雑誌で竹中直人のインタビューを読んでて感心した。
●新作映画「まぼろしの邪馬台国」の撮影でのコト。監督の堤幸彦さんは、現場に2台大きなモニターを持ち込んでて、撮影したシーンをその場で簡易編集してしまうそうで、竹中さんはビックリしたらしい。撮影ペースもスゴく早いという。「TRICK」シリーズを始めとする堤監督の細かい編集テンポは、そんな技術を使って、演出と役者がカットの出来上がり感を共有して作ってたのか…。映画や映像の作り方ってドンドン変わっていくんだな。



ボクにとっては、愛着のある国、アイスランドが大変なことになってる。
昨今世界経済を揺るがせている、アメリカ発の金融危機の煽りを食って、ヨーロッパの北の果てにある小さなこの国が、崩壊寸前のピンチに追いつめられているんです。

アイスランド。北大西洋のテッペン、北極圏にスレスレかすめるほどの北の島。北海道と四国を合わせたほどの面積に、約31万人の人が住んでる。この人口って東京・中野区とほぼ一緒だって言えば、スンゲエ人口密度の薄い国だってわかるでしょ。首都はレイキャビク。この首都圏に10万人ほどが住んでて、北極海に面した第二の都市アークレイリは人口1万5000人。一カ所に人が集まり後は小さな集落しかないわけだ。島の中央は氷河に覆われてるが、一方火山活動が活発で温泉も湧き出ている。主だった産業は、北大西洋を舞台とした水産業と牧畜業。水力発電と地熱発電などで全ての電力を賄うエコ国家でも知られている。一応 NATO の加盟国だが、軍隊を全く持ってない。


1999年9月。まだコドモが生まれる前、ボクはワイフと二人でこの国を訪れたのです。冬は雪で真っ白になってしまうせいか、街はとてもカラフルでチャーミング。レイキャビクはこじんまりとしながらも、愛らしく楽しいトコロだった。

アイスランド5
アイスランド6

(まるでレゴブロックで出来てるかのようなカラフルぶり。キュートな街でしょ。)


この慎ましやかで小さな可愛らしい国が、世界金融危機の直撃を食らった。
国内大手銀行3行が今回の危機で抱えた負債は、なんとアイスランド国内総生産の10倍以上!国家予算が約2800億円なのに、銀行の借金は20兆円にもなってしまったのだ。速やかにコレらの銀行は国有化されたが、首相はテレビで「最悪の場合、国家が崩壊する恐れすらある」と発言。今後の経済予測も深刻で、経済規模は最大10%縮小し、1%台だった失業率は8%に、インフレ率は20%に達する。ちなみに、この国は高い間接税(消費税が20%くらい?)で元から物価が激高。旅行で立ち寄ったマクドナルドのバリューセットが1000円以上して戦慄したもんだ。それでも国民1人当たりの国内総生産は日本を上回って世界トップ水準だったはずなのに、一気に奈落の底へ。本来温厚な国民が首都でデモを始めた。

●従来、水産業くらいしか産業のなかったヨーロッパの最貧国アイスランドは、90年代に経済開放政策で「金融立国」を目指した。スイス銀行ゴルゴ13の秘密口座になってるように、ヨーロッパの小国では「金融サービス」で国を支える場合が少なくない。それが00年代に入ってアメリカ型投資銀行モデルに移行、高金利で資金を集め、イギリスの高級ブティックや企業を買収。一方低金利だった日本円でローンを組ませて国民に不動産や高級車を買わせた。
これがアメリカ・サブプライム問題でバブル崩壊。自国通貨クローナの大暴落&超円高モードで日本円ローンは支払いが2倍以上に膨張。国有化された銀行は自国民の預金は保証するとは言ったが、高金利に集まった外国資金は保証外だとしたモンだから、預金者が一杯いるイギリスは激怒して、アイスランドの銀行の英国内資産を全部差し押さえちゃった。もうこうなったらメチャクチャだ。

アイスランド自体がネットオークションにかけられちゃった。
「アイスランドは落札者に、住むことのできる環境、アイスランド馬、誰もが認めるところの少々不完全な金融状況を提供します。ちなみに BJORK さんの音楽著作権などは含まれません」最初のニュースじゃ17億円の値がついてるらしいと伝えられたけど、結局コレはデマだったみたいね。



