日本の古典音楽、「雅楽」のワークショップに参加してみた。
●シモキタザワは愉快な街なので、こんなワークショップがポワッと開かれる。今回は駒沢大学の学生さんがいくつかのワークショップを企画してくれたようだ。その中の一つに興味を引かれて、休日のボクは、日本の古典音楽について勉強する事にしたのでした。

神社でよく聴くじゃん。ぷぁーぷぁーぷぁー…、ってね。アレ。「雅楽」。
●なんで「雅楽」か? ボクは素朴に、「笙(しょう)」を見てみたかったのです。

笙(しょう)を吹く人

(「笙(しょう)」)

●ムカシ、チルアウト系のクラブイベントに遊びに行ったのを思い出したのです。ダンスフロアには沢山のベットマットが転がっており、お客はソコで寝っ転がって音楽を楽しむという仕掛け。まさしくチルアウト。
●そこでエレクトロニカなライブパフォーマンスがあったのです。ラップトップPCで電子音を鳴らす。コレはフツウだ。しかしソコに、なんと「笙(しょう)」のプレイヤーが乗っかって、ぷぁ~~っとあのサウンドを鳴らしたわけです。それはそれは絶妙な組み合わせでした。
●しかし、オモシロいのはソコだけじゃありません。「笙(しょう)」のプレイヤーさんは、演奏のスタンバイをするにあたって、なんか知らんけど、電熱器を使って楽器をセッセと温めているのです。楽器を熱で炙ってるって感じかな。?!アレ何してんの?スゲエ疑問。コレが長年気になって仕方なかった。そのナゾをきっとこのワークショップは解き明かしてくれるでしょう。

さてさて、音大の大学院生さんたちが「雅楽」の講義をしてくれました。
「雅楽」の楽譜を見せてくれたのです。コレもユニーク。

雅楽の楽譜

●これは「越殿楽(えてんらく)」という曲の楽譜。
●カタカナが登場するんだ…。「チラロルロタアルラアチラハテリレタアルラア」。全然イミ分かんない。その横には小さい漢字も書き込まれている。「六四エ五エ四六四」とか。むー。
●実は、コレは3つの楽器が演奏するべき音が指示されてるという。「笙」、「篳篥(ひちりき)」「龍笛(りゅうてき)」のスリーパート。「篳篥」が主旋律を担当。小ぶりのタテ笛だが、サックスやオーボエのようにアシで出来たリードを持つ。音域はひろくないが、予想以上にデカイ音が出る。「龍笛」はヨコ笛。フルートみたいな構えで鳴らすが、穴の一つ一つがデカイ。サイドラインを担当。カタカナ部分はこの2つの楽器がなぞるメロディを、漢字は押さえるべき指のカタチを示している(のかな?自信ないや)。
でも、実は楽譜で示されてる情報だけでは、楽曲を再現出来ないという。コレが西洋古典音楽とは違うトコロ。メロディの細かい部分は口述伝授によって継承される。演奏家は「唱歌(しょうが)」と呼ばれるウタを先生から直接教えてもらい、記憶しておかないといけない。具体的に言うと、「ちーらーろーるーろ、たーあーるらーあー」とカタカナをなぞって節回しを付けたウタ。「笙」「篳篥」「龍笛」の演奏家に限らず、琵琶や箏(こと)、打楽器奏者もこの「唱歌(しょうが)」を覚えないと演奏はできないらしく、ダンサーでさえもがコレを覚えるという。…オキナワ民謡の楽譜を見せてもらった時も、実に不思議な感じがしたモンだが(アレは原稿用紙みたいなモノに漢字がイッパイ書いてあったっけ)、それと同じ衝撃。音楽情報を記号化するのってタイヘンなコトなんだ。

沖縄民謡の楽譜(オキナワ民謡の楽譜。ご参考までに)

