突発的に、日本の古典絵画が観たくなった。

●しかも、どうしても長谷川等伯が、観たくなってしまった。

●以前、駅のポスターで観たのだ、展覧会が行われてるはずなのだ。あのギラギラゴールドで、猛烈にグリッターでバロックムキダシの屏風絵がスゴいはずなのだ。あのポスターがなんかメチャ引っかかったのだ、日本絵画ってギラギラなのかよ!とボクに教えてくれたのだ。

そしてなぜか昨日、アレが気になって仕方なくなった。緊急で観なくては気が済まなくなった。会議も仕事もそっちのけ。アタマの中であのギラギラが膨れ上がったのだ。もうダメ、ガマンできないのだ。ナゼか全然ワカンナいけど。
●そんで夕方を待たず、上野の「東京国立博物館」に向かったのだ。


●で、現場に到着して気づいた。
「長谷川等伯展」が行われてたのは「京都国立博物館」だったのだ。しかも、ソレも先週終わってた。

●がーん。

●この気持ち、どうしてくれよう……テンションはムダに上がったまま。


長谷川等伯展 京都国立博物館

●…そうそうコレコレ、この気分だったのに…。でもさ、確かに「京都」って書いてある。



●しょうがないから、常設展の、尾形光琳の絵を眺めたのだった。

尾形光琳筆 孔雀・立葵図屏風

尾形光琳「孔雀・立葵図屏風」
●うーん、なんかイメージと違うなあ…ポスターで観た長谷川等伯はもっとド派手にギラギラしてた。目の前の尾形光琳は…雰囲気こそ似てるけど…超リアルなクジャクも悪くないけど、なんかゴールドがくすんでて気分が乗らない…もっとドヒャーッとしてたらイイなあ…しょうがねえか数百年分のスーパーヴィンテージだから色落ちもするか…新品だったらコレもまたギラギラだったろう。新品状態のコレが部屋にあったらどんな気分だろうなあ?なんてったって屏風だからな60インチのプラズマテレビ2つ分よりデカい。強烈な存在感だろうなむしろウゼエくらいだな狭いウチのリビングにゃ置けねえな…と思いながら10分くらい眺めてた、ちょうどイイ場所にソファがあったもんだからねえ。

●浮世絵だと、ボクは鈴木春信が好きなのさ。
●ムチムチ系やゴージャス系の美人画よりも、ボクは鈴木春信が描くヒョロリンとした女性が好きなのだ。手足も首も骨が通ってないかと思うほど華奢で、むしろ地味系な女性像。ボクは春信がロリコンだったんじゃないかと思ってるのだ。ティーンの未成熟具合を狙って描いた倒錯趣味が、オトナシメなスタイルにヤバさを漂わせてる逆説気分がオモシロいのだ。浮世絵は江戸時代のグラビアなのだから、週刊誌のエッチなカラーグラビアを見る気分で、シタゴコロをコチョコチョ作動させた方が健全だと思うのだ。

●そんなノリで、ハニワとか土偶とか刀剣とか絵巻物なんかを観た。外国人とおじいさんと、ボクのような狙いの読めないヤツだけ、がだだっ広い空間にパラパラいる程度ってのは、居心地がよかった。


●そんで特別展も観てみた。

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「細川家の至宝 珠玉の永青文庫コレクション」
●むー。ノれねえなあ…。細川家って、日本新党の細川護煕元首相のオウチのコトでしょ。ヘッドホン解説を、細川護煕さん自身がやってるよ…微妙にノれねえなあ。ピンと来ねえなあ。

と思ったけど、実際観てみたら、ちょっとオモシロかった。

山田芳裕「へうげもの」1

●ボクが長谷川等伯を知ったのは、山田芳裕「へうげもの」に彼が登場してくるからだ。でもね、細川家の重要人物や周辺の人物もみんな「へうげもの」に登場してくる。ボクの知識なんてみんなマンガから出発してるからね。そんでこの特別展もマンガの延長として楽しめちゃったのだ。

