日曜日の朝、息子ノマドは早起きだ。
●7時からはじまるアニメ「正面突破バシン」をいち早く見たいからだ。カードゲーム「バトルスピリッツ」に100%乗っかったアニメで、そろそろ物語はクライマックスに差し掛かっている。ボク自身は見てないから分からんけど、因縁のラスボスの正体が徐々に明らかになり、最後の対決まであと一歩みたいだ。
おいおい、最終回かよ!これまで集めてきた大量のカードはムダになるのか?と親のボクは不安になったのだが、今月号の「ケロケロエース」の特集記事によると、新しいシリーズが始まるらしい。もっと対象年齢層を上に設定したアニメにモデルチェンジされる。多分、仕掛け側のバンダイは、ポケモンに夢中な小学校低学年を購買対象と見積もっていたのだが、実際にバトスピキャンペーンを転がし始めたら、メインのゲームプレイヤー層が小学校高学年&中学生だったと分かってしまったらしい。ハッキリ言ってこのゲームのシステムは複雑だよ。ノマドの年齢じゃ本来ややこしすぎる、だからココに来て路線変更だ。
●実際、ノマド以外でこのゲームが好きだという子は、みんな年長のお兄ちゃんがいる子ばかりだ。先日ウチに遊びに来てくれたクラスメートのタクくんは、お兄ちゃんの影響で遊び始めたらしい。ノマドは滅多に見つからない同好の仲間の出現が嬉しかったらしく、お互いのカードの交換会をしてた。タクくんは、ビックリするほど強力なカードをノマドにくれた。「ノマド、こんなスゴいカードもらっちゃってダイジョウブなのか?ノマドは代わりにナニを上げたんだ?」「えーと、翼竜アイバーンとか。」そんな弱いのでイイのか!最初期の最弱カードじゃないか!「はじめてみたってタクくんいってた」……タクくん、おそらくゲームを始めたのが遅かったから、アニメでよく登場する基本的なカードが珍しかったのかな?

●ノマドはノマドで、最新カードを入荷した。それに対抗してボクもニューカードを仕入れたけどね。
バトルスピリッツ 構築済みデッキ 白銀の機神
「構築済みデッキ・白銀の機神」ノマドがおこづかいで買ったヤツ。

バトルスピリッツ 構築済みデッキ 紅蓮の稲妻
「構築済みデッキ・紅蓮の稲妻」ボクが大人げなく対抗して買い足したヤツ。


●週末はたくさんバトルしました。親子で。タクくんがくれたカードが効いてて強い。マジでガチ、マジで五分。そしてボクがねじ伏せるとノマドマジで泣く。



なんか今日は日本語ラップに浸ってたい。
●この前、日本のニューウェーブの歴史が、日本のヒップホップの歴史にまで直結している事がわかって(ソレに絡んだ記事はこちら)、その後のヒップホップの流れも辿ってみたくなった。

スチャダラパー「CAN YOU COLABORATE ?」
スチャダラパー「CAN YOU COLABORATE ?」
スチャダラパーは1988年、日本初のクラブミュージックレーベル MAJOR FORCE からキャリアを起こして、20年以上の長きに渡ってシーンをサヴァイブしてきたユニットだ。デビュー同時期に NY で起こったニュースクール・ムーブメントと連動して、ハードコア路線から逸脱する「おもろラップ」のスタイルを確立。時代によってはそれがアゲインストだったりもしたが、日本にヒップホップを普及させる大きな推進力になった。ボーズのラップは、コミカルな言葉選びや飄々としたフロウで聞き間違いが出来ないほどの個性を放ってるし、ビートメイカー・シンコのトラックは今だ重要な存在感を持ってると思う。
●そんでこのアルバムは全三昧組。CD二枚は様々なコラボレーションで生まれた楽曲がいっぱい。電気GROOVE から RIP SLYME、ALFA、NIGO、CORNELIUS、アルファ、かせきさいだぁー、TSUTCHIE、グループ魂などなどなどとタッグを組む。日本版マスロックバンド SLY MONGOOSE との合体ユニット THE HALLO WORKS 「今夜はブギーバック」をリメイクとかもする。

