フジ月9ドラマ「月の恋人」ってアリ?ナシ?
●むー。どうなのかな?個人的には乗れなかった…。でもキムタクだし、後ろのスマスマは生放送特別編だったし、フジテレビは超気合い入れてる。ヒットするのかな?
●ボクが気になったのは、主題歌が久保田利伸だってコトだ。スマスマ生放送に出演したクボタさん、テレビで見るのはなんかスゴく久しぶりだったけど、本人的にも浮かれてるのかハイテンションでした。「LALALA LOVE SONG を上回る曲を書いてくれって言われた」とのオハナシだそうで。まだあの新曲の評価はできない。

しかし実は、ボクの中で今、久保田利伸が注目なんです。以下3点において。

1、久保田利伸は、GROOVE である。
2、久保田利伸は、ニュージャックスウィングである。
3、久保田利伸は、ヒップホップソウル、ネオソウルである。

●またムダに長い話です。しかもイキナリ脱線します。



「GROOVE」って日本語に訳すとナンていうんだ?
●実家の父親に質問された。さて皆さん。還暦オーバーのオジイサンにこの言葉をどう説明すべきでしょうか?

●父親いわく、ナニやら知合いがバンドを結成したらしい。そのバンド名が「WATERGROOVE」という。ソコで当事者に聞いたと言う。「GROOVE」ってのはナンなのか? バンドマンさんたちは「日本語で言い換えるのは難しいですねえ…ノリがイイというかなんというか…」父親は納得がいかないらしい。自分たちのバンドの名前なのに説明出来ないなんて。…「で、結局ナンなんだ?」とボクに聞く。

ボクは「GROOVE」という言葉を聞くと、久保田利伸を連想する。


久保田利伸「GROOVIN」

久保田利伸「GROOVIN'」1987年
●コレは、久保田利伸のセカンドアルバム。リアルタイムで、つまり中学一年生の時に買いました。それこそ人生で二番目に買ったCDという存在。CDというメディアそのものが市場に普及を始めたばかりの時期でした。音楽の内容というよりは、CDというメディアが欲しかった、という動機の方が強かったのを覚えています。
●で、中学1年生ですから、エイゴの意味がわからないのですよ。タイトルから意味が分からない。「ナニ?この GROOVING ってコトバ?」そこで生まれて初めて買った英和辞典(←だって中1だし)を早速めくってみた訳です。素朴な好奇心です。

●ボクは物持ちが異常にイイ所があって、この中1の時に買った英和辞典「新コンサイス英和辞典第二版」を後生大事に今も手元に持って使ってます。当時ボクが読んだ訳をそのまま引用してみます。

「groove[gru:v]n. 1.溝(みぞ)〔金属、木材の表面、レコードなどの〕 2.わだち|慣例、おきまり 3.《俗》’いかす’もの〔こと〕
 ー vt. 1.に溝を彫る;溝を作る 2.《俗》:で〔に〕わくわくする;をわくわくさせる, 'しびれさせる'.
 ー vi. 1.《俗》:わくわくする;'しびれる', 楽しむ 2.《俗》:〔と〕仲よくやる, 気が合う,(with)」

●中1だったボクはビビりました。「溝(みぞ)!エイゴでは、溝とわくわくが同じコトバなのか!」このシックリこない違和感。「溝とわくわく」の間にある理解し難い関係性。ナニゲに衝撃でした。この瞬間「GROOVE」という謎の単語はボクの脳みそにバチッと強く焼き付いたのでした。
「溝とわくわく」の関係を感覚的に納得出来るようになったのは、12インチのアナログで音楽を聴くようになった頃でした。1990年代は完全にCDの時代でしたが、最新のダンスミュージックはアナログレコードでちっちゃく流通しておりました。渋谷の小さいレコ屋さんやクラブで遊ぶようになったボクは、レコードがぐるぐるまわる様子と「わくわく」の感覚が直結してるコトに、ふと気づいてしまいました。「つまりは、GROOVE はぐるぐるじゃないか!」レコードの溝から弾き出されるファットなビートとファンキーなベース。コレが「GROOVE」ってコトだな!12インチはフツウのLPより盤が厚く溝も深い。手に取ると重さを感じるし、盤面をヨク見れば、規則的なビートを反映して、渦模様のようなテカリの濃淡が出来てるのが分かる。おー「GROOVE」が見える。「溝=わくわく」が見える。「つまりは、GROOVE は、溝であり、わくわくであり、結果としてぐるぐるじゃないか!」
●ということで、ボクは「GROOVE」の訳語は「ぐるぐるしてる」コトと答えるのです。