●細川家は、足利将軍家に繋がる由緒ある家系で「応仁の乱」とかで活躍しちゃう連中。安土桃山時代においては細川幽斎&細川忠興親子が、織田/豊臣/徳川政権とうまくヤリトリしながら強力な権勢を保持しつつ、文化エリートとして時代の最先端を突っ走っていたという。
「へうげもの」でもこの親子は登場し、主人公・古田織部千利休とともに、数寄の世界を探求する戦国武将として描かれてる。ジュニア細川忠興古田織部にイジクラレる堅物キャラになっちゃってるが、シニア細川幽斎は顔が現当主・護煕さんソックリに描写されてたりしてて実にコニクらしい。掲載誌「モーニング」では山田芳裕&細川護煕が対談とかしちゃったりして、これまた楽しかった。

細川幽斎&忠興

(シニア細川幽斎、そしてジュニア細川忠興。忠興の奥さんはあの細川ガラシャです。)

千利休古田織部が出てくれば、やっぱり茶器が出てくる訳さ。で当たり前なんだけど、マンガと同じようなヤツが並んでるのよ。へえーコレがホンモノかー。こんなチッコイ器ひとつで「うぎゃあ!」とか言ってたのか戦国武将たちは。確かに丸くてカワイクてチャーミングだと思った。手のひらでコロコロ転がしたい感じ?
●常設展も含めて茶器や焼き物は一杯あって、古田織部が考案した織部焼の現物とかがマンガと同じノリで登場する。うわマジでふにゃってしてるー。これにナゼか胸キュン。微妙に整ってないイビツ感やワザと無造作に彩色したラフさ加減が実にロウファイ。崩れてるが故の愛おしさ、ダメっぷりがそのまま愛嬌になる瞬間、なーんて具合の楽しさがある。あーコレは確かに夢中になれるかも。

井上雄彦「バガボンド」

●さらにまたマンガなんだけど、井上雄彦「バガボンド」も絡んでくる。宮本武蔵の登場だ。晩年の武蔵は、細川忠興の息子忠利の客分として迎えられ、熊本の地で「五輪書」を書いてたのだ。知らなかった。展示では「五輪書」の写本があったり、武蔵が描いたという「達磨像」があったりした。「バガボンド」武蔵はまだ20歳過ぎだから、細川家でジジイの武蔵がやってたコトとはうまくイメージが結びつかない。武蔵小山ゆう「あずみ」でも怪力のオッサンとして登場するし、安彦良和「麗島夢譚」では島原の乱の後にオッサン武蔵が台湾に出没するって設定もある。…ああボクってマンガばっかだなあ。

●それとね、護煕元首相のお祖父さん、細川護立という人もオモシロかったらしい。
●華族で金持ちだったこの人は、美術品の一流の目利きであり、若い芸術家のパトロンでもあったという。細川家のコレクションは、この人が集めた近代美術も含まれてる。ここに横山大観下村観山みたいな近代日本画の大御所も含まれてるという。
●そんで彼らの作品も展示されてるのです。でもね、なんかね、画風が若いんです。横山大観って富士山とかをドカーンと描いて超エラそう、ってイメージがあったけど、ソレとは違う感じ。中国・道教の聖人をニヤニヤしたオッサンにして描いた絵は、カジュアルでフランクな気分が漂ってる。こんな横山大観は初めて見た。
●実は横山大観のような大御所もキャリアの最初は守旧派からアゲインストを喰らってたらしい。しかし細川護立はそんな彼らに早くから注目し作品を買ってた。「よいものはよい」とかいって。しかもそんな買物をしてた護立さんは当時まだ24歳。おいおいスゲエな金持ちは違うぜなんだそのお大尽なショッピングは。しかしこの後長く大観ら芸術家と護立さんの付き合いは続き、日本芸術界のど真ん中に君臨することになるのでした。スゲエなあ。


