自律神経失調症とのお付合い(その119)~「箱根に一泊旅行」
●週末に、箱根へ一泊旅行をしてきました。コレがなぜ自律神経失調症に関わるのか?実は、ビョウキがヒドくなって仕事を休職して以来、旅行らしい旅行に出るのは初めてだからだ。チッポケなコトだが、ボクには重要局面である。
●2007年2月に診断され服薬開始。2007年7月に症状悪化で休職。2009年6月に通院とリハビリをへて職場復帰。2010年6月イッパイで制限勤務の解除。そんで8月夏。ビョウキになって以降できなかったアレコレの事に少しづつ挑戦している。

プールに行ってみた。:これはこのシリーズ前回の記事で書きました(コチラ)。
飲み会、食事会に参加してみた。:異動を9月に控え、送別会などの会食が増えてる。先日深夜2時まで付き合ってみたのはジブンの中では実に感動だった。ビョウキ以前は毎週のように朝までワイワイしてたけど。
残業もボチボチ。:定時で帰ってた頃が懐かしい。今は22時を過ぎるのも珍しくない。終電帰りもある。昔のように一日20時間労働ってのは絶対にしないけどね。
映画の時間に間に合わなくてダッシュ。:カイシャ帰りに一人で観ようとした映画、時間がギリギリになり駅から猛ダッシュ。こんなに真剣に走ったコトなかった。しかも今月2回コレをやった(だが映画には間に合ってない。翌日以降両足が筋肉痛なのは仕方がない)。

そして新しい局面。「旅行」。
●本来は旅行がダイスキな人間なんですよボクは。海外も国内もアレコレ旅するのが好き。仕事の出張でも好き。しかしビョウキになってからは旅行ができなくなった。「どこか旅行にでも行って気分転換してくるとイイ」ワリと言ってしまいガチなこの言葉、うつ病の人には言ってはダメ、ってのがセオリーなのだ。
●気力も体力もゲッソリ落ちている人間に「旅行」は実に過酷だ。食事も睡眠も生活のリズムも一定に保つべき人間に激しい環境変化を強いる。飛行機の気圧変化でもナニが起こるか分からない。観光地を巡るなんてタフな行為は絶対無理。人ゴミだけで命取りになるんだから。時差、ああ致命傷になるかも。実家ですらキケン。
●で、ボクも旅行をヤメた。足が目に見えて細くなり、筋肉が削げ落ちたのがハッキリ分かる。駅まで歩く体力すら失った人間に、長時間の移動は無理。自動車の運転も無理。コドモたちはジジやババとともに遊びに行く(含む海外)が、ボク一人は家に残った。こんな状態が三年以上。

ワイフが企画。箱根一泊旅行。
●箱根という土地には何の思い入れもない。マジで「第三東京市」以上のイメージがない。「強羅絶対防衛線」とかのエヴァ用語でしか認知できない。後は彫刻の森美術館か。「でもロマンスカー一本だと思えば移動も楽でしょ」小田急沿線に住んでて実に幸いだった。「それにホテルに入ったらアトはダラダラ寝ててもイイから。温泉もプールもあるホテルだから、ドコかに観光しなくてもイイ」旅行という気負いを緩和する措置。これなら今のボクでもイケルと思う。ワイフと娘ヒヨコは先発。ボクは息子ノマドと男同士で移動する。
●ロマンスカーも人生で二回目くらいだな実際に乗るのは。小田原を過ぎた辺りの緑濃い風景を見て息子ノマドが叫ぶ。「なんかスゲエ田舎にきたぞ。ノーギョー!ノーギョー!」都会暮らしの21世紀少年には田んぼ自体が珍しい。箱根登山鉄道ではスイッチバック方式について語り合い、宮ノ下駅にて下車。そんで歩く事5分ほど。あ?ノマド、なんかアソコに「千と千尋の神隠し」に出てきた湯屋みたいな建物があるぞ?…と思ったらソコが我々の目的地だった。「富士屋ホテル」、創業1878年(明治10年)、和洋折衷様式が実にユニークな、クラシックホテルだった。ワイフはボクがこの建物を気に入るだろう、というトコロまで計算したらしい。ソレは実に正しい。

