今週は芝居を見てきました。

本谷有希子『甘え』

劇団、本谷有希子「甘え」青山円形劇場
●ボクは、マンガ誌「モーニング」にペロっと掲載されてる本谷有希子さんの1ページコラム「かみにえともじ」が大好きなのです。雑誌の最後の方、どーでもいいプレゼント告知や目次ページに混じってるので、真剣に探さないと絶対見逃す存在感なのですが、しかもあまり生産的とは思えない本谷さんのボヤキがダラダラ書かれてるだけなのですが、毎週コレを楽しみに読んでます。
●でね、最近の話題は新作公演「甘え」に関わるコトが中心でね、脚本の第一稿が上がったとか、稽古が始まったとか、そんな内容が書かれてて、「こりゃ公演始まったら観に行かないとなー」と思ってたのですよ。
●でもさ、雑誌ってのは、文章が書かれてから実際に世間へ流通するまでに予想以上のタイムラグがあるモノでして、ヘタすると2ヶ月くらいズレテルみたいなのかなー、結果としてリアルタイムにおいて公演は既に始まっており、もうスケジュールは半分終了しちゃってたのです今週段階で。うぉマジで!?ダマされたよヤバイヤバイ見逃す所だったじゃん!
●それに気づいたのが、水曜の午後カイシャのデスクでコーヒー飲みながらネット眺めてる時だったのでした。うわー週末は全部チケット完売だし、芝居観に行くチャンスはボクのスケジュールと合わせると…今日と明日しかナイじゃん。おお。コーヒー吹きそうになったね。しょーがねーのでその場でネットで当日券を押さえて、公演開始10分前に青山こどもの城へ滑り込むのでした。

●しかし会場入りして改めて気づいたんだけど、あわててチケット押さえたくせして、実は内容は全く知らなかったのよね。事前情報は、小池栄子さんが出るってコトだけ。芝居のタイトルでさえこの日に初めて知ったね。コレただ単純に本谷有希子ブランドを盲目的に信じてるダケだね。頼むよ本谷さん全面的に信じてるからね。


で、「甘え」。…甘くないねえ。ビターだねえ。
●例によって、実にイビツな性質をどうしようもないカッコで抱えちゃってる方々が出てきます。主人公・小池栄子さんの父親(大河内浩さんという俳優さんが演じています)は、実に無邪気なポジションから娘の人生を大幅に侵食してて、廃墟のように荒廃した親子関係をごく普通の風景として受け止めてて、やっぱり廃墟のようなジブンの人生全般をどーしょーもなく持て余してるのです。
●しかもこのダメダメ具合はナカナカに生々しく、ボク自身をリアルにウンザリさせる実にパワフルなものでありました。ボク自身がカレのような悪態をつき続ける孤独なオッサンになってる可能性ってのは結構高いかも。実にリアル。ああボク自身がこんなオッサンになり娘ヒヨコとこんな関係になったらデストロイだなー、しかしナイとも言えないなー。本谷作品の登場人物は、往々にしてあり得ないホド痛過ぎるキャラなのですが、このオッサンは激しく痛過ぎるが「あり得る!」キャラなのです。この愚かさはボクにとって身に覚えのある愚かさだ。その意味でボクにとって一際危険人物に見えました。もう最初の登場シーンから苦々しくてムムムと唸らされました。
●その他複数のダメ人間が登場して、ダメであるコトにてらいもなく、のうのうとダメな人生を生きてるのに対して、小池さんは一人正気であろうとし、正気が故に不安と心配と同情と自己嫌悪と罪悪感とその他諸々をガッツリと抱え込み、結果としてしないでイイ心配をし、やらないでイイコトをやってしまう。そして膨れ上がった感情の圧力に自壊するのでした。「ワタシって価値観がダサイよね」。どんどんダメになっていく。しかしダメの中から見える浄化もあるのかも。


劇団、本谷有希子は今年で立ち上げ10周年なんですって。
●今回の公演のパンフレットには、10年目&本谷さん三十路突入記念インタビュー一万字って企画も入ってて、実にオモシロかったです。いやーやっぱ本谷さんは遠くに眺めるからオモシロいのであって、至近距離にいたら危険人物なんだなあと思わせる内容なのでした。