そんで、そんな「GROOVE」な久保田利伸の音楽へ。
●たまたま、久保田利伸の過去音源をまとめて聴く場面があったのです。知人がCDをドサッとくれました。「いらないから」って。ボクも最初はクボタ自身には特に興味ナシでした。わざわざコレに引っかかったのは、これが「BLU-SPEC CD」だったコトです。かつてアルバム「GROOVIN'」に引っかかったのが「CD」だったのと同じような動機だな。
「BLU-SPEC CD」ってナンだよ?ふむふむ「BLU-RAY DISC の素材と製造技術を応用して開発した高品質CDです。~ BLUE LASER DIODE(ブルーレーザーダイオード)カッティングによる極微細加工技術と、BLU-RAY DISC用に開発された高分子ポリカーボネート採用により、収録された原音をより忠実に再生致します」。あんまり意味わかんね。見た目は完璧にフツウのCDだし。CDが青いのかな?とマジで思ってたのに。
●で、聴く。

久保田利伸「THE BADDEST」

久保田利伸「THE BADDEST」1986~1989年

久保田利伸「THE BADDEST II」

久保田利伸「THE BADDEST II」1990~1993年

久保田利伸「THE BADDEST III」

久保田利伸「THE BADDEST III」 1994~2002年
クボタのベスト盤シリーズ「THE BADDEST」が1&2&3と揃いました。「いらない」と言って3枚組でポンとくれた知人に感謝。
●……むー。かつてもこんな音だったのか?それとも BLU-SPEC のチカラか? 第一印象では、ベースがクッキリしてて、リムショットもキックもスゴくヌケがイイ。アレ?久保田利伸の音楽ってこんなだったっけ?ワリと楽しいんだけど。


で、ふと思ったこと。…コレってニュージャックスウィングに似てないか?

「THE BADDEST」に収録されてる80年代のクボタさんの代表曲を並べてみましょう。「TIME シャワーに射たれて」「流星のサドル」「YOU WERE MINE」「GODDESS~新しい女神~」「PSYCHIC BEAT」…。いずれもキレのいいスピード感覚で疾走するスタイルで、タイトでジャストなスネアがパンパン鳴りまくる中でチョッパーベースがブンブン唸ってます。楽曲によっちゃ「ラップのようなもの」までやってます。あら、コレって88年頃に TEDDY RILEY が自分のグループ GUY で提案したサウンド、ニュージャックスウィングにシンクロしてるんじゃないの?そう素朴に思ったのでした。TEDDY RILEY のトラックは、同時代のR&Bに比べてうんと軽く早かった印象が。グラウンドビートのハネル感じが思いっきり加速されたアクセントが特徴的で、MICHAEL JACKSON までが採用したスタイルですわ。それに似てるクボタさんは。今聴くとね。
●80年代中盤~後半当時の日本は、R&B的な音楽にどれだけ理解があったのかな?AKB48 の元型おニャン子クラブが一世風靡してたアイドル全盛期だわな。バンドブーム前夜でもあるから、ロックですら浸透しきってなかったかも。ソコで直球R&B/ソウル路線は難易度が高かったかも。すると日本語ポップスとして馴染みやすい高速テンポの方がハマりやすい。クボタさんがニュージャックスウィングを参照したというよりは、たまたま似てしまった、というのがボクのなんとなくの予想です。

さらに聴き進めてみると、ヒップホップソウルに確信的になってる場面がある。

●90年代前半のキャリアをまとめた「THE BADDEST II」の最後の曲に注目。「FOREVER YOURS」という曲があります。知らないですよね、全然ヒットしてません。ポイントはフィーチャリングシンガーです。ALYSON WILLIAMS という NY の女性シンガーとデュエットをしてるんですね。この人、世界で初めてのヒップホップソウルをドロップしたコトで、ごく一部で有名でございます。1989年、DEF JAM からリリースした「RAW」というアルバムが重要。確かにヒップホップのトラックの上で歌ってる、って程度の原始的なスタイルですが。オマケに彼女自身にヒップホップ的自覚があったかどうかも微妙で、セカンドでは全然ヒップホップしてません。ただのブラックコンテンポラリーです。ただし、クボタさんは彼女がナニモノだか分かってデュエットのオファーをしている訳です。93年にNYへ活動の拠点を移すクボタさんですから、この時代はかなり同時代のアメリカのシーンに意識的だったはずです。それがココに証明されます。…しかしボク的には ALYSON とやった事実だけが重要でして、楽曲としてはどーでもいいです。経年劣化がキツいです。
「DANCE IF YOU WANT IT」「HIGH ROLLER」「MOVING TARGET」あたりはニュージャックスウィングを睨んだ上でのクボタさん一流のファンクネスがイイ塩梅にうねってて、実はかなり好きです。「INDIGO WALTZ」はこの時期のクワイエットストーム日本版としては極上の出来と思います。「KEEP ON JAMMIN」でレゲエを採用、「MAMA UDONGO」でアフリカのハイライフを採用したセンスは、ブラックミュージック愛を直球で表現出来る時代を謳歌するクボタさんのノビノビぶりが見えて楽しいです。