アイスランドに行った動機は「BJORK が生まれ育った国を見てみたい」。
●ある意味ボクにとっての永遠のアイドルである歌姫 BJORK。彼女はこの北の辺境の島で、ヒッピー的なコミュニティの中に育ち、11歳にはお子様シンガーとしてデビュー、ティーンエイジャーになった頃には仲間とポストパンクなバンドを作り、THE SUGARCUBES で世界デビュー。その後ソロとしてイギリスで再出発し、そのエキセントリックなキャラクターとクリエイティヴィティでシーンの最先端を走り続けている女性アーティストだ。彼女のエキゾチックな風貌、D.I.Y 精神と強い独立心、繊細さと大胆さを兼ね揃えた音楽、全てにボクは惚れ込んでいる。

ちびっこビョーク

(旅行で買った BJORK 本(UKの本だったけど)から。ちびっ子 BJORK。カワイい)

シュガーキューブスビョーク(THE SUGARCUBES 時代の BJORK。)

「The Great Crossover Potential」The Sugar Cubes

(THE SUCARCUBES のベスト盤「THE GREATEST CROSSOVER POTENTIAL」。もちろん記念として現地で買いました。一曲目「BIRTH DAY」はインディ時代の元ちとせもカバーした名曲。)

現地で買った BJORK 本が英語だったので、ある程度読めるから助かった。アイスランド語は、本当に奇妙奇天烈で読解不能。北欧諸民族の中でも一番古いカタチを残した言語らしい。でも国民は学校で英語と旧宗主国のデンマーク語を習う。全員が完璧なトライリンガルだ。テレビを見ても、イギリスの放送の方が多い、つーかアイスランドにはテレビ局が一個しかない。

ビョーク本(BJORK: AN ILLUSTRETED BIOGRAPHY)


そこで見てみると、BJORK の生い立ちはかなりヘンテコリン。
●冷戦時代のアイスランドは、アメリカとソ連のちょうど中間地点にあるということで、重要な軍事拠点としてアメリカ軍が基地を作っていた(今はなくなったけど)。西ベルリンでなんか起これば、ココで戦闘機や爆撃機が給油を受けさらに飛んでいく仕組み。そんな基地からアメリカ文化が流れ出していた。日本の米軍基地周辺(沖縄、福生、横須賀など)にも同じような影響があったよね。
BJORK を育てた大人たちは、ある意味筋金入りのヒッピーだったのか、奔放な性生活の結果、彼女には異父異母兄弟が6人もできた。従って継母継父もイッパイいる。その中にはミュージシャンもいたし、彼女自身も6歳で音楽を習い始める。11歳でお子様レコードデビューしたのも、こんなヘンな大人たちに担ぎ上げられた雰囲気みたい。
●ある朝ベッドから出たくないと思った BJORK ちゃんは、シーツに穴をあけて首を出し、そのままオバケみたいにシーツを引きずって学校まで行ったそうだ。そんなのを笑って歓迎するのが彼女の育った環境だった。
「アタシは3歳くらいから不思議ちゃんだと言われてたわ。ルックスも含めてね」BJORK 本人の回想。アイスランド人はバイキングの末裔だから、彫りが深くてキンキラのブロンドがフツウ。BJORK のエキゾチックな容姿は確かに変わってる。「だからアタシは決断したの。周りの連中にアタシが全く理解出来ないようなルールを押し付けられてつまらない人生を生きるくらいなら、アタシは自分のしたい事だけをするまでよ、ってね」

アイスランド4

(旅行中はレンタカーを借りて100キロくらい移動した。そんで国定公園の奇景や大きな滝を見たもんだ。その途中で見つけたとある集落の標識。「BJORK村」だって。果てしない草原の中に5世帯くらいの家の集まりがあった)


アイスランドの音楽文化はスゴい。
●コレもこの BJORK 本で知った事なんだけど、アイスランド人は本当に音楽がダイスキだ。それは一年のほとんどが0度近い気温のせいで、家の中での娯楽が発達したせいだろうとこの本は解説している。そんでちょっとビックリする数字も紹介されてた。人口約30万人の国に音楽学校は70校もあって、生徒は1万2000人以上だという。さっき引き合いに出した東京・中野区は、中央線バンド文化の拠点でもあるけど、音楽学校が70もありはしないし、一万人も音楽を習ってるとは思えない。

