DVD「かもめ食堂」を観る。

かもめ食堂かもめ食堂
(2006/09/27)
小林聡美片桐はいり

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舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。日本人女性がたった一人で営む小さな食堂をめぐり、様々な人々が集い、そして美味しいコーヒーを飲む。ある意味ただそれだけのオハナシだけど、ソレで十分な暮らしが心地いい。出演:小林麻美・片桐はいり・もたいまさこ。
●ヘルシンキの夏は、ホントに日が長くて、午後11時でも日本の夕方4時くらいの明るさがある。つまり「白夜」寸前ね。緯度的にヘルシンキ自体は白夜にはなり切らないんだけど。大きな窓から日光が店中に差し込む「かもめ食堂」は、隅々まで明るく、白木のテーブルがマブしいくらい。北欧ならではの洗練された食器やコーヒーマグの色、調理器具のステンレスの輝き、マリメッコっぽい明るい基調の衣装。病気になってからというもの、アホのようにカフェ巡りをしているボクには、最高にい居心地のイイお店に見えた……。あの大きな窓に面した席で、本を一日中読むとか、とっても素敵…。これぞ本格的カフェムービー。カフェ好きのカフェ好きによるカフェ好きのための映画だね。

この映画をキリリと引き締めているのは、小林麻美の身のこなし。
●合気道に習熟してるって設定はあるとしても、キッチンの中におけるムダのナイ動きが、カフェにアリガチな弛緩しきったタルいムードに張りとテンションを与える。コレがイイ。素早い包丁さばき、香ばしく焼けるシャケ、愛情込めてゆっくり注ぐコーヒー。メリハリのある動きと表情が、料理シーンをスゴく美しいモノにしている。そう、ちょうど北欧デザインの食器と同じくらいに洗練された料理シーン。長い芝居に遅い展開、それでもソレを味とするテンションを、小林を頂点に3人の女優のトライアングルがバキッと極めている。


ボクもフィンランドを旅行した事がある。2000年だったかな(また旅行ハナシかよ)。
●目的は、そう、「ムーミン」。フィンランドといえば「ムーミン」以上の重要物件はないでしょう。ワイフもボクも、結婚する前かたそれぞれ原作小説を昔からしっかり読んできた人間。フィンランドへムーミンに会いに行こう!というアイディアはすぐに合意された。まだコドモも生まれてなかったしね。

ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-2)ムーミン谷の彗星 (講談社文庫 や 16-2)
(1978/10)
トーベ・ヤンソン下村 隆一

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(ボクのフェイバリット・ムーミン小説。あの平和なムーミン谷に彗星が落ちて来るらしい!その天変地異を前にして、我らがムーミンとその仲間たちが冒険の旅に出る!ワクワク)

●フランクフルト経由でヘルシンキ着、一泊の後、特急電車を現地で手配して、トゥルクというフィンランド第二の都市へ。小田急ロマンスカーのように鼻先がトンガッた超特急で3時間ほど西側に進んだトコロにあるバルト海沿岸の街。差し当たり日本で言うとこの名古屋?でも超地味で緑の多い場所だった。映画「かもめ食堂」の中で深い深い森のシーンが出て来てコレがまたとても美しいのですが、コレを観て連想したのが、この特急電車の車窓風景。時に開けた草原となり、時に深い森となり、小さな町が現れ、そしてまた森に入っていく。ちょうど THE CHEMICAL BROTHERS「STAR GUITAR」のPV(ミシェル・ゴンドリー監督)みたいだったりもして。

その先には、憧れの「ムーミンランド」が!
●バルト海に面した街トゥルクに宿を取り、さらにバスで北上。入り組んだ海岸線に面した町、ナーンタリという所に着く。ココに、なんと「ムーミンランド」なる代物があるのです!知ってました?

フィンランド1

(ナーンタリの慎ましやかなメインストリート。カワイい色のお店が建ち並ぶ。もちろんムーミングッズもイッパイなんだけど、日本製品が逆輸入されてて、ボクらには買うものがあまりなかった……)

●コレがもう最高!ディズニーランドユニバーサルスタジオのような大げさな仕掛けは何一つなく、むしろそのユルさは「日光江戸村」級。アトラクションなぞ皆無で、パーク内をムーミン一家のキグルミさんがウロウロ。真っ白な肌とキレイな金髪の子供たちがムーミンママに抱きしめられて最高にウレシそう!簡単な売店と食堂と、子供向けのお芝居をする小さな劇場、そして三階建てのムーミンハウス。ヘムレンさんのお家もあったかな。まーそんなモンしかない!もう最高過ぎてたまんない!

フィンランド2

(さあさあ、ここが「ムーミンランド」。ムーミンのお家があるぞ!)