●三枚目のDVDはスチャのプロモビデオ集。本人コメンタリーがメチャオモシロい。最初期のディレクターはソラミミスト安齋肇さん。カメオ出演が実は豪華でした。ワハハ本舗のウメちゃん/佐藤さん、ASA-CHANG(巡礼)、高木完、ECD、ラッキー池田などなど……。小沢健二までチラッと写ってた。コレはコメンタリー聞かないと絶対にわかんなかった。結局全員トモダチなんだけど。
●そして東芝EMI時代はあのタケイグッドマンが監督として登場。もう手作り感とゲリラ感が革命的に満載ボーズ「これ許可とってねえし(笑)怒られたら、卒業制作なんです~学生なんです、って言う」。そう、タケイグッドマンは90年代の映像作家としてボクには(多分ボクの学生時代の仲間にとっても)ドでかいインパクトを与えた人物だ。この人は8ミリフィルム以降、AVID、FINAL CUT 編集以前の時代、とんちアイディアとMINI-DVデジカム(または HI-8!みんな知ってる?)、それとビデオミキサーみたいなモンでビックリするようなシロモノを作ってた人。マネしようと思えばマネできるかもしれないロウテクな演出にスゴく親近感が持てて、でも秀逸な一発アイディア芸のオドロキ&細かさにビビる仕掛け。
●そのタケイ演出最高潮がシングル「大人になっても」。メンバーの写真を大量に撮影し、ソレを切り抜いて10センチ大の人形にする。その人形を、自宅リビングに組み込んだオモシログッズの山の中で、パラパラコマ撮りの要領で動かすという。切り抜き作業はタケイ氏の奥さんからボーズの弟まで稼働した家内制手工業スタイル。「やれるかどうか、と考える前にまず始めるって感覚」ボース
「アクアフレッシュ」のワンカット全編長回しもワザアリ。江ノ島水族館を借り切って、三人が水槽の間を跳ね回るプロモだが、実は微妙にカメラの撮影スピードを早くしたり遅くしたりしている。画面的には早回しになったりスローになったりするのね。しかし、撮影スピードが変わってるのにラップの口の動きがズレナイ。ということは、撮影スピードの変化に合わせてラップのスピードも変えないとイケナイのです。だから三人は突然2倍速になったりゆっくりになったりする音楽に合わせて現場でラップしているという。……芸が細かい!


TOKYO NO.1 SOUL SET「TRIPLE BARREL」

TOKYO NO.1 SOUL SET「TRIPLE BARREL」1995年
スチャダラパーは、自分たちのクルーを組織し、それを「LB NATION」と呼んだ。AFRIKKA BANBAATAA ZULU NATION DE LA SOUL NATIVE TONGUE がイメージにあったに違いない。「LB」には、ナオヒロック&スズキスムース、クボタタケシ率いるキミドリ、大阪出身の脱線3、千葉の四街道ネイチャー、ギターバンド・ホフディラン、文学ラッパー・かせきさいだぁーなどが所属してた。ヒップホップというジャンルからも余裕で逸脱するカオ揃えだ。タケイグッドマンもかつては THE CARTOONS というユニットで活動していたが、演奏以外になぜかコントをやってしまうヘンな連中として知られていた。
TOKYO NO.1 SOUL SET はそんな「LB NATION」の重要メンバーだった。そんでヒップホップから自由に逸脱する感覚も実に「LB」的だった。ボーカリスト BIKKE のリリックはひどく抽象的な文章で、音楽に合わせて棒読みしてるように聴こえる。バンドには渡辺俊美というギタリストがいて、サビを朗々と歌い上げ、ライブではかなり大胆にギターを鳴らした。トラックメイカーの川辺ヒロシだけは、現役のクラブDJであり、レアグルーヴを繋ぎ合わせたループを見事に組み上げてた、ココだけがヒップホップに見えたなあ。「MORE BIG PARTY」という曲のサビが THE KLF「THE JUSTIFIED AND ANCIENT (ALL BOUND FOR MU MU LAND)」のまんまパクリ替えウタだったのは、ご愛嬌なのか当時誰も指摘してなかったような気がする。
●つまりはド直球の「渋谷系」。しかしなぜか所属レーベルは、あのロックギタリスト CHAR さんのハードロック系レーベル「江戸屋レコード」。学生時代に仲間がイベント出演交渉に電話をかけたら、レーベルの人に「そんなアーティストはウチにいません!」とスゴい剣幕で怒鳴られたと言ってた。コレは彼らにまつわる笑える個人的思い出。


TOKYO NO.1 SOUL SET「真昼の完全試合」

TOKYO NO.1 SOUL SET「真昼の完全試合」1995年
●こちらはDVDのプロモーションビデオ集だ。元はVHSでリリースされたモンがDVDで再発されたモノ。VHSでは持ってたんだけど、月日が流れるままに劣化するのを食い止められないのが心配だったが、たまたま知人がコレをボクにくれた。ラッキー!その知人曰く「たまたま入手しちゃったんだけど、コレを面白がる人が unimogroove さん以外に思いつかなかった」。ボクは希少動物か?
●さて、スチャダラパーのビデオを多く手掛けたタケイグッドマン氏が、ココでは全編監督として活躍している。ココでの重要なオモシロさは、映像に音楽をしっかりシンクロさせようとする部分だ。TOKYO NO.1 SOUL SET のプロモでは、トラックのループ感により絡まる編集を施してる。一小節ごとに何回も何回も短いカットをループさせ、半ば陶酔感さえ感じさせる。よりデジカム度が上がって、よりリズムシンクロ主義が上がってる。ライブビデオでは、LB の連中が拠点としてたシモキタザワのライブハウス・スリッツ(現・CLUB Q)での撮影が出て来て、当時を知る者としては懐かしい。


