「レイヴ」って言葉を普通に話す女の子。
●10歳も年が離れているのに、普通に「レイヴ」とか「サイケ」とか「ゴア」とか「四ツ打ち」とかいう言葉を使う女の子。仮名を「レイヴ」ちゃんとしておきましょう。彼女とはもう3年も仕事で絡んでいたのに、そんなサイコーな趣味があるなんて最近まで知らなかった。「仕事に差し支えるといけないから隠してました」だって。そんでこの前ランチを食べながら、「レイヴ」ちゃんと他人には話せない(というか他人には通じない)濃い音楽トークをすることが出来ました。ボクの周りには、音楽好きがいないからこういう場面はすごくうれしい。RICHIE HAWTINとか CARL CRAIG みたいなデトロイトテクノの話でも趣味の共通項が見つかって親近感わいちゃった。

でも、「レイヴ」ってもう大分懐かしい言葉だよ。
「セカンド・サマー・オブ・ラブ」とか言って、新型ドラッグ・エクスタシーを飲んでは享楽的にダンスしてたのは1989年のイギリス。クラブやライブハウスじゃなく、野外や廃屋で無許可・非合法に盛り上がっちゃうレイヴシーンは、警察の厳しい取締り対象になって、法律まで作られて弾圧された。その一方でその後のシーンに重要な影響をもたらしたのは間違いない。貪欲に高性能ダンスミュージックを追求した90年代の幕開けを象徴する事件だったはず。
●でも上で紹介した「レイヴ」ちゃんの実年齢で言えば5歳の頃よ。なんで「レイヴ」なんて知ってるかな?お父さんがヒッピーさんでデッドヘッズだって言ってたけど、その影響かな。立派な英才教育だわ。

●つーことで、今日は「レイヴ」を語ろうと思ったんだけど……少し気が変わって、「ニューレイヴ」のお話をしたいと思います。「レイヴ」ちゃんとは「ニューレイヴ」系のアーティストの話でも大分盛り上がったもんだから。


「ニューレイヴ」。2006年の言葉ですね。もう死語?
●で、言いだしっぺは、コイツラ。UK のロックバンド、KLAXONS。

KLAXONS「Myths of the Near Future」

KLAXONS「MYTH OF THE NEAR FUTURE」2007年
●コイツらが自分たちの音楽を「ニューレイヴ」と呼んだ。「NEW WAVE」と「RAVE」をくっつけた造語だ。80年代ポストパンクシーンと、90年代ダンスシーンを結合させた、00年代の新音楽とブチ上げたわけだ。コレは音楽批評家/ジャーナリズムが作った「ブリットポップ」とか「ロウファイ」と言った言葉と違う。アーティストが自分で作ったんだ。まあ、半分冗談のツモリだったらしいけど。ただし、冗談でも「オレらの音楽」と胸張れるスタイルを打ち出したコトはエラいと思う。この言葉を喧伝した連中は当時平均25歳程度の若造。若いから出来る向こう見ずなビッグマウス。
●しかし、90年代に行われた様々なダンスミュージック実験を通過してきたオッサン世代であるボクにとっては、彼らの音楽は正直あんまり「ニュー」でも「レイヴ」でもない。でも、そうやってケチつけるコトは誰でも出来るんだよ。そんな言いがかりは年寄りのイチャモンで、実際のクラブやパーティで楽しんでる連中には意味のないハナシだ。そういうワケで、ボクはオッサンなりにこの「ニューレイヴ」を一人楽しむよ。(病気でクラブもライブも行けないしー!)

●90年代のレイヴシーンから出てきた THE PRODIGY THE CHEMICAL BROTHERS は、ラップトップPCとターンテーブルから強力なロックビートを弾き出して、本家ロックをそのハードなビートで凌駕してしまった。この世で一番ハードな音楽だったはずのロックはそのお株を奪われてしまい、仕方ないのでミンナでシンガロング出来る歌詞と物語へと軸足をズラした。それがブリットポップだったとボクは思ってる。あの時代のロックバンドがハードだったとはあんまり思えないでしょ。SUEDE BLURPULP が、UNDERWORLD FATBOY SLIM よりもヘヴィでロッキンな音楽を鳴らしてたかな? そうは思わないな。
ニューレイヴと言われる連中は、基本的にロックバンドの形態の中でダンスミュージックを追究しようとしてる。その中でシンセの役割が大きくなって、結果「エレクトロ」というタームも随分目立つようになった。実際、SIMIAN MOBILE DISCO JUSTICE などの本物のエレクトロユニットとも積極的に交流してるし。でもあくまでロックバンド。歌詞がありメロディがありサビがある。強烈なリフを一撃かまして無限にループするビッグビート組とは違う。

●そんな訳で、ボクが KLAXONS の音楽に価値を見い出すのは、ロックバンドにダンスへの貪欲な衝動を取り戻したことと、ダンスミュージックに生身の人間の雄叫びを取り戻したこと。このバンドは基本的にツインボーカルで高音低音パートが常に折重なってる。性急でツンノめるようなビートと、悲鳴を上げてるかのように鳴り響くシンセ音に合わせて、二人の男が喚いてる様子は、呪術の祝祭儀式の中で人民が踊り狂っているかのような風景。アルバムタイトルは「近未来の神話」未来人がシャーマンを囲んでトランス状態に陥ったかのような野蛮さと神々しさが入り交じる。気の狂ったような色彩のジャケも、未来人の作った護符みたいに見える。
「レイヴ」エクスタシーを前提にしたムーブメントだった。「ニューレイヴ」の現場でミンナが錠剤をカジって踊ってるのかどうかは知らんけど、洗練とはほど遠い狂気がココには漲ってると思う。