アイスランド7

アイスランドのCDショップ。
●ボクの旅行の一貫したスタイルだが、とにかくCD屋をカッチリチェックする。CD屋を見る事でホントに様々な発見があるからだ。イロイロな文化が見えて来る。
●上の写真はCD屋さんの「アイスランド音楽」のコーナーだ。「ISLENSKT」ってのが自国産の音楽を差す言葉っぽい。アイスランドのお店はどこも小規模でメガストアみたいなトコロは見つからなかったが、ビビった事に、海外のCDと自国のCDの売り場比率が「50:50」なのだ。英米大資本のグローバル音楽と、人口30万人だけで作ったローカル音楽が、同じ存在感で陳列されている。コレって実はスゴいコトだと思う。
●日本語の音楽「ジェイポップ」は、日本語市場1億2000万人を目標に生産され、国内では洋楽を凌ぐシェアを誇っている。しかし世界では、完全に英米音楽に圧倒されて地元のポップミュージックが育たない場所も多い。なのにアイスランドは中野区級の人口で、しかも英語をほぼネイティブで理解出来る国民なのに、わざわざ自国語のCDをこんだけ沢山生産し、そして購買していく市場を作ってるのだ。中野区住民だけで、ジェイポップ全てと同格の存在感を持つ音楽市場を作れるか?絶対ムリ!すげえよ、アイスランド人!
●ちなみに、古典的な民族音楽はごく少数(そういうCDはおミヤゲ屋さんで売ってる)。売り場の半分は、オジさんオバさん世代向けの「演歌」っぽい音楽だった。テレビで歌番組を見てたんだけど、偶然なのかホントに「演歌」に聴こえる。日本の戦後「演歌」は純然たる邦楽要素だけで成立している訳じゃない。間奏の渋いギターフレーズにはブルースの影響も溶け込んでる。戦後にどっとアメリカ文化を移入されたという意味では、アイスランドと日本は同じ、意外なミッシングリンクで繋がっているのかも知れない。
●そんで、残り半分が、BJORK 以降の アイスランド・コンテンポラリーミュージックだ。つーか、THE SUGARCUBES のパクリっぽいのが多い! 後はベッドルームレコーディング的な打ち込み音楽。とにかく寒いから部屋の中でチクチク作る系が増える気持ちはわかる。全然聴いた事ない地元レーベルからワンサカ若者が音源を発表してる感じ。
●あ、100%蛇足だけど、写真に写り込んでるピンク色に髪を染めたヘンなパンクスみたいな女子は、1999年当時の我がワイフです。この頃は全頭キンパツとかワケワカランアタマをしてたです。


で、完全ジャケ買いで見つけたのが、SIGUR ROS。

Sigur R?s「?g?tis Byrjun

Sigur Rós「Ágætis Byrjun」/ SIGUR ROS「AGAETIS BYRJUN」1999年
「完全ジャケ買い」って意味は、マジでジャケ情報がなんもなかったから。ボクは「ジャケ買い」とはいっても、制作年やレーベル、プロデューサーなどなど結構ジャケに散らばる文字情報をかなりチェックして買ってる。しかし、このCDは、この気色悪い悪魔の胎児みたいなイラストの他、ほぼ何も書いてなかったのだ。裏面はバーコードとレーベルのマーク。紙ジャケの細い側面に小さくアーティスト名とアルバムタイトルがあるのだが、奇妙なアイスランド語(アルファベットにイロイロな部品がくっついて、見た事ない文字も出て来る。文字化け対策で今回はリアルな綴りとフツウのアルファベット表記を併記しました)のおかげで、ドッチがタイトルで、ドッチがアーティストなのかも全くわからなかった。
●帰国後、早速聴いてみたが、第一印象は気持ち悪い音楽だと思った。とにかくジャケのイメージに引っ張られたというか。分厚いオーケストレーションが行き先もわからず10分とか続いちゃったりする。そんでスピーカーがビーッツと震えるような重低音が鳴り響いたり大爆発(大噴火?)が起こったりする。暗黒宗教の音楽だと思った。だって、その段階では今だアーティスト名すらわかんなかったナゾの音源だったんだもの。悪魔が生まれでるのを、今か今かと待ち構える祈りの音楽。
●ところが、半年くらい経って、このCDが欧米でも日本でも大評判になってきた。ポストロックの文脈から、「 BJORK 以来のアイスランドの輝ける才能」みたいな扱いで。そこでアーティスト名もやっと把握した。その時はへんな気分だったな、だって地の果てみたいな所で買った正体不明のインディ音楽が、渋谷のタワーで平積みされてんだもん。