NYに渡ったクボタさんの、本場ネオソウル修行。

「THE BADDEST III」は、90年代中盤のメガヒット時代とその後2003年までを網羅してます。ナニゲに90年代中盤はコムロサウンドを始めCDがバカ売れしてた時期でありまして、宇多田ヒカルが98年に登場してR&Bもヒップホップソウルも一気にお茶の間化するタイミングでありました。クボタさんも1996年に「LALALA LOVE SONG」200万枚ヒットを経験します。フィーチャリング NAOMI CAMBELL とされてますが、彼女がこの曲でナニをしてるかボクは未だにサッパリわかりません…。実はこのメガヒット以外では彼の活動はむしろ地味です。その他のコマーシャルヒットと言えば「電波少年」ヒッチハイクの旅/朋友(パンヤオ)編の応援歌「AHHHHH !」程度でしょうか?
●実は、この時期クボタさんは真剣にアメリカで活動しておりまして日本での活動が停滞してたのでした。新人歌手 TOSHI KUBOTA としてアメリカのレーベルと契約してアルバムをちまちま出す程度。しかしココでコラボした連中はワリとホンモノです。「THE BADDEST III」収録曲では、「NICE & EZ」という曲で TONY, TONI, TONE のメンバー D'WAYNE WIGGINS をトラックメイカーに招き、ホンモノのニュージャックスウィングを演ってます。「NEVER TURN BACK」では THE FUGEES のラッパー PRAS をフィーチャーしてます。実はこのヘンではホンモノ感が漂っておるのです。
●このアルバムを離れると、GROVER WASHINGTON JR. & BILL WITHERS「JUST THE TWO OF US」カバーを SOUL II SOUL のシンガー CARON WHEELER と二人で演ってますし、2004年のアルバム「TIME TO SHARE」では MOS DEF、ANGIE STONE、ALI SHAHEED MUHAMMAD (ex. A TRIBE CALLED QUEST) とコラボしてます。このヘンは、ニュークラシックソウル~ネオソウルの文脈に絡まってくるアプローチをかましてました。

TOSHI KUBOTA「TIME TO SHARE」

(TOSHI KUBOTA「TIME TO SHARE」2004年)


●さて、今のクボタさんは、ナニをしてるのか?

久保田利伸「TIMELESS FLY」jpg

久保田利伸「TIMELESS FLY」2010年
●2004年「TIME TO SHARE」 TOSHI KUBOTA としての活動は終わりました。ジェイポップシンガー久保田利伸の復活です。コレは今のトコロの最新アルバム。アフロヘアが発達してます。しかし、R&Bがコレだけ飽和した現代日本のシーンにおいて、彼のやるべき仕事はなんなのでしょう?
●後輩アーティストとのコラボはアレコレやってますね。KREVA、WISE、SPONTANIA、MISIA、JUJU。でもぶっちゃけ特別新しいアプローチでもない。フツウだな。スゴいコトは起こってない。でもナニすれば新しいのかな?ボクもわかんないなあ。日本R&Bの先駆者としてもっとリスペクトされてもイイと思うけど、やや埋没してる感がある。
●ニヤッとさせる演出は、AL B. SURE !「NITE AND DAY」をサンプルした曲があるコトです。AL B. SURE ! はズバリニュージャックスウィング期に活躍した一発屋的シンガーですから。ある意味でクボタさんの根っ子はブレてないのかな。それならそれで、ニュージャックスウィングなアプローチを鬼のように突き詰めるもアリなのかも。あのドライブするスピード感とファンクネスはキライじゃない。90年代リバイバルでガッツリコダワって欲しい。