さて、1995年は日本のヒップホップにとって重要な年だ。この年に世代交替が一気に進む。

TOKYO NO.1 SOUL SET の代表曲に「黄昏'95~太陽の季節」というのがある。シングルにもなったし前述の「TRIPLE BARREL」の一曲目にも収録されてる。この曲のプロモ、DVDのエンドロールみたいな位置づけで、画面イッパイにクレジットが流れてくる。まるでそれが青春映画のエンドシーンみたいだった。スチャや彼らが牽引してきた、言わば「文化系~インドア系」ヒップホップの時代が「黄昏」を迎えたのを象徴していたようにも思える。
スチャダラパーにも名曲があって、「サマージャム '95」ってのがある。1995年の「5TH WHEEL 2 THE COACH」というアルバムに収録されてる。このアルバムは「おもろラップ」路線におけるスチャダラパーの最高傑作だと思う。「サマージャム '95」は徹底した意味なし余談レベルトークを、夏の火照りにポワーッとしながらダラダラ展開していく曲。メッセージもレンアイも登場しない。ダラダラ。ダラダラがゆえにとってもピース。「みんなそそのかされちまう。ついつい流されちまう。結局アツさでまいっちまう。夏のせい?」メロウで甘く脱力なトラックが晩夏の気配も漂わせて、能天気なリリックがメランコリックにも聴こえる。ココにも一種の「黄昏」気分がある。
●ジェイヒップホップがお茶の間に一気に浸透した EAST END × YURI のブレイク(「DA.YO.NE」「MAICCA~まいっか」)も1994年&1995年の出来事だ。そこから日本のヒップホップは大きく舵を切るコトになる。

「5TH WHEEL 2 THE COACH」

(「5TH WHEEL 2 THE COACH」 英語の慣用句で、意味は「蛇足」。とてもスチャらしい。)


時代は、「文化系~オタク系」から「不良系~体育会系」へ。
●1995年というタイミングでジェイヒップホップの新世代が台頭し始めた。アメリカのヒップホップの影響を直球で受けた、もっとハードコアでワイルドな若い世代が出現したのだ。1995年には、KING GHDDRA、MICROPHONE PAGER がアルバムをドロップ。RHYMESTER も頭角を現す。翌1996年には、BUDDHA BRAND、SHAKKAZOMBIE がメジャーデビュー。ECD 主催による伝説的イベント「さんぴんCAMP」日比谷野音で開催される。時代はガラリと入れ替わり、一気にハードコアヒップホップが時流を掴むのである。そんでこのヘンのハナシはまた別の時に。



●ちょっとヨコミチにそれるけど、ちょっとした珍品。小室哲哉製ヒップホップ。


MOON TRAP : MARC PANTHER「LUNA XXX THE EARTH」

MOON TRAP / MARC PANTHER「LUNA XXX THE EARTH」1995年
●これはフジテレビが仕掛けたオリジナルミュージカル「月が地球にKISSをする」のためのサウンドトラックというシロモノ。プロデュースが小室哲哉。シンセのプログラムや MARC PANTHER の楽曲の作曲を手掛けている。MOON TRAP ってのはこの舞台のキャストで、ヒップホップのスキル(ラップ/ボーカル/ダンス)でオーディションされた連中。フジテレビのプロデューサーさんがロックミュージカル「HAIR」1969年を意識して、ヒップホップでミュージカルを作りたいとライナーノーツで熱く語ってる。その段階でもうイタい気配が。オッサンが訳知り顔で若者文化にカオを突っ込んでるダメな感じ。この人、作詞までに関わってる。
●さて、小室哲哉は海外のミュージックシーンをうまく日本市場に移植して数々のヒットを飛ばして来た。1995年は彼の音楽の全盛期。しかし!彼はヒップホップだけはモノにできなかった。実はこのCDはリアルタイムで聴いてたんだけど、その段階でもうイケテナイと思った。ラップはまあこの際はおいといて、トラックが死ぬほどオモシロくないんですよ。サンプルを全く使ってないのはこの時代としてはあり得ないほど味気なく聴こえたし、サンプル時代が終わった今に聴いても、無味乾燥な印象でしかない。唯一の救いはキックが強いコト。うーん、ヒップホップのトラックに血と魂を通わせるのは、特別なファンクネスが必要らしい。そしてコムロにはそれがない。
globe 結成はこの次の年だが、MARC PANTHER のサムさはこの頃から立派に健在です。

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