●この金融危機をキッカケに、SIGUR ROS の他の作品も聴いてみた。

Sigur R?s「Takk...」

Sigur Rós「Takk...」/ SIGUR ROS「TAKK...」2005年
●タイトルはアイスランド語で「ありがとう」って意味らしい。正体不明の不安さから冷静になれた今は、もう悪魔の音楽には聴こえない。まばゆい光に包まれるような歓喜の音楽だ。似たようなテーマが、アルバム全編にわたって様々なバリエーションで登場し、歓喜の高まりをより強調する。神々しい宗教音楽のような佇まいは変わらず、ファルセットで歌われるボーカルと優麗なストリングス、ヴィブラフォンのアクセントが最高。
●彼らをバックでサポートする弦楽四重奏の女性グループもこの国で注目を集めるバンドらしい。名前は AMIINASIGUR ROS のメンバーの奥さんが混じってるというハナシ。ソッチのCDも聴いてみたいな。

Sigur R?s「Me? Su? ? Eyrum Vi? Spilum Endalaust

Sigur Rós「Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust」/ SIGUR ROS「MED SUD I EYRUM VID SPILUM ENDALAUST」2008年
●おいおい、キミら全裸でドコいくの?!と心配するなかれ。イツモと同じ迫力、いやそれ以上の感動で出迎えてくれるよ。一曲目〜前半、リズムにインパクトを持たせた楽曲は、太古の原始宗教のように荒々しい生命力で聴く者のココロを揺さぶって来る。一方後半は、しっとり落ち着いたアコースティック音楽。
●アメリカのオルタナティブバンド THE PIXIES の再結成ドキュメンタリーを見てたら、彼らが SIGUR ROS のハウススタジオを訪ねるシーンがあった。若い SIGUR ROS のメンバーは「生きた伝説」である THE PIXIES の面々にチト緊張気味。でもスタジオは広く真っ白で、北欧らしいシンプルさが気持ちイイ空間だった。最新のPC機材を見ながら談笑する二つのバンド。でもTHE PIXIES の連中はデジタルレコーディングなんて死んでもしないだろう。



●もう一つ、アイスランドのアーティストを。

QUARASHI「JINX」

QUARASHI「JINX」2002年
●キャッチフレーズは「アメリカにヒップホップで挑むのは、グリーンランドに氷を売りにいくようなもんだ」。3MC1DJ、初期 BEASTIE BOYS を連想させる、ミクスチャーヒップホップ野郎たちだ。甲高いハイトーンからロウな低音ラップまで3色のMCが次々とマイクをリレーするのがスリリング。アメリカ映画のサントラで一曲使われたのがキッカケで海外ブレイクを果たす。基本的に英語でラップしてるが、一曲収録されてるアイスランド語の曲は、なんかスゴく難しそうだぞ。ありふれた白人ミクスチャーラップと彼らの音楽は、似ているようでちょっと違う。本人たちによれば「元々目指してたのは、UKのブレイクビーツとアメリカのヒップホップを合体させることだったんだ。THE CHEMICAL BROTHERSTHE PRODIGY と、CYPLESS HILLPUBLIC ENEMY が一緒に騒いでるように」アメリカとイギリスを等距離で捉えてるアイスランド人らしい視点だ。「それにオレら、BJORKSIGUR ROS ほどアートでもねえし」メンバーはアメリカ帰りのスケーターチャンピオンや、コミックオタクの俳優とか。
●バイキングの末裔だけあって、飲んだくれた上でのバカ騒ぎ&ケンカなんぞは当たり前のお国柄。若いヤツらは、アイスランド語よりも英語の流行り言葉をしゃべってる。この静かな島国のヤンチャでストリートな一面がココに炸裂してる。でも、残念ながら QUARASHI は2005年に解散しちゃった。



だらだらアイスランドのことを書いたけど、ご参考に旅行情報を。
●あの「地球の歩き方」さえも網羅していないのがアイスランド。情報がなくて困ったもんだ。今はネットがあるから便利だろうけど。ちょっとした旅のコツだけ、お教えします。

直行便はないので、ロンドン経由とかコペンハーゲン経由とかになる。
●アイスランドの航空会社はアイスランドエアー。今は知らんけど、日本の「土日〜翌週の土日9日間」という日程でウマく収まる飛行機は、ホンの数本しかなかった。そこにあわせてスカンジナビア航空とかを合わせてチケットを取ったと思う。アイスランド観光局とかに行って情報集めをしたもんだ。
●帰路をコペンハーゲン経由にして、7時間トランジットで待たされたのだが、コレが大失敗。コペンハーゲンは空港とダウンタウンがトラムみたいなモンで40分ほどで繋がっていたという。コレに気付いていれば、空港でボケーっとなんてせず、街に遊びに行けばよかった。