それでは、ニュージャックスウィング、本場の音源をいくつかチェック。

ORAN JUICE JONES「TO BE IMMORTAL」

ORAN ''JUICE'' JONES「TO BE IMMORTAL」1989年
●基本的には「THE RAIN」1986年という曲だけで知られる一発屋さんですね…。しかしヒップホップソウルの気分をかなり早い段階で掴もうとしてた人です。前述の ALYSON WILLIAMS とデュエットしたコトもありました。このアルバムはキャリアとしてはシリスボミになっていく時期の作品で、「THE RAIN」も収録されてません。しかしニュージャックスウィングの成果をキチンと消化しようとしてる内容になってます。ヌケのいいスネア、速めのテンポ感、必要な要件は一応揃っています。ただし同じだけの比率で、80年代R&Bの世界にドップリ浸かり過ぎていたのも事実です。透き通ったハイトーンボイスは、ニュージャックスウィングのトラックよりもブラックコンテンポラリーなバラードの方がノリがイイかもしれません。結果、イマイチ垢抜けない印象。80年代クボタよりも垢抜けない。
ALYSON WILLIAMSORAN ''JUICE'' JONES は、80年代R&Bと90年代ヒップホップソウルのちょうど境目に位置して、結局時代の流れについていけなかった人たちだったとボクは思ってます。歴史的検証として聴いてみる意味はあるでしょうが、コレを前のめりで楽しむのはチとキツいかも。中途半端にレアですから高く値をつける店もあるかもしれませんが、ボクの感覚では400円以下かなあ。その程度の値段で、歴史の諸行無常を味わってみて下さい。


ANOTHER BAD CREATION

ANOTHER BAD CREATION「COOLIN' AT THE PLAYGROUND YA, KNOW !」1991年
●6人組のチビッコラップチーム、略して「ABC」です。ブラックミュージックの伝統として、チビッコパフォーマーってのは色んなトコロで登場します。JACKSON 5 しかり、LITTLE STEVIE WONDER しかり。ソレのニュージャックスウィング版です。実はレーベルが MOTOWN で、MJ STEVIE を仕掛けたトコロと一緒なんだけどね。まだ変声期も越え切ってないカワイい声が目一杯粋がってラップしてます。
●しかしコレがですね、ボチボチよく出来てるのですよ。コレは聴ける。ヒット曲「PLAYGROUND」を始め、ハネるビート、うねるベース、ホコリっぽいサンプル、走るテンポ、ニュージャックスウィングの楽しさが全て盛り込まれてるのです。SLY & THE FAMILY STONE FUNKADELIC のサンプルがスパイスのように散りばめられてる具合も実にイイ塩梅。アングラな存在であったミドルスクール・ヒップホップが持つタフさを、ウマいコトオーバーグラウンド市場に移植した成功例になってます。ちなみにこの小僧たちは、MJ のヒット曲「BLACK OR WHITE」のプロモでマコーレ・カルキンくんと一緒にラップをしてみせる、なんてコトまでしてます。 
●さて、そんなサウンドを誰が作っているのかなと思ったら、制作陣の中に、DALLAS AUSTIN がガッツリ関わってました。彼はその後 TLC を手掛けてトッププロデューサーに昇りつめる人物です。コムロサウンド脱却期の安室奈美恵を完全R&B化させたのも彼です。やはり MOTOWN 所属だったニュージャックスウィングの代表格 BOYZ II MEN も彼がガッツリプロデュースしてました。
「SPYDERMANN」という曲では、当時のニュージャックスウィングのヒット曲 BELL BIV DEVOE「POISON」のフックラインをツタナくなぞるようなフレーズがあってニンマリできます。この裏には、BELL BIV DEVOE の一員(つまり NEW EDITION のメンバー)MICHAEL BIVINSABC のメンツを集めて売り出したって事情もあるんですけどね。ココで、ABC 経由で、NEW EDITION、BOYZ II MEN、MJ、DALLAS AUSTIN という、ニュージャックスウィング人脈が直結してることが分かります。コレもよく探せば400円程度でゲットできます。おススメです。