「侘び寂び」とか「もののあはれ」って言っちゃうと、手元からすり抜けてしまう古典美術のユーモア感覚、いわば「へうげもの」(ひょうきんもの)のセンスをもっと沢山喰らいたい。ソレがオモシロく思えてしょうがない。


●さて、マンガ絡みのハナシになったから、最近読んだマンガの報告を。
●実は連休中、大量にマンガ読んでたんだよね。アホのように。

松本大洋「竹光侍」8巻

松本大洋「竹光侍」8巻完結
●死闘完結。「スピリッツ」で完結したのは知ってた。でも一気に読みたいから連載読むのガマンしてたんだよね。満を持しての単行本リリース、そして読む……くっ、パリパリの緊張感でぶっ飛ばしてるね。主人公・能勢宗一郎が持つ、イノセントさと殺人者としての狂気の矛盾を見事決着させるクライマックス&エンディングが、壮絶かつ爽快でございました。ごっつぁんです。  
松本大洋の独特な筆致は、ある意味で「平成の絵師」だね。いつの間にかマンガ界の異端になってるね。実は彼自身が変化したんじゃなくて、マンガ全体の主流派がアニメ絵全盛期に完全シフトしたってコトかも知れない。アニメ絵じゃないと読めない世代もいるだろうし。会社のオバさんにこの本見せたら「ヘタな絵ねーホントに読みづらいわ」って言われちゃった。ボクは異端に寛容でありたい。彼の本を読む瞬間は細川護立さんの気持ちになろう。気持ちだけだけど。
●ソレにしても、原作者を招いて「絵師」に徹した今回の作品は、マンガの表現的限界に挑むハイテンションがスゴかったと思う。特に両親を殺されて我を失い仕手人を滅多殺しにするシーンとか。その瞬間、宗一郎はニンゲンのカタチ留めてなかった。フランシス・ベーコンの怖い絵みたいだった。


●まだまだ読んでるよ。数々の「クサレ縁」マンガを読んでいる。
●マンガってのは、程良い加減で終わってくれないと困る。単行本が何十冊も溜まっていくのは、タダでさえモノが多いウチの住宅事情の中で実にメンドクサイ。しかし一度読み始めてしまった物件を、途中で放棄するほどの根性がボクにはない。結果としてマンマと出版社の思惑に乗せられて、かさばる単行本を握り込まされてしまう。

荒川弘「鋼の錬金術師」25巻

荒川弘「鋼の錬金術師」25巻
●コレは実に典型的な「クサレ縁」マンガだ。そもそもは息子ノマドがテレビで楽しんでるから、思わず買ってしまったんだ。そしたら思わずボクの方がノメり込んでしまい、一気に読み集めちゃったのだ。オマケに内容が予想以上にエグイので、当のノマド本人には読むの禁止しちゃった。画がカワイイのに大量虐殺が平気で登場するから。全くの不覚だ。本末転倒、主客逆転だ。
●そんで物語はクライマックスに突入してきたのかなーと思いきや、「そうは簡単に終わらせないぞ」とジリジリ引き延ばしてる気分。ひたすら血みどろのタタカイ。愛着あるキャラが死に、ピンチはより深まる。問題は全然解決してない。マンマと読まされた。

二ノ宮知子「のだめカンタービレ」24

二ノ宮知子「のだめカンタービレ」24巻
●コレも完全に読まされた物件だ。冷静に考えりゃマチガイなく映画公開の便乗商売じゃないか。しかしソレが100%分かってても買う&読む。実に業深い。今回は「アンコールオペラ編」とかいう副題がついちゃってる。だから一時的な同窓会的復活だと思ったよ。そしたらこの一冊で完結しなかった。え!続くのかよ!また買わされるのかよ読まされるのかよ。「R★Sオーケストラ」のクライマックスはマジで泣けたからな。そのオペラ編となったら無視はできない。実に業深い。ちなみに、表紙で楽器を持たないのだめちゃんが出てきたのは初めてだな。まいっか。

