音楽の聴き方の世代格差、ってトコロから今日のおハナシは出発。
●結構前の「R-25」で、石田衣良がコラムでこんなコトを言ってた。「オーディオを真空管アンプに替えたら、音楽を聴くのが楽しくなった、今は昔聴いてた音楽を聴き直すのが楽しい」とな。今読んでる三浦展「下流社会」の著者)も、「LPじゃないと癒し効果はナイ、キレる若者が増えたのはCDのせいだ」とまで書いている。
●このテの「アナログ神秘主義」ってのは、ボクには正直ピンとこない…。ボクはアナログもCDも音楽ファイルも聴くし、再生機器もBOSEスピーカー&アンプから、iPod、フツウのCDラジカセに、防水お風呂CDプレイヤーと四種類を使い分けてる。お風呂スピーカーはかなりショボイ装置だが、お風呂エコーがかかってワリとオツなもんである。要するに、聴く音楽の種類によって向き不向きのあるってコトだと思ってる。「オリジナル盤主義」「デジタルリマスター再発主義」も(ましてや「紙ジャケ主義」など!)、より高額なオカネをボクに使わせようと言う売り手の仕掛けだと思ってたり。エイベックス「DVD特典テンコモリ主義」の方が真っ当な付加価値だよ。コレはボクより年上の音楽ファンの人に対する違和感。

でもさ、最近衝撃を受けたのは、ボクより若い人の音楽の聴き方に対する違和感。
携帯音楽プレイヤーに接続する小型スピーカーを見せてもらったのよね。おサルさんのヌイグルミのカタチで、音楽を鳴らすと一緒におサルが踊り出すのよ。シャカシャカ鳴って、クネクネ踊る。……いやカワイいよ、おサルはさ。でもさ、ミンナはこの音でイイの?シャカシャカじゃないか。えっ!イイの?!マジで?コレしかスピーカー持ってないの?!PCからイヤホンで聴くからいらないって?あっそう!オジさんはそんな意見にちょっとショックだよ。

おさるのスピーカー(踊るおサルのスピーカー。)

●ちなみに、コレ、3990円。オーディオにこの程度しかカネかけないなら、3000円のCDアルバムは買わないよな…音楽業界の未来は暗い…納得。23歳の従姉妹のコは「アルバム買っても好きな曲はイッコか二コ、着うたフルで十分」って言うのさ。でもさ、着うたフルって300円くらいして、通信料別でしょ、ツタヤでアルバムレンタルするのと比べると格段に割高じゃん…あ、レンタル屋行くのも面倒なのか。


一方で、共通する言語がナイわけではナイ。FOO FIGHTERS。
●職場の若者(25歳、ボクより10年以上年下)と音楽トークしてた。カレは高校球児のクセしてパンクキッズで、坊主頭に革ジャンでライブハウスに通う少年だったそうな。で、ポッケにMDレコーダーを仕込んでライブの様子をブート録音するようなヤツだったという。だってダイブとかモッシュとかするんだろ?それで録れるの?「コレが意外と録れてるんですよ。その音をお昼の校内放送にかけさせたら、過激な歌詞ばっかだったんでセンセイに呼び出しクライましたけど」へ~。
●そんで、ナゼか NIRVANA のハナシになったわけさ。で、カレが言う。「unimogrooveさん、FOO FIGHTERS も聴きます?」うん聴くよ。「あのバンドの人、NIRVANA のドラムだったんですってね!オレ、後から知ったんですよ。FOO FIGHTERS も NIRVANA も大好きだったのに、同じヤツがやってたなんて!ビックリしましたよ!」うぉーそう来たか!ボクもありゃビックリしたんだよ、KURT COBAIN と一緒に殺伐としたロックをやってたヤツが、突然オレ楽器何でも演れるンですって突然言い出して、そこで作った音楽がメチャメチャ明るいロックで。オマエ芸風全然違うじゃんってさ。「unimogrooveさんから見るとそうなんですか!リアルタイムですもんね。オレは KURT が死んだ時からのアト聴きなんです」見方が時代/世代のウラオモテで違うんだけど、DAVE GROHL というミュージシャンが、NIRVANA FOO FIGHTERS という2つのバンドで全然違うキャラを見せてるってコトは共通認識。それがちょっとオモシロかった。

nirvanaのDAVE GROHL(右が DAVE GROHL。NIRVANA 時代)