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「富士屋ホテル」…コドモたちはジジババに連れられて既にこのホテルには来たことがある。迷路のように入り組んで繋がるいくつかの棟を、ノマドヒヨコは得意げに案内してくれた。色とりどりの植物が生い茂る温室とか。ニシキゴイがエサをせがんで集まる池とか。湧き水が染み出る場所に小さいカニを発見したりとか。天井が無駄に高くて、ジャパニーズバロックな意匠がアチコチに仕込まれてるレストランとか(もうちょっと突っ込んだ表現で言うと「日光東照宮」的な気分)。温泉を利用した温水プールもクラシカルなデザインで楽しかった。ほとんど貸し切り状態で今年二回目のプール体験。セーブして泳いだから筋肉痛はない…。

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●夜はヒヨコ提案の「怖いハナシ大会」「アタシが司会をつとめます!順番に怖いハナシを言ってガマンできなくなった人が負けです!」部屋中の電気を消して懐中電灯だけを灯し、会談を話す人がソレを握る。しかし持ちネタを持ってるのはボクだけで、その渾身の超常体験を情感込めて披露したらコドモグウの音も出せないほどビビってしまいました。「ホントに怖いハナシは禁止なの!」ヒヨコはその晩ママにしがみついて寝ました。

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箱根登山鉄道。風が爽やかで気持ちよかった。緑も目に優しい。そんで箱根湯本。実にオールドスクールなおミヤゲ屋さん街でありました。もちろん購入したのは「第三東京市土産」「エントリープラグ」型パッケージがバカバカしくてナイスです。「ATフィールドクッキー」ってのもくだらなくてよかった。

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次なる試練は、異動で職場の環境がガラリと変わるコト。人間関係が一新され、新しいパートナーと新しい仕事をする。ボクに用意されてるタスクはそれなりなモンで、今まで誰もやってなかったポジションだからやりこなせるかは実に微妙。さてさて、この好調をそのままに、9月の環境変化に対応できるだろうか?

●現在のクスリのセットは、かなり減ってココまでの量になった。
デパゲンR 200mg / ムードスタビライザー 朝食時1回
メイラックス 0.5mg / 精神安定剤 朝食時1回
ロプヒノール 1mg / 睡眠導入剤 就寝時1回 
・これに、胃腸薬、尿酸値を下げるクスリの二種類。頓服用に鎮痛剤も持ち歩く。ココまで減薬したぞ。

●以前の「自律神経失調症とのお付合い」シリーズは下記の記事にまとめております。
 http://unimogroove.blog4.fc2.com/blog-date-20100126.html



●電車の中で読んでたのは、「文芸春秋」今月号掲載の「芥川賞」受賞作品。

赤染晶子「乙女の密告」
●舞台は京都の外国語大学。女子大生たち=「乙女」が、風変わりなドイツ人教授に課せられた「アンネの日記」の暗唱を触媒にして、アイデンティティ獲得に至る様を、ユーモアタップリに、でも鮮やかに描いてました。
「乙女」の社会はヤヤコシイ。「乙女」の社会に生きるためには、非「乙女」を排除するその行為を通じて自己の「乙女」性を外に立証しなくてはならない。その時にスケープゴートにされる非「乙女」にその根拠は必要ない、「乙女」にあるまじき噂があればイイ。真実は「乙女」に無意味。主人公・みか子は、理不尽な噂によって「乙女」社会から排除される。女性はホントに残酷だ。
●そんなマヌケな「乙女」社会に「アンネ・フランク」の物語が共振する。ユダヤ人として追いつめられた彼女と、一般のオランダ人を区別するのはなんなのか?歴史の大罪ホロコーストと女子大生のフワフワした自意識の摩擦が、奇妙な縁で結びつく仕掛けが実に知的でオモシロい。堅苦しいコトを気にする審査員には不謹慎に見えたよう、でも悲劇に散った14歳の少女も乙女であったはずで、ソコを苦しみながら通過したその足跡は、大過去になろうとしてるあの戦争を身近に感じさせる。