フィンランド3

(いた!ムーミンママ!子供たちの一番人気はとにかくママでした!みんなママの膝にカオを埋めるのです。ちなみに、ワイフは理想の女性像として臆面なくムーミンママの名を挙げます)

フィンランド5

(ムーミンパパと、ワイフの2ショット写真。ムーミンパパは一見無職のボンクラに見えますが、実は冒険家という肩書きがあるのです。若き日の彼の冒険は、原作小説で読んでね)

フィンランド4

(原作では気難し屋のヘムレンさんも、ここでは優しい人気キャラ。見て下さい、このオンナノコのウレシそうな表情!)

フィンランド6

(このパークのほぼ唯一のアトラクション、ムーミン劇場。よく見て下さい、ムーミン、カオに木の枝が引っかかって「前が見えないよ~」と困ってます。アホです。しかし子供に大受けです)


そして再びヘルシンキ。
映画に出てくるように、港町で、トロリーバスが走ってて、露天の市場が賑わっていて、古めかしい19世紀風の建物が町中立ち並んでいる街。改修工事してる建物を見たんだけど、ガワ部分だけキレイに保存して、中身は完全にコンテンポラリーなビルディングに改造しちゃってるのよ。ああ、こうやって街並の景観を維持するんだと納得。

ヘルシンキ2

当然、CD屋巡りをする。コレはボクにとって「旅のマスト条件」なのだ。
●トロリーバスは環状線になってて、まずはソレを一巡り。その車窓から3つ4つのCD屋/レコード屋を発見する。コレは不思議なボクのクセで、国内外問わず、初めて来た街をちょっと歩くだけでも、なぜかレコード屋を発見できてしまう。あ、あの雑居ビルの三階に、あ、この本屋の二階に、とかね。下のお店は結構デカめの「FREE RECORD SHOP」。中古も扱っててかなり便利だった。

ヘルシンキ3

CD屋での印象は、以前このブログでもつづったアイスランドの気分とは随分違った。
●アイスランドは、人口30万人のミニ国家だったが、CD屋では自国語のCDが売り場の半分を占めていた(以前書いたアイスランドについての記事へリンク)。一方、フィンランドは人口520万人で、国土は日本とほとんど変わらない面積を持つ。同じ北欧、そしてずっと大きい国なのに、フィンランド語のCDの存在感はとても薄い。ちょっとしかないし、オッサン向けの懐メロっぽいモノばかりだ。映画「レニングラード・カウボーイズ」のようなヘンテコロックグループもあったが、あの手のバンドの50年代風ロックンロールは、日本で言えばグループサウンド的懐メロとして解釈されてるようで、内容は最悪だった(でも買ったけど。珍味のガレージロックだと思えば聴ける)。あ、フィニッシュ・ヘヴィメタルはスゴいってハナシはあるけど、ボクの興味の対象外だったのでチェックしなかった。でもそんなに存在感なかったよ。

フィンランドジャケ5 SLEEPY SLEEPERS「PAHIMMAT」1998年

(上記のヘンテコロック。もう見た目で「ヨゴレ」な感じするでしょ。イタイッす)


●しかし、この国のCD売り場が面白いと思ったのは、必ずしも英米音楽だけに占拠されてるわけではないことだ。つまり、ヨーロッパ各国の音楽がほぼ均等に揃ってるというコト。コレって興味深いことだ。
●売り場を見渡しながら、ボクはイメージしてみた。大きな地球儀に乗ってフィンランドの上に立つ。そんでヨーロッパを見渡してみる。すぐ左には広大なロシア。古都サンクトペテルブルグ(旧名:レニングラード)は超ご近所。そんで逆サイドはスウェーデン。その向こうにデンマーク、ドイツがありフランスがあり、そしてやっとイギリスがある。アメリカは大西洋の向こう。フィンランド人の世界観では、英米も重要だが、同じように他のヨーロッパの国も重要な存在感を持っているのだろう。
結果、ポップス大国スウェーデンや、ドイツ、フランスなどのCDがたくさん売っているのだ。だからここでは、欧州各国語のヒップホップを探した。UKのモノ、フランスのメロウなモノ、デンマークのモノ、スウェーデンのヒップホップはドスが利いててゴツい!スペインのファンクロックってのもあったな。ドイツ語と思って買ったものは、実は在独トルコ系移民でトルコ語のヒップホップだった。コレがこの旅最高の掘り出し物。

gt200306112.jpg KARAKAN, ERCI E. & DA CRIME POSSE「CARTEL」1995年

(イスラム風民族音楽サンプル満載、聴きなじみない言語のラップ、BPM速めの疾走感と、本当にユニーク!それでいて絶妙マイクリレーに「Bボーイ」とか「DJ」とか世界共通のコール&レスポンス大合唱など、ヒップホップの成立要件100%満たしてる)