だから今日は FOO FIGHTERS の音を聴いてる。

FOO FIGHTERS「FOO FIGHTERS」

FOO FIGHTERS「FOO FIGHTERS」1995年
コレが衝撃のアルバムだったんだよ。一曲目の「THIS IS A CALL」でぶっ飛ばされた。この陽性のロックはなんだ? 当時はグランジロックの時代、陰気で殺伐としたロックが当たり前の雰囲気が支配してた。そこにこの前向きに力強いメロディと骨太のビートはある意味異質だったし、とにかくコレがあの NIRVANA のメンバーが鳴らしてる音楽だってコトに誰もが驚いてた。負のオーラ満載のまま地獄の業火に焼かれた NIRVANA の燃えカスから、こんな見事な生命力が立ちのぼろうとは…まだ KURT の死がシーンに大きな影を落としてた時期、DAVE GROHL の復活劇は不死鳥のように鮮やかだった。
●この段階の FOO FIGHTERS DAVE のソロプロジェクトで、ほとんど一人で全部の楽器を演奏している。アレコレ調べると、NIRVANA 以後の DAVE は身の振りように悩んでいたようだ。シアトルグランジの先輩 MELVINS からも仕事をしようと声がかかってたし、TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS の常駐ドラマーにならないかとも誘われてたらしい。「残りの人生全てを、オレは他のバンドの一ドラマーとして過ごしていたかも知れない。しかし、オレは誰も期待してないようなコトをしたいと思った。曲を書くのもウタを歌おうとするのも楽しい。そこにオレをヘコますモノは誰もいない」ここから奇跡の大逆転が始まったのだ。

FOO FIGHTERS「THE COLOUR AND THE SHAPE」

FOO FIGHTERS「THE COLOUR AND THE SHAPE」1997年
●この二枚目前後でバンドの体裁が整ったみたいだ。LA パンクの伝説的バンド THE GERMS に所属してたギタリスト、PAT SMEAR が参加したってのが話題になった。末期 NIRVANA のサポートに彼が関わってたのが縁らしい。立派なパンクである彼は、その後バンドを出たり入ったりと落ち着きがないような立場になるんだけど。
●好きな曲は「MONKEY WRENCH」。高圧力なパワーポップで王道ロック勝負をかます。そして「MY HERO」。ダイナミックに歌い上げるサビがココロを震わせるミドルチューン。…着うた世代のコトを批判出来ないな、ボクはこのバンドに関してはアルバム単位というより曲単位で好き嫌いがある。引っかからない曲は引っかからない。

FOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」

FOO FIGHTERS「IN YOUR HONOR」2005年
●アルバム二枚をスルーして、久しぶりに聴いたのは2枚組の大作。ここで引っかかったのは「BEST OF YOU」だよ。とにかくプロモが印象的で。DAVE GROHL の顔面アップを効果的に使い、マイクをしゃぶるように歌うヤツの克明な表情を映し続けるアプローチ。「IS SOMEONE GETTING THE BEST, THE BEST, THE BEST, THE BEST OF YOU ?」ザベストベストベストベストオブユー!ベスト連呼!テンション上がります。この曲一つに引っかかって…でも二枚組は少し分量が多過ぎるかな。
●後半ディスク2はアコースティックセットをメインに据えた、落ち着いた楽曲だけで構成してます。レイドバックしつつもウタゴコロに温もりを感じさせる気分が NIRVANA のアンプラグドライブを連想させる。よく見ると、NORAH JONES までが参加してるんだ…。久しぶりに聴いたら、ちょっと楽しかった。この時期にアコースティックツアーも展開したらしく、芸風の幅を膨らますキッカケになった模様。