いわゆる「ホテル」は、レイキャヴィクに5つくらいしかない。
●日本から簡単に予約ができる(または受け付けてくれる)ホテルは多くない。本来は民宿っぽい小規模家族経営の宿が主流で、日本人が「ホテル」とイメージする、何十部屋もあるような施設は首都圏に5つくらいしかなかったと思う。ボクらが日本から予約したのは「ホテル・サガ」。英語のファックスを何回か交換した。何分9年前だからね、今はメールやネットでもっと楽に出来るだろう。悪い所じゃないがダウンタウンまでは結構歩く。ボクらの滞在期間、大柄なスポーツ選手が大勢泊まってて(ジャージを来た巨漢たち)、何しにきたんだろうな?と思ってたら、翌日その連中がサッカーアイスランド代表チームと戦う様子がテレビ中継されてた。「キエフダイナモ」というウクライナのチームだったみたいだ。

国際免許所をとってレンタカー。
ハッキリ言って「アシ」がないと、なんも出来ないのよ。観光ツアーで名所を巡るつもりなら必要ないかもだけど、ボクらは100%フリーだったからなあ。ホテルで頼んだらレンタカー屋さんが駐車場までやって来てくれた。英語で注意事項をペラペラしゃべってくれたが全く聞き取れん。パンフレットには「トランクに必ず予備のガソリンを」とか「通信機器を忘れずに」とかイラスト付きで書いてあった。山奥に入るにはそんくらいの覚悟がいるらしい。ハンドルは左、道は右側通行、オートマ車は存在しなかった。
ツーリストインフォメーションの事務所によって、アイスランド全土の地図を買い、ソレを見て旅をする。ナビなんてない。首都を出ると、マジの荒野が地平線の限りまで続く。溶岩の上に分厚くコケが乗っかってて、違う惑星に来たかのような気分になる。

アイスランド1

(100%溶岩とコケ。BJORK の名曲「JOGA」のビデオを連想させる。)

乳白色の温泉「ブルーラグーン」。

アイスランド2

●レイキャヴィクから西へ1時間、溶岩の荒野の一本道をひたすら進むと、地平線の向こうに湯気が立ちのぼってるのが見える。そこが、アイスランドの有名な温泉「ブルーラグーン」だ。標識もなにもないが、その湯気さえ見失わなければ道に迷うことはない。温泉といっても日本と違って全裸で入る習慣はない。水着に着替えてプール感覚。マジ寒くて(気温8度)お湯から出る気にはなれなかったが、デッキのベンチで日光浴してるオッサンとかがいた。さすがバイキング。お湯は乳白色で透明度ゼロ。プールみたいに整備されてると見せかけて、底は砂地で深さもマチマチ。その実態はシンプルに「池」だ。天然に熱湯が湧き上がってる場所もあって、ヌルい場所、アツい場所の差がデカ過ぎる。
●地味なこの国で、観光地っぽい雰囲気を漂わせてたのはココだけだった。アイスランドの人もココに来るのは楽しみらしく、入り口に行列が出来てたし、「ブルーラグーン」印のコスメグッズまであった。あ、効用とかは知らない。難しい英語は読めないから。多分誰もそんなコト気にしてないようだったし。


内陸を目指せ!シングヴェリトル国定公園。
●レイキャヴィクから東側、アイスランド島の真ん中へ向かって往復100キロの旅。目的地は「シングヴェリトル国定公園」というトコロ。ホントのど真ん中は氷河で冒険家の領域だが、もうちょっと手前のこの場所には世界でも珍しいモノがあるという。
●地図を見ながら国道を走ってるつもりなんだが、途中から車線を区切る白線どころかアスファルトそのものもなくなり、タダの砂利道になった時は「マジでココで道に迷ったら、ガス欠こいたら、生きて街に帰れない」とか思った。対向車もゼロ、時々迷子のヤギさんに出会うだけ。ハイシーズンでは避暑地として賑わうはずだが、9月は完全にシーズンオフ、10月だったら危険につき封鎖されるという。幸い道に迷う事もなく(つーか迷いようにも道が全然ない。ひたすら一本道)なんとか到着した不思議な世界。ここには「ギャオ」「ゲイシール」という物件が見物なのだ。

