持ちになったもんだ。そんで映画の主人公たちのように、大人に向かってレジスタンスしたくなったのであった。ちなみに、コムロはこの映画のサントラまで手がけている。
●もう一曲大事な曲が。「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」。1988年公開の「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の主題歌だ。なんかのレンタルビデオを友達8人くらいで観ようとした時、この作品の短い予告編が突然流れて死ぬほど盛り上がりまくった。アムロが、シャアが、ブライトさんが、そして最新鋭モビルスーツνガンダムが登場する!やはりバカ中学生だったボクは「ガンダム復活」に震えた。ボクらの仲間内では「ゼータ」は邪道だった。アムロが主役を握るコレこそが本物だった。
●その後、1994年。TM NETWORK(改めTMN)「終了」YMO「散開」のマネなのか、こういうヘンテコリンな言い回しで活動をヤメるアーティストがこの後増えた。


プロデューサー「小室哲哉」。
ガンダムのアムロから、オンナノコのアムロへ、だなんてお粗末なダジャレで恐縮ですが、1993年からコムロエイベックス安室奈美恵をプロデュース。ここから彼のサウンドメーカーとしての辣腕が輝き出す。オキナワからやってきたエキゾチックな少女を超高速ユーロビーターに改造。本格派ハイエナジーサウンドで日本歌謡界に革命を起こす。「邦楽」から「J-POP」のパラダイムシフトだ。アンダーグラウンドでは渋谷系がうごめき出し、メジャーシーンではコムロサウンドが、日本のポップミュージックを急速に洋楽化し始めた。
●1992年には、UKの最新シーン、レイブカルチャーを日本に紹介。「TETSUYA RAVE FACTORY」略して「trf」を組織する。アレがホントに現場のレイブと同じモンだったか甚だ疑問だが、後ろでターンテーブルを操作する男がバンドの中核になってる音楽を、日本のお茶の間は初めて目撃する。
●1995年には、ジャングル/ドラムンベースを紹介。ダウンタウン浜田雅功をフィーチャーした H JUNGLE with t を編成、200万枚売る。この段階でドラムンベースをお茶の間化したのはスゴい。本国UKでも200万枚売ったドラムンベースのシングルはないと思う。ちなみに内田有紀「ONLY YOU」もこの時期のコムロ制作ドラムンベースの隠れ名曲。今でも時々愛聴してます。
●1996年、globe が稼働。マークパンサーの無理なラップはかなりイタかった。コムロにはヒップホップは無理みたい。どっちかってと、globe はプログレッシブハウス的なモノなのかもしれない。今の奥さん KEIKO(現 kco)の女性ボーカルはわかりやすいが、アルバムで聴くとかなりヒネくれた曲も多いよ。途中 X JAPAN YOSHIKI が加入したけど彼がどう機能したかはまるでわかりません。
●そんで飛んで2001年。この辺からはトランス実験が始まる。ヴェルファーレとかで活躍してた DJ DRAGON とトランスユニット GABALL を結成。ここからのヒット曲はなかったが、ヨーロッパのダンスシーンを常に意識し続ける姿勢は頑として一徹してる。ボクはこの点においては、彼は実に優秀だったし、日本の音楽シーンに変革をもたらした重要人物だと思う。


フォロワーもイッパイいるぞ。コムロチルドレン。
打ち込み主体のダンスミュージックを軸にしたプロデューサー兼アーティストみたいな人が増えたような気がする。浅倉大介とかは直球のコムロチルドレンじゃないだろうか。エイベックスのハウスプロデューサー軍団たちの音楽や制作態勢もコムロにルーツがあると思う。たとえば、MOVE、DAY AFTER TOMORROW、DO AS INFINITY、EVERY LITTLE THING、MAX、浜崎あゆみなどなど…。
TM REVOLUTION はネーミングも含めて影響下にある気がする。B'Z も初期の「BAD COMMUNICATION」の頃は、打ち込み+ギターという TM NETWORK 型ユニットだった。今はハードロックですけど。
彼が関わったシンガー、アーティストはカズ知れず。でも圧倒的に女性が多いのはなぜだろう。globe、trf、安室奈美恵、華原朋美、hitomi、鈴木亜美、篠原涼子、観月ありさ、宮沢りえ、内田有紀、渡辺美里、沢口靖子……。思いつくのってみんな女の人だね。華原朋美みたいにクラッシュした人もいたねえ。草食動物系の顔してるコムロさん、なんとなく無害なイメージだったけど、結局極悪だったのかも。


新聞記事には「98年からの10年間は曲が浮かばなかった」という言葉が乗ってた。
●週末のラジオでの発言らしいけど、80年代~90年代には「4日に一曲」ペースで制作出来たが、最近は音楽流通のカタチ、産業構造の変革を見定めるのに手間取り、腰を据える事ができなかったと述懐。さすがのトレンドウォッチャーも時代を見失ったのか…。実際彼が元ネタにしてたヨーロッパのダンスシーンはある意味袋小路に入って一度完全にアンダーグラウンドに潜ったし、最近は彼が苦手とするヒップホップ/R&Bカルチャーのエッセンス、またはダンスロックという肉体派の推進力で活性化しようとしてる。もうコムロには手に負えない事態になってしまった。
日本の音楽業界は、バブル崩壊を他の産業と比べて遅く迎えた。コムロサウンドや、宇多田ヒカル、スピード、サザン、ユーミン、ドリカムなどなど、90年代前半まではメガヒットが連発、この業界は活況を呈していたのだ。それが失速したのが1996年頃と言われている。コムロのスランプが始まった98年というのは、コレとリンクしているんじゃないかな?
●大衆歌謡が消滅して久しいと言われてるけど、メガヒットの時代までは結局みんなが同じCDを買っていた訳だ。そのバブル時期が過ぎて、本当に音楽シーンはタコツボのように分化し、小型セールス/コアファン維持が定石となった。ジャニーズはジャニーズファンをつかまえ、ヒップホップはヒップホップファンを、パンクはパンクファンを、レゲエはレゲエファンを、アイドルはアキバ系をつかまえた。コムロにコムロファンはいなかった。広く薄い顧客は霧散してしまった。なのに彼はマニアックなトランスシーンに埋没していく。これがコムロ「失われた10年」だったのでしょう。


●でも結局の所、詐欺はダメだよ。ボクはアンタの音楽のホンのチョッピリだけしか好きになれないけど、アンタの成した仕事の量にはリスペクトを捧げる。でもカネにキタナいのはフェアじゃない。まがりなりにもアーティストなんだから、最後まで夢を見させてもらいたかった。じゃあね。さようなら。

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