FOO FIGHTERS「ECHOES, SILENCE, PATIENCE  GRACE」

FOO FIGHTERS「ECHOES, SILENCE, PATIENCE & GRACE」2007年
●またアルバムを一枚スルーして、今の所最後のアルバムになってる作品がコレ。とか言って、ゲットしておきながらほとんど聴いてなかった。久しぶりに聴くなあ。王道一直線のポップパンクアプローチから、「IN YOUR HONOR」のロック/アコースティック二面体制を経て、1曲の中でアコギスタイルからラウドロックへ展開するメリハリある曲作りに取り組む姿勢が読み取れる。特に後半ね。円熟する大人のロックって何なの?って問いが見えるかも。前半にあるシングル曲などはシンプルに高機能なポップロックですよ。「THE PRETENDER」&「LONG ROAD TO RUIN」
●それと「BALLAD OF BEACONFIELD MINER」という曲にはイイ話が。短いアコギのインスト曲なんだけどね。…2006年、オーストラリア・タスマニア島ベーコンフィールド炭坑ってトコロで落盤事故があったんだって。その時生き埋めになってしまった二人の炭坑夫を救う為にレスキューが稼働。五日間にわたる救出作業の中、彼らが閉じ込められてる場所の12m手前まで接近。直径9センチの穴を掘り抜いて、水、食糧、通信機を炭坑夫たちに届けるコトが出来た。すると、彼らが穴の底からリクエスト。「iPod に FOO FIGHTERS の曲を入れてよこしてくれないか」。家族の手紙と共に彼らは音楽を受け取ったという。コレを聴いた DAVE GROHL 本人はすぐさま現場にファックス。「オレはツアーで移動中だけど、ココロはキミらと一緒だ。キミらが無事に帰ったら、オレのショーのチケットと冷たいビールをおごりたい。どうだい?」その後ホントにシドニー公演で炭坑夫の1人と DAVE は会い、ビールを酌み交わしたと言う。そんで、彼らに捧げるアコギ小品をアルバムに織り込んだわけだ。イイヤツだね。


FOO FIGHTERS の歴史を総括する巨大ライブ。

Foo Fighters Live at Wembley Stadium

DVD「FOO FIGHTERS - LIVE AT WEMBLEY STADIUM」2008年
●イギリス・ロンドンにある巨大アリーナ WEMBLEY STADIUM でライブをするのはアーティストにとっては実に感慨深いコトのようだ。2007年にオープンした9万人収容可能の巨大会場。ココでソロ公演をしたヤツはそんなに多くない。OASIS、U2、MADONNA、COLDPLAY など10アーティストほど。その中に FOO FIGHTERS も加わった。1997年から加わったドラマー TAYLOR HAWKINS がスゴく楽しそうに演奏する。彼のボーカル曲も披露されるしね。PAT SMAER も途中で登場。「こんな大観衆の前でヤルのは初めてだ」と気合い十分の DAVE。NIRVANA で一度テッペンをとった男が、もう一度テッペンをとった瞬間。 そんなライブの模様を収録。
●そして DAVE は感極まって、MCの途中で言葉を詰まらせちゃうのよね。ココ泣き所。「一応言っておく。ウェンブリーで演奏出来て…(涙)…本当に光栄だ。だからこのチャンスを生かしたい。そして結成以来の最高の夜にしたい。オマエら全員のため、8万6000人のバカ共に最高の夜を届けたいんだ。この特別なショーのために半年もの期間をかけて計画を練った。ここは特別な国だ。オマエらが今のオレたちを作り出した……だから特別ゲストを呼んだんだ!」
●ココでビックリ!ステージ左右から出てきたオッサン二人…は、JIMMY PAGE & JOHN PAUL JONES!英国音楽が生んだ伝説 LED ZEPPELIN のギター&ベースだ!楽器を構える二人の生ける伝説を迎えて、DAVE はドラムセットの前に座る。そしてドラマー TAYLOR がボーカルマイクを握った。そして…
DAVE が勢いよくドラムを叩く!LED ZEPPELIN の名曲「ROCK N' ROLL」のイントロだ。NIRVANA のトリオとしてドラムを叩いていた DAVE の姿がこの時スッとよみがえる…伝説のハードロックチューンを伝説の男たちとプレイしながら、NIRVANA という伝説も透けて見えるのだ。このサプライズは感動的だよ。 「今日はオレの人生で最高の日だ。このバンドの14年の歴史を讃えてくれ」伝説の男たちとの演奏を終えて、DAVE はそう言う。そしてラストソング「BEST OF YOU」を会場全員と合唱するのだ。
●この巨大ライブで燃え尽きてしまったのか、FOO FIGHTERS はこの後から活動休止状態になる。DAVE GROHL NIRVANA FOO FIGHTERS2つのバンドで伝説を作った。カレ自身も伝説の男になったのだ。そしてまた新しい伝説を作る為に戻ってくるのはいつの日か。