山口貴由「シグルイ」14巻

山口貴由「シグルイ」14巻
●この作品もイイ加減付き合いが長過ぎる状態になってきた。そもそもは南條範夫の歴史短編を原作にしたモノ、そんなに長い話になるはずじゃなかった。しかし気づけば14巻。最終決戦直前状態になって、お話のペースがジリジリと遅くなってる。それでも15巻には始まってくれるはず、残虐で血みどろの決戦が。でもそっからが多分メチャ長い。

安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」20

安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」20巻
●コチラも物語は最終段階へ。単行本ではソロモン攻略作戦が描かれてるが、連載「ガンダムエース」では、ア・バオア・クー作戦が始まっている。やっぱ戦争は悲愴だわ。宇宙で死ぬのは寂しいわ。「生か死かーそれは 全てが終わってみなくてはわからない。しかし確実なことは 美しい輝きがひとつおこる度に 何人か何百人かの人々が確実に 宇宙の塵になっていくということだ」恐怖!機動ビグザム、スレッガーロウ&ドズルの戦死、数々の名シーン収録。

西島大介「ディエンビエンフー」7

西島大介「ディエンビエンフー」5~7巻
●ベトナム戦争の泥沼と西島特有のカワイイ画風が強烈なギャップになってるこのオハナシも、少々長くなり過ぎた。5~6巻では「少年ジャンプかよ」的なバトル展開でグリーンベレー部隊が全滅。そんでズルズルッと第二部突入。うーん、緊張感なくなってきた…。でも、テト攻勢が始まるぞ。サイゴンが燃えるぞ。

林田球「ドロへドロ」14

林田球「ドロへドロ」12~14巻
●魔法と悪魔とサスペンスと悪趣味がドロドロになってるこの作品も、その謎解きの行方がボンヤリ見えてきた。支離滅裂なトコロはアレコレあるけどさ。さてさてどうやって見事なフィナーレまで持って行けるのか?

柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」14

柴田ヨクサル「ハチワンダイバー」13~14巻
●格闘マンガのハイテンションで将棋を描いてたこのマンガ。将棋なのにどうしてこんなにアホなほどテンション高いの?ってのがこの作品の存在意義だと思ってた。しかし「将棋ボクシング」ってのが登場してきた。2分間将棋を差して2分間リングでボクシングを戦う。実際チェスボクシングってのはこの世に存在してるらしい。でもさ、格闘マンガのテンションで格闘描いたらフツウじゃん。ソレは御法度だと思う。でも今さらこの人にそこツッコンでもしょうがない。トコトンまで行ってくれちゃんと見届けるからさ。
●映画/ドラマで今注目の仲里衣沙ってさ、フジの深夜ドラマ版「ハチワンダイバー」でメイド受け師さん役をやってたんだよ。みんな覚えてるかな?

羽海野チカ「3月のライオン」4巻


羽海野チカ「3月のライオン」3~4巻
●格闘マンガ家が将棋を描いたのが「ハチワンダイバー」。そして森ガールの教祖が将棋を描くのが「3月のライオン」だ。孤独でゴールのない勝負の世界を、お先真っ暗の悲壮感を以て小細工ナシに描くストロングスタイルがより激しく進行中。天才は天才で凡人は凡人、どんなに努力を積み重ねても乗り越えられない圧倒的な壁がある。しかしソレでも挑む戦いがある。……そんな戦いの隙間にホッコリな空間を作ってくれるのが羽海野チカのサービス精神なのかな、あかりさん三姉妹が神々しい救いとして輝いている。

岩岡ヒサエ「土星マンション」5

岩岡ヒサエ「土星マンション」5巻
●地球の外周を輪のように囲むスペースコロニー。その外壁に出て窓拭きの仕事をする少年ミツの慎ましやかな暮らし。ノンビリすすむ物語、でも彼はジックリ成長してる。そろそろ彼の周辺で怪しい動きが起きてくる気配。今は無人となった地球への降下計画(非合法)。ソレを楽しみにしておく。

宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」7

宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」7巻
宇仁田さんもココまでの長編は初めてじゃなかろか? かつて子供を捨てた女性マンガ家と、彼女に捨てられて、他人の手で大切に育てられた少女が10年ぶりにご対面。子供を捨てた女性の言い分は身勝手でデタラメで乱暴だが、今の社会に漂ってる本音の本音が混じり込んでる。イイか悪いか判断しないで、今はソコをそっとしておきましょう。結論を急がない。それも1つのアプローチ。

小畑健+大場つぐみ「BAKUMAN」8

小畑健+大場つぐみ「BAKUMAN」8巻
●当然今読まないといけない物件だな…。なんだかイロんなカワイ子ちゃんが大勢登場してきて、そんなカワイ子ちゃんがパンチラマンガを描くコトになったりして。「バクマン」で説明されてる読者キープ/ランキング上位ゲットのテクニックが、そのままこの作品そのものに適応されてるような気がする。結果としてマンマとヤラレテルなと思いながら、それでも結局読む。
●……「読者ランキング」制度って、テレビ業界で言うトコロの「視聴率主義」と似てるんだろうな。統計的根拠を突っ込んだらキリがないが、さりとてソレに代わる価値観がナイ。マンガのためのランキングか、ランキングのためのマンガか、ドッチが先かワカラナクなる。そしていつのまにかソコから読者という要素が蒸発してしまってる。

さそうあきら「さよなら群青」

さそうあきら「さよなら群青」1~3巻
●まだ3巻だから「クサレ縁」というほどの付き合いじゃない。しかしさそうあきら作品は十数年以上追いかけてるから、ある意味では深刻に「クサレ縁」。この人もっと圧倒的に支持されてイイのになあ。巻末に糸井重里さんとさそうさんの対談があるんだけど、さそうさんメチャ謙虚なコト言っちゃってるんです。
●彼の代表作「マエストロ」「神童」が中断や打切りの憂き目に遭ってるコトに話題が及ぶと…「糸井:え~!! それはショックだったんじゃないですか?」「さそう:う~ん、ある程度覚悟はあったので、めちゃくちゃショックというわけでもなかったですね。打ち切りになるというのは、出版界の今の状況というよりも、僕の問題もあると思いますし…」「糸井:遅筆だということですか?」「さそう:人気がないんです」「糸井:え……」糸井さん絶句。これランキング制度の敗者ってコト?でも「神童」「コドモのコドモ」は後に映画化されたんですよ。ボク原作でかなり泣いちゃいましたよ。
「さよなら群青」の物語は佳境に突入。海女が暮らす波切島の、語られてはいけないタブーが明らかになる。さてさて今後も目が離せない。

日本橋ヨヲコ「少女ファイト」6巻

日本橋ヨヲコ「少女ファイト」4~6巻
●ボクは日本橋ヨヲコの暑苦しい青春ストーリーが苦手でしょうがなかった。コレでもかって位に登場人物たちへ過酷な運命を背負わせて、結果全員が極端な性格になってて、ソレが寄り集まってボロボロになってく話ばっかだから。コレを楽しむのは悪趣味ではないか?
●でも、悔しいコトに、この「少女ファイト」にはヤラレテル。ご多分に漏れず、登場人物全員の背負ってきた過酷な宿命が、読み進める中でどんどん明らかにされる。無邪気なようで徹底的に傷ついてたり、強気のようでココロは常に大量出血だったり。しかしバレーボールというスポーツを媒介に、孤立無援だった少女たちはチームとして強い結束を育てていく。くそー泣けるなあ。チョッピリのラブもアリ。狂犬とあだ名された娘が、信頼する男子の前で子犬みたいに素直になるのも、なんか泣ける。「スポーツマンガ」はイッパイあるが「スポ根マンガ」はいつの間にかシーンから消えてる。「少女ファイト」はそんな絶滅危惧種の最後の一匹かもしれない。
●……それと著者が描き慣れたのかボクが見慣れたのか、女の子たちが全員カワイくなりました。以前はクッキリとした輪郭線がトゲっぽかったんだけど、丸みを帯びてチャーミングになりました。チームとして固まったから、そう描き分けてるとするなら、この人は画がウマいなあと素朴に思います。

