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2008.12.30
恐竜魂は絶滅せず。グランジロックの雄 DINOSAUR JR. の復活。
●過去、90年代ロックの重要アーティストとして、ワタクシ個人の思い出思い入れも引っ括めて、いくつかバンドについて記事にしてきました。PAVEMENT とか SONIC YOUTH とか NIRVANA とか。そんでシリーズにしたいなーとか思ってたんだけど、すっかりサボってました。すいません。このままだと、90年代を総括し切る前に00年代が終わっちまう。
●ですんで、今日は、DINOSAUR JR. を取り上げたいなーと思う訳です。

●90年代オルタナティヴバンドの中で、こいつらはそのルーズでユルーいライフスタイルで時代の空気を代表していました。バンドの中心人物 J. MASCIS は、ボサボサに伸ばした髪の毛をニットキャップに押し込み、ヨレヨレのネルシャツを重ね着、既存のギターヒーローにあるまじきメタボ直前のだらしない体型、インタビュワー泣かせのやる気レスな発言、完全に人をクったような不真面目さが、あの時代のだらしないグランジのイメージの生きたお手本として燦然と(?)輝いておりました。オマケにゴルフが大好きという、これまたアンチロックな趣味をご披露して、ゴルフを題材にしたプロモまで作った「肩すかし」の達人です。ボーカルにしてもモゴモゴやる気あるんだがないんだか不明なテンションでかったるそうに歌うわけです。こういうダルな人間がヒーローになってた時代が90年代オルタナティブなわけです。
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●余談ですが、J. の典型的グランジファッションは、90年代バブル崩壊後のドレスダウンな気分に非常にマッチして、オトコもオンナノコもこの無造作なスタイルを身にまとったモノです。岡崎京子のキャリア末期の超名作「リバーズ・エッジ」1994年を読み返すと、主人公の少女がこんなカッコ(ニットキャップにルーズなジーンズ、ネルシャツやフード付きのダボッとしたコート)している事を発見できます。
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●DINOSAUR JR.「GREENMIND」1991年
●しかし、J. MASCIS のかき鳴らすギターは全然ダルでもやる気レスでもありません。そのテクニックは驚異的でした。彼はギターボーカルであるわけですが、ボーカルではなくギターで歌うオトコなのです。ある意味 反則技の音楽表現へ走ったSONIC YOUTH や PAVEMENT とは違って、DINOSAUR JR. の音楽は理解しやすいキャッチーさがあり、ノイジーなギターワークに華々しさがあり、その意味で古典的なハードロックを正統に踏襲しているバンドなんです。そして今だに劣化する事なくその瑞々しさを保っている。ボクが初めてこのバンドと出会ったのはこのアルバムなんですが、それから十数年経とうと、ダルいボーカルと鮮烈なギターフレーズは耳から離れていません。もうエアギターせずにはいられないほどの痛快さがココにあります。
●DINOSAUR JR. (以下メンドクサイので「ダイナソー」と呼ぶ)はその後3枚のアルバムをリリース。奔放なギターサウンドと、ダルいボーカルを武器に趣きある作品を作り続け(1997年「HAND IT OVER」では大胆なホーン使いでファンの度肝をぬいたっけ)、1997年に解散。J. MASCIS は実質ソロのオレユニット J. MASCIS + THE FOG で活動。全然変わらない芸風で轟音ギターを鳴らしておりました。
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●個人的な記憶として思い出されるのはある時の大阪出張。仕事の合間に何の気なしに入ったレコード屋で、J. のギターと一発でわかる轟音を聴き「アレこれダイナソーじゃねえの?」と店員さんに確認した所、 J. MASCIS + THE FOG の一枚目「MORE LIGHT」2000年だったということが判明。速攻買いました。元々、J. MASCIS はドラムの腕もかなりのモノで、ギター、ベース、ドラムと全部自分でこなせちゃうオトコ。90年代の ダイナソー もかなりの雰囲気で既に J. のオレユニットでありました。
●そんで、2005年、ダイナソー再結成。
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●DVD「LIVE IN THE MIDDLE EAST」
●ダイナソーの再結成ツアーを関係者のインタビューも絡めて収録したDVD。ココでボクは、自分の無知を思い知らされた。オリジナルメンバーのダイナソーは、J. とドラムの MURPH。基本的にそれっきりだと思ってたんだけど、ベースに LOU BARLOW というヤツがいたのですわ!え、コイツ、ダイナソーのオリジナルメンバーだったの!?