アイスランド9

このギザギザした崖は、「ギャオ」という。
●地震国日本は、太平洋プレートが大陸のプレートの下に沈んでいく場所だ。つまりプレートの死んでいく場所。日本海溝に深く沈み、地下深いマントルへと還っていく。
火山国アイスランドは反対。新しくプレートが生まれる場所。大西洋のど真ん中には、新しいプレートがマントルからせり上がって来る「海嶺」というものが南北を貫くように存在している。で、珍しい事にその「海嶺」がたまたま地上にカオ出しちゃってる場所が、アイスランドってわけだ。
●この「ギャオ」とよばれる崖は、地下の奥底からゆっくりとせり上がってきた新しい大地だ。高さは20〜30メートルくらい、これが南北数十キロにわたって繋がっている。時に崖は地を裂く割れ目になって、ソコに急流が流れ込んだりしている。
●そんな理屈を知っていたかどうか知らないが、1000年前のアイスランドでは、部族の代表がこの地に集合し、史上初めての議会を開いたという。当時のアイスランド人はフロンティア精神だけで故郷から移民してきた冒険野郎なバイキング。独立心が強く国王を据えようなど考えてなかった。野っぱらで長老や村の大将が話し合いをした程度らしいが、民主主義の元祖として、この故事はアイスランド人の強い誇りになってる。


「ゲイシール」

アイスランド10

●ココがイチバン見たかった。「間欠泉」だ。地下のマグマの影響で温泉の温度が急速に上がり高圧力が加わって、熱湯がズトーンと大砲のように吹き上がる。間欠泉自体は世界中にあるし日本にもなくはないが、フツウはいつ吹き上がるか全くわからない。
●しかしここ「ゲイシール」は実にコンビニエンスな事に、一年中毎日24時間、約20分おきに必ず一発は吹き上がるという非常に勤勉な間欠泉なのだ。だから、ボケーッと立って待ってれば、そのお見事で貴重な噴射を何度も拝む事が出来る。写真だと臨場感わかないだろうし、湯気モクモクでよく見えないだろうが、至近距離だと結構大迫力、20メートルは軽くイキます。全盛期は70メートルいったつーからスゴかったんだろうな。
現地に到着して最初の一発目を見ようとしてた時。不意打ちで噴射が起きた。「どっしゃーん!」予想以上のデカイ音!穴ポコに対して背を向けてたボクは、思わず湯気の中を走って逃げてしまったのでした。あの不甲斐ないチキンぶりを、ワイフは今でも笑いのタネにする。「アナタはナンか起きたら絶対ワタシの事を置いて一人で逃げ出す。あのゲイシールでそれがわかった」と。でもホントに至近距離だったら、熱湯をアタマから浴びて大ヤケドだよ。通常時はタダの温泉池にしか見えないし「ココから危険です」なんて表示もないし。
「ゲイシール」「GEYSIR」と綴るんだけど、ここの「ゲイシール」が余りに有名なので、「間欠泉」を英語ではこの言葉をそのまま転用して「GEYSER」(ゲイザー)と呼ぶようになった。ミネラルウォーターの「CRYSTAL GAYSER」も名の由来はこの「ゲイシール」が元ネタだ。


アイスランド3

(とある牧場での出会い。ずんぐりむっくりのアイスランド馬はひとつの名物らしい)

●大昔のアイスランド人は、北欧諸国からこの氷の島にたどり着き、さらにグリーンランド、そしてアメリカ大陸にまで植民を進めていった。コロンブスよりも500年早く、ヨーロッパ人はアメリカ大陸に到達していたのだ。その根性たるやホント立派。
BJORK の音楽には、そんな誇り高き民族のチカラが備わっているように思えてならない。もちろん音楽のスタイルにアイスランドの伝統音楽の関係なんて全然ない。しかし、彼女のアヴァンギャルドな冒険的表現は、常に未知の世界へ漕ぎ出していく勇気に満ちあふれている。
●グローバリズムの21世紀、予想だにしない方向からの危機到来で、転覆寸前になってしまった小国アイスランド。音楽を愛し、クリエイティブな才能を育むこの国が、大国の不始末で潰れてしまうのはホントに忍びない。世界はどんどん狭くなり、我々の失敗は直接知りもしない外国の人を追いつめるのだ。実際日本円立てローンの返済は完全踏み倒し状態になっちゃったらしいし。でもイギリスみたいにブチ切れたりしないのが日本のイイ所だね。

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