それと、今週はドゥルーズの哲学に関する本を読んでたのでした。


檜垣立哉「ドゥルーズ 解けない問いを生きる」

檜垣立哉「ドゥルーズ 解けない問いを生きる」
ジル・ドゥルーズはポストモダンの思想家の中でも一際難解でヤヤコシイスタイルの人だと思ってた。「器官なき身体」といった専門用語は、全くもって意味がわからない。言語を通り越して超音波に聴こえる。古本屋で見つけたこの本(150円)は、比較的簡潔に彼の思想を噛み砕いてくれそうな気分だったが、まーそんなにわかった気にはなれなかった。やっぱ難しいなあ。帯コメは「<私>ではない<個体>が生きるということ/いま必要な哲学とは何か。『問いが解けない』という事態をどうとらえるか。生命科学の時代に対応するドゥルーズ哲学の核心をクリアに描く」。クリアに描いてるかも知れないが、「問いが解けない」って段階でもう最初からスッキリするはずがないよね。
●それでも、ドゥルーズが、時間の最先端、今ココで常に生まれ続けてる新しい未知の瞬間が、どのようにワケのわからない未来なのか、どのように特別特殊特異なのか、結果そしてソレがどのように美しいのかを克明に描いてみせようとしてたのはうっすらと分かった。近代西洋哲学の成果を援用しつつ、それをポストモダンな視点からポンポンと批判してスパンスパンと退路を断つ。その結果、恐ろしく不安定で野蛮な時空が登場してきて、ソレでもそのダイナミックさをそのまま受け入れていく。そんな潔さが気持ちイイし、美しく思える。
●ソレは、絶えず変化する風の流れを翼に受けて大空を飛翔する海鳥のようにキレイで、日光を求めて力強く芽吹く草花たちの生命力のようにキレイで、未知の世界に向かって好奇心を膨らませていく子供の瞳のようにキレイ。意味が分からなくとも、結果的には十分に楽しめちゃったけどね。

●気になる部分を引用してみた。ドゥルーズは時間を、現在/過去/未来に区別して説明してる。下で言うトコロの「第三の時間」は未来のコトを差してる。未来って、すさまじく野蛮で手に負えない。でも美しい。多分にして理屈じゃないんだわな、パッションだ。そういうことにしておく。


「第三の時間において、<私>はさまに空虚な形式に放り込まれ、無限に裂け目をいれられる。この裂け目とは、うごめく生成がそれを通じて現れるための裂け目といえるものである。だからそれは直線的な秩序と描かれながらも、けっして物理的な時間ではない。むしろ<私>になる以前の、あるいは<私>であることの底に位置するような、卵の未決定性を描く時間であること。無限のひらかれを被りながら、予見不可能な進化を突き進んでいくための形式であること。これがとりだされているのである。」

「そこで<私>は生成の流れに飛び込む形で引き裂かれてしまう。この時間を論じる場面で、はたして何かを積極的に提示できるのだろうか。

 それはもとより困難なことであるだろう。というのも、生成の中に入り込むこととは、いつも予見不可能な新しさとの出会いにさらされることでもあるからだ。しかしそもそも新たなものとは、はじめから何かとしても知覚しえないし、真偽も規定できないものである。そこでは、視点である<私>は突き崩されてしまい、<私>の内容をなす既存の枠組みも揺るがされていく。

 だから第三の時間で描かれる状況をいいあらわそうとするならば、それは、ひたすらに見ること、ひたすらに感じることとしか表現できないだろう。与えられるものに対して、刺激ー反応系(=習慣化された働き)に収まるような、適切な対応をとれないこと。そこで真偽も内容も描けない新しさを、ただ受動的に被ること。未来という時間性が切りひらくこの場面は、まさに受苦という訳語すらあてはめうるような、パッション=情動の位相なのである。

 しかし、引き裂かれた<私>、直接流れにさらされてある<私>とは、まさに生成を引き受ける個体そのもののことではないか。だからここで語られる情動とは、むしろ個体であることの内容を、積極的に表現すると考えるべきではないか。

 すでに述べたように、個体とは、はじめからシステムの中心をなすように、自分の固有の領域を保持したり、そこでの能動的な力によってこの世界を生きるものではない。個体は、それに与えられた独自の力を示すというよりも、この世界を成立される流れのなかで、自己同一性をあらかじめ設定することもなく、特異に浮かびあがるものである。だから個体とは、システムの特異なものであり、逆にその存在において流れの実質を担っていくのであった。すると理念の流れを引き受ける個体であることは、まさに無限の流れを生きる第三の時間と結びつくのではないか。そうであるならば、パッション=情動としての生とは、まさに個体の生のことではないか。

 圧倒的な生成の流れを、まさに中心的な現在を欠くように生ききる個体であること、それは、流れをひたすら被りつづける受動的な情動として描かれる。しかしこの徹底的な受動性は、やはりポジティブな受動性であるともいえる。なぜならば、この受動性は、能動的な中心を欠きながらも、そのことによって、何か新しいものが現れる生成の現場にリアルに参与することをあらわにするパッションなのだから。生成そのものに引き裂かれた情動であること、それが個体の性である。未来を生きる時間のあり方は、パッションとしての個体のにおいて語られなければならない。」 




●今日の音楽。

TOKYO SOUL SET「BEST SET」

TOKYO SOUL SET「BEST SET」1995-2010年
●結成二十周年だそうで。彼らと HALCARI による「今夜はブギーバック」がね、やっぱ気になるなあ世代だからな。


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