さて、先週に引き続き、ボクはまた美術館に足を運んだのでした。
●実は、体力作りに美術館巡りはピッタリなのではないか、と考えたのだ。とにかく体力持久力が衰えているボクの体、デスクワークならナントカなるが、実は3時間ほど立ってるだけでボロボロになっちゃうほどモロく出来てる。今週は現場立ち会いが2件あったが、ソレだけで実は死ぬほどクタクタ。しかし、先週の東京国立博物館の制覇でジブンの中に自信が芽生えた。ペース配分に気を配って歩くだけでちょっとでも足腰の運動になるなら(ていうかソレしかできません)、積極的に構えるべきではないか!?そう思って、金曜の午後、再び美術館を目指したのだった。…ってエラそうに書いてるけど、こんな動機で絵を見てるなんて、なんかアホみたいだね美術館の人もビックリだろうね。

●そんで今回の現場は、目黒駅から徒歩6分、東京都庭園美術館。
●目黒なんて何年ぶりに来ただろう?と思いながら到着したら、建物が異常に立派なアールデコ様式でビビった。むしろ世間の認識はこの建物が立派で有名なのね知らなかったよ。そんでさ、理由はワカンナいけど学芸員さんがみんなイイ年ブッこいたオジさんなんですよ。多分ボクの父親よりも上のような気がするぞ。シルバー人材優遇姿勢?フツウは静かな文系女子ってのが相場じゃん?ま、そんなのどうでもいいか。


●で、肝心の内容はね、20世紀初頭の、ロシア・アバンギャルド

ロシア構成主義

「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」東京都庭園美術館

1917年ロシア革命。ソビエト連邦誕生。2010年代の今から見れば、共産主義/社会主義ってヤツは、変節を重ねて老醜をさらすシワシワのおじいさんの様になってしまったが、1920年代においては当時最先端の政治理論で、それこそ理想に燃えるティーンネイジャーのような輝きを持ってたと思う。ボクは思想の中身は別として、共産主義が持ってた「革命の理想」は時代の雰囲気としてとてもロマンチックなモノだったに違いないと思う。
●そんな1910~20年代のロシアで起こった芸術運動が「ロシア構成主義」ってヤツだ。革命はヨーロッパで一番頑迷だった絶対王権を見事打倒し、ティーンネイジャーの情熱をもって社会全体を改造し始めた。なにぶんティーンネイジャーだから、世間知らずで青臭いトコロもあったに違いない。しかし、前近代的因習を一掃して最先端の文化を作ろうという野望は、とてもロマンチックなモノだと思う。そんな訳でこの時代の芸術表現も実に過激で、そしてトビキリユニークなモノになったという。ボクはそのムーブメントをたっぷりと楽しむ訳です。

アレクサンドル・ロトチェンコワルワーラ・ステパーノワは、ロシア構成主義の中心的アーティスト。二人は創作上のパートナーであり、おまけに夫婦でもありました。名前がヤヤコシイので一応言っときますと、ロトチェンコがダンナさんで、ステパーノワさんが奥さんになります。二人とも活動の幅はマルチにわたり、古典的絵画表現からスタートして、グラフィックデザイン、舞台美術、写真、建築などなど様々な分野で活躍しました。「労働者階級の人々の為に美術はなにができるのか?」という問いを突き詰めた結果、彼らはポスターや印刷物、本の装丁、チェス台、舞台衣装までデザインするようになるのです。

ロトチェンコポスター

国立出版社レニングラード支部の広告ポスター「あらゆる知についての書籍」
●歯並びのイイ娘サンがデカい声で叫んでます。メガフォンの様にデザインされた吹き出しに書いてある言葉の意味は「本!」。デカイ声だなインパクトあるなあ。1924年の作品ですって。革命も一頃ついてきた時期、飢饉や物資不足を補うため資本主義傾向を多少復活させてた中で、ロトチェンコは、国営企業の製品を買おう!と訴えるポスターを数々手掛けています。コレが彼なりの「労働者階級の為に奉仕する美術」だったのでしょう。
●幾何学図形とクッキリとした直線を重んじる彼のデザインは、前近代的虚飾を排除する理知的発想に立ってます。その意味で彼は「未来派野郎」です。当時の最先端技術だった飛行機とかがダイスキです。航空技術の発達を見据え、将来「都市」は、地上視点で眺められるモノではなく、高い視点から俯瞰されるモノになると考えていました。そこから展望台を持つ高層建築のデザインもたくさん残しました。ボクの身近な言葉に言い換えれば、彼は「テクノ」です。