ENTER SHIKARI「TAKE TO THE SKIES」

ENTER SHIKARI「TAKE TO THE SKIES」2007年
●コイツらは KLAXONS よりもさらに若く、リリース時で22歳程度だ。そんで、やって来た場所が分かりやすい。明らかにコイツらはメタル野郎。ボーカルのデス声ップリと、ギターのザリザリップリと、ベースとバスドラのダズダズした感じが完全にアメリカのラウドロックと同じ。でもコイツらがアメリカ人と違うのは、メタルラップには興味がない事と、もっとノビノビと暴れて踊りたいのでシンセサイザーをチカラの限り導入した事。
●DVDのフッテージを見ると、ライブ中はシンセを弾いてるとは言えない…。ボーカルのバカ野郎が曲頭にシーケンサーを操作して、そのリズムに合わせてバンドが爆音で演奏&ボーカル大暴れそしてフロアへダイブ!原始的です、死ぬほど。たとえシンセがブッ壊れても、ライブは全然成立する。しかもあの暴れようでは度々ブッ壊してるような気もする。
●ちなみに SHIKARI ってインドの言葉で「狩人」という意味なんだって。狩人というより、狩人に狙われるケモノって感じだな。野蛮と狂気という意味では真っ当に「ニューレイヴ」だ。


THESE NEW PURITANS「BEAT PYRAMID」

THESE NEW PURITANS「BEAT PYRAMID」2008年
●そんでコイツらはもっと若くて、リリース時メンバーが二十歳前。でありながら、前述2バンドに比べてズーッと進化した音楽をやってる。コレはスゴい。これは「ニュー」だ!
●人力バスドラがバスンバスンと鳴らす四ツ打ちのテンポ感は、微妙に速過ぎたり遅過ぎたりして簡単に疾走感を味あわせてくれない。ハイハットがチキチキいってるので、もう少しベースが強ければダブステップの変形に思えるけど、そうではないのでこのリズムの由来が不明。ソレよりも神経質に痙攣するギターが前面に出てきてて、音の重心が上に設定されてる。つまりは、彼らが鳴らすこの「ビートピラミッド」はジャケアートが示すように「逆三角形」のカタチをしている。そして彼ら四人のメンバーは、重力に逆らってそそり立つ逆三角形ピラミッドを守る神官だ。

●既存のバンドを引き合いに出して音楽を説明するのは卑怯な手で、ボクは好きじゃないんだけど、今回はその誘惑に勝てない。連中がこれから名を挙げるバンドの音をソックリパクったという意味じゃない、音の狙うベクトルが似てると思った。そんでこのバンドと彼らを比較するってのは、ボクにとってはスゴく高い敬意を払ってるって意味だ。コイツらの音を聴いて連想したのは「THE POP GROUP」だ。
●80年代のポストパンク時代に独自の暗黒世界を作ってしまった THE POP GROUP が、レゲエ/ダブやファンクを昇華して自分たちの音楽に取り込んだコトをタネ明かししたのは、彼らが分裂してそれぞれのソロキャリアを歩んでからだ。登場の瞬間は完全に由来不明の突然変異種に見えたはず。THESE NEW PURITANS もナニかのルーツがあって音を鳴らしているはずだが、その正体が見えない。ヒントのキーワードはもちろん羅列できる。ダブ/ダブステップ、グライム、アフロビート、ガレージパンク、ノーウェイヴ、シューゲイザー…。しかし、そんなコトは意味がない。既存音楽をどのように解釈したらこんな突然変異ができるのかが問題で、その突然変異ぶりが彼らをアーティストたらしめている。結果としてこの二つのバンドは、30年近い時空を超えて、不気味で不穏で全然踊れないダンスミュージックを弾き出してる。

「全ての数には意味がある!全ての数には意味がある!」と絶叫したり「私を打ち倒せ私を打ち倒せ私を打ち倒せ私を打ち倒せ、私は島であり山であり川でありこの音楽が象徴する物を見ているこの音楽に重さはない」とまくしたてたり「お前の身体に全ての数字を書き込んだ。私は雨の中…雨の中…雨の中、16秒!」と呻いたり「お前に見えない色お前に見えない色お前に見えない色お前に見えない色見えない見えない見えない…は黄金だ!黄金だ!黄金だ!黄金だ!黄金だ!黄金だ!黄金だ!」と連呼したりと、逆ピラミッドの神官が唱える呪文は、まるでユダヤ教の秘儀カバラのように怪しく謎めいていて、闇の中で不気味に光る。

●そしてボーナストラック扱いとして、最後に大曲「NAVIGATE-NAVIGATE」が動き出す。曲の長さは15分越え。ひたすら続く反復ビートと微妙に表情を変えていくノイジーなギタープレイに驚嘆。ココまでくるとジャーマンプログレ CAN のハンマービートすら連想する。「ニューレイヴ」の列に並んでいるが、ボクにとっては全く異質の本格派に見える。


「ニューレイヴ」やソレに近い位置にいるダンスロック、エレクトロのアーティストは、最近好んでチェックしているのだが、量が多くて咀嚼しきれない。今後小出しに紹介していきます。

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