●しかし、イロイロな国のヒップホップがあるのに、肝心のフィンランド語のヒップホップが見つからない。店員さんに聞いてみた。「アイム・ルッキングフォー・ヒップホップミュージック」店員「……イングリッシュ・ヒップホップ?」ボク「ノー!フィニッシュ・ヒップホップ」店員さんは、東洋人のメガネ野郎がワザワザ遠くからやって来て、この国のヒップホップを聴きたいと言ってるコトに感動してくれたらしい。パッと笑顔を見せて、早口の英語でまくしたてた。
「この国のヒップホップを探しているのかい?こりゃビックリしたな。イヤイヤ、ゴメン。この店にフィンランド語のヒップホップはないんだよ。でもね、他の店で置いてあるトコロを知っている。店の名前と、あと地図を書いてあげよう。もしワカンナかったらの時のタメに、ボクのメアドも書いておくね。必要なら日本に送ってやるよ」多分、そう言ってたように思える…。もうちょっとボクに英語ができたらな…。でも音楽は言語を超える。同じ趣味を持った異邦人に、フレンドリーになってくれた彼に出会えてとてもウレシい気持ちになった。彼が書いてくれたメモを手に街を歩く。

●さて、さっきの店員さんに教えてもらった店は、ヘルシンキの中心街とはいえ、少しウラブレたさみしいエリアにあった。店名は「THE FUNKIEST」。古い建物の一階にあったその店のドアを開けたら、ちょっとドキッとした。客もスタッフも全員スキンヘッドのBボーイ。みんなシャツのスソからタトゥーが見えます。そんな連中が、ドアを開けたボクの方を一斉に振り向いて、マジマジとボクを眺めた。ボクはヤセッポチで背が低くメガネをかけた髪の毛の長い東洋人。つまり、ハイパー場違いな雰囲気。

ヘルシンキ4

(「THE FUNKIEST」外観。マジ小さいので、自力では絶対発見できなかった。しかし、この周囲には、ナカナカ渋いレコード屋が多くジャズや60年代ロックなどもイイ値段で買えたのだった。)

●NY行った時も、それはそれはデカイ黒人さんばっかのヒップホップ専門店でモリモリ買物したじゃないか。NYの連中はさすがコスモポリタン、黒人さんたちは客も店員も陽気で、東洋人が一匹紛れていても歯牙にもかけなかった。…しかし、フィンランドの中では今だアンダーグラウンドであるヒップホップカルチャー、その店でボクは相当場違いらしく、視線こそ合わさないが、ソコにいる全員がボクの動向に注目してるのがハッキリ伝わる。

●狭い店内に雑然と並べられたエサ箱。その中に大量のヒップホップの12インチ。完全なヒップホップ専門店。サクサクっとエサ箱を見ても、フツウのアメリカのヒップホップしかない。アレ、ハナシと違うなあ。
●背中に視線を思い切り感じながら、ワザとデカイ声で店員さんに聞いた。「フィンランド語のヒップホップを探しているんだ。どこにあるだろう?」白い肌に、金髪を短く刈り込んだ目つきの悪いお兄さんは、無言でカウンターの脇の小箱を指差した。そこにはCD-Rで焼き込んだ自主制作盤(つーかソレ以前的存在、ジャケが手書きモノクロコピー)が20枚ほどあるだけ。うわー、これしかないのかよ。マジでシーンが未成熟なんだなあ。

●それでも何枚か抜いたよ。一番ヒドいのはマジでヤケクソなコピージャケで、音も悪い。フィンランド語のラップは、本来はラップに向かない言語を無理矢理ビートに嵌め込んだ感じが非常にギクシャクしてて、その奇妙な違和感と、一方でそのチグハグさを見事解決してラップとして成立させてるトコロが面白くもあった。一生懸命探した価値があった。何品かご紹介。

フィンランドジャケ3 ALEX STREET BAND「PRESENNTATION OF」 1999年

(ジャケは完全にヒップホップだと思ったのだが、聴いてみたら時代遅れのアシッドジャズだった)

フィンランドジャケ2 MEMMYPOSSE「KAHVA KAHVASTA」1999年

(コピー用紙をハサミで切って、CD-R の中にツッ込みました、という根性の自主制作盤。)

フィンランドジャケ1 SEREMONIAMESTARI「OMIN SANOIN」2000年

(フィンランド・ヒップホップでは一番の収穫物。関連シングルまで買っちゃった)

フィンランドジャケ4  SEREMONIAMESTARI さん本人近景。

(レコ屋にいたBボーイもこんな人たちばかりだった。ゴツいんだよホント)



●ボクがフィンランドを旅したのは2000年。もうシーンも大分変わっただろう。北欧全体のポップミュージックも日本にたくさん情報がもたらされるようになって、理解も深まってる。もっと新しい北欧シーンについて知るにはコチラの本をおススメ。雑誌「COOKIE SCENE」が作った本だから、メタルもヒップホップもないけど、エレクトロニカからポストロックまで網羅したイイ本です。ご参照を。

クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ [北欧POP MAP Iceland、Norway、Denmark、Finland編 (クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ)クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ [北欧POP MAP Iceland、Norway、Denmark、Finland編 (クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ)
(2007/09/21)
クッキー・シーン編集部

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クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ [北欧POP MAP Sweden編] (クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ)クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ [北欧POP MAP Sweden編] (クッキー・シーン・ミュージック・アーカイヴ)
(2007/09/21)
クッキー・シーン編集部

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