●J. MASCIS の相棒、LOU BARLOW。
●90年代オルタナロックの中で、LOU BARLOW も、知ってる人は知ってる重要人物である。SEBADOH という、とても殺伐としたギターロックバンドを率いつつ、LOU BARLOW'S ACOUSTIC SENTRIDOH というユニットでは、涙チョチョ切れのヘナヘナロウファイフォークを宅録で奏で、JOHN DAVIS というヤツと組んだバンドは、明らかに JON SPENCER BLUES EXPLOSION をパクったであろう、THE FOLK IMPLOSION という名前、それはそれはヤケクソなロウファイサウンドをかき鳴らしてた。下膨れのダル男 J. に比べ、神経質なメガネオタクという印象の LOU BARLOW には、サウンドの上でも接点を感じてなかったので、再結成として肩を並べてるのが意外に見えた。
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●考えてみると、ボクは80年代のダイナソーをマトモに聴いた事がない。ここをお勉強。
●ダイナソーの結成は1984年まで遡る。マサチューセッツ出身の J. MASCIS と LOU BARLOW は共にハードコアパンクバンド DEEP WOUND のメンバーで古い友人。大学の友達がドロップアウトしてレーベルを立ち上げ(それが80〜90年代に活躍するインディレーベル HOMESTEAD RECORDS)、「なんか音を作ればリリースしてやるよ」と約束してくれたので、J. は LOU やドラマー MURPH を誘って新バンドを結成するに至るのだ。
●そんでニューヨークまで出張ってギグをこなしているうちに、NYを拠点に活動していた SONIC YOUTH の連中がダイナソーに注目、自分たちのツアーに彼らを誘う。コレをキッカケにアンダーグラウンド世界で彼らは大きな存在へと脱皮して行くことに。レーベルも SONIC YOUTH と同じ大手インディ SST に移籍。キャリアは順調に進んでいた。
●しかし、1989年。LOU BARLOW はバンドを脱退、以前から進めていたサイドプロジェクト SEBADOH の活動に専念することを選んだ。バンド初期には J. の圧倒的な才能に感服していた LOU だが、キャリアを進める中で、自分の中にもアーティストとしてのエゴが発達してきたのだ。NIRVANA で有名になるシアトルのレーベル SUB POP で SEBADOH は活躍して行くのでした。
●そんなことがあった後、ワーナー系列 BRANCO Y NEGRO からダイナソーはメジャーデビュー。ここからボクは LOU 抜きでこのバンドをずーっと聴いてきた訳ですわ。
●前述「GREEN MIND」でのメジャーデビュー以前に、ダイナソーには3枚のインディアルバムがある。そのウチの2枚は持ってるんだけど、盤質がワルいのか元々の音源がヒドいのか(多分その両方)、ムゴい音であんまし聴いてなかった。でもココで全部聴き直す事にした。
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●「DINOSAUR」1985年
●「YOU'RE LIVING ALL OVER ME」1987年
●「BUG」1988年
●トモダチの立ち上げた HOMESTEAD からリリースしたのが1枚目の「DINOSAUR」。最初はバンド名に「JR.」はついてなかったんだけど、同名バンドがあったので、後から「JR.」がくっついたという。コレは実に殺伐としたパンクロックの亜種。録音がヒドいのを割り引いても、その後に輝くポピュラリティはまだない…。弾むベースと個性の強いギターがアクセントにはなってるけど、ボーカルメロディの存在感が全然ない。おぞましい爆発力があるのはわかるけど、制御不能の不穏さが拭えない。そのヤバさがそのまま裏返ってこの時期の魅力にもなってるのだけど。実はこの時期のバンドの雰囲気は、LOU BARLOW のバンド SEBADOH の方へ、内向きなテンションとして受け継がれて行ったような気がする。
●90年代のダイナソーを直接連想させるサウンドが鳴り出すのは、SONIC YOUTH との出会いから移籍した SST からリリースした二枚目「YOU'RE LIVING ALL OVER ME」&三枚目「BUG」から。この時期からギターが明確に歌い出す。どこかもっと広い場所に突き抜けるような痛快な気分が出現する。轟音度も上昇して、ボソボソボーカルながら、メロディもキャッチーになっていく。テンポも緩急のメリハリがつき、アレンジも多様化する。メジャーまであと一歩の段階だ。
●最新のダイナソー。
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●「BEYOND」2007年
●ダイナソー名義で10年ぶり、そんでオリジナルトリオの編成としては19年ぶりの新作。アレコレを全部乗り越えての「BEYOND」なのかな。ダイナソーは2005年オリジナルメンバーで再結成、ツアーまで始める。そしてこのアルバム完成にまで至る訳だ。
●で、内容は、イイ意味で全然変わらない。ギターの音が不釣り合いにデカクて、相変わらずボーカルはそのギターの音にかき消されそうで、でもメロディはキャッチーで、それ以上にギターフレーズの一つ一つがダイナミックにキャッチーで、どうしてもエアギターしたくなる衝動にかられる。着実なベースラインに耳をそばだてると、DVDで見た LOU BARLOW のベースを思い切りタテに立ててバチバチ弾くポーズが目に浮かぶ。伝説は今なお現在進行形である。



●上から、J. MASCIS、LOU BARLOW、MURPH。2008年 READING FESTIVAL にて。
●このシリーズ、次に準備中は、やはり80年代から活動し後進に大きな影響を与えたオルタナロックバンド、PIXIES です。…と予告しちゃえば引っ込みつかなくなって、やるしかなくなるでしょう。ニーズがあるかどうかは別にして。
●過去の関連記事はコチラ。
2008.11.09 「『ROUGH TRADE』ロック30年の歴史。パンク発 PETE DOHERTY 行き」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20081109.html
2008.10.01 「90年代の伝説 NIRVANAとKURT COBAIN。ロックの神に捧げられた生贄」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20081001.html
2008.09.28 「成熟を避けて突き進む「音速の若者」SONIC YOUYH に今一度シビレル。」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20080928.html
2008.09.16 「SONIC YOUTH はドコから来てドコに行くのだろう?音速のスピードで。」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20080916.html
2008.09.08「PAVEMENT と STEPHEN MALKMUS にまつわるセイシュンの思い出」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-508.html
2008.05.18「00年代エレクトロを巡って、90年代80年代そして70年代まで旅をする」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-438.html
2008.04.20「80年代末から現在まで、UKのブラックミュージックを一気に俯瞰する」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-418.html
2008.04.05「放送室で溶け合った、60年代と90年代UKロック。ブリットポップの時代」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20080405.html
2008.04.29「ボクは「FREE SOUL」がダイキライ。でも許す(←ナニ様?)」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-425.html
2007.10.22「『渋谷系』とは何だったのか? 極私的に90年代を振り返って」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-240.html
2008.01.06 「平成20年から平成元年を照らし出す。「バンドブーム」の記憶」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-entry-293.html
2007.12.14「1986年。少年がロックに目覚めた瞬間」
http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20071214.html
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