舞城王太郎「ビッチマグネット」
●去年下半期の芥川賞候補に挙がりながら「該当作なし」という結果で落選した作品。こと石原慎太郎はケチョンケチョンにしてたね。でも審査員の中ではコレを推す意見も多く、結局雑誌に全文が掲載されることになった。コレも去年リアルタイムで読んでた。舞城作品は初めての経験で、でも実にオモシロかった。
●彼はライトノベルの作家になるんだろうか?初期「ファウスト」で活躍したんだよね?創刊時の文芸誌「ファウスト」の評判はスゴいモノだったが、実はボクには全然オモシロく思えなかった。うわ読みづらい!やべえ時代について行けない!ボクはラノベと聞くと少々の落伍感と後ろめたさを感じずにはおれない。アレが2004年のコト。今ではラノベ業界も成熟と分化(サブジャンル化と勝ち負け組分化)が進んで、もっとスゴいコトになってるに違いない。
●結果として「ビッチマグネット」はオモシロかった。笑った。読みにくいと思った文体が、慣れると微妙なグルーヴ(脱臼感含む)を作って実に軽快に進んでいく。こういう文章が書きたいと思った(ムリだけど)。オハナシとしては、突飛な設定など何一つない、姉弟の数年間の物語がカチャポコと紡がれるだけ。「ビッチ」=ヤヤコシイ女子に見事食い込まれる脇の甘さが天才的なオトウトくんと、そんな彼を引いたり押したりして眺める主人公の姉の思考を描いて、「空気の読み合い」で微妙なコミュニティ感覚を共有したりできなかったりしてる20歳代の感覚をつかず離れずに客観視していく気分が楽しかったのだ。しかしコレがラノベか?と言えばなんかズレテル気がするんですが?チガウっぽいんじゃない?


●さらに読書のハナシ。

山本直樹「レッド」4

山本直樹「レッド」4巻
●今月の文芸春秋の他の記事も読みました。「みんなの党」渡辺喜美のインタビューが全然オモシロくなくて爆睡した。イイ眠りだった。中国で現在多発しているストライキに関するルポはオモシロかった。80年代の開放路線以降、ナニゲに中国にはストライキの権利が認められてない。資本主義大国として走り出した中国には、労働者を巡る摩擦が発展地域を中心に苛烈になってる。非合法と知りながら若者はストに走る。そんな連中がどんなヤツらかを突き止める。
●今の工場労働者、出稼ぎ労働者の中心は「80后(バーリンホウ)」、つまり80年代生まれの若者たち。「一人っ子政策」の中、大切に育てられ存分に甘やかされた世代。教育投資も十分に受け、ネットと携帯電話を駆使して世論を操作する術も知っている。中国が迎えた「ジェネレーションX」たちだ。そんな連中がストを仕掛ける。
●しかしスト首謀者の素顔は、世間知らずで折れやすいイマドキの若造。報復解雇を恐れて半ベソをかく。文春のライターさんは「天安門事件を経験し、今も投獄を覚悟しながら地下で民主化運動を続けているタフな40代、50代の中国人に比べると、私が直接取材した「80后の英雄」はずいぶん線が細い気がした」と結論する。オッサンは常に若者を斜に構えて判断する。
●そんじゃ日本の60年代~70年代の若者がどれだけタフな活躍をしたのか?学園紛争が下火になり孤立化していく若い運動家が過激なテロに走る様子を、淡々としたオフビートで描くこの作品。銀行強盗で資金を稼ぎ、公安の尾行をまきながらアジトを点々とする若者たち、テロリストとしては実にアマチュアな活動ぶりがノドカだった段階はいつか終わってしまい、とうとう同志を処刑するに至る。内ゲバ開始、この4巻で2名を殺害。ナニと戦う為に彼らは集まったのか。作者・山本直樹は意図して描いていると思うけど、彼ら70年代の運動家は十分に線が細い。


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