ロトチェンコ

ロトチェンコの写真です。なぜかスキンヘッド。
●イカにも理屈っぽいカオだな…。ボクの注目ポイントは彼が来てる服です。へんな服…つなぎ?でかいポッケでワードローブみたい。コレがロトチェンコたちがデザインした舞台衣装です。この舞台は1979年の未来(ボクらには遠く過ぎ去った過去だけど)を描いた芝居で、この服は彼が空想した未来社会のデザインなのです。素材には防水布を使用し機能美を徹底したコンセプト。無骨だけど、今のアウトドアウェアと地続きの感覚で繋がってるとも言えそう。重ねて言うけど彼は「未来派野郎」で「テクノ」なのです。

ステパーノワ

この女性がステパーノワ。多分30歳前後だろうな。
●他にも写真はあったけど、美人さんではないかも。ふっくらして愛嬌のあるタイプ。作品にも明るさや軽さ、楽しさがあります。写真を撮ったのはダンナのロトチェンコ自身。「未来派野郎」だからカメラも最新技術として夢中になってたんだろうな。…このチャーミングな顔を見てて思ったのは…最近ワイフの写真を撮ってないなーワイフのイイ顔を撮っておかないとなあーってコト。90年後の外国人が見ても「この子はチャーミングだなあ」と思えるような写真をね。

「ロシア構成主義」の運動は1920年代まで盛り上がりますが、その後衰亡していきます。スターリンの台頭と全体主義の進行、第二次世界大戦の危機が近づく1930年代中盤以降は、表現の幅が狭まりアーティストたちが粛正されていくのです。共産主義の理想に燃えるティーンネイジの時代はあっという間に終わってしまったのです。


●でさ、さっきのロトチェンコのポスター、UKロックが好きな人ならピンとキタでしょう。あのジャケの元ネタですから。

FRANZ FERDINAND「YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER」

FRANZ FERDINAND「YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER」2005年
やーコレマチガイないでしょう!つーかボクの中では、わざわざ「ロシア構造主義」の展覧会行った動機そのものが、「うわーフランツの元ネタの現物が日本に来てるじゃん!観に行かないと!」というモノでしたから。このバンドはスコットランド・グラズゴーのアートスクールでツルんだ4人組でありますから、ロシア・アヴァンギャルド風のアートワークも連中の趣味なのでしょう。



●ここからは、FRANZ FERDINAND のオハナシ。
●彼らは00年代に巻き起こったロックンロールリバイバルのシーンをド真ん中で推進したバンドでした。UK の名門インディレーベル DOMINO に所属、レーベルメイトにはあの ARCTIC MONKEYS がいます。

FRANZ FERDINAND「TONIGHT」

FRANZ FERDINAND「TONIGHT: FRANZ FERDINAND」2009年
このアルバムは大好きだ。そんなに興味のあるバンドではなかった FRANZ FERDINAND が、この一枚で一気に高評果になった。ストレートなギターバンドであった FRANZ が一気にダンスミュージックにシフトしたからだ。ビンテージシンセの粋なリフと、ブンブンに強化されたベース、そして偶数拍にアクセントをつけたリズムパターン。コレがうっすらとディスコファンクの色香を漂わせて、もともとフェロモン濃厚であった低音ボーカルの爛れ具合とうまくブレンドされた結果、実にセクシーなダンスロックに変貌したのだ。それでいてキャッチーなメロディラインは健在で、コシャクなまでにポップな仕上がりになった。
●一曲目「ULYSSES」はトヨタのCMにも使われてたし、「NO YOU GIRLS」は iPod のCMに使われてた。いづれも高性能なダンスロック。他にも 80年代 NEW ORDER 風にシンセが響く「LIVE ALONE」、高濃度エレクトロダンサー「CAN'T STOP FEELING」、タイトなロックの前半から後半に純粋エレクトロへ展開する8分弱の長尺曲「LUCID DREAMS」などなどと聴き所は満載。このアルバムのダブヴァージョンを収録した2枚組盤が欲しいんだけど、ソコまではまだ手が届いてない…くー悔しい!