話がズレタ。「笙」だよ。
「笙」は伴奏楽器。細かいメロディは奏でない。全部で17本の竹を束ねて楽器は出来ており、その根本に1ミリほどの穴が空いてて、ソコを塞ぐ塞がないで出す音が決まる。うわーそんな所に穴が空いてたなんて気づかなかった…。この記事の冒頭に貼った写真を見て下さい。竹の一本一本にちいさい穴が見えるでしょ。楽器の構え方も、その穴を塞ぐカタチで両手が添えられてるワケだ。
●黒い部分の中には、17本の竹それぞれに繋がってるリードが仕込まれている。この意味では、ハーモニカに似た構造になってるそうだ。へー!言われてみると、あの「ぷぁーー」って音は、ハーモニカに似てるようにも思えてくる。へー!
●そんでですね、このリードが「ろう」で竹と繋がっている。この「ろう」をやわらかくして、ウマくリードが振動できるようにするために、楽器を電熱器で温めるのだそうだ。へー!へー!楽器の中は水分に弱いので、それを飛ばす為にも温める必要があるという。ちなみに、電熱器で炙るのはあくまで邪道で、本式では火鉢と炭で温めるんですって。
●実際にこのワークショップで「笙」を担当してた女性も、講義が始まる前から手元に小さな電熱器を置いて、楽器を温めてた。講義のあと、思わず聞いちゃった。「ソレってどのくらい温めるんですか?」「えー、大体、人肌程度ですね」そして触らせてもらっちゃった!いいんですか?ダイジョウブですか?…あ、でももう温かくはないな…。冷たくもないけど。温め過ぎると「ろう」が溶け過ぎて楽器がダメになっちゃうんですって。あーマジでベンキョウになったわー。
●さらに豆知識も教えてもらったんです。17本の竹があるのに、そのうちの2本は穴が空いてなくて、最初から音が出ないんですって。なんでそんな「なんちゃって」なパーツがついてるんですか?「その部分の音が、滅多に使われないモノだったので、いつの時代かで省略されちゃったんです。「笙」の音には全部に名前がついているのですが、その使われなかった音の名前が「ヤ」「ボ」。コレが「野暮」という言葉の語源になったんです」うわー、ナイスなウンチクまで出てきたわ。

もちろん、最後には、楽譜で紹介された「越殿楽」の演奏が。
●ワークショップ会場は狭い雑居ビルの一室、三人の演奏はソレに釣り合わないほどのデカい音量でぶっちゃけボクはビックリした。ボクの背後でおとなしくお話を聞いてた幼稚園児のオンナノコは、彼女の人生の数百倍の年月をサヴァイブしてきた楽曲のラウドな迫力に気圧されて、完全に怯えてしまっていた。隣に座ってるおバアちゃんにすがってた、「ウルサいよ~(涙)」と言いながら。

講義後、大学院生の皆さんに、よけいなコトも聞いちゃったよ。
●皆さんみたいに、こういう「雅楽」を勉強される方は、将来どういう場面でコレを演奏するんです?「イロイロな所に『雅楽会』というのがありまして、ソコで演奏するコトはあります……でも、あくまで副業というか、コレを専門にしていくのはナカナカ…」ああ、じゃあ神社に就職しますってのじゃないんですね。「よっぽどの神社じゃないと…伊勢神宮とか」国内最大手ですね。それじゃプロの演奏家ってのはいないんですか。「そしたら宮内庁です」宮内庁!ソコまでイっちゃいますか!一気に本丸!そっか、東儀秀樹さんも宮内庁出身でしたね。
●さらに聞いちゃいますけど、皆さん方の動機付けって…?音大に進んで、なんでこの楽器の勉強をなさってるんです?「コレは大学の授業の中に組み込まれてまして…「雅楽」の中でナニかを選べ、というコトでコレを演奏してるので…」あ、じゃあ、皆さん、フツウの西洋クラシック楽器を本線で勉強されてて、その上でコレもやってるってコト?ああ、なるほど、やっぱコレだけってのはナカナカアレですよねー。ちょっとニッチすぎますよね。

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