槇村さとる「リアルクローズ」7~9

槇村さとる「リアルクローズ」7~9巻
●ちょっと前の経済誌で、百貨店市場の特集をしてた。三越伊勢丹グループの合併とその後の奮闘ぶり、それでも不況で業績は下がってる、ってハナシ。婦人服バイヤーの女性を主人公に据えたこの物語も、百貨店合併時代に直面してて、激しい会社間異文化コミュニケーションの嵐に揉まれながら、様々な思惑がぶつかり合ってる様子を描くに至ってる。仕事大変そう。でも仕事オモシロそう。そんでチョッピリだけ恋愛も。ソレは女子の養分だからな。
安野モヨコ「働きマン」あたりから、サラリーマンマンガのリアリティは完全に女性作家に持ってイカレてしまった。働く女子には物語があるが、働く男子には物語がない。コレでイイのか?ちょっとそう思う。「働く女子」マンガがオモシロすぎるだけにそう思う。今更さー「社長島耕作」とかにアイデンティファイできないでしょ、「新サラリーマン金太郎」みたいな大味がリアリティ持つと思えないでしょ、両方とも連載健在だから申し訳ないけどさ(実際ちゃんとそっちも読んでるし)。ガンバレ働く男子。

おかざき真里「サプリ」10

おかざき真里「サプリ」10巻完結
●コレはマジで痛苦しい「働く女子」マンガだった。仕事/恋愛/結婚/出産のコンボ攻撃にビシビシ打たれる登場人物たち。完結10巻で表紙は虹色になり、一応ハッピーエンドになったようにも見えるけど、現代キャリア女性の懊悩の深さは全然解決されてない感じがする。つーか主人公は結果超合金のように強くなっちゃって、全てを克服しましたって決着だからな。それはタフ過ぎるよ。背負い込み過ぎだよ。コレって広告業界が舞台だからこんなに過酷なのかな?ガンバレ働く女子。
●やっぱオトコの人生はシンプルだな。クリエイターの男は「やりたいコトがあるからオレいくわ」って消えるからね。ボクはそういうの見る時に「オスは交尾を終えると旅に出て、メスが赤ちゃんをセッセと育てるのです」という動物ドキュメンタリーを連想するんです。オスって無責任だな。かくいうボクもそういうオスの一人だし。ワイフに言われたよ「ヒヨコのクラスの女の子たち、パパとおフロ入るのイヤって言い始めたらしいよ。アナタは反対にコドモと絶対一緒におフロ入らないから、ヒヨコは喜んじゃうと思うけど」

ひうらさとる「ホタルノヒカリ」13~15

ひうらさとる「ホタルノヒカリ」15巻完結
●コレは「干物女」というキーワードを打ち出して、恋愛度数&仕事度数ともに最低ラインの女子生活を描くことで、敷居の低いリアリティ共感を描き、ドラマとしてもボチボチ成功した作品だった(主演:綾瀬はるか)。ドラマとしては「リアルクローズ」香里奈)や「サプリ」伊藤美咲)よりよかったと思うよ。マンガもドラマ化以前から読んでたし愛着も深かった。しかし最終巻におよんで、主人公・ホタルちゃんは27歳から34歳にワープして、キャリアもグングン積み重なって、ちょいと現実離れした結末を迎えてしまった。ハッピーエンドだからいいんだけどさ。みんながみんな収まる所に収まって、シアワセになりましたとさ。
●でも確かに27歳と34歳の女子は大分違う。社会的地位もタフさ加減も。あと痛み具合もハッキリ表に出て来ちゃう。この前、同期のオンナノコ(36歳)とエレベータで会ったのです。「どうよ」「あーボクはボチボチ…ていうか、キミが痛んでるわ」「わかる?もう朝っぱらから会議でワタシブチ切れちゃって、今日はもうナニもやる気ないのよ」怖ええ…そのブチ切れザマ、予想がつくわ。キミ一線越えると見境なくなるモンね。友達としては話して楽しいが、仕事は一緒に組みたくない、キミの後輩じゃなくてホントラッキーだったわ。でも今日はより一層お肌がカサツいてるねえ、ムカシはフェロモンモンだったのに。やっぱ戸籍にバツ一個ついたアタリからキミメッコリナニかが欠けた感じするよ。…とか書いちゃってるけど、こんなコト本人には怖くて絶対言えない。