KID N PLAY「FACE THE NATION」

KID 'N PLAY「FACE THE NATION」1991年
●コレをニュージャックスウィングと呼ぶかどうかは微妙……ですが、90年代ドアタマにヒップホップをオーバーグラウンドに持ち上げていったという意味では、同じ役割を果たしたアーティストです。アングラで不穏なメッセージを吐き散らかしていたヒップホップ(THE PUBLIC ENEMY、RUN DMC ってドキツいでしょ)から、マロヤカに毒気を抜いてお笑い風味まで盛り込んだのが彼らキッドとプレイの二人組。あどけないパーティラップを陽気に鳴らしたという意味では、MC HAMMER DJ JAZZY JEFF & THE FRESH PRINCE(つまり WILL SMITH)と同じポジションだと思います。
●彼らは女性ラッパーデュオ SALT 'N PEPA の友達だったらしく、そのツテでメジャーのディールを掴みました。だからサウンドの輪郭は SALT 'N PEPA の質感に近く、結構折り目正しくニューヨークのミドルスクール・ヒップホップの伝統を踏襲してます。ラップは今の耳で聴くとスキマが多くて物足りないのですが、ホコリっぽいサンプルやボコボコしたキックはナニゲに美味しい。曲によってはフュージョン風ギターがパランパランと生弾きされまくったり、シンガーが朗々と歌ったりしてます。安易なセルアウト物件と思って侮ってはイケナイ。…と思いながらクレジット見てたら、おろろ、PETE ROCK が2曲トラックを組んでました。へー。
●お笑い風味で健全なヒップホップを鳴らした彼らは、いち早く映画界にも進出していきました。ラッパーが俳優業を兼任して映画出演するなど今では当たり前すぎる状況ですが、この時期ではまだ珍しいコトだったのです。アングラ文化であったヒップホップが徐々にメジャー化していった軌跡を眺める上で、1つの象徴的なステップをココで確認できます。


TONY TONI TONE「HITS」

TONY TONI TONE「HITS」1988~1997年
●彼らは、80年代R&B、ニュージャックスウィングからニュークラシックソウルまでの時代を繋ぐ重要アーティスト。久保田利伸とコラボした D'WAYNE WIGGINS、90年代~00年代のネオソウルで大きな仕事をしている RAPHAEL SAADIQ と、このグループ出身者は、現行シーンにおいてもプロデューサー/アーティストとして活躍しているのです。その足跡がてっとり早くなぞることができる便利なベスト盤がコチラ。
●今まで紹介したアーティストがニューヨーク出身ばかりだったのに対し、彼らは西海岸オークランドの出身です。だから、彼らのニュージャックスウィングは一味違う。テンポを安易に走らせず、偶数拍でバチッと極めるスネアが微妙に粘っている。その意味で正統にファンクであろうとしてます。PRINCE の密室芸を思い切りポップに昇華した印象も読めます。LA のファンクメイカー DJ QUIK とのコラボでも、ただの G-FUNK になるのを巧妙に避けてオーガニックな仕上がりにしているのが実にワザアリ。個人的には「IT NEVER RAINS (IN SOUTHERN CALIFORNIA)」という曲が一番好き。センチメンタルな気分をミディアムテンポでまとめつつもメソメソしない軽さも備えた佳曲。サビのリフレインが耳に馴染む。
RAPHAEL SAADIQ はソロ転向後、プロデューサーとしても大活躍。A TRIBE CALLED QUEST のメンバーたちとプロデューサーチーム THE UMMAH を結成します。コレには D'ANGELO JAY DEE (A.K.A. J DILLA) も参加しており、この瞬間、RAPHAEL SOUL QUERIANS とフィラデルフィアのニュークラシックソウル/オーガニックソウルシーンに限りなく接近していました。以前、SOUL QUERIANS については詳しく記事を書いてみましたが、その中で実に気になっていたのが彼の存在でした。2008年のソロアルバム「THE WAY I SEE IT」も実に素晴らしいアルバムなのですが、ソレについてはまた別の機会に。
●ちなみに、TONY, TONI, TONEマリオ・ヴァン・ピーブルズの映画「パンサー」でカメオ出演してます(確か…ちょっとウロ覚え)。監督自身が演じる黒人運動家ストークリー・カーマイケルがスピーチをする集会のシーンで、SLY & THE FAMILY STONE のカバーを演奏してる連中が彼らです(うーん確かそうだったはず…)。でもね、ブラックパンサーのことを知るのにこの映画はすごく参考になるはずなので、見てみて下さいな。


MARK MORRISON「THE RETURN OF THE MACK」

MARK MORRISON「THE RETURN OF THE MACK」1996年
●ちょっとしたオマケとして紹介します。1996年ともなるとサスガにニュージャックスウィングは廃れてるはずなのに、ヌケヌケと時期ハズレでこのサウンドを狙ってるシンガーがおりました。不思議だなーどういうつもりかなー、と調べてみたら、実はイギリスのシンガーだったのです。UKソウルでこんなニュージャックスウィングを鳴らしてるのは珍しい!ジャケを見てもらえば分かりますが、手錠をかけてたりしてて実にチンピラくさい。ギャングスタな匂いまでプンプンします。実は、クラブでモメゴト起こしてムショにブチ込まれ、ソコで初めてマトモに自分の声を録音し、シンガーとしての能力を自覚したというオトコ。芯が強くシナヤカな声はナカナカのモンです。ニュージャックスウィング亜種として楽しんで下さい。



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