Dave-Grohl-Wembley.jpg(DAVE GROHL。WEMBLEY での勇姿)


●その他の NIRVANA 関係者の音源も。


HOLE「LIVE THROUGH THIS」

HOLE「LIVE THROUGH THIS」1994年
KURT COBAIN の奥さん COURTNEY LOVE のバンド、セカンドアルバム……彼女が世間に注目されたのは、やっぱりシンガーとしての成功ではなく「90年代のシド&ナンシー」としてのゴシップの対象になったからだと思う。KIM GORDON にプロデュースされたファーストがほとんど無視された上、KURT との結婚でプライヴェートが混乱する最中になんとか作り上げたアルバムが本作だったのに、発売日の一週間前に KURT が自殺。ドンピシャすぎるバッドタイミングと世界を駆け巡る衝撃の中でリリースされたこの作品を、あの当時誰が冷静に聴けただろう? ボクも正直リアルタイムではマトモな感覚で聴けなかった。ゴシップとドラッグに爛れきったボロボロのロックオンナが呻いてるだけと思った…ジャケすらが虚栄にまみれた気分を煽る。オマケに、この年にはバンドの女性ベーシスト KRISTEN PFAFF もオーバードーズで死んでるんだって。
●今冷静に聴けば…やっぱりウンザリする内容でドス黒い気持ちになる。彼女の音楽にウンザリするんじゃない、90年代という時代にウンザリするんだ。あの頃はバブル崩壊直後で時代そのものがウンザリした気分に包まれていたし、極端な露悪主義がロックの中に巣食ってた時代だったんだわ…ソレをクッキリと思い出させてくれる…あの時代のヤケクソ感覚が久しぶりに甦って、口の中が苦くなる。暗黒の90年代。COURTNEY の酒ヤケしたようなデストロイな声、ルーズなバンドサウンドや鬱々としたメロディ、そして悲しいほどのボロボロな告白を綴ったリリック。この退廃が90年代の正体だと思えば、KURT COBAIN は死ぬべくして死んだのかも知れないし、DAVE GROHL の華麗なる転身は本当に希有だった、と思える。

SWEET 75「SWEET 75」

SWEET 75「SWEET 75」1997年
●もう一人の NIRVANA、ベーシストの KRIST NOVOSELIC は一体ドコに行ったのか?KURT とは DAVE GROHL よりもズッと長い付き合いだった彼は、KURT の自殺にはかなり参ったはずだ…酒乱で知られた彼がバンドメイトの自殺の後は禁酒したって話もあるくらいだから。DAVE GROHL FOO FIGHTERS をバンドとして組織する中で彼を誘ったらしいが、KRIST はソレを断っている。
●代わりに自分で立ち上げたバンドが、この SWEET 75 だ。ココで登場するのはベネズエラ系の女性シンガー YVA LAS VEGAS 。落ち込む KRIST を友人が励まそうとして開いたサプライズパーティで彼女がウタを歌ったのがキッカケで知合い、結局バンド結成にいたる。スペイン語楽曲も歌う彼女はオルタナロックのシンガーにふさわしい貫禄がある…んだけど、なんか深刻にブサイクなんだよねコレどうしたらいい? 音楽はやはりこの時代特有のルーズなロック。やっぱスペイン語ってのは新味に聴こえるし、カントリーミュージックにも挑戦してるが、総じて凡庸な仕上がりってのが率直な印象かな。このバンドは本作だけしかリリースできず解散する。そして今、激安ワゴンを一生懸命探せばこのCDは100円でゲットできる。

YVA LAS VEGAS

(右が SWEET 75 のシンガー YVA LAS VEGAS。う~お世辞にもスウィートとは言えない。)


●過去に NIRVANA KURT COBAIN について書いた記事があります。ソチラもご参照に。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20081001.html


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