「TONIGHT~」以前の FRANZ、ファーストとセカンド、そしてライブDVD。
●コレを機にあまり評価してなかったアルバム一枚目&二枚目の時期を聴いてみた。そんで楽しくなっちゃった。

DVD「FRANZ FERDINAND」

FRANZ FERDINAND「FRANZ FERDINAND」
●コレはファーストアルバム「FRANZ FERDINAND」の頃の世界ツアーを収録したDVD。世界各所でのギグの様子、イギリス THE BRIXTON ACADEMY でのライブ、そしてサンフランシスコでのライブが、2枚組で詰め込まれてる。
●2005年のリアルタイムでこのDVDを観た時の第一印象は「イケスカない連中だな」ってコト。この人たちイケメンなんですよ。細身のパンツにタイトなシャツを着こなして、目にかかる程度のブロンドの前髪をサラサラさせながらフェロモンモンに歌うボーカル ALEX KAPRANOS の存在が既にイケスカなかった。ギターのヤツが高めに楽器を構えてクネクネ体を揺さぶりながら演奏するのも気色悪いと思った。ボクにとってはロックはもっとダーティなモノであって(だってボクは一応90年代グランジ育ちなんですもん)、彼らの身のこなしはナルシスティックで洗練され過ぎてるように思えたんです。
●しかし今冷静に彼らの音楽とパフォーマンスを観ると、それなりに楽しめてる自分がいる。ある意味でボク自身が00年代のロックに慣れたのかな? 機銃掃射のように正確かつ激しくビートを弾き出すカッティングギターにスリルを感じるし、タイトでジャストなドラム&ベースも、ダンスロックを鳴らすその後の着地点を知っていればクールに聴こえてくる。クネクネした身のこなしも、ガムシャラなガレージ志向ではなくスマートなダンス志向であったという現時点の事実を納得すれば、全然許せちゃうし、セクシーにも見えちゃうほど。
「TONIIGHT~」のエレクトロ/ダンスロック路線よりもズッと性急で速攻だった初期のスピード感、そしてギターの音をムダに滲ませず歪ませずパリパリと弾き出す感覚は、実は80年代ポストパンクの気分から参照してるってコトも納得できた。密度も硬度もギュッと高いので単純なリバイバルだとは言えないし、デンデケデケデケし過ぎてる瞬間はもっと古い60年代ロックの気分まで漂うけど。セカンドアルバムからは70年代グラムロックの気配まで読み取れる。「DO YOU WANT TO」みたいなポップヒットチューンはある意味で DAVID BOWIE っぽく聴こえる気がする。
●ライブ演奏でイチバングッと来るのは、やっぱ「TAKE ME OUT」だね。イントロ部分の性急なフレーズをひとしきりコナすと、ビートのテンポがググッと押さえ込まれて、カッティングのリフがザックリとスキマを作ってく。この展開にオーディエンスのテンションがギンギンに上がって、サビに突入すれば大合唱&ジャンプ大会。痛快な瞬間。ああボクはこのバンドが、どんどん好きになっちゃってる、今現在でさえも。



●せっかくだから、動画も貼付けときます。



「TAKE ME OUT」2004年の GLASTONBURY FES でのライブの様子。絶対この曲はライブの方がいいなあ。



●とか言いつつも「TAKE ME OUT」PVもつけちゃいます。ロシア・アヴァンギャルドの気分も盛り込んだグラフィックが楽しいので。



●ゴスちっくな気分も漂う高速ガレージ「MICHAEL」。ナルシスティックな身のこなし。そしてポストパンク。



●セカンドアルバムから、痛快ガレージ。「THE FALLEN」



「DO YOU WANT TO」。イギリス人もスカジャンを着るという事実。



●エレクトロ路線へ進出「ULYSSES」。でも前の曲を聴いていればそんなに違和感がない。



「NO YOU GIRLS」。エレクトロの爛れ具合を見事に切り取ったクールなプロモ。

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