リハビリで電車通勤をするようになってから、ずーっと気になるモンがあったのよね。
●それがこれ。「参宮橋」の駅のホームにどーんと見える看板なのです。

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「刀剣博物館」? ナニソレ? 英語で「THE JAPANESE SWORD MUSEUM」。うーむ。一体どんな所なのだろう。電車がこの駅を通過する度に、コレが目に入る。気になって気になってしょうがなくなってきた…。


●で、我慢出来ず、行ってみた。


●ハッキリ言って、日本刀に興味も関心もないのです。ただ、人生、効率よく一直線に走ると全然オモシロくない。ボクはこのテのムダ足を自分に課して、ヘンテコな空間に自分を放り込むのが好きなのです。そして、他人とは共有できないオモシロさかも知れないけど、意外とそれなりに楽しんじゃえるのです。

●能書きはどうでもイイや。建物の外観がコレ。昭和モダニズムな香りが漂う、実に古くさい質感。窓が少なく、結構デザインに工夫がされてる。あと20年経ったらもっとイイ味が出るだろう。そんで、渋く書かれてます。建物のドテっパラに。「刀剣博物館」と。

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しかし、全然期待してなかったのに、日本刀、スゴくカッコよかったんです。
●これ、写真撮影禁止だし、よしんば撮影可能でも、その美しさはカメラに収められないので、もう実際に現場行って下さいとしか言いようがないんだけど、ビックリするほどキレイなんですよ!

●まず最初の一本目でビックリしちゃった。まるで冷えた金属に空気中の湿気が集まったかのような、白いモノが刃の部分にスーッと光っているのです。ドライアイスに冷やされた食器にうすーく細かい氷の結晶が集まるように……いやもっと繊細で可憐で上品に、あるはずのナイ冷気が刃を美しく曇らせているのです。うわ、キレイ…。
●で、ビビったコトに、このヒンヤリと光る70センチほどの「太刀」が平安時代末期のモノなのです。エーッ!1000年前じゃん!1000年もの間、この美しい光沢を維持してるとは……。他にも鎌倉時代、室町時代などなど、数百年の時間を経て光を放ち続ける刀がたくさんある。思わず息を飲む…。なんか不思議な世界。


この場合の「不思議」って、単純に工芸品が劣化せずに現代まで残ってるコトの素晴らしさとは違う。
●「日本刀」ってのは、第一義的に「殺人武器」として製造されたモノ。なのに、その「殺人」という目的に向けて機能の純度を研ぎすました結果、美術的価値を持つほどに洗練されてしまった。それがユニークで不思議。
●トルコの美術観で見たアラビア刀は完全に装飾品になってとてもゴージャスだったけど、武器としての機能は失われてしまってた。西洋の刀剣は骨董品には見えたけど、美しいとは思えなかった。しかし数百年の歴史を経た「日本刀」はあくまで殺人機能を損なわず(触ればマジで指が切れる)、その機能の高さが美しさの根拠になっている。刃身にサンスクリット文字を彫り込むなどのギミックを施した物件もあったが、ハッキリ言って野暮に見えるくらい。刀身そのものの美しさがたまらない。不思議だ。

●実際に目の前にある「太刀」や「刀」が何人の血を吸っているかは分からない。大切に扱われて実戦投入されなかったかも知れない。でも「日本刀」は、他の国の刀剣と違い実用から離れた虚飾で美術品になった訳じゃない。あくまで「殺人への機能美」がそのまま純化して魅力となってる。それがボクをゾクゾクさせる。
●一方で、素人には完全に意味の分からない鑑賞美学が独自に発達してて、解説が全然意味不明。


刀剣

●コレは博物館の売店で買った絵はがき(80円)。キャプションが書いてあるのだが、難しくて理解不能!


重要文化財 太刀 無銘 福岡一文字 長さ二尺五寸五分(77.27㎝)鎌倉前期
備前国の福岡一文字と鑑せられ、腰反深く細身で小鋒に結ぶ太刀姿は優美で品格がある。丁字乱れの華やかな刃文はこの時代としては珍しく貴重で、地刃の出来も抜群である。


「小鋒」?「丁字乱れ」?「地刃」? 全然意味わからない。チンプンカンプン。
●そこで、「刀剣博物館」のホームページでアレコレ調べてみる。

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●よーく見ると、刀の表面には、こんな多彩な模様がうっすらと見えるのだ。特に「杢目肌(もくめはだ)」という模様は、現物でみるとビックリする。殺人機能を増すために鉄と鋼を何度も何度も鍛錬した結果、こんな不思議な紋様が浮き上がるのだ。しかしマジで目を凝らさないと見えないほどに繊細な紋様、ある意味メチャマニアックな美学なわけで、それが一部の好事家(というのかな?)の中では一つの権威として育ってしまっている!スゲエ!


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●そして、ボクが感動した刃の輝きがコレ。「焼き入れ」という過程の瞬間、金属の硬度の差がこうした模様を浮き上がらせるという。その模様を「刃文」と呼ぶらしい。で、この「刃文」の境目を「沸(にえ)」(写真左)とか「匂(におい)」(写真右)と呼んで、鑑賞のポイントとするらしい。ほえー。奥深い。ボクはこの白い光沢に「冷気と湿り気」を感じたのだけど、古人は「熱と香り」を感じたってのが、オモシロいね。


金属の光沢を一時間ばかり眺めていたら、だんだんそのカッコよさがジクジクとカラダに染み込んできた。
●シモキタザワにはシルバーアクセサリーのお店があって、ドクロなどのゴツい意匠を施したブレスレットやリングが一杯ある。アレを連想してしまった。美しい金属を身につける……今の若者がシルバーアクセを身につけるように、昔のサムライも美しい金属を身にまとうのは男伊達を上げるモンだと思ってたに違いない。ボクがもし武士だったら、長さは72センチくらいで細身のヤツがイイ…、そしてツバやサヤや握りの部分に渋いアクセサリーを……なんて夢想する。
●いや、値が張るからな、もしかしたら高級腕時計の感覚かな? 刀をサヤから出して眺めるのって、オメガのスピードマスターをショーウィンドーで眺めたり、お店の人に頼んで腕にはめさせてもらったりって感覚と同じだわ。オトコのコとして、きっと同じドキドキだよ。


「刀剣博物館」HP。マニアックな日本刀に関するウンチクが満載で勉強になる。
 http://www.touken.or.jp/
●アクセス:渋谷区代々木4-25-10 小田急線参宮橋駅徒歩10分
      駅改札を左に曲がり、マクドナルドの角を右に曲がる。あとは説明不能。
      ちなみに、お客は外人さんの方が多かった。



●この博物館の近所に、これまた品のイイカフェを見つけた。

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「隆龍 RYU-RYU」
●場所:渋谷区代々木4ー20ー10 「刀剣博物館」に行く途中にあります。
●ここは、単純なカフェではなく、「苔盆栽」というカテゴリーの小さなカワイらしい盆栽を展示販売しているお店。その余芸でコーヒーを出しているって感覚。苔のボールに小さな草花が生えてる。器もちゃんとした作家さんが作ったモノで、凝っててとてもチャーミング。

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●紅葉がちょこんと生えてるモノもあったけど、タネから2年かけて育てたという話。うわー手間かかってるわ。「植物を消耗品と思っている方や育てる気持ちのない方にはお売りいたしません」とのお断り書きもアリ。納得。静かな癒しスポットでした。

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