ねむようこ「午前3時の無法地帯」3

ねむようこ「午前3時の無法地帯」全3巻
●さて、こちらは働く「新卒女子」の物語だ。ガッコー出たてで就職したデザイン事務所は、実はパチンコ関連POP広告専業会社だったのでした。理不尽な〆切りと怒鳴る営業さんに責め立てられ、毎日徹夜で作業して、ゲッソリ削げ落ちていくジブンの女子力。もう辞めたい今辞めたい。若い子にはキツいねこの社会人へのイニシエーション。
●主人公・ももちゃんは、イラストレーターになる夢と現況のギャップに戸惑いながら、デストロイな会社の中に仲間やヤリガイを見出していく。同じフロアで働く多賀谷さんはクマみたいなお兄さんでとっても気になるあの人奥さんいるのかしら。うーんミクロ。オジさんソコを十年前に通過しちゃったから実にミクロに見えるよ。でもねミクロだけど愛おしい感情。ももちゃんフレッシュだね。デート行く時間作るために必死に徹夜して、でもシャワー浴び損ねて自己嫌悪に陥って、チラッと目に入った給湯室で「コレ女子としてどうなの?」と葛藤しながらガッツリシャンプーするその様子とか、もうリアル過ぎて爆笑しちゃうモン。そのフレッシュさを大切にしてほしいよ。
●あーもーコレ激しく共感。ボクの仕事とメンタリティ同じだから。毎日〆切り、毎日付け焼き刃、毎日自転車操業、エンドレスで続くフルパワー残業。もうね、こうなるとね、冷静になるのがかえって怖い。「あれれ?ワタシってこのままでいいの?」って迷った瞬間に、一気に精神崩壊するから、根こそぎ持ってかれるから。ペダルを漕ぐ足を止められない。止まった瞬間にぶっ倒れて再起不能。
●ボクの職場には若い女子が大勢いて、そんで今年も沢山の新卒が来て、デストロイな仕事を続けてる。若い娘サンが半目開けて死んだようにデスクで寝てる。おいこの子二日家に帰ってないだろどーなのよ? それでもアレコレ青春してて、チョッピリのレンアイもする。つか多分してんだろうボクみたいなオッサンの目の届かない所で。
●ああボクも社会人一年目の夏、4日に一度しか家に帰れない仕事を1ヶ月続けて、あまりの不潔さにオシリにデカイデキモノが出来たのを思い出しちゃった。その一方で仕事で徹夜明けなのに合コン行って二徹目朝帰りに突入していく不毛な努力を大マジメにしてたもんだ。ソレがなんだと問われれば「若さなんです」としか言えません。ガンバレ若者よ、誰もが通る道なのだ。






●冷静に考えるとさ、突発で上野公園を歩いて、美術観飛び込んで絵画鑑賞して、って行為はさ、病気して体力失ってから絶対に出来なかったコトだったんだよね。マンガのバカ読みもさ、ココまでの量をいっぺんに読むと絶対体調を壊してた。…実は、ちょっとづつ回復してるかも知れないな、